JPH0718458A - 水落下性に優れた親水性表面処理ＡｌまたはＡｌ合金製フィン材およびその製造方法、並びに熱交換器のコア - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 親水性皮膜による親水性が劣化して水接触角
が上昇する傾向を示した場合であっても、良好な水落下
性を長期に亘って維持して耐久性を向上させたＡｌ（ま
たはＡｌ合金）製フィン材を提供する。 【構成】 少なくとも前記親水性皮膜表面には、縞模様
のうねりが形成されると共に、該うねりはピッチ：１〜
８mm，高さ：０．１〜３μｍである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ＡｌまたはＡｌ合金製
（以下、単にＡｌ製と言うこともある）基材の表面に、
親水性に優れた皮膜を形成した親水性表面処理Ａｌ製フ
ィン材およびその製造方法、並びに該フィン材を応用し
た熱交換器のコアに関するものであり、殊に経時変化に
よって前記皮膜の親水性が劣化した場合にあっても、良
好な親水性を維持して優れた水落下性を示す親水性表面
処理Ａｌ製フィン材およびその様なフィン材を製造する
為の方法、並びに該フィン材の特性を有効に利用した熱
交換器のコア等に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】各種熱交換器においては、放熱面積を増
大して熱交換特性を向上させる為にフィン材が装備され
ており、またフィン材の基材として、加工性，経済性お
よび熱伝導性等を考慮してＡｌ板（またはＡｌ合金板）
が汎用されている。ところで、熱交換器が特に空気調和
機の蒸発器等である様な場合には、フィン材の表面温度
が大気の露点以下となるので、フィン材表面には空気中
の湿分が結露し水滴となって付着する。そしてこの水滴
がだんだん成長して大きくなると、最後にはフィンの間
に水が滞留してしまい、熱交換の為に通過する空気の通
過抵抗を増大させ、熱交換効率が低下してしまうという
現象が起こる。この様な不都合は、熱交換器の性能向上
および小型化を図ってフィンピッチを狭くした場合にお
いて特に顕著に現われる。

【０００３】こうしたことから、熱交換器における熱交
換効率を長期に亘って高く維持する為には、水の落下性
を促進してフィン表面における水の滞留を防止する必要
がある。一般に、水の落下を促進する手段としては、
（Ａ）フィン表面に水が付着しない様にする撥水処理
と、（Ｂ）フィン表面の濡れ性（親水性）を良好にし
て、即ち水接触角（フィン材表面と水滴表面とがなす角
度）を小さくして、水が流れ落ちる抵抗とならず、広範
囲な経路を形成する様な親水性表面処理とがあるが、こ
のうち特に汎用されているのは後者の手段である。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】親水性表面処理は、Ａ
ｌ製フィン材表面に親水性皮膜を形成するのが一般的で
あるが、この様な親水性表面処理Ａｌ製フィン材の物性
は、前記水接触角によって規定され、この水接触角が１
０度以下のものが一般的に用いられている。しかしなが
ら、親水性表面処理Ａｌ製フィン材における親水性は、
経時変化によって徐々に劣化し、前記水接触角も徐々に
数値が上昇して３０〜６０度以上にもなり、耐久性の点
で問題がある。フィン材の親水性が上記の様に劣化する
と、結露水はフィン材表面を弾く傾向を示す様になり、
該結露水は落下し難くなって個々に凝集し、相当大きな
水滴となる。そうなるとフィン間に水が張ってしまい、
熱交換の為の空気が通過できなくなり、熱交換器として
の性能を低下させることになる。

【０００５】本発明は上記の様な課題を解決する為にな
されたものであって、その目的は、親水性皮膜による親
水性が劣化して水接触角が上昇する傾向を示した場合で
あっても、良好な水落下性を長期に亘って維持して耐久
性を向上させたＡｌ（またはＡｌ合金）製フィン材およ
びその様なフィン材を製造する為の方法、並びに該フィ
ン材を応用した熱交換器のコアを提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成した本発
明とは、少なくとも前記親水性皮膜表面には、縞模様の
うねりが形成されると共に、該うねりはピッチ：１〜８
ｍｍ，高さ：０．１〜３μｍである点に要旨を有する親
水製表面処理ＡｌまたはＡｌ合金製フィン材である。ま
た上記の様なフィン材を製造する為の方法として、親水
性表面処理ＡｌまたはＡｌ合金製フィン材をプレス成形
することによって、親水性皮膜表面と基材の双方に上記
の様なうねりを形成する方法が提案される。更に、上記
の様な親水性表面処理ＡｌまたはＡｌ合金製フィン材
が、縞模様の長さ方向が上下方向となる様に配設されて
組立てられることによって、水落下性に優れた熱交換器
のコアが得られる。

