JPH0747803B2 - 耳率の低いアルミニウム合金硬質板の製造方法 - Google Patents

耳率の低いアルミニウム合金硬質板の製造方法

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JPH0747803B2
JPH0747803B2 JP5689392A JP5689392A JPH0747803B2 JP H0747803 B2 JPH0747803 B2 JP H0747803B2 JP 5689392 A JP5689392 A JP 5689392A JP 5689392 A JP5689392 A JP 5689392A JP H0747803 B2 JPH0747803 B2 JP H0747803B2
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伸二 照田
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スカイアルミニウム株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、主として2ピースア
ルミニウム缶の缶胴材、すなわちDI缶胴材として使用
される成形加工用アルミニウム合金の硬質板の製造方法
に関するものであり、特に深絞り耳率が低く、焼付塗装
後の強度が高く、かつ成形性に優れたアルミニウム合金
硬質板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般にDI缶胴材には、DI加工時の深
絞り性およびしごき性が要求されることはもちろん、D
I加工および焼付塗装を行なった後の成形性、すなわち
ネッキング加工性やフランジング加工性なとにも優れて
いることが要求される。このようなDI缶胴材として
は、一般にはAl−Mn−Mg系合金であるJIS 3
004合金のH19材やH39材が使用されている。一
方最近ではDI缶の薄肉化の要求に伴ない、DI缶胴材
としても、より高強度化が望まれるようになっている
が、従来の3004合金缶胴材でも焼付塗装後の耐力で
270N/mm2 以上の強度が得られるようになってい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】DI缶の缶胴の薄肉化
にあたっては、缶胴材が単に高強度を有するばかりでな
く、DI加工時の成形性すなわち深絞り性およびしごき
性がより優れていることが要求され、さらにはDI加工
・焼付塗装後の成形性すなわちネッキング加工性やフラ
ンジング加工性についても、より優れていることが望ま
れる。前述のように従来の3004合金缶胴材でも、薄
肉化のために必要な強度はある程度確保されているが、
成形性の点では未だ不充分であった。
【0004】すなわち、缶胴材の薄肉化に伴なって、深
絞り時のボディにシワが発生しやすくなるとともに、し
ごき加工によってゴーリングが発生しやすくなり、さら
にDI加工後の側壁が薄くなることに起因して、DI加
工・焼付塗装後のネッキング加工時にネック部にシワが
発生しやすくなるとともに、フランジング加工時に割れ
が発生しやすくなる問題がある。
【0005】そのほか、一般にDI加工後のトリミング
量を減少してコストダウンを図るためには、深絞り時の
耳の発生も少ないことが望まれるが、この点でも従来の
3004合金缶胴材は不充分であった。
【0006】この発明は以上の事情を背景としてなされ
たもので、薄肉化を図った場合でも、DI加工時の成形
性と、DI加工・焼付塗装後の成形性が優れ、しかも深
絞りにおける耳率が低く、かつ高強度を有している、D
I缶胴材に最適な成形用アルミニウム合金硬質板を得る
方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】前述のような課題を解決
するべく本発明者等が種々実験・検討を重ねた結果、次
のような新規な知見を得た。
【0008】すなわち、先ず薄肉材のDI加工・焼付塗
装後の成形性、特にフランジング加工時の割れに関して
は、鋳造法として冷却速度の速い方法を適用することが
有利であることを見出した。具体的には、DI加工後の
側壁が100μm程度に薄肉化された場合、従来から缶
胴材として使用されている3004合金を一般的なDC
鋳造法で鋳造すれば、粗大晶出物としてその径が10μ
mを越えるようなものが生じて、側壁部の厚みに対し粗
大晶出物が10%以上を占めるようになり、このような
