JPH0710901A - 多糖体m−100物質群およびその製造法 - Google Patents

多糖体m−100物質群およびその製造法

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JPH0710901A
JPH0710901A JP3359669A JP35966991A JPH0710901A JP H0710901 A JPH0710901 A JP H0710901A JP 3359669 A JP3359669 A JP 3359669A JP 35966991 A JP35966991 A JP 35966991A JP H0710901 A JPH0710901 A JP H0710901A
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polysaccharide
reaction
negative
water
substance group
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JP3359669A
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English (en)
Inventor
Atsushi Miyazawa
淳 宮沢
Masaki Takada
正樹 高田
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Polysaccharides And Polysaccharide Derivatives (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 コレトトリクム(Colletotrichum)属に属す
る糸状菌の菌体から、β−1,3−グルカナーゼの一般
的な単離法によって得られ、β−1,3−グルカナーゼ
処理によって失活し、植物病原菌に対する植物体自体の
抵抗性を発現させるための有用な新規物質多糖体M−1
00物質群であり、たとえば、コレトトリクム・フラガ
リエ(Colletotrichum fragariae)M6013(FER
M P−12625)のようなコレトトリクム属に属す
る糸状菌を使用する多糖体M−100物質群の製造法で
ある。 【効果】 多糖体M−100物質群は、この多糖体M−
100物質群を植物に接触せしめることにより、植物が
病原菌と接触する前に、植物体は病原体に対する抵抗性
を発現せしめられ、これにより植物は発病に至ることな
く、病原体に対する植物の抵抗性を増加させるエリシタ
ー様活性効果を示す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、植物、例えば、トマト
の病原体に対する抵抗性反応である少なくともキチナー
ゼおよび過敏感反応を誘導する分子量7500から13
000に包含される多糖体M−100物質群とその製造
法に関する。
【0002】
【従来の技術】病原体の植物への感染を防ぐために、一
般に殺菌剤の散布が行われる。一方、植物は病原体の侵
入に対して、これを識別して、ファイトアレキシン等の
抗菌性物質を合成して自己防衛する。このような抵抗性
反応を誘導する物質はエリシター(植物細胞工学、第2
巻、補1、第399頁、1990年)と呼ばれる。植物
自身のもつ抵抗性を利用する病害防除法としては、病原
体の一部を用いて、植物に疑似感染させることにより抵
抗性を誘導する方法が知られている(北日本病虫研報、
第38巻、第10頁、1987年)が、弱毒ウイルスの
場合(植物防疫、第43巻、第1号、第11頁、198
9年)以外は実用化されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一般に行なわれている
農薬散布による病害防除は、作物に残留した農薬による
人体への影響、環境に対する汚染等、安全性に関する問
題が多い。さらに、農薬の効果の面でも、いったん病原
体が植物に侵入してしまうと、農薬はもはや殺菌効果を
発揮できないという問題点がある。
【0004】植物が認識できる病原体の多糖成分を単離
し、これを植物に散布して疑似感染を起こさせることに
より、植物の病原体に対する抵抗性反応を発現させる。
多糖成分は、容易に分解されるため、人体、環境に対す
る汚染の心配がない。さらに、多糖は植物に情報伝達物
質として作用し、植物細胞はこれを認識して抗菌性物質
を合成するため、植物に侵入した病原体に対して増殖を
阻止する(植物細胞工学、第2巻、補1、399頁、1
990年)ものであるが、本発明の多糖体M−100物
