JPH0679690A - シート切断装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 潤滑油が保持できて固定刃との摩耗を軽減で
きる案内リングと緩衝リングを有する回転刃を装着した
シート切断装置を提供する。 【構成】 両端を回転可能に軸支され、切始め側端部に
案内リングおよび切終わり側端部に緩衝リングを有する
回転刃と、両端を揺動自在に支持され、前記回転刃に圧
接される固定刃からなり、案内リングおよび緩衝リング
は、プレス成形された薄板状のリングを所定の厚さに複
数個積層され、積層された少なくとも一対の薄板リング
間に油溜めを形成してなり、固定刃と案内リングまたは
緩衝リング間とを潤滑しつつ摺動することを特徴とす
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ファクシミリ、プリン
タなどのＯＡ機器に装着されて、主として紙であるシー
トを切断するロータリ式のシート切断装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】ロータリ式のシート切断装置は、回転刃
の刃先に揺動する固定刃の刃先を交差圧接して切断する
ので、回転刃の軸芯線に対して、固定刃の揺動軸芯線を
傾けて噛込角を形成し、切断開始位置で両者の刃先を円
滑に噛み合わせるため、可動刃の刃先軌跡円と同一寸法
の案内リングが切始め側の可動刃の端部に装着され、固
定刃の刃先の切始め側は、この案内リングに圧接されて
摺動する。そして、切断開始後も、固定刃の刃先と案内
リングが摺動したままで回転すると、固定刃の刃先に摩
耗が生じ、両方の刃先の円滑な噛み合わせができなくな
る。この不具合を解消するため、可動刃の切終わり側端
部には、緩衝リングを設けて、回転刃と固定刃が噛み合
って切断を開始した後は、固定刃の切始め側と案内リン
グを離反させている。すなわち、案内リングと固定刃の
刃先は、切始め直前から切始め直後にかけてのみ摺動す
ればよいのである。

【０００３】従来、この案内リングあるいは緩衝リング
は、旋盤やフライス盤等を使って主に切削加工によって
製作され、その形状は案内リングは通常のリング形状、
緩衝リングは段付のカム形状とし、回転刃の端部の軸に
装着されていた。そして、特開昭51-40677号公報には案
内リングと緩衝リングとしてのガイドリングとガイドピ
ースを装着した切断装置が図示され、実開昭2-39896号
公報には、切始め側端に溝状の油脂溜を有する案内輪を
設けたロータリーカッタが開示されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】前述した案内リングや
緩衝リングは、固定刃が圧接されて摺動するから、摩耗
を軽減するため両リングと固定刃との間に潤滑油を保持
させることが行われ、潤滑油を保持するため、切削加工
でリングを成形した後、外周面に油溜めとなる溝を設け
て潤滑しようとする試みがなされている。しかし、切削
加工で設けられる油溜めは、当然切削加工が必要であ
り、また得られた溝もそれほど深い溝は得られないの
で、回転刃が高速回転した場合には、潤滑油が飛散した
り、低速で回転する場合にも周囲に流出してしまって潤
滑効果がなくなってしまうという問題点があった。そし
て、潤滑効果が完全になくなってしまうと、刃先と案内
リング、または緩衝リングが直接金属接触して摺動する
ので、金属的な異音を発生するという問題点もあった。

【０００５】また、従来の案内リングや緩衝リングは、
切削加工のみで製造されるのでコスト的にも不利である
ため、より安価に製造する試みが探索されている。それ
ぞれのリングの形状は、案内リングは通常のリング形
状、緩衝リングは案内リングと同一外径をもつカム形状
とするのが従来から行われていた装置である。実開平2-
39896号公報に開示された切断装置は、案内リングのみ
装着され緩衝リングは装着されていない。また、一体的
に成形された案内リングに溝を設けるため、再度機械的
加工を施さねばならないし、本発明のような深い溝状の
油溜めが得られないので、長時間安定的に潤滑油を保持
することはできない。本発明は上述の問題点を解消し、
長時間安定的に潤滑油が保持できて、案内リングと緩衝
リングを実質的に同一形状で安価に製造できる構造であ
り、この案内リングと緩衝リングを装着したシート切断
装置を提供することを目的とするものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の問題
点を解消するため種々検討した結果、案内リングを鋼板
のプレス打抜きで製造して重ね合わせて一体化すれば、
プレス打抜き時に自然に生じる変形によって個々の案内
リング間に隙間が生じるので、この隙間を潤滑油の油溜
めとして活用できることを見出して本発明を完成したも
のである。また、従来案内リングや緩衝リングは、旋盤
やフライス盤を使ってほとんど切削加工のみで製作して
いたが、本発明ではプレス打抜きのみで外径の成形がで
きるので大幅にコスト低減ができることもわかった。

【０００７】また、従来の案内リングと緩衝リングは、
切削加工によってリング形状に案内リングを製造し、さ
らにこの案内リングの一部に凹部を形成してカム形状と
し、緩衝リングに使用されるので、緩衝リングの凹部を
案内リングと固定刃が離反する位置に配置しておけば、
緩衝リングの部品を案内リングとして使用できることを
も見出した結果に基づくものである。すなわち、具体的
には本発明は、両端を回転可能に軸支され、切始め側端
部に案内リングおよび切終わり側端部に緩衝リングを有
する回転刃と、両端を揺動自在に支持され、前記回転刃
に圧接される固定刃からなり、前記案内リングおよび前
記緩衝リングは、プレス成形された薄板状のリングを所
定の厚さに