JPH0759570A - 糸状菌の形質転換法 - Google Patents
糸状菌の形質転換法Info
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- JPH0759570A JPH0759570A JP5212616A JP21261693A JPH0759570A JP H0759570 A JPH0759570 A JP H0759570A JP 5212616 A JP5212616 A JP 5212616A JP 21261693 A JP21261693 A JP 21261693A JP H0759570 A JPH0759570 A JP H0759570A
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- filamentous fungus
- aspergillus
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- dna
- filamentous
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 糸状菌の菌体内に外来性DNAを非常に簡便
に導入できる方法を提供する。 【構成】 糸状菌を緩衝液に懸濁し、外来性DNAを添
加混合し、この懸濁液にパルス電流を通電して外来性D
NAを菌体内に導入する糸状菌の形質転換法。 【効果】 糸状菌の菌体内に外来性DNAが効率よく、
簡便に導入できる。
に導入できる方法を提供する。 【構成】 糸状菌を緩衝液に懸濁し、外来性DNAを添
加混合し、この懸濁液にパルス電流を通電して外来性D
NAを菌体内に導入する糸状菌の形質転換法。 【効果】 糸状菌の菌体内に外来性DNAが効率よく、
簡便に導入できる。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、糸状菌の形質転換法、
特に、有用酵素の生産源であるアスペルギルス属糸状菌
の細胞内に外来性DNAを導入する方法に関する。さら
に詳しくは、本発明はエレクトロポレーション法(電気
穿孔法)をインタクトなアスペルギルス属に適用し、そ
の細胞内に外来性DNAを導入することにより形質転換
されたアスペルギルス属を得る方法に関する。
特に、有用酵素の生産源であるアスペルギルス属糸状菌
の細胞内に外来性DNAを導入する方法に関する。さら
に詳しくは、本発明はエレクトロポレーション法(電気
穿孔法)をインタクトなアスペルギルス属に適用し、そ
の細胞内に外来性DNAを導入することにより形質転換
されたアスペルギルス属を得る方法に関する。
【0002】
【従来の技術】アスペルギルス属糸状菌の形質転換法と
して、従来から、DNAを取り込ませる細胞の細胞壁を
適当な糸状菌細胞壁溶解酵素[例、宝酒造製、ヤタラー
ゼ(Yatalase)等]により除去してプロトプラ
スト化し、プロトプラストとDNAの共存下において、
CaCl2とポリエチレングリコールを加えることによ
り、プロトプラストにDNAを取り込ませ、その後、プ
ロトプラストを適当な再生培地上で再生させることによ
り形質転換株を取得する方法が用いられている[ケイス
(Case)ら、プロシーディングス・オブ・ナショナル・
アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc.
Natl.Acad.Sci.USA)第76巻、5259頁(1
979年)]。この方法では、宿主として用いる糸状菌の
種類の違いにより、糸状菌細胞壁溶解酵素の種類や使用
量の検討あるいはスタビライザーの種類や濃度の検討が
必要であり、予備実験に多大な時間を費やすという欠点
がある。そのうえ、実験操作が非常に煩雑であるという
欠点も有している。
して、従来から、DNAを取り込ませる細胞の細胞壁を
適当な糸状菌細胞壁溶解酵素[例、宝酒造製、ヤタラー
ゼ(Yatalase)等]により除去してプロトプラ
スト化し、プロトプラストとDNAの共存下において、
CaCl2とポリエチレングリコールを加えることによ
り、プロトプラストにDNAを取り込ませ、その後、プ
ロトプラストを適当な再生培地上で再生させることによ
り形質転換株を取得する方法が用いられている[ケイス
(Case)ら、プロシーディングス・オブ・ナショナル・
アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc.