質群はこのような知見に基づいて、新規に検索されたも
のである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は新規物資である
多糖体M−100物質群であり、植物病原体に対する植
物体自体が持っている抵抗性反応を誘導する活性をも
ち、たとえば、コレトトリクム・フラガリエ M601
3(FERM P−12625;Colletotrichumfragar
iae M6013)の菌体成分であり、β−1,3−グ
ルカンの一般的単離法で得られ、かつ、β−1,3−グ
ルカナーゼ処理によって失活する、少なくともキチナー
ゼ活性を誘導する分子量7500から13000に包含
される多糖体M−100物質群であり、コレトトリクム
属に属し、多糖体M−100物質群を生産する能力を有
する微生物を使用する多糖体M−100物質群の製造法
である。
【0006】本発明において使用される微生物は、多糖
体M−100物質群を生産する能力を有するコレクトト
リクム属に属する糸状菌であり、その代表的な菌株とし
て、たとえば、コレトトリクム・フラガリエ(Colletot
richum fragariae)M6013が挙げられる。この菌株
は微工研菌寄第12625号(FERM P−1262
5)として工業技術院微生物工業技術研究所に寄託され
ている。この菌学的性質を次に示す。 ・各培地における生育状態 1.ツァペック寒天平板培地(Cz) 25℃の場合には、生育はやや速く、コロニーの大きさは
7日間で直径40-43mm、14日間で直径60mm以上となる。
菌叢は厚く、表面は気中菌糸により綿毛状となる。コロ
ニーの色は淡灰色−灰色 pale grey-grey(1-3B1)。周辺
部は全縁。無色の浸出液を出す。拡散性色素は出さな
い。裏面は灰色、緑灰色もしくは暗緑色grey,greenish
grey or dark green(28-30F1-3)。 2.麦芽汁寒天平板培地(MA) 25℃の場合には、生育はやや速く、コロニーの大きさは
7日間で直径40-45mm、14日間で直径60mm以上となる。
菌叢はツァペック寒天平板培地の場合よりやや厚く、や
やきめの細かい綿毛状となる。コロニーの色は黄灰色 y
ellowish grey(2BC-2)。無色の浸出液を出す。拡散性
色素は出さない。凸レンズ型。周囲はほぼ全縁。裏面は
黄灰色−灰黄色 yellowish grey-greyish yellow(2B2-
3)。 3.バレイショ−ブドウ糖寒天平板培地(PAG) 25℃の場合には、生育はやや速く、コロニーの大きさは
7日間で直径42-44mm、14日間で直径60mm以上となる。
表面は気中菌糸により綿毛状からややベルベット状とな
る。コロニーの色は緑灰色−黄灰色 greenish grey-yel
lowish grey(1-3C2)。無色の浸出液を出す。拡散性色素
は出さない。裏面は黄灰色。
【0007】・顕微鏡下における形態的特徴 分生子形成様式はフィアロフォア型、菌糸から直接単一
の分生子形成細胞を生ずる。分生子形成細胞は短く、分
布はまばら。分生子は形成細胞の先端に粘塊状に生ず
る。分生子は大きさ 12-22×4-6μm。細い円筒型で両端
が丸いもの、細い楕円形および卵型のものが見られ、無
色で、表面は滑壁である。発芽前には僅かに褐色を呈し
て1隔壁を生ずるが、時として、2隔壁を生ずるものも
ある。褐色で円形に近い、もしくは不規則な大きさ 7-1
2×6-10μm の付着器を菌糸から直接または菌糸の先端
に生じたり、側枝状に生じたりする。分生子座またはそ
れに伴う剛毛、子のう殻は形成されなかった。なお、前
記の各培地における生育状態の色の表示は、Kornerup,
A. and Wanscher,J.H. 1978.“Methuen handbook of co
lour. 3rd ed.”Eyre Methuen, Londonの表示に準拠し
た。
【0008】・生理的諸性状 生育し得るpH :3.5-7.5 最適生育pH :4.5-6.5 生育し得る温度 :13-37℃ 最適生育温度 :21-30℃
【0009】・同定 イチゴから分離されたM6013株は、分生子の形、付
着器を有するなどの形態的特徴からコレトトリクム属 C
olletotrichumに属する微生物であると考えられた。本
菌株を詳細に観察した結果、「山本 勉,イチゴの新病
害『炭そ病』,植物防疫 第25巻,第61-64頁,1971」
および「岡山 健夫,イチゴ炭そ病の病原菌と発生形
態,植物防疫 第42巻,第559-563頁,1988」によって
報告されているコレトトリクム・フラガリエ(Colletot
richum fragariae)と一致した。よって、本菌株は、C.
