JPH07277848A - 多孔質焼結体、耐熱性電極及び固体電解質型燃料電池 - Google Patents
多孔質焼結体、耐熱性電極及び固体電解質型燃料電池Info
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Abstract
の温度との間で、加熱−冷却サイクルをかけた場合に、
この熱サイクルに対して安定な多孔質焼結体を提供する
こと。多孔質焼結体からなる耐熱性電極と他の構成材料
との間でクラックが発生するのを、防止すること。 【構成】ペロブスカイト構造の複合酸化物からなる多孔
質焼結体であって、複合酸化物のBサイトにマンガン原
子が含有されており、多孔質焼結体を大気中、1000
℃で2時間熱処理した後、1秒以内に20℃の外気中に
曝露させ、外気温にまで急冷した後において、マンガン
原子の平均価数が3.25以上であり、室温と1000
℃との間の熱サイクルによって生ずる多孔質焼結体の寸
法収縮が熱サイクル1回当たり0.01%以下である。
Description
使用した耐熱性電極及び固体電解質型燃料電池に関する
ものである。
ては、高温で安定な材料の探索が重要である。このた
め、従来、固体電解質型燃料電池の発電温度である10
00℃近辺においては、空気極を長時間保持してその耐
久性を測定する実験が、行われてきている。固体電解質
型燃料電池の空気極材料としては、現在、ランタンマン
ガナイト焼結体が有望と見られている(エネルギー総合
工学、13、2、52〜68頁、1990年)。前記し
たランタンマンガナイトからなる多孔質焼結体が、発電
装置の運転温度における安定性、耐熱性という点で優れ
ているので、着目されているのである。こうしたランタ
ンマンガナイト焼結体においては、ほぼ化学量論的組成
のものやAサイト(ランタン部位)が一部欠損した組成
のもの(マンガンリッチな組成)が知られている。特
に、AサイトにCa、Srをドープしたランタンマンガ
ナイトからなる多孔質焼結体が、自己支持型の空気極管
を含む空気極の材料として有望視されている。
ンタンマンガナイト多孔質焼結体について、次の問題が
あることを、本発明者が初めて発見した。即ち、本発明
者は、従来のランタンマンガナイト多孔質焼結体につい
て、固体電解質型燃料電池の発電温度である900〜1
100℃の温度と、室温〜600℃の温度との間で、加
熱−冷却サイクルをかけ、その安定性を試験してみた。
このランタンマンガナイトは、Bサイトは特に置換され
ておらず、Aサイトの10%〜20%がカルシウムによ
って置換されているものであり、又は、Aサイトの10
%〜15%がストロンチウムによって置換されているも
のであった。
室温〜600℃の温度との間で加熱−冷却サイクルをか
けると、上記の多孔質焼結体の寸法が、熱サイクル1回
当り0.01〜0.04%程度収縮することが判明し
た。しかも、この熱サイクルによる収縮は、100回の
熱サイクルをかけても収束せず、100回の熱サイクル
で数%にも及ぶことが判明した。このように多孔質焼結
体からなる空気極が収縮すると、多孔質焼結体からなる
空気極と、単電池の他の構成材料との間でクラックが発
生し、単電池の破壊が生ずることが判明した。しかも、
この単電池を1000℃で長時間動作させても、このよ
うなクラックは全く発生しなかった。従って、この現象
は、上記の多孔質焼結体の焼成収縮によるものではな
く、上記の熱サイクルによる寸法変化に起因するものと
考えられた。
て安定な、耐熱性の多孔質焼結体を提供することであ
る。また、本発明の課題は、特に固体電解質型燃料電池
等で使用する耐熱性電極において、上記の熱サイクルに
起因する耐熱性電極の寸法収縮によって、耐熱性電極と
他の構成材料との間でクラックが発生するのを、防止で
きるようにすることである。
ト構造の複合酸化物からなる多孔質焼結体であって、複
合酸化物のBサイトにマンガン原子が含有されており、
この複合酸化物におけるマンガン原子の平均価数が10
00℃において3.25以上であり、室温と1000℃
との間の熱サイクルによって生ずる多孔質焼結体の寸法
収縮が熱サイクル1回当たり0.01%以下であること
を特徴とする、多孔質焼結体に係るものである。
合酸化物からなる多孔質焼結体であって、複合酸化物の
Bサイトにマンガン原子が含有されており、この多孔質