【０００７】

【作用】本発明者らは、水落下の状態に注目し、前記水
接触角が上昇した状態であっても良好な水落下性を発現
させる為の手段について様々な角度から検討した。そし
てまず、落下方向での水接触角を小さくすれば、水の落
下性に対しては促進する方向に作用するので、この状況
を実現する為に以下の現象に着目した。即ち、水接触角
は結露水量が多くなればなるほど、重力による水の自重
が大きくなり、水接触角が小さくなる。そしてこの現象
を応用すべく更に検討を重ねたところ、少なくとも親水
性皮膜の表面に、所定の要件（後述するピッチや高さ）
を満足する縞模様のうねりを形成すれば、結露水滴を集
合させることができ、これによって水接触角を小さくし
て水の落下性を良好に維持できることを見出し、本発明
を完成した。尚本発明の目的を達成する為には、上記の
様なうねりが少なくとも親水性皮膜上に形成されておれ
ばよいのであり、従って（１）親水性皮膜だけにうねり
が形成され、Ａｌ製フィン素材にはうねりが形成されて
いないもの、および（２）親水性皮膜だけでなく、Ａｌ
製フィン素材上にもうねりが形成されたものの、いずれ
も含む趣旨である。

【０００８】本発明において親水性皮膜上に形成される
うねりの高さは０．１〜３μｍとする必要があるが、そ
の理由は下記の通りである。まず通常形成される親水性
皮膜の厚さは、０．１〜３μｍ程度であり、０．１μｍ
以下では親水性皮膜を形成することによる本来の効果
（即ち、親水性付与効果）が発揮されず、３μｍを超え
ると皮膜による伝熱抵抗が大きくなって熱交換効率が低
下する。尚親水性皮膜の好ましい膜厚は、２．５μｍ程
度とされている。上記の様な膜厚を有する親水性皮膜に
対し、結露水の集合を見込めるうねりを形成する為に
は、そのうねりの高さは最低限０．１μｍは必要であ
り、またその上限は通風抵抗に影響を与えない程度とし
て３μｍ以下に抑える必要がある。

【０００９】一方、うねりのピッチについては、結露水
が数μｍ位から生成し始めて集合を図るので、それに応
じてできるだけ小さい方が好ましいが、生産可能限界を
考慮してその下限は１mmに設定した。また親水性の優れ
た皮膜では、結露水の水広がりは８mm程度になり、これ
以上では皮膜の親水性が十分良好であることを示すこと
になり、うねりを形成した意味をなさなくなることか
ら、ピッチの上限は８ｍｍとした。

【００１０】本発明における親水性皮膜の素材として
は、通常用いられているものであれば良く、例えば後記
実施例に示す珪酸ソーダ系水ガラス−ポリアクリル酸系
水溶性有機樹脂の他、水ガラス系であればリチューム
系，カリウム系でも良い。水溶性有機樹脂としては、他
にポリビニールアルコール系，ポリアクリルアミド系，
ポリマレイン酸，ポリウレタン系，尿素樹脂系，セルロ
ース系，ポリエポキシ系等が使用可能である。これらの
親水性皮膜自体は、皮膜形成初期では水接触角が１０度
以下のものであり、その後経時変化によってその数値が
徐々に上昇して３０〜６０度以上になるのであるが、本
発明のフィン材においてはこの様な時期に至っても、親
水性皮膜上に前記の様な縞模様状のうねりを形成するこ
とによって、結露水が集合し易くなって水量が見かけ上
増加し、水接触角が低くなる傾向を示し、良好な水落下
性が長期に亘って維持できる。

【００１１】本発明の親水性表面処理Ａｌ（またはＡｌ
合金）製フィン材は、（１）親水性皮膜だけにうねりが
形成され、Ａｌ製フィン素材にはうねりが形成されてい
ないもの、および（２）親水性皮膜だけでなくＡｌ製フ
ィン素材上にもうねりが形成されたもののいずれも含む
ことは前述した通りであるか、これらの各形態の表面処
理Ａｌ製フィン材においてうねりを形成する方法につい
て説明する。

