JPH07109299A - 抗hiv物質ペスタヒビン及びその誘導体 - Google Patents

抗hiv物質ペスタヒビン及びその誘導体

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JPH07109299A
JPH07109299A JP5255592A JP25559293A JPH07109299A JP H07109299 A JPH07109299 A JP H07109299A JP 5255592 A JP5255592 A JP 5255592A JP 25559293 A JP25559293 A JP 25559293A JP H07109299 A JPH07109299 A JP H07109299A
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pestahibin
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compound
hiv
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JP5255592A
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Hiroshi Itazaki
弘 板崎
Tamio Fujiwara
民雄 藤原
Akihiko Sato
彰彦 佐藤
Yoshimi Kawamura
義巳 川村
Koichi Matsumoto
浩一 松本
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Shionogi and Co Ltd
Original Assignee
Shionogi and Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 式: 【化1】 [式中、Rは水素、メトキシ基、低級アルキル基、又は
グリコシル基である]で示されるペスタヒビン及びその
誘導体、ならびにペスタヒビンを産生するペスタロチオ
プシス エス・ピーRF−5890株を提供する。 【効果】 本発明の化合物はHIV感染抑制作用を有し
ているので、AIDSの治療及び予防に有用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明の抗ヒト後天性免疫不全ウ
イルス物質(抗HIV物質)は、ペスタロチオプシス
エス・ピー(Pestalotiopsis sp.)RF−5890株なる
カビを培養することにより産生される。本明細書では、
この新規な物質をペスタヒビン(Pestahivin)と呼称す
る。また、本発明はペスタヒビンを化学修飾することに
よって得られるその誘導体に関する。本発明のペスタヒ
ビン及びその誘導体は共にHIVに対する強力な感染抑
制作用を有しており、従ってHIV感染者の治療及びA
IDS発症予防への応用が期待される。
【0002】
【従来の技術・発明が解決しようとする課題】後天性免
疫不全症候群(AIDS)は、レトロウイルスと呼ばれ
るRNAウイルスの一種であるHIVが引き起こす重篤
な免疫不全症である。AIDSを引き起こすHIVは感
染力は弱いものの、感染が成立し、AIDSが発症した
後では死亡率が極めて高い。現在、AIDSの治療に使
用されている薬物としてAZT(アジドチミジン)、D
DI(ジデオキシイノシン)があり、これらは逆転写酵
素阻害作用によりウイルスの増殖をブロックする働きを
有している。しかし、これらの薬物は顆粒球減少症、及
び輸血が必要となる程の貧血を引き起こすなど、副作用
を有しており、長期投与は望ましくない。また、これら
の薬物の投与によって薬物耐性ウイルスが出現するおそ
れもある。従って、AIDSを処置するための薬物の開
発は今なお望まれている。
【0003】
【課題を解決するための手段】本発明のペスタヒビン
(Pestahivin)は新規化合物であり、その構造は式:
【化4】 で示されるデプシペプチドであることが、核磁気共鳴ス
ペクトル (1H 及び 13CNMR)、質量分析スペクトル (SI-
MS) 等の物理化学的解析、酸加水分解での構成アミノ酸
分析などの化学的方法によって確認された。
【0004】ペスタヒビンは式:
【化5】 で示される立体構造を有していることが確認され、(3S,
6S,9S,12S,15S,18S,21R)-21-(2-シアノエチル)-12,15-
ジイソブチル-9-(1-メトキシ-3-インドリル)メチル-3,
4,10,16-テトラメチル-6,18-ビス(2-メチルヘキシル)-1
-オキサ-4,7,10,13,16,19-ヘキサアザシクロヘミコサン
-2,5,8,11,14,17,20-ヘプタオンと命名された。ペスタ
