JPH0726424A - ピッチ系炭素繊維の製造方法 - Google Patents
ピッチ系炭素繊維の製造方法Info
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Abstract
する。 【構成】 異方性ピッチから炭化及び/又は黒鉛化した
炭素繊維を製造する方法において、異方性ピッチを溶融
紡糸し、得られたピッチ単繊維を集束して得られるピッ
チ繊維トウを、受器に積載した状態で不融化処理及び一
次炭化処理し、得られた一次炭化繊維を、張力を付加し
て線状に走行させながら、水蒸気を含有する不活性ガス
雰囲気中で炭化処理を行って炭素繊維を形成させる工程
を包含し、必要に応じて、その後水蒸気を含有しない不
活性ガス中で炭化及び/又は黒鉛化処理をするピッチ系
炭素繊維の製造方法。 【効果】 開繊性及びストランド強度が向上するため、
毛羽発生が防止され、製品の品質及び生産効率が向上す
る。
Description
法に関するものであり、より詳しくは開繊性に優れ、高
ストランド強度を有し、かつ毛羽立ちのない炭素繊維の
製造法に関する。
材料であり、高性能複合材料のフィラー繊維として注目
されている。現在、炭素繊維はポリアクリロニトリル
(PAN)を原料とするPAN系炭素繊維とピッチ類を
原料とするピッチ系炭素繊維が製造されているが、一般
に開発が先行していたためにPAN系がより広く使用さ
れ、高強度、高弾性の高特性炭素繊維としても主にPA
N系炭素繊維が種々の工夫を加えて使用されている現状
にある。
高弾性化することには限界がある点で難点を有してい
る。また、その原料であるPANが高価であること、原
料当りの炭素繊維の収量が低いという難点も有してい
る。そこで、近年、より高弾性な特徴を有し、より広範
な用途の期待されるピッチ系炭素繊維の高特性化が種々
検討されている。
原料として使用していた等方質ピッチの代りに、原料ピ
ッチを加熱処理して、異方性が発達し、配向しやすい分
子種が形成されたピッチ、いわゆるメソフェーズピッチ
を使用する方法(特公昭49−8634号公報)が提案
されて以来、主に紡糸ピッチの性状を調節することによ
って行われている。
は、原料ピッチを不活性ガス雰囲気下に加熱処理して高
度に配向されたメソフェーズを形成し、このメソフェー
ズを40〜90重量%含有するピッチを紡糸ピッチとす
る方法が提案されている。しかし、かかる方法により等
方質の原料ピッチをメソ化するには長時間を要するの
で、特開昭54−160427号公報には、あらかじめ
原料ピッチを十分量の溶媒で処理しておくことにより、
短時間でメソ化を行う方法を提案している。すなわち、
原料ピッチをベンゼン、トルエン等の溶媒で処理してそ
の不溶分を得、それを230〜400℃の温度で10分
以下の短時間加熱処理して、高度に配向され、光学的異
方性部分が7.5重量%以上で、キノリン不溶分が25
重量%以下のいわゆるネオメソフェーズを形成し、この
ネオメソフェーズピッチを紡糸ピッチとする方法を提案
している。
紡糸して、ピッチ繊維を得、次いで不融化、炭化、ある
いは、更に黒鉛化することにより高強度、高弾性等の高
特性炭素繊維が製造される。ところで、こうして得られ
る炭素繊維は、通常エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フ
ェノール樹脂等のマトリックス樹脂に含浸され、いわゆ
るプリプレグとし、これを種々の成形法にて成形し、繊
維強化プラスチックとしてレジャー・スポーツ用や、各
種工業用資材として用いられている。したがって前記炭
素繊維強化プラスチックの機械的特性を充分に発現させ
るためには、一本一本の炭素繊維自体の高強度、高弾性
等の機械的特性と同時に、炭素繊維がマトリックス樹脂
中で、良好に分散し、炭素繊維自体の機械的特性が充分
に発揮されることが重要な要因となる。
かに大きくても該繊維トウのマトリックス樹脂中での分
散が不良では、炭素繊維強化プラスチックの機械的機能
は不充分なものになってしまうということである。そこ
でまずマトリックス樹脂中での分散性に対しては使用す
る炭素繊維トウを構成する単繊維同士の融着がないこ
と、すなわち該トウが充分に開繊されなければならな
