JPH0681862A - スタータクラッチ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】部品点数が少なくかつ製造が容易なシール構造
を有するスタ−タクラッチを提供する。 【構成】外周部がクラッチアウタ１の外周面に固着され
るクラッチカバー５の輪板部５２の内周端がクラッチイ
ンナ２の外周面に所定の微小隙間を介して面して配設さ
れ、これによりクラッチカバー５によるクラッチインナ
２の芯出しを可能とする。それと同時に、クラッチカバ
ー５は弾性環状シール部材６を支持し、この弾性環状シ
ール部材６の内周端はクラッチインナ２の外周面に軽接
触して輪状隙間Ｄをシールする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、スタ−タクラッチに関
する。

【０００２】

【従来技術】従来、スタ−タクラッチすなわちスタ−タ
のオーバーランニングクラッチは、クラッチローラ及び
クラッチスプリングを収容するクラッチアウタとクラッ
チインナとの間の輪状隙間を閉鎖するために、クラッチ
アウタの開口端面近傍にワッシャを嵌め、このワッシャ
の固定のためにクラッチカバーをクラッチアウタ及びワ
ッシャの外周部に被せている。

【０００３】しかしながら近年エンジンの高出力及び高
回転化に伴い、スタータの使用環境は過酷となってい
る。特に、上記輪状隙間に封入されたグリスが高温、高
振動、浸水などにより外部に漏出すると、クラッチロー
ラなどの磨耗が促進されてクラッチ寿命が低下し、更
に、上記浸水によりクラッチ内部が発錆してクラッチロ
ーラなどの摺動不良が生じるが、上記した従来のスター
タクラッチでは、このようなグリス漏出や浸水の防止が
不十分であった。

【０００４】実開昭６４ー１１３６９号公報は、上記輪
状隙間をシールするために、クラッチアウタの開口端面
にリング状の段差凹部を穿設し、段差凹部の奥端面にＯ
ーリングを嵌め込んだ後、段差凹部を蓋体で閉塞し、こ
の蓋体の内周面とクラッチインナの外周面との間にシー
ル部材を嵌め込み、クラッチカバーなどで蓋体の抜け止
めを行っている。すなわちこの従来技術では、Ｏーリン
グにより蓋体とクラッチアウタとの隙間をシールし、オ
イルシールにより蓋体とクラッチインナとの隙間をシー
ルするとともに、段差凹部に嵌入された蓋体がクラッチ
インナの芯出しも行う構成となっている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記した
公報のシール構造では、輪状隙間のシール及びクラッチ
インナの芯出しが可能な構成となっているものの、Ｏー
リング、オイルシール及び複雑な形状の蓋体を必要と
し、部品点数が多く、高精度を要する蓋体の加工が複雑
で、製造上のコストアップ要因となっていた。

【０００６】なお上記した複雑な形状の蓋体を必要とす
るのは、この蓋体がその内側端面の外周側の部分でＯー
リングを押圧し、その外側端面の内周側の部分にオイル
シールを収容し、その外側端面の外周側の部分でＯーリ
ング押圧用の軸方向の力を受け取り、更にその内外周面
でクラッチインナの外周面及びクラッチアウタの内周面
に接してクラッチインナの芯出しを実現せねばならない
からである。

【０００７】本発明は上記問題点に鑑みなされたもので
あり、部品点数が少なくかつ製造が容易なシール構造を
有するスタ−タクラッチを提供することをその目的とし
ている。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明のスタ−タクラッ
チは、出力軸と同軸に配設された円筒形状のクラッチイ
ンナと、前記出力軸及び前記クラッチインナと同軸に配
設され内周面が前記クラッチインナの外周面と輪状隙間
を介して対向する一端開口筒状のクラッチアウタと、前
記輪状隙間に収容され前記クラッチインナ及び前記クラ
ッチアウタ間で一方向にトルクを伝達するクラッチロー
ラ及びクラッチスプリングと、外周部が前記クラッチア
ウタの外周面に固着されてクラッチアウタの開口を遮蔽
するクラッチカバーとを備えるスタ−タクラッチにおい
て、外周部が前記クラッチカバーに固着され、内周端が
前記クラッチインナの外周面に軽接触して前記輪状隙間
をシールする弾性環状シール部材を備え、かつ、前記ク
ラッチカバーの内周端は前記クラッチインナの外周面に
所定の微小隙間を介して面することを特徴としている。

