JPH07170145A - 弾性表面波素子とその製造方法 - Google Patents

弾性表面波素子とその製造方法

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JPH07170145A
JPH07170145A JP31504793A JP31504793A JPH07170145A JP H07170145 A JPH07170145 A JP H07170145A JP 31504793 A JP31504793 A JP 31504793A JP 31504793 A JP31504793 A JP 31504793A JP H07170145 A JPH07170145 A JP H07170145A
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aluminum
film
single crystal
acoustic wave
surface acoustic
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JP31504793A
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Yuji Mitsui
雄治 三井
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Original Assignee
Seiko Epson Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 弾性表面波素子の周波数変化を極めて小さく
するアルミニウム電極を提供すること、また弾性表面波
素子を容易に製造する方法を提供することにある。 【構成】 LSTカット水晶基板上にアルミニウム単結
晶膜よりなる電極を具備する。また、単結晶圧電体基板
へ、遅い成膜速度により成膜する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はペイジングシステム、コ
ードレス電話等の移動体通信装置や、一般無線通信シス
テム、さらに、TV、VTR等の装置に用いられる弾性
表面波素子とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の弾性表面波素子の電極は、アルミ
ニウムや金等の金属の多結晶構造により構成されてい
た。また特にアルミニウム膜を用いる場合は、銅、チタ
ン、パラジウム等を微量に添加しているが、やはり多結
晶構造であった。また特開平3‐14305、特開平3
‐14307、特開平3‐14308、特開平3‐14
309号公報記載のように、アルミニウム膜を結晶方位
的に一定方向に配向させて用いる方法が提案されてい
る。さらに特開昭55‐49014号公報記載のよう
に、電極をほぼ単結晶にする方法が提案されていた。
【0003】これらの従来技術は弾性表面波素子におけ
る周波数変化を減少するため、および弾性表面波素子の
耐電力性能を向上させるために開発されている。ところ
で弾性表面波素子の周波数変化や電力性能の低下は素子
動作中に発生するアルミニウム電極のマイグレーション
により発生する。この事実は既に1981年におけるウ
ルトラソニックシンポジウムにおいて報告されている。
【0004】さらに半導体においても同様にアルミニウ
ムのマイグレーションに起因する断線はエレクトロマイ
グレーションとして古くから研究されており、1970
年には、エレクトロマイグレーションにはアルミニウム
の単結晶膜が非常に優れているという報告がされてい
る。
【0005】そこで筆者らは弾性表面波素子における耐
マイグレーション性能を向上させるために特願平4‐1
84979号公報(本願出願時、未だ出願公開されてい
ないので先行技術である)において水晶基板上に形成す
る弾性表面波素子においてアルミニウム電極を単結晶膜