fragariaeと考えられた。“von Arx ,J.A. Die Arten d
er Gattung Colletotrichum Corda. Phytopathol. Z. 2
9:413-468.1957”,“von Arx.J.A. Plant Pathogenic
Fungi, J.CRAMER, Berlin. 288p,1987”は子のう菌類で
ある Glomerella cingulataの不完全世代を C.gloeospo
rioidesとし C.fragariaeはシノニム(異名)として扱
っている。一方、“Howard,C.M. and Albregts,E.E. Bl
ack Leaf Spot Phase of Strawberry Anthracnose Caus
ed by Colletotr ichum gloeosporioidesC.fragaria
e), Plant disease.67:1144-1146,1983”によると
C.gloeosporioidesは培養中に子のう殻を形成する(子
のう菌類である。)が、 C.fragariaeは培養中に子のう
殻を形成しない(不完全菌である。)とし、区別できる
としている。なお、本菌株は子のう殻の形成が認められ
ていない。以上のように、形態的特徴が一致し、子のう
殻を形成せず、イチゴから分離されたことなどから、
“Howard,C.M. and Albregts,E.E. Black Leaf Spot Ph
ase of Strawberry Anthracnose Caused by Colletotri
chum gloeospirioidesC.fragariae). Plant diseas
e.67:1144-1146,1983”に倣い、本菌株をコレトトリク
ム・フラガリエ Colletotrichum fragariaeと同定し
た。ただし、子のう殻の形成が認められたときには、 C
olletotrichum gloeosporioidesとされるべきである。
【0010】本発明で使用される微生物を培養するため
の培地成分は、該微生物が利用できる物質であればよ
く、特に制限はないが、培地成分の代表例は次の如くで
ある。すなわち、炭素源としては、澱粉、デキストリン
およびグルコース、好ましくは可溶性澱粉である。窒素
源としては、カゼインおよびペプトン、好ましくは酵母
エキスである。無機塩類としては、リン酸塩およびマグ
ネシウム塩、好ましくはリン酸2カリウムおよび硫酸マ
グネシウムである。培地には、消泡剤を添加することが
でき、かつ、好ましい。消泡剤として、たとえば、ジス
フォームCCー222などが好適に使用される。本発明
における培地の代表的な培地組成は、培地1リットル当
り、たとえば、次の如くである。すなわち、 可溶性澱粉 1.5-150g、好ましくは 15g 酵母エキス 0.5-50g、好ましくは 5g リン酸1カリウム 0.1-10g、好ましくは 1g 硫酸マグネシウム 0.05-5g、好ましくは 0.5g ジスフォームCC−222 0.1-100ml、好ましくは 0.