焼結体を大気中、1000℃で2時間熱処理した後、1
秒以内に20℃の外気中に曝露させ、外気温にまで急冷
した後において、複合酸化物におけるマンガン原子の平
均価数が3.25以上であり、室温と1000℃との間
の熱サイクルによって生ずる寸法収縮が熱サイクル1回
当たり0.01%以下であることを特徴とする、多孔質
焼結体に係るものである。
なることを特徴とする耐熱性電極に係るものである。ま
た、本発明は、上記の多孔質焼結体からなる空気極を備
えていることを特徴とする、固体電解質型燃料電池に係
るものである。
う多孔質焼結体の寸法収縮が生ずる機構などについて、
研究を進めた。この結果、室温から1000℃程度まで
温度を上昇させると、多孔質焼結体の重量が僅かに減少
し、再び室温に温度を降下させると、この重量が元に戻
ることが分かった。
果、600℃以下の低温領域と、900℃以上の高温領
域との間で、結晶格子において酸素の出入りがあること
を確認した。この点を更に追求してみると、ペロブスカ
イト構造体の結晶格子のBサイトに存在するマンガン原
子の価数が、こうした結晶格子の安定性に関係している
ことがわかってきた。
酸化物中のマンガン原子の価数が3.25以上である
と、複合酸化物の結晶格子が、前記熱サイクルに対して
安定になり、熱サイクルを加えたときに結晶格子からの
酸素の出入りが抑制され、多孔質焼結体の熱サイクルに
よる収縮を防止できることが判明した。
ように、多孔質焼結体からなる電極と他の構成材料とが
接合された発電用品において、900〜1100℃の温
度と、室温〜600℃の温度との間で加熱−冷却サイク
ルをかけても、多孔質焼結体からなる電極と他の構成材
料との間でクラックが発生しないことを確認した。
マンガンの平均価数を直接測定することは困難なので、
多孔質焼結体を大気中、1000℃で2時間熱処理した
後、1秒以内に20℃の外気中に曝露させ、外気温にま
で急冷し、次いで多孔質焼結体を粉砕し、この粉末につ
いてマンガンの平均価数を測定する。
時間熱処理するのは、マンガンの状態を安定させるため
であり、1000℃から20℃まで急冷するのは、多孔
質焼結体を徐冷すると、この間の雰囲気、降温速度、温
度分布等によってマンガンの平均価数が変動することが
あるからである。
以上にすることにより、前記寸法収縮率が熱サイクル1
回当たり0.005%以下にまで顕著に減少した。更
に、前記平均価数が3.30以上の範囲では、前記熱サ
イクルによる寸法収縮がほぼ見られなくなった。また、
前記平均価数は、実際上、3.75以下とすることが好
ましい。
る複合酸化物の組成について、例示する。まず、複合酸
化物のBサイトにマンガンが含有されているが、好まし
くは、複合酸化物のAサイトに、セリウムを除く希土
類、アルカリ土類及びイットリウムからなる群より選ば
れた1種以上の金属原子が含有されている。
サイトに、セリウムを除く希土類及びイットリウムから
なる群より選ばれた1種の第一の金属原子と、カルシウ
ム及びストロンチウムからなる群より選ばれた一種以上
の第二の金属原子とが含有されており、Aサイトにおけ
るこの第二の金属原子の含有割合が10%以上、70%
以下である。この複合酸化物は、次の一般式(I)の組
成を有するものが好ましい。
占め、Mnが複合酸化物のBサイトを占める。Rは、1
種の第一の金属原子である。Aは、1種以上の第二の金
属原子である。xは、第二の金属原子Aの含有割合であ
り、10%以上、70%以下である(x=0.10〜
0.70)。
からなる群」とは、イットリウム、ランタン、プラセオ
ジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユーロピ
ウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホ
ルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及び
ルテチウムからなる群である。Rは、更に、ランタン、
プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ジスプロシウ
ム、ガドリニウム及びイットリウムからなる群より選ば
れたものが好ましい。
しかし、xが0.70を越えると、電気伝導度の急激な
