JPH074979Y2 - 座席の移動調整装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は座席の移動調整装置に関する。

〔従来の技術〕 例えば乗用車等の車両に搭載される座席においては、そ
の位置を着座者の好みに応じて前後に移動調整できるよ
うにした座席の移動調整装置が備えられている。

従来この種の座席の移動調整装置にはスライドレールが
一般に広く用いられている。

即ちこのスライドレールは、床面側に固定されるロアー
レールと、座席が載置固定されるアッパーレールとによ
り成り、アッパーレールがロアーレールに対しその間に
介挿されるローラー等を介して良好な滑性で摺動自在と
なされている。通常このスライドレールは左右両側に一
対配設され、このスライドレールによって座席を任意の
位置に移動させた状態でアッパーレールをロアーレール
に対し所定のロック機構によってロックすることにより
座席の前後移動調整が行なわれる。

しかしながら、このスライドレールの場合、座席を前後
に移動させた際にはロアーレールが座席端部からはみ出
る状態となって大変見苦しく、しかも着座者の足場空間
が狭くなりロアーレールによって靴などを傷付けてしま
うこともある。

そこで本出願人は先に「特願平１−196238号」におい
て、スライドレールを用いない新規構造の座席の移動調
整装置を提案した。

即ちこの座席の移動調整装置の概要は、床面側のベース
プレートに対し座席が載置固定されるアッパーフレーム
を、前部及び後部に左右二本ずつ配される計四本のリン
ク部材を介して前後方向に移動自在に支持してなり、こ
の四本のリンク部材が左右対称的に回動されることによ
ってアッパーフレームがベースプレートに対し前後方向
に移動され、このアッパーフレームが任意の位置に移動
されたところでこれをロック機構によってロックするこ
とにより座席の移動調整が行なわれる。

〔考案が解決しようとする課題〕

しかしながら、従来のこの装置は、ベースプレートに対
しリンク部材を介して前後方向に移動可能に支持される
アッパーフレームの上に座席を載置固定するようにした
構成であるため、座席装置全体としての厚みが大きくな
り、特に室内スペースの狭い小型車の載せる場合に不都
合がある。

全体の厚みを薄く形成するためにはベースプレートとア
ッパーフレーム間の間隔を狭く構成することが考えられ
るが、このベースプレートとアッパーフレーム間はリン
ク部材が円滑に回動動作されるように一定の間隔を確保
する必要があるため、薄型化には限界がある。

本考案は斯かる点に鑑みてなされたもので、構成を簡素
化することにより全体の薄型化を図った座席の移動調整
装置を提供し、上述の欠点を解消することを目的とす
る。

〔課題を解決するための手段〕

上述の目的を達成するために本考案は、床面側に配され
るベースプレートに対し座席のシートクッションフレー
ムを、前部及び後部に左右二本ずつ配される四本のリン
ク部材を介して前後方向に移動自在に支持し、かつシー
トクッションフレームをベースプレートに対し任意の移
動位置でロックするロック機構を設けてなるものであ
る。

〔作用〕

このように構成される本考案装置は、座席のクッション
フレームを直接的にリンク部材によって支持した構成で
あり、即ち座席とその移動調整装置とを一体化した構造
となされているため、座席装置全体としての厚みが従来
よりも薄型に形成され、従って室内スペースの狭い小型
車にも好適に載せることができる。

〔実施例〕

以下、図面を参照しながら本考案の実施例を説明する。

図において（１）は座席の移動調整装置を全体として示
し、（２）はベースプレート（ロアープレート）で、こ
のベースプレート（２）は方形平板状を成し、固定ボル
ト（図示せず）等によって床面側に固定される。一方
（３）はシートクッションフレーム（以下単にクッショ
ンフレームという）で、このクッションフレームはいわ
ゆるパン状を成し、その上面から周面にかけてシートパ
ッドが囲繞され、さらにその表面を表皮で被覆すること
によってシートクッションＳが構成される。

