JPH0681437B2 - 磁石発電機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は磁石発電機に関し、更に詳細にはフライホイー
ル形の磁石発電機を構成する保護環の改良に関する。

〔従来の技術〕

従来、フライホイール形の磁石発電機における回転子は
第５図ないし第７図に示されるように構成されていた。
第５図ないし第７図において、１は周壁部1aおよびその
一端側の側壁部1bから形成される椀形のフライホイー
ル、２は該フライホイール１の側壁部1bにおける中心部
に固着され回転軸（図示せず）に装着するボス部、３は
フライホイール１の周壁部1aの内周面に周方向に配列さ
れた４つの磁石、４は各磁石３を軸方向の一方側で位置
決めするため各磁石３の長さ方向中間部付近において周
壁部1aを部分的に内方へ押出し成形して設けられた突起
部（段部分）、５は鉄板又はステンレス板の絞り加工に
よって形成され、環状に配列された磁石３の内側に密着
して嵌合された筒状の保護環、5aは第７図に示されるよ
うに保護環５の一端に形成された外方フランジであって
フライホイール開放側に面する磁石３の側部に当接して
該磁石３を軸方向他方側で位置決めする外方フランジ、
６は磁石３の両側部および各磁石３の端部間に充填され
磁石３および保護環５をフライホイール１に一体に固定
する樹脂モールド、７は各磁石３の端部間において周壁
部1aを部分的に内方へ内出して形成された樹脂モールド
抜け止め用の突起をそれぞれ示している。

〔発明が解決しようとする問題点〕

このように、従来の磁石発電機における回転子では、フ
ライホイールの周壁部に配置される多数の磁石の軸方向
一方側の位置決めは該周壁部を部分的に内方へ押出し成
形して設けられた突起部によってなされている。しかし
ながら、厚肉のフライホイールに押出し成形により突起
を加工するには大規模な設備を必要とし、その結果生産
効率が低くコスト高となるという問題点があった。

本発明の目的は、かかる従来の問題点を解決して、フラ
イホイールに突起などを形成せずに磁石の位置決めを行
なうことにより生産効率のよい磁石発電機を提供するこ
とにある。

〔問題点を解決するための手段〕

本発明の磁石発電機は、周壁部と該周壁部の一端側の側
壁部とにより形成された椀状のフライホイールと、該フ
ライホイールの前記周壁部内周面に設けられた複数の磁
石と、該磁石を位置決めすべく前記フライホイール内で
前記磁石より内側に配置され一端部を前記フライホイー
ルの前記側壁部に当接して配置された筒状の保護環と、
該保護環と前記フライホイールの前記周壁部内周面との
間の環状空間部において前記磁石を埋め込むように充填
されたモールドとを含み、前記保護環の径方向外方に突
出するように折曲された突出片を前記保護環の前記一端
部に複数形成し、前記フライホイールの前記側壁部に前
記突出片の軸方向一端部を当接させて前記保護環の軸方
向の位置決めをすると共に、前記突出片の軸方向他端部
に前記磁石の一端部を当接させて前記磁石の軸方向の位
置決めをするようにしたものである。

〔作用〕

本発明の磁石発電機によれば、その回転子の組み立ての
際、保護環の一端部に形成された突出片の軸方向一端部
をフライホイールの側壁部に当接させることにより、保
護環の軸方向の位置が決められ、かつ、突出片の軸方向
他端部に磁石の一端部を当接させることにより、磁石の
軸方向の位置が決められる。そして、保護環とフライホ
イールの周壁部内周面との間の環状空間部にモールドを
充填することにより、保護環と磁石とが軸方向に位置決
めされた状態で固定される。このような回転子は、内燃
機関のクランクシャフト等の回転軸に取付けられ、内燃
機関の発電機として使用される。

〔実施例〕

以下、本発明の磁石発電機を添付図面に示される好適な
実施例について更に詳細に説明する。

第１図ないし第３図には本発明の一実施例に係る磁石発
電機の回転子を示されている。

この実施例の回転子10は、周壁部11aとこの周壁部の一
端側の側壁部11bとにより形成された椀状のフライホイ
ール11を備えている。このフライホイール11の側壁部11
bにおける中心部には例えば内燃機関のクランクシャフ
トなどの回転軸（図示せず）に装着するためのボス部12
が取付けられている。また、フライホイール11の周壁部
11aの内周面には周方向に４つの細長い円弧状の磁石13
が配列され、後述する保護環14によって軸方向所定の位
置に配置されている。

