JPH0778518A - 難燃性薄肉絶縁電線 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 腐蝕性の高いハロゲン系ガスを発生せず、か
つ高度の耐摩耗性及び難燃性を備えた新規な難燃薄肉絶
縁電線を提供する。 【構成】 融点１２０℃以上のポリオレフィンとカルボ
ン酸変性ポリマとのブレンドポリマに対してシランカッ
プリング剤で表面処理した水酸化マグネシウムを含有す
る組成物を導体上に被覆し架橋して絶縁層を形成してな
ることを特徴としている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、難燃性で、かつ耐摩耗
性に優れた難燃性薄肉絶縁電線に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】近年、乗用車を中心に自動車の高性能、
高機能化に伴ない電気・電子回路も増えることによりワ
イヤハーネスの肥大化する傾向にある。

【０００３】しかしながら、このワイヤハーネスの肥大
化は配線スペースの増大、重量及びコストの増加などの
弊害を生じる。そのため、肥大化に対する対策が要望さ
れるようになり、この一環としてワイヤハーネス電線の
細径、薄肉化が検討され、実際ポリ塩化ビニル絶縁電線
では芯線径及び絶縁厚の低減による細径、薄肉化が図ら
れるようになってきた。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、最近、地球
環境の保全が世界的課題として注目を浴びるようにな
り、自動車に代表される広範囲の分野で資源や加工品の
リサイクル化、産業廃棄物処理が地球レベルで重大視さ
れるようになってきた。このため自動車用ワイヤハーネ
ス電線に使用するポリ塩化ビニルに対しても、焼却時、
腐食性のハロゲン系ガス発生が環境汚染源の一つとして
問題視されるようになってきており、この様な社会的動
向から、腐蝕性ガスの発生が少ないノンハロゲン難燃材
料が注目されてる。

【０００５】しかしながら、ポリオレフィンに金属水酸
化物を混和するノンハロゲン難燃材料では、従来のポリ
塩化ビニルに比べ強靭性が劣り、特に耐摩耗性が悪く、
絶縁体の厚さが０．１〜０．６ｍｍの薄肉電線への適用
が難しかった。

【０００６】そこで、本発明は、この問題点を有効に解
決するために案出されたものであり、その目的は、腐蝕
性の高いハロゲン系ガスを発生せず、かつ高度の耐摩耗
性及び難燃性を備えた新規な難燃薄肉絶縁電線を提供す
るものである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、融点１
２０℃以上のポリオレフィンとカルボン酸変性ポリマと
のブレンドポリマブレンド１００重量部に対してシラン
カップリング剤で表面処理した水酸化マグネシウムを３
０〜１００重量部配合した組成物を導体上に被覆し架橋
して好ましくは厚さ０．１〜０．６ｍｍの絶縁層を形成
してなるものである。

【０００８】

【作用】上記構成によれば、シランカップリング剤は、
その分子中に有機質と反応する官能基と無機質と結合す
る基を有しており、混和する水酸化マグネシウムをシラ
ンカップリング剤で表面処理することで、水酸化マグネ
シウムの表面にシランカップリング剤が結合され、その
表面に結合したシランカップリング剤の官能基がカルボ
ン酸変性ポリマと反応することで水酸化マグネシウムと
ポリオレフィンとが一体に結合され、耐摩耗性が大幅に
向上する。

【０００９】本発明で用いる融点１２０℃以上のポリオ
レフィンとしては高密度ポリエチレン、ポリブテンとい
ったポリマが挙げられるが、融点が限定値未満のポリマ
では耐摩耗性の向上を図ることができない。

【００１０】ポリオレフィンに添加するカルボン酸変性
ポリマとは、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレ
ン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢
酸ビニルコポリマに代表されるポリオレフィンにカルボ
ン酸をグラフト又は共重合したもので、カルボン酸とし
ては、無水マレイン酸が代表的である。上述のポリオレ
フィンとカルボン酸変性ポリマの比率は特に限定しない
が、９７／３〜７０／３０の重量比が望ましい。

【００１１】水酸化マグネシウムには、凝集、強靭性、
難燃性などから平均粒径０．１〜５μｍのものが好まし
く、これはシランカップリング剤で表面処理する必要が
ある。シランカップリング剤としては、ビニルトリス
（βメトキシエトキシ）シラン、ビニルトリエトキシシ
ラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシ
プロピルトリメトキシシランなどに代表される不飽和結
合を有するものが望ましい。

【００１２】本発明では、ポリオレフィンとカルボン酸
変性ポリマのブレンドポリマ１００重量部に対して、水
酸化マグネシウムを３０〜１００重量部とする必要があ
る。すなわち配合量が、限定値未満では目的とする難燃
性を付与できず、限定値を越えた場合には耐摩耗性が著
しく損なわれる。