い。ここで「繊維トウ」とは、多数のフィラメントから
なる繊維の束で、よりのかかっていないもの、あるいは
よりのかかっているものをいう。
必須の要因となる炭素繊維トウの単繊維間融着防止ある
いは該トウの開繊について述べる。前記のピッチ系炭素
繊維製造工程において不融化処理された不融化繊維ト
ウ、及び炭化又は黒鉛化処理された炭素繊維トウは、前
の工程で用いられた集束剤、サイジング剤等の油剤や各
工程での繊維自体の熱変質などのために単繊維同士が融
着し、品質むらを呈したり、マトリックス樹脂中での単
繊維分散が不均一となり、複合材料の均質性を損ったり
するので、不融化、炭化又は黒鉛化のいずれかの段階
で、しなやかで融着のない状態に開繊しなければならな
い。
としてはピッチ繊維表面に無機微粒子を付着させてから
不融化処理する方法(特開昭62−28411号、同6
1−160422号)、不融化処理後、高周波の機械的
振動を施して繊維の表面を浄化する方法(特公昭62−
8521号)、ピッチ繊維又は不融化繊維表面を液体で
洗浄する方法(特開平1−282315号)等が提案さ
れている。
開繊方法としては、繊維トウに乱気流処理を施す方法、
バー、ワイヤー、回転ピン等のガイドにジグザグに屈曲
させながら通過させる方法、凸状の曲面を有するロール
の曲面に接触させる方法(特開昭55−57015
号)、2個以上のテーパーローラーの傾斜面に当接させ
る方法(特開昭61−124645号)、及び流体中で
開繊する方法(特開昭57−89638号)等が提案さ
れている。また、この他に、炭素繊維又は不融化繊維の
表面を、酸素を含有するガス等で処理し、開繊又は炭素
繊維の強度を向上させる方法(特開昭61−21571
6号、同63−165523号、同63−175122
号)が知られている。これらはいずれも酸素を含む不活
性ガス中で炭素繊維を処理し、表面を若干エッチングす
ることにより目的を達するものである。
法、例えば、無機微粒子を付着させる方法や繊維表面を
洗浄する方法では、繊維表面を傷付けるため、毛羽の発
生や、繊維トウの破断、あるいは繊維トウの不ぞろい等
の問題がある。また、機械的な開繊方法では、設備コス
トが高い割には開繊効果が不充分である。
等で処理する方法では、酸素ガスは、炭素繊維と大きな
発熱を伴って反応するために、反応の制御が難しく、一
部のフィラメントで過酸化反応が進行し、充分に満足で
き、高いストランド強度を有する炭素繊維を得ることが
できなかった。本発明の目的は、これら問題点のない、
高特性のピッチ系炭素繊維の製造方法を提供することに
ある。
発明はピッチ系炭素繊維の製造方法に関する発明であっ
て、異方性ピッチから炭化及び/又は黒鉛化した炭素繊
維を製造する方法において、異方性ピッチを溶融紡糸
し、得られたピッチ単繊維を集束して得られるピッチ繊
維トウを、受器に積載した状態で不融化処理及び一次炭
化処理し、得られた一次炭化繊維を、張力を付加して線
状に走行させながら、水蒸気を含有する不活性ガス雰囲
気中で炭化処理を行って炭素繊維を形成させる工程を包
含することを特徴とする。
繊及びストランド強度向上を図る方法について鋭意検討
を重ねた結果、ピッチ単繊維を集束して得られるピッチ
繊維トウを、受器に積載した状態で、不融化処理及び一
次炭化処理し、得られた一次炭化繊維を、張力を付加し
て線状に走行させながら、水蒸気を含有する不活性ガス
雰囲気中での炭化処理(以下、「水蒸気炭化処理」とい
う)を行うことにより、開繊性が良好で、かつ毛羽立ち
がなく、高ストランド強度を有する炭素繊維トウを製造
できるという画期的な方法を見出した。
を含有しない不活性ガス雰囲気下、前記水蒸気炭化処理
の温度より高い温度で炭化処理及び/又は黒鉛化処理す
ることにより繊維トウの強度、弾性率をその使用目的に
応じて自由に制御することができることを見出し、本発
明を完成した。一般的な炭素繊維トウの引張強度を、マ
トリックス樹脂中での分散性を含めて評価する方法とし
て、炭素繊維の樹脂含浸ストランドの試験法(JIS
R 7601−1986 6.6.2)があり、本発明
はこの方法での強度が、高強度である炭素繊維の製造方
法に関するものであり、あるいは炭素繊維の単繊維の試
