JPH0687637B2 - フィ−ルドコイル - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この発明はフィールドコイル、特に、始動電動機に装着
される直流直巻電動機の、耐熱性が改良されたフィール
ドコイルに関するものである。

［従来の技術］ 第２図は例えば実開昭57−82851号公報に示された従来
の始動電動機（スタータモータ）を一部断面図で示す正
面図、そして第３図は第２図の線II−II沿いの断面図で
ある。図において、（１）はアマチュアシャフト、
（２）はこのアマチュアシャフト（１）上に嵌着された
アマチュアコア、（３）はこのアマチュアコア（２）に
巻回されたアマチュアコイル、（４）はこのアマチュア
コイル（３）の一端と接続されると共にアマチュアシャ
フト（１）に嵌着された整流子（コンミテータ）、
（５）はアマチュアシャフト（１）を回転可能に支承す
るリヤブラケット、（６）はこのリヤブラケット（５）
と一体固着された筒状のヨーク（継鉄）、（７）はこの
ヨーク（６）の内周部に固着され、アマチュアコア
（２）と径方向に微少間隙を介して対向した界磁コア、
（８）はこの界磁コア（７）の外表面及びヨーク（６）
の内周面に塗着され、磁性材料が封入された第１の絶縁
樹脂で、パウダーコーティングによって形成される。
（９）は界磁コア（７）に第１の絶縁樹脂（８）を介し
て巻回され、表面を絶縁処理された導体よりなるフィー
ルドコイル（界磁コイル）、（10）はこのフィールドコ
イル（９）を絶縁固定する第２の絶縁樹脂で、ワニスか
らなり、フィールドコイル（９）間、第１の絶縁樹脂
（８）とフィールドコイル（９）との間隙及びフィール
ドコイル（９）の外周部に各々含浸される。

上述した構成の始動電動機を製作する際には、まず、ヨ
ーク（６）の内周部に界磁コア（７）を固着する。この
後、界磁コア（７）におけるフィールドコイル（９）の
巻回部外周面及びヨーク（６）の内周面に磁性材料入り
の第１の絶縁樹脂（８）をパウダーコーティングによっ
て塗着する。次に界磁コア（７）に第１の絶縁樹脂
（８）を介してフィールドコイル（９）を巻回し、この
後、フィールドコイル（９）外周からワニスよりなる第
２の絶縁樹脂（10）を含浸してフィールドコイル（９）
を絶縁固定する。

すなわち、界磁コア（７）におけるフィールドコイル
（９）の巻回部及びヨーク（６）の内周面で第１の絶縁
樹脂（８）を塗着するようにしているので、フィールド
コイル（９）は完全に絶縁されると共に、第１の絶縁樹
脂（８）には磁性材料が封入されているので、界磁コア
（７）の磁気回路が充分に確保でき、始動電動機の出力
特性を改善でき得る。

［発明が解決しようとする問題点］ 従来のフィールドコイルは以上のように構成、製作され
ているので、絶縁樹脂の材質を選定して作業性及び耐熱
性、電気絶縁性を確保する必要があるが、耐熱性の高い
樹脂（プラスチックス）の場合は作業性が良くない等の
他、コストが上昇する等の問題点があった。また、導体
が円形断面の素線の束の場合、導体外周に凹凸が発生
し、絶縁樹脂の膜厚が不均一となるという問題点もあっ
た。

この発明は上記のような問題点を解決するためになされ
たもので、絶縁樹脂の耐熱性が高く、作業性も従来と殆
ど変わらないフィールドコイルを得ることを目的とす
る。

［問題点を解決するための手段］ この発明に係るフィールドコイルは、導体を平角導体と
し、巻装されたコイルの外層絶縁材を、主成分としての
塩化ビニール樹脂と、架橋剤としてのトリアジンと、架
橋促進剤とからなる架橋物で製造したものである。

［作用］ この発明によるフィールドコイルは、予め枠形に巻装さ
れた平角導体のコイルを、塩化ビニールを主成分とした
樹脂でディップコート（浸漬被覆）処理したものであ
る。

塩化ビニール樹脂には、架橋剤としてのトリアジンを塩
化ビニール樹脂に対して１重量％以上好適には１〜３重
量％含有させ、さらに架橋促進剤（即ち反応促進剤であ
り例えば酸化カルシウム（CaO））を0.5重量％以上好適
には0.5〜２重量％含有させて混合融解して溶液とす
る。この溶液の中に加熱したフィールドコイルを浸漬し
たのち加熱硬化してディップコート処理する。

ポリ塩化ビニール樹脂と架橋剤であるトリアジン（次の
式ではトリアジン誘導体を示す）とは次のように反応し
て架橋する： この発明によるフィールドコイルは、トリアジンによる
架橋構造によって耐熱性が向上する。

