JPH07122173B2 - 紡機におけるドラフト装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、短繊維、長繊維などの紡出する繊維の特性に
応じて、ドラフトの最も大きなドラフト部の間に配置さ
れているボトムローラー、及びプレッシャーバーの配置
位置を簡単に変更できるようにして、繊維長などの繊維
特性の変化に対するドラフト装置の切換操作を迅速に行
えるようにした紡機におけるドラフト装置に関するもの
である。

〔従来の技術〕

例えば、４線式のドラフト装置は、第７図及び第８図に
示されるように、ボトムローラーとトップローラーで構
成される四組のローラー対1,2,3,4から成り、各ローラ
ー対１〜４は、それぞれローラースライド5,6,7,8に取
付けられている。なお、ローラー対を構成しているボト
ムローラー、及びトップローラーには、それぞれローラ
ー対の符号に添字「ａ」，「ｂ」を付して説明する。

ボトムローラーは、駆動回転して、トップローラーは従
動回転する。

セカンドローラースライド６の上端面には、エンドブラ
ケット９が締付けボルト11を介して固定されており、セ
カンドトップローラー2bの両端部は、前記エンドブラケ
ット９で支持されている。セカンドローラー対２を構成
しているセカンドトップローラー2bの両端部には、それ
ぞれプレッシャーバーホルダー12a,12b（但し、第８図
では12bは図示されていない）が装着されていて、各プ
レッシャーバーホルダー12a,12bによってプレッシャー
バー13の両端部が支持されて、プレッシャーバー13は、
フロントローラー対１とセカンドローラー対２との間に
配置されている。

第７図に示される各ローラー対１〜４の配置は、短繊維
を紡出させる場合である。このローラー対の配置状態に
おいて、繊維長が60mm以上の長繊維、バイアスカットの
繊維、短繊維と長繊維との混紡、或いは動植物繊維、化
合繊の混紡などを紡出する場合には、第９図に示される
ように、サードローラー対３を取外すと共に、セカンド
ローラー対２が取付けられているローラースライド６を
上流側に固定し直して、紡出する繊維の中の長繊維に合
わせたゲージ（ローラー間寸法）に設定して対応してい
た。このため、以下のような各不具合があった。

（１）長繊維に合わせてゲージを設定した場合におい
て、ドラフトの最も大きなドラフト部におけるプレッシ
ャーバー13の配置位置が適正でないために、セカンドボ
トムローラー2aとプレッシャーバー13が近接し過ぎて、
プレッシャーバー13とフロントボトムローラー1aとの間
隔が広過ぎることになって、大きなドラフトを行うドラ
フト部での短繊維の規制ができなくて、不正ドラフトと
なり、スライバーの重量斑が生じていた。

即ち、短繊維と長繊維との混紡、或いは化合繊と動植物
繊維との混紡（以下、混紡類と総称する）、更にはバイ
アスカットの繊維を紡出する場合において、短繊維の長
さがプレッシャーバー13とフロントボトムローラー1aと
の間隔よりも短いために、短繊維には、下流側の繊維群
Ｆに従属するものと、上流側の繊維群Ｆに従属するもの
とがあって、その挙動が不安定となる。

また、繊維群Ｆの流れから短繊維が脱落することもあ
り、これらが原因となって、紡出されたスライバーに重
量斑が発生して、その品質を悪くしていた。特に、化合
繊と動植物繊維との混紡においては、互いの摩擦抵抗、
クリンプ、繊維長などの特性が異なるために、分離し易
い状態になっていて、互いの拘束力が小さいか、或いは
無くなっているので、ローラー間において正規のフリー
スの流れから脱落することが多かった。

（２）上述のように、サードローラー対３の取付け、取
外しを行うと共に、セカンドローラー対２が取付けられ
ているローラースライド６を移動させることにより、繊
維長の変化に対応させているので、長繊維から短繊維ま
で、更には混紡類、バイアスカットの繊維に至るまで、
幅広く対応できない。