験法(JIS R 7601−1986 6.6.1)
により求めた単繊維自体の強度に匹敵する樹脂含浸スト
ランド強度を発現する炭素繊維の製造法に関するもので
ある。
用いる炭素繊維を得るための紡糸ピッチとしては、配向
しやすい分子種が形成されており、光学的に異方性の炭
素繊維を与えるようなものであれは特に制限はなく、前
記のような従来の種々のものが使用できる。これら紡糸
ピッチを得るための炭素質原料としては、例えば、石炭
系のコールタール、コールタールピッチ、石炭液化物、
石油系の重質油、タール、ピッチ又はナフタレンやアン
トラセン等の芳香族炭化水素の触媒反応による重合反応
生成物等が挙げられる。
未溶解石炭、灰分、触媒等の不純物が含まれているが、
これらの不純物はろ過、遠心分離、あるいは溶剤を使用
する静置沈降分離などの周知の方法があらかじめ除去し
ておくことが望ましい。また、前記炭素質原料を例え
ば、加熱処理した後、特定溶剤で可溶分を抽出する方
法、あるいは水素供与性溶剤、水素ガスの存在下に水素
添加する方法等で予備処理を行っておいても良い。
は70%以上、更に好ましくは90%以上の光学的異方
性組織を含む炭素質原料が好適である。このためには前
記炭素質原料あるいは予備処理を行った炭素質原料を、
必要に応じて通常350〜500℃、好ましくは380
〜450℃で、2分〜50時間、好ましくは5分〜5時
間、窒素、アルゴン、水蒸気等の不活性ガス雰囲気下、
あるいは、吹込み下に加熱処理することもできる。
合は、常温下、偏光顕微鏡でのピッチ試料中の光学的異
方性を示す部分の面積割合として求めた値である。具体
的には、例えばピッチ試料を数mm角に粉砕したものを
常法に従って約2cm直径の樹脂の表面のほぼ全面に試
料片を埋込み、表面を研磨した後、表面全体をくまなく
偏光顕微鏡(倍率100倍)下で観察し、試料の全表面
積に占める光学的異方性部分の面積の割合を測定するこ
とによって求める。
し、ピッチ繊維を得るのであるが、ピッチ単繊維の断面
構造はランダム配向であることが望ましい。ここでラン
ダム配向であるとは、実質的にラジアル配向でないこと
を意味する。これは後で述べる水蒸気炭化処理を行う際
に繊維軸方向に伸びるくさび状のクラックの発生を抑え
るために重要である。
維を得る紡糸方法としては、例えば、紡糸ピッチを網目
層を通過させた後、紡糸ノズルへ供給し紡糸する方法が
ある。ここで網目層とは、紡糸ピッチ流通路内であっ
て、紡糸ノズルより上流部に配設されたものであり、溶
融状態の紡糸ピッチが該層を通過することにより、紡糸
ピッチの流れを細分化し、かつ該層を通過する間に紡糸
ピッチのメソフェーズの積層状態が乱れ、その結果実質
的にラジアル配向でない繊維断面構造を有するピッチ繊
維を与えるものである。網目層を構成する網としては、
具体的には350〜400℃程度の温度に充分耐えられ
るような、ステンレス鋼、銅、アルミニウム等の金属材
料、又はセラミック、ガラス、黒鉛等の無機質材料の微
細な繊維を平織、綾織あるいは畳織したものである。
もの、あるいは金属板に成型工具でスリットを入れて、
それを引張って得られるいわゆるエキスバンドメタルの
ようなものも使用される。網目の大きさは、目開きが大
きすぎると得られる繊維の断面構造を細分化してラジア
ル配向でない構造とする効果が減少するので、目開きは
小さいもの程好ましい。具体的には目開きが50メッシ
ュより小さいもの、好ましくは100メッシュより小さ
いもの、更に好ましくは200メッシュより小さなもの
が用いられる。これらの網は1枚でもよく、5枚程度ま
で重ねて用いることもできるが、網目層の厚さとして2
mm以下となるよう構成することが好ましい。
単繊維としての破断強度が低く、ガイド、ローラー等で
の毛羽の発生を防止するため、集束剤で集束してピッチ
繊維トウを得る。ここで集束剤としては、ピッチ繊維の
一部を溶解したり、不融化処理の際に繊維同士を接着又
は融着させたりすることの少ないものが必要であり、例
えばシリコーン油の水エマルジョンが好ましい。
能であるが、ピッチ繊維に対するシリコーン油の付着量
を制御するためにはシリコーン油の水エマルジョンとし
て使用することが望ましい。具体的なシリコーン油とし
ては、通常ジメチルポリシロキサンが用いられるが、こ