とすることを提案し、その製造方法も提案した。特願平
4‐184979号公報によればアルミニウム単結晶膜
は、圧電体表面に微小な島状構造を形成することにより
容易に製造できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来技術及び先行技術
の課題について以下に説明する。まず多結晶構造のアル
ミニウム膜では弾性表面波素子として動作中に弾性表面
波により基板表面に応力が発生し、その発生した応力に
よりアルミニウム等の結晶が移動し、その結果電極の応
力が変化し、素子の周波数が大きく変化するという課題
を有している。この変化を小さくするために銅やその他
の金属を微量に添加する方法があるが、長期的には周波
数が変化するという同じ課題を有している。また金属の
微量添加は、製造工程においてその組成比を安定に保つ
ことが難しいという課題を有している。
【0007】さらに配向したアルミニウム電極において
は、筆者らの実験によれば、特定の結晶面が一定方向に
配向していても他の面の配向が乱れている場合はやはり
動作中に応力による結晶粒界移動が生じ、周波数の経時
変化が発生するという課題を有している。例えばアルミ
ニウムの(200)面、(220)面、(311)面が
配向しておらず、(111)面のみが一定方向に配向し
ている場合や、(200)面、(111)面等が一定方
向に配向しているが、(220)面の配向が乱れている
場合などである。すなわちある結晶面が一定方向に配向
しているだけでは、周波数の変化を抑制することは困難
であるという課題を有している。
【0008】こうした動作中の応力による周波数の経時
変化を小さくするためには、電極を単結晶膜にすること
が有益である。しかしながら従来技術では、特開昭55
‐49014号公報記載のようにほぼ単結晶的な膜しか
得られておらず、またこのほぼ単結晶膜を得るためには
分子線エピタキシー法を用いる必要があり、装置が非常
に高価なこと、また本装置による生産量は非常に少ない
等の課題により、単結晶電極膜を容易に入手できないと
いう課題を有していた。
【0009】また特願平4‐184979号公報によれ
ば33度STカット水晶基板、9.5度LSTカット水
晶基板上にアルミニウム単結晶膜を形成している。さら
に圧電体基板の表面を微小な島状構造にすることによ
り、従来技術である蒸着法やスパッタリング法により簡
便にアルミニウム単結晶膜を形成している。しかしなが
ら全ての圧電体基板において該島状構造を形成できるわ
けではなく、該島状構造の存在しない平坦性の高い基板
に安定してアルミニウム膜を形成する方法が提供されて
いないという課題を有していた。特に平坦性の優れたL
STカット基板、ニオブ酸リチウム基板、タンタル酸リ
チウム基板等は該基板の表面を該島状構造にすることは
難しく、アルミニウム単結晶膜が安定して形成できない
という課題を有していた。
【0010】本発明の目的は、弾性表面波素子における
電極用金属膜の内部応力変化をなくし、素子の動作中の
周波数変化を小さくすることであり、特にLSTカット
水晶基板、ニオブ酸リチウム基板、タンタル酸リチウム
基板を用いた弾性表面波素子の周波数変化を小さくする
ことである。また該弾性表面波素子を容易に製造する方
法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的の周波数変化の
小さな弾性表面波素子は、該弾性表面波素子を構成する
アルミニウム電極を単結晶膜にすることにより達成され
る。また該アルミニウム単結晶膜は、単結晶圧電体基板
上に成膜されるが、成膜速度を毎秒25オングストロー
ム以下という低レートで成膜することにより、該アルミ
ニウム単結晶膜を蒸着法、スパッタリング法等により容
易に製造することができる。
【0012】
【作用】上述のように弾性表面波素子のアルミニウム電
極は動作中に基板表面に発生した弾性表面波の振動によ
り、アルミニウムの結晶が移動し、その結果電極内部の