フライホイール11の周壁部11aの内周面に密着して周方
向に環状に配列された各磁石13を保持する保護環14は、
第３図に示されるように筒形状を呈し、磁石13の内側に
密着して嵌合配列されている。この筒状の保護環14はそ
の一端部の周囲縁に、間隔をあけて形成された多数の凹
部14aを備え、該凹部14aの底縁には径方向外方へ突出す
る第１の突出片14bが設けられている。さらに、これら
の凹部14aの間には両側部に径方向外方へ突出した突出
片としての第２の突出片14cを有するコ字形の歯状部14d
が形成されている。他方、保護環14の他端部にはその全
周にわたって径方向外方へ張り出したフランジ部14eが
形成されている。

ここで、これら第１の突出片14bおよび歯状部14dの形成
手順について説明する。

まず、筒状環の一端部周囲に所定の間隔をあけて軸方向
に切込み線を入れる。そして、これらの切込み線間を１
つおきに筒状環の径方向外方へ折曲げて、第１の突出片
14bを形成する。この第１の突出片14bを形成した後、筒
状環の一端部には多数の矩形歯が現出する。そこで、多
数の矩形歯の基部に周方向に切込み線を入れる。そし
て、各矩形歯の両側部を筒状環の径方向外方へ折り返し
て、第２の突出片14cを形成する。この第２の突出片14c
の形成によってコ字形の歯状部14dが形成される。

この保護環14は、その一端縁、即ち歯状部14dのコ字形
の端縁がフライホイール11の側壁部11bに当接するよう
にフライホイール11内に配置され、軸方向の位置決めが
なされている。そして、磁石13は、その一側面が保護環
14の第１の突出片14bおよび第２の突出片14cに当接する
ようにフライホイール11の周壁部11aの内周面に配列さ
れ、第２図でみて軸方向左方向における磁石13の位置が
決められている。さらに、軸方向右方向については、磁
石13の他側面が保護環14の他端に形成されたフランジ部
14eに当接して、その位置決めがなされている。

そして、保護環14とフライホイール11の周壁部11aとの
間の環状空間部には、磁石13を埋め込むように磁石13間
および磁石12の両側部に樹脂が充填されている。この場
合、磁石13のフライホイール開放側の側部においては、
保護環14の軸方向長さよりフライホイール11の周壁部11
aにおける側壁部11bまでの軸方向長さよりフライホイー
ル11の周壁部11aにおける側壁部11bまでの軸方向長さの
方が大きいため、保護環14のフランジ部14eとフライホ
イール11の周壁部11aの開放側端縁との間にスペースに
樹脂が配置されると、フランジ部14eも磁石13と共に埋
め込まれる。このようにして充填された樹脂モールド15
は磁石13および保護環14を固定すべく作用するが、この
樹脂モールド15がそれ自体がフライホイール11から抜け
出ないようにフライホイール11の周壁部11aの内壁面に
は突起16が磁石13の端部間の位置で部分的に内方へ打出
されて形成されている。

ところで、従来の保護環は円板状の鉄板又はステンレス
板を絞り加工して形成されているため材料取りが悪く、
材料費が高くなると共に、このような絞り加工によって
得られる保護環は磁気的な歪を生じるため、磁気特性が
悪いという問題があった。しかしながら、本発明の磁石
発電機における保護環14は、第４図に示されるように、
帯状の板材を筒状に屈曲成形することによって形成され
ており、非常に歩留まりが良く、又磁気的歪の発生もな
く、磁気特性が改善される。

このように構成された磁石発電機では、保護環14の一端
部の周囲縁に径方向外方に突出するように折曲された第
２の突出片14cを形成している。そこで、この第２の突
出片14cの一端部を側壁部11bに当接するように保護環14
をフライホイール11内に配置することにより、保護環14
の軸方向の位置決めが簡易になされる。また、磁石13の
一側面を第２の突出片14cの他端部に当接するように磁
石13をフライホイール11の周壁部11aの内周面に密接し
て配置することにより、磁石13の軸方向の位置決めが容
易になされる。さらに、第２の突出片14cの一側面が側
壁部11bに当接し、かつ、第２の突出片14cの他端部に磁
石13が当接しているので、樹脂モールド15の充填の際に
磁石13を加わる軸方向一方部への押圧力に対して強固に
保護でき、磁石13の位置ずれの発生を防止できる。