（３）繊維長、或いは繊維の種類が変化する毎に、サー
ドローラー対３の取付け、取外しを行うと共に、セカン
ドローラー対２が取付けられているローラースライド６
を移動させているので、この切換作業に多大な時間を費
し、生産能率の低下を来していた。特に、最近における
ニーズの多様化に伴い、ドラフト装置の切換回数が多く
なっており、切換時間は無視できなくなっている。

〔発明が解決しようとする課題〕

本発明は、上記したような従来のドラフト装置の有する
不具合に鑑み、繊維長などの繊維特性の変化に対するド
ラフト装置の切換操作を簡単に行えるようにすると同時
に、短繊維から長繊維まで、更には混紡類、バイアスカ
ットの繊維に至る幅広い繊維に対応でき、しかも高品質
のスライバーを紡出できるようにすることを課題として
なされたものである。

〔課題を解決するための手段〕

上記課題を解決するために本発明の採用した手段は、ボ
トムローラーとトップローラーとで一組となった前後二
組のローラー対で構成されるドラフト部のうち、ドラフ
ト率の最も大きいドラフト部の中央付近、或いは中央よ
りも上流側に、駆動回転するボトムローラーを設け、該
ボトムローラーの近傍にプレッシャーバーを、その上流
側及び下流側の双方に配置可能にして設け、長繊維、又
は混紡類の紡出時には、前記ボトムローラーの上流側に
前記プレッシャーバーを配置し、短繊維の紡出時には、
前記ボトムローラーの下流側に前記プレッシャーバーを
配置すると共に、該ボトムローラーの上方にトップロー
ラーを装着して、各繊維を紡出するように構成したこと
である。

〔発明の作用〕

長繊維、又は混紡類の紡出時においては、ドラフト率の
最も大きいドラフト部に配置されたボトムローラーの上
流側にプレッシャーバーが配置されていて、このボトム
ローラーの上方にはトップローラーは設けられていな
い。このため、前記ドラフト部における繊維群のニップ
点間距離が長くなる。前記ドラフト部を形成している前
後二組のローラー対の間において、繊維群は完全には把
持されていないが、ドラフトされることにより繊維群
は、プレッシャーバー、及び上記ボトムローラーに強く
押し付けられ、この押し付けられている部分が、ニップ
点に近い作用を果たす仮想ニップ点となる。

このため、繊維間の摩擦抵抗が増大して、各繊維どうし
が互いに拘束し合うために、短繊維は、長繊維に従動す
ることなく適正にドラフトされると同時に、上記ボトム
ローラー、及びプレッシャーバーの部分において繊維群
は確実には把持されてはいないので、長繊維は、切断さ
れることなく下方のローラー対によって強く引っ張られ
て適正にドラフトされる。

一方、短繊維をドラフトする場合には、プレッシャーバ
ーを上記ボトムローラーの下流側に配置すると共に、こ
のボトムローラーの上方にトップローラーを装着するこ
とにより、ドラフト率の最も大きなドラフト部における
繊維群のニップ点間距離を短くして、各ゲージを繊維長
に設定してドラフトを行う。

〔実施例〕

以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。
なお「従来の技術」の項目で説明した部分と、同一部分
には同一符号を付して説明を行う。

第１図ないし第３図に示されるのは、長繊維、混紡類、
バイアスカットの繊維をドラフトする状態であって、セ
カンドローラースライド６の上端面には、エンドブラケ
ット９が前後方向に沿って移動可能となって締付けボル
ト11を介して所定位置に固定されており、このエンドブ
ラケット９の内側にガイド部9aが設けられており、ホル
ダーロッド14の両端部はエンドブラケット９の上記ガイ
ド部9aに、前後方向には移動不能であるが、上下方向に
は移動可能なように支持されている。ホルダーロッド14
がエンドブラケット９のガイド部9aで支持された状態に
おいては、ホルダーロッド14は、セカンドボトムローラ
ー2aの直上、又はほぼ真上に配置されているが、セカン
ドボトムローラー2aとは接していない。このホルダーロ
ッド14の両端部に、プレッシャーバーホルダー12a,12b
がそれぞれ該ホルダーロッド14の軸心を中心にして回動
可能に装着されている。