応力が変化し周波数の変化が生じる。このアルミニウム
結晶の移動は、公知技術によればアルミニウム結晶の結
晶粒界の表面自由エネルギーが最小となるように発生す
ると考えられている。従って、基本的に粒界の存在しな
い単結晶膜の場合はこの粒界移動が発生せず、その結果
弾性表面波素子の周波数変化を極めて小さくできる。
【0013】また特願平4‐184979号公報にて筆
者らは該アルミニウム単結晶膜を得る方法として、単結
晶基板表面を島状構造にすることを出願した。その後調
査を続け、該島状構造の得られにくいLSTカット水晶
基板等においては、本願に示すようにアルミニウム膜の
成膜速度を遅くすることにより安定して該アルミニウム
単結晶膜を形成することができることが判明した。
【0014】
【実施例】(実施例1)以下実施例により本発明を詳細
に説明する。最初に本実施例に用いた、基板、成膜用の
アルミニウムについて説明する。続いて本実施例におけ
る成膜工程を説明し、そして本実施例により作成された
金属膜の性質、および該金属膜を用いて構成した弾性表
面波素子の周波数変化特性につて説明する。
【0015】まず本実施例に用いた基板は、Z板をX軸
の回りに反時計方向に13度回転して得られるLSTカ
ット水晶基板である。以下これを単にLSTカット水晶
基板と呼ぶことにする。該基板は人工的に合成された単
結晶状態の水晶ブロックをブレードソー、ワイヤーソー
等により切断し、その後両面研磨される。研磨はラッピ
ングにより所定の厚みに加工され、引き続いて表面をポ
リッシュする。ポリッシュは酸化セリウム砥粒等によ
り、ラッピングにより発生した水晶基板表面の加工変質
層を完全に除去し鏡面に仕上げる工程である。そして最
後にポリッシュで発生した水晶基板表面の加工変質層の
除去及び応力開放、ならびに後述するような島状構造に
仕上げるエッチング加工を行う。
【0016】エッチング加工は弗酸あるいは弗化アンモ
ニウムの混合液等のエッチング液に浸すことにより、水
晶基板表面を0.1ミクロンから2ミクロン程度エッチ
ングする。一例を挙げるとエッチング液として弗酸と弗
化アンモニウムの混合液を使い、液温摂氏20度から摂
氏40度程度でLSTカット水晶基板表面を片側で約
0.2ミクロンから1ミクロン程度エッチングする。こ
の状態でのLSTカット水晶基板の表面粗さは自乗平均
粗さで約0.002ミクロン以下、また最大粗さで約
0.02ミクロン以下の平坦性の良い表面が得られる。
表面粗さの測定は触針式の表面粗さ計で行っている。本
表面粗さは従来のSTカット水晶基板に比べて非常に小
さい値である。なお、従来のSTカット水晶基板の表面
粗さは、自乗平均粗さで約0.005ミクロン、最大粗
さで約0.1ミクロンであった。
【0017】また弗酸と弗化アンモニウムの混合液は、
弗酸47パーセントと弗化アンモニウム40パーセント
液を容量比で1対3から3対1の混合比の物を使用した
が特にこれらの濃度に限られない。またこれらの液を単
独で、あるいは他の成分を添加して使用することも可能
である。
【0018】また成膜に用いたアルミニウムは、純度が
99.999パーセントのもの(以下5Nと呼ぶ)であ
る。
【0019】続いてアルミニウム単結晶膜の成膜工程に
ついて説明する。本実施例では蒸着法とスパッタリング
法により成膜を行っている。まず蒸着法によるのアルミ
ニウム単結晶膜の成膜工程について説明する。基板作成
工程の終了したLSTカット水晶基板をプラネタリと呼
ばれる基板保持治具に取り付け、該プラネタリをチャン
バと呼ばれる真空容器に取り付ける。そして該チャンバ
を真空排気する。チャンバ内の圧力が、ある程度低くな
った時点で基板加熱を始める。本実施例による基板加熱
の温度は約摂氏140度である。
【0020】この状態で0.5マイクロトリチェリまで
減圧する。この時チャンバ内の水分圧は約0.03マイ
クロトリチェリである。そしてこの圧力においてアルミ
ニウムの蒸着を始める。成膜速度は毎秒約15オングス