場合にはその粗大晶出物が従来の厚肉材の場合よりもフ
ランジ成形時の割れの起点となりやすくなってしまう。
これに対し連続鋳造圧延法(薄板連続鋳造法)の如く、
冷却速度の速い鋳造法を適用することによって、晶出物
サイズを微細化して、すべての晶出物サイズを10μm
以下とし、かつさらにその平均粒径を4μm以下とする
ことによって、晶出物がフランジング加工時の割れ発生
の起点となることを防止し得ることを見出した。
【0009】また鋳造後の圧延板に対して、高温長時間
(580〜620℃、6時間以上)の熱処理を施すこと
によって、DI加工時のしごき性を向上させるととも
に、深絞り時のシワの発生やDI加工・焼付塗装後のネ
ッキング加工時のシワの発生を少なくし得ることを見出
した。具体的には、前述のように冷却速度の速い鋳造法
を適用した鋳造を行なった後の圧延板に対して、580
〜620℃での6時間以上の均熱処理を施すことによっ
て、晶出物の形状を球状化させるとともに、粗大化(1
μm以上増径)させて、DI加工時におけるしごき性を
向上させ得ることを見出した。一方、0.5μm以下の
微細析出物の量が多ければ、成形時における転位の動き
がその微細析出物によりピンニングされて、強度は若干
向上するものの、成形性を阻害し、成形時のシワの発生
を招くおそれがある。これに対し前述のような均熱処理
を行なうことによって、0.5μm以下の微細析出物の
量も少なくなって、最終の成形用板の状態で200個/
μm2 以下となり、成形時における材料の流れがスムー
ズとなり、成形時のシワの発生も少なくなることを見出
した。
【0010】さらに、鋳造後に30%以上の冷間圧延を
施してから上述のような均熱処理を行なうことが、前述
のような適切な晶出物の分散状態を容易に得ることが可
能となると同時に、深絞り耳を小さくすることに有効で
あることを見出した。すなわち、鋳造後、30%以上の
冷間圧延を行なってから前述の均熱処理を行なうことに
よって、晶出物の分散が最も適切な状態、すなわち1〜
3μmのものが2000個/0.2mm2 の状態となり、
しかもこのように30%以上の冷間圧延後に均熱処理を
行なうことによって、均熱処理での再結晶が均一に行な
われて、低耳となる結晶方位成分(すなわちキューブ方
位)がその後の工程で発生しやすくなり、深絞りでの耳
率を小さくすることが可能となることを見出した。
【0011】そしてまた、以上のような製法プロセスに
よる効果を最も有効に発揮させ得るような適切な成分組
成を見出し、この発明をなすに至ったのである。
【0012】具体的には、この発明の成形用アルミニウ
ム合金硬質板の製造方法は、Mg0.5〜2.0wt%、
Mn0.5〜1.8wt%、Fe0.1〜1.8wt%、S
i0.05〜0.5wt%を必須合金成分として含み、さ
らに必要に応じてCu0.5wt%以下、Zn0.5wt%
以下、Cr0.3wt%以下のうちの1種または2種以上
を含有し、残部がAlおよび不可避的不純物よりなる合
金を、冷却速度が50℃/sec 以上となるように鋳造
し、その後30%以上の圧延率で冷間圧延した後、58
0〜620℃の範囲内の温度で6時間以上の均熱処理を
施し、さらに30%以上の圧延率で冷間圧延した後、1
℃/sec 以上の昇温速度で380〜600℃の範囲内の
温度に加熱して保持なしもしくは10分以内保持しさら
に1℃/sec 以上の冷却速度で冷却する中間焼鈍を施
し、次いで40%以上の圧延率で冷間圧延を施すことを
特徴とするものである。
【0013】
【作用】先ずこの発明の製法において用いられるアルミ
ニウム合金の成分組成の限定理由を説明する。
【0014】Mg:Mgの添加は、Siとの共存による
MgSiの時効析出あるいはCuとの共存によるAl
−Cu−Mgの時効析出による強度向上が期待できると
ともに、Mgそれ自体の固溶による強度向上も期待で
き、缶胴材として必要な強度を得るに不可欠の元素であ
る。またMgは、冷間圧延時の転位の増殖作用があるか
ら、再結晶核を増加させて再結晶粒を微細化させるにも
有効である。但しMg量が0.5wt%未満では上述の効
果が少なく、一方2.0wt%を越えれば、高強度は容易
に得られるものの、しごき加工時の変形抵抗が大きくな
って成形後の缶の外観を著しく悪化させるから、Mgは
0.5〜2.0wt%の範囲内とした。
【0015】Mn:Mnは固溶によって強度向上に寄与
するが、この発明の場合はむしろFe,Siとの共存下
で生じる晶出化合物が重要である。すなわち、この発明
では冷却速度が速い鋳造法を適用しているが、この場合