低下が観測された。従って、xは0.70以下とするこ
とが好ましい。
耐熱性電極として使用する場合には、他の構成材料との
間での熱膨張差を小さくするため、耐熱性電極の平均線
熱膨張率を可能な限り小さく抑えることが必要である。
この観点から、耐熱性電極の平均線熱膨張率を測定して
みると、xが増大すると、それにつれて、多孔質焼結体
の平均線熱膨張率は増加していた。特に、第一の金属原
子Rがランタンである場合には、xが0.50を越える
と、顕著な増大が観測された。従って、xは0.5以下
とすることが好ましい。
質型燃料電池用の空気極材料として使用する場合には、
多孔質焼結体の熱膨張率を、固体電解質膜や燃料電極膜
などの熱膨張率に近くしなければならない。
コニアである場合には、25°C〜1000°Cの間の
平均線熱膨張率は10.5×10-6K-1であることが知
られている。この場合には、多孔質焼結体の平均線熱膨
張率を11.8×10-6K-1以下に抑えれば、多孔質焼
結体と固体電解質膜との間の熱膨張差に起因するクラッ
クの発生は、防止することができた。
る場合には、xを0.40以下に抑えると、多孔質焼結
体の平均線熱膨張率が11.8×10-6K-1以下に抑え
ることができたので、この観点からは、xを0.40以
下に抑えることが好ましい。
複合酸化物も好ましい。
占め、Mn、Eが複合酸化物のBサイトを占める。R
は、1種の第一の金属原子である。Aは、1種以上の第
二の金属原子である。Eは、アルミニウム、コバルト、
銅、マグネシウム、クロム、ニッケル、鉄、チタン及び
亜鉛からなる群より選ばれた一種以上の第三の金属原子
である。
り、10%以上、70%以下である(x=0.10〜
0.70)。xが増加すると、電気伝導度は向上する。
しかし、xが0.70を越えると、電気伝導度の急激な
低下が観測された。従って、xは0.70以下とする必
要がある。
は、xが0.50を越えると、平均線熱膨張率に顕著な
増大が観測された。従って、xは0.50以下とする必
要がある。xを0.40以下に抑えると、多孔質焼結体
の平均線熱膨張率が11.8×10-6K-1以下に抑える
ことができたので、この観点からは、xを0.40以下
に抑えることが好ましい。
電気伝導度が低下し、電極素子として使用できる電気伝
導度の限界値を下回るので、zは0.35以下とする必
要がある。更に、zが0.20以下であると、多孔質焼
結体の電気伝導度は顕著に向上する。また、zは0.0
2以上とするのが、多孔質焼結体の前記熱サイクルによ
る寸法収縮率を小さくするという観点から、更に好まし
い。
酸化物のAサイトに、セリウムを除く希土類及びイット
リウムからなる群より選ばれた2種以上の第一の金属原
子と、カルシウム及びストロンチウムからなる群より選
ばれた一種以上の第二の金属原子とが含有されており、
Aサイトにおける第二の金属原子の含有割合が10%以
上、70%以下であり、Aサイトにおける第一の金属原
子の含有割合が30%以上、90%以下である。
一般式(III)式によって表されるものである。
Aは、一種以上の第二の金属原子である。
サイトのうち10〜70%(x=0.10〜0.70)
とする。xが増加すると、電気伝導度は向上する。しか
し、xが0.70を越えると、電気伝導度の急激な低下
が観測された。従って、xは0.70以下とする必要が
ある。
は、xが0.50を越えると、平均線熱膨張率に顕著な
増大が観測された。従って、xは0.50以下とする必
要がある。xを0.40以下に抑えると、多孔質焼結体
の平均線熱膨張率が11.8×10-6K-1以下に抑える
ことができたので、この観点からは、xを0.40以下
に抑えることが好ましい。
割合(1−x)は、30%以上、90%以下である。第
一の金属原子Rのうち1種類をランタンとした場合に
は、Aサイトにおけるランタンの含有割合は1〜76%
とすることが好ましい。他の第一の金属原子の含有割合
は、Aサイトのうち1〜76%とすることが好ましく、
20〜50%とするのが更に好ましい。
記一般式(IV)式によって表されるものである。
A、Eは、上記した各金属原子である。第一の金属原子
Aによる置換割合xは、Aサイトのうち10〜70%
(x=0.10〜0.70)とする。xが増加すると、
電気伝導度は向上する。しかし、xが0.70を越える