トロームである。また蒸着中の圧力は約2から4マイク
ロトリチェリである。所定の膜厚に蒸着した後に蒸着を
やめチャンバ内を室温まで冷却し、基板を取り出して蒸
着工程を終了する。
【0021】以上がLSTカット水晶基板上へのアルミ
ニウム膜の蒸着工程の説明である。ただし蒸着条件はこ
れらに限られることはない。また基板のカット角度につ
いても13度に限られず、5度から30度程度が一般に
弾性表面波素子用として用いられている。基板加熱温度
は室温(摂氏20度)から摂氏200度まで可能であ
る。また、蒸着前の圧力は5マイクロトリチェリ程度で
もよい。さらに本実施例では電子線加熱法による蒸着を
行ったが抵抗加熱法でも可能である。蒸着条件は上記条
件以外でも可能である。
【0022】次にスパッタリング法によるアルミニウム
単結晶膜の成膜工程について説明する。スパッタリング
装置は平行平板型のマグネトロン方式である。スパッタ
リング電源は直流方式である。まずチャンバと呼ばれる
真空容器内に基板を取り付け、0.5マイクロトリチェ
リまで真空排気する。基板加熱は本実施例では行わない
が基板汚染を除去する目的で加熱しても良い。該圧力ま
で減圧した時点でスパッタリング用の不活性ガスを導入
する。本実施例ではアルゴンを用いている。続いて放電
を開始する。放電開始時のチャンバ内の圧力は約6ミリ
トリチェリである。スパッタリングの成膜速度は毎秒5
オングストロームである。以上がスパッタリング法によ
るアルミニウム単結晶膜の成膜条件であるが、成膜条件
はこれらに限られることはない。スパッタリング電源と
して高周波電源を用いることも可能である。
【0023】さて上記説明した単結晶アルミニウム膜
は、蒸着法、及びスパッタリング法により簡便に製造で
きることが非常に大きな特徴である。このように簡便に
単結晶アルミニウム膜を得ることができた理由は成膜速
度を遅くしたことである。
【0024】従来のアルミニウムの成膜方法では、例え
ば蒸着方法においては、その成膜速度は一般に毎秒30
オングストローム以上の高速成膜であった。また特開平
3‐14305号公報記載のように毎秒20オングスト
ローム以上により配向膜が得られている。しかしながら
筆者らの実験によれば基板の平坦性が向上するにしたが
い、アルミニウム膜の結晶性が単結晶から乱れていくと
いう事実が判明した。これは基板表面に飛来したアルミ
ニウム粒子のマイグレーションが、基板の平坦性が向上
するにしたがい大きくなり、その結果規則正しいアルミ
ニウム膜の成長が阻害され結晶性が悪くなり、単結晶膜
が得られなくなるものと考えられる。従って単結晶膜を
得るためには基板表面に飛来するアルミニウム粒子のエ
ネルギーを小さくすることが重要であると考えられる。
【0025】こうした考えに基づき筆者らは同じLST
カット基板を用いて、蒸着速度を毎秒40オングストロ
ーム、毎秒25オングストローム、毎秒10オングスト
ローム、および毎秒5オングストロームの4種類で単結
晶アルミニウム膜の形成実験を行った。その結果成膜速
度毎秒40オングストロームでは単結晶膜は得られなか
ったが、毎秒25、10、5オングストロームの蒸着膜
は単結晶膜となった。すなわち低速度で成膜することに
よりアルミニウム単結晶膜を得ることができた。また低
速度で成膜したアルミニウム膜ほど結晶性が優れてい
た。
【0026】ただし蒸着速度を制御しても基板表面が汚
染されているとやはり多結晶構造の膜になる。従って基
板表面を清浄な状態に保つことが重要である。
【0027】次に本実施例により毎秒15オングストロ
ームで作成されたアルミニウム膜と、従来技術により毎
秒40オングストロームで作成されたアルミニウム膜の
評価について説明する。アルミニウム膜の膜厚は各々約
2500オングストロームである。膜の評価はX線回折
装置による回折特性図により行った。基板は本実施例も
従来技術のものと同じ表面粗さを持つLSTカット水晶
基板である。
【0028】X線回折測定用の試料は、成膜後のLST