1μm程度の微細な晶出物が多くなり、この微細晶出物
は均熱処理により球状化するとともに粗大化(1μm以
上増径)することによって、DI加工のしごき成形時に
おけるゴーリング性を良好とするに寄与する。すなわち
しごき成形においては、潤滑能が不足する場合にゴーリ
ングと称される擦り疵や焼付き等の外観不良を招くこと
があるが、前述のような晶出物によって固体潤滑的な効
果がもたらされ、ゴーリングの発生が少なくなる効果
(ゴーリング性向上)の効果がもたらされる。一般には
2μm以上の晶出物がゴーリング性向上に有効であると
言われているが、この発明の場合、1〜3μmの球状の
晶出物粒子が2000個/0.2mm2 以上あればゴーリ
ング性向上に有効となる。またこのような微細晶出物
は、再結晶組成の微細化や粒子分散硬化による強度向上
にも寄与する。このような晶出化合物の量を確保するた
めに必要なMnの添加量は、Fe量との兼ね合いで決定
するが、Mnが0.5wt%未満では充分な量の晶出化合
物を確保することが困難となり、一方Mn量が1.8wt
%を越えれば巨大晶出物が発生して成形性を害するおそ
れがあるから、Mnの添加量は0.5〜1.8wt%の範
囲内とした。なおMn量は、Fe量との合計量で1〜2
wt%の範囲内とすることが好ましい。
【0016】Fe:FeはMnと同様に、Mn,Siと
の共存下で生じる晶出化合物が重要であって、その効果
もMnの場合と同様であり、またFeはMn系化合物の
晶出を促進する効果もあり、この発明で必要不可欠な元
素である。Fe添加量もMn量との兼ね合いで定まる
が、Fe量が0.1wt%未満ではFe添加による効果が
充分に得られず、一方1.8wt%を越えれば粗大晶出物
が発生して成形性を害するおそれがあるから、Fe量は
0.1〜1.8wt%の範囲内とした。
【0017】Si:SiはMgとの共存によるMg
iの析出による時効硬化や、Siそれ自体の固溶による
強度向上にも寄与するが、それよりもむしろFe系やM
n系の晶出物を生成させるに寄与し、適切な晶出物分布
を得るに必要な元素である。Si量が0.05wt%未満
ではその効果がなく、0.5wt%を越えればその効果も
飽和し、材料を硬くして成形性を害するから、Si量は
0.05〜0.5wt%の範囲内とした。
【0018】以上の各成分のほか、基本的にはAlおよ
び不可避的不純物とすれば良いが、そのほか強度をより
一層向上させるために、0.5wt%以下のCu、0.5
wt%以下のZn、0.3wt%以下のCrのうちの1種ま
たは2種以上を含有していても良い。Cuの添加はAl
−Cu−Mg系の時効析出物による強度向上を、またZ
n,Crの添加はそれぞれ固溶による強度向上を期待す
ることができ、Cuが0.5wt%以下、Znが0.5wt
%以下、Crが0.3wt%以下であればこの発明の効果
を損なうことはない。
【0019】なお通常のアルミニウム合金においては鋳
塊結晶粒微細化のために、Ti、あるいはTiおよびB
を微量添加することがあり、この発明の場合においても
微量のTi、あるいはTiおよびBを含有していても良
い。但し、Tiを添加する場合、0.01wt%未満では
Ti添加の効果が得られず、一方0.2wt%を越えれば
初晶TiAlが晶出して成形性を害するから、Tiは
0.01〜0.2wt%の範囲内とすることが好ましい。
またTiとともにBを添加する場合、Bが1ppm 未満で
はB添加の効果が得られず、一方Bが500ppm を越え
ればTiBの粗大粒子が混入して成形性を害するか
ら、Bは1〜500ppm の範囲内とすることが好まし
い。そのほか、鋳造時の溶湯酸化防止のためにBeを
0.02wt%以下の範囲で添加しても良い。
【0020】次にこの発明の製法における各プロセスの
限定理由を、その作用とともに説明する。
【0021】先ず前述のような成分組成の合金を常法に
従って溶製して、鋳造するが、この鋳造時においては、
連続鋳造圧延法(薄板連続鋳造法)の如く、急速冷却凝
固の鋳造法を用いて、50℃/sec 以上の冷却速度で鋳
造する。このように50℃/sec 以上の冷却速度で鋳造
することによって、1μm程度の微細な晶出化合物が得
られる。このように晶出物を微細にすることによって、
成形性が向上し、特にDI加工後のフランジ成形の際の
割れ発生を防止するに有効となる。なおこの鋳造時にお
いては、鋳造板厚を2〜20mmとすることが好ましい。
2mm未満では最終成品板厚までに鋳造組織を完全に破壊
することが困難となって、最終製品に悪影響を及ぼし、
