JPH0696802B2 - 塩化ビニル製手袋 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、保温性の向上と非粘着
性及滑性の付与を同時に行った塩化ビニル製手袋に関す
るものである。

【０００２】

【従来の技術】従来、塩化ビニル製手袋の保温性を付与
するには手袋本体の内面にパイルによる植毛を行ってい
る。

【０００３】

【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、上記
パイルにより植毛した手袋は、使用時、手からの発汗に
より汗がパイルにしみ込んで保温効果を減じることや、
長時間の使用でパイルが接着剤層から剥れたり，製造工
程中におけるパイルの飛散による作業環境の低下など多
くの問題があった。

【０００４】また、食品加工業では食品を直接手で触れ
ることは衛生上問題があるため、各種手袋を使用してい
るが、パイル層のある手袋は、内部のパイルが剥れた場
合食品に混入してしまう危険性があるため嫌われてい
る。そのため、使用上不便でも肉厚の薄い保温効果のな
い手袋を使用せざるを得ない現状であった。

【０００５】また、単なる発泡層を作るという観点から
すれば、化学発泡剤による発泡層を形成する事が出来る
が、表面がパイルの様にスウェード調にする事が不可能
であった。

【０００６】

【問題点を解決するための手段】本発明は、このような
事情に鑑みてなされたものであり、その手段は、塩化ビ
ニル製手袋本体の内面に、予じめ調整してあるマイクロ
カプセルを含有している塩化ビニルペーストゾルを塗布
し、マイクロカプセルによる独立気泡の緻密なセルに形
成した皮膜層とし、更にその内面に滑性及非粘着性のウ
レタン又はアクリルなどの合成樹脂製の表面皮膜を設け
ることにより、保温性が優れ、かつ、手の出し入れの容
易な手袋を供することが出来た。

【０００７】

【実施例】本発明の実施例を図面に基づいて説明する
と、まず、手袋本体１は此種の技術分野において周知な
形態のものであり、一般的に行なわれている塩化ビニル
ペーストに製造型を浸漬後加熱を行って半ゲル化する。
この半ゲル化状態でマイクロカプセルを０．１〜２０Ｐ
ＨＲを配合した塩化ビニルペーストに浸漬して前記本体
１の表面に薄膜を塗布し充分厚みのある皮膜層２が得
る。この皮膜層２の粘度は３００〜２０００ＣＰＳ、膜
厚としては、０．０１〜０．３ｍｍ程度あれば充分であ
る。

【０００８】また、皮膜層２のベースポリマーを塩化ビ
ニルとしたのは、手袋本体１との接着性が良いためであ
る。この塩化ビニルペーストの薄膜は後述する中空粒子
からなるマイクロカプセルを含有しており、該カプセル
の気泡による独立気泡を持った発泡層のような状態とな
る。その際熱膨張性のカプセルを用いた場合には加熱温
度１４０℃以上にすると、マイクロカプセルが熱膨張
し、直径３０〜１００μｍ以下の均一な独立気泡による
発泡層が発現するのである。この時、薄膜は１．５〜１
０倍の膜厚となる。しかる後、このような発泡状態の皮
膜層２の内面に滑性及非粘着性に優れた合成樹脂エマル
ジョンを塗布し、表面皮膜３となる薄膜を形成する。

【０００９】塩化ビニル皮膜層２におけるマイクロカプ
セルは無機質又は有機質の殻から構成された中空球体で
粒径が２００μ以下の中空粒子状のものであり、殻の組
成が無機質の物は耐熱安定性が高く、有機質の物は弾性
に富んでおり、さらに有機質のマイクロカプセルには熱
膨張性のものがあり常温では有機質の単なる粒子である
が、１４０℃以上の熱をかけると粒子が内部ガスにより
膨張し、中空を形成するものとなる。したがってこの熱
膨張性のマイクロカプセルが好ましいものである。

【００１０】表面皮膜３は手袋の内面層で非粘着性と滑
性を付与するものであり、例えばウレタン又はアクリル
樹脂２〜１０部を含有する粘度１０〜２００ｃｐｓ程度
の合成樹脂エマルジョンよりなる表面処理剤を前記マイ
クロカプセルを含有する皮膜層２の表面に付着せしめて
薄膜を形成したものである。

【００１１】次に具体的な実施の態様について詳述す
る。 （１）手袋型に塩化ビニールペーストを塗布し、手袋本
体を成形する。この方法は、一般的な浸漬成形で行う。
使用する塩化ビニールペーストの配合は以下のものであ
る。