カット水晶基板を15ミリメートル角の大きさに切断し
て作成した。測定は試料を回転して行う標準測定法によ
り行った。
【0029】図1は本実施例の蒸着法により作成された
アルミニウム単結晶膜の標準測定によるX線回折の回折
特性図である。また図5は従来技術により作成されたア
ルミニウム多結晶膜の標準測定によるX線回折の回折特
性図である。本標準測定におけるX線の入射角度は基板
表面に対して約1度である。図1と図5を比較すると図
5の従来技術によるアルミニウム膜は結晶化を示すピー
クが観察されているのに対し、図1の本実施例によるア
ルミニウム膜はピークが全く観察されていない。
【0030】上述したように標準測定では試料を回転さ
せて測定しているため、試料が多結晶状態の場合、(1
11)面が試料表面に対して平行に向いている結晶や、
(200)面が試料表面に対して平行に向いている結晶
等が存在するため、複数の結晶面のピークが観察可能で
ある。しかし試料が単結晶状態であり、結晶面が試料表
面に対して一定の角度を持ち、特定の方向に配向してい
る場合はピークを観察することは不可能である。図5よ
り従来技術によるアルミニウム膜は、試料表面に対して
平行な結晶面が4つあること、すなわち(111)面が
試料に対して平行な結晶、(200)面が試料に対して
平行な結晶、(220)面が試料に対して平行な結晶、
(311)面が試料に対して平行な結晶という少なくと
も4種類の結晶面からなることがわかり、この意味で図
5の従来技術によるアルミニウム膜は多結晶膜である。
【0031】これに対し本実施例により得られたアルミ
ニウム膜は図1に示すように結晶化を示すピークが一つ
も現れていない。通常結晶化を示すピークが現れない場
合はアモルファス(非晶質)状態か、単結晶状態であ
る。アモルファス状態では結晶化ピークは鋭くなく丘の
ように裾が広い回折特性図を示す。従って図1に示す本
実施例で得られたアルミニウム膜の回折特性図とは異な
っており、本実施例で得られたアルミニウム膜はアモル
ファス状態ではないといえる。
【0032】本実施例で得られたアルミニウム膜は上述
したように多結晶状態でもなく、アモルファス状態でも
ない。一般に図1に示すように回折角0度から100度
の間で全く回折ピークが現れない場合、アルミニウムに
関して現れるべき4つの面、すなわち(111)面、
(200)面、(220)面、(311)面は、全て各
々試料表面に対し一定の角度を持ち、特定の方向に極め
て正しく配向していると判断できる。さらに図1の測定
試料は試料のどの部分においても同一である。このよう
に、任意の結晶面(結晶軸)に着目したとき、試料のど
の部分においてもその向きが同一である結晶質固体は単
結晶と定義されているから、本実施例のアルミニウム膜
は単結晶であると判断できる。
【0033】以上う2種類のアルミニウム膜についてX
線回折結果を説明してきたが、この観察結果によれば本
実施例によるアルミニウム膜は単結晶膜であると結論で
きる。但し本実施例においてもLSTカット水晶基板全
面にわたり全く完全な単結晶膜にすることは困難であ
る。なぜならば基板表面の微細な傷や穴などが存在する
場合、その部分で結晶性が崩れてしまうからである。し
かしこれは単結晶膜の欠陥であると考えるべきであり、
単結晶膜でないということではない。また1個の弾性表
面波素子においてこうした欠陥は1個程度存在するか否
かという程度であり、本発明の目的である弾性表面波素
子の周波数変化を小さくするということにはほとんど影
響しないレベルである。
【0034】またアルミニウムの膜厚は500オングス
トロームから10000オングストロームまで実験を行
ったがいずれの膜厚でも単結晶膜を得ることができた。
これ以上の膜厚でも可能であると考えられる。
【0035】本実施例では蒸着用のアルミニウムに5N
の純度のアルミニウムを用いたが、純度はこれらに限ら
れない。また不純物としてたとえば銅を添加することも
できる。この場合添加量としては重量パーセントで0.