ヒビンの理化学的性状を以下に示す。 (1) 性状: 無色粉末、中性、融点(dec.) 92〜96℃ (2) 溶解性:メタノール、エタノール、酢酸エチル、ク
ロロホルム、ジメチルスルホキシド、トルエン、ベンゼ
ンに可溶。石油エーテル、ヘキサン、水に不溶。 (3) 呈色反応 (Color reaction): 過マンガン酸カリウム反応、沃素反応; 陽性 ニンヒドリン反応、塩化第二鉄反応、ドラーゲンドルフ
試薬; 陰性 (4) 分子式: C53H84N8O9 = 977.311 (5) 元素分析: (C53H84N809として) 実測値(%); C: 64.83, H: 8.7
7, N: 11.18 理論値(%); C: 65.14, H: 8.6
6, N: 11.47 (6) LSIMS: m/z 977 (M+
H) HRLSI−MS: m/z 実測値; 977.6447,
理論値; 977.6435 (7) 比旋光度: [α]D 23; - 237.3 ± 2.7 (c 1.01
2, MeOH) (8) UV: λmax MeOH nm(ε); 217(39,217), 277(4,71
8), 289.2(5,100), 298(sh.4,128) (9) IR: νmax KBr cm-1; 3439, 3286, 2957, 2924, 28
71, 2249, 1755, 1659,1634, 1543, 1456, 1371, 1321,
1236, 1208, 1194, 1037, 955, 758, 740, 616.
【0005】(10) 1H NMR: 600 MHz in DMSO-d6, δ:
8.607 (1H, d), 8.334 (1H, d), 7.845 (1H, d), 7.625
(1H, d), 7.431 (1H, d), 7.361 (1H, s), 7.204 (1H,
t), 7.073 (1H, t), 4.911 (1H, m), 4.885 (1H, dd),
4.833 (1H, dd), 4.672 (1H,m), 4.087 (1H, dd), 4.0
92 (1H, m), 4.011 (3H, s), 3.978 (1H, q), 3.190 (3
H, s), 3.116 (1H, m), 3.027 (1H, m), 2.780 (3H,
s), 2.465 (1H, m), 2.428 (1H, m), 2.397 (3H, s),
2.000 (1H, m), 1.699 (1H, m), 1.648 (1H, m), 1.569
(1H, m), 1.509 (1H, m), 1.500 (1H, m), 1.473 (1H,
m), 1.385 (1H, m), 1.362 (3H, d), 1.347 (1H, m),
1.312 (1H, m), ca 1.28 (1H, m), 1.274 (1H, m), ca
1.27 (1H, m), 1.252 (1H, m), ca 1.24 (2H x 2, m),
1.226 (1H, m), 1.190 (1H, m), 1.173 (1H, m), ca 1.
17 (1H, m), ca 1.16 (1H, m), 1.085(1H, m), 1.048
(1H, m), 0.938 (3H, d), 0.918 (3H, d), 0.885 (3H,
t), 0.872 (3H, d), 0.855 (3H, t), 0.804 (3H, d),
0.390 (3H, d), -0.200 (3H, d), -0.724 (1H, m). (11) 13C NMR: 150 MHz in DMSO-d6, δ; 172.58(s), 1
71.49(s), 170.45(s),169.98(s), 169.82(s), 167.88
(s), 167.26(s), 131.65(s), 123.31(s), 122.86(d), 1
22.31(d), 120.72(s), 119.67(d), 118.54(d), 108.30
(d), 106.09(s), 73.55(d), 65.75(q), 60.31(d), 58.2
8(d), 57.26(d), 47.29(d), 46.41(d), 46.03(d), 39.1
4(t), 38.33(t), 36.64(q), 36.43(t) x 2, 36.23(t),
35.83(t), 28.63(t), 28.49(t), 28.49(q), 28.15(d),
28.03(d), 27.81(q), 26.29(t), 24.32(d), 23.27(q),
22.99(t), 22.72(d), 22.48(q), 22.32(t), 22.24(t),
21.51(q), 19.89(q), 18.65(q), 17.96(q), 13.94(q),
13.84(q), 13.33(q), 13.10(t).
