JPH07269356A - ２サイクルエンジン - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】 クランクケース圧縮式の２サイクルエンジン
において、掃気時における混合気の吹き抜け現象の発生
を防止し、出力の向上、燃費の向上、排気ガスのクリー
ン化を図る。 【構成】 クランク室２２内へ通路２５により連通され
ると共にクランク室２２内の圧力変動に伴って圧力が変
動する別室２３を設け、クランク室２２内が負圧状態と
なった時に大気中から別室２３内へ空気を吸入する空気
吸入路３１を通路から離れた位置に設け、さらに、別室
２３と掃気孔１６とを連通する掃気通路２４を通路２５
から離反した位置に設ける。掃気時には、最初に別室２
３内に吸入された空気を掃気孔１６からシリンダ１３内
へ流入させ、ついで、クランク室２２内の混合気を別室
２３と掃気通路２４とを通過させて掃気孔１６からシリ
ンダ１３内へ流入させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ピストンの摺動に伴な
うクランク室内の圧力変動を利用してクランク室内へ混
合気を吸入すると共に吸入した混合気を加圧してシリン
ダ内へ供給するクランクケース圧縮式の２サイクルエン
ジンに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の２サイクルエンジンにおいては、
上述したクランクケース圧縮式が一般的であり、このク
ランクケース圧縮式の２サイクルエンジンの構造及び動
作を図４及び図５に基づいて説明する。

【０００３】まず、図４に示す２サイクルエンジンは、
クランクケース１の上部にシリンダ２が固定されてお
り、シリンダ２内にはピストン３が摺動自在に設けられ
ている。また、シリンダ２にはピストン３が摺動するこ
とにより開閉される排気孔４と掃気孔５とが形成され、
掃気孔５は流路６を介してクランク室（クランクケース
１内の空間部）７に連通されている。一方、クランクケ
ース１には混合気をクランク室７内へ吸入するための吸
気孔８が形成され、この吸気孔８と気化器９とを連通す
る流路１０中に吸気弁１１が設けられている。

【０００４】このような構成において、ピストン３が上
昇する行程（吸入・圧縮行程）では、ピストン３の上昇
に伴ってクランク室７内が負圧状態となり、クランク室
７内が負圧状態となることにより混合気が吸気孔８から
クランク室７内へ吸入される。また、ピストン３が所定
位置まで上昇するとこのピストン３によって掃気孔５と
排気孔４とが閉止され、掃気孔５と排気孔４とを閉止し
た後にピストン３が引き続き上昇することによりシリン
ダ２内に入っている混合気が圧縮される。そして、ピス
トン３が略上死点へ上昇したタイミングでシリンダ２内
の圧縮された混合気が爆発し、ピストン３が下降する行
程（爆発・排気行程）へ移る。

【０００５】爆発・排気行程では、ピストン３が所定位
置まで下降した時に排気孔４の開孔が始まり、シリンダ
２内の燃焼ガスがマフラ（図示せず）を介して大気中へ
排出される。さらに、排気孔４の開孔が開始された後に
掃気孔５の開孔が始まる。一方、ピストン３が下降する
爆発・排気行程においては、吸気弁１１が閉止されると
共にクランク室７内の混合気が加圧され、加圧された混
合気は掃気孔５が開孔されることにより掃気孔５からシ
リンダ２内へ流入し、シリンダ２内に残っている燃焼ガ
スを排気孔４から押し出す作用（掃気作用）をする。そ
して、ピストン３が上昇する吸入・圧縮行程に移るとき
には、シリンダ２内は混合気で満たされる。

【０００６】つぎに、図５に示す２サイクルエンジン
は、基本的には図４に示す２サイクルエンジンと同一で
あるが、吸気孔８ａがシリンダ２に形成され、この吸気
孔８ａの開閉制御がピストン３により行なわれる点で相
違する。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】従来のクランクケース
圧縮式２サイクルエンジンにおいては、クランク室７内
で加圧された混合気が掃気孔５からシリンダ２内に流入
することによりシリンダ２内に残っている燃焼ガスの掃
気を行なうため、燃焼ガスの掃気を良好に行なおうとす
れば、シリンダ２内へ流入した混合気が燃焼ガスと共に
排気孔４から大気中に排出される、所謂、吹き抜け現象
が発生する。そして、この吹き抜け現象により、未燃焼
成分であるＨＣが排気ガス中に多量に含まれることにな
ると共に、無駄に消費されてしまう燃料の量が多くな
る。