一方20mmを越える厚い板を50℃/sec 以上の冷却速
度で鋳造することは実際上困難である。
【0022】鋳造後には、30%以上の圧延率で鋳造板
に対し冷間圧延を施し、続いて580〜620℃で6時
間以上の均熱処理を施す。ここで、鋳造後の圧延率が3
0%以上でなければ、均熱処理における再結晶が均一に
行なわれずに再結晶粒が粗大化し、最終製品に悪影響を
及ぼす。またこの発明では、580℃以上の均熱処理に
よって耳率を低くする成分のキューブ方位の再結晶粒が
優先成長し、それが均熱処理後の冷間圧延・中間焼鈍時
のキューブ方位の再結晶核となり、最終的に成形加工時
の耳率の低い製品を得ることが可能となるのであるが、
均熱処理の段階で鋳造組織が残存すればキューブ方位の
再結晶粒が生成されないため、その後の中間焼鈍時でも
キューブ方位の優先成長が認められなくなる。したがっ
てこのような意味からも均熱処理前に30%以上の冷間
圧延を行なっておく必要がある。
【0023】また上記の均熱処理に関し、最終板におい
て0.5μm以下の微細なAl−Mn系析出物が多数存
在すれば、それが転位のピンニングを招いて成形時の材
料の流れを阻害し、成形シワなどの成形不良を招くが、
580℃以上の高温で6時間以上の保持を行なうことに
よって、このようなAl−Mn系の微細な析出物を少な
くして、より適切には200個/μm2 以下とし、成形
時のシワ等の成形不良の発生を防止することができる。
またこの均熱処理は、晶出物を球状化および粗大化(1
μm程度、したがって平均径で2μm程度以上となるよ
うに粗大化)させて、DI加工におけるしごき性を向上
させ、ゴーリングの発生を防止するに寄与する。この効
果を充分に得るためには、1〜3μmの晶出物が200
0個/0.2mm2 以上であることが好ましい。なお均熱
処理の保持温度は高いことが好ましいが、620℃を越
えれば共晶融解が発生してしまう。また均熱処理の保持
時間は6時間以上でなければその効果が得られない。な
お均熱処理の保持時間の上限は特に定めないが、製造効
率などを考慮して決定すれば良い。
【0024】均熱処理後、30%以上の圧延率で冷間圧
延を行なう。この冷間圧延は、次の中間焼鈍で均一に再
結晶させて再結晶粒を微細化させるために、30%以上
の圧延率が必要である。
【0025】冷間圧延後の中間焼鈍において、昇温速度
1℃/sec 以上の急速加熱によって380℃以上まで加
熱することにより、Mg,Si,Cu等の金属元素の固
溶が促進され、最終の焼付塗装処理もしくは最終焼鈍に
よって時効硬化が期待でき、強度向上に有利となる。ま
たこのように高い昇温速度で再結晶温度以上まで加熱す
ることにより、キューブ方位の再結晶粒の優先的生成、
成長が可能となり、耳率の低減に有効となる。ここで、
昇温速度が遅ければ、加熱中に析出する化合物により再
結晶の進行がピンニングされて、キューブ方位の再結晶
粒の優先成長が阻害され、結果的にランダムな方位の再
結晶組織となって、その後の冷間圧延を通じて45°耳
が高くなってしまう。なおこの中間焼鈍における保持時
間は長い方が固溶が進行して強度向上に有利となるが、
10分を越える保持を行なっても保持時間を長くした割
にはその効果の増大が少なく、また急速加熱・急速冷却
に適した現行の連続焼鈍炉では10分を越える保持は困
難となるから、保持時間の上限は10分とした。またこ
の中間焼鈍における加熱温度(到達温度)が600℃以
上となれば、局部的な共晶融解を招くおそれがあるか
ら、600℃以下とした。
【0026】中間焼鈍後には最終の冷間圧延を行なって
缶胴材として必要な強度を得る。この最終の冷間圧延の
圧延率が40%未満では所要の強度が得られない。
【0027】最終冷間圧延の後には、必要に応じて時効
性を高めたり、あるいは焼なましたりする目的で最終焼
鈍を施しても良い。この場合の最終焼鈍としては、10
0〜250℃の温度で30分以上が望ましい。
【0028】なお均熱処理後、最終冷間圧延の前までの
間のいずれかの段階で、表面酸化物を除去するために表
面層除去処理を行なうことが、製品の外観や製造性の点
から好ましい。この表面層除去処理は、機械的に除去す
る方法や、苛性液などによりエッチングする化学的な方
法を適用することができる。
【0029】
【実施例】表1の合金符号Aの合金(従来の3004合
金)について、表2のプロセス番号No.1に示すよう
に、従来法としてDC鋳造し、さらに加熱、熱間圧延、
冷間圧延、中間焼鈍、最終冷間圧延の工程を経て、0.