と、電気伝導度の急激な低下が観測された。従って、x
は0.70以下とする必要がある。
は、xが0.50を越えると、平均線熱膨張率に顕著な
増大が観測された。従って、この場合には、xは0.5
0以下とする必要がある。xを0.40以下に抑える
と、多孔質焼結体の平均線熱膨張率が11.8×10-6
K-1以下に抑えることができたので、この観点からは、
xを0.40以下に抑えることが好ましい。
電気伝導度が低下し、電極素子として使用できる電気伝
導度の限界値を下回るので、zは0.35以下とする必
要がある。更に、zが0.20以下であると、多孔質焼
結体の電気伝導度は顕著に向上する。また、zは0.0
2以上とするのが、多孔質焼結体の前記熱サイクルによ
る寸法収縮率を小さくするという観点から、更に好まし
い。
含有割合は、30%以上、90%以下である。第一の金
属原子Rのうち1種類をランタンとした場合には、Aサ
イトにおけるランタンの含有割合は1〜76%とするこ
とが好ましい。他の第一の金属原子の含有割合は、Aサ
イトのうち1〜76%とすることが好ましく、20〜5
0%とするのが更に好ましい。
製造工程において不可避的に混入する若干の不純物に由
来する複合酸化物の組成変動は、許容される。また、ペ
ロブスカイト構造の複合酸化物は非化学量論的組成をと
りうるので、前記した各組成を示す一般式においては、
AサイトとBサイトとの比率は便宜上1:1として表現
したが、この組成比率は変動しうる。
は、複合酸化物の原料粉末を混合して混合粉末を製造
し、この混合粉末を成形し、この成形体を焼成して合成
物を製造し、この合成物を粉砕することが好ましい。こ
の際には、複合酸化物の原料粉末の混合比率を変更する
ことにより、複合酸化物における各金属原子の比率を制
御する。
0℃とすることが好ましい。焼成温度を1300℃未満
とすると、焼結が完全に完了しない。1600℃よりも
高くすると、焼結体の組織が緻密になりすぎる。
るマンガン原子の平均価数が3.25以上である複合酸
化物からなる多孔質焼結体を製造するためには、次の方
法による。即ち、多孔質焼結体を構成する複合酸化物の
結晶格子1つ当たりの酸素量は、約3.0である。前記
した焼成工程において、焼成雰囲気中に含有される酸素
の分圧は、焼成雰囲気が大気である場合には、約20%
であった。従来のランタンマンガナイト多孔質焼結体
は、通常大気中で焼成されていた。
成雰囲気中の酸素量を増大させると、焼成後の多孔質焼
結体の酸素量が若干増加し、マンガン原子の平均価数が
増大してくる。従って、1000℃におけるマンガン原
子の平均価数が3.25以上である複合酸化物からなる
多孔質焼結体を製造するためには、前記した各組成を選
択すると共に、この焼成時の焼成雰囲気中に含まれる酸
素分圧を多くすればよい。
組成によっても変動するので、焼成雰囲気中の酸素分圧
をどの程度大きくする必要があるのかは、複合酸化物の
組成によって異なるため、一義的に特定することはでき
ない。
特に、熱サイクルに対して安定な耐熱性電極の材料とし
て好ましく使用できる。こうした耐熱性電極の材料とし
ては、核融合炉、MHD発電等の発電用品における電極
材料がある。
質型燃料電池用の空気極材料として、特に好適に使用で
きる。更に、自己支持型の空気極基体の材料として用い
ることが好ましい。こうした空気極基体は、単電池の母
材として用いられるものであり、空気極基体上に、固体
電解質膜、燃料電極膜、インターコネクター、セパレー
タなどの各構成部分が積層される。この際、空気極基体
の形状は、両端が開口した円筒形状、一端が開口し、他
端が閉塞された有底円筒形状、平板形状などであってよ
い。このうち、上記したいずれかの円筒形状のものが、
熱応力がかかりにくく、ガスシールが容易なので、特に
好ましい。
ることが好ましい。また、これを固体電解質型燃料電池
用の空気極材料として用いる場合には、更に気孔率を1
5〜40%とすることが好ましく、25〜35%とする
と一層好ましい。この場合は、空気極の気孔率を15%
以上とすることで、ガス拡散抵抗を小さくし、気孔率を
40%以下とすることで、ある程度の強度も確保するこ
とができる。
する。 〔実験A:La0.80Ca0.20MnOx系の組成を有する
複合酸化物からなる多孔質焼結体についての実験〕 (多孔質焼結体の製造方法)出発原料として、La2 O