のジメチルポリシロキサンに種々の基を導入して変性し
たものも用いられる。具体的には、例えばメチルフェニ
ルポリシロキサン、ハイドロジェンポリシロキサンが挙
げられるが、その他エポキシ基、エチル基、プロピル基
等のアルキル基、アミノ基、カルボキシル基、アルコキ
シ基、フェニル基、ポリエーテル基の1種又は2種以上
で変性したものが用いられる。また、これらのシリコー
ン油は、1種又は2種以上の混合物を用いてもよい。
合装置、例えば高速ミキサー、コロイドミル、ホモゲナ
イザー等を用いてシリコーン油が0.1〜35重量%と
なるように水と混合することによって調製される。エマ
ルジョンの形成に当っては、シリコーン油の濃度が高く
なって良好なエマルジョン状態が維持できなくなる場合
は乳化剤を0.25〜2重量%添加すればよい。乳化剤
は従来公知のものでよく、ソルビタン脂肪酸エステル、
例えばソルビタンパルミチン酸エステル、ソルビタンス
テアリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂
肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンカプロン
酸エステル、ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、
アセチル化モノグリセリド、アセチル化グリセリルモノ
ステアレート及びポリオキシエチレンラノリン誘導体等
の非イオン系乳化剤、アルキル硫酸エステル、ナトリウ
ムラウリルサルフェート、ナトリウムセチルサルフェー
ト、ジアルキルスルホサクシネート、ジ−2−エチルヘ
キシルスルホサクシネート(ナトリウム塩)等のアニオ
ン系乳化剤、又は塩化アルキルピリジニウム等のカチオ
ン系乳化剤が例示される。
る。受器の材質としては、次に行われる不融化処理及び
/又は一次炭化処理に耐えるものであればよく、例え
ば、金属材質のもの、セラミック材質のもの、あるいは
アルミナ繊維によるもの等が挙げられ、形状としては処
理を均一に行わせるため、網状のものが望ましい。受器
に積載する方法としては、ピッチ繊維トウの嵩密度が
0.5kg/リットル以下でかつ嵩高さが200mm以
下、好ましくは嵩密度が0.3kg/リットル以下でか
つ嵩高さが80mm以下であることが望ましい。0.5
kg/リットルを超える嵩密度及び/又は200mmを
超える嵩高さに積載した場合には次に行われる不融化の
際に発生する酸化熱を除熱することが極めて困難であり
均質な処理が行えないからである。
器に積載されたまま不融化処理される。ピッチ繊維の段
階では糸の強度が1〜5kg/mm2 程度と低く、張力
をかけて取扱うとフィラメントの切断が避け難いため、
受器に積載したまま処理することが毛羽立ちのない炭素
繊維を得るのに有効である。不融化処理は通常空気、オ
ゾン、二酸化窒素等の酸化性雰囲気中で行う。処理温度
としては150〜300℃が望ましい。150℃未満で
は反応速度が遅いため、極めて長時間を要し、工業的に
不利である。また300℃を超える温度では酸化による
発熱量が大きくなりすぎて除熱がうまくできず、均質な
処理が困難である。
は、0.1℃/分以下であることが望ましい。0.1℃
/分を超える速度で昇温を行った場合、単位時間当りの
発熱量が大きくなり均質な処理が困難である。不融化処
理によって得られた不融化繊維トウは、受器に積載され
た状態のまま熱処理して一次炭化繊維トウを得る。
の際に付加する張力に対して充分な破断強度を得させる
ために行うもので、不活性雰囲気中で、通常400〜5
50℃で処理する。上記の一次炭化繊維トウを、張力を
付加して線状に走行させながら、水蒸気を含有する不活
性ガス雰囲気中での二次炭化処理、すなわち水蒸気炭化
処理を行って炭素繊維トウを得る。この時、一次炭化繊
維トウにあらかじめよりをかけておくことも必要に応じ
て行うことができる。
000g/mm2 であることが望ましい。付加する張力
が150g/mm2 未満であると得られた炭素繊維トウ
の糸ぞろいが不十分となり、3000g/mm2 を超え
ると繊維トウ内で部分的な破断を生じ毛羽の発生が増大
する。一次炭化繊維に張力を付加する際に、一次炭化繊