【０００９】

【作用】外周部がクラッチアウタの外周面に固着される
クラッチカバーの内周端がクラッチインナの外周面に所
定の微小隙間を介して面して配設され、これによりクラ
ッチカバーによるクラッチインナの芯出しを可能とす
る。それと同時に、クラッチカバーは弾性環状シール部
材を担持し、この弾性環状シール部材の内周端はクラッ
チインナの外周面に軽接触して輪状隙間をシールする。

【００１０】

【発明の効果】以上説明したように本発明のスタ−タク
ラッチは、クラッチカバーの内周端を芯出し可能に形成
するとともに、このクラッチカバーの内周部によりシー
ル用の弾性環状シール部材を担持させる構成を採用して
いるので、浸水及びグリス流出を良好に防止でき、ま
た、シール構造が輪状隙間内に設けられないので輪状隙
間内にグリスを充分に充填することができる。また、上
記クラッチインナの芯出しによりクラッチインナとシ−
ル部材との摩擦抵抗も軽減することができ、その摩耗も
減らすことができる。

【００１１】更に、形状簡単かつ少数の部品により上記
したシール、防水を実現し、クラッチインナの組み付け
時の芯出しも可能となるという優れた効果を奏すること
ができる。

【００１２】

【実施例】

（実施例１）本発明の一実施例を図１を参照して以下に
説明する。このスタ−タクラッチは、上半分を断面図示
した車両用エンジン始動用のワンウエイロ−ラクラッチ
（オーバーランニングクラッチ）であって、図示されな
いスタータモータの出力軸にクラッチアウタ１及びクラ
ッチインナ２が嵌着されており、クラッチアウタ１及び
クラッチインナ２との間の輪状隙間Ｄにはクラッチロ−
ラ３や図示されないクラッチスプリングが収容されてい
る。更に、輪状隙間Ｄの開口はローラ抜け止め用の半割
りワッシャ４で閉塞され、半割りワッシャ４はクラッチ
カバー５により固定され、クラッチカバー５にはリップ
シール（本発明でいう弾性環状シール部材）６が固着さ
れている。

【００１３】クラッチアウタ１は、楔状の内壁を有する
略椀状の円筒部材であって椀底面中央部から軸方向外方
に径小筒部１１が突設され、この径小筒部１１の内周面
には出力軸のヘリカルスプライン溝（図示せず）に嵌合
するヘリカルスプライン溝１２が刻設されている。クラ
ッチインナ２は、ギヤ付きのスリーブ形状を有し、図
中、略右半分がクラッチアウタ１の碗内に同軸嵌入さ
れ、右端面がクラッチアウタ１の碗底に相対回転自在に
接している。クラッチインナ２の外周面左端部にピニオ
ンギヤ２１が設けられ、ピニオンギヤ２１はこのスター
タクラッチと一体に軸方向へ左動してエンジン側のリン
グギヤ（図示せず）と噛合可能となっている。クラッチ
インナ２の内周面左半分には軸受８が嵌入されており、
軸受８には出力軸（図示せず）が嵌入され、これにより
クラッチインナ２は出力軸に対し相対回転自在となって
いる。クラッチインナ２の外周面の軸方向中央部には、
冷鍛加工などにより円鍔部２２が遠心方向に突設されて
おり、円鍔部２２の図中、左端面はピニオンギヤ２１の
右端と一体化されている。また、クラッチインナ２の外
周面の軸方向中央部には円鍔部２２の右端に隣接して環
状溝２３が凹設されている。

【００１４】クラッチインナ２とクラッチアウタ１との
間の碗内空間は一端開口の輪状隙間Ｄとなっており、こ
の輪状隙間Ｄには円柱状のクラッチロ−ラ３と図示され
ないクラッチスプリングが配設されている。なお、クラ
ッチアウタ１の内壁部は楔状に形成されており、この楔
状の部位に円柱状のクラッチロ−ラ３が図示されないク
ラッチスプリングにより押圧されて、クラッチアウタ１
の駆動トルクをクラッチインナ２に伝達可能となってい
る。そして、クラッチインナ２がより高速回転となると
上記クラッチスプリングによるクラッチロ−ラ３の押圧
が減勢されてクラッチインナ２からクラッチアウタ１へ
のトルク伝達が不能となる。

【００１５】半割りワッシャ４は、上記したクラッチイ
ンナ２の環状溝２３に嵌入されて軸方向の移動を規制さ
れており、半割りワッシャ４の図中、右端面外周部はク
ラッチアウタ１の左端面（開口端面）に当接しており、
これにより半割りワッシャ４は輪状隙間Ｄを閉鎖して、
クラッチローラ３やクラッチスプリングが輪状隙間Ｄか
ら逸脱するのを防止している。また、輪状隙間Ｄにはグ
リスが封入されている。

