JPH073368A - 耐水素脆化性高Ni基合金およびその製造方法 - Google Patents

耐水素脆化性高Ni基合金およびその製造方法

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JPH073368A
JPH073368A JP5209599A JP20959993A JPH073368A JP H073368 A JPH073368 A JP H073368A JP 5209599 A JP5209599 A JP 5209599A JP 20959993 A JP20959993 A JP 20959993A JP H073368 A JPH073368 A JP H073368A
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Japan
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hydrogen embrittlement
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twinning
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Application number
JP5209599A
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English (en)
Inventor
Yoshiori Miyata
佳織 宮田
Masaaki Igarashi
正晃 五十嵐
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 重量%で、Fe: 2.5〜20%、Cr:10〜27%、
Mo単独またはMoとW複合で: 3.0〜24% (但し複合の場
合はW≦10%) を含有するNi基 (但しNi:60%以下) 合
金組成を有し、かつ、この合金組成が原子%換算で、 24.5%≦(Cr/52+Mo/96+W/184)/(Ni/59+Cr/52+Mo/96+W/18
4+Fe/56)≦35.3% 64.7%≦(Ni/59+Fe/56)/(Ni/59+Cr/52+Mo/96+W/184+Fe/5
6)≦75.5% の条件を満足し、双晶発生頻度 (変形双晶の発生した結
晶粒の割合) が70%以上の組織を有する、耐応力腐食割
れ性に加えて耐水素脆化割れ性にも優れた高Ni基合金。
この合金は、鋳造法または粉末成形法で得た合金素材
を、 300℃以上、規則−不規則変態点未満で10〜500 時
間時効処理を施した後、冷間で5%以下の加工歪を加
え、次いで規則−不規則変態点以上、650 ℃以下で5秒
〜10分間保持し、空冷以上の冷却速度で冷却することに
より製造される。 【効果】 強度および靱性を保持したまま、耐応力腐食
割れ性と共に耐水素脆化性が改善され、250 ℃以下の過
酷な腐食性環境下でも使用可能。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、腐食環境下、特に硫化
水素、二酸化炭素および塩素イオンの1種または2種以
上を含む、250 ℃以下の低温の腐食環境下において、良
好な耐応力腐食割れ性および耐水素割れ性を示す、高強
度、高靱性のNi基合金とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】油井、化学工業および地熱発電で使用さ
れる部材等のように、硫化水素、二酸化炭素および塩素
イオンの1種または2種以上を含有する高圧の環境下で
使用される材料に対しては、高強度、高靱性といった強
度特性とともに、すぐれた耐食性、すなわち耐応力腐食
割れ性および耐水素脆化割れ性が要求される。
【0003】このような用途に使用可能な材料として、
Niを多く含有したNi−Cr−Mo−Feオーステナイト合金が
優れた耐食性を示すことが知られている。この高Ni基合
金の耐食性能は、主にCr、Mo、W含有量の増加によって
向上することが周知で、例えばハステロイ (商品名) の
ように耐応力腐食割れ性および耐水素割れ性の確保の観
点から、有効成分 (Ni、Cr、Mo、W) の範囲を選定し、
さらにCu、Coを添加して耐食性を高めたことを特徴とす
る合金が提案され、実用化されている。
【0004】これら高Ni基合金の強度特性に関して、チ
ュービング、ケーシング、ライナ等の管状部材について
は溶製・成形後の冷間加工によって、また、バルブ、継
手、配管等の冷間加工が施せないような特殊形状を有す
る物については、金属間化合物の析出強化を利用して、
強度増大を図るものが多い。例えば、特開昭60−2653号
公報に記載されているように、合金組成にTiとAlまたは
Nbを添加し、γ' 相あるいはγ" 相を析出させることが
強度改善に有効であることは、良く知られている。
【0005】さらに、通常の冷間加工が適用できない大
型構造材は、一般に鍛造品として製造される。この場
合、偏析による合金の延性や加工性の劣化を避けるた
め、アトマイズ法や超急冷凝固法などを適用して合金粉
末を作り、公知の各種の粉末冶金の手法で粉末成形する
