JPH072967Y2 - 油圧式バルブラッシュアジャスタ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、油圧式バルブラッシュアジャスタに関し、更
に詳細には、貯油量が大きく且つ耐摩耗性に優れた油圧
式バルブラッシュアジャスタに関する。

（従来の技術） 油圧式バルブラッシュアジャスタのプランジャ内部に
は、油を貯えるリザーバ室が設けられ、エンジン始動時
のラッシュアジャスタに全く給油されない状態での高圧
室のオイル消費に備えている。しかしながら、ラッシュ
アジャスタの寸法が設計上短く制限される場合、ラッシ
ュアジャスタを傾けて使用するため油が外部へ漏れ出し
てしまうような場合には、実質上の貯油空間が狭められ
てしまうという問題があった。この問題を回避する手段
として、上部プランジャと下部プランジャとからなるプ
ランジャ内部に円筒状の仕切部材を配設する方法が知ら
れている。

一般に、バルブラッシュアジャスタのプランジャは、カ
ムの動作に連動してボディに対して激しく上下に摺動す
る。従って、安価な炭素鋼を素材として用い、このよう
な激しい摩擦環境にあるプランジャを製造するには、焼
入れ、浸炭焼入焼戻し等の表面硬化処理が必須である。

第５図に、従来の油圧式バルブラッシュアジャスタの一
例の構成を示す。図示のラッシュアジャスタでは、プラ
ンジャ12がピボット部材12aとシート部材12bとからなっ
ている。ピボット部材12aの内部には全体的に円筒状の
仕切部材21が配設され、その下端部の外周がピボット部
材12aの内周に密接係合するように締まり嵌めによって
嵌入されている。ピボット部材12aの下端部とシート部
材12bの上端部は、溶接によって接合されている。

（考案が解決しようとする課題） ボディとの激しい摩耗に備え、プランジャを構成するピ
ボット部材12aおよびシート部材12bには、浸炭焼入焼戻
し等によって予め表面硬化処理が施されている。従っ
て、両部材の溶接される部分の表面硬化層を削り落と
し、ピボット部材12aの内周に仕切部材21を締まり嵌め
によって嵌入し、プロジェクション溶接して接合した
後、ボディ11内へ組入れなければならない。このよう
に、プランジャを構成する２つの部材が表面硬化処理後
に溶接によって接合されるため、溶接部31の近傍部分33
の表面硬化が低下し、残留応力が発生して摩耗や疲労に
対する強度が低下するという問題があった。また、溶接
部内周に突出したスパッタ32がラッシュアジャスタの作
動中にリザーバ室20に落ちて、チェック弁14の作動及び
プランジャ12とボディ11との滑らかな摺動を阻害すると
いう問題があった。

そこで、本考案は、上記問題を解決するため、プランジ
ャと仕切部材を一体に接合した後、表面硬化処理するこ
とのできる、油圧式バルブラッシュアジャスタを提供す
ることを目的とする。

（課題を解決するための手段） 前述の目的を達成するために、本考案によれば、有底円
筒ボディと、該ボディ内に摺動自在に嵌入された中空円
筒プランジャと、該プランジャの内部に固定した円筒状
の仕切部材と、を有する油圧式バルブラッシュアジャス
タにおいて、プランジャは上部プランジャと下部プラン
ジャとからなり、仕切部材の一部を上部プランジャと下
部プランジャとの接合部に位置せしめて上部プランジャ
と下部プランジャとをプロジェクション溶接によって一
体に接合すると共に、溶接部によって仕切部材の一部を
内径方向に変形させたことを特徴とする油圧式バルブラ
ッシュアジャスタを提供する。

（実施例） 以下、添付図面を参照して本考案による油圧式バルブラ
ッシュアジャスタの実施例を説明する。

第１図は、本考案に係わるラッシュアジャスタの一実施
例の構成を示す断面図である。第2A図および第2B図は第
１図の溶接部（点線で囲んだ部分Ｄ）の溶接前の状態お
よび溶接後の状態を示す部分的概略断面図である。第３
図は、本考案の他の実施例の構成を示す断面図である。
第４図は、本考案のさらに他の実施例の構成を示す断面
図である。