また、樹脂モールド15で磁石13と保護環14とを一体的に
固着しているので、保護環14は組立工程において一時的
に磁石13の軸方向の位置決めを行えるだけの強度を有し
ていれば良く、板厚を薄くすることができる。さらに、
第２の突出片14cに加えて第１の突出片14bを設けて、第
１の突出片14bにおいても樹脂モールド15充填の際磁石1
3に加わる軸方向一方側への押圧力を分担させると共
に、歯状部14dをコ字形として強度を高めているので、
一層板厚を薄くすることができる。従って、保護環14の
板薄化が図られ、磁石13と磁石13の内側に配設される発
電コイル（図示せず）との磁気的な間隔を小さくでき、
高出力の磁石発電機が得られることになる。

なお、上記実施例では、第１の突出片14bがすべての凹
部14aの底縁に形成され、またこれらの凹部14a間のすべ
てが第２の突出片14cを備えた歯状部14dに形成されてい
るものとしているが、第１の突出片14bは任意の凹部14a
の底縁に形成されるだけでもよく、また第２の突出片14
cについてもすべてに形成される必要もない。さらに、
上記実施例では、第２の突出片14cを有する歯状部14dが
コ字形とされたが、これもＣ形、Ｖ形などであっても同
様な効果を奏する。

〔発明の効果〕

以上説明したように、本発明の磁石発電機によれば、磁
石の軸方向一方側における位置決めが、保護環の一端部
に径方向外方に突出するように折曲されて形成された突
出片によってなされることから、従来のように肉厚のフ
ライホイール周壁部に押出し成形によってそのための段
部を形成する必要がなく、生産効率を高めることができ
ると共に、安価に製造することができる。また、磁石を
位置決めする突出片は、その端縁がフライホイールの側
壁部に当接しているので、樹脂モールド充填の際に及ぼ
される押圧力に対して磁石を強力に保持して、磁石の位
置ずれの発生を防ぐことができる。さらに、保護環の厚
みを薄くすることができるため、磁石と発電コイルとの
磁気的な間隔を小さくでき、高出力の磁石発電機を得る
ことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例に係る磁石発電機の回転子を
示す側面図、第２図は第１図のII-II線に沿って得た前
記回転子の断面図、第３図は第１図に示される回転子を
構成する保護環の斜視図、第４図は第３図の保護環の形
成途中を示す斜視図、第５図は従来の磁石発電機におけ
る回転子を示す斜視図、第６図は第５図のVI-VI線に沿
って得た従来の回転子の断面図、第７図は第５図に示さ
れる従来の回転子を構成する保護環を示す斜視図であ
る。 10……回転子、11……フライホイール、11a……周壁
部、11b……側壁部、13……磁石、14……保護環、14c…
…第２の突出片（突出片）、15……樹脂モールド。 なお、各図中同一符号は同一部分又は相当する部分を示
す。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】周壁部と該周壁部の一端側の側壁部とによ
   り形成された椀状のフライホイールと、該フライホイー
   ルの前記周壁部内周面に設けられた複数の磁石と、該磁
   石を位置決めすべく前記フライホイール内で前記磁石よ
   り内側に配置され一端部を前記フライホイールの前記側
   壁部に当接して配置された筒状の保護環と、該保護環と
   前記フライホイールの前記周壁部内周面との間の環状空
   間部において前記磁石を埋め込むように充填されたモー
   ルドとを含み、前記保護環の径方向外方に突出するよう
   に折曲された突出片を前記保護環の前記一端部に複数形
   成し、前記フライホイールの前記側壁部に前記突出片の
   軸方向一端部を当接させて前記保護環の軸方向の位置決
   めをすると共に、前記突出片の軸方向他端部に前記磁石
   の一端部を当接させて前記磁石の軸方向の位置決めをす
   るようにしたことを特徴とする磁石発電機。