Natl.Acad.Sci.USA)第76巻、5259頁(1
979年)]。この方法では、宿主として用いる糸状菌の
種類の違いにより、糸状菌細胞壁溶解酵素の種類や使用
量の検討あるいはスタビライザーの種類や濃度の検討が
必要であり、予備実験に多大な時間を費やすという欠点
がある。そのうえ、実験操作が非常に煩雑であるという
欠点も有している。
【0003】一方、糸状菌へのエレクトロポレーション
によるDNA導入法が報告されている[ワード(Ward)
ら、カレント・ジェネティクス(Curr.Genetics)第1
4巻、37頁(1988年)]。しかし、この方法もプロ
トプラストを調製する方法であるため上記方法と同様な
欠点を有する。さらに、この方法は、アスペルギルス属
のような糸状菌に対しては、ほとんど利用例が報告され
ていない。
によるDNA導入法が報告されている[ワード(Ward)
ら、カレント・ジェネティクス(Curr.Genetics)第1
4巻、37頁(1988年)]。しかし、この方法もプロ
トプラストを調製する方法であるため上記方法と同様な
欠点を有する。さらに、この方法は、アスペルギルス属
のような糸状菌に対しては、ほとんど利用例が報告され
ていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のような事情か
ら、糸状菌、特に、有用酵素の生産源であるアスペルギ
ルス属糸状菌の細胞内に外来性DNAを直接導入するた
めの簡便な方法の開発が求められるが、現在まで、適当
な方法は見い出されていない。したがって、本発明は、
糸状菌、特に、アスペルギルス属糸状菌の細胞内へ外来
性DNAを簡便に導入するための新規方法を開発するこ
とを目的とする。
ら、糸状菌、特に、有用酵素の生産源であるアスペルギ
ルス属糸状菌の細胞内に外来性DNAを直接導入するた
めの簡便な方法の開発が求められるが、現在まで、適当
な方法は見い出されていない。したがって、本発明は、
糸状菌、特に、アスペルギルス属糸状菌の細胞内へ外来
性DNAを簡便に導入するための新規方法を開発するこ
とを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明者らは、糸状菌について遺伝子操作上の問題
点を克服して、糸状菌の細胞内に外来性DNAを導入す
るための有用な技術を確立すべく鋭意研究を重ねた。そ
の結果、エレクトロポレーション法を発芽直後のアスペ
ルギルス属の細胞に適用することによって、プロトプラ
スト化を簡略化し、所望のDNAを極めて簡便に直接導
入することに成功し、本発明を完成するに至った。
に、本発明者らは、糸状菌について遺伝子操作上の問題
点を克服して、糸状菌の細胞内に外来性DNAを導入す
るための有用な技術を確立すべく鋭意研究を重ねた。そ
の結果、エレクトロポレーション法を発芽直後のアスペ
ルギルス属の細胞に適用することによって、プロトプラ
スト化を簡略化し、所望のDNAを極めて簡便に直接導
入することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0006】すなわち、本発明は、糸状菌を緩衝液に懸
濁し、これに外来性DNAを添加、混合し、得られた混
合液にパルス電流を通電して糸状菌の菌体内に外来性D
NAを導入することを特徴とする糸状菌の形質転換法を
提供するものである。
濁し、これに外来性DNAを添加、混合し、得られた混
合液にパルス電流を通電して糸状菌の菌体内に外来性D
NAを導入することを特徴とする糸状菌の形質転換法を
提供するものである。
【0007】本発明の形質転換法は、糸状菌、特に、ア
スペルギルス属の糸状菌に好適であり、いずれのアスペ
ルギルス属糸状菌にも適用できる。その代表例として、
アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー、ア
スペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・カワチ、ア
スペルギルス・ニドランスなどを挙げることができ、そ
れらの糸状菌体を用いることができるが、効率のよく形
質転換を行うために、胞子から発芽直後の菌体に、低濃
度の糸状菌細胞壁溶解酵素、例えば、上記したヤタラー
