JPH07117066A - モールドプレス成形用金型 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 スタンピングモールド工法に使用するモール
ドプレス成形用金型において、樹脂芯材表面に表皮材を
貼着した積層体のモールドプレス成形と、樹脂芯材単体
のモールドプレス成形の双方の成形に好適なモールドプ
レス成形用金型を提供することを目的とする。 【構成】 モールドプレス成形用下型３０の外周縁に沿
って、溶融樹脂Ｍの流れ出しを防止するフローティング
コア６０を上方に付勢した状態で設置するとともに、モ
ールドプレス成形用上型４０の下降動作とともに、上型
４０の型面とフローティングコア６０の上端面６０ａと
が当接して、上型４０とともに下降動作を行なうように
フローティングコア６０を上下動可能な構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、モールドプレス成形
工法により樹脂成形体を所要形状に成形するモールドプ
レス成形用金型に関する。

【０００２】

【従来の技術】図９は、自動車用内装部品の一例として
の自動車用ドアトリム１の構成を示す断面図であり、図
面において、自動車用ドアトリム１は、保形性および車
体パネルへの取付剛性を備えるとともに、所要形状に成
形された樹脂芯材２と、この樹脂芯材２の表面側に貼着
一体化され、クッション性および装飾性を付与する表皮
材３との積層体から構成されている。

【０００３】そして、この自動車用ドアトリム１の製造
方法として、成形性および工程の短縮化を考慮して、図
１０に示すモールドプレス成形用金型を使用した工法が
多用されている。

【０００４】すなわち、昇降可能なモールドプレス成形
用上型４の型面に表皮材３をセットするとともに、この
上型４を所定ストローク下降動作させ、上下型４，５が
所定クリアランスに到達したとき、モールドプレス成形
用下型５の型面上に樹脂芯材２の材料となる溶融樹脂Ｍ
を分配供給した後、モールドプレス成形用上型４をさら
に下降操作させて、モールドプレス成形用上下型４，５
を係合圧締めすることにより、樹脂芯材２を所要の曲面
形状に成形するとともに、樹脂芯材２と表皮材３とをプ
レス一体化するというものであり、溶融樹脂Ｍの供給機
構としては、下型５に射出成形機６が接続され、射出成
形機６から供給される溶融樹脂Ｍは、下型５内に穿設さ
れているホットランナ５ａ，ゲート５ｂを通じて、下型
５の型面上の所定箇所に分配供給される。

【０００５】そして、図１１に示すように、モールドプ
レス成形用上下型４，５の型締め時、溶融樹脂Ｍが下型
５の外周から流れ出すのを防止するために、上型４の外
周は、下方向に伸ばして、所定寸法ラップするラップ構
造としている。通常このラップ部をパーティング面と称
している。

【０００６】したがって、図１１において、拡大して示
すように、上型４のパーティング面４ａで表皮材３を挟
み、シール状態を保ち、溶融樹脂Ｍの流れ出しを防止し
ているのが実状である。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】このように、従来のモ
ールドプレス成形工法に使用するモールドプレス成形用
金型では、下型５と上型４とのパーティング面４ａにお
けるクリアランスで表皮材３をシールすることにより、
樹脂芯材２の成形と樹脂芯材２と表皮材３とのプレス一
体化を可能にしているが、例えば、樹脂芯材２単体を、
このモールドプレス成形用金型を使用して成形した場合
には、この下型５と上型４とのパーティング面４ａにお
けるクリアランスより溶融樹脂Ｍが漏れて、樹脂芯材２
の周縁にバリが形成されるとともに、ショートショット
が生じやすいという不具合が指摘されている。

【０００８】そのため、バリを除去する手直し工程が付
加され、製品の歩留りを著しく低下させるという欠点が
あった。

【０００９】仮に、パーティング面４ａにおけるクリア
ランスを狭く設定しても、上下型４，５の熱膨脹率の差
異により、このクリアランスから溶融樹脂Ｍが漏れるた
め、有効な対策ではない。