そしてこのクッションフレーム（３）は、ベースプレー
ト（２）に対しリンク機構を介して前後方向に移動可能
に支持されている。尚、第１図において左側（矢印ａ方
向側）が前方、右側が後方である。

このリンク機構は、前部及び後部に左右二本ずつ対称的
に配される同一長さの四本の支持リンク（４）（５）及
び（６）（７）により成り、この支持リンク（４）
（５）及び（６）（７）は夫々その一端（内端）がベー
スプレート（２）の中央部に水平方向に回動自在に軸支
されている。即ち、ベースプレート（２）の中央部には
支持基台（2a）が固着され、この支持基台（2a）には前
後部に支軸（８）及び（９）が立設されており、前部の
支軸（８）に支持リンク（４）と（５）の内端部を夫々
嵌合軸支し、後部の支軸（９）に支持リンク（６）と
（７）の内端部を夫々嵌合軸支してある。尚、各支持リ
ンク（４）（５）及び（６）（７）は夫々内端部に円筒
状部（カラー）が形成されており、この円筒状部におい
て支軸（８）及び（９）に嵌合軸支されている。

一方、これら各支持リンク（４）（５）及び（６）
（７）の他端（外端）は、夫々可動連結機構（10）を介
してクッションフレーム（３）の左右両側端部に水平方
向に回動自在でかつ横方向に移動自在に連結されてい
る。

この可動連結機構（10）は、クッションフレーム（３）
の底面の前後四箇所に横方向に固着される平面コ字状の
ガイドブラケット（11）と、このガイドブラケット（1
1）の前後両側面部間にその内面に沿って横方向に摺動
自在に嵌挿配置され、かつ枢軸（12）によって各支持リ
ンク（４）（５）及び（６）（７）の外端部に水平方向
に回動自在に枢着された軸受部材（13）と、この軸受部
材（13）に軸（14）によって軸支され、その周面がクッ
ションフレーム（３）の底面に転接されるローラー（1
5）とにより成る。ガイドブラケット（11）の前後両側
面部にはガイド長孔（11a）が横方向に穿設されてお
り、軸受部材（13）にローラー（15）を軸支する軸（1
4）はこのガイド長孔（11a）を連通して組付けられてい
る。

そして各支持リンク（４）（５）及び（６）（７）が夫
々支軸（８）及び（９）を中心として回動されると、こ
の動きに伴って各可動連結機構（10）の軸受部材（13）
が各支持リンクに対し水平方向に回動されると共にロー
ラー（15）がガイドブラケット（11）内を横方向に転動
し、これによってクッションフレーム（３）がベースプ
レート（２）に対し前後方向に移動動作される如く成さ
れている。

また、各支持リンク（４）（５）及び（６）（７）には
その下面側に夫々補強リブ（4a）（5a）及び（6a）（7
a）が長手方向に形成されており、クッションフレーム
（３）から加わる荷重に対する剛性を向上させてある。

さらに、前部左側の支持リンク（４）の内端部には、こ
の支持リンク（４）の長さ方向即ち外端部とは逆の方向
に突出される突片（16）が固着されており、この突片
（16）の先端部に突設されたピン（17）と後部右側の支
持リンク（７）に突設されたピン（18）との間には引張
スプリング（19）を張設してあり、この引張スプリング
（19）の偏倚力によって両支持リンク（４）と（７）は
夫々前方へ回動される力を付与され、従ってクッション
フレーム（３）はベースプレート（２）に対し常に前方
（矢印ａ方向）に付勢されている。

またこの座席の移動調整装置（１）においては、ベース
プレート（２）とクッションフレーム（３）との間に、
クッションフレーム（３）の移動方向を規制案内するガ
イドレール（20）が設けられている。