【０００８】一方、ピストン３による排気孔４の閉孔時
期を早めることによって吹き抜け現象を抑えることがで
きるが、その場合には、シリンダ２内に残留する燃焼ガ
スが多くなって不完全燃焼や失火等による不整燃焼サイ
クルが増加し、結局は排気ガス中に含まるれるＨＣが増
大し、しかも、エンジン出力が低下するという欠点があ
る。

【０００９】

【課題を解決するための手段】請求項１記載の発明は、
ピストンの摺動に伴なうクランク室内の圧力変動を利用
してクランク室内へ混合気を吸入すると共に吸入した混
合気を加圧してシリンダ内へ供給するクランクケース圧
縮式の２サイクルエンジンにおいて、前記クランク室内
へ通路により連通されると共に前記クランク室内の圧力
変動に伴って圧力が変動する別室を設け、前記クランク
室内が負圧状態となった時に大気中から前記別室内へ空
気を吸入する空気吸入路を前記通路から離れた位置に設
けると共に前記別室と掃気孔とを連通する掃気通路を前
記通路から離反した位置に設けた。

【００１０】請求項２記載の発明は、請求項１記載の発
明において、ピストンが上昇するタイミングでは開度を
小さくすると共に前記ピストンが下降して掃気孔が開孔
されるタイミングと相前後するタイミングで開度を大き
くする絞り弁を通路中に設けた。

【００１１】請求項３記載の発明は、請求項１又は２記
載の発明において、一端が大気中に連通して他端が前記
シリンダ内へ開孔する第一空気流路と一端が空気室に連
通して他端がシリンダ内へ開孔する第二空気流路とを前
記シリンダの壁部内に形成し、ピストンが所定位置へ摺
動したときに前記第一空気流路と前記第二空気流路とを
連通させる凹部を前記ピストンの外周面に形成し、これ
らの第一空気流路と第二空気流路と凹部とにより空気流
入路を形成した。

【００１２】請求項４記載の発明は、請求項１又は２記
載の発明において、大気中から別室内へ向かう空気の流
れのみを許容する逆止弁を空気吸入路中に設けた。

【００１３】請求項５記載の発明は、請求項１、２、３
又は４記載の発明において、別室内の少なくとも通路に
近接した部分に整流壁を設けた。

【００１４】

【作用】請求項１記載の発明では、ピストンの上昇に伴
ってクランク室内が負圧状態になると通路により連通さ
れている別室も負圧状態となり、クランク室内へは混合
気が吸入されると共に別室内へは空気吸入路から空気が
吸入される。そして、シリンダ内での爆発に伴ってピス
トンが下降するときに、これらの混合気や空気はピスト
ンの下降に伴って加圧される。つぎに、ピストンの下降
に伴って排気孔が開孔して燃焼ガスが大気中へ排出され
ると共に掃気孔が開孔して掃気が行なわれるが、この掃
気が行なわれる時、まず、別室内へ吸入されて加圧され
た空気が掃気通路内を通って掃気孔からシリンダ内へ流
入し、ついで、クランク室内の混合気が流路から別室内
へ流入すると共に掃気通路内を通って掃気孔からシリン
ダ内へ流入する。従って、燃焼ガスの掃気に伴って燃焼
ガスと共に排気孔から排出されるのは先にシリンダ内へ
流入した空気であり、空気の後から混合気がシリンダ内
へ流入する時にはこの流入タイミングと相前後するタイ
ミングで排気孔が閉孔されるため、混合気が排気孔から
大気中へ排出される吹き抜け現象が起こらない。

【００１５】請求項２記載の発明では、ピストンが上昇
するタイミングの時は絞り弁の開度が小さいため、クラ
ンク室内の負圧状態が通路により別室へ伝達されると共
に前回の行程で別室内へ流入した混合気がクランク室内
へ吸い戻され、クランク室内へ充填された混合気が別室
内へ流入するということが抑えられる。一方、ピストン
が下降して掃気孔が開孔されるタイミングと相前後する
タイミングで絞り弁の開度が大きくなるため、クランク
室内の混合気は通路を通って別室内へ流入すると共に別
室及び掃気通路を経て掃気孔からシリンダ内へ流入す
る。