【００１２】まず上記（１）の形態のうねりを形成する
方法としては、下記（ａ）〜（ｄ）の方法が挙げられ
る。尚これらの方法によれば、図１（断面図）に示す様
な形態のＡｌ製フィン材が得られる（図中、１はＡｌ製
フィン素材，２は親水性皮膜，ｐはピッチ，ｈは高さを
夫々示す）。

【００１３】（ａ）まず第１の方法としては、従来塗工
時に問題となっていた、塗工後に塗液が凝集して縞模様
となる液寄り現象を逆に利用する方法である。但し、こ
の方法は簡易な方法ではあるが、うねりの高さを確保し
難く、皮膜の親水性が基本的に優れているときに採用で
きる方法である。 （ｂ）次の方法としては、上記の液寄りも利用するが、
塗工液の粘度を上げると共に、ロールコーター等のロー
ルの縞状粘着離れを転写する方法が挙げられる。この方
法によれば、上記（ａ）の方法に比べ、より高い縞模様
・うねりが形成できる。

【００１４】（ｃ）親水性皮膜を浸漬処理によって形成
する際、板方向に引き上げると塗液は液だれを起こす
が、この様な液だれによってもうねりを形成できる。 （ｄ）上記（ａ）〜（ｃ）の方法は、うねりのピッチの
制御がランダムになるという欠点がある。こうした点を
考慮し、うねり形状を積極的に制御できる方法として次
の様な方法がある。即ち、親水性皮膜を一旦素材の全面
に形成し、これを下地層としてその後印刷ロールやグラ
ビアロール等によって縞状となる様に部分塗工を施し、
うねり相当部分を形成する方法である。

【００１５】以上の方法は、板状素材にうねりを形成す
ることを基本的に想定したものであるが、うねりの形成
時期は板状素材の段階またはコアを組立てた後のいずれ
であっても良い。即ち、フィン材に表面処理がしてある
と否とにかかわらず、前記フィン材にて熱交換器のコア
を組立てた後、親水性表面処理剤中に浸漬し、フィンの
板方向に浸漬・引き上げ時の液だれによって縞模様・う
ねりを形成することも可能である。

【００１６】次に、上記（２）の形態のうねりを形成す
る方法については、次の方法が挙げられる。即ち、所定
のうねり形状をプレス金型に設けておき、このプレス金
型によってフィンプレス成形時に親水性表面処理Ａｌフ
ィン材に所定の形状を付与するときに、親水性皮膜表面
（および基材）にうねりを形成する方法である。この方
法は簡単であり、しかもピッチの制御が容易に行え、希
望する形状のうねりを形成することができるという利点
がある。この方法によって得られるＡｌ製フィン材の断
面図を図２に示す（尚図中の符号１，２，ｐ，ｈは図１
と同じ意味である）。

【００１７】本発明の親水性表面処理ＡｌまたはＡｌ合
金製フィン材は、上記の様なうねりを少なくとも親水性
皮膜表面に形成することによって、該フィン材の水落下
性が長期にわたって良好に維持されるという効果が発揮
されるものであるが、水落下性を更に良好に達成する為
には、Ａｌ製フィン材を熱交換器のコアに組立てたとき
に、前記縞模様の方向が上下方向になる様に配設するの
が好ましい。この様にして組立てられた熱交換器のコア
は、集合した結露水を、うねりの溝部に沿って早やかに
落下させていくことになる。

【００１８】以下本発明を実施例によって更に詳細に説
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはい
ずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。

【００１９】

【実施例】

実施例１ 親水性表面処理剤として、３号珪酸ソーダ系水ガラス３
％−ポリアクリル酸系水溶性有機樹脂１％を含有する水
溶液を用い、該水溶液をＡｌ製フィン素材表面にロール
コーターで塗布した後、焼き付け処理を行い親水性皮膜
を形成した。このとき上記水溶液は液寄りが起こるが、
膜厚が厚くなると液寄り現象が大きくなり、うねりとし
てより大きくなる。そして塗布厚みを０．１μｍ，０．
５μｍ，１．０μｍ，１．５μｍ，２．０μｍ，２．５
μｍとして下記表１に示す様な各種うねりを形成し、前
記図１に示した様な表面処理Ａｌ製フィン材を得た。