4ml この培地は塩酸で pH6.0に補正される。このような培地
で、微生物を20〜40℃、好ましくは30℃で5日
間、通気攪拌培養すれば菌体を含有する培養液が得られ
る。本発明の多糖体M−100物質群はこのようにして
得られた菌体から、たとえば、β-1,3-グルカナーゼを
単離、精製する一般的な方法により、分離、精製するこ
とができる。たとえば、次のようにして分離、精製され
る。すなわち、菌体の懸濁液をホモゲナイズし、これを
熱水抽出し、Dowex-1等の強塩基性陰イオン交換樹脂
に、pH10以上のアルカリ性で吸着させ、50mMNaC
l等の塩類で溶出させる。さらに、分画分子量3000
の限外濾過膜による濃縮区分を集め、ゲル濾過により分
子量7500〜13000の各成分を得、少なくとも強
いキチナーゼ活性誘導の活性を示す一群の新規物質を得
た。
【0011】本発明の多糖体M−100物質群を植物に
接触させることにより、病原体に対する植物の抵抗性を
増大させることが可能である。本発明の多糖体M−10
0物質群を植物に接触させる手段には、特に制限はな
く、たとえば、種子への塗布、該物質溶液への種子の浸
漬、葉面への散布、栽培土壌への添加、水耕栽培におけ
る液体肥料への添加およびウイルス・フリー苗の馴化培
地への添加などが可能である。
【0012】
【実施例】本発明を、実施例によりさらに具体的に説明
する。なお、本発明は、これらの実施例に限定されるも
のではない。 実施例1 培養 生産菌株コレトトリクム・フラガリエ M6013(F
ERM P−12625 Colletotrichum fragariae
6013)を、可溶性澱粉15g/リットル、酵母エキ
ス5g/リットル、リン酸1カリウム1g/リットル、硫
酸マグネシウム0.5g/リットル(pH6.0)の組
成の培地150mlを分注した500ml容三角フラスコで
30℃、3日間培養したものを種菌とし、種菌10ml/
リットル、種菌用培地に消泡剤としてジスフォームCC
−222(日本油脂製)0.2ml/リットルを加えた培
地40リットルを充填した50リットル容ジャーファー
メンターで、30℃で通気11リットル/分、撹拌10
0rpmの条件で4〜5日間培養し、バスケット遠心で
1.3kgの菌体を得た。
【0013】実施例2 製造 1.3kgの菌体を4リットルのアセトンで2回、4リッ
トルのクロロホルム−メタノール(1:1混合物)で2
回処理することにより菌体から脱脂し、9リットルの蒸
留水に懸濁し、ポリトロン・ホモジナイザー(KINEMATI
CA製)で粉砕後、120℃、30分間加熱抽出し、30
00rpm,5分間遠心により粗抽出液を得た。この粗
抽出液を限外濾過(孔径0.25μm、旭化成製ポリオ
レフィン膜)で白濁粒子を除き、10mMとなるようにグ
リシンを加えNaOHでpH8に補正後、20mMのグリシ
ンーNaOHバッファー(pH8.0)で平衡化したDowe
x-1 カラム(内径44mm)を通過させることにより蛋白
等の不用成分を除去した。この通過液にさらにNaOH
を加えpH10.5に補正し、20mMのグリシン−NaO
Hバッファー(pH10.5)で平衡化した Dowex-1 カ
ラム(内径44mm)に活性成分を吸着させ、水洗後、5
0mMNaClで溶出した分画2〜4(1分画9999
滴)を限外濾過(孔径0.25μ、旭化成製ポリオレフ
ィン膜)により白濁粒子を除き、さらに限外濾過(分画
分子量3000、旭化成製ポリアクリルニトリル膜)に
より脱塩濃縮した活性画分88mgを得た。活性画分から
活性成分を単離するために Bio-Gel A-5m(カラム内径
32mm、1分画1000滴)(図3)のフラクションN
o.25〜30を回収し、さらにBio-Gel P-30(カラム
内径32mm、1分画250滴)(図4)によるゲル濾過
を行ってフラクションNo.8、No.9およびNo.
10を回収した。まず、このフラクションNo.10か
ら減圧乾固して分子量7650付近の多糖体(多糖体M
−100−1)15mgを得、次いでフラクションNo.