ことが行われている。粉末冶金法は形状の自由度が大き
いため、大型構造材のみならず、特殊形状部材にも適用
される。粉末冶金法では、粉末製造時に合金が急冷を受
けているため、合金中の結晶粒が微細化されている。従
って、この結晶粒の微細化と析出強化とを併用すること
により、高Ni基合金製の大型構造材や特殊形状部材につ
いて強度向上を図ることが可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上述し
た従来の高Ni基合金に下記の問題点があることに気づい
た。上述のような高Ni基合金は、その優れた耐食性か
ら、高濃度の硫化水素、二酸化炭素および塩素イオンの
1種以上を含む苛酷な腐食環境下での使用が要求され
る。ところが冷間加工等により強度増大を図った場合、
室温以上の環境下での使用中に長時間時効を受けると粒
界破壊を伴う水素脆化を起こす場合がある。
【0007】この水素脆化による粒界割れの材料側の要
因として、不純物原子 (P、S等)の粒界偏析と並び、
すべり転位と粒界 (界面) との相互作用による粒界 (界
面)での応力集中が最も有力である。
【0008】前者の不純物元素の粒界偏析については、
悪影響を及ぼす不純物元素の含有量を低減し、粒界強化
に寄与する添加元素を加えることにより、水素脆化によ
る粒界破壊を抑えることが可能である。
【0009】一方、後者のすべり転位と界面との相互作
用による応力集中の観点からは、粒界 (界面) の整合性
と粒界近傍の転位挙動を理解した上で、界面とすべり転
位との相互作用の制御による応力集中の緩和が望まれて
いる。
【0010】例えばハステロイC-276合金 (商品名) に
代表される高Ni基合金の場合、 250〜550 ℃で長時間時
効を受けると、規則化と呼ばれるNi2Cr 型規則相 [Crの
一部がMoで置換されたNi2(Cr、Mo) を含む規則相] への
変態が起こり、粒界破壊を伴う水素脆化が助長されるこ
とが知られている。この点について、粒界性状 (粒界で
の結晶方位差) と水素割れとの関係の結晶学的な検討か
ら、規則化の進行に伴って水素脆化による破壊形態が変
化し、不規則相では一般粒界 (非整合界面) が割れやす
いのに対し、規則化進行後は双晶界面 (整合界面) での
脆化割れが顕著になることが明らかとなっている。この
破壊形態の変化は、規則化による塑性変形挙動の変化
や、粒界での転位の集積や応力集中の変化に起因すると
考えられているものの、粒界 (界面) 性状と塑性変形と
の関係は明らかではない。
【0011】そこで、本発明の目的は、粒界 (界面) 制
御を行うことにより、高強度と優れた耐応力腐食割れ性
を保持しつつ、油井、化学工業および地熱発電環境等の
ような硫化水素、二酸化炭素および塩素イオンの1種ま
たは2種以上含有する 250℃以下の低温の環境下で優れ
た耐水素脆化性を示す高Ni基合金と、鋳造法および粉末
成形法のいずれにも適用可能なその製造方法を提供する
ことである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上述のように、ハステロ
イC-276相当合金では、規則−不規則変態点 (約600
℃)未満での長時間時効によりNi2Cr 型規則相への変態
が起こる。本発明者はこの規則化に伴う塑性変形挙動の
変化について検討した結果、Ni2Cr 型規則相中では、わ
ずかな歪量で双晶変形が誘発されること、こうして微細
な変形双晶が導入されると、一般粒界での応力集中が緩
和され、変形双晶の発生頻度が高いほど耐水素脆化性が
高くなることを究明した。
【0013】また、従来から知られているように、粉末
成形法で得た合金は粒界がファセティング状(階段状)
と呼ばれる特徴的な形状を有している。従って、上記の
規則化後の双晶発生頻度がより高くなるため、一般粒界
での応力緩和がより起こりやすくなると考えられる。
【0014】さらに、微細な変形双晶の導入は結晶粒微
細化と同様の効果を有することから、強度向上の効果も
ある。特に、粉末成形法を適用した場合には、粉末製造
時の結晶粒微細化との相乗効果により、一層の高強度化
が図られることになる。
【0015】但し、一方で、規則相中では塑性変形挙動
の変化のため、一般粒界 (非整合界面) に代わって整合
界面 (双晶界面) での応力集中が高まり、整合界面で割
れやすくなるため、これを防止する必要がある。Ni2Cr
型規則相は、規則相−不規則相変態点(600℃付近) 以上
の温度での焼鈍により、再び不規則相に変態する。従っ
て、規則相にて変形双晶を導入した後、不規則相に逆変
態させることによって、非整合界面と整合界面のいずれ
の界面においても水素脆化割れを抑えることができる。
【0016】以上の知見を基に、Ni、Cr、MoおよびFeの
含有量を限定し、さらに熱処理および時効処理の各条件
を特定することによって合金の規則化を促進した後、変
形双晶を発生させ、その後再び不規則相に逆変態させる
ことにより、粒内に多くの微細双晶を含む、耐水素脆化
に優れた合金の製造が、鋳造法と粉末成形法のいずれに
おいても可能であることを究明し、本発明を完成した。
【0017】ここに、本発明の要旨とするところは、重
量%で、C: 0.001〜0.05%、Si:0.50%以下、Mn:2.