28mm厚の缶胴材とした。また表1の合金符号Bの合金
について、表2のプロセス番号No.2〜No.6に示すよ
うに、連続鋳造圧延により板厚7mmの鋳造板とし、1次
冷間圧延、均熱処理、2次冷間圧延、中間焼鈍、最終冷
間圧延、最終焼鈍を経て0.28mm厚の缶胴材とした。
ここで、No.2〜No.6のうちの一部のプロセスでは、
1次冷間圧延もしくは均熱処理を省いた。なお表2にお
いて、No.1におけるDC鋳造は、冷却速度が約10℃
/sec であり、またNo.2〜No.6の連続鋳造圧延法で
は、冷却速度が約150℃/sec である。また表2中に
は示していないが、No.2〜No.6の連続鋳造圧延材を
用いたプロセスでは、2次冷間圧延の前に、60℃の1
0%苛性ソーダ液に45分浸漬してエッチングし、水洗
後デスマット処理、さらに水洗、乾燥を行なった。また
表2において、No.4の中間焼鈍のバッチ焼鈍(350
℃×2hr)は、昇温速度、冷却速度ともに約35℃/hr
である。さらに表2におけるNo.1〜No.3,No.5,
No.6の中間焼鈍の連続焼鈍(500℃×0sec )は、
昇温速度、冷却速度ともに約20℃/sec である。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】以上のようにして得られた各缶胴材につい
て、ベーキング(焼付塗装に相当する加熱処理)を行な
わないままの状態、および200℃×20分のオイルバ
ス浸漬によるベーキングを行なった後の状態で、それぞ
れ引張試験を行なったので、その結果を表3に示す。ま
た各缶胴材について、深絞り耳率を調べるとともに、D
I加工時のしごき加工によるゴーリングの発生状況を調
べ、さらにDI加工後のネッキング成形時におけるネッ
ク部のシワ発生状況を調べ、さらにDI加工後のフラン
ジ加工時における口拡げ性を調べた。それらの結果を表
3に併せて示す。
【0033】なおここで深絞り耳率は、ブランク径58
mmとし、径が32mm、肩部曲率が4mmRのポンチを用
い、クリアランス30%の条件で深絞りを行なって、耳
率を調べた。またしごき加工におけるゴーリング発生評
価は、フランジ厚さ160μm、側壁105μmとなる
しごき率でしごき加工を行ない、現行缶胴材として用い
られている3004合金のDC鋳造材(表2のプロセス
番号No.1)のレベルを良好(○印)とし、やや不良を
△印、不良を×印とした。ここで、「やや不良(△
印)」の場合は、ゴーリングは生じたがDI成形自体は
数十缶程度可能である場合を、また「不良(×印)」の
場合は、ゴーリングにより数缶で缶切れが生じてしまっ
た場合をそれぞれ示す。さらにネッキング加工時シワ発
生評価は、口絞り率4%でネッキング加工を行ない、ネ
ック部にシワの発生の全くない状況を○印、若干のシワ
の発生があった状況を△印、全周にわたり数本のシワが
発生した状況を×印で評価した。さらにフランジ加工で
の口拡げ性評価については、図1に示すようにDI加工
後の缶胴1に対して角部の曲率半径Rが17mmのダイス
2を用いて口拡げを行ない、最大口拡げ量(半径増大
量)Pを調べ、そのPの値を表示した。なおネッキング
加工時のシワ発生評価およびフランジ加工での口拡げ性
評価は、いずれもDI加工後の缶胴について200℃×
20分のベーキングを行なってから測定、評価した。
【0034】
【表3】
【0035】以上のところにおいて、No.1の従来例
は、DC鋳造材を用いたものであるが、この場合は、D
I缶の側壁が薄いためにネッキング加工時のシワ感受性
が高まっており、また深絞り耳率は低いものの、強度
(YS)が若干低く、肌荒れが顕著であった。またNo.