即ちこのガイドレール（20）は、クッションフレーム
（３）の中央部下面側に前後方向に配置固定されるアッ
パーレール（21）と、支軸（８）及び（９）の上端部に
固定されるロアーレール（22）とにより成り、アッパー
レール（21）は下方に向かって開放する断面コ字状をな
す長尺部材により形成され、一方ロアーレール（22）は
このアッパーレール（21）に摺動自在に密嵌される所定
の屈曲形状をなす長尺部材により形成されており、アッ
パーレール（21）がロアーレール（22）に沿って摺動案
内されることにより、クッションフレーム（３）のベー
スプレート（２）に対する前後移動方向が直線的に規制
されるように成されている。

さらにこの座席の移動調整装置（１）においては、ベー
スプレート（２）とクッションフレーム（３）との間
に、クッションフレーム（３）をベースプレート（２）
に対し任意の移動位置でロックするロック機構（23）が
備えられている。

このロック機構（23）は次のように構成される。先ず前
部右側の支持リンク（５）及び後部左側の支持リンク
（６）の内端部には、夫々支軸（８）及び（９）を中心
として一体に回動される扇形のロックギヤ（24）及び
（25）が互いに対向して固定さている。一方このロック
ギヤ（24）及び（25）の歯に対応してベースプレート
（２）の支持基台（2a）に立設された軸（26）及び（2
7）には夫々ロックアーム（28）及び（29）がロックギ
ヤ（24）及び（25）に対し係脱する方向に回動自在に軸
支されている。

またこの両ロックアーム（28）と（29）の間に位置して
支持基台（2a）には軸（30a）が立設されており、この
軸（30a）に作動プレート（30）が水平方向に回動自在
に枢支されている。この作動プレート（30）には、その
回転中心即ち軸（30a）からの距離が連続的に変化する
一対の円弧状のカム溝（31）及び（32）が穿設されてお
り、このカム溝（31）及び（32）に、ロックアーム（2
8）及び（29）に突設された係合ピン（33）及び（34）
が夫々挿通係合されている。

このような構成により、作動プレート（30）の回転に伴
なって係合ピン（33）及び（34）が夫々カム溝（31）及
び（32）に案内され、これによってロックアーム（28）
及び（29）が夫々ロックギヤ（24）及び（25）に対し係
脱する方向に回動される如く成されている。また作動プ
レート（30）はリターンスプリング（35）によって常に
図において時計方向即ちロックアーム（28）及び（29）
が夫々ロックギヤ（24）及び（25）に噛合する方向に回
動偏倚されている。

またこの作動プレート（30）にはレリーズワイヤー（3
6）の一端末部が接続され、このレリーズワイヤー（3
6）の他端末部は図示せずとも操作レバーに接続されて
おり、この操作レバーを操作することによりレリーズワ
イヤー（36）を介して作動プレート（30）が牽引されて
リターンスプリング（35）の力に抗して図において反時
計方向に回転し、これによってロックアーム（28）及び
（29）が夫々ロックギヤ（24）及び（25）から抜脱され
る方向に回動する如くなされる。

以上の如き構成によって略明らかな如く、本例の座席の
移動調整装置（１）は、通常の状態ではロック機構（2
3）のロックアーム（28）及び（29）が夫々ロックギヤ
（24）及び（25）に噛合していることにより支持リンク
（５）及び（６）が回動不能となされ、このためクッシ
ョンフレーム（３）即ち座席Ｓはベースプレート（２）
に対し移動不能なロック状態にある。そして操作レバー
を操作してロック機構（23）のロックアーム（28）及び
（29）を夫々ロックギヤ（24）及び（25）から抜脱させ
ると、支持リンク（５）及び（６）が回動自在となさ
れ、即ちクッションフレーム（３）のロックが解除され
る。

このようにロックが解除された状態で、操作レバーの操
作状態を維持しながらクッションフレーム（３）即ち座
席Ｓに前後方向の力を加えることにより、各支持リンク
（４）（５）及び（６）（７）が左右対称に回動され、
このためクッションフレーム（３）はベースプレート
（２）に対し前後方向に移動される。そしてこのように
してクッションフレーム（３）即ち座席を所望の前後移
動位置に移動させた後に操作レバーから手を離すことに
より、ロック機構（23）のロックアーム（28）及び（2
9）が夫々ロックギヤ（24）及び（25）に噛合してクッ
ションフレーム（３）はその位置で再び移動不能にロッ
クされ、これによって座席Ｓの前後移動調整が行なわれ
る。