【００１２】 塩化ビニルペーストレジン（重合度＝１６５０） １００ＰＨＲ 可塑剤（フタル酸エステル，ポリエステル) １００ＰＨＲ 安定剤（Ｃａ−Ｂａ−Ｚｕ） ４ＰＨＲ ゲル化剤（Ｃａ／Ｓｉ） ４ＰＨＲ 顔 料 １ＰＨＲ 浸漬成形後１７０℃、４分間のセミキュアーを行った
後、常温迄冷却する。 （２）次にマイクロカプセルの入った塩化ビニルペース
トに浸漬し成形する。

【００１３】その配合は以下の通りである。前記（１）
で塗布された型を下記塩化ビニルペーストに浸漬する。
このとき膜厚は０．１ｍｍ程度になる様に塩化ビニルペ
ーストの粘度（１０００ＣＰＳ）を調整しておく。

【００１４】 塩化ビニルペーストレジン（重合度＝１６５０） １００ＰＨＲ 可塑剤（フタル酸エステル，ポリエステル） １００ＰＨＲ 安定剤（Ｃａ−Ｂａ−Ｚｕ） ４ＰＨＲ ゲル化剤（Ｃａ／Ｓｉ） ４ＰＨＲ 顔 料 １ＰＨＲ 熱膨脹性マイクロカプセル ３ＰＨＲ （マツモトマイクロスフェア Ｆ−８５） ミネラルスピリット 適 量 浸漬成形後１７０℃、４分間のセミキュアーを行う。そ
の後、型を冷却する。 （３）次に表面を非粘着及び滑性を付与するために表面
処理剤に浸漬を行う。

【００１５】この表面処理剤の配合例としては下記のも
のがある。

【００１６】 ポリエステル系ポリウレタン ４ ＰＨＲ アニオン系界面活性剤 ０．５ＰＨＲ ポリエーテル系消泡剤 ０．５ＰＨＲ 水 ９５ ＰＨＲ 前記（２）で塗布された型を上記表面処理剤に浸漬後１
４０℃、２分間乾燥した後２００℃、１０分間のキュア
ーを行う。この時塩化ビニルペースト中のマイクロカプ
セルは膨張し独立気泡層を形成する。 （４）然る後、型温を７０℃まで冷却して反転離型し塩
化ビニル製手袋を得る。

【００１７】尚、本実施例では熱膨張性の有機質マイク
ロカプセル用いたが無機質の例えば中空セラミックスか
らなるカプセルを用いることも可能である。

【００１８】

【効果】本発明は手袋本体の内面にマイクロカプセルに
よる気泡を有する塩化ビニル皮膜層を形成し、更にその
内面に滑性及び非粘着性の合成樹脂製表面皮膜を設けた
から一般のパイル植毛手袋では、汗により次第に保温効
果がなくなってくるのに比べて、マイクロカプセルによ
る気泡が断熱材として作用し保温性が向上すると共にこ
れが長期間にわたって維持される。また、表面処理剤が
非粘着及滑性を付与し、手への脱着も容易である。

【００１９】 一般パイル植毛品 本発明品 １００％力（kgf ／cm） １．６ １．６ 伸び （％） ４２５ ４１３ 引張り荷重（kgf ／cm） ４．８ ４．９ 指又引裂力（Kgf ） １６．１ １６．３ 耐洗剤性 伸び残留率（％） １００ １００ 引張り残留率（％） ９６ ９５ 耐油性 伸び残留率（％） ８８ ８８ 引張り残留率（％） １４９ １４２ 耐酸性 伸び残留率（％） ９４ ９６ 引張り残留率（％） ９６ ９８ 一般パイル植毛品 本発明品 耐アルカリ性 伸び残留率（％） ８８ ８９ 引張り残留率（％） ８５ ８６ 熱伝導率^* （Ｋｃａｌ／℃・ＨＲ） ０．３０ ０．１７ （保温性＝汗の付着状態） ＊熱伝導率は手袋内面を水で完全に湿潤した状態（汗で
湿潤した状態の再現）で測定を行った。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明塩化ビニル製手袋の正面図で一部切欠
する。

【図２】 拡大断面図。

【符号の説明】

１は手袋本体 ２はマイクロカプセルを含有する塩化ビニル皮膜層 ３は合成樹脂製表面皮膜

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 塩化ビニル手袋本体の内面に、マイクロ
   カプセルによる気泡を有する塩化ビニル皮膜層を形成
   し、更にその内面に滑性及非粘着性に優れた合成樹脂製
   表面皮膜を設けた塩化ビニル製手袋。