0 %以下、Fe: 2.5〜20%、Cr:10〜27%、Mo単独また
はMoとW複合で: 3.0〜24% (但し複合の場合はW≦10
%)Al:0.30%以下、P:0.010 %以下、S:0.0050%
以下、N:0.050 %以下、所望によりさらに、Ti:0.4
%以下、V:2%以下、Co:2%以下、およびCu:2%
以下の1種または2種以上;Sn:0.05%以下、Sb:0.05
%以下、およびZn:0.1 %以下の1種または2種以上;
ならびに/またはMg:0.1 %以下、Y:0.2 %以下、お
よびCa:0.1 %以下の1種または2種以上を含有し、残
部Ni (但しNi:60%以下) と不可避的不純物、から成る
合金組成を有し、かつ、この合金組成が原子%換算で、
【0018】
【数1】
【0019】
【数2】
【0020】の条件を満足し、双晶発生頻度 (変形双晶
の発生した結晶粒の割合) が70%以上の組織を有する、
耐応力腐食割れ性に加えて耐水素脆化割れ性にも優れた
高Ni基合金である。
【0021】別の面からは、本発明は、上記組成の高Ni
基合金素材を、 300℃以上、規則−不規則変態点未満で
10〜500 時間時効処理を施した後、冷間で5%以下の加
工歪を加え、次いで規則−不規則変態点以上、650 ℃以
下で5秒〜10分間保持し、空冷以上の冷却速度で冷却す
ることからなる、耐応力腐食割れ性に加えて耐水素脆化
割れ性にも優れた高Ni基合金の製造方法である。用いる
高Ni基合金素材は、鋳造法と粉末成形法のいずれの方法
で得たものであってもよく、製造する製品の形状や寸法
に応じて適当に選べばよい。
【0022】本発明によれば、上記の処理条件により粒
内塑性変形挙動と界面性状を制御することによって、硫
化水素、二酸化炭素、および塩素イオンの1種または2
種以上を含有する環境下でも耐応力腐食割れ性および耐
水素割れ性に優れた高Ni基合金が製造可能となる。
【0023】
【作用】次に、本発明において合金組成および処理条件
を上述のように限定した理由について詳しく説明する。
なお、本明細書において、%は特にことわりがない限り
重量%である。
【0024】(1) 合金組成 C:Cは粒界に偏析するH原子との位置競合機構により
水素の粒界偏析を抑え、水素脆化による粒界割れを抑制
する作用がある。本合金では、特に0.001 %以上の添加
により耐水素割れ性が著しく向上する。しかし、0.05%
を超える多量添加は粒界応力腐食割れを助長するため、
その範囲を0.001 %以上、0.05%以下とした。好ましく
は 0.010〜0.035 %である。
【0025】Si:Siは脱酸成分として必要な成分であ
る。また、高Ni基合金の積層欠陥エネルギーを低下させ
る作用があり、変形双晶の発生を助長するのに有効な成
分である。しかし、その含有量が0.50%を超えると、延
性 (従って、熱間加工性) が低下するようになることか
ら、その上限値を0.50%とする。好ましくは0.05%以下
である。
【0026】Mn:Mnも、Siと同様に、脱酸作用を有し、
高Ni基合金の積層欠陥エネルギーを低下させる。しか
し、2.0 %を超えるとその効果は飽和するため、Mnの上
限を高めの2.0 %と定めた。好ましくは1.0 %以下であ
る。
【0027】Fe:Feは、Ni添加量とのバランスにより、N
i2(Cr,Mo)規則相への変態を促進するために適当量必要
である。本発明の合金においては、規則相のNiサイトが
Feで置換されることにより規則相への変態が促進するた
め、わずかな歪量で双晶変形が誘発され、耐水素割れ性
が効果的に改善される。ただしFeの含有量が2.5 %未満
または20%超では、規則化の進行が遅いので、その範囲
を 2.5〜20%とする。好ましくは 5.0〜15%である。
【0028】Cr:Crは、Moとともに、Ni2(Cr,Mo)規則相
の形成に寄与するので、前述の式(1) を満たす、即ち、
原子%換算で 24.5%≦(Cr/52+Mo/96+W/184)/(Ni/59+Cr/
52+Mo/96+W/184+Fe/56) ≦35.3% を満足する必要があ
る。また、耐食性の面から10%以上必要であるが、27%
を超えると熱間加工性が低下し、さらに延性、靱性、耐
食性にとって好ましくない金属間化合物が生成しやすく
なるので、Crは10〜27%の範囲で、かつ式(1) を満たす
量とする。
【0029】Mo、W:Moは、Crとの共存によって特に耐
孔食性を向上させる。この効果は、3.0 %以上、より好
ましくは5.0 %以上のMoの添加によって顕著となるが、
24%を超えて添加すると、Ni2(Cr,Mo)形成されにくくな
り、耐食性に対して好ましくないので、その範囲を 3.0
〜24%とする。
【0030】WもMoと同様の作用を示すため、Mo量の一
部をWで置換してもよいが、10%を超えてWを添加する
と、Moと同様に上述のような金属間化合物が生成しやす
くなることから、Wは10%以下に制限する。好ましく
は、Mo単独またはMoとWの合計量が 4.0〜20%、Wの上
限は8%である。
【0031】Al:AlはNi基合金の脱酸剤として最も有効
であり、添加量の増加とともに脱酸効果は向上するが、
0.30%を超えるとその効果が飽和するため0.30%以下と
する。
【0032】P、S:不可避不純物のP、Sは、粒界偏