維に工程油を添着すると毛羽の発生を防止するのに更に
効果的である。これは工程油を添着することにより、単
繊維間の滑りが良くなり張力が均一にかかりやすくなる
ばかりでなく、ガイド、ローラーに対する滑りも良くな
り、ガイド、ローラーとのこすれによる毛羽発生が防止
されるためである。工程油としては、例えばシリコーン
油又はシリコーン油の水エマルジョン、多価アルコー
ル、エーテル類、ワックス等を用いることができる。
昇温する速度は、1000℃/秒以下、好ましくは25
0℃/秒以下にすることが望ましい。これは、一次炭化
繊維中には酸素等の揮発成分が残っており、700〜1
2000℃の温度域でこの揮発成分が繊維から抜ける
時、繊維は収縮するため1000℃/秒を超える急激な
昇温を行うと、欠陥が生じやすくなるためである。
ンガス等の不活性ガスと水蒸気濃度が通常1%以上、好
ましくは10%以上の水蒸気との混合ガス雰囲気下で、
通常500〜1800℃、好ましくは1100〜130
0℃の温度範囲において通常0.1秒〜20分、好まし
くは5秒〜1分の時間で加熱処理される。以上のような
方法で一次炭化繊維を水蒸気含有雰囲気下で加熱処理す
ることにより、該繊維の開繊及びストランド強度の大幅
な向上が達成される。
れ、各単繊維のマトリックス樹脂中での分散性が向上
し、ストランド強度が向上するが、また各単繊維単位で
みる単繊維強度も向上しており、これは、単繊維間の融
着により発生した表面欠陥を水蒸気ガスかエッチングに
より除去したことによる効果も含まれていると推定され
る。
り除去しようとした試みは前述のごとくなされてきた
が、いずれも酸素ガス等の大きな発熱を伴う方法による
ものであった。本発明で用いる水蒸気ガスが、特に大き
な効果を示すのは、炭素繊維表面の炭素と水蒸気との反
応が、500〜1800℃程度の温度では吸熱反応か又
は微少な発熱反応であることにより、特に過酸化等によ
る強度劣化を起こさないためであると推定される。ここ
で水蒸気ガスによる反応効果の指標として下記式(数
1)で定義される「水蒸気反応重量減少率」を用いるこ
とができる。
A }×100 WA :不活性ガス雰囲気中で炭化処理した繊維の単位長
さ当りの重量 WB :不活性ガス雰囲気に水蒸気を加えた雰囲気中で水
蒸気炭化処理した繊維の単位長さ当りの重量
れ、かつ高ストランド強度を有する炭素繊維を得るに
は、この水蒸気炭化処理での重量減少率の値が、通常1
%以上、好ましくは3%以上となるように水蒸気炭化処
理の温度と時間を組合せて設定することが望ましい。以
上のように水蒸気炭化処理を行って得られた炭素繊維
は、更に弾性率を高める等のために必要に応じてさらに
水蒸気を含有しない不活性ガス雰囲気中での炭化処理及
び/又は黒鉛化処理を行うことができる。また、上記炭
化処理及び/又は黒鉛化処理の後、必要に応じて、表面
処理及び/又はサイジング処理を周知の方法に従って行
うこともできる。
るが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例
によって限定されるものではない。
0℃、かつ偏光顕微鏡下で観察した光学的異方性割合が
95%の紡糸ピッチを調製した。これをノズル径0.1
mm、孔数4000の紡糸口金を用い口金温度330℃
で溶融紡糸し、得られた12μmのピッチ繊維にシリコ
ーン系の油剤を付着させ集束した。このピッチ繊維トウ
をステンレス鋼金網製の受器に嵩密度0.2kg/リッ
トル、嵩高さ50mmになるよう積載し、100℃から
0.02℃/分の昇温速度で220℃まで昇温し、10
時間空気中で加熱処理することにより不融化繊維トウを
得た。この不融化繊維トウを受器に積載した状態のま
ま、更に窒素ガス雰囲気中で470℃、4時間熱処理を
して一次炭化繊維トウを得た。
m2 の張力を付加して水蒸気を20%含む窒素ガス雰囲
気中で1200℃、滞留時間30秒の条件で加熱処理し
た。水蒸気反応重量減少率は6.5%であった。かくし
て得られた炭素繊維は繊維同士の融着がなくマトリック
スのエポキシ樹脂中に含浸し、130℃、30分で乾燥
硬化させ、該トウの長手方向に対する横断面を顕微鏡に
より観察すると単繊維がエポキシ樹脂マトリックス中に
均一に分散し、優れた均質性を示し、かつ毛羽立ちもな
