JPH074815B2 - ベルト加硫装置及びこれに用いるジャケット - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はベルト加硫装置及びこれ
に用いるジャケットに係り、詳しくはローエッジベル
ト、多リブベルト、歯付ベルト等のベルトスリーブある
いはラップドベルトのベルト加硫装置及びこれに用いる
ジャケットに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来のこの種のベルト加硫装置は、その
一例を図８に示すように、未加硫ベルトスリーブ１を外
周面に巻付けた内部中空の成形用モールド２に、さらに
その外周面に弾性変形可能な円筒状ジャケット３を同心
状に嵌装し、以上の形態をもって組立てられたものを加
硫缶４中の下方に位置する支持台５に設置し、さらに成
形用モールド２の上に上蓋６を置き、成形用モールドの
外側に高圧蒸気を、成形モールド内部に低圧蒸気をそれ
ぞれ圧入して、未加硫ベルトスリーブ１を加硫せしめる
構造を有している。尚、上記高圧蒸気及び低圧蒸気はい
ずれも導入口７から入れられ、また内部の水分はドレー
ン口８から排出される。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のベルト
加硫装置ではベルトスリーブの加硫が完了すると、円筒
状ジャケットは成形用モールドから抜き出され、そして
このモールドが加硫缶から取り出されていた。その際円
筒状ジャケットを抜き出す工程は、作業者によって行わ
れていたため、これを作業者に依存せずに合理化するこ
とが強く望まれていた。

【０００４】更に何よりも、ベルト加硫用のジャケット
は、未加硫ベルトスリーブの外周長に対してせいぜい１
インチ程度大きい内周長を有するものでなければ、上記
ジャケットを拡張させてベルトスリーブの背面を強く圧
接させることが出来なかった。そのために、各ベルトの
周長が異なるごとにジャケットを備えておく必要があっ
た。

【０００５】また、従来のジャケットは加硫缶に投入し
て充分に膨張させた後に、高温高圧下で拡張させるた
め、これが繰り返されるとジャケット自身が熱劣化して
内周長が変化する問題があった。そればかりでなく、上
蓋及び支持台に圧接しているジャケット両端部の弾性ス
カートがやはり高温高圧下の環境におかれているため、
早期に熱劣化してスカートの弾性力がなくなってジャケ
ットの長さが短くなることがあった。そのため、ジャケ
ットの弾性スカートと上蓋間には間隙が生じてシール効
果がなくなり、その結果モールド外側の高圧蒸気が弾性
スカートからジャケット内部へ侵入し、そしてベルトス
リーブは蒸気の侵入によってふくれが発生し、また外観
上は問題がないが芯線が劣化すると言った問題があっ
た。

【０００６】更には、加硫中において弾性スカートが成
形用モールドに嵌挿した未加硫ベルトスリーブの両端部
を圧接しないために、加硫後のベルトスリーブの両端部
は充分に加硫せず、やむをえずこの部分をゴムスクラッ
プにしなければならなかった。

【０００７】本発明はこのような諸問題を解決するもの
であり、ベルト周長が変わっても使用可能であるばかり
か成形用モールドの嵌挿及び抜き出しが容易で、しかも
寿命の長いジャケットを提供し、そしてジャケットと上
蓋との気密性を保持して品質よく未加硫ベルトスリーブ
あるいはベルトを加硫することができ、しかもベルトス
リーブの両端部まで確実に加硫してゴムスクラップの発
生をなくしたベルト加硫装置を提供することを目的とす
る。

【０００８】

【課題を解決するための手段】即ち、本発明のベルト加
硫装置においては、成形用モールドの外周面に未加硫ベ
ルトスリーブあるいはベルトを装着するとともにその外
周面に円筒状のジャケットを同心状に嵌装してなるモー
ルド組立体を、加硫缶内に設置した支持台と上蓋との間
に介在したベルト加硫装置において、上記ジャケットと
して円筒状ケースの内側に弾性筒状体を嵌挿して該ケー
スと弾性筒状体との間に気密性を保持した空間部を形成
し、上記円筒状ケースに少なくとも１つの入気口と排出
口とを該空間部へ連通するように設け、これらの入気口
と排出口とを加硫缶に設けた口開閉機構と吸引パイプに
それぞれ接続可能にした構成にある。