析により熱間加工性を低下させ、耐食性も劣化するよう
になるため、P≦0.010 %、S≦0.0050%に制限する。
【0033】N:Nは介在物量を増加させ、材料特性の
異方性の要因となるため、N≦0.050 %、好ましくはN
≦0.010 %とする。
【0034】Ni:本発明が対象とする合金はNi基合金で
あって、オーステナイト母相から規則変態したNi2(Cr,M
o)規則相の出現により強度特性が向上することと、この
規則相に一定以下の歪を加えて変形双晶を導入し、一般
粒界への応力集中を緩和することが基本となっている。
この規則相の形成は、経済的理由から、例えば500 時間
以内の時効処理中に起こることが好ましい。従って、時
効処理によるNi2(Cr,Mo)規則相の形成が促進されるよう
に、Niの添加量をCr、MoおよびFeの添加量とバランスさ
せることが必要となる。
【0035】FeはNiと置換すると考えられるので、規則
相を安定に形成させるには、化学量論的組成の (Ni+F
e):(Cr, Mo)=2:1に近い組成とすることが有利であ
る。そのために、前記の式(2) 、即ち、原子%で 64.7%
≦(Ni/59+Fe/56)/(Ni/59+Cr/52+Mo/96+W/184+Fe/56) ≦
75.5% を満たす必要がある。ただし、Ni含有量が60%を
超えると水素脆化割れを起こし易くなることから、Ni量
の上限値を60%とする。
【0036】以上に説明した金属成分は本発明にかかる
合金を構成する必須元素である。以上の成分のほかに、
本発明の合金はさらに次に説明する成分を任意添加元素
として含有していてもよい。
【0037】Ti、V、Co、Cu:Ti、V、Co、Cuはいずれ
も高Ni基合金の主要な元素であるNi、Cr、Mo、Feと置換
固溶して積層欠陥エネルギーを低下させ、変形双晶誘発
に寄与する元素であるので、必要に応じて添加すること
ができる。
【0038】ただし、Tiが0.4 %を超えるとNi3Ti とし
て析出し、耐食性を劣化させるため、Tiの上限は0.4 %
とする。Vが2%を超えると靱性が低下するため、Vの
上限は2%とする。また、CoおよびCuの添加効果は、そ
れぞれ2%を超えると飽和するため、CoとCuの上限はそ
れぞれ2%とする。
【0039】Sn、Sb、Zn:Sn、Sb、ZnもいずれもNi基合
金の主としてオーステナイトの八面***置に侵入して積
層欠陥エネルギーを低下させ、変形双晶誘発に寄与する
元素であるので、必要により添加することができる。そ
の場合、Sn:0.05%、Sb:0.05%、Zn:0.1 %を超える
と、加工性または耐食性が劣化する。
【0040】Mg、Y、Ca:Mg、Y、Caは、いずれも微量
添加により熱間加工性を向上させるので、必要により本
発明の合金に添加してもよい。その場合、Mg:0.1 %、
Y:0.2 %、Ca:0.1 %の各上限を超えると、逆に低融
点化合物を生成しやすくなり加工性が低下する。
【0041】(2) 双晶発生頻度 双晶発生頻度とは、全結晶粒のうち変形双晶が発生した
結晶粒の割合 (%) を意味する。この双晶発生頻度は、
結晶粒に歪みを加えた場合、結晶表面にすべり線が生じ
るが、その中でも双晶変形を伴うすべり線は特徴的な形
態を有するので、結晶粒がそれほど微細でなければ、光
学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で容易に判別可能である。
超微細粒の場合は、透過型電子顕微鏡の観察により、容
易に判断でき、観察した領域に含まれる結晶粒の総数(N
o)と変形双晶が認められる結晶粒の総数(N) とをカウン
トすることにより求めることができる。
【0042】前述したように、本発明の高Ni基合金は、
Ni2(Cr,Mo)規則相に歪を加えて導入した変形双晶が一般
粒界での応力集中を緩和し、水素割れを防ぐのに有効で
あるとの知見に基づくものである。この作用による耐水
素割れの防止を十分に確保するには、全結晶粒の少なく
とも70%に変形双晶が発生している (即ち、双晶発生頻
度70%以上) 必要がある。好ましくは、双晶発生頻度は
90%以上、特に好ましくは100 %である。
【0043】双晶発生頻度は、時効処理で形成されるNi
2(Cr,Mo)規則相による規則化の程度(即ち、規則度)に
依存する。後述するように、時効処理で規則度40%以上
となるように規則相を形成すれば、その後の加工時に加
えられる変形で導入される変形双晶の発生頻度を70%以
上とすることができる。
【0044】(3) 高Ni基合金素材の調製 上記(1) に述べた合金組成を有する高Ni基合金素材の調
製は、鋳造法と粉末成形法のいずれでも行うことができ
る。鋳造法の場合には、例えば、各成分元素の金属およ
び/または母合金を所望の化学組成となる割合で混合
し、真空溶解法 (例、VAR法、VIM法、ESR法)
などの適当な溶解方法で溶解させ、次いで得られた高Ni
基合金の溶湯を、例えばインゴットに鋳造し、必要によ
り適当な熱間加工 (例、鍛造、圧延) などにより所望の
形状を付与することにより、高Ni基合金素材を得ること
ができる。鋳造法は、管材、板材などの比較的単純な形
状の製品の製造に適している。
【0045】大型あるいは複雑形状の製品を製造する場
合には、凝固時のマクロ偏析が防止され、形状の自由度