【0006】 (13) HPLC: カラム; Develosil ODS-5 (4.6φx250 mm) (野村化学
社製), 溶出溶媒; CH3CN (0.1% TFA): 水 (0.1% TFA) = 95:5, 流速; 1 ml/分, 検出法; UV at 220 nm, 保持時間; 6.76 分. (14) 構成アミノ酸、及び脂肪酸: アミノ酸 (全てL型):L-Leu 1個, L-N-MeLeu 1個, L-N-
MeAla 1個,2(S)-アミノ-4-メチルオクタン酸 2個,L-N-M
eTrp(N'-OMe) 1個 脂肪酸: 4-シアノ-2(R)-ヒドロキシ酪酸 1個
【0007】また、本発明者らはペスタヒビンの種々の
誘導体を合成した。まず、ペスタヒビンを接触還元すれ
ば、以下の式で示されるペスタヒビンの脱メトキシ体
(ペスタヒビンDM)が得られる:
【化6】 このペスタヒビンDMは、式:
【化7】 で示される立体構造を有していることが確認された。ペ
スタヒビンDMの物理恒数を以下に示す。ペスタヒビンDMの物理恒数 1) L-SIMS: m/z 947 (M + H)+ 2) IR: νmaxCHCl3 cm-1: 3462, 3270, 2998, 2948, 2
918, 2860, 2240,1749, 1707, 1637, 1545, 1501, 145
6, 1091 3) 13C NMR: 50 MHz CDCl3,δ; 13.74, 14.13, 14.18,
14.31, 18.73, 19.06, 19.81, 21.78, 22.68, 22.95,
23.01, 23.73, 23.90, 24.62, 26.63, 28.41,28.77, 2
9.10, 29.28, 29.40, 36.68, 36.97, 37.03, 37.46, 3
7.60, 38.89, 39.73, 46.95, 47.31, 57.32, 59.55, 6
1.25, 73.83, 111.19, 111.58, 118.49, 119.85, 119.9
8, 122.58, 123.09, 127.36, 136.11, 167.42, 168.12,
169.83, 170.89, 171.19, 172.57, 172.92
【0008】次に、上記のペスタヒビンDMをアルキル
ハライド又はグリコシルハライドと反応させれば、以下
の式で示されるペスタヒビンのN−アルキル体又はN−
グリコシル体がそれぞれ得られる。
【化8】 [式中、R'は低級アルキル基またはグリコシル基であ
る]
【0009】R'で示される低級アルキル基としては、
炭素数1〜6、好ましくは1〜4のアルキル基、例え
ば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基
等が挙げられる。R'で示されるグリコシル基として
は、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクト
ース等の5単糖や6単糖から成るグリコシル基、例えば
グルコピラノシル基、マンノピラノシル基、ガラクトピ
ラノシル基等のグリコピラノシル基、フルクトフラノシ
ル基等のグリコフラノシル基などが挙げられ、これらの
基は、その水酸基の水素が、ホルミル基、アセチル基、
プロピオニル基などのアシル基、好ましくはアセチル基
により置換されていても良い。
【0010】本発明はさらに、本発明化合物ペスタヒビ
ンを産生するペスタロチオプシスエス・ピーRF−58
90株に関する。本明細書においてはこの菌株をRF−
5890株と略称する。RF−5890株はビー・シー
・サットン著 マイコロジカル ペーパーズ,No. 80