図示のラッシュアジャスタでは、上部プランジャ12aと
下部プランジャ12bとからなるプランジャ12が、シリン
ダヘッド１に嵌め込んだ有底円筒ボディ11に摺動自在に
嵌め込まれている。上部プランジャ12aの内部には円筒
状の仕切部材21が締まり嵌めに嵌入され、上部プランジ
ャ12aの内周途中に設けられた段部24に、仕切部材の肩
部25を突き当てて仕切部材の上方への動きを規制してい
る。そして、上部プランジャ12aの下端部と下部プラン
ジャ12bの上端部がプロジェクション溶接によって一体
の接合され、仕切部材21の下端部は内側へ曲げられると
ともに溶接部に密着されている。上部プランジャ12aの
凸球頭部には、ロッカーアーム７の凹球部が摺動自在に
当接している。ボディ11の底部と下部プランジャ12bの
底部との間には高圧室19が形成され、仕切部材21の内周
と下部プランジャ12bの内周とによってリザーバ室20が
構成されている。ボディ11の底部と下部プランジャ12b
の底部との間には、リターンスプリング13が設けられ、
下部プランジャ12bの底部の下方にはチェック弁14が配
設されている。

シリンダヘッド１の油ギャラリ９は、ボディ11に設けた
第一給油孔15、ボディ11と上部プランジャ12aとの間の
溝通路17、および上部プランジャ12aの周壁に設けた第
二給油孔16を介して、上部プランジャ12aの内周と仕切
部材21の外周との間に形成された油導入室18と連通して
いる。油導入室18は、仕切部材21の上方開口部を介して
リザーバ室20と連通している。上部プランジャ12aの凸
球頭部には、油排出孔23が設けられている。

プランジャを構成する上部プランジャ12a及び下部プラ
ンジャ12bは別々に成形される。上部プランジャの内部
に薄肉に成形された仕切部材21を締まり嵌めに嵌入さ
せ、上部プランジャ内部に設けられた段部24に仕切部材
に設けられた肩部25を突き当てて、仕切部材21の下端部
21bを上記プランジャの接合部に重ね合わせ（第2A図参
照）、上部プランジャ12aの下端部、下部プランジャ12b
の上端部をプロジェクション溶接によって一体に接合す
る（第2B図参照）。図示のように溶接部31が上部プラン
ジャ12aと下部プランジャ12bとに溶接時に加えられる荷
重によって内周側へ押し出され、薄肉の仕切部材下端部
を微かに内側に曲げ、溶融部31と仕切部材の下端部21b
戸を密着させる。仕切部材21部は肩部25と、曲げられた
下端部21bとによってプランジャ12内部に上下に密着固
定される。本考案においては、プロジェクション溶接に
よる一体接合後に表面硬化処理が次に行われる。一方、
溶接によって生じるスパッタ32は仕切部材の下端部21b
と下部プランジャ12bとの隙間に閉じ込められる。

こうして、溶融部31によって、プランジャ12と仕切部材
の下端部21bとが液密に密着されるので、油導入室18と
リザーバ室20は、仕切部材21の上方開口部のみを介して
連通する。

エンジンの作動中、油圧式バルブラッシュアジャスタに
は、シリンダヘッド１の油ギャラリ９から適当な圧力で
作動油が送給される。送給された作動油は更に、第一給
油孔15、溝通路17及び第２給油孔16を通って油導入室18
に達する。油導入室18に達した油は、仕切部材21の上方
開口部を迂回してリザーバ室20に導かれる。油の一部
は、上部プランジャ12aの球頭部に形成された油排出孔2
3を介してロッカーアーム７に設けられた通路10から吐
き出され、カム（図示せず）を潤滑する。この油排出孔
23はまた、バルブラッシュアジャスタ内に入り込んだ空
気を排出する。

エンジンが停止すると、シリンダヘッド１の油ギャラリ
９の油がオイルパン（図示せず）へ落下し、第一給油孔
15、溝通路17、第二給油孔16及び油導入室18の油も外部
へ漏れ出して、リザーバ室20内にのみ油が残る。油は、
仕切部材21の上部面のレベルまで貯えられるので、次の
エンジン始動の際の高圧室19の油消費を十分に賄うこと
ができる。

このように、本考案の油圧式バルブラッシュアジャスタ
ではプランジャが上部プランジャと下部プランジャとら
なり、仕切部材がプランジャ内周の溶接部と段部とによ
って密着固定されるので、一体接合後に表面硬化処理を
行うことができる。

本考案では仕切部材の上方向への制止を上部プランジャ
内部に設けられた段部によって行っているが、例えば仕
切部材の上端を上部プランジャ内部上壁に突き当てて仕
切部材上部にはその内外を連通する通路を別に設ける方
法等もとり得る。