【００１６】請求項３記載の発明では、ピストンの摺動
動作に伴って凹部により第一空気流路と第二空気流路と
が連通されたとき、これらの第一空気流路と第二空気流
路と凹部とを介して空気が別室内へ吸入される。また、
ピストンの摺動動作によって凹部が第一空気流路及び第
二空気流路に連通する位置から外れた時には別室は大気
中に対する連通状態を遮断され、空気室から大気中への
空気の流出が防止されると共にピストンの下降に伴って
別室内の空気が加圧される。

【００１７】請求項４記載の発明では、別室内が負圧状
態となった場合に逆止弁が開弁し、空気吸入路を介して
大気中から別室内へ空気が吸入される。また、別室内の
圧力が高くなった場合には逆止弁が閉弁されて別室から
大気中への空気の逆流が防止される。

【００１８】請求項５記載の発明では、通路内を経て混
合気が別室内へ流入したとき、この混合気は整流壁によ
り別室内の空気との混合が抑えられる。このため、掃気
孔からシリンダ内へ流入する空気と混合気とは、混合さ
れた状態ではなく分離された状態となり、空気ついで混
合気の順で流入する。

【００１９】

【実施例】本発明の第一の実施例を図１及び図２に基づ
いて説明する。クランクケース１２の上部にはシリンダ
１３が固定されており、シリンダ１３内にはピストン１
４が摺動自在に設けられ、また、シリンダ１３にはピス
トン１４が摺動することによりこのピストン１４によっ
て開閉される排気孔１５と掃気孔１６と吸気孔１７とが
形成されている。ここで、前記吸気孔１７は流路１８を
介して気化器１９に連通し、前記排気孔１５はマフラ
（図示せず）を介して大気中に連通し、前記掃気孔１６
は後述する別室に連通している。なお、前記気化器１９
にはエアクリーナ２０が接続されている。

【００２０】前記クランクケース１２内にはクランクシ
ャフト２１等が配置されるクランク室２２とこのクラン
ク室２２の外側に位置する別室２３とが形成され、別室
２３は前記シリンダ１３の壁部内に形成した掃気通路２
４を介して前記掃気孔１６に連通されている。一方、前
記クランク室２２と前記別室２３とは通路２５により連
通されており、この通路２５中には絞り弁２６が設けら
れている。さらに、前記別室２３内における前記通路２
５に近接した位置には、この通路２５を通ってクランク
室２２内から別室２３内へ流入する混合気の流れを整流
すると共に別室２３内の空気との混合を抑えるためのハ
ニカム構造の整流壁２７が設けられている。なお、前記
通路２５は、別室２３と掃気孔１６とを連通する前記掃
気通路２４から離れた位置に形成されている。また、前
記絞り弁２６は、ピストン１４が上昇するタイミングで
は通路２５の開度を小さくすると共にピストン１４が下
降して掃気孔１６が開孔されるタイミングと相前後する
タイミングで通路２５の開度を大きくするように制御さ
れている。

【００２１】つぎに、前記シリンダ１３の壁部内には一
端が前記エアクリーナ２０を介して大気中に連通して他
端が前記シリンダ１３内へ開孔する第一空気流路２８
と、一端が前記通路２５から離反した位置において前記
別室２３に連通して他端が前記シリンダ１３内へ開孔す
る第二空気流路２９とが形成されており、前記ピストン
１４が上死点近傍の所定位置へ摺動したときにこれらの
第一空気流路２８と第二空気流路２９とを連通させる凹
部３０が前記ピストン１４の外周面に形成されている。
そして、これらの第一空気流路２８と第二空気流路２９
と凹部３０とにより、前記クランク室２２内及び前記別
室２３内が負圧状態となった時に大気中から前記別室２
３内へ空気を吸入する空気吸入路３１が形成されてい
る。なお、前記第一空気流路２８中には前記別室２３内
へ流入する空気量を調節するための絞り弁３２が設けら
れている。

【００２２】このような構成において、図１はピストン
１４が上死点の直前位置へ上昇した状態を示しており、
シリンダ１３内には圧縮された混合気が存在する。そし
て、シリンダ１３内の圧縮混合気が点火栓３３により着
火されることによりシリンダ１３内で爆発が生じ、ピス
トン１４が下降する行程へ移る。なお、ピストン１４が
略上死点へ上昇した際には、クランク室２２内には吸気
孔１７から吸入された混合気が充填され、別室２３内に
は空気吸入路３１から吸入された空気が充填されてい
る。

