JPH07154305A - 音響エコーキャンセラ装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】遠隔地の会議室等を伝送路で結び、会議出席者
の発言音声をマイクロホンで集音して相手会議室に送出
することによって、エコー成分を除去するために必要な
推定エコーパスパラメータの初期値を求める。 【構成】試験信号として最大周期系列符号を発生し、そ
の発生された試験信号をスピーカによって発声し、その
発声された音声がマイクロホンに集音され、回りこみ信
号として前記最大周期系列符号の周期に同期して加算さ
れる。その加算された回りこみ信号と前述の試験信号発
生手段が発する最大周期系列符号の相互相関を算出する
ことによって推定エコーパスパラメータが求められるた
めにテレビ会議を使用する前に予め音声の発生が不快で
ないようにエコーキャンセラの定数を設定することがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、相隔てた遠隔地の会議
室等を伝送路で結び、会議出席者の発言音声をマイクロ
ホンで集音して相手会議室に送出し、相手会議室からの
音声信号をスピーカで拡声して行う音声会議システム
や、テレビ会議システム等で使用される音響エコーキャ
ンセラにおいて、エコーを除去するために必要な推定エ
コーパスパラメータの初期値を求める音響エコーキャン
セラ装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】一般に音響エコーキャンセラは通信衛星
および海底ケーブルを利用した長距離電話回線におい
て、２線４線変換器のインピーダンス不整合により生ず
る反射を除去するものと、テレビ会議システムなどの拡
声電話において、話者音声の音響結合によるエコーを除
去するものとに大別でき、修正量演算回路、擬似エコー
を発生する可変係数フィルタおよび減算回路から構成さ
れている。以下に音響エコーキャンセラの基本動作を述
べる。

【０００３】第４図は音響エコーキャンセラの基本構成
を示す図である。受話信号入力端２１は受話信号出力２
２に接続され、その受話信号入力端子２１の受話信号は
可変係数フィルタ２３に分岐供給され、擬似エコーを生
成させる。送話信号入力端子２４からの送話信号と可変
係数フィルタ２３の出力である擬似エコーは減算回路２
５へ入力され、送話信号中のエコー成分が除去され、そ
の減算回路２５の出力は送話信号出力端子２６へ出力さ
れる。送話信号出力端子２６の出力と受話信号入力端子
２１の信号が修正量演算回路２７に入力され、修正量演
算回路２７の出力により可変係数フィルタ２３のフィル
タ係数が修正される。可変係数フィルタ２３内で受話信
号は受話信号入力レジスタ２８に入力され、その受話信
号入力レジスタ２８の受話信号と擬似インパルス応答レ
ジスタ２９の擬似インパルス応答との積和が積和回路３
０でとられ、積和回路３０の出力が擬似エコーとして出
力される。

【０００４】エコー経路の信号伝搬特性を線形で、且つ
ＦＩＲ形ディジタルフィルタで表されると仮定し、その
インパルス応答ｈ（ｔ）と入力受話信号ｘ（ｔ）とを用
いれば、サンプル時間間隔をＴとし、時刻ｋＴにおける
エコーｙ_k は、 ｙ_k ＝ ｈ’ｘ_k で表される。但し、 ｈ＝〔ｈ₁ ，ｈ₂ ，・・・，ｈ_n 〕’ ｘ＝〔ｘ_k-1 ・・・，ｘ_k-n 〕’ ’：ベクトルの転置 である。

【０００５】一方、 時刻ｋＴにおけるｈの推定値をｈ
ｓ_k とすれば、ｙ_k の推定値ｙｓ_k ｙｓ_k ＝ ｈｓ_k ’ｘ_k で与えられる。音響エコーキャンセラでは、受話信号入
力端子２１に音声信号があり、送話信号入力端子２４に
音声信号がなくエコーのみが存在している時、適応動作
状態としてエコー除去動作を行う。この適応動作アルゴ
リズムには、一般に学習同定法が採用される。学習同定
法によるｈｓ_k の逐次修正は ｈｓ_k+1 ＝ｈｓ_k ＋α（ｘ_k ｅ_k ）／ｘ_k ’ｘ_k によって行われる。但し、 ｅ_k ＝ｙ_k −ｙｓ_k ０＜α≦１ であり、ｅ_k を残留エコーと呼ぶ。この様な演算動作が
修正量演算回路７において処理実行されている。推定エ
コーパスパラメータレジスタ２９の内容には上記可変係
数ｈｓ_k が格納されている。