9から減圧乾固して分子量10000付近の多糖体(多
糖体M−100−2)22mgを得、さらにフラクション
No.8から減圧乾固して分子量13000付近の多糖
体(多糖体M−100−3)32mgを得た。これらの多
糖体は下記の理化学的性状を有し、強いキチナーゼ活性
誘導の活性を示す各ピーク成分である多糖体M−100
物質群として得た。各分画はフェノール硫酸法により全
糖量を測定し、その各ピークについて実施例3に示す方
法にて活性を測定した。
【0014】理化学的性状 分子量:7500〜13000に包含される。 Asahipak GS-510 によるゲル濾過高速液体クロマトグラ
フィー(HPLC、移動相:水、分子量標準:プルラン
(昭和電工))により測定。 各ピーク成分の上記HPLCでのリテンション・タイム フラクションNo.8:分子量13000付近:リテン
ション・タイム16.00分間。 フラクションNo.9:分子量10000付近:リテン
ション・タイム16.43分間。 フラクションNo.10:分子量7650付近:リテン
ション・タイム16.87分間。 構成糖:各フラクションからの多糖体M−100物質群
のいずれもグルコースが100%である。 1.2N HCl、80℃、24時間の条件で加水分解を行
い、TOSOH Amide-80による高速液体クロマトグラフィー
(移動相:アセトニトリル−水 60:40)にて遊離グルコ
ースを測定することにより決定。 呈色反応 フェノール硫酸反応:陽性 Lowry 反応:陰性 Elson-Morgan 反応:陰性 カルバゾール硫酸反応:陰性 溶解性 水:可溶 エタノール:不溶 アセトン:不溶 クロロホルム:不溶 ベンゼン:不溶 酸性、中性、塩基性の区別:中性 物質の色:白色 IR吸収スペクトル:図1.(KBr)3400, 2950, 1670, 1
560, 1400および 1350cm-1付近の各波数に吸収を示す。 UV吸収スペクトル:図2.特に特徴的なピークなし
(水:1mg/ml)
【0015】実施例3 作用 病原体の感染に対する植物の防御反応の指標としてキチ
ナーゼを用いて、本発明の多糖体M−100物質群の作
用を測定した。すなわち、トマト種子(品種:桃太郎)
を蒸留水を含む脱脂綿上で、26℃、14日間放置し得
られた芽生えを、多糖体M−100物質群の各成分の水
溶液に浸漬し、18時間後に、下記の方法で、芽生え抽
出液のキチナーゼ活性を測定した。この結果、図5(多
糖体M−100−1)、図6(多糖体M−100−2)
および図7(多糖体M−100−3)に示す通り、本発
明の多糖体M−100物質群における、多糖体M−10
0−1は2μg/ml以上、多糖体M−100−2は4μg
/ml以上、多糖体M−100−3は10μg/ml以上の
濃度でトマト芽生えのキチナーゼ活性を誘導することが
認められた。なお、活性は次のようにして測定した。す
なわち、芽生えを水洗後、芽生え表面の水分を除き、−
100℃、1時間凍結後、芽生えの重量(g)の4倍量
の酢酸緩衝液(0.2M、pH5.2、2.5% ポリビニ
ルピロリドン,分子量44000、0.5%ポリエチレ
ングリコール,, 分子量6000、0.01%β-メル
カプトエタノールを含む)を加え、乳鉢中で破砕し、4
重のガーゼで絞り、12000×g、10分間遠心し、
その上清を粗酵素液とした。この粗酵素液0.1mlに
0.05% エチレングリコールキチン(シグマ)を含
む上記の酢酸緩衝液1mlを加え、28℃、15分間反応
後、0.5g/リットルのフェリシアン化カリウムを含
む0.5M炭酸ナトリウム溶液2mlを加え、15分間煮
沸し、冷却後、OD420nmを測定した。OD値を1分
間に、0.1低下させる活性を1mUとする。活性は芽生
えの新鮮重量100g当りに換算して表示する。
【0016】実施例4 作用 多糖体M−100−1によって誘導される植物の防御反
応の他の指標として、個体中の一部の植物細胞が自ら合
成する抗菌性物質の過剰生産によって細胞致死をもたら
せることにより個体を防御する過敏感反応を測定した。
その結果、図8に示すように、多糖体M−100−1は
1μg/ml以上の濃度で、過敏感反応を誘導することが
認められた。なお、活性は次のようにして測定した。す