【００１０】この発明は、このような事情に鑑みてなさ
れたもので、モールドプレス成形工法により樹脂成形体
を所要形状に成形するモールドプレス成形用金型におい
て、樹脂成形体と表皮材とを一体成形する場合はもちろ
ん、樹脂成形体単体を成形する場合においても、製品周
縁にバリが発生することがなく、余分な仕上げ工程が廃
止でき、樹脂成形体単体，樹脂成形体と表皮材との積層
体いずれの仕様においても共用化できるモールドプレス
成形用金型を提供することを目的としている。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、モールドプレス成形用型内に供給された
溶融樹脂をモールドプレス成形するモールドプレス成形
用金型において、モールドプレス成形用金型は、モール
ドプレス成形用下型の外周縁に沿って、溶融樹脂の流れ
出しを防止するフローティングコアが上方に付勢された
状態で配設されているとともに、上記フローティングコ
アは、溶融樹脂の供給時、フローティングコアの上端面
と上型の型面とが当接しており、モールドプレス成形
時、上型により下方向に押圧されるように上下動可能に
構成されていることを特徴とする。上記フローティング
コアを上方に付勢する手段としては、スプリングによる
バネ力を使用してもよく、また、油圧シリンダ，エアシ
リンダ等のシリンダを使用してもよい。

【００１２】

【作用】以上の構成から明らかなように、下型の外周に
沿って上方に付勢されたフローティングコアが設置され
ており、このフローティングコアは、上型が所定ストロ
ーク下降して、下型の型面上に溶融樹脂が分配供給され
るとき、上型の型面とフローティングコアの上端面とが
当接しており、さらに、モールドプレス成形時、上型が
さらに下降するが、上型の下降動作と連繋して下方向に
押し下げられるように上下動可能に構成されているた
め、モールドプレス成形時、溶融樹脂は、フローティン
グコアの内周面にせき止められ、外部に流れ出すのが規
制され、製品周縁にバリの発生は皆無となる。

【００１３】

【実施例】以下、本発明によるモールドプレス成形用金
型の実施例ついて、添付図面を参照しながら詳細に説明
する。

【００１４】まず、図１，図２は本発明によるモールド
プレス成形用金型を使用して製作した自動車用ドアトリ
ムの正面図ならびに断面図であり、図３は本発明による
モールドプレス成形用金型の一実施例の構成を示す断面
図、図４ないし図５は本発明に係るモールドプレス成形
用金型を使用して樹脂芯材単体を成形する各工程を示す
各断面図、図６ないし図８は本発明によるモールドプレ
ス成形用金型を使用して樹脂芯材と表皮材との積層成形
体をプレス成形する各工程を示す各断面図である。

【００１５】まず、図１，図２において、自動車用ドア
トリム１０は、所要形状にモールドプレス成形された樹
脂芯材１１と、その表面に貼着された表皮材１２とから
構成されており、樹脂芯材１１としては、ポリプロピレ
ン樹脂にフィラーとしてタルクを混入したポリプロピレ
ン複合樹脂材料を使用しており、表皮材１２としては、
ＰＶＣシート裏面にポリウレタンフォームを裏打ちした
クッション性の良好な表皮材を使用しており、樹脂芯材
１１のモールドプレス成形後、真空貼着等により表皮材
１２が樹脂芯材１１表面側に貼着されている。

【００１６】次に、図３は本発明によるモールドプレス
成形用金型の一実施例の構成を示すもので、モールドプ
レス成形用金型２０は、所要の型面形状を備えたモール
ドプレス成形用下型３０と、このモールドプレス成形用
下型３０と係合圧締め可能なように昇降自在なモールド
プレス成形用上型４０と、モールドプレス成形用下型３
０の所定箇所に樹脂芯材１１の素材である溶融樹脂Ｍを
供給する射出成形機５０と、モールドプレス成形用下型
３０の外周に沿って、上方に付勢され、かつ上型４０の
下降動作により下方向に押圧される上下動可能なフロー
ティングコア６０とから大略構成されている。

【００１７】さらに詳しくは、上記射出成形機５０のノ
ズル５１を通じて溶融樹脂Ｍが下型３０の所定箇所に供
給できるように、下型３０にはホットランナ３１と、こ
のホットランナ３１から分岐する複数のゲート３２が開
設されているとともに、フローティングコア６０は、そ
の下面にスプリング６１を介して固定テーブル３３に取
付けられており、このスプリング６１のバネ力により、
フローティングコア６０が常時上方向に付勢されてい
る。

【００１８】なお、このフローティングコア６０に対す
る付勢手段として、この実施例ではスプリング６１を使
用したが、油圧シリンダやエアシリンダ等のシリンダを
使用してもよい。

【００１９】このように、本発明によるモールドプレス
成形用金型２０は、従来のモールドプレス成形用上下型
３０，４０と射出成形機５０とからなる構成に、フロー
ティングコア６０を付設するという簡単な構成であり、
このフローティングコア６０を付設した作用効果につい
て、以下に説明する。