【０００６】上記のような音響エコーキャンセラを実際
の音声会議システム等に適用する場合、受話信号出力端
子２６はスピーカ等の音声出力装置、送話信号入力端子
２４はマイクロホン等の音声入力装置となる。スピーカ
から発声された受話信号がマイクロホンで集音される回
り込み信号の遅延時間は、周囲の条件にもよるが会議室
等の屋内で一般に数１００ｍｓ程度と長く、そのため音
響エコーキャンセラが回り込み信号から推定エコーパス
パラメータを求める過程で残留エコーを十分小さく収束
させるまでには時間を要し、その間はエコー除去は十分
行われない。

【０００７】そのため、この対策として会議等の開始に
先立って、白色雑音等の試験音声をスピーカから発声
し、音響エコーキャンセラを早く収束させるトレーニン
グ法が知られている。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかし、このような学
習同定法を用いたエコーキャンセラは、送話信号入力端
子２４に音声信号がなくエコーのみが存在していること
が収束の条件であるため、試験音声がスピーカで発声さ
れ、マイクロホンで集音された回りこみ信号を用いて上
記学習同定法によって擬似インパルス応答を求める際、
スピーカとマイクロホンの近傍に存在するＯＡ機器の冷
却ファン等の騒音や背景雑音の存在により、上記学習同
定法は正常に動作せず、十分なエコー除去が出来ない問
題がある。このため、上記トレーニング法において、ス
ピーカから発声する試験音声が背景雑音等周囲の音声に
対して十分な信号対雑音比を持つ必要が有り、大レベル
の試験音声を発声するため、この音声が耳障りであると
いう問題があった。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明はこれらの課題を
解決するためのものであり、推定エコーパスパラメータ
を求めるエコーキャンセラトレーニング機能を有する音
響エコーキャンセラ装置において、試験信号として最大
周期系列符号を発生する試験信号発生手段と、前記試験
信号発生手段が発した試験信号をスピーカによって発声
し、その発声された音声がマイクロホンによって集音さ
れた回りこみ信号を前記最大周期系列符号の周期に同期
して加算するための加算手段と、その加算手段によって
加算された回りこみ信号を記憶するための記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された回りこみ信号が同期加算され
た信号と前記試験信号発生手段が発する最大周期系列符
号の相互相関を算出して推定エコーパスパラメータとし
て用いる音響エコーキャンセラ装置を提供する。

【００１０】

【作用】擬似白色信号と、周期信号の両方の性質を持つ
最大周期系列符号を試験信号として使用し、回りこみ信
号を最大周期系列信号の周期に同期して加算することに
より、最大周期系列信号と異なる周期を持つ周期的信号
や非周期的信号等からなる周囲の雑音や周囲の話者の音
声を抑圧することが出来、また最大周期系列符号の自己
相関関数がインパルス状になることから、試験信号とし
てインパルス信号を使用したときと同様のインパルス応
答を得ることが出来、精度の高い推定エコーパスパラメ
ータを得ることが出来る。

【００１１】

【実施例】以下、図面を用いて本発明の実施例について
説明を行う。

【００１２】図１は本発明による音響エコーキャンセラ
装置の一実施例を示すブロック図であり、図２は本発明
による音響エコーキャンセラ装置で使用される最大周期
系列符号の生成回路のブロック図であり、図３は本発明
による音響エコーキャンセラ装置で使用される最大周期
系列符号同期加算回路のブロック図であり、図４は従来
の音響エコーキャンセラ装置のブロック図である。

【００１３】図１において、本発明の音響エコーキャン
セラ装置は、最大周期系列符号生成部１で生成された最
大周期系列符号をＤ／Ａ変換器２によって音声信号に変
換され、スピーカ３によって発声される。そのスピーカ
３から発声された音声は室内等で音響的に反射され、遅
延されて回り込みをしてマイクロホン４に入力される。
そのマイクロホン４から入力された回り込み信号はＡ／
Ｄ変換器５によって量子化され、最大周期系列符号同期
加算部６によって最大周期系列符号の周期に同期して加
算される。同期加算はあらかじめ設定された期間行わ
れ、その後最大周期系列符号同期加算部６から出力され
る同期加算結果と最大周期系列符号生成部１で生成され
る最大周期系列符号が相互相関演算部７によって相関演
算され、出力される。相互相関演算部７の出力がエコー
キャンセラトレーニングの結果として、エコーキャンセ
ラの推定エコーパスパラメータの初期値として、図４の
ようなエコーキャンセラの推定エコーパスパラメータレ
ジスタ２９に入力される。