1パーセントから3パーセント程度が適当であるが、こ
の比率に限られることはない。
【0036】続いて本実施例により作成されたアルミニ
ウム単結晶膜を用いて形成された弾性表面波素子及び該
素子の周波数変化特性について説明する。
【0037】図2に本実施例によるアルミニウム単結晶
膜を用いて構成された弾性表面波共振子1を示す。アル
ミニウム単結晶膜の成膜速度は毎秒15オングストロー
ムである。また素子構成は一対の櫛歯形電極2とその両
側に格子状の反射器電極3を配置した1ポート型共振子
である。ただし電極の本数は減らして図示してある。周
波数は256メガヘルツであり、電極の厚みは約300
0オングストロームである。
【0038】該素子はLSTカット水晶基板全面にアル
ミニウム膜を成膜後、エッチング法により素子を複数個
形成しその後にダイシングソーにより切断分離される。
その後該素子をステムと呼ばれるパッケージに導電性接
着剤を用いて接着し、外部端子との接続をアルミニウム
線により行う。そして窒素雰囲気中においてカンを抵抗
溶接により封止する。従来技術によるアルミニウム膜を
用いて作成された弾性表面波素子も同様に作成される。
【0039】さて図3は本実施例の弾性表面波共振子を
動作させ、経時変化による周波数変化を測定した特性図
である。また、図4は従来技術により形成された多結晶
アルミニウム電極を具備する弾性表面波共振子を動作さ
せ、経時変化による周波数変化を測定した特性図であ
る。本試験の投入電力は約20ミリワットである。図3
によれば、本実施例による共振子は周波数変化が極めて
小さく、非常に安定して動作していることがわかる。た
とえば1000時間後の周波数変化は約2ppmであっ
た。このようにLSTカット水晶基板を用いた場合でも
アルミニウム電極を単結晶膜にすることにより弾性表面
波素子の経時変化による周波数変化を極めて小さくする
ことが可能である。一方図4の従来技術による素子は時
間の経過とともに大きく周波数が下方にシフトしている
ことがわかる。
【0040】LSTカット水晶基板において切断の傾斜
角度は本実施例では13度であったが、5度から30度
程度が適している。また周波数により決定される弾性表
面波波長Lと、電極厚みの比(D/L)は0.025程
度が適しており.上記以外にも周波数に適した電極厚み
を選択できる。
【0041】次に本実施例の素子の周波数安定度が優れ
ている理由を説明する。弾性表面波は基板の表面に沿っ
て伝播する波でありその振動は電極の硬度、粘性などに
より大きく変化する。そのため電極を構成する材質の内
部応力が変化すると上記粘性等が変化し、その結果周波
数が変化する。電極が多結晶状態であることを考えると
素子が動作しているとき電極の結晶が移動し、結晶は結
晶粒界の表面自由エネルギーが最小となるように移動し
ていく。この現象はアルミニウム結晶の粒界拡散と呼ば
れるものである。この現象が起きると電極にはヒロック
と呼ばれる突起粒子が発生したり、また逆に粒界で亀裂
が発生し断線状態になる。こうして電極膜が多結晶アル
ミニウム膜の場合は、素子が動作している最中に振動に
よりアルミニウム電極の内部応力が変化し、素子の周波
数が変化する。
【0042】以上の現象はアルミニウム膜結晶の粒界に
より生じるものであり、本実施例のように粒界のない単
結晶アルミニウム膜には発生しない。従って本実施例に
よる弾性表面波共振子は周波数安定度が高いのである。
【0043】(実施例2)次に基板にニオブ酸リチウム
単結晶基板を用いた場合の実施例を示す。本実施例に用
いたニオブ酸リチウム単結晶は128度Yカットであ
り、その表面粗さは自乗平均粗さが約0.001ミクロ
ン以下、最大粗さが約0.005ミクロン以下であり、
非常に平坦性が優れている。
【0044】ニオブ酸リチウムを用いた弾性表面波素子
は主に広帯域フィルタに用いられている。用途としては
携帯電話等の高周波受信部のトップフィルタとして用い
られており、耐電力性が求められる。そのため従来はア
ルミニウムに微量の銅等を添加していた。本実施例では
5Nのアルミニウムを用いて実施例1で説明したよう
に、成膜速度を従来の毎秒約40オングストロームでは
なく、毎秒10及び5オングストロームと遅くして成膜
している。なお本実施例における膜厚は2000オング
ストロームである。また本実施例では電子線加熱による
蒸着法を用いている。
【0045】本実施例によるアルミニウム膜も実施例1
と同様に薄膜X線回折法により標準測定を行ったが、実
施例1と同じ結果が得られており、本実施例で得られた
アルミニウム膜は単結晶膜である。また低い成膜速度に