【００２０】得られた各親水性表面処理Ａｌ製フィン材
について、初期および耐久試験後の親水特性を水接触角
にて調査すると共に、夫々のときの通風抵抗を調査し
た。尚このときの耐久試験条件は、（流水中放置８ｈｒ
→乾燥８０℃，放置１６ｈｒ）を１サイクルとして２０
サイクル（４８０時間）行ない、また通風抵抗比は熱交
換器を作製し、ＪＩＳ Ｂ ８３３０に基づく風洞測定
装置により発生する圧力損失の内、（冷房時圧力損失）
／（送風乾燥時圧力損失）とし、また耐久性は、冷房運
転８時間および暖房運転１６時間の繰り返しを３カ月
（２１６０時間）行なった後評価した。その結果を表１
に併記する。

【００２１】

【表１】

【００２２】表１から次の様に考察できる。まずうねり
を形成していないものについては（Ｎo.１）、親水性皮
膜自体の親水性の低下と共に、通風抵抗比が上昇する傾
向があるが、うねりを形成することによって（Ｎo.２〜
７）、結露水が落下する方向の水接触角は低く維持で
き、通風抵抗比の上昇は許容範囲内に維持できる。また
うねりが大きくなり過ぎても（Ｎo.８）、通風抵抗比が
上昇することが分かる。これは膜厚が厚くなり過ぎるこ
とによる伝熱抵抗の上昇と、フィン間スペースの狭化に
よって、却って熱交換効率を低下させ、通風抵抗比が上
昇する傾向を示すものと思われる。

【００２３】実施例２ 実施例１で用いたのと同じ親水性表面処理剤を用い、該
処理剤をＡｌ製フィン材表面にロールコーターで塗布し
た後、焼き付け処理を行ない、親水性皮膜を形成した。
このときに皮膜の厚みは０．５μｍとした。親水性皮膜
を形成したＡｌ製フィン素材を、フィン形状にプレス成
形するときに、下記表２に示す様各種のうねりを形成
し、前記図２に示した様な表面処理Ａｌ製フィン材を得
た。得られた各親水性表面処理Ａｌ製フィン材につい
て、実施例１と同様の調査を行なった。その結果を表２
に併記する。

【００２４】

【表２】

【００２５】表２から明らかな様に、実施例１と同様
に、所定の形状を有するうねりを形成することが良好な
水落下性の維持に効果的であることが分かる。

【００２６】

【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、親
水性皮膜表面に所定の要件を満足するうねりを形成する
ことによって、親水性皮膜自体の親水性が劣化した場合
であっても、良好な水落下性を維持し、通風抵抗比の増
大を招かない様な親水性表面処理ＡｌまたはＡｌ合金製
フィン材が実現できた。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す断面説明図である。

【図２】本発明の他の実施例を示す断面説明図である。

【符号の説明】

１ Ａｌ製フィン素材 ２ 親水性皮膜 ｐ ピッチ ｈ 高さ

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ＡｌまたはＡｌ合金製基材の表面に、親
   水性皮膜を形成した親水性表面処理ＡｌまたはＡｌ合金
   製フィン材において、少なくとも前記親水性皮膜表面に
   は、縞模様のうねりが形成されると共に、該うねりはピ
   ッチ：１〜８ｍｍ，高さ：０．１〜３μｍであることを
   特徴とする水落下性に優れた親水性表面処理Ａｌまたは
   Ａｌ合金製フィン材。
2. 【請求項２】 前記基材が、ピッチ：１〜８ｍｍ，高
   さ：０．１〜３μｍのうねりを有するものである請求項
   １に記載の親水性表面処理ＡｌまたはＡｌ合金製フィン
   材。
3. 【請求項３】 親水性表面処理ＡｌまたはＡｌ合金製フ
   ィン材をプレス成形することにより、請求項２に記載の
   親水性表面処理ＡｌまたはＡｌ合金製フィン材を製造す
   る、水落下性に優れた親水性表面処理ＡｌまたはＡｌ合
   金製フィン材の製造方法。
4. 【請求項４】 請求項１〜３のいずれかに記載の親水性
   表面処理ＡｌまたはＡｌ合金製フィン材が、前記縞模様
   の長さ方向が上下方向となる様に配設されて組立てられ
   たことを特徴とする熱交換器のコア。