が大きい粉末成形法が適している。この場合も、まず上
記と同様に高Ni基合金の溶湯を調製し、この溶湯からア
トマイズ法、超急冷凝固法等を利用して合金粉末を作製
し、粉末成形を行う。この粉末成形法は、例えば、次の
いずれかの方法により行うことができ、製品形状や寸法
に応じて適当な方法を選択すればよい。
【0046】成形・加熱により焼結合金とした後、熱
間加工して所望の形状を付与する、 所望の形状に成形した後、通常の固溶化処理で所望結
晶粒径に成長させる、 熱間等方圧プレスを行った後、必要に応じ固溶化処理
を行う、 熱間押出しを行った後、必要に応じ固溶化処理を行
う。
【0047】本発明方法によれば、このようにして調製
した高Ni基合金素材に時効処理、冷間加工、および逆変
態熱処理を行うことにより、上記(2) に述べた双晶発生
頻度を有する、耐水素脆化割れ性が改善された高Ni基合
金が製造される。
【0048】なお、後述するように、冷間加工により加
えられる歪量は5%以下に制限されるので、使用する高
Ni基合金素材には、冷間加工工程で加えられる変形歪に
より目的とする最終製品の形状が得られるように、予め
最終製品に近い形状を付与しておく。
【0049】(4) 時効処理 本発明の高Ni基合金は、オーステナイト相から規則変態
したNi2(Cr,Mo)規則相に変形を加えて導入した微小双晶
を結晶粒内に多数含むという特徴を有する。規則相に変
態させるために、使用する高Ni基合金素材をまず規則−
不規則変態点より低温で時効処理をする。変形により70
%以上の頻度で変形双晶を発生させるためには、時効処
理後の規則度が40%以上であれば十分であるが、時効温
度が300℃未満または規則−不規則変態点以上、時効時
間が10時間未満では、規則度が不十分、または規則化せ
ず、双晶発生に寄与しない。時効時間の上限は特に設定
する必要はないが、経済的理由から上限を500 時間とし
た。
【0050】(5) 加工 変形双晶発生 (双晶変形) のためには、冷間加工による
若干の変形歪が必要である。しかし、変形の歪量が5%
を超えると転位密度が上がり、次の逆変態熱処理時に、
転位の再配列による延性の低下が問題となる。そこで、
加工工程での変形歪量は5%以下に制限した。歪量の下
限は、変形により70%以上の頻度で変形双晶を発生させ
ることができる限り特に制限されない。例えば、1%程
度の歪量でも70%以上の結晶粒に変形双晶を導入でき
る。
【0051】この変形は、引張変形、圧縮変形のいずれ
でもよい。加工温度は普通には常温であるが、冷間、即
ち、規則−不規則変態点より低温であれば温度は制限さ
れない。合金素材がバルブ、継手などの冷間加工が難し
い形状の場合であっても、5%以下のわずかな変形歪
は、例えばショットピーニング加工などの手段により付
与することができる。
【0052】(6) 逆変態熱処理 規則相中での整合界面での水素脆化割れを回避するた
め、加工によって変形双晶を導入した後、不規則相に逆
変態させる。Ni2(Cr,Mo)の規則−不規則変態点は550〜6
50 ℃の範囲内にあるので、この範囲で短時間保持する
ことにより、規則相は消滅する。具体的な温度は、その
合金系の規則−不規則変態点より高温となるように選択
する。保持時間は、逆変態を十分に生じさせるには5秒
以上必要であるが、長くなりすぎると脆化相が析出す
る。従って、脆化相析出を抑えるため、保持時間の上限
は10分とし、好ましくは1分以内とする。また冷却速度
は空冷以上とする。
【0053】かくして、本発明方法によれば、高Ni基合
金に微小双晶を導入することにより、鋳造した高Ni基合
金については0.2 %耐力≧70 kgf/mm2、伸び≧25%、粉
末成形した高Ni基合金については0.2 %耐力≧100 kgf/
mm2 、伸び≧20%という優れた機械的性質を保持しつ
つ、耐食性、つまり応力腐食割れと水素脆性に対する抵
抗性が非常に優れた高Ni基合金製品を得ることができ
る。
【0054】
【実施例】
(実施例1)表1に化学組成を示すNo.1〜55の各高Ni基
合金素材を、真空溶解 (VAR法)により得た合金溶湯
をインゴット (直径150 ×高さ310 mm) に鋳造した後、
熱間鍛造および熱間圧延によって板状 (厚さ10mm×幅10
0mm ×長さ200mm)に形状付与することにより作製した。
この板状の合金素材に、本発明方法に従って、大気雰囲
気炉内で所定の時効処理を施した後、常温での冷間引抜
き加工により所定量の変形歪を与えて双晶変形を生じさ
せ、次いで規則−不規則変態点以上の所定温度に30秒間
加熱して逆変態させることにより、本発明の高Ni基合金
を得た。これらの合金素材の処理条件を表2に示す。
【0055】規則−不規則変態点は、電気抵抗値の温度
依存性を測定することにより求めた。即ち、所定の規則
化処理を施した合金の電気抵抗値を測定しながら室温付
近から昇温していくと電気抵抗値が急激に変化する。こ
の時の温度が規則−不規則変態点であるので、この温度
を測定し、表2に示した。なお、こうして求めた規則−
不規則変態点は、昇温速度により±10℃程度変動する。
本実施例では、昇温速度を100 ℃/minとした。
【0056】比較のために、上記合金素材の一部につい
て、上記処理を表2に示す本発明の範囲外を含む条件で
実施し、比較用の合金を得た。また、化学組成が本発明