【００１３】本発明では上記組成物を導体外周に押出被
覆後、パーオキサイドや電子線照射などにより架橋させ
る。本発明においては上記配合組成物の使用及び架橋に
より著しく耐摩耗性が向上し、絶縁層の厚さが０．１〜
０．６ｍｍの難燃薄肉絶縁電線を実現できる。

【００１４】

【実施例】以下本発明の好適実施例を比較例と共に説明
する。

【００１５】実施例１〜４と比較例１〜６とを表１に示
す。

【００１６】

【表１】

【００１７】表１の実施例１〜４及び比較例１〜６の各
欄に示す配合成分に従って、各成分を２２０℃に設定し
た３０ｍｍ２軸混練機で混練して組成物を形成し、その
後、これら組成物を２２０℃設定の４０ｍｍ押出機を用
いて芯線外径０．８７φの銅導体上に厚さ０．２５ｍｍ
の厚さで押出被覆し、その後加速電圧２ＭｅＶ，線量７
×１０^-2ＭＧｙで電子線照射し、各種絶縁電線を得た。
この際、導体はガスバーナで１３０℃に予熱した。

【００１８】次に、このようにして製作した各種電線に
ついて、以下に示す評価を行った。

【００１９】(1) 耐摩耗性 日本自動車規格（ＪＡＳＯ）−Ｄ６０８−８７に準拠
し、荷重５１０ｇでブレードを用いた往復法による摩耗
試験を４回行い、導体露出の最少回数を示した。

【００２０】(2) 難燃性 ＪＡＳＯ−Ｄ６０８−８７に準拠し、試料３００ｍｍを
水平に支持し、ブンゼンバーナの還元炎を１０秒間当て
た後の残炎時間を測定した。残炎時間が３０秒以内を合
格、３０秒を越えるものを不合格と判定した。

【００２１】表１に示すように本発明に係る実施例１〜
４の各試料の難燃性は良好でかつ耐摩耗性に優れている
ことが分る。

【００２２】これに対し無水マレイン酸変牲ポリエチレ
ン無添加の比較例１、未照射の比較例２、シランカップ
リング剤以外の表面処理剤で処理した水酸化マグネシウ
ムを用いた比較例３及び融点が限定値未満のポリマを使
用した比較例４は、いずれも耐摩耗性が１００回以下で
低い。水酸化マグネシウムの混和量が限定値未満の比較
例５では難燃性が不合格となり、また限定値を越えると
比較例６では耐摩耗性が著しく低下する。

【００２３】

【発明の効果】本発明によれば耐摩耗性に優れ、かつ焼
却時に腐食性の高いハロゲン系ガスを発生せず、環境汚
染防止に有効な難燃薄肉絶縁電線を実現できる。

Claims (7)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 融点１２０℃以上のポリオレフィンとカ
   ルボン酸変性ポリマとのブレンドポリマ１００重量部に
   対してシランカップリング剤で表面処理した水酸化マグ
   ネシウムを３０〜１００重量部含有する組成物を導体上
   に被覆し架橋して絶縁層を形成してなることを特徴とす
   る難燃性薄肉絶縁電線。
2. 【請求項２】 融点１２０℃以上のポリオレフィンは、
   高密度ポリエチレンまたはポリブテンである請求項１記
   載の難燃性薄肉絶縁電線。
3. 【請求項３】 カルボン酸変性ポリマは、低密度ポリエ
   チレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポ
   リプロプレン、エチレン酢酸ビニルコポリマから選ばれ
   るいずれか一種にカルボン酸をグラフト又は共重合して
   なるものである請求項１記載の難燃性薄肉絶縁電線。
4. 【請求項４】 融点１２０℃以上のポリオレフィンとカ
   ルボン酸変性ポリマとの含有重量比は９７／３〜７０／
   ３０である請求項１記載の難燃性薄肉絶縁電線。
5. 【請求項５】 水酸化マグネシウムは平均粒径が０．１
   〜５μｍのものである請求項１記載の難燃性薄肉絶縁電
   線。
6. 【請求項６】 絶縁層の厚さは０．１〜０．６ｍｍであ
   る請求項１記載の難燃性薄肉絶縁電線。
7. 【請求項７】 高密度ポリエチレンと無水マレイン酸変
   性ポリエチレンとのブレンドポリマ１００重量部に対し
   てシランカップリング剤で表面処理した水酸化マグネシ
   ウムを３０〜１００重量部含有する組成物を導体上に被
   覆し架橋して厚さ０．１〜０．６ｍｍの絶縁層を形成し
   てなることを特徴とする難燃性薄肉絶縁電線。