より成膜したアルミニウム膜の方が結晶性が優れてい
た。
【0046】本実施例において共振子型のフィルタを作
成し、2ワットの電力を投入し、電極膜の破壊される状
態を調査した。その結果従来のアルミニウムと銅の合金
の多結晶電極では、1000時間後の観察で電極にヒロ
ックや小さな亀裂が観察されたが、本実施例によるもの
はそうしたものの発生がなかった。
【0047】また蒸着速度を毎秒25オングストローム
で成膜した場合も単結晶膜が得られている。さらに本実
施例では128度Yカットのニオブ酸リチウムを基板と
して用いたが、この角度や、このカット角以外のニオブ
酸リチウムでも可能である。本実施例では電子線加熱法
による蒸着法を用いているが、成膜法では抵抗加熱法、
レーザー加熱法や、スパッタリング法などでも可能であ
る。
【0048】(実施例3)次に基板にタンタル酸リチウ
ム単結晶基板を用いた実施例を示す。本実施例に用いた
タンタル酸リチウム単結晶は112度Xカットであり、
その表面粗さは自乗平均粗さが約0.001ミクロン以
下、最大粗さが約0.005ミクロン以下であり、非常
に平坦性が優れている。
【0049】タンタル酸リチウムを用いた弾性表面波素
子はニオブ酸リチウムを用いた素子と同様に、おもに広
帯域フィルタに用いられている。用途としては携帯電話
機等の高周波受信部のトップフィルタとして用いられて
おり、帯電力性が求められる。
【0050】そのため従来はアルミニウムに微量の銅等
を添加していた。本実施例では5Nのアルミニウムを用
いて実施例1で説明したように、成膜速度を従来の毎秒
40オングストロームではなく、毎秒10及び5オング
ストロームと遅くして成膜している。なお本実施例にお
ける膜厚は2000オングストロームである。また本実
施例では電子加熱法による蒸着法を用いている。
【0051】本実施例によるアルミニウム膜も実施例1
と同様に薄膜X線回折法により標準測定を行なったが、
実施例1、及び実施例2と同じ結果が得られており、本
実施例で得られたアルミニウム膜は単結晶膜である。ま
た、低い成膜速度により成膜したアルミニウム膜の方が
結晶性が優れていた。
【0052】本実施例においては共振子型のフィルタを
作成し、2ワットの電力を投入し、電極膜の破壊される
状態を調査した。その結果従来のアルミニウムと銅の合
金の多結晶電極では1000時間後の観察で電極にヒロ
ックや小さな亀裂が観察されたが、本実施例による電極
にはそうしたものの発生はなかった。
【0053】また蒸着速度を毎秒25オングストローム
で蒸着した場合も単結晶膜が得られている。さらに本実
施例では112度Xカットのタンタル酸リチウムを用い
たがこの角度、このカット以外のタンタル酸リチウムで
も可能である。本実施例では電子線加熱法による蒸着法
を用いているが、成膜法では抵抗加熱法、レーザー加熱
蒸着法、スパッタリング法等でも可能である。
【0054】さて上記の3つの実施例では圧電体基板と
して13度LSTカット水晶基板、及び128度Yカッ
トニオブ酸リチウム基板、112度Xカットタンタル酸
リチウム基板を用いたが、これ以外のカットの水晶基
板、例えば33度STカット基板や他の角度のSTカッ
ト基板、及びATカット基板などでも可能である。ま
た、ほう酸リチウム等の酸化物単結晶基板でも可能であ
る。また、酸化亜鉛、窒化アルミニウム等の薄膜圧電材
料を基板と考えこれらにも応用可能である。さらにシリ
コン単結晶基板、ガリウムひ素単結晶基板などの半導体
基板にも応用可能である。また、サファイヤ単結晶基板
でも可能である。
【0055】また成膜に用いたアルミニウムは純度が5
Nのものであったが、特にこの純度に限られることはな
い。また意図的に不純物を添加することも可能であり、
不純物としては、銅、チタン、ニッケル、パラジウム、
タンタル、ハフニウム等が適している。添加量としては
重量パーセントで0.1パーセントから3パーセント程
度が適しているがこれに限られることはない。
【0056】また弾性表面波素子として2つの実施例で
は1ポート型の共振子について説明したが、2ポート型
の共振子や、フィルタ素子、コンボルバ素子等にも応用
可能である。また光素子、磁気素子、半導体素子等との
組み合わせ素子にも応用可能である。さらに水晶バルク
型発振子、例えばAT振動子や音叉型振動子等にも応用
可能である。
【0057】また本実施例のアルミニウム単結晶膜は弾
性表面波素子以外の電子デバイス、たとえばセンサーや
マイクロマシニング技術へ応用可能である。またアルミ
ニウム膜の成膜方法は実施例1、2、3の中で蒸着法と
スパッタリング法による方法を説明したが、これらに限