【００２０】図４，図５は、自動車用ドアトリム１０に
おける樹脂芯材１１の成形を、図３に示すモールドプレ
ス成形用金型２０を使用して行なったもので、まず、図
４に示すように、モールドプレス成形用上型４０が図示
しない昇降装置の駆動により所定ストローク下降して、
モールドプレス成形用上下型３０，４０が所定クリアラ
ンスに到達するまで上型４０が下降し、下型３０の型面
所定箇所に、射出成形機５０から溶融樹脂Ｍが分配供給
される。

【００２１】このとき、上型４０の下降動作により、フ
ローティングコア６０の上端面６０ａが上型４０の型面
と当接し、さらに、下型４０の下降動作に連繋して、フ
ローティングコア６０がスプリング６１のバネ力に対し
て下降動作を行なう。

【００２２】その後、所定量の溶融樹脂Ｍがモールドプ
レス成形用上下型３０，４０内に供給されるのと同時
に、上型４０がさらに下降を始め、同様にフローティン
グコア６０も下降して、図５に示すモールドプレス成形
時の状態となる。

【００２３】このとき、図４から図５に至る過程で、溶
融樹脂Ｍは下型３０の外周から型外に流れ落ちる挙動を
示すが、図示するように、下型３０の外周に沿ってフロ
ーティングコア６０が配設されているため、このフロー
ティングコア６０の内側面６０ｂによって、溶融樹脂Ｍ
の流れ出しが完全に防止でき、樹脂芯材１１の外周縁に
バリ等が生じることがないため、従来必要としたバリ除
去作業等の仕上げ作業を全面的に廃止できる。

【００２４】また、材料ロスがなく、かつショートショ
ット等の不具合も未然に防止できるという効果がある。

【００２５】その後、上型４０を上昇させて、下型３０
上の樹脂芯材１１を脱型して、表皮材１２を図示しない
工程により樹脂芯材１１の表面側に貼着して、図１，図
２に示す自動車用ドアトリム１０の製作を完了する。

【００２６】なお、上型４０が上昇するに連れて、下型
３０の外周に配設されているフローティングコア６０
も、スプリング６１のバネ力により上昇動作を開始す
る。

【００２７】次いで、図６ないし図８は、図３に示すモ
ールドプレス成形用金型２０を使用して、樹脂芯材１１
と表皮材１２とを一体プレス成形する実施例に適用した
もので、図６に示すように、上型４０が最上方位置に上
昇しているとき、上型４０の型面に表皮材１２を裏面を
下側に向けてセットする。

【００２８】このとき、下型３０の外周に配設されてい
るフローティングコア６０は、スプリング６１のバネ力
により最上方位置に来ている。

【００２９】そして、表皮材１２のセットが完了すれ
ば、図７に示すように、下型３０が下降を始め、まず、
下型３０の型面がフローティングコア６０の上端面６０
ａに当接し、さらにフローティングコア６０を下方向に
押し下げる形で上型４０は下降動作を続行し、下型３０
と上型４０との間のクリアランスが所定寸法になったと
き、下型３０の下降動作が停止する。

【００３０】そして、この段階で、射出成形機５０から
ホットランナ３１，ゲート３１を通じて、下型３０の所
定箇所に溶融樹脂Ｍが供給される。

【００３１】このとき、表皮材１２の周縁部分は、上型
４０とフローティングコア６０の上端面６０ａとで気密
にシールされている。

【００３２】次いで、図８に示すように、上型４０が下
降を始め、モールドプレス成形用上下型３０，４０によ
り樹脂芯材１１を所要形状にプレス成形すると同時に、
樹脂芯材１１の表面側に表皮材１２を一体貼着する。

【００３３】このように、図３に示す本発明に係るモー
ルドプレス成形用金型２０を使用すれば、樹脂芯材１１
と表皮材１２とを一体プレス成形できるとともに、例え
ば、従来の方法であると、上下型のパーティング面に所
定のクリアランスを設定し、パーティング面で表皮材を
シールするという構成であるため、表皮材１２の厚みに
よりこのクリアランスを調整する必要があるが、本発明
によるモールドプレス成形用金型２０を使用すれば、表
皮材の厚みが薄肉仕様，厚肉仕様どのようなものであっ
ても有効に対応でき、従来のように、表皮材の仕様によ
り上下型のクリアランスを微妙に調整する作業を廃止で
きる利点がある。