【００２３】シリンダ１３内での爆発によりピストン１
４が下降を開始すると、まず、凹部３０の位置が第一空
気流路２８と第二空気流路２９に対して連通する位置か
らずれ、別室２３と大気中との連通がなくなる。また、
ピストン１４が下降することによりクランク室２２内の
混合気が加圧されると共にクランク室２２内の圧力が通
路２５を通じて別室２３内へ伝わり、別室２３内の空気
も加圧される。

【００２４】ピストン１４が更に下降すると排気孔１５
の開孔が開始され、シリンダ１３内の燃焼ガスが排気孔
１５からマフラを介して大気中へ排出される。さらに、
排気孔１５の開孔が開始された後のタイミングで掃気孔
１６の開孔が開始され、別室２３内の加圧された空気が
掃気通路２４を通って掃気孔１６からシリンダ１３内へ
流入し、シリンダ１３内に残留している燃焼ガスを排気
孔１５から押し出す掃気作用を行なう。

【００２５】一方、掃気孔１５が開孔されるタイミング
と相前後するタイミングで絞り弁２６の開度が大きくな
り、別室２３内の空気が掃気孔１６からシリンダ１３内
へ流入することに伴ってクランク室２２内の混合気が通
路２５を通って別室２３内へ流入し、別室２３内へ流入
した混合気はこの別室２３及び掃気通路２４を通って掃
気孔１６からシリンダ１３内へ流入する。なお、クラン
ク室２２内の混合気が通路２５を通って別室２３内へ流
入するとき、別室２３内における通路２５に近接した位
置に整流壁２７が設けられているため、この整流壁２７
によって別室２３内へ流入する混合気に作用する粘性抵
抗が増大し、別室２３内の空気との混合が抑えられる。
従って、掃気孔１６からシリンダ１３内へ流入する空気
と混合気とは、混合された状態ではなく分離された状態
となり、空気ついで混合気の順で流入する。

【００２６】ここで、排気孔１５と掃気孔１６とが開孔
されて燃焼ガスの掃気が行なわれる時、まず、掃気孔１
６からシリンダ１３内へは空気が流入し、ついで、混合
気が流入する。従って、燃焼ガスと共に排気孔１５から
排出されるのは先にシリンダ１３内へ流入した空気であ
り、空気の後から混合気がシリンダ１３内へ流入する時
にはこの流入タイミングと相前後するタイミングで排気
孔１５が閉孔されるため、混合気が排気孔１５から大気
中へ排出される吹き抜け現象が起こらない。そして、燃
焼ガスの掃気を確実に行なうために排気孔１５の閉孔タ
イミングを遅くすることが可能になり、燃焼ガスの掃気
を確実に行なえることによってエンジンの出力向上に大
きく寄与することになる。しかも、排気ガス中における
未燃焼成分であるＨＣの量が低減されると共に燃料の無
駄がなくなる。

【００２７】つぎに、下死点まで下降したピストン１４
が上昇する行程へ移り、図１に示すように上死点の近傍
まで上昇したときに吸気孔１７が開孔されると共に、凹
部３０が第一空気流路２８と第二空気流路２９とに対向
して別室２３がエアクリーナ２０を介して大気中に連通
される。そして、ピストン１４が上死点の近傍へ上昇す
ることによってクランク室２２内が負圧状態になると共
にこの負圧状態が通路２５を介して別室２３へも伝わっ
ているため、気化器１９で形成された混合気が吸気孔１
７からクランク室へ吸入されると共に空気が空気吸入路
３１から別室２３内へ吸入される。なお、ピストン１４
が上昇する時には絞り弁２６の開度が小さくなってお
り、クランク室２２内の負圧状態が通路２５により別室
２３へ伝達されると共に前回の行程で別室２３内へ流入
した混合気がクランク室２２内へ吸い戻され、クランク
室２２内へ充填された混合気が別室２３内へ流入すると
いうことが抑えられる。従って、図１に示すようにピス
トン１４が略上死点へ上昇した際には、クランク室２２
内には混合気が充填され、別室２３内には空気のみが充
填された状態となる。

【００２８】尚、本実施例においては、別室２３をクラ
ンクケース１２に形成したものを例に挙げて説明した
が、この別室２３はクランクケース１２と別個に形成し
てもよいものである。