られることはない。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、ア
ルミニウムの成膜速度を毎秒25オングストローム以下
という遅い成膜速度で行うことにより、蒸着法及びスパ
ッタリング法という簡便な方法により、非常に平坦性の
優れた単結晶基板上にもアルミニウム単結晶膜を容易に
製造できるという効果を有する。また本発明による単結
晶アルミニウム電極を具備する弾性表面波素子は動作中
における経時変化による周波数変化が極めて小さいとい
う効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による第1の実施例の単結晶アルミニウ
ム膜の標準測定によるX線回折の回折特性図である。
【図2】本発明による第1の実施例の単結晶アルミニウ
ム膜により作成された弾性表面波共振子の正面図であ
る。
【図3】本発明の第1の実施例による弾性表面波共振子
の周波数変化を示す特性図である。
【図4】従来技術による弾性表面波共振子の周波数変化
を示す特性図である。
【図5】従来技術による多結晶アルミニウム膜の標準測
定によるX線回折の回折特性図である。
【符号の説明】
1 弾性表面波共振子 2 櫛歯型電極 3 格子状反射器電極

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Z板をX軸の回りに反時計方向に5度か
    ら30度の範囲で傾斜してカットしたLST水晶基板に
    アルミニウム電極を形成してなる弾性表面波素子におい
    て、該アルミニウム電極が単結晶膜であることを特徴と
    する弾性表面波素子。
  2. 【請求項2】 128度Yカットのニオブ酸リチウム単
    結晶基板にアルミニウム電極を形成してなる弾性表面波
    素子において、該アルミニウム電極が単結晶膜であるこ
    とを特徴とする弾性表面波素子。
  3. 【請求項3】 112度Xカットのタンタル酸リチウム
    単結晶基板にアルミニウム電極を形成してなる弾性表面
    波素子において、該アルミニウム電極が単結晶膜である
    ことを特徴とする弾性表面波素子。
  4. 【請求項4】 Z板をX軸の回りに反時計方向に5度か
    ら30度の範囲で傾斜してカットしたLSTカット水晶
    基板にアルミニウム単結晶膜電極を形成してなる弾性表
    面波素子において、該アルミニウム単結晶膜電極が真空
    成膜法により形成され、該成膜速度が毎秒25オングス
    トローム以下であることを特徴とする弾性表面波素子の
    製造方法。
  5. 【請求項5】 128度Yカットのニオブ酸リチウム単
    結晶基板にアルミニウム単結晶膜電極を形成してなる弾
    性表面波素子において、該アルミニウム単結晶膜電極が
    真空成膜法により形成され、該成膜速度が毎秒25オン
    グストローム以下であることを特徴とする弾性表面波素
    子の製造方法。
  6. 【請求項6】 112度Yカットのタンタル酸リチウム
    単結晶基板にアルミニウム単結晶膜電極を形成してなる
    弾性表面波素子において、該アルミニウム単結晶膜電極
    が真空成膜法により形成され、該成膜速度が毎秒25オ
    ングストローム以下であることを特徴とする弾性表面波
    素子の製造方法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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US7605524B2 (en) 2005-11-10 2009-10-20 Nihon Dempa Kogyo Co., Ltd. Surface acoustic wave device and method of manufacturing the same
US9173305B2 (en) 2009-12-02 2015-10-27 Epcos Ag Metallization having high power compatibility and high electrical conductivity
US11108375B2 (en) 2018-12-05 2021-08-31 Taiyo Yuden Co., Ltd. Acoustic wave device, method of fabricating the same, filter, and multiplexer

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