【０００９】また、上記加硫缶に設けた口開閉機構と吸
引パイプとがシリンダーの作動により移動可能になって
いる

【００１０】 また、本発明のジャケットは、円筒状ケ
ースの内側に弾性筒状体を嵌挿して該ケースと弾性筒状
体との間に空間部を形成し、上記円筒状ケースに該空間
部へ連通するように少なくとも１つの入気口と排気口と
を設け、そして上記弾性筒状体の上下端縁に外方向へ拡
大する弾性スカートを形成して、これを気密性を付与す
る円筒状上下フレームに装着し、一方のフレームを円筒
状ケースに弾性部材を介して取り付け、他方のフレーム
を円筒状ケースに固着した構成も含む。更には円筒状ケ
ースには把持部を装着してもよい。

【００１１】

【００１２】

【作用】本発明のベルト加硫装置では、ジャケットが円
筒状ケースとその内側に嵌挿された弾性筒状体からな
り、しかもこのケースと弾性筒状体との間に形成された
空間部内の気体を吸引して上記弾性筒状体を拡張して円
筒状ケースに密接させることができるため、実質的にジ
ャケットの内径を大きくして未加硫ベルトスリーブを装
着した成形用モールドを該ジャケット内に容易に挿入す
ることができるとともに、該成形用モールドを該ジャケ
ットから容易に取り出すこともできる。

【００１３】しかも、ベルト周長の大きい未加硫ベルト
スリーブを加硫する場合でも、上記成形用モールドをジ
ャケット内に挿入することができ、このようなベルトス
リーブも加硫することができる。

【００１４】また、前記ジャケットの上端縁が上蓋に当
接するとき、弾性スカートは円筒状ケースにスプリング
を介して取り付けられているため、スプリングによって
一定の反撥力で上蓋に圧接し、ジャケット内の気密性を
保持することができる。このため、未加硫ベルトスリー
ブはふくれも生じず、また芯線の劣化も起こらない。し
かも、前記ジャケットは弾性筒状体が上下フレームに装
着されているために、寸法安定性がよく、しかも支持台
に安定して位置することになる。

【００１５】更には、このジャケットを用いると未加硫
ベルトスリーブを成形用モールドの両端部まで嵌挿で
き、しかも弾性スカートを該ベルトスリーブの両端部に
圧接させることで、この部分まで加硫することができ
る。

【００１６】

【実施例】以下、添付図面を参照し、本発明の実施例を
説明する。

【００１７】図１は本発明のベルト加硫装置の縦断面
図、図２はジャケットの縦断面図、そして図３は図２の
Ａ部拡大図である。本発明のベルト加硫装置２０は、高
圧蒸気の導入口２２と排出口２３を有する開閉可能な加
硫缶２１と、同缶中の下方に設置された支持台２４と、
同缶中の上方に位置する上蓋２５との間に置かれたモー
ルド組立体２６から構成されている。

【００１８】上記モールド組立体２６は、内圧導入筒２
７を有する支持台２４の上に設置される成形用モールド
２８と、その外側に一定間隔をおいて同心状に置かれた
ジャケット２９とからなり、上記成形用モールド２８に
は未加硫ベルトスリーブ３０が装着されている。

【００１９】 そして、前記ジャケット２９は図２に示
すように、金属等からなる円筒状ケース３２とその内側
に間隔をおいて設けた弾性筒状体３３を有し、該ケース
３２と弾性筒状体３３との間にある空間部３４は密閉状
に形成されている。即ち、前記弾性筒状体３３は、例え
ば加硫ゴムからなり、その上下端縁に外方向へ拡大する
上下部弾性スカート３５、３６を有している。該弾性ス
カート３５、３６は、この位置に存在する気密性を付与
する円筒状の上下フレーム３７、３８に巻き付いてい
る。特に、弾性スカート３５、３６を上下フレーム３
７、３８に接着させる必要はない。

【００２０】 また前記上フレーム３７は、円筒状ケー
ス３２の先端に固定された支持リング３９にベロフラム
状のスプリング４０からなる弾性部材を介して連結され
ている。上記スプリング４０は上部弾性スカート３５を
上蓋２５に対して一定の反撥力により圧接し、上蓋２５
とのシール効果を高め、またこれを維持している。一
方、前記下フレーム３８は直接円筒状ケース３２に連結
している。従って、本発明のジャケット２９は寸法安定
性がよく、また支持台２４上に安定して位置することが
できる。

【００２１】尚、上記支持リング３９には把持部５２が
装着されているが、これはジャケット２９の加硫缶２１
への出し入れを容易にするためである。

【００２２】更に、前記円筒状ケース３２の壁には空間
部３４へ連通する２つの入気口４１、４１と２つの排出
口４３、４３とが設けられている。入気口４１は円筒状
ケース３２から突出したフランジの先端に位置し、加硫
缶内の高圧蒸気等の圧力媒体を導入する入口になり、ま
た上記排出口４３は入気口４１と同様の形状を有し空間
部３４内の気体及び水分を排出し吸引するための出口に
なっている。