3 、CaCO3 、Mn3 O4 の各粉末を使用した。La
0.80Ca0.20MnOxの組成比率となるように、各試料
について、所定量の出発原料を秤量し、混合した。この
混合粉末を、コールドアイソスタティックプレス法によ
り、1tf/cm2 の圧力で成形し、成形体を作製し
た。この成形体を、大気中、1500℃で15時間熱処
理し、La0.80Ca0.20MnOxの組成を有する複合酸
化物を合成した。
砕し、平均粒径2〜6μmの合成粉末を作製した。次
に、この合成粉末に、水と、有機バインダーとしてのア
クリル系バインダーを加え、混合し、水分40%のスラ
リーを調製し、スプレードライヤーで造粒した。その
後、この造粒粉末と、増孔剤としてのアクリルパウダー
とを乾式混合し、コールドアイソスタティックプレス法
により、1tf/cm2 の圧力で成形して、外径20m
m、内径15mmの円環形状の成形体を製造した。この
円環形状の成形体を、1300℃〜1500℃で5時間
焼成し、多孔質焼結体を得た。
合により雰囲気を調整した。ただし、この混合雰囲気中
における酸素の濃度は、表1に示すように変更した。表
1において、焼成時の酸素濃度が20.6%であるの
が、ほぼ大気に相当する。これらの円環形状の各多孔質
焼結体の気孔率を、水置換法によって測定したところ、
いずれも30%±1%であった。
れらの各多孔質焼結体から、幅5mm、厚さ1mm、長
さ50mmの平板形状の試料を切り出し、熱サイクルに
よる寸法収縮率の測定用試料とした。まず、40℃にお
ける測定用試料の長さを正確に測定した。また、熱膨張
計によって、40℃における測定用試料の先端の変位を
精密に測定した。次いで、この測定用試料を、大気中に
て200℃/時間で1000℃まで昇温し、その後10
00℃で30分間保持し、次いで200℃/時間の降温
速度で600℃まで降温し、600℃から40℃まで放
冷した。この熱サイクル後にも、40℃における測定用
試料の先端の変位を、熱膨張計によって精密に測定し
た。
張計「TMA」を使用した。次の数式によって、熱サイ
クルによる寸法収縮率(%)を算出した。各測定用試料
について、熱サイクルによる寸法収縮率を測定した結果
を、表1に示す。
クル前における40℃での測定用試料の変位−熱サイク
ル後における40℃での測定用試料の変位)/熱サイク
ル前における測定用試料の長さ)
マンガンの価数の測定)前記した円環形状の多孔質焼結
体から、熱サイクルによる寸法収縮率の測定用試料を切
り出した後、残りの部分を試料として使用した。まず、
この試料を、図3に模式的に示す装置を用いて処理し
た。即ち、試料3を、炉天井1に白金線2によって吊る
した。電気炉4内の熱処理用空間5にガイド6を設置
し、ガイド6内の空間6aに試料3が位置するようにし
た。ガイド6の下端部は、電気炉4の炉底4aを通って
電気炉4の下側に延びており、ガイド6の下側開口6b
の下に受け皿7が設置されている。受け皿7の周辺は、
20℃の外気である。
で2時間、試料3を熱処理した。次いで、白金線2を切
断し、ガイド6内で試料3を落下させ、受け皿7内に落
とし、20℃に急冷した。この熱処理及び急冷後の試料
を、アルミナ乳鉢で、45μm目開きふるいを通るよう
になるまで、粉砕し、マンガン価数測定用試料を得た。
燃料電池の基礎研究」(電力中央研究所報告:研究報
告:W90002)を基にして行った。分析の手順は、
以下の通りである。
用試料との反応 110℃で乾燥しておいたNa2 C2 O4 30.00m
gと、上記したマンガン価数測定用試料(ペロブスカイ
ト複合酸化物の粉末)約40.00mgとを、200m
lの三角フラスコの中に入れる。10容量%に希釈した
硫酸100mlを三角フラスコに入れ、サーモマグネテ
ィックスターラー上で約30分間加熱し、前記粉末を硫
酸に溶解させる。この時の反応は、以下の(V)式の通
りである。
+O2 Mn3 + +1/2Na2 C2 O4 →Mn2 + +CO+N
a+1/2O2
t )を蒸留水に溶解し、約0.01mol/lの溶液を
調製する。この溶液を十分に煮沸し、二酸化炭素等のガ
スを脱気する。KMnO4 は、蒸留水中の二酸化炭素と
反応して、還元されやすいからである。次いで、この溶
液を冷暗所で室温まで放冷し、MnO2等の不純物を濾