(1961) [B.C.Sutton, Mycological Papers No.80 (196
1)] 及び ジ−・モルガン-ジョ−ンズら著 イコネス ジ
ェネラ ケロミセタルム II (1972) [G. Morgan-Jones e
t al. Icones genera coelomycetarum II (1972)] を参
照した結果、ペスタロチオプシス(Pestalotiopsis)属に
属する株と判断された。かかる判断の根拠となるRF−
5890株の特徴を以下に記載する。
【0011】RF−5890株の菌学的性状:本菌株の
ポテト・グルコ−ス寒天培地上でのコロニ−は不規則に
広がり、黒色である。分生子盤 (acervuli)はコロニー
の表面に粒状に形成され、黒色である。分生子形成細胞
はアネロ型、円筒形、無色で直立しており、細胞壁の表
面は平滑である。分生子は一つずつ単独に形成され、紡
錘形、直状で4個の隔壁を有し、隔壁部分で僅かにくび
れている。分生子の先端細胞と基底細胞は無色であり細
胞壁が薄く、中央部の細胞は比較的細胞壁が厚く、極め
て薄い茶色である。先端細胞に2−4本の無色の付属糸
を有し、また基底細胞には1本の短い付属糸を有してい
る。分生子の大きさは 22−25×4−6μmである。
本菌の分生子は概して幅が狭く、色も薄い。また、基底
細胞から2番目の細胞が他の細胞に比べて大きいという
特徴を持つ。
【0012】これらの諸性状から本菌株は、ビー・シー
・サットン著 マイコロジカル ペーパーズ,No.80 (19
61)[B.C.Sutton, Mycological papers No. 80 (196
1)]、及びジ−・モルガン-ジョ−ンズら著 イコネス ジ
ェネラ ケロミセタルム II (1972)[G. Morgan-Jones et
al. Icones genera coelomycetarum II (1972)]に記載
されているペスタロチオプシス(Pestalotiopsis)属に属
する株と判断されたので、本菌株の名称をペスタロチオ
プシス エス・ピーRF−5890 (Pestalotiopsis s
p. RF-5890) とした。本菌株は、茨城県つくば市東1丁
目1番3号、通産省工業技術院生命工学工業技術研究所
にFERM P−13715として寄託されている(受託
日:平成5年7月1日)。本発明のペスタヒビンはこの
RF−5890株を培養することによって生産できる。
【0013】本発明はさらに、以下の工程を包含する新
規な活性ペプチドであるペスタヒビン及びその誘導体の
製造方法をも提供する。 (1) ペスタロチオプシス属に属し、ペスタヒビンを産
生する微生物を培養する工程。 (2) 培養物からペスタヒビンを採取する工程。
【0014】以下に、ペスタヒビン及びその誘導体の一
般的製造法を記載する。ペスタロチオプシス(Pestalot
iopsis) 属に属する菌株、例えば上記のPestalotiopsis
sp. RF-5890を、通常の発酵生産に用いる培地組成およ
び培地条件で培養する。培地は原則として、炭素源、窒
素源、無機塩などを含有する。必要に応じて、ビタミン
類、先駆物質などを加えてもよい。炭素源としては、例
えば、グルコース、可溶性デンプン、デキストリン、グ
リセリン、糖類、有機酸などを単独又は混合物として用
いる。窒素源としては、例えば、大豆粉、コーンスチー
プリカー、牛肉エキス、酵母エキス、綿実粉、ポリペプ
トン、小麦麦芽、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム
などを単独又は混合物として用いる。無機塩としては、
例えば、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウ
ム、硫酸マグネシウム、硫酸銅、塩化マンガン、硫酸亜
鉛、塩化コバルト、各種リン酸塩などが挙げられ、必要
に応じて培地に添加する。
【0015】培養は約20〜37℃の温度で行なってよ
いが、特に23〜28℃の温度が好ましい。培養時間は
発酵の規模に大きく左右され、大量生産を行なう場合に
は約4〜14日を要する。培養中に激しい発泡が起こる
場合には、培養前又は培養中に、例えば植物油、ラー
ド、ポリプロピレングリコールなどの消泡剤を適宜添加
するとよい。培養終了後に培養物からペスタヒビンを分
離採取するには、通常の発酵生産物を分離採取する方法
を適宜用いる。例えば、濾過、遠心分離、各種イオン交
換樹脂やその他の活性吸着剤による吸脱着やクロマトグ
ラフィー、各種有機溶媒による抽出などを適当に組合せ
るとよい。
【0016】次いで、得られたペスタヒビンを、適当な
溶媒中、触媒の存在下に接触還元することにより、ペス
タヒビンの構成成分であるTrpのインドール環における
N−OCH3がNHに還元された脱メトキシ体(ペスタ
ヒビンDM)が得られる。溶媒としては、エタノール、
メタノールなどのアルコール、酢酸エチルなどのエステ
ルを単独で、又はそれらを混合して使用することができ
る。好ましい溶媒は低級アルコールであり、さらに好ま
しくはエタノールである。触媒としては、通常接触還元
に用いられる触媒、例えばパラジウム、白金、ニッケル
などを使用することができるが、好ましくはPd/炭素
を用いる。得られたペスタヒビンDMは、公知の手段に
より分離精製することができる。
【0017】さらに、ペスタヒビンのN−アルキル体又
はN−グリコシル体は、ペスタヒビンDM にアルキル
ハライド又はグリコシル ハライドと Ag2O 又は NaH、K
Hなどのアルカリ金属とを適当な溶媒中で反応させて製
造する。ペスタヒビンDMとアルキル ハライドとは 1:
1.1 〜 1:10 のモル濃度範囲で、またペスタヒビンDM
とグリコシル ハライドとは 1:1 〜 1:20 のモル濃度範
囲で反応させる。使用する溶媒はベンゼン、トルエン等
の芳香族炭化水素類、DMF等の酸アミド類である。反
応温度は室温から加熱還流温度であり、この反応は 1〜
10 時間で終了する。生成する沈澱物は漉去し、次いで
カラムクロマトグラフィー、TLC などで精製し、ペスタ
ヒビンのN−アルキル体またはN−グリコシル体を得
る。
【0018】本発明のペスタヒビンは製薬的に許容でき
る酸付加塩として存在し得る。かかる塩を形成するため
に用い得る酸は塩酸、臭化水素酸、硫酸などの無機酸、
及びパラトルエンスルホン酸、シュウ酸、炭酸、コハク
酸、安息香酸などの有機酸である。本発明のペスタヒビ
ン及びその誘導体は強力なHIV感染抑制作用を有して
いる。ペスタヒビン及びその誘導体は、新規な環状ペプ
チド構造を有しているので、AZT耐性HIVウイルス
にも効果を示すことが期待され、AZTに代わって、又
は併用して使用することができる。ペスタヒビン及びそ
の脱メトキシ体は経口、腸管外経路により適用できるの
で、経口剤、注射剤、軟膏剤などに製剤化することがで
きる。本発明に係る化合物の投与量は、目的とする治療
効果、投与経路、患者の年令、体重、疾患の重篤度など
によって変動する。投与に適した投与量及び/又は単位
投与量は、当業者に周知のように、これらの要因と共
に、本明細書に提示しているIC50及びCC50を考慮し
て決定すればよい。通常、一日投与量は0.05〜15
00mg、好ましくは0.1〜500mgである。普通、
その一日投与量は2〜5回に分割して投与できるので、
本発明の化合物はその分割用量を含有する単位投与剤形
に製剤化することができる。