の範囲外であるNo. 56〜69の各高Ni基合金素材につい
て、表2に示す本発明の範囲内の条件で処理することに
よっても、比較用の合金を得た。
【0057】得られた各高Ni基合金の双晶発生頻度と耐
水素脆化感受性を次のようにして測定した。 双晶発生頻度:時効処理後に加工歪を加えて双晶変形を
誘発させた状態の各合金から採取した試験片の表面を硫
酸とメチルアルコールの混合溶液中で電解研磨して鏡面
仕上げし、その表面を走査電子顕微鏡を用いて反射電子
像の観察を行い、結晶粒の総数(No)と双晶の発生した結
晶粒の数(N) とをカウントして(N/No)×100 %で双晶の
発生頻度を求めた。なお、バラツキを迎えるために総数
100 個以上の結晶粒を対象に観察した。また、表面の一
部から薄膜試料を採取して透過電子顕微鏡観察を行った
結果、双晶の結晶方位関係を有することが確認された。
さらに、その後に逆変態点を超える温度で保持した後で
再度組織観察を行い、双晶発生頻度に変化のないことを
確認した。
【0058】耐水素脆化感受性:逆変態熱処理後に得た
各合金の供試材から直径2.54mm×ゲージ長25.4mmの引張
試験片を採取し、3% H2SO4水溶液中、温度25℃、歪速度
1×10-6/secの条件下で陰極チャージを行いながら水素
発生下に引張試験を実施した。同じ歪速度での引張試験
を室温の大気中でも実施した。試験結果は、水素脆化感
受性 (陰極チャージ引張の破断伸び/大気中での引張の
破断伸びの比) と陰極チャージ引張5%変形後の表面割
れの有無で表示した。
【0059】これらの測定結果を、大気中引張試験での
0.2%耐力および伸びの測定値とともに、表2に併せて
示す。
【0060】
【表1−1】
【0061】
【表1−2】
【0062】
【表1−3】
【0063】
【表2−1】
【0064】
【表2−2】
【0065】
【表2−3】
【0066】表2に示したように、本発明合金はいずれ
も、全ての結晶粒に双晶を含んでいた (即ち、双晶発生
頻度100 %) 。そのため、すべての本発明合金が、室温
での大気中0.2 %耐力70 kgf/mm2以上、伸び25%以上と
いう望ましい強度および延性の水準を維持していた。同
時に、耐食性に関しても、耐水素脆化感受性は0.75以上
と高く、陰極チャージ引張5%変形後に割れを生じなか
った。これに対し、比較例の合金はいずれも強度と耐食
性のいずれかが良好ではなかった。
【0067】図1〜4に、合金素材を鋳造法により作製
した実施例1の高Ni基合金について、各種温度での時効
処理時間が、時効処理後の規則度、加工後の双晶発生頻
度、および逆変態後の合金の耐水素脆化感受性に及ぼす
影響を示す。具体的には、図1は合金素材No.1について
温度400 ℃で、図2は合金素材No.2について温度200℃
で、また図3は合金素材No.32 について温度650 ℃でそ
れぞれ時効処理を行った場合の結果である。規則度は規
則合金中の原子の規則的配列の度合を示すパラメータで
あり、X線回折パターンでの規則格子反射強度を完全規
則合金での対応する反射強度と比較することにより求め
た。
【0068】図1に示すように、時効処理を本発明の範
囲内の温度で行った場合には、時効時間10分以上で規則
度が40%以上となり、加工歪の付与によって双晶発生頻
度が70%以上となって、逆変態後に得られた本発明合金
の耐水素脆化感受性は著しく改善された。これに対し
て、図2に示すにように、時効温度が200 ℃と低いと、
10000 時間の時効でも規則度が40%に達せず、従って、
双晶発生頻度が低く、耐水素脆化感受性の改善は不十分
であった。また、図3のように時効温度が高すぎると、
時効で規則化が起こらないため、双晶が導入できず、耐
水素脆化感受性も全く改善されなかった。
【0069】図4に、合金素材No.36 について加工で加
えた変形歪量を変化させ、変形歪量が加工後の転位密度
(変形双晶誘起前) および双晶発生頻度と逆変態後の耐
水素脆化感受性に及ぼす影響を示す。転位密度は透過電
子顕微鏡で転位を観察し、単位体積当たりの転位の長さ
を測定することにより算出した。なお、変形双晶が発生
すると転位密度は変化する。この図からわかるように、
1%を下回るごくわずかな変形歪量で70%以上の結晶粒
に双晶が発生し、耐水素脆化感受性が著しく改善され
た。しかし、変形歪量が5%を超えると、転位密度が高
くなりすぎ、その後の逆変態の際の熱処理により転移の
再配列が生じて脆化するため、延性が低下し、双晶発生
頻度は高くても、耐水素脆化感受性は低下した。
【0070】(実施例2)実施例1と同様の真空溶解法
により溶製した、表1に示した合金素材No.1〜55と同じ
化学組成の合金溶湯からArガスアトマイズ法により平
均粒径 150μmの粉末を作製した。この合金粉末を軟鋼
カプセルに封入して真空脱気した後、押出し比10の熱間
押出しにより円柱状 (直径30mm×高さ30mm) に加工し、
それぞれ表1の対応する番号と同一組成の高Ni基合金素
材No. 1'〜55' を作製した。
【0071】その後、カプセルを除去し、本発明方法に
従って、大気雰囲気炉内で所定の時効処理を施した後、
常温での圧縮変形により所定量の変形歪を加え、ついで
規則−不規則変態点以上の所定温度に30秒間加熱して逆
変態させることによって本発明の高Ni基合金を得た。こ