ゼ、β−グルクロニダーゼなどを0.1〜0.2%(w
/v)の濃度で緩衝液に添加した酵素液を30〜37℃
にて、60〜120分間の短時間作用させた菌体を用い
ることが好ましい。一般に、プロトプラスト化には、こ
の10倍程度の濃度(例えば、約2%)の酵素を要し、
スタビライザーも必要となるが、本発明の方法において
は、その必要がない。
スペルギルス属の糸状菌に好適であり、いずれのアスペ
ルギルス属糸状菌にも適用できる。その代表例として、
アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー、ア
スペルギルス・アワモリ、アスペルギルス・カワチ、ア
スペルギルス・ニドランスなどを挙げることができ、そ
れらの糸状菌体を用いることができるが、効率のよく形
質転換を行うために、胞子から発芽直後の菌体に、低濃
度の糸状菌細胞壁溶解酵素、例えば、上記したヤタラー
ゼ、β−グルクロニダーゼなどを0.1〜0.2%(w
/v)の濃度で緩衝液に添加した酵素液を30〜37℃
にて、60〜120分間の短時間作用させた菌体を用い
ることが好ましい。一般に、プロトプラスト化には、こ
の10倍程度の濃度(例えば、約2%)の酵素を要し、
スタビライザーも必要となるが、本発明の方法において
は、その必要がない。
【0008】糸状菌を懸濁させる緩衝液としては、pH
6.5〜7.5のグッド緩衝液(例、HEPES等)、
グリセロール液、マンニトール液などが用いられる。懸
濁濃度は特に限定するものではないが、通常1〜5×1
07菌体/ml程度が操作上等から望ましい。
6.5〜7.5のグッド緩衝液(例、HEPES等)、
グリセロール液、マンニトール液などが用いられる。懸
濁濃度は特に限定するものではないが、通常1〜5×1
07菌体/ml程度が操作上等から望ましい。
【0009】本発明の方法によれば、いずれの外来性D
NAをも糸状菌に導入でき、例えば、マーカー遺伝子
(アルギニン要求性などの栄養要求性相補遺伝子、アセ
トアミド資化などの炭素・窒素源資化遺伝子、オリゴマ
イシン耐性などの薬剤耐性遺伝子など)、応用面では、
糸状菌由来のムコールレンニン、グルコアミラーゼ遺伝
子ばかりでなく、異種遺伝子として発現用遺伝子(仔牛
キモシン、ヒトEGF、各種成長ホルモン、各種インタ
ーフェロン遺伝子など)のような外来性DNAが挙げら
れる。
NAをも糸状菌に導入でき、例えば、マーカー遺伝子
(アルギニン要求性などの栄養要求性相補遺伝子、アセ
トアミド資化などの炭素・窒素源資化遺伝子、オリゴマ
イシン耐性などの薬剤耐性遺伝子など)、応用面では、
糸状菌由来のムコールレンニン、グルコアミラーゼ遺伝
子ばかりでなく、異種遺伝子として発現用遺伝子(仔牛
キモシン、ヒトEGF、各種成長ホルモン、各種インタ
ーフェロン遺伝子など)のような外来性DNAが挙げら
れる。
【0010】パルス電流は、パルス電界強度2〜12k
V/cm、時定数3〜12m secで、通常、0〜4
℃にて、1〜10秒間通電する。これにより、効率よく
外来性DNAを糸状菌に導入できる。以下、糸状菌とし
てアスペルギルス属糸状菌を用いた例を挙げて本発明の
方法を具体的に説明する。
V/cm、時定数3〜12m secで、通常、0〜4
℃にて、1〜10秒間通電する。これにより、効率よく
外来性DNAを糸状菌に導入できる。以下、糸状菌とし
てアスペルギルス属糸状菌を用いた例を挙げて本発明の
方法を具体的に説明する。
【0011】本発明の方法は、アスペルギルス属糸状菌
の菌体、例えば、その胞子を培養し、発芽直後の菌体
に、さらに低濃度の糸状菌細胞壁溶解酵素を短時間作用
させた菌体を捕集し、これを緩衝液に懸濁し、外来性の
DNAを添加、混合し、この混合液にパルス電流を通電
することにより実施できる。まず、アスペルギルス属の
糸状菌を発芽率の高い培地で培養する。このような培地
は公知であり、例えば、通常の半分の濃度のデキストリ
ン−ペプトン(Dextrin−Peptone)培地で、25℃、1
00rpmで15時間培養すると、発芽率が80%を超え
る。このような培養条件で発芽した胞子を適当な手段、
例えば、遠心分離によって捕集する。このように捕集さ
れた発芽胞子を低濃度の糸状菌細胞壁溶解酵素、例え