【００２３】そして、加硫缶２１には前記入気口４１、
４１の口を開閉する口開閉機構４２と、前記排出口４３
に連続する移動可能な吸引パイプ４９を有している。即
ち、口開閉機構４２は先端にフランジ４４を有するロッ
ド４５とこれを移動させるシリンダー４８とを有し、こ
のシリンダー４８の作動により上記フランジ４４が入気
口４１に接続、分離して入気口４１を開閉するようにな
っている。

【００２４】一方、吸引パイプ４９はシリンダー５０の
作動によって排出口４３に接続して成形用モールド２８
を出し入れする時にバキュームしたり、また加硫時のジ
ャケット内部の水分を排出する。吸引は通常の真空ポン
プ等によって行なうもので、ここでは図示していない。

【００２５】このように、前記弾性筒状体３３は入気口
４１を口開閉機構４２の作動によって閉鎖し、排出口４
３から空間部３４内の気体を吸引しバキュームすること
によって拡張し、また入気口４１を開放してバキューム
を解除することにより未加硫ベルトスリーブ３０の外周
面に近接し、そして開放された入気口４１から高圧蒸気
等の圧力媒体を導入すれば弾性筒状体３３を未加硫ベル
トスリーブ３０に圧接する。

【００２６】以下に、前記ジャケット２９を用いたベル
ト加硫装置２０により未加硫ベルトスリーブを加硫する
工程を図４〜図７を用いて説明する。

【００２７】まず図４に示すように、ジャケット２９を
加硫缶２０内の支持台２４に設置する。このとき入気口
４１及び排出口４３はいずれも開放されている。

【００２８】次いで、入気口４１を加硫缶２０に設けた
口開閉機構４２のフランジ４４によって閉鎖し、同時に
吸引パイプ４９をシリンダー５０の作動により移動させ
て排出口４３に接続した後、バキュームすることにより
弾性筒状体３３を拡張させて円筒状ケース３２の内壁に
接触させる。これにより、ジャケット２９の内径が大き
くなり、未加硫ベルトスリーブ３０を装着した成形用モ
ールド２８を容易にジャケット２９内へ挿入することが
できる。（図５に示す。）

【００２９】そして、バキュームを解除し、口開閉機構
４２のロッド４５を移動させて入気口４１を開放する
と、弾性筒状体３３が未加硫ベルトスリーブ３０の外周
面に沿ってもとの状態に復元する。（図６に示す。）

【００３０】その後、加硫缶２０の上蓋２５をジャケッ
ト２９に設置すると、加硫缶２９内に外圧蒸気を、そし
て成形用モールド２８内に内圧蒸気を導入して加硫を行
なう。このとき、ジャケットの空間部３４には入気口４
１より外圧蒸気が導入され、未加硫ベルトスリーブ３０
は弾性筒状体３３により押圧される。同時に、吸引パイ
プ４９から水分の排出を行なう。また、弾性スカート３
５は拡張して未加硫ベルトスリーブ３０の先端部を圧接
するために、該ベルトスリーブ３０は全領域に至って確
実に加硫される。（図７に示す。）

【００３１】加硫が完了し、成形用モールド２８を加硫
缶２０から取り出すときには、バキュームによって弾性
筒状体３３を拡張して、ジャケットの内径を大きくすれ
ばよい。

【００３２】このように、本発明のベルト加硫装置によ
ると、弾性筒状体３３をバキュームすることにより円筒
状ケース３２に密接させて実質的にジャケット２９の内
径を大きくすることが出来るために、成形用モールド２
８の支持台２４への設置及び取り出しが容易になること
が判る。しかも、成形するベルトの外周長が多少変化し
ても、前記ジャケット２９を用いることができ、未加硫
ベルトスリーブ３０の両端部も弾性スカート３５の拡張
により確実に加硫され、ゴムスクラップの発生もなくな
る。

【００３３】そして、本発明のベルト加硫装置では多リ
ブベルト、ローエッジベルト、歯付ベルト等のベルトス
リーブ、あるいは複数のラップドベルトも加硫すること
ができる。

【００３４】

【発明の効果】以上のように本発明のベルト加硫装置で
は、加硫缶内に設置されるジャケットとして円筒状ケー
スの内側に間隔をおいて弾性筒状体を嵌挿したものであ
るため、これらの部材の間に形成された空間部内の気体
を吸引して上記弾性筒状体を拡張して前記ジャケットの
内径を実質的に大きくすれば成形用モールドの出し入れ
をスムーズに行なうことができる。しかも、周長の異な
る未加硫ベルトスリーブを加硫する場合でもこのジャケ
ットを適用することができる。