れらの合金素材の処理条件を表3に示す。
【0072】比較のために、上記合金素材の一部につい
て、上記処理を表3に示す本発明の範囲外を含む条件で
実施して、比較用の合金を得た。また、表1に合金素材
No.56〜69として示した本発明の範囲外の化学組成につ
いても、上記と同様に粉末成形により、それぞれこれら
と同一組成の合金素材No.56'〜69' を作製した後、表3
に示す本発明の範囲内の条件で処理することにより、比
較用の合金を得た。
【0073】得られた各合金の規則−不規則変態点は実
施例1と同様の方法により測定し、双晶発生頻度と耐水
素脆化感受性は次のようにして測定した。 双晶発生頻度:時効処理後に加工歪を加えて双晶変形を
誘発させた状態の各合金の表面の一部から薄膜試料を採
取し、この試料について透過電子顕微鏡を用いて粒内組
織の観察を行い、実施例1と同様、結晶粒の総数(No)と
双晶の発生した結晶粒の数(N) から(N/No)×100 %によ
り双晶の発生頻度を求めた。なお、バラツキを迎えるた
め、総数30個以上の結晶粒を対象に観察した。さらに、
その後に逆変態点を超える温度で保持した後、再度組織
観察を行って、双晶発生頻度に変化のないことを確認し
た。
【0074】耐水素脆化感受性:実施例1と同様に試験
を行ったが、引張試験庁のゲージ長を12mmに、歪速度を
1×10-5/secにそれぞれ変更した。試験結果は、水素脆
化感受性 (陰極チャージ引張の破断伸び/大気中での引
張の破断伸びの比) と陰極チャージ引張3.5 %変形後の
表面割れの有無で表示した。
【0075】これらの測定結果を、大気中引張試験での
0.2%耐力および伸びの測定値とともに、表3に併せて
示す。
【0076】
【表3−1】
【0077】
【表3−2】
【0078】
【表3−3】
【0079】表3に示したように、本発明の粉末形成高
Ni基合金はいずれも、全ての結晶粒に双晶を含み、大気
中(25 ℃) での0.2 %耐力が100 kgf/mm2 、伸びが20%
以上と望ましい強度及び延性の水準を維持していた。即
ち、鋳造法に比べると、粉末成形法で合金素材を作製し
た場合には、強度が一層高くなり、延性はいくらか低下
した。同時に、耐食性に関しても、耐水素脆化感受性が
0.6 以上と高く、陰極チャージ引張3.5 %変形後に割れ
を生じなかった。これに対し、比較例の合金はいずれ
も、強度と耐食性のいずれかが良好ではなかった。
【0080】図5〜図7に、合金素材を粉末成形法で作
製した実施例2の高Ni基合金について、各種温度での時
効処理時間が、時効処理後の規則度、加工後の双晶発生
頻度および逆変態後の合金の耐水素脆化感受性に及ぼす
影響を示す。具体的には、図5は合金素材No.1' につい
て温度500 ℃で時効処理を行い、次いで2 %の塑性変形
を与え双晶変形を誘発させた後、逆変態を施した場合、
図6は合金素材No.1'について温度500 ℃で時効処理を
行い、次いで2 %の塑性変形を与えた後、逆変態を施さ
なかった場合、図7は合金素材No.2' について温度200
℃で時効処理を行い、次いで2%の塑性変形を与えた
後、逆変態を施した場合の結果である。規則度は実施例
1と同様にして求めた.図5に示すように、時効処理を
本発明の範囲内の温度で行った場合には、時効時間が10
時間以上で規則度が40%以上、且つ加工歪の付与によっ
て双晶発生頻度が70%以上となり、逆変態後に得られた
本発明合金の耐水素脆化感受性は著しく改善された。こ
れに対し、図6に示すように、本発明の範囲内の温度で
時効処理を行い、加工歪の付与によって双晶発生を促し
ても、逆変態を施さなかった場合には、時効時間の増大
とともに規則度が50%を越えると、整合界面での破壊に
よる水素脆化が顕著となる。また、図7のように、時効
温度が低すぎると、時効で規則化が起こらないため、双
晶が導入できず、耐水素脆化感受性も全く改善されなか
った。
【0081】図8に、合金素材No.36'について、加工で
加える変形歪量を変化させ、変形歪量が加工後の延性
(伸び) と逆変態後の耐水素脆化感受性に及ぼす影響を
示す。合金素材を粉末成形法で作製した場合にも、これ
を鋳造法で作製した実施例1とと同様に、約1%という
極くわずかな変形歪量で70%以上の結晶粒に変形双晶が
発生し、耐水素脆化感受性が著しく改善された。しか
し、変形歪量が5%を越えると、実施例1と同様に、延
性が低下し、双晶発生頻度が高くても、耐水素脆化感受
性は低下した。
【0082】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の高Ni基
合金は、合金素材を鋳造法と粉末成形法のいずれの方法
で作製した場合にも、強度および靱性を保持したまま、
耐応力腐食割れ性と共に耐水素脆化性が著しく改善され
るので、これらの特性が要求される苛酷な環境下での石
油および天然ガス採掘に用いられる油井管として、さら
に地熱井管として使用した場合に極めて優れた性能を発
揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋳造法で作製した高Ni基合金素材を400 ℃で時
効処理した場合の、時効時間が時効処理後の規則度、加
工後の双晶発生頻度、および逆変態後の合金の耐水素脆
化感受性に及ぼす影響を示す図である。