なわち、トマト(品種:桃太郎)の芽生えから1mg/リ
ットルのナフタリン酢酸、0.5mg/リットルのベンジ
ルアデニン、0.5mg/リットルの2,4−D(2,4
−ジクロルフェノキシ酢酸)、0.7%寒天を含むリン
スマイヤー・スクーグ培地でカルス誘導し、得られたカ
ルスを寒天を含まない以外は同様の液体培地で20日間
振とう培養し、培養液をナイロン篩(32メッシュ)で
濾過して大きい細胞塊を除き、均一にカルスを分散した
培養液0.25mlに、実施例2で得られた多糖体M−1
00−1を水で希釈した液0.25mlを加え、26℃、
3時間インキュベート後、基質としてMTT(3-(4,5-d
imethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl tetrazolium brom
ide)液0.05mlを加え、さらに30℃、2時間イン
キュベート後、0.04N塩酸を含むイソプロピルアル
コール0.5mlを加えて、細胞中に生成した反応生成物
のフォルマザンを抽出し、これをOD570nmで測定し
た。このフォルマザン生成は生細胞の指標となるもので
あり、過敏感反応は、無処理の細胞の生存率を100%
とした相対的生存率で表示した。
【0017】実施例5 酵素分解 本物質の性状を調べるために、各種多糖の加水分解酵素
による分解を行い、反応生成物のトマト芽生えに対する
キチナーゼ誘導効果をみた。糖の加水分解酵素として
は、α−アミラーゼ(生化学工業製)、セルラーゼTC
(生化学工業製)、β−1,3−グルカナーゼを含むザ
イモリエイス100T(生化学工業製)を用いた。それ
ぞれ、100μg/mlの本多糖体M−100物質を基質
として、10U/mlとなるように酵素及び、それを10
分間沸騰水中で熱失活させたものを加え、pH6.0の1
0mMリン酸バッファー中で、45℃、1時間反応させ
た。この反応液にトマト芽生えを浸漬し、実施例4に示
した方法に準拠して、トマト芽生えのキチナーゼ誘導効
果をみた。その結果、表1(多糖体M−100−1)、
表2(多糖体M−100−2)および表3(多糖体M−
100−3)に示したように、本多糖体M−100物質
群はいずれもβ−1,3−グルカナーゼを含むザイモリ
エイス100T処理により失活することが認められた。
【0018】 表1.多糖体M−100−1に対する酵素分解による トマト芽生えのキチナーゼ誘導 キチナーゼ活性(U/100g) 添加酵素 反応生成物 熱失活酵素による反応生成物 − 33.7 36.4 α−アミラーゼ 31.7 29.0 セルラーゼTC 33.4 37.6 ザイモリエイス100T 0 31.3
【0019】 表2.多糖体M−100−2に対する酵素分解による トマト芽生えのキチナーゼ誘導 キチナーゼ活性(U/100g) 添加酵素 反応生成物 熱失活酵素による反応生成物 − 28.9 28.1 α−アミラーゼ 29.7 27.2 セルラーゼTC 26.9 29.4 ザイモリエイス100T 0 27.1
【0020】 表3.多糖体M−100−3に対する酵素分解による トマト芽生えのキチナーゼ誘導 キチナーゼ活性(U/100g) 添加酵素 反応生成物 熱失活酵素による反応生成物 ー 31.5 32.3 α−アミラーゼ 30.6 29.8 セルラーゼTC 30.4 31.8 ザイモリエイス100T 0 31.5
【0021】実施例6 新規性 いくつかのグルコースを構成成分とする多糖について、
実施例3に示す方法に準拠して、キチナーゼ誘導効果を
検討した。その結果、表4で示されるように、多糖体M
−100物質以外は、キチナーゼ誘導効果を示さなかっ
た。
【0022】 表4.各種多糖のトマト芽生えのキチナーゼ誘導に及ぼす効果 多糖(100μg/ml) 分子量 結合 キチナーゼ活性(U/100g) 無添加 0 プルラン R-5 (昭和電工) 5,800 α-1,6 0 アミロース Ex-1 (生化学工業) 2,900 α-1,4 0 ラミナリン(生化学工業) 1,153 β-1,3 0 多糖体M−100−1 7,650 β-1,3 32.5
【0023】実施例7 用途 イチゴ(品種:女峰)のウイルスフリー親株のランナー