【００３５】更には、前記ベルト加硫装置では弾性筒状
体に設けた弾性スカートが上下フレームに装着され、し
かも一方の上フレームが円筒状ケースにスプリングを介
して取付けられているために、弾性スカートが上蓋に常
時一定の反撥力で圧接して効率よくシールすることがで
きて，未加硫ベルトスリーブの膨れもなく、また芯線の
劣化を起こさずに均質に加硫することが出来る効果があ
る。そして、未加硫ベルトスリーブの両端部も弾性スカ
ートの拡張により圧接されて確実に加硫され、ゴムスク
ラップの発生はなくなる。

【００３６】一方、本発明のジャケットにおいても前述
と同様の効果を有するとともに、加えて弾性スカートが
上下フレームによってその形状が保持されているため、
たとえ弾性スカートが熱劣化してもジャケットの長さ方
向の寸法変化もなくて寸法安定性に富み、加硫缶の支持
台へ安定して位置し、寿命の長いものになる。

【００３７】そして、上記ジャケットの円筒状ケースに
把持部を具備すれば、ロボット等の手段を用いてこれを
容易に加硫缶の支持台へ設置したり、また取り出すこと
も可能になる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るベルト加硫装置の縦断面図であ
る。

【図２】本発明のベルト加硫装置に用いるジャケットの
縦断面図である。

【図３】図２におけるＡ部拡大図である。

【図４】本発明のジャケットを用いた場合の未加硫ベル
トスリーブの加硫工程であって、該ジャケットを加硫缶
の支持台に設置した場合を示す。

【図５】図４に示す工程の次の工程であって、成形モー
ルドをジャケット内に設置する場合を示す。

【図６】図５に示す工程の次の工程であって、ジャケッ
トの弾性筒状体を未加硫ベルトスリーブの外周面に沿っ
てもとの状態に収縮させた場合を示す。

【図７】図６に示す工程の次の工程であって、未加硫ベ
ルトスリーブを加硫する場合を示す。

【図８】従来のベルト加硫装置の縦断面図である。

【符号の説明】

２０ ベルト加硫装置 ２５ 上蓋 ２８ 成形用モールド ２９ ジャケット ３０ 未加硫ベルトスリーブ ３２ 円筒状ケース ３３ 弾性筒状体 ３４ 空間部 ３５ 上部弾性スカート ３６ 下部弾性スカート ３７ 上フレーム ３８ 下フレーム ４１ 入気口 ４２ 口開閉機構 ４３ 排出口 ４９ 吸引パイプ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｂ２９Ｌ 29:00 (56)参考文献 特公 平２−32968（ＪＰ，Ｂ２)

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 成形用モールドの外周面に未加硫ベルト
   スリーブあるいはベルトを装着するとともにその外周面
   に円筒状のジャケットを同心状に嵌装してなるモールド
   組立体を、加硫缶内に設置した支持台と上蓋との間に介
   在したベルト加硫装置において、上記ジャケットとして
   円筒状ケースの内側に弾性筒状体を嵌挿して該ケースと
   弾性筒状体との間に気密性を保持した空間部を形成し、
   上記円筒状ケースに少なくとも１つの入気口と排出口と
   を該空間部へ連通するように設け、これらの入気口と排
   出口とを加硫缶に設けた口開閉機構と吸引パイプにそれ
   ぞれ接続可能にしたことを特徴とするベルト加硫装置。
2. 【請求項２】 加硫缶に設けた口開閉機構と吸引パイプ
   とがシリンダーの作動により移動可能になつている請求
   項１記載のベルト加硫装置。
3. 【請求項３】 未加硫ベルトスリーブあるいはベルトを
   加硫する装置に使用するジャケットであり、円筒状ケー
   スの内側に弾性筒状体を嵌挿して該ケースと弾性筒状体
   との間に空間部を形成し、上記円筒状ケースに該空間部
   へ連通するように少なくとも１つの入気口と排出口とを
   設け、更に上記弾性筒状体の上下端縁に外方向へ拡大す
   る弾性スカートを形成して、これを気密性を付与する円
   筒状上下フレームに装着し、一方のフレームを円筒状ケ
   ースに弾性部材を介して取り付け、他方のフレームを円
   筒状ケースに固着したことを特徴とするベルト加硫装置
   に用いるジャケット。
4. 【請求項４】 円筒状ケースに把持部を装着した請求項
   ３記載のベルト加硫装置に用いるジャケット。