【図2】時効処理温度が200 ℃である場合の図1と同様
の図である。
【図3】時効処理温度が650 ℃である場合の図1と同様
の図である。
【図4】合金素材を鋳造法で作製した場合に、変形歪量
が加工後の転位密度および双晶発生頻度と逆変態後の耐
水素脆化感受性に及ぼす影響を示す図である。
【図5】粉末成形法で作製した高Ni基合金素材を500 ℃
での時効処理した場合の、時効時間が時効処理後の規則
度、加工後の双晶発生頻度、及び逆変態後の合金の耐水
素脆化感受性に及ぼす影響を示す図である。
【図6】逆変態処理を施さなかった場合の、図5と同様
の図である。
【図7】時効処理温度が200 ℃である場合の図5と同様
の図である。
【図8】合金素材を粉末成形法で作製した場合の図4と
同様の図である。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C: 0.001〜0.05%、Si:0.50%以下、Mn:2.0 %以
    下、 Fe: 2.5〜20%、Cr:10〜27%、 Mo単独またはMoとW複合で: 3.0〜24% (但し複合の場
    合はW≦10%) Al:0.30%以下、P:0.010 %以下、 S:0.0050%以下、N:0.050 %以下、 残部Ni (但しNi:60%以下) と不可避的不純物、から成
    る合金組成を有し、かつ、この合金組成が原子%換算
    で、 24.5%≦(Cr/52+Mo/96+W/184)/(Ni/59+Cr/52+Mo/96+W/18
    4+Fe/56)≦35.3% 64.7%≦(Ni/59+Fe/56)/(Ni/59+Cr/52+Mo/96+W/184+Fe/5
    6)≦75.5% の条件を満足し、双晶発生頻度が70%以上の組織を有す
    る、耐応力腐食割れ性に加えて耐水素脆化割れ性にも優
    れた高Ni基合金。
  2. 【請求項2】 前記合金組成がさらに、Ti:0.4 %以
    下、V:2%以下、Co:2%以下、およびCu:2%以下
    の1種または2種以上を含有する、請求項1記載の高Ni
    基合金。
  3. 【請求項3】 前記合金組成がさらに、Sn:0.05%以
    下、Sb:0.05%以下、およびZn:0.1 %以下の1種また
    は2種以上を含有する、請求項1または2記載の高Ni基
    合金。
  4. 【請求項4】 前記合金組成がさらに、Mg:0.1 %以
    下、Y:0.2 %以下、およびCa:0.1 %以下の1種また
    は2種以上を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載
    の高Ni基合金。
  5. 【請求項5】 重量%で、 C: 0.001〜0.05%、Si:0.50%以下、Mn:2.0 %以
    下、 Fe: 2.5〜20%、Cr:10〜27% Mo単独またはMoとW複合で: 3.0〜24% (但しの場合は
    W≦10%) Al:0.30%以下、P:0.010 %以下、 S:0.0050%以下、N:0.050 %以下、 残部Ni (但しNi:60%以下) と不可避的不純物、 から成る合金組成を有し、かつ、この合金組成が原子%
    換算で、 24.5%≦(Cr/52+Mo/96+W/184)/(Ni/59+Cr/52+Mo/96+W/18
    4+Fe/56)≦35.3% 64.7%≦(Ni/59+Fe/56)/(Ni/59+Cr/52+Mo/96+W/184+Fe/5
    6) ≦75.5% の条件を満足する高Ni基合金素材を、 300℃以上、規則
    −不規則変態点未満で10〜500 時間時効処理を施した
    後、冷間で5%以下の加工歪を加え、次いで規則−不規
    則変態点以上、650 ℃以下で5秒〜10分間保持し、空冷
    以上の冷却速度で冷却することからなる、耐応力腐食割
    れ性に加えて耐水素脆化割れ性にも優れた高Ni基合金の
    製造方法。
  6. 【請求項6】 前記合金組成がさらに、Ti:0.4 %以
    下、V:2%以下、Co:2%以下、およびCu:2%以下
    の1種または2種以上を含有する、請求項5記載の高Ni
    基合金の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記合金組成がさらに、Sn:0.05%以
    下、Sb:0.05%以下、およびZn:0.1 %以下の1種また
    は2種以上を含有する、請求項5または6記載の高Ni基
    合金の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記合金組成がさらに、Mg:0.1 %以
    下、Y:0.2 %以下、およびCa:0.1 %以下の1種また
    は2種以上を含有する、請求項5〜7のいずれかに記載
    の高Ni基合金の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記高Ni基合金素材が鋳造法または粉末
    成形法により得られたものである、請求項5〜8のいず
    れかに記載の高Ni基合金の製造方法。
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