［実施例］ 以下、この発明を実施例に基づき説明する。

ポリ塩化ビニールに対し架橋剤であるトリアジンを１〜
３重量％混合し、この混合物に架橋促進剤を0.5〜２重
量％混合して融解する。上式に示すようにトリアジンで
架橋された塩化ビニール樹脂の架橋物が得られ、予め枠
形に巻回された平角導体より構成される枠形のコイルを
ディップコートする（溶液に浸漬する）。このコイルを
冷却乾燥すれば、コイル外周面に強固で厚肉、しかも膜
厚の均一な外層絶縁材が構成される。このコイルを第２
図又は第３図に示した従来装置の界磁コア（ポール）
（７）に巻装する。次にこの発明のフィールドコイルを
装着した始動電動機について、負荷装置により8V−200A
で30秒間ON−OFF試験を行なったところ、従来品に比べ
約1.5倍の持続時間及び耐熱性があることがわかった。

また、トリアジンを含有した塩化ビニール樹脂のゴム硬
度の温度に対する変化（ショアＡ硬度と同等）を測定
し、その結果を第１図に示す。図中、曲線Ａはトリアジ
ン２重量％を含有する場合、同Ｂは同じく1.4重量％を
含有する場合、同Ｃは同じく１重量％を含有する場合、
同Ｄは同じく0.7重量％を含有する場合、同Ｅはトリア
ジンを含有しない場合をそれぞれ示す。ただし、曲線Ｄ
は実施例ではなく、参考例として示したものである。こ
の図から、トリアジンを１〜３重量％含有した塩化ビニ
ール樹脂は、トリアジンを含有しないものに比べて耐熱
性が向上することがわかった。

このように、この発明のフィールドコイルでは架橋反応
が速やかに進行し、従来の塩化ビニール樹脂単独あるい
は塩化ビニール樹脂にフィラー（例えばエポキシ等）を
含有した樹脂に比較し、耐熱性が向上し、しかも材料コ
ストが上昇せず、作業性も従来と変わらないものが得ら
れる効果を奏する。

なお、上述の実施例では架橋材としてトリアジンを用い
た場合について説明したが、同様の機能を有するトリア
ジンの異性体、誘導体等であってもこの発明に使用でき
る。

［発明の効果］ この発明は以上説明したとおり、フィールドコイルの導
体を平角導体とし、フィールドコイルのディップコート
絶縁被覆すなわち巻装されたコイルの外層絶縁材を架橋
剤１重量％以上及び架橋促進剤0.5重量％以上を混合し
た塩化ビニール樹脂の架橋物で構成したので、装置の耐
熱性の優れたものが安価に且つ容易に製造できる効果が
ある。

特に、始動電動機として使用したときにアマチュアにエ
ポキシ樹脂を用いると耐熱レベルのバランスがとれて、
価格の上昇を抑えてスタータAssyの耐熱性向上が得られ
る。この場合に、耐熱性を向上させたこの発明の塩化ビ
ニール樹脂皮膜の軟化温度が上がるために、フィールド
コイル及びブラシピグテールの振動による断線等を防止
する効果を含み、静的な耐熱レベルだけでなく、スター
タのようにエンジンに装着された場合のような動的な耐
熱性も要求される場合に顕著な効果が認められる。

また、この発明に使用する樹脂はエポキシ樹脂のような
熱硬化性樹脂ではないため、ディップコート加熱後ゴム
弾性を有し、ヨークとポールにはさんで組付ける時に弾
性変形をするので作業性が非常によいというように、始
動電動機に採用したとき特に効果が大きい。即ち組付け
時にはゴム弾性があって組付作業性が良く、使用時に温
度が上がると架橋が進行し、その形態をくずすことが少
なく、硬度の低下が少ないのでコイルのくずれとか振動
による断線を防げる効果がある。

なお、架橋促進剤例えばCaOを増量して行くと、架橋時
に発生するHClガスを CaO＋2HCl→CaCl₂＋H₂O として中和するので、金属の防錆効果を高めることがで
きる効果もある。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明の実施例におけるトリアジンを含有し
た塩化ビニール樹脂のゴム硬度の温度に対する変化を示
す線図、第２図は従来の始動電動機の一部断面正面図、
第３図は第２図の線II−IIに沿った断面図である。 図において、１はアマチュアシャフト、２はアマチュア
コア、３はアマチュアコイル、４は整流子、５はリヤブ
ラケツト、６はヨーク、７は界磁コア、８は第１の絶縁
樹脂、９はフィールドコイル、10は第２の絶縁樹脂であ
る。 なお、各図中、同一符号は同一または相当部分を示す。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】回転電機の固定子に巻装されるフィールド
   コイルにおいて、平角導体で巻装されたコイルを、塩化
   ビニール樹脂を主成分とし該塩化ビニール樹脂に対して
   １重量％以上の架橋剤としてのトリアジンと上記塩化ビ
   ニール樹脂に対して0.5重量％以上の架橋促進剤とから
   なる架橋物でディップコート処理加工して外層絶縁材と
   したことを特徴とするフィールドコイル。