過して除去した。KMnO4 滴定後の濃度は、既知量の
Na2 C 2 O4 の酸化に要した滴定量より、求めた。
試料中のマンガンとを反応させ、この反応の後に残留し
たNa2 C2 O4 を、KMnO4 溶液によって滴定し
た。KMnO4 溶液による滴定の終点は、滴定溶液であ
るKMnO4 溶液のピンク色が現れはじめた点とした。
滴定中に起こる酸化還元反応は、以下の(VI)式の通
りである。
2 + +10CO2 +8H2 O+10Na+ +2K+
Mnの価数を全て3価としたときのマンガン価数測定用
試料の分子量をd1 とし、マンガン価数測定用試料の重
量をl(g)とし、Na2 C2 O4 の重量をf(g)と
し、KMnO4溶液の滴定量をg(ml)とする。(V
I)式の滴定反応に要したNa2 C2 O 4 のmol数
を、h(mol)とする。h(mol)は、Na2 C2
O4 の全体のmol数と、KMnO4 と反応したNa2
C2 O4 のmol数との差である。
純度は0.995である。従って、Na2 C2 O4 の全
体のmol数は、f×0.995/134である。ま
た、KMnO4 と反応したNa2 C2 O4 のmol数
は、(C×g×5/2)/1000である。従って、次
式が成立する。
2)/1000
合酸化物からなるマンガン価数測定用試料1mol中で
Mn3 + が還元されたときの電子数iは、Na2C2 O
4 1mol当たり、2molであるから、次式が成立す
る。
と仮定すると、ペロブスカイト型複合酸化物中のMnの
平均価数は、(i+2)となる。こうして、Mnの価数
をすべて3であると仮定した場合について、マンガンの
平均価数(i+2)を算出することができる。むろん
(i+2)は3よりも大きいので、マンガンの平均価数
が3であるという初期仮定は不正確である。マンガンの
平均価数が大きくなると、結晶格子1個当たりの酸素量
xも大きくなるので、前記したペロブスカイト複合酸化
物の分子量(d1 )も不正確である。
算出値から、酸素を含んだペロブスカイト型複合酸化物
全体の分子量(d2 )を計算する。この計算値(i+
2)は、3よりも実際の値に近く、d2 はd1 よりも実
際の値に近い。再び、この分子量(d2 )を使用して、
上記の計算をやり直す。この操作を5回繰り返して行
い、最終的なMnの平均価数とした。
いて、マンガンの平均価数と、結晶格子1個当たりの酸
素量(x)を算出し、表1に示した。また、マンガンの
平均価数と前記熱サイクルによる寸法収縮率との関係
を、図1のグラフに示した。
を大きくすることによって、マンガンの平均価数が増大
する傾向があった。また、表1及び図1からわかるよう
に、マンガンの平均価数を3.25以上にすることによ
り、前記寸法収縮率が熱サイクル1回当たり0.01%
以下に抑制されることがわかった。更には、前記平均価
数を3.27以上にすることにより、前記寸法収縮率が
熱サイクル1回当たり0.005%以下にまで顕著に減
少した。更に、前記平均価数が3.30以上の範囲で
は、前記熱サイクルによる寸法収縮がほぼ見られなくな
った。
が3.2464である多孔質焼結体について、室温から
1000℃まで温度を上昇及び下降させ、熱膨張計によ
って多孔質焼結体の寸法変化を測定した。この結果、寸
法の収縮現象は、温度下降時の900℃〜800℃の温
度範囲で起こっていることを突き止めた。従って、この
温度範囲で、酸素原子の吸収や金属原子の移動が生じて
いるものと推定される。また、600℃と1000℃の
間での熱サイクルによる結果は、室温と1000℃との
間の熱サイクルによる結果と同じになる。
が3.2464である多孔質焼結体について、前記の熱
サイクルを10回かけたところ、10回の熱サイクル
で、多孔質焼結体の寸法収縮率は0.34%に達した。
また、この熱サイクルによる寸法収縮は、熱サイクル数
を多くしても、収束しなかった。
0℃で10時間保持し、室温へと降温した後、加熱前と
加熱後との寸法変化率を測定したところ、0.031%
の収縮を示した。1000℃で10時間保持したことに
よる0.031%の収縮は、熱サイクル1回分の寸法収
縮量にほぼ相当する。熱サイクル1回当たりに1000
℃で保持する時間は30分間に過ぎない。
収縮は、1000℃で保持している間に生じたのではな
く、1000℃から室温へと下降した降温過程の間に生