【0019】以下に、本発明のペスタヒビン及びその誘
導体を製造するための実施例、及びペスタヒビン及びそ
の誘導体の効力を検定する試験例を記載する。しかし、
これらを本発明の範囲の限定と解してはならない。実施例1 ペスタヒビンの製造 A.RF−5890株の発酵 グルコ−ス 2.0%、ポリペプトン(日本製薬製) 1.0%、牛
肉エキス (ディフコ製) 0.3%、酵母エキス (ディフコ
製) 0.2%、食塩 0.1%、水道水よりなる培地 800ml (2N
NaOH により pH 7.0 に調整) を含む 2 L 容三角フラス
コにペスタロチオプシス エス・ピーRF−5890 の
種培養スラントから菌を接種し、振幅 70 mm、毎分 180
回転で、28℃、72 時間振盪培養を行う。この培養液 8
00 ml づつを、グリセリン 2.0%、サッカロ−ス 2.0%、
牛肉エキス (ディフコ製) 0.3%、酵母エキス (ディフコ
製) 0.2%、消泡剤 P-2000 (大日本インキ製) 0.005% 水
道水よりなる培地 20 L (2N NaOH によりpH 7.0 に調
整) を含む 30 L 容ジャーファメンタ−に植菌し、通気
量 14 L/min、内圧 0.35 Kg/cm2、撹拌回転数 400 rpm
で、28℃、10 日間培養する。
【0020】B.ペスタヒビンの精製・分離工程 (1) 粗抽出: 上記工程で得られた培養液 120 Lをろ
布式遠心分離機 (KMN-24 関西遠心分離機製作所株
式会社) によって遠心し、湿菌体 24 Kgを得る。この湿
菌体をアセトン 36 L で抽出する。 得られた抽出液 50
L を減圧濃縮し、水層 20 L を得る。この水層を酢酸
エチル 18 L で抽出し、抽出液を減圧濃縮し、油状の粗
物質 66.7 g を得る。 (2) 精製: 得られた粗物質 35.0 g を、水 20 ml を
含むメタノール 500 mlに溶解し、n-ヘキサン 220 ml
で1回、さらに100 ml で3回(計4回)洗浄する。n-
ヘキサン層を廃棄し、メタノール層を減圧濃縮し、油状
残留物 28 gを得る。これをトルエン:クロロホルム
(2:1) 200ml に溶解し、カラムクロマトグラフィーにか
け(SiO2 カラム:Merck,230〜400 メッシュ, 620
g)、クロロホルム 2 Lで洗浄し、次いでクロロホル
ム:メタノール = 30:1 で溶出し、1分画 25 gづつを
採取する。薄層クロマトグラフィー(Merck KGF, クロロ
ホルム:メタノール = 30:1)によってモニターすること
により活性分画である分画番号26-90 を採取し、それら
を減圧濃縮する。得られた濃縮物 7.9 gをメタノール2
00 mlと少量の水に溶解し、n-ヘキサン (40 mlで1回,
30 mlで4回、計5回)で洗浄し、メタノール層を減圧濃
縮し、油状の残留物 4.9gを得る。これを2つに分割し
(2.45 g×2)、それぞれセファデックス LH-20 カラム
のクロマトグラフィー (500 ml容量) にかけ、メタノー
ルで溶出し、分画 5 g づつを採取する。上記と同様の
検出法により、活性分画 37−42 を採取し、得られた分
画プールをさらにセファデックス LH-20 カラムのクロ
マトグラフィー (500 ml容量) にかけ、メタノールで溶
出し、分画 5 g づつをを採取し、ペスタヒビン活性分
画38−46 を集める。これを減圧濃縮し、ペスタヒビン
2.64 g を得る。
【0021】C.ペスタヒビンの構造解析 上記のようにして得られた物質をNMR、MSの解析、
アミノ酸分析し、本物質ペスタヒビンは分子式 C53H84N
8O9 (分子量 977) の式:
【化9】 で示されるラクトン環を持つデプシペプチドであること
が判明した。即ち、ペスタヒビンはアミノ酸残基6個と
脂肪酸1個の合計7個の残基からなるシクロデプシペプ
チドである。アミノ酸残基6個の内訳はL-Leu、L-N-MeA
la及びL-N-MeLeuが各1個、2(S)-アミノ-4-メチル-オク
タン酸(上記式中、U-1) 2個、及びL-N-MeTrp(N'-OMe)
(上記式中、U-2) 1個である。このU-2部分は、酸加水
分解によりL-N-MeTrp (U-2') が確認されたことから帰
属された。脂肪酸1個は4-シアノ-2(R)-ヒドロキシ酪酸
(U-3)である。これは、酸加水分解により 2(R)-ヒドロ
キシペンタン二酸 (U-3') が確認されたことから帰属さ
れた。別に、アルカリ加水分解を行うことによってラク
トン環の存在を確認した。なお、ペスタヒビンを構成す
る上記アミノ酸及び脂肪酸の光学活性は、ペスタヒビン
の酸水解物のペ−パ−クロマトグラフィー、イオン交換
クロマトグラフィー等によって各構成成分を単離し、決
定した。
【0022】上記により得られたペスタヒビンの1H 及
13C NMR データ (in DMSO-d6 at24℃)は以下のよう
に帰属される: *; 主要なコンホメーション成分のシグナルのみを記
録した。マイナー成分はシグナル強度が弱いため全シグ
ナルの帰属は不可能であった。 a),b); 同符号内で入れ替わる可能性がある。
【0023】実施例2 脱メトキシペスタヒビン (ペスタヒビンDM) の合成 次ぎに、ペスタヒビンの構成成分であるTrpのインドー
ル環の N-OCH3 を NHに還元した誘導体を合成した。実
施例1により得られたペスタヒビン (64 mg、0.065 mM)
を 99.5 % エタノール (5 ml) に溶解し、5 % Pd-C (5
0 % 湿潤、120 mg) を加え、常温常圧下に水素添加後
(16 時間)、触媒を濾去し、溶媒留去した。得られた残
渣 49 mg をTLC [Merck Kiselgel F-254、アセトン:n
-ヘキサン (1:1)] によって分離精製し、ペスタヒビン
DM (39.7 mg、収率 64 %) を得る。ペスタヒビンDM
の検出はTLCによって行った。展開溶媒はn−ヘキサ
ン:アセトン=1:1、検出は254 nm におけるUV又は
濃硫酸、Rf値は 0.48 である(なお、ペスタヒビンのRf
値は 0.43 である)。
【0024】ペスタヒビンDMの構造は、L-SIMS の分
子イオンが、元のペスタヒビンよりも 30 mass unit 小
さいことと、1H NMR (CDCl3) において δ 4.05 (3H、
s) のシグナルが消失し、新たに δ 6.95 (1H, d, J=2.
2), 8.15 (1H, d, J=2.2) のシグナルが現われ、CD3OD
処理によって δ 6.95 のシグナルが二重線から一重線
に変化し、またδ 8.15 のシグナルが消失することか
ら、その構造が決定された。
【0025】実施例3 ペスタヒビンのN−グリコシル誘導体の合成 ペスタヒビンDMとアセトブロモ糖とを反応させ、ペス
タヒビンのN−グリコシル体(ペスタヒビンGalAc)を
合成した。ペスタヒビンDM(6.4 mg,0.0068 mM)、
2,3,4,6-テトラ-O-アセチル-α-D-ガラクトピラノシル
ブロミド (47 mg,0.115 mM)、Ag2O (40 mg,0.171 m
M)、及びベンゼン(2 ml)を加熱還流(6.5 時間)す
る。沈澱濾去後、濾液を濃縮し粗生成物 52 mg を得
る。これを調製用 TLC で分離精製する。TLC(メルク,
展開溶媒; トルエン:メタノール = 9:1, Rf値=約 0.