【００２９】また、整流壁２７としてはハニカム構造の
ものを例に挙げて説明したが、薄板を渦巻状に巻回した
構造のものであってもよい。

【００３０】ついで、本発明の第二の実施例を図３に基
づいて説明する。なお、図１及び図２において説明した
部分と同一部分は同一符号で示し、説明も省略する。本
実施例は、一端が別室２３に連通されると共に他端がエ
アクリーナ２０を介して大気中に連通された空気吸入路
３４をシリンダ１３の壁部内に形成し、この空気吸入路
３４中に、大気中から別室２３内への空気の流れのみを
許容する逆止弁３５を設けたものである。

【００３１】このような構成において、ピストン１４の
上昇に伴ってクランク室２２内及び別室２３内が負圧状
態となった際、逆止弁３５が開弁されて大気中の空気が
空気吸入路３４内を通って別室２３内へ吸入される。こ
こで、別室２３内へ空気を吸入するための構造として
は、別室２３と大気中とを連通する空気吸入路３４を設
けると共にこの空気吸入路３４内に逆止弁３５を設けた
ものであるため、簡単な構造となっている。さらに、別
室２３内への空気の吸入はピストン１４が上昇する行程
における略全体にわたって長時間行なわれるようにな
り、別室２３内への空気の充填効率が向上し、燃焼ガス
を掃気する際に掃気孔１６からシリンダ１３内へ流入す
る空気の勢いが強くなり、排気ガスの掃気性能が向上す
る。

【００３２】

【発明の効果】請求項１記載の発明は上述のように、ピ
ストンの摺動に伴なうクランク室内の圧力変動を利用し
てクランク室内へ混合気を吸入すると共に吸入した混合
気を加圧してシリンダ内へ供給するクランクケース圧縮
式の２サイクルエンジンにおいて、前記クランク室内へ
通路により連通されると共に前記クランク室内の圧力変
動に伴って圧力が変動する別室を設け、前記クランク室
内が負圧状態となった時に大気中から前記別室内へ空気
を吸入する空気吸入路を前記通路から離れた位置に設け
ると共に前記別室と掃気孔とを連通する掃気通路を前記
通路から離反した位置に設けたので、排気孔及び掃気孔
が開孔されてシリンダ内の燃焼ガスを掃気する際には、
まず、別室内に吸入されて加圧された空気が掃気通路内
を通って掃気孔からシリンダ内へ流入し、ついで、クラ
ンク室内の混合気が流路から別室内へ流入すると共に掃
気通路内を通って掃気孔からシリンダ内へ流入するた
め、燃焼ガスの掃気に伴って燃焼ガスと共に排気孔から
大気中へ排出されるのは先にシリンダ内へ流入した空気
だけとなり、空気の後から混合気がシリンダ内へ流入す
る時にはこの流入タイミングと相前後するタイミングで
排気孔が閉孔されるため、混合気が排気孔から大気中へ
排出される吹き抜け現象を防止することができ、従っ
て、排気ガス中における未年成分であるＨＣを減少させ
たクリーンエンジンを得ることができると共に燃料の無
駄を無くして燃費を向上させることができ、さらに、排
気孔の閉孔タイミングをシリンダ内へ流入した空気が全
て排気孔から排出されるような遅いタイミングとするこ
とができると共に燃焼ガスの掃気を確実に行なうことが
でき、燃焼ガスの掃気を確実に行なうことによってエン
ジンの出力向上を図ることができる等の効果を有する。

【００３３】請求項２記載の発明は上述のように、請求
項１記載の発明において、ピストンが上昇するタイミン
グでは開度を小さくすると共に前記ピストンが下降して
掃気孔が開孔されるタイミングと相前後するタイミング
で開度を大きくする絞り弁を通路中に設けたので、絞り
弁の開度が小さいピストンの上昇時には、クランク室内
の負圧状態を通路から別室へ伝達することができると共
に前回の行程で別室内へ流入した混合気をクランク室内
へ吸い戻して別室内へは空気のみが充填された状態とす
ることができると共にクランク室内に充填された混合気
が別室内へ流入することを防止することができ、また、
ピストンが下降して掃気孔が開孔されるタイミングと相
前後するタイミングで絞り弁の開度を大きくすることに
より、別室及び掃気通路を介して行なう掃気孔からシリ
ンダ内への混合気の流入を迅速に行なわせることができ
る等の効果を有する。