じたものである。言い換えると、多孔質焼結体の上記熱
サイクルによる収縮現象は、高温で多孔質焼結体を保持
したことによる焼結の進行とは、全く別の機構によって
生じている。
0.02Ox系の組成を有する複合酸化物からなる多孔質焼
結体についての実験〕出発原料として、La2 O3 、C
aCO3 、Mn3 O4 及びNiOの各粉末を使用した。
他は実験Aと同様にして、各例の多孔質焼結体を製造し
た。ただし、焼成時の酸素濃度は、表2に示すように変
更した。
法収縮率した実験Aと同様にして、気孔率、熱サイクル
による寸法収縮率、マンガンの価数、結晶格子1個当た
りの酸素量xを測定した。この測定結果を表2に示す。
また、マンガンの平均価数と前記熱サイクルによる寸法
収縮率との関係を、図2のグラフに示した。
あった。表2に示すように、焼成雰囲気の酸素濃度を大
きくすることによって、マンガンの平均価数が増大する
傾向があった。また、表2及び図2からわかるように、
マンガンの平均価数を3.25以上にすることにより、
前記寸法収縮率が熱サイクル1回当たり0.01%以下
に抑制されることがわかった。更には、前記平均価数を
3.27以上にすることにより、前記寸法収縮率が熱サ
イクル1回当たり0.005%以下にまで顕著に減少し
た。更に、前記平均価数が3.30以上の範囲では、前
記熱サイクルによる寸法収縮がほぼ見られなくなった。
は、900〜1100℃の温度と、室温〜600℃の温
度との間で、加熱−冷却サイクルをかけた場合に、この
熱サイクルに対して安定である。従って、この多孔質焼
結体によって形成された耐熱性電極は、上記の熱サイク
ルに起因する寸法収縮がきわめて少ないので、耐熱性電
極と他の構成材料との間でクラックが発生するのを、防
止できる。
合酸化物からなる多孔質焼結体について、マンガンの平
均価数と前記熱サイクルによる寸法収縮率との関係を示
すグラフである。
成を有する複合酸化物からなる多孔質焼結体について、
マンガンの平均価数と前記熱サイクルによる寸法収縮率
との関係を示すグラフである。
るために、多孔質焼結体に対して熱処理及び急冷処理を
加えるための装置を模式的に示す断面図である。
用空間、6 ガイド、 7 受け皿
Claims (6)
- 【請求項1】ペロブスカイト構造の複合酸化物からなる
多孔質焼結体であって、前記複合酸化物のBサイトにマ
ンガン原子が含有されており、この複合酸化物における
マンガン原子の平均価数が1000℃において3.25
以上であり、室温と1000℃との間の熱サイクルによ
って生ずる前記多孔質焼結体の寸法収縮が熱サイクル1
回当たり0.01%以下であることを特徴とする、多孔
質焼結体。 - 【請求項2】ペロブスカイト構造の複合酸化物からなる
多孔質焼結体であって、前記複合酸化物のBサイトにマ
ンガン原子が含有されており、この多孔質焼結体を大気
中、1000℃で2時間熱処理した後、1秒以内に20
℃の外気中に曝露させ、外気温にまで急冷した後におい
て、前記複合酸化物におけるマンガン原子の平均価数が
3.25以上であり、室温と1000℃との間の熱サイ
クルによって生ずる前記多孔質焼結体の寸法収縮が熱サ
イクル1回当たり0.01%以下であることを特徴とす
る、多孔質焼結体。 - 【請求項3】前記複合酸化物のAサイトにランタン原子
が含有されていることを特徴とする、請求項2記載の多
孔質焼結体。 - 【請求項4】請求項2又は3記載の多孔質焼結体からな
ることを特徴とする耐熱性電極。 - 【請求項5】請求項2又は3記載の多孔質焼結体からな
る空気極を備えていることを特徴とする、固体電解質型
燃料電池。 - 【請求項6】前記空気極が自己支持型の空気極であるこ
とを特徴とする、請求項5記載の固体電解質型燃料電
池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP07486594A JP3471890B2 (ja) | 1994-04-13 | 1994-04-13 | 多孔質焼結体、耐熱性電極及び固体電解質型燃料電池 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP07486594A JP3471890B2 (ja) | 1994-04-13 | 1994-04-13 | 多孔質焼結体、耐熱性電極及び固体電解質型燃料電池 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07277848A true JPH07277848A (ja) | 1995-10-24 |