プレッシャーバー13の両端部は、他の部分よりも小径と
なっており、この小径の部分13aが上記プレッシャーバ
ーホルダー12a,12bに設けられた嵌合穴15に嵌合され
て、該ホルダー12a,12bの外側面よりも突出していて、
セカンドローラースライド６に設けられたガイド部6aに
当接している。プレッシャーバーホルダー12a,12bの上
面には、スプリング座16が設けられていて、このスプリ
ング座16に弾接しているスプリング（図示せず）の復元
力により、プレッシャーバー13は下方に付勢されてい
る。前記エンドブラケット９を前後方向に移動させる
と、プレッシャーバー13は、ガイド部6aに沿って同方向
に移動されるようになっている。なお、第１図ないし第
３図において、Ｐは繊維群Ｆの流れる方向を示す。

第１図ないし第３図に示されるように、長繊維、混紡
類、バイアスカットの繊維をドラフトする場合には、プ
レッシャーバー13は、セカンドボトムローラー2aの上流
側に配置されていると共に、このセカンドボトムローラ
ー2aの上方にはセカンドトップローラー2bは装着されて
いない。

このような状態において、各ローラー対1,3,4の間を繊
維群Ｆが流れると、この繊維群Ｆは、バックローラー対
４とサードローラー対３との間で1.2〜２倍程度にドラ
フトされ、引続いてサードローラー対３とフロントロー
ラー対１との間のドラフト率の最も大きなドラフト部に
おいて４〜７倍程度ドラフトされる。ドラフトの最も大
きなドラフト部において、プレッシャーバー13の最下部
は、サードボトムローラー3aとセカンドボトムローラー
2aの各上部の接線よりも下方に位置しているので、繊維
群Ｆは、プレッシャーバー13によって強く下方に押し下
げられた状態で、セカンドボトムローラー2aの上を通過
し、フロントローラー対１によって強く引っ張られて、
大きくドラフトされる。ここで、サードローラー対３と
フロントローラー対１の間においては、繊維群Ｆは、ボ
トムローラーとトップローラーによって完全に把持され
てはいないが、プレッシャーバー13が上記したような位
置関係にあると共に、繊維群Ｆが大きくドラフトされる
ことにより、この繊維群Ｆは、セカンドボトムローラー
2aの上部のA₁及びA₂で示される間、並びにプレッシャー
バー13の下部のB₁及びB₂で示される間（これらは仮想ニ
ップ点と称されている）において部分的に強く押し付け
られているので、繊維間の摩擦抵抗が増大することによ
り繊維どうしが互いに拘束し合い、実質的にボトムロー
ラーとトップローラーとによって把持されている状態に
近い状態となる。このため、繊維群Ｆに含まれている短
繊維は、長繊維群に従動されることなく適正にドラフト
されると共に、繊維群Ｆから短繊維が脱落するような現
象も生じない。また、サードローラー対３とフロントロ
ーラー対１の間において、長繊維は、プレッシャーバー
13、及びセカンドボトムローラー2aの各仮想ニップ点に
おいて確実には、把持されてはいないので、切断される
ことなくフロントローラー対１によって強く引っ張られ
ることにより、適正にドラフトされる。

また、長繊維、混紡類、バイアスカットの繊維をドラフ
トする場合において、繊維長に応じて、セカンドローラ
ースライド６、又はサードローラースライド７を適宜移
動させることにより、ドラフトの最も大きなドラフト部
におけるニップ点間距離を調整して、適正にドラフトす
ることができる。

一方、短繊維をドラフトする場合には、第４図及び第５
図に示されるように、ホルダーロッド14の左右両端に嵌
め込まれていた各プレッシャーバーホルダー12a,12bを
左右反転させて、セカンドトップローラー2bの両端部に
嵌め込んで、このセカンドトップローラー2bの両端部を
エンドブラケット９のガイド部9aで支持させると、セカ
ンドボトムローラー2aの上方にセカンドトップローラー
2bが装着される。このようにすると、プレッシャーバー
13は、セカンドボトムローラー2aの下流側に配置され
て、フロントローラー対１とセカンドローラー対２とで
形成されるドラフト率の最も大きいドラフト部における
ニップ点間距離が短くなる。そして、各ゲージを紡出す
る短繊維の繊維長に合わせて設定して、ドラフトを行う
のである。