より得られた子苗を、プラスワン(緑産製完熟堆肥、C/
N=6.6, N-P-K=1.4-0.6-0.06%)150g/10リット
ル、ヨーグロス2号(東洋醸造製有機物資材、N-P-K=5-
2-3%)15g/10リットル、イチゴ配合肥料(静岡県
経済農業協同組合連合会製化成肥料、N-P-K=6-7-6%)1
3.5g/10リットル、ロング140(旭化成工業製
遅効性化成肥料、N-P-K=13-3-11%)5g/10リット
ル、ほう砂0.15g/10リットルの組成の培土を充
填した直径10cmの育苗ポットに定植した。1株当り2
本の葉柄と6枚の葉をもつイチゴの苗を実験に用いた。
病原菌の感染方法は、植物体の地上部に、分生胞子を噴
霧することにより接種した。以下に詳細に実験方法を記
載する。すなわち、実施例2と同様の方法で得られた多
糖体M−100−1を10μg/mlの濃度に調整し、上
記の苗に1本当り1mlを噴霧した。炭そ病生菌コレトト
リクム・フラガリエ M6013(FERM P−12
625)を、可溶性デンプン15g/リットル、酵母エ
キス4g/リットル、K2HPO4 1g/リットル、MgSO4・7a
q. 0.5g/リットル(pH6)の組成の培地100mlを
500ml容のフラスコに分注したものに接種し、28
℃、5日間振とう培養したのち、ガーゼで濾過して菌糸
を除いて、分生胞子を106 cfu/ml含むものを用い
た。このようにして調整した病原菌胞子液を、多糖体M
−100−1を噴霧してから3日後に、イチゴ苗に1本
当り1mlを噴霧接種し、2日間は湿度100%に保ち、
接種した胞子を発芽させた。その後の栽培は、ビニール
温室内で20〜35℃の温度範囲で、ポット中の土壌の
水分が最大容水量の80%になるように毎日散水して行
なった。病原菌を接種してから14日後の、発病状況を
調べた。発病状況の調査に当たっては、病徴の進行度合
を表わす発病指数を表5の通り設定し、実験に用いたす
べての葉および葉柄について発病指数を測定し、1枚の
葉および1本の葉柄当りの平均発病指数を求めた。この
平均発病指数より、 (無処理区発病指数−処理区発病指数)/無処理区発病
指数 を算出し、これを防除価とした。その結果、表6に示さ
れるように、多糖体M−100−1の処理区と無処理区
の発病指数の間には高度の有意差がみられ、無処理区で
は大部分の苗が、炭疽病の発病により枯死に至るのに対
し、処理区では病徴の進行が抑えられた。
【0024】 表5.イチゴ炭疽病の発病指数の設定 発病指数 葉 葉柄 1 病斑数 1−10 小型病斑数1−2 2 病斑数11−20 小型病斑数3−5 3 病斑数21−30 小型病斑数6以上 4 病斑数31以上 中−大型病斑の形成 5 大型病斑による葉のしおれ 大型病斑による葉柄折れ あるいは葉の萎凋
【0025】 表6.多糖体M−100−1による発病の抑制 調査部位 多糖体M−100−1 発病指数 防除価(%) 葉 無処理 3.7 0 処理 1.5 59 ** 葉柄 無処理 3.2 0 処理 1.2 63 ** (1区 10 株) **:累積カイ2乗検定で高度に有意差あり
【0026】
【発明の効果】本発明の多糖体M−100物質群は新規
な物質であり、この多糖体M−100物質群を植物に接
触せしめることにより、植物は病原菌と接触する以前
に、病原体に対する抵抗性を発現させられることによっ
て、病原体が感染しても、あらかじめ存在するキチナー
ゼ等の抗菌性物質により、植物内で病原体が増殖でき
ず、発病に至らないもので、植物の病原体に対する抵抗
性を増加させるエリシター様活性効果を示すものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多糖体M−100物質群のIR吸収ス
ペクトルである。
【図2】本発明の多糖体M−100物質群のUV吸収ス
ペクトルである。
【図3】コレトトリクム・フラガリエ M−6013の
菌体成分からBio−GelA−5mによるゲル濾過に
より得られたフラクション中の多糖体M−100物質群
の含有量を示す。
【図4】コレトトリクム・フラガリエ M−6013の
菌体成分からBio−GelP−30によるゲル濾過に
より得られたフラクション中の多糖体M−100物質群