3,トルエン:メタノール =8:1, Rf値=約 0.5, n-ヘキ
サン:アセトン = 1:1, Rf値=約 0.6, これらの展開を
3回繰り返す)。ペスタヒビンGalAcを 2.8 mg(収率 3
2%)得た。 L-SIMS; m/z1278(M+H)+ 1 HNMR(200MHz,CDCl3): 添付の図1にNMRスペクトル
を示す。
【化10】 試験例1 ペスタヒビン及びその誘導体のウイルス感染抑制作用試
以下の操作により、ペスタヒビン及びその誘導体の抗ウ
イルス活性を試験した。 (1) HIV (HIV-1IIIB株) 持続感染ヒトT細胞株 MOLT-4
クローン 8 を 10%牛胎児血清添加 RPMI-1640 培地で
3日間培養した。得られた培養物を 2000 rpmによって
遠心し、上清を 0.45 μm フィルターにより濾過し、ウ
イルスの力価をプラークアッセイ法により測定する(Pla
gue Assay; S,Harada et al, Science 299,563-566, 19
85)。得られた上清を -80℃ で保存する。他方、被検化
合物をそれぞれ、上記の培養培地を用いて所定の濃度に
なるように希釈し、96 穴マイクロプレートに 50μL ず
つ分注する。次に、MT-4 細胞浮遊液を 100μL (3.5 x
104 細胞) ずつ分注し、更に、上記 HIV 含有上清を上
記の培地で希釈したもの (60 プラーク形成単位に相当
する希釈物) 50μL を各ウエルに加える。
【0026】(2) 炭酸ガス培養器内で 37℃ 5 日間培
養した後、全てのウエルに MTT ( 3-(4,5-ジメチルチア
ゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマ
イド)5 mg/ml, PBS) を 30μL ずつ加え、 更に 1 時間
培養する。このとき生存している細胞は MTT を還元し
てフォルマザンを析出させる。すべてのウェルから培養
上清を 150μL ずつ取り除き、代わりに 150μL の溶解
液 (10% トリトンX-100 及び、0.4% (v/v) HCl 添加イ
ソプロパノール) を加え、プレートミキサーで振とうし
てフォルマザンを溶出する。フォルマザンを OD 540 nm
で測定し、結果を被対照と比較する。ウイルスによる
細胞障害を 50% 抑制する化合物濃度を IC50 とする。
試験結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0027】試験例2 本発明化合物の細胞毒性 上記試験例1(1)において、HIV 含有上清 (ウイルス
液) の代わりに各ウエルに培養培地 50μL ずつを加
え、(2)と同様に処理して化合物の MT-4 細胞に対する
毒性を調べた。化合物による細胞毒性が 50% である化
合物濃度を CC50 とする。さらに、正常細胞であるヒト
胎児肺 2 倍体細胞 (WI38) に対する毒性試験を行っ
た。WI38 細胞をマイクロプレートに分注して一日培養
後、所定濃度の化合物を添加し、更に二日培養した後、
上記(2)と同様に処理して、化合物の WI38 細胞に対
する CC50 を求める。 試験結果を以下の表2に示す。
【表2】
【図面の簡単な説明】
【図1】 ペスタヒビンGalAcのNMRスペクトルを示
すグラフである。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 //(C12N 1/14 C12R 1:645) (C12P 21/04 C12R 1:645)

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 式: 【化1】 [式中、Rは水素、メトキシ基、低級アルキル基又はグ
    リコシル基である]で示される化合物またはその塩。
  2. 【請求項2】 以下の工程を包含する請求項1に記載の
    化合物の製造方法: (1) ペスタロチオプシス属に属し、式: 【化2】 で示される化合物を産生する微生物を培養する工程、及
    び (2) 培養物から該化合物を採取する工程。
  3. 【請求項3】 式: 【化3】 で示される化合物を産生するペスタロチオプシス エス
    ・ピーRF−5890株(FERM P−1371
    5)。
  4. 【請求項4】 1つ又はそれ以上の製薬的に許容され得
    る担体と共に、請求項1に記載の化合物を含有してなる
    抗HIV剤。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO1997019104A1 (en) * 1995-11-21 1997-05-29 Novartis Ag Cyclopeptolides
CN104876945A (zh) * 2015-04-22 2015-09-02 中国海洋大学 一种生物碱二聚体及其制备方法与作为抗病毒剂的应用

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