このように、サードローラー対３を取外すことなく、長
繊維用から短繊維用に、或いはこの逆にドラフト装置の
切換えを行うことができるので、ドラフト装置の切換え
を短時間で行うことができると共に、サードローラー対
３、並びにセカンドボトムローラー2a、及びプレッシャ
ーバー13を移動させることにより、繊維長などの幅広い
繊維特性に対応して、最適なゲージ設定を行うことがで
きる。

また、第６図に示される別の実施例は、エンドブラケッ
ト９′にプレッシャーバーホルダー12a（12b）を一体に
して製作したものである。このようにすれば、セカンド
ボトムローラー2aの上方にホルダーロッド14が配置され
なくなるので、ホルダーロッド14の上に風綿などが堆積
するなどの不具合がなくなる。但し、短繊維を紡出する
場合には、エンドブラケット９′全体を取換える必要が
ある。

〔発明の効果〕

本発明に係わるドラフト装置によれば、特定のローラー
対を取外すことなく、長繊維用から短繊維用に、或いは
この逆にドラフト装置を簡単に切換えることができるの
で、ドラフト装置の切換えを短時間で行うことができ
る。

また、ローラー対を取外すことなく、特定のローラー対
のトップローラーの取付け、取外しと、プレッシャーバ
ーの配置位置の変更とによって、繊維長などの繊維特性
の異なる各種の繊維を紡出する構成であるので、幅広い
繊維特性に対応して、最適なゲージ設定を行うことがで
きる。このため、混紡類、バイアスカットの繊維に至る
幅広い繊維に対応でき、しかも高品質のスライバーを紡
出することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図ないし第６図は、本発明を説明するための図であ
って、第１図は、長繊維を紡出する場合のドラフト装置
の各ローラー対1,3,4、及びプレッシャーバー13の配置
を示す概略側面図、第２図は、第１図におけるプレッシ
ャーバー13の部分の拡大図、第３図は、第１図における
プレッシャーバー13の部分を後方から見た斜視図、第４
図、短繊維を紡出する場合のドラフト装置の各ローラー
対１〜４、及びプレッシャーバー13の配置を示す概略側
面図、第５図は、第４図におけるプレッシャーバー13の
部分を後方から見た斜視図、第６図は、エンドブラケッ
ト９′に一体に設けられたプレッシャーバーホルダー12
a,12bによって支持されたプレッシャーバー13の部分の
斜視図である。 第７図ないし第９図は、従来のドラフト装置を説明する
ための図であって、第７図は、短繊維を紡出する場合の
ドラフト装置の斜視図、第８図は、同じくエンドブラケ
ット９の部分の平面図、第９図は、長繊維を紡出する場
合の各ローラー対の配置を示す概略側面図である。 本発明を構成している主要部分の符号の説明は以下の通
りである。 １〜4:ローラー対 1a〜4a:ボトムローラー 1b〜4b:トップローラー 9:エンドブラケット 12a,12b:プレッシャーバーホルダー 13:プレッシャーバー、14:ホルダーロッド

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】ボトムローラーとトップローラーとで一組
   となった前後二組のローラー対で構成されるドラフト部
   のうち、ドラフト率の最も大きいドラフト部の中央付
   近、或いは中央よりも上流側に、駆動回転するボトムロ
   ーラーが設けられ、該ボトムローラーの近傍にプレッシ
   ャーバーが、その上流側及び下流側の双方に配置可能に
   して設けられ、 長繊維、又は混紡類の紡出時には、前記ボトムローラー
   の上流側に前記プレッシャーバーを配置し、短繊維の紡
   出時には、前記ボトムローラーの下流側に前記プレッシ
   ャーバーを配置すると共に、該ボトムローラーの上方に
   トップローラーを装着して、各繊維を紡出するように構
   成されていることを特徴とする紡機におけるドラフト装
   置。