の含有量を示す。
【図5】トマト種子芽生えのキチナーゼ活性誘導におよ
ぼす多糖体M−100−1の影響を示す。
【図6】トマト種子芽生えのキチナーゼ活性誘導におよ
ぼす多糖体M−100−2の影響を示す。
【図7】トマト種子芽生えのキチナーゼ活性誘導におよ
ぼす多糖体M−100−3の影響を示す。
【図8】トマトの培養細胞におよぼす多糖体M−100
−1の影響を示す。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の理化学的性状を有することを特徴
    とする多糖体M−100物質群。 分子量:7500から13000 Asahipak GS-510 によるゲル濾過高速液体クロマトグラ
    フィー(移動相:水、分子量標準:プルラン(昭和電
    工))により測定。 作用:少なくともキチナーゼ活性誘導活性を有する。 構成糖:グルコースが100% 1.2N HCl、80℃、24時間の条件で加水分解を行
    い、TOSOH Amide-80による高速液体クロマトグラフィー
    (移動相:アセトニトリル−水 60:40)にて遊離グルコ
    ースを測定することにより決定。 呈色反応 フェノール硫酸反応:陽性 Lowry 反応:陰性 Elson-Morgan 反応:陰性 カルバゾール硫酸反応:陰性 溶解性 水:可溶、エタノール、アセトン、クロロホルム、ベン
    ゼン:不溶 酸性、中性、塩基性の区別:中性 物質の色:白色 IR吸収スペクトル:図1.(KBr)3400, 2950, 1670,
    1560, 1400および 1350cm-1付近の各波数に吸収を示
    す。 UV吸収スペクトル:図2.特に特徴的なピークなし
    (水:1mg/ml)
  2. 【請求項2】 コレトトリクム属に属する下記の理化学
    的性状を有する多糖体M−100物質群生産菌を培地に
    培養し、次いで培養物から該多糖体M−100物質群を
    採取することを特徴とする該多糖体M−100物質群の
    製造法。 分子量:7500から13000 Asahipak GS-510 によるゲル濾過高速液体クロマトグラ
    フィー(移動相:水、分子量標準:プルラン(昭和電
    工))により測定。 作用:少なくともキチナーゼ活性誘導活性を有する。 構成糖:グルコースが100% 1.2N HCl、80℃、24時間の条件で加水分解を行
    い、TOSOH Amide-80による高速液体クロマトグラフィー
    (移動相:アセトニトリル−水 60:40)にて遊離グルコ
    ースを測定することにより決定。 呈色反応 フェノール硫酸反応:陽性 Lowry 反応:陰性 Elson-Morgan 反応:陰性 カルバゾール硫酸反応:陰性 溶解性 水:可溶、エタノール、アセトン、クロロホルム、ベン
    ゼン:不溶 酸性、中性、塩基性の区別:中性 物質の色:白色 IR吸収スペクトル:図1.(KBr)3400, 2950, 1670,
    1560, 1400および1350cm-1付近の各波数に吸収を示
    す。 UV吸収スペクトル:図2.特に特徴的なピークなし
    (水:1mg/ml)
  3. 【請求項3】 コレトトリクム属に属する多糖体M−1
    00物質群生産菌が、コレトトリクム・フラガリエ M
    6013(FERM P−12625)である請求項2
    記載の製造法。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10568839B2 (en) 2011-01-11 2020-02-25 Capsugel Belgium Nv Hard capsules
US11319566B2 (en) 2017-04-14 2022-05-03 Capsugel Belgium Nv Process for making pullulan
US11576870B2 (en) 2017-04-14 2023-02-14 Capsugel Belgium Nv Pullulan capsules

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