JP3471890B2 JP3471890B2 (ja) | 2003-12-02 |
Family
ID=13559659
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP07486594A Expired - Lifetime JP3471890B2 (ja) | 1994-04-13 | 1994-04-13 | 多孔質焼結体、耐熱性電極及び固体電解質型燃料電池 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3471890B2 (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2000069008A1 (en) * | 1999-05-07 | 2000-11-16 | Forskningscenter Risø | Electrochemical cell |
EP1060534A4 (en) * | 1998-02-27 | 2001-05-23 | Corning Inc | FLEXIBLE INORGANIC ELECTROLYTIC FUEL CELL DESIGN |
WO2002013296A1 (fr) * | 2000-08-04 | 2002-02-14 | Anan Kasei Co., Ltd. | Oxyde composite pour electrode oxydoreductrice et materiau de collecteur de pile a combustible a electrolyte solide, procede de preparation de ceux-ci et pile a combustible a electrolyte solide |
US10644327B2 (en) | 2015-07-07 | 2020-05-05 | Ngk Insulators, Ltd. | Fuel cell cathode containing a perovskite oxide |
-
1994
- 1994-04-13 JP JP07486594A patent/JP3471890B2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP1060534A4 (en) * | 1998-02-27 | 2001-05-23 | Corning Inc | FLEXIBLE INORGANIC ELECTROLYTIC FUEL CELL DESIGN |
WO2000069008A1 (en) * | 1999-05-07 | 2000-11-16 | Forskningscenter Risø | Electrochemical cell |
WO2002013296A1 (fr) * | 2000-08-04 | 2002-02-14 | Anan Kasei Co., Ltd. | Oxyde composite pour electrode oxydoreductrice et materiau de collecteur de pile a combustible a electrolyte solide, procede de preparation de ceux-ci et pile a combustible a electrolyte solide |
US10644327B2 (en) | 2015-07-07 | 2020-05-05 | Ngk Insulators, Ltd. | Fuel cell cathode containing a perovskite oxide |
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Publication number | Publication date |
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