JPH0719993Y2 - 船尾小翼付き船舶 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、船尾端部をほぼ軸対称に形成された船舶に関
し、特に船尾端部の後方に設けられたスクリュープロペ
ラへ流入する流れに、回転成分を与えるようにした船尾
小翼付き船舶に関する。

〔従来の技術〕

従来、船尾端部の船体形状がほぼ軸対称に近い船舶とし
ては、第２図（側面図）に示すようなものがある。

このような軸対称に近い船尾端部１の後方で、同船尾端
部１の中心軸線と同心的に配設されたスクリュープロペ
ラ２が作動するようになっており、これにより船体の推
進が行なわれる。

上述の船舶のスクリュープロペラ２の位置における半径
方向の流れの速度分布は、第３図に示すようになる。

〔考案が解決しようとする課題〕

ところで、前述のような従来の船舶では、スクリュープ
ロペラ２の回転作動中に、第２図に示すように、プロペ
ラ２の翼端から翼端渦４が発生すると同時に、同プロペ
ラ２のハブ３の先端からハブ渦５が発生する。

ここで、ハブ渦５の回転方向はスクリュープロペラ２の
回転方向と同一であり、翼端渦４の回転方向はスクリュ
ープロペラ２の回転方向と逆向きである。

特に、回転体に近い形状の船尾端部１を有する船舶で
は、第３図に示すように、プロペラ翼根部のハブ近傍に
おける速度が遅いので、プロペラ翼根部における荷重度
が増大し、第２図に示すごとく強いハブ渦５が発生する
ことになる。

ハブ渦５はプロペラ後流にプロペラ２と同一方向の回転
流を与えるのみで、プロペラ推力の増大には寄与しな
い。したがって、ハブ渦５を発生させるために与えられ
たエネルギーは推力に変換されず、推進効率が低下する
ことになる。

また、ハブ渦５の中心部は圧力が低下するため、ハブボ
ルテックスキャビテーション６と呼ばれる渦キャビテー
ションが発生して、その雑音により調査船等の水中音響
機器が使用できなくなるという問題点もある。

本考案は、このような問題点の解決をはかろうとするも
ので、ほぼ軸対称の形状を有する船尾端部の後方に配設
されたスクリュープロペラからハブ渦が発生しないよう
に、スクリュープロペラの翼根部付近へ流入する流れに
スクリュープロペラの回転方向と逆向きの回転成分を与
える小翼を設けて、推進効率の向上をはかるとともに、
ハブボルテックスキャビテーションによる雑音を防止で
きるようにした、船尾小翼付き船舶を提供することを目
的とする。

〔課題を解決するための手段〕

上述の目的を達成するため、本考案の船尾小翼付き船舶
は、船尾端部の船体形状をほぼ軸対称に形成されるとと
もに、同船尾端部の後方に、その中心軸線と同心的にス
クリュープロペラをそなえた船舶において、上記スクリ
ュープロペラの直前の船体外周部に、上記スクリュープ
ロペラの翼根部付近へ流入する流れを同スクリュープロ
ペラの回転方向と逆向きにひねるように角度を付された
複数の小翼が放射状に突設されて、上記中心軸線から上
記小翼の先端までの長さが、上記スクリュープロペラの
プロペラ半径の70％以下に設定されたことを特徴として
いる。

〔作用〕

上述の本考案の船尾小翼付き船舶では、船舶の航走時
に、その船尾端部の外周に放射状に突設された複数の小
翼により、船尾のスクリュープロペラへ流入する流れが
スクリュープロペラの翼根部付近でその回転方向と逆向
きにひねられる。

このようにして逆向きの流れがスクリュープロペラの翼
根部に流入すると、スクリュープロペラから生じるハブ
渦と打ち消し合うので、ハブ渦は消滅するかまたは大幅
に減少する。

〔実施例〕 以下、図面により本考案の一実施例としての船尾小翼付
き船舶について説明すると、第１図はその船尾側面図で
あって、船尾端部１の船体形状をほぼ軸対称に形成され
た船舶において、同船尾端部１の後方に、その中心軸線
Ａと同心的にスクリュープロペラ２が装備されている。