【００３４】したがって、本発明によるモールドプレス
成形用金型２０を使用すれば、樹脂芯材１１単体をモー
ルドプレス成形することも、樹脂芯材１１表面に表皮材
１２を一体にモールドプレス成形することもでき、製品
仕様により金型２０を共用化できるとともに、樹脂芯材
１１単体のものを成形する場合には、従来の金型に比
べ、バリ等の発生が皆無となり、手直し作業が廃止で
き、著しい生産性の向上が期待できる。

【００３５】さらに、樹脂芯材１１と表皮材１２との積
層構造のものをモールドプレス成形する場合には、従来
では、表皮材１２の厚みに対応して、上下型３０，４０
のパーティング面におけるクリアランスを調整する面倒
な調整作業を要したが、表皮材１２の厚みに左右される
ことなく、金型加工を簡単かつ廉価に行なえるという利
点がある。

【００３６】

【発明の効果】以上説明した通り、本発明に係るモール
ドプレス成形用金型は、以下に記載する格別の作用効果
を有する。

【００３７】（１）本発明によるモールドプレス成形用
金型は、下型の外周に沿って、溶融樹脂の流れ出しを防
止するフローティングコアを設置するという構成である
ため、従来の金型構造のように、パーティング面に所定
クリアランスを設置するという構成ではなく、溶融樹脂
が型外に流れ落ちることがなく、成形体周縁にバリ等の
発生が皆無となり、モールドプレス成形後の仕上げ工程
が廃止でき、生産性を大幅に向上させるという効果を有
する。

【００３８】（２）本発明によるモールドプレス成形用
金型によれば、下型の外周にフローティングコアを設置
するという構成であるため、モールドプレス成形用型内
で樹脂芯材と表皮材とを一体プレス成形することも可能
であり、同一金型で、樹脂芯材単体のモールドプレス成
形および樹脂芯材表面に表皮材を積層した積層成形体の
成形の両成形が可能となり、樹脂芯材単体，樹脂芯材表
面に表皮材を貼着した積層体両者に共用化できるという
効果を有する。

【００３９】（３）本発明に係るモールドプレス成形用
金型は、下型の外周にフローティングコアを設置すると
いう構成であるため、従来のように、パーティング面の
クリアランスにより表皮材をシールしてモールドプレス
成形するという構成ではなく、表皮材の厚みに対応して
パーティング面のクリアランスを調整する作業が不要と
なり、金型加工の面倒な作業が廃止できるとともに、表
皮材の厚みをどのようにも設定でき、材料の選択自由度
を大幅に拡大することができるという効果を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明方法により製作した自動車用ドアトリム
を示す正面図。

【図２】図１中II−II線断面図。

【図３】本発明に係るモールドプレス成形用金型の一実
施例の構成を示す断面図。

【図４】図３に示す金型を使用して樹脂芯材単体を成形
する際の溶融樹脂の供給工程を示す断面図。

【図５】図３に示す金型を使用して樹脂芯材単体を成形
する際のモールドプレス成形工程を示す断面図。

【図６】図３に示す金型を使用して積層体を成形する際
の表皮材のセット工程を示す断面図。

【図７】図３に示す金型を使用して積層体を成形する際
の溶融樹脂の供給工程を示す断面図。

【図８】図３に示す金型を使用して積層体を成形する際
のモールドプレス成形工程を示す断面図。

【図９】従来の自動車用ドアトリムを示す断面図。

【図１０】従来のモールドプレス成形用金型の構成を示
す断面図。

【図１１】図１０に示す金型を使用したモールドプレス
成形工程を示す断面図。

【符号の説明】

１０ 自動車用ドアトリム １１ 樹脂芯材 １２ 表皮材 ２０ モールドプレス成形用金型 ３０ モールドプレス成形用下型 ３１ ホットランナ ３２ ゲート ４０ モールドプレス成形用上型 ５０ 射出成形機 ６０ フローティングコア ６１ スプリング

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 モールドプレス成形用型（３０，４０）
   内に供給された溶融樹脂（Ｍ）をモールドプレス成形す
   るモールドプレス成形用金型において、 モールドプレス成形用金型（２０）は、モールドプレス
   成形用下型（３０）の外周縁に沿って、溶融樹脂（Ｍ）
   の流れ出しを防止するフローティングコア（６０）が上
   方に付勢された状態で配設されているとともに、上記フ
   ローティングコア（６０）は、溶融樹脂（Ｍ）の供給
   時、フローティングコア（６０）の上端面（６０ａ）と
   上型（４０）の型面とが当接しており、モールドプレス
   成形時、上型（４０）により下方向に押圧されるように
   上下動可能に構成されていることを特徴とするモールド
   プレス成形用金型。