く、また取扱い性も良好であった。
樹脂含浸ストランド物性をJISR 7601の方法に
より測定したところ下記の通りであった。
留時間30秒で黒鉛化処理した。
性に優れたものであった。得られた繊維の物性は下記の
通りであった。
製の受器に嵩密度0.2kg/リットル、嵩高さ80m
mになるよう積載し、100℃から0.01℃/分の昇
温速度で240℃まで昇温し、2時間空気中で加熱処理
することにより不融化繊維トウを得た。この不融化繊維
トウを受器に積載した状態のまま、更に窒素ガス雰囲気
中で470℃、4時間熱処理をして一次炭化繊維トウを
得た。この一次炭化繊維トウを1300g/mm2 の張
力を付加して水蒸気を25%含む窒素ガス雰囲気中で1
200℃、滞留時間40秒の条件で加熱処理した。水蒸
気反応重量減少率は10.5%であった。
あった。
留時間40秒で黒鉛化処理した。
た。
製の受器に嵩密度0.6kg/リットル、嵩高さ250
mmになるよう積載し、100℃から0.02℃/分の
昇温速度で220℃まで昇温し、10時間空気中で加熱
処理することにより不融化処理しようとしたが、不融化
の際に発生する酸化熱を除熱することが出来ず、繊維ト
ウが燃焼してしまった。
m2 の張力を付加して水蒸気を20%含む窒素ガス雰囲
気中で1200℃、滞留時間30秒の条件で加熱処理し
ようとしたが、繊維トウの糸切れが激しく発生したた
め、繊維物性を測定するに至らなかった。
点の一つとされてきた開繊性とストランド強度に対して
大幅な向上が達成される。また、ぜい弱なピッチ繊維の
取扱いに対して、充分配慮することにより、工程中での
毛羽発生が防止され製品の品質が向上するばかりでな
く、生産効率が向上し、製造コストの大幅な低減化を実
現することができる。また、本発明で得られた炭素繊維
は開繊性に優れているので、加工中に単繊維の一部が切
断したり、毛羽立ったりすることがなく、各種繊維強化
複合材に非常に有用である。
Claims (2)
- 【請求項1】 異方性ピッチから炭化及び/又は黒鉛化
した炭素繊維を製造する方法において、異方性ピッチを
溶融紡糸し、得られたピッチ単繊維を集束して得られる
ピッチ繊維トウを、受器に積載した状態で不融化処理及
び一次炭化処理し、得られた一次炭化繊維を、張力を付
加して線状に走行させながら、水蒸気を含有する不活性
ガス雰囲気中で炭化処理を行って炭素繊維を形成させる
工程を包含することを特徴とするピッチ系炭素繊維の製
造方法。 - 【請求項2】 請求項1に記載の工程で得た炭素繊維
を、水蒸気を含有しない不活性ガス雰囲気中でさらに炭
化処理及び/又は黒鉛化処理する請求項1に記載のピッ
チ系炭素繊維の製造方法。
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---|---|---|---|
JP16899093A JP3321913B2 (ja) | 1993-07-08 | 1993-07-08 | ピッチ系炭素繊維の製造方法 |
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JP16899093A JP3321913B2 (ja) | 1993-07-08 | 1993-07-08 | ピッチ系炭素繊維の製造方法 |
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JPH0726424A true JPH0726424A (ja) | 1995-01-27 |
JP3321913B2 JP3321913B2 (ja) | 2002-09-09 |
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KR20160000154A (ko) * | 2014-06-24 | 2016-01-04 | 코오롱인더스트리 주식회사 | 활성탄소섬유 어망 및 그의 제조방법 |
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1993
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