次に、第３図及び第４図を参照して、本考案の他の２つ
の実施例を説明する。

第３図及び第４図において、第１図に示す部材と同一の
機能を有する部材は同一の参照番号で示す。

第３図の実施例においては仕切部材下端部27を下部プラ
ンジャの内周上方へ締まり嵌めによって嵌入するととも
に、下部プランジャ内周に設けた段部26に仕切部材下端
部27を突き当てて、仕切部材円筒部で上部プランジャ下
部と下部プランジャ上部とをプロジェクション溶接によ
って接合し、溶融金属を内側に押し出しながら、仕切部
材円筒部の中間部分を内側に変形させて、密着させる。
この際、仕切部材円筒部の中間部分には内側への変形に
より凹部28が形成され、下部プランジャと仕切部材とを
確実に固定する。

第４図の実施例においては、図面から明らかなように、
第１図及び第３図の実施例と異なり、仕切部材を規制す
る部分が上部プランジャ及び下部プランジャには設けら
れていない。この実施例においては、仕切部材は適当な
任意の手段によって上部プランジャ及び下部プランジャ
の接合部に対して位置決めされ、プロジェクション溶接
が行われる。プロジェクション溶接により、第３図の実
施例と同様に、仕切部材には凹部28が形成され、これに
より上部プランジャ及び下部プランジャよりなるプラン
ジャに対して確実に固定される。

なお、他の構成は第１図の実施例と同一であるので、詳
しい説明は省略する。

（考案の効果） 以上の説明から明らかなように、本考案による油圧式バ
ルブラッシュアジャスタでは、上部プランジャの内部に
仕切部材を嵌入させ、仕切部材をプランジャに対して適
切に位置決めした後（この際、仕切部材の一方向の動き
を規制することによって位置決めをしてもよい）、接合
部、上部プランジャと下部プランジャをプロジェクショ
ン溶接によって仕切部材下端部または中間部分を内側へ
曲げながら接合し、プランジャと仕切部材を密着固定す
ることができるので溶接した後に表面硬化処理を行うこ
とができる。従って、溶接部近傍の残留応力が除去さ
れ、上部プランジャと下部プランジャとの接合部の表面
硬化も確保することができる。

さらにプロジェクション溶接においては、仕切部材まで
溶接させなくても、プランジャに密着固定できるので、
上部プランジャ、下部プランジャ及び仕切部材の３者を
溶接する場合に比べ比較的低電力で接合することができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本考案に係わるラッシュアジャスタの一実施
例の構成を示す断面図である。 第2A図および第2B図は、第１図の溶接部（点線で囲んだ
部分Ｄ）の溶接前の状態及び溶接後の状態を示す部分的
概略断面図である。 第３図は、本考案の他の実施例の構成を示す断面図であ
る。 第４図は、本考案のさらに他の実施例を示す断面図であ
る。 第５図は、従来の技術のラッシュアジャスタの断面図で
ある。 11…ボディ、12a…上部プランジャ、12b…下部プランジ
ャ、21…仕切部材、24…段部、25…肩部、26…段部、27
…下端部、31…溶接部。

Claims (5)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】有底円筒ボディと、該ボディ内に摺動自在
   に嵌入された中空円筒プランジャと、該プランジャの内
   部に固定した円筒状の仕切部材と、を有する油圧式バル
   ブラッシュアジャスタにおいて、上記プランジャは上部
   プランジャと下部プランジャとからなり、上記仕切部材
   の一部を上部プランジャと下部プランジャとの接合部に
   位置せしめて上部プランジャと下部プランジャとをプロ
   ジェクション溶接によって一体に接合すると共に、溶接
   部によって上記仕切部材の一部を内径方向に変形させた
   ことを特徴とする油圧式バルブラッシュアジャスタ。
2. 【請求項２】請求項１に記載の油圧式バルブラッシュア
   ジャスタにおいて、上記上部プランジャまたは下部プラ
   ンジャのいずれか一方に仕切部材を一方向に規制する部
   分が形成されていることを特徴とする油圧式バルブラッ
   シュアジャスタ。
3. 【請求項３】請求項２に記載の油圧式バルブラッシュア
   ジャスタにおいて、一方のプランジャが上部プランジャ
   であり、仕切部材は上方に規制されており、仕切部材の
   内径側に変形された一部が下端部であることを特徴とす
   る油圧式バルブラッシュアジャスタ。
4. 【請求項４】請求項２に記載の油圧式バルブラッシュア
   ジャスタにおいて、一方のプランジャが下部プランジャ
   であり、仕切部材は下方向に規制されており、仕切部材
   の内径側に変形された一部が仕切部材の中間部分である
   ことを特徴とする油圧式バルブラッシュアジャスタ。
5. 【請求項５】請求項１に記載の油圧式バルブラッシュア
   ジャスタにおいて、プロジェクション溶接後に表面硬化
   処理を行うことを特徴とする油圧式バルブラッシュアジ
   ャスタ。