【００１６】クラッチカバー５は、クラッチアウタ１の
外周面に嵌着、かしめられた薄肉の円筒部５１と、円筒
部５１の左端から径内方向に延びる薄肉の輪板部５２と
からなる。円筒部５１の右端部はクラッチアウタ１の右
端面にかしめられている。また、輪板部５２の外周部５
２ａはピニオンギヤ２ａ側に湾曲しており、輪板部５２
の径方向中央部及び内周部は平板状となって、かしめに
より半割りワッシャ４に当接している（クラッチアウタ
１とともに半割りワッシャ４を挟持している）。更に、
輪板部５２の内周端部５２ａはピニオンギヤ２１側に屈
曲されて筒状となっており、内周端部５２ａはクラッチ
インナ２の円鍔部２２の外周面に微小隙間を介して対面
している。したがって、クラッチカバー５は半割りワッ
シャ４の抜け止め機能を有するとともに、クラッチイン
ナ２の芯出し機能も有している。

【００１７】リップシール６は、軟質ゴムを素材とする
リング状部材からなり、クラッチカバー５の輪板部５２
の左端面に接着されており、リップシール６の内周端は
クラッチインナ２の円鍔部２２の外周面に軽接触してい
る。このスタータクラッチの組付けは以下のように行
う。まず、クラッチアウタ１内にクラッチローラ３及び
クラッチスプリングを収納し、クラッチインナ２をクラ
ッチアウタ１内の輪状間隙Ｄに嵌入し、半割りワッシャ
４を挟持する。この状態でクラッチインナ２をクラッチ
アウタ１内の輪状隙間Ｄに嵌入し、その後、リップシー
ル６付のクラッチカバー５をクラッチアウタ１に嵌着
し、クラッチカバー５をかしめて、組付けを完了する。
以上のように構成された本実施例のスタータクラッチ
では、クラッチカバー５の輪板部５２の内周端部５２ａ
がクラッチインナ２をクラッチアウタ１と同軸保持する
ための芯出し作用を果たしている。この芯出しによりク
ラッチインナ２とリップシール６との接触状態を常に軽
接触状態に維持できるので、リップシール６の耐久性が
向上する。また、クラッチカバー５はリップシール６の
支持部材として機能し、そしてリップシール６が輪状隙
間Ｄに封入されたグリスの漏出防止及び輪状隙間Ｄ内へ
の浸水防止を行う。したがってこの実施例のスタータク
ラッチは、構造簡単で部品点数が少なく、軽量、小型化
も可能で、製作工程も簡単である。

【００１８】（実施例２）この実施例は実施例１とは逆
に、クラッチアウタ１０１をピニオン側、クラッチイン
ナ１０２をアーマチャ側としたものであって、この場合
にはクラッチアウタ１０１側にピニオンギヤ１０１ｂが
あるので、半割りワッシャ４の代わりに平ワッシャ１０
４を採用することができる。なお、１０５はクラッチカ
バー、１０６はクラッチカバー１０５に固着されたリッ
プシール（弾性環状シール部材）である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のスタ−タクラッチの一実施例を示す半
断面図、

【図２】本発明のスタ−タクラッチの他実施例を示す半
断面図。

【符号の説明】

１はクラッチアウタ、２はクラッチインナ、３はクラッ
チローラ、４は半割りワッシャ、５はクラッチカバー、
６はリップシール（弾性環状シール部材）。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 出力軸と同軸に配設された円筒形状のク
   ラッチインナと、前記出力軸及び前記クラッチインナと
   同軸に配設され内周面が前記クラッチインナの外周面と
   輪状隙間を介して対向する一端開口筒状のクラッチアウ
   タと、前記輪状隙間に収容され前記クラッチインナ及び
   前記クラッチアウタ間で一方向にトルクを伝達するクラ
   ッチローラ及びクラッチスプリングと、外周部が前記ク
   ラッチアウタの外周面に固着されてクラッチアウタの開
   口を遮蔽するクラッチカバーとを備えるスタ−タクラッ
   チにおいて、 外周部が前記クラッチカバーに固着され、内周端が前記
   クラッチインナの外周面に軽接触して前記輪状隙間をシ
   ールする弾性環状シール部材を備え、かつ、前記クラッ
   チカバーの内周端は前記クラッチインナの外周面に所定
   の微小隙間を介して面することを特徴とするスタータク
   ラッチ。