また、この調整動作において本例装置では、クッション
フレーム（３）のロックを解除すると引張スプリング
（19）の偏倚力によってクッションフレーム（３）が自
動的に前方へ移動される如く動作し、このため着座者は
着座状態のままで座席を容易に移動調整することができ
る。即ち、一般に着座状態においては座席を後方へは簡
単に動かせるものの、前方へは動かしずらいが、本例で
は引張スプリング（19）によってクッションフレーム
（３）が前方へ付勢されていることにより、着座状態で
座席Ｓを後方へ押圧移動させるだけで簡単に所望の移動
位置に設定でき、従って座席の移動調整動作が楽に行な
えるものである。

以上に詳述した如く、本例の座席の移動調整装置（１）
によれば座席Ｓの所望の前後移動位置に迅速に調整する
ことができる。そして座席Ｓを前後に移動させた状態で
は、スライドレールのような不具合が生じることはな
い。

即ち、座席Ｓが前後に移動された状態においては座席Ｓ
の端部からベースプレート（２）がはみ出し露出される
状態となるが、このベースプレート（２）は単なる平板
状体であるためスライドレールのように見苦しくなく、
また着座者（特に後席着座者）の足場空間が充分に確保
されて靴などを傷付けるおそれもない。

そしてこの座席の移動調整装置は、座席のクッションフ
レーム（３）に直接支持リンク（４）（５）及び（６）
（７）の外端部を連結してあり、即ち座席のクッション
フレーム（３）を直接的に支持リンク（４）（５）及び
（６）（７）によって前後方向に移動可能に支持するよ
うにした構造であるため、全体として薄型・軽量に構成
されている。

即ち、従来は座席の移動調整装置と座席とは夫々別個に
構成され、移動調整装置のアッパーフレーム上に座席を
載置固定するようにした構造であった。これに対し本考
案実施例では移動調整装置に座席を一体化した如き構造
であるため、その分だけ従来よりも薄型に形成でき、ま
た部品点数も削減されるので軽量化を図ることもでき
る。

従ってこのような本例装置は、室内スペースの狭い小型
車にも好適に搭載できるものである。

以上、本考案の一実施例について説明したが、本考案は
この実施例の構成に限ることなく種々の変化変更が可能
なものであることは勿論である。

〔考案の効果〕

以上の説明から明らかなように本考案の座席の移動調整
装置は、座席の移動支持部材としてリンクを用いたこと
により座席を前後に移動させた際の見苦しさを解消し、
また着座者の足場空間を充分に確保できると共に、座席
のシートクッションフレームを直接的にリンク部材によ
って支持した構成としたことにより、座席とその移動調
整装置とが一体化した構造となされ、その結果座席装置
全体としての厚みを従来よりも薄く形成でき、また同時
に軽量化も図ることができるので、特に小型車に適用し
て効果が大きい。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案装置の実施例を示す一部切欠いた平面
図、第２図は同、縦断正面図、第３図は同、一部切欠い
た側面図である。 図中、（２）はベースプレート、（３）はクッションフ
レーム、（４）（５）及び（６）（７）は支持リンク、
（23）はロック機構である。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】床面側に配されるベースプレートに対し座
   席のシートクッションフレームを、前部及び後部に左右
   二本ずつ対称的に配され、一端が上記ベースプレートの
   中央部に水平方向に回動自在に軸支され、他端が可動連
   結機構を介して上記シートクッションフレームの左右両
   端部に水平方向に回動自在でかつ横方向に移動自在に連
   結された四本のリンク部材を介して前後方向に移動可能
   に支持すると共に、上記シートクッションフレームを上
   記ベースプレートに対し任意の移動位置でロックするロ
   ック機構を設けてなる座席の移動調整装置。