【００３４】請求項３記載の発明は上述のように、請求
項１又は２記載の発明において、一端が大気中に連通し
て他端が前記シリンダ内へ開孔する第一空気流路と一端
が空気室に連通して他端がシリンダ内へ開孔する第二空
気流路とを前記シリンダの壁部内に形成し、ピストンが
所定位置へ摺動したときに前記第一空気流路と前記第二
空気流路とを連通させる凹部を前記ピストンの外周面に
形成し、これらの第一空気流路と第二空気流路と凹部と
により空気流入路を形成したので、別室内へ空気を吸入
することの制御をピストンの摺動によって行なうことが
でき、空気を吸入するタイミングの狂いによるトラブル
の発生を防止することができる等の効果を有する。

【００３５】請求項４記載の発明は上述のように、請求
項１又は２記載の発明において、大気中から別室内へ向
かう空気の流れのみを許容する逆止弁を空気吸入路中に
設けたので、別室内へ空気を吸入するための構造を簡単
化することができ、また、ピストンが上昇する行程にお
ける広い範囲で別室内へ空気を吸入することができ、従
って、別室内への空気の充填率を高めると共に掃気孔か
らシリンダ内へ流入する空気の勢いを強くして掃気性を
向上させることができる等の効果を有する。

【００３６】請求項５記載の発明は上述のように、請求
項１、２、３又は４記載の発明において、別室内の少な
くとも通路に近接した部分に整流壁を設けたので、クラ
ンク室内の混合気が通路を通って別室内へ流入した時、
整流壁の整流作用によって別室内における混合気と空気
との混合を抑えることができ、従って、掃気孔からシリ
ンダ内へ流入する空気と混合気とを、混合された状態で
はなく分離された状態で空気ついで混合気の順で流入さ
せることができ、従って、混合気の吹き抜け現象をより
一層確実に防止することができる等の効果を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第一の実施例を示す縦断正面図であ
る。

【図２】図１におけるＡ−Ａ線断面図である。

【図３】本発明の第二の実施例を示す縦断正面図であ
る。

【図４】第一の従来例を簡略化して示す縦断正面図であ
る。

【図５】第二の従来例を簡略化して示す縦断正面図であ
る。

【符号の説明】 【符号の説明】

１３ シリンダ １４ ピストン １６ 掃気孔 ２２ クランク室 ２３ 別室 ２４ 掃気通路 ２５ 通路 ２６ 絞り弁 ２７ 整流壁 ２８ 第一空気流路 ２９ 第二空気流路 ３０ 凹部 ３１．３４ 空気吸入路 ３５ 逆止弁

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ピストンの摺動に伴なうクランク室内の
   圧力変動を利用してクランク室内へ混合気を吸入すると
   共に吸入した混合気を加圧してシリンダ内へ供給するク
   ランクケース圧縮式の２サイクルエンジンにおいて、前
   記クランク室内へ通路により連通されると共に前記クラ
   ンク室内の圧力変動に伴って圧力が変動する別室を設
   け、前記クランク室内が負圧状態となった時に大気中か
   ら前記別室内へ空気を吸入する空気吸入路を前記通路か
   ら離れた位置に設けると共に前記別室と掃気孔とを連通
   する掃気通路を前記通路から離反した位置に設けたこと
   を特徴とする２サイクルエンジン。
2. 【請求項２】 ピストンが上昇するタイミングでは開度
   を小さくすると共に前記ピストンが下降して掃気孔が開
   孔されるタイミングと相前後するタイミングで開度を大
   きくする絞り弁を通路中に設けたことを特徴とする請求
   項１記載の２サイクルエンジン。
3. 【請求項３】 一端が大気中に連通して他端が前記シリ
   ンダ内へ開孔する第一空気流路と一端が空気室に連通し
   て他端がシリンダ内へ開孔する第二空気流路とを前記シ
   リンダの壁部内に形成し、ピストンが所定位置へ摺動し
   たときに前記第一空気流路と前記第二空気流路とを連通
   させる凹部を前記ピストンの外周面に形成し、これらの
   第一空気流路と第二空気流路と凹部とにより空気流入路
   を形成したことを特徴とする請求項１又は２記載の２サ
   イクルエンジン。
4. 【請求項４】 大気中から別室内へ向かう空気の流れの
   みを許容する逆止弁を空気吸入路中に設けたことを特徴
   とする請求項１又は２記載の２サイクルエンジン。
5. 【請求項５】 別室内の少なくとも通路に近接した部分
   に整流壁を設けたことを特徴とする請求項１、２、３又
   は４記載の２サイクルエンジン。