【００１４】上述の最大周期系列符号生成部１は例えば
図２の最大周期系列符号の生成回路に示すように、シフ
トレジスタ及び排他論理和器によって構成できる。図２
の例では１０段の最大周期系列符号が生成され、そのく
り返し周期は ２¹⁰−１＝１０２３ である。１０段の最大周期系列符号が１，−１からなる
時の自己相関は、 時間差が０及び繰り返し周期の整数倍のとき、 １０
２３ それ以外 −１ とインパルス状となるため、上記回り込み信号あるいは
同期加算された結果と最大周期系列符号の相互相関は、
試験信号としてインパルスをスピーカから発声し、室内
等で反響、遅延した後マイクロホンに入力される音響系
のインパルス応答に相当するものとなる。

【００１５】また、最大周期系列符号同期加算部６は例
えば図３の最大周期系列符号同期加算回路に示すように
シフトレジスタ及び加算器で構成できる。このとき必要
とされるシフトレジスタの個数は最大周期系列符号の周
期と一致し、１０段の最大周期系列符号の場合は１０２
３個である。

【００１６】最大周期系列符号等の周期信号を周期に同
期して加算することにより、周期の異なる周期的信号や
非周期的信号を抑圧する効果が得られ、背景雑音に対し
信号対雑音比を改善することが出来る。Ｍ回の同期加算
を行った場合の信号対雑音比の改善度△ＳＮＲは △ＳＮＲ＝１０ｌｏｇＭ 〔ｄＢ〕 である。

【００１７】

【発明の効果】以上のとおり、本発明は擬似白色信号
と、周期信号の両方の性質を持つ最大周期系列符号を試
験信号として使用し、回りこみ信号を最大周期系列信号
の周期に同期して加算することにより、最大周期系列信
号と異なる周期を持つ周期的信号や非周期的信号等から
なる周囲の雑音や周囲の話者の音声を抑圧することが出
来、また最大周期系列符号の自己相関関数がインパルス
状になることから、試験信号としてインパルス信号を使
用したときと同様のインパルス応答を得ることが出来、
精度の高い推定エコーパスパラメータを得ることが出来
る。

【００１８】このため、音響会議システムやテレビ会議
システム等の運用の現場で周囲に存在する背景雑音、周
囲話者の音声の影響を低減し、推定エコーパスパラメー
タを高精度に求めることが出来る。また周囲雑音との所
要信号対雑音比を低くすることが出来るため、使用に先
立つトレーニング音声の発生が不快でないようにするこ
とが出来る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による音響エコーキャンセラ装置の一実
施例を示すブロック図である。

【図２】本発明による音響エコーキャンセラ装置で使用
される最大周期系列符号の生成回路のブロック図であ
る。

【図３】本発明による音響エコーキャンセラ装置で使用
される最大周期系列符号同期加算回路のブロック図であ
る。

【図４】従来の音響エコーキャンセラ装置のブロック図
である。

【符号の説明】

１ 最大周期系列符号生成部 ２ Ｄ／Ａ変換器 ３ スピーカ ４ マイクロホン ５ Ａ／Ｄ変換器 ６ 最大周期系列符号同期加算部 ７ 相互相関演算部 １１ 排他論理和器 １２ シフトレジスタ １３ 加算器 ２１ 受話信号入力端子 ２２ 受話信号出力端子 ２３ 可変係数フィルタ ２４ 送話信号入力端子 ２５ 減算回路 ２６ 送話信号出力端子 ２７ 修正量演算回路 ２８ 受話信号入力レジスタ ２９ 推定エコーパスパラメータレジスタ ３０ 積和回路

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】推定エコーパスパラメータを求めるエコー
   キャンセラトレーニング機能を有する音響エコーキャン
   セラ装置において、試験信号として最大周期系列符号を
   発生する試験信号発生手段と、前記試験信号発生手段が
   発した試験信号をスピーカによって発声し、その発声さ
   れた音声がマイクロホンによって集音された回りこみ信
   号を前記最大周期系列符号の周期に同期して加算するた
   めの加算手段と、その加算手段によって加算された回り
   こみ信号を記憶するための記憶手段と、前記記憶手段に
   記憶された回りこみ信号が同期加算された信号と前記試
   験信号発生手段が発する最大周期系列符号の相互相関を
   算出して推定エコーパスパラメータとして用いることを
   特徴とする音響エコーキャンセラ装置。