2の比較例は、連続鋳造圧延材を用いてはいるが、均熱
処理を行なわなかったものであり、この場合はしごき加
工時のゴーリング性が悪く、またDI加工後の成形性に
も劣っていた。さらにNo.3の比較例は均熱処理を50
0℃の低温で行なったものであり、この場合には深絞り
耳率は向上するが、しごき性、DI加工後の各成形性の
いずれにも劣っていた。またNo.4の比較例は中間焼鈍
に徐熱、徐冷のバッチ焼鈍を適用したものであり、この
場合には深絞り耳率、強度ともに劣り、またDI加工後
の成形性も若干劣っていた。さらにNo.5の比較例は連
続鋳造圧延の後、冷間圧延を行なわずに直ちに均熱処理
を行なったものであり、この場合は深絞り耳率が劣って
いるが、その他の点は現行材と同等かそれ以上に優れて
いた。No.6の発明例は、全ての条件がこの発明の条件
範囲を満たしていたものであり、この場合は深絞り耳率
が優れるほか、全ての面において現行材と同等かそれ以
上に優れていた。
【0036】
【発明の効果】この発明の成形用アルミニウム合金硬質
板の製造方法によれば、適切な成分組成を有するアルミ
ニウム合金について、冷却速度が50℃/sec 以上の急
速冷却の鋳造法を適用して鋳造するとともに、得られた
鋳造板に対して適切な冷間圧延を施してから580℃以
上、6時間以上の高温長時間の均熱処理を施し、さらに
冷間圧延後急速加熱、急速冷却の高温短時間の中間焼鈍
を施し、その後最終冷間圧延を行なうことによって、成
形性、特にDI加工時のしごき性に優れるとともにDI
加工後のフランジ加工、ネッキング加工時の成形性に優
れ、しかも深絞り耳率も低くかつ高強度を有するアルミ
ニウム合金硬質板を得ることができ、したがって特に薄
肉化が要求されるDI缶胴材の硬質アルミニウム合金板
の製造に最適である。
【0037】なおこの発明の製法は、DI缶胴材の製造
に最も有利であるが、その他の成形加工の用途に用いら
れるアルミニウム合金硬質板の製造にも適用できること
は勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例におけるフランジ加工時の口拡げ性評
価のための試験の実施状況を概略的に示す略解図であ
る。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Mg0.5〜2.0wt%、Mn0.5〜
    1.8wt%、Fe0.1〜1.8wt%、Si0.05〜
    0.5wt%を含み、さらに必要に応じてCu0.5wt%
    以下、Zn0.5wt%以下、Cr0.3wt%以下のうち
    の1種または2種以上を含有し、残部がAlおよび不可
    避的不純物よりなる合金を、冷却速度が50℃/sec 以
    上となるように鋳造し、その後30%以上の圧延率で冷
    間圧延した後、580〜620℃の範囲内の温度で6時
    間以上の均熱処理を施し、さらに30%以上の圧延率で
    冷間圧延した後、1℃/sec 以上の昇温速度で380〜
    600℃の範囲内の温度に加熱して保持なしもしくは1
    0分以内保持しさらに1℃/sec 以上の冷却速度で冷却
    する中間焼鈍を施し、次いで40%以上の圧延率で冷間
    圧延を施すことを特徴とする、耳率の低いアルミニウム
    合金硬質板の製造方法。
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