ば、0.2%程度のヤタラーゼのような酵素液で、次の
エレクトロポレーションに用いる緩衝液、例えば、1m
M HEPES、50mMマンニトール緩衝液pH7.0
中で30℃、2時間作用させた後、同緩衝液で2回洗浄
する。この発芽胞子の懸濁液中の胞子数は、ある程度多
いほうが好ましいが、操作性の面で1×107個/キュ
ベットあれば十分な数の形質転換株が得られる。
の菌体、例えば、その胞子を培養し、発芽直後の菌体
に、さらに低濃度の糸状菌細胞壁溶解酵素を短時間作用
させた菌体を捕集し、これを緩衝液に懸濁し、外来性の
DNAを添加、混合し、この混合液にパルス電流を通電
することにより実施できる。まず、アスペルギルス属の
糸状菌を発芽率の高い培地で培養する。このような培地
は公知であり、例えば、通常の半分の濃度のデキストリ
ン−ペプトン(Dextrin−Peptone)培地で、25℃、1
00rpmで15時間培養すると、発芽率が80%を超え
る。このような培養条件で発芽した胞子を適当な手段、
例えば、遠心分離によって捕集する。このように捕集さ
れた発芽胞子を低濃度の糸状菌細胞壁溶解酵素、例え
ば、0.2%程度のヤタラーゼのような酵素液で、次の
エレクトロポレーションに用いる緩衝液、例えば、1m
M HEPES、50mMマンニトール緩衝液pH7.0
中で30℃、2時間作用させた後、同緩衝液で2回洗浄
する。この発芽胞子の懸濁液中の胞子数は、ある程度多
いほうが好ましいが、操作性の面で1×107個/キュ
ベットあれば十分な数の形質転換株が得られる。
【0012】この懸濁液中に、菌体内に導入すべき外来
DNAを添加する。一般的にDNA添加量が大であれ
ば、それだけ細胞内への導入の確率は増大する。プラス
ミッド型のベクターでは0.05μg/キュベット、イ
ンテグレート型のベクターでは5μg/キュベット程度
で実施できる。外来性DNAが添加された懸濁液は、つ
いでエレクトロポレーションに付される。この方法で
は、一般的には上記の懸濁液を一対の平板電極を持った
容器に導入し、氷中で冷却しながら高電圧パルスをかけ
ることによってエレクトロポレーションが行われる。
DNAを添加する。一般的にDNA添加量が大であれ
ば、それだけ細胞内への導入の確率は増大する。プラス
ミッド型のベクターでは0.05μg/キュベット、イ
ンテグレート型のベクターでは5μg/キュベット程度
で実施できる。外来性DNAが添加された懸濁液は、つ
いでエレクトロポレーションに付される。この方法で
は、一般的には上記の懸濁液を一対の平板電極を持った
容器に導入し、氷中で冷却しながら高電圧パルスをかけ
ることによってエレクトロポレーションが行われる。
【0013】このようにエレクトロポレーションに付し
た発芽アスペルギルス属糸状菌を、ついで、自体公知の
選別過程に付して、得られた形質転換株を選別する。形
質転換株は、例えば、栄養要求性の消失、特別な窒素源
の資化能および各種の抗生物質に対する耐性の獲得など
により選別される。これらの性質に関する遺伝子は、本
発明で使用する外来DNA中に予め挿入しておけばよ
い。
た発芽アスペルギルス属糸状菌を、ついで、自体公知の
選別過程に付して、得られた形質転換株を選別する。形
質転換株は、例えば、栄養要求性の消失、特別な窒素源
の資化能および各種の抗生物質に対する耐性の獲得など
により選別される。これらの性質に関する遺伝子は、本
発明で使用する外来DNA中に予め挿入しておけばよ
い。
【0014】かくして、本発明で得られた形質転換株
は、導入した外来性DNAに応じて、例えば、糸状菌由
来のムコールレンニン、グルコアミラーゼばかりでな
く、仔牛キモシン、ヒトEGF、各種成長ホルモン、各
種インターフェロンなどの効率よい製造に使用できる。
は、導入した外来性DNAに応じて、例えば、糸状菌由
来のムコールレンニン、グルコアミラーゼばかりでな
く、仔牛キモシン、ヒトEGF、各種成長ホルモン、各
種インターフェロンなどの効率よい製造に使用できる。
【0015】
【実施例】以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体
的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでは
ない。 実施例 アスペルギルス・ニガーATCC20739株のエレク
トロポレーションによる形質転換 (1)ベクターDNAの調製 導入するベクターDNAは、インテグレート型ベクター
としては、プラスミッドpDG3[バクストン(Buxton)
ら、ジーン(Gene)第37巻、207頁(1985年)]由
来のプラスミッドpXba192(pUC19にargB遺伝子
のXbaI断片を挿入したもの)を用い、アスペルギルス
属の細胞中でフリーのプラスミッドとして自己複製可能
なプラスミッド型ベクターとしては、アスペルギルス・
ニドランス由来のAMA1遺伝子を持つプラスミッドA
Rp1[ゲムス(Gems)ら、ジーン(Gene)第98巻、61
頁(1991年)]を用いた。両ベクター共に、アルギニ
ンの生合成経路のオルニチンカルバモイルトランスフェ
ラーゼ遺伝子(argB)を欠損した宿主を用い、窒素源が
硝酸ソーダの最少培地で形質転換が可能となる。ベクタ
ーDNAは常法に従って調製した後、セシュームクロラ
イド-エチジュウムブロマイド密度勾配超遠心にて精製
した。
的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでは
ない。 実施例 アスペルギルス・ニガーATCC20739株のエレク
トロポレーションによる形質転換 (1)ベクターDNAの調製 導入するベクターDNAは、インテグレート型ベクター
としては、プラスミッドpDG3[バクストン(Buxton)
ら、ジーン(Gene)第37巻、207頁(1985年)]由
来のプラスミッドpXba192(pUC19にargB遺伝子
のXbaI断片を挿入したもの)を用い、アスペルギルス
属の細胞中でフリーのプラスミッドとして自己複製可能
なプラスミッド型ベクターとしては、アスペルギルス・
ニドランス由来のAMA1遺伝子を持つプラスミッドA
Rp1[ゲムス(Gems)ら、ジーン(Gene)第98巻、61
頁(1991年)]を用いた。両ベクター共に、アルギニ
ンの生合成経路のオルニチンカルバモイルトランスフェ
ラーゼ遺伝子(argB)を欠損した宿主を用い、窒素源が
硝酸ソーダの最少培地で形質転換が可能となる。ベクタ
ーDNAは常法に従って調製した後、セシュームクロラ
イド-エチジュウムブロマイド密度勾配超遠心にて精製
した。
【0016】(2)DNA受容菌の調製 DNA受容菌には、アスペルギルス・ニガーATCC2
0739株を用いた。受容菌の培養条件は、最少培地以
外で、胞子の発芽率の高い培地、例えば、栄養培地であ
るDextrin−Peptone培地の半分の濃度とした培地(1
%デキストリン、0.5%ペプトン、0.25%リン酸
一カリウム、0.05%硝酸ソーダ、0.025%硫酸
マグネシウム、pH5.5)を用い、25℃、15時間、
100rpmの振盪培養した。この培養条件において、胞
子から僅かに発芽管が延びた状態の細胞が80%以上存
在していた。この発芽直後の菌体を遠心分離によって捕
集し、次のエレクトロポレーションに用いる1mM H
EPES、50mMマンニトール緩衝液(pH7.0)中
で糸状菌細胞壁溶解酵素であるヤタラーゼを0.2%と
薄い濃度で、30℃、2時間作用させ細胞壁を一部柔ら
かくした。その後、同緩衝液により2回菌体を洗浄し
た。
0739株を用いた。受容菌の培養条件は、最少培地以
外で、胞子の発芽率の高い培地、例えば、栄養培地であ
るDextrin−Peptone培地の半分の濃度とした培地(1
%デキストリン、0.5%ペプトン、0.25%リン酸
一カリウム、0.05%硝酸ソーダ、0.025%硫酸
マグネシウム、pH5.5)を用い、25℃、15時間、
100rpmの振盪培養した。この培養条件において、胞
子から僅かに発芽管が延びた状態の細胞が80%以上存
在していた。この発芽直後の菌体を遠心分離によって捕
集し、次のエレクトロポレーションに用いる1mM H
EPES、50mMマンニトール緩衝液(pH7.0)中
で糸状菌細胞壁溶解酵素であるヤタラーゼを0.2%と
薄い濃度で、30℃、2時間作用させ細胞壁を一部柔ら
かくした。その後、同緩衝液により2回菌体を洗浄し
た。
【0017】(3)電気パルスの印加 電気パルス発生装置として、島津製遺伝子導入装置GT