また、スクリュープロペラ２の直前の船体外周部に、ス
クリュープロペラ２の翼根部付近へ流入する流れ８をス
クリュープロペラ２の回転方向と逆向きにひねるように
角度αを付された複数（本実施例では４枚）の小翼７が
設けられ、これらの小翼７は、船尾端部１の外周部にお
ける軸対称位置から放射状に突出するように配設されて
いる。

そして、中心軸線Ａから各小翼７の先端までの長さ（突
出長さ）ｒは、スクリュープロペラ２のプロペラ半径Ｒ
の70％以下に設定されている。

本実施例の船尾小翼付き船舶は上述のように構成されて
いるので、スクリュープロペラ２の直前において船尾端
部１の外周部から放射状に突設された複数の小翼７によ
り、スクリュープロペラ２へ流入する流れが、スクリュ
ープロペラ２の翼根部の近傍で適切にスクリュープロペ
ラ２の回転方向と逆向きにひねられるようになる。

このようにして逆向きの流れがスクリュープロペラ２の
翼根部に流入すると、そのハブ３の外周面に沿う流れ８
がスクリュープロペラ２から生じようとするハブ渦と打
ち消し合うようになり、ハブ３の後端から流出するはず
のハブ渦（第２図の符号５参照）が消滅するか、または
弱められて、ハブボルテックスキャビテーション（第２
図の符号６参照）も消滅するか、または大幅に軽減され
るようになる。

したがって、スクリュープロペラ２の推進効率が、向上
するほか、ハブボルテックキャビテーションによる雑音
の発生も防止されるようになる。

特に、本考案の船尾小翼付き船舶では、各小翼７の前述
の突出長さｒがプロペラ半径Ｒの70％以下に設定されて
いることにより、各小翼７はハブ渦を打ち消すのに効率
よく作用し、また小翼７自体の先端からの雑音の発生も
防ぐことができる。

〔考案の効果〕

以上詳述したように、本考案の船尾小翼付き船舶によれ
ば、次のような効果ないし利点が得られる。

（１）スクリュープロペラの直前において、同プロペラ
の回転方向と逆向きに流れをひねる複数の小翼が、ほぼ
軸対称の船尾端部の船体外周部に放射状に突設されて、
各小翼の突出長さがプロペラ半径の70％以下に設定され
ているので、スクリュープロペラへ流入する流れが、そ
のハブの近傍でハブ渦の発生を適切に抑制するようにな
る。

（２）上記（１）項によりハブ渦の発生が抑制されるの
で、ハブボルテックスキャビテーションが消滅するか、
または大幅に軽減されるようになり、また、上記（１）
項により小翼の先端からの雑音発生も防止されるので、
調査船等における水中音響機器が、支障なく使用できる
ようになる。

（３）上記（１）項により、ハブ渦の発生が抑制される
ので、推進効率も著しく向上するようになる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例としての船尾小翼付き船舶の
船尾側面図、第２図は従来の船舶の船尾側面図、第３図
は上記従来の船舶のプロペラ位置における流速分布図で
ある。 １……船尾端部、２……スクリュープロペラ、３……ハ
ブ、４……翼端渦、５……ハブ渦、６……ハブボルテッ
クスキャビテーション、７……小翼、８……流れ、Ａ…
…中心軸線、α……傾斜角度。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】船尾端部の船体形状をほぼ軸対称に形成さ
   れるとともに、同船尾端部の後方に、その中心軸線と同
   心的にスクリュープロペラをそなえた船舶において、上
   記スクリュープロペラの直前の船体外周部に、上記スク
   リュープロペラの翼根部付近へ流入する流れを同スクリ
   ュープロペラの回転方向と逆向きにひねるように角度を
   付された複数の小翼が放射状に突設されて、上記中心軸
   線から上記小翼の先端までの長さが、上記スクリュープ
   ロペラのプロペラ半径の70％以下に設定されたことを特
   徴とする、船尾小翼付き船舶。