E−10システムを用いた。遺伝子導入チャンバーとし
ては、5ウェルディスポーザブルチャンバーを用いた。
これらにより0〜13.5KV/cmのパルス電界強度、
0〜2500msecの時定数の指数減衰波の電気パルスを
発生することができる。調製した発芽胞子の懸濁液と導
入するDNA溶液を混合後、チャンバーに入れた。発芽
胞子濃度は2.5×107/ml、DNA濃度はプラスミ
ッド型のベクターでは125ng/ml、インテグレート型
のベクターでは12.5μg/mlとなるように調製し
た。この溶液にパルス電界強度2〜12KV/cm、時定
数3〜12m secの電気パルスを印加した。パルス印加
は0℃にて行った。さらに、パルス印加後0℃に10分
間保った。その後、窒素源を硝酸ソーダとする最少培地
に重層後、30℃にて数日間培養後、形質転換株の選択
を行った。 (4)形質転換株の確認
E−10システムを用いた。遺伝子導入チャンバーとし
ては、5ウェルディスポーザブルチャンバーを用いた。
これらにより0〜13.5KV/cmのパルス電界強度、
0〜2500msecの時定数の指数減衰波の電気パルスを
発生することができる。調製した発芽胞子の懸濁液と導
入するDNA溶液を混合後、チャンバーに入れた。発芽
胞子濃度は2.5×107/ml、DNA濃度はプラスミ
ッド型のベクターでは125ng/ml、インテグレート型
のベクターでは12.5μg/mlとなるように調製し
た。この溶液にパルス電界強度2〜12KV/cm、時定
数3〜12m secの電気パルスを印加した。パルス印加
は0℃にて行った。さらに、パルス印加後0℃に10分
間保った。その後、窒素源を硝酸ソーダとする最少培地
に重層後、30℃にて数日間培養後、形質転換株の選択
を行った。 (4)形質転換株の確認
【0018】
【表1】
【0019】上記の方法で、プラスミッド型のベクター
(ARp1)を用いた場合、μgDNA当たり2×102
個の頻度で形質転換株を取得することができた。この形
質転換株の1つをアスペルギルス・ニガー ETF−1
と命名し、平成5年8月5日に、受託番号FERM P
−13786の下、通産省工業技術院生命工学工業技術
研究所に寄託してある。一方、ヤタラーゼ処理なしでも
形質転換株は得られるが、酵素処理の1/3程度であっ
た。また、インテグレート型のベクター(pXba19
2)を用いた場合には、表には示してないが、μgDN
A当たり数個の頻度であった。以上、取得した形質転換
株のゲノムのDNAを常法により調製し、調製したゲノ
ムDNAをそのまま、あるいは制限酵素で処理した。A
Rp1による形質転換の場合は、従来のプロトプラスト-
ポリエチレングリコール法と同様に、本ベクターはフリ
ーのプラスミッドとして存在し、インテグレート型のp
Xba192を用いた場合には、本ベクターは染色体に多
コピー組み込まれていた。このように、本発明による形
質転換は、糸状菌の形質転換の特徴を現しており、また
簡便性の面で従来法よりも大いに優れている。
(ARp1)を用いた場合、μgDNA当たり2×102
個の頻度で形質転換株を取得することができた。この形
質転換株の1つをアスペルギルス・ニガー ETF−1
と命名し、平成5年8月5日に、受託番号FERM P
−13786の下、通産省工業技術院生命工学工業技術
研究所に寄託してある。一方、ヤタラーゼ処理なしでも
形質転換株は得られるが、酵素処理の1/3程度であっ
た。また、インテグレート型のベクター(pXba19
2)を用いた場合には、表には示してないが、μgDN
A当たり数個の頻度であった。以上、取得した形質転換
株のゲノムのDNAを常法により調製し、調製したゲノ
ムDNAをそのまま、あるいは制限酵素で処理した。A
Rp1による形質転換の場合は、従来のプロトプラスト-
ポリエチレングリコール法と同様に、本ベクターはフリ
ーのプラスミッドとして存在し、インテグレート型のp
Xba192を用いた場合には、本ベクターは染色体に多
コピー組み込まれていた。このように、本発明による形
質転換は、糸状菌の形質転換の特徴を現しており、また
簡便性の面で従来法よりも大いに優れている。
【0020】
【発明の効果】本発明により、糸状菌、特に、アスペル
ギルス属糸状菌の菌体内に外来性DNAを非常に簡便に
導入できる方法が提供される。
ギルス属糸状菌の菌体内に外来性DNAを非常に簡便に
導入できる方法が提供される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 神田 晃敬 兵庫県西宮市今津出在家町4番9号 大関 株式会社総合研究所内 (72)発明者 浜地 正昭 兵庫県西宮市今津出在家町4番9号 大関 株式会社総合研究所内 (72)発明者 布川 彌太郎 兵庫県西宮市今津出在家町4番9号 大関 株式会社総合研究所内
Claims (5)
- 【請求項1】 糸状菌を緩衝液に懸濁し、これに外来性
DNAを添加、混合し、得られた混合液にパルス電流を
通電して糸状菌の菌体内に外来性DNAを導入すること
を特徴とする糸状菌の形質転換法。 - 【請求項2】 糸状菌がアスペルギルス属の糸状菌であ
る請求項1記載の形質転換法。 - 【請求項3】 該糸状菌がアスペルギルス・ニガーであ
る請求項2記載の形質転換法。 - 【請求項4】 該糸状菌が、胞子を培養後、得られた発
芽直後のインタクトな細胞である請求項3記載の形質転
換法。 - 【請求項5】 該発芽直後のインタクトな細胞を糸状菌
細胞壁溶解酵素で処理した後、パルス電流を通電する請
求項4記載の形質転換法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5212616A JPH0759570A (ja) | 1993-08-27 | 1993-08-27 | 糸状菌の形質転換法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP5212616A JPH0759570A (ja) | 1993-08-27 | 1993-08-27 | 糸状菌の形質転換法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0759570A true JPH0759570A (ja) | 1995-03-07 |
Family
ID=16625632
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP5212616A Pending JPH0759570A (ja) | 1993-08-27 | 1993-08-27 | 糸状菌の形質転換法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0759570A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7186844B2 (en) | 2004-01-13 | 2007-03-06 | Mitsubishi Gas Chemical Co., Inc. | Method for producing cyclic carbamate ester |
WO2019131505A1 (ja) * | 2017-12-26 | 2019-07-04 | 国立大学法人徳島大学 | 糸状菌細胞に対するタンパク質導入法およびその成果物 |
-
1993
- 1993-08-27 JP JP5212616A patent/JPH0759570A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7186844B2 (en) | 2004-01-13 | 2007-03-06 | Mitsubishi Gas Chemical Co., Inc. | Method for producing cyclic carbamate ester |
WO2019131505A1 (ja) * | 2017-12-26 | 2019-07-04 | 国立大学法人徳島大学 | 糸状菌細胞に対するタンパク質導入法およびその成果物 |
JPWO2019131505A1 (ja) * | 2017-12-26 | 2021-01-21 | 国立大学法人徳島大学 | 糸状菌細胞に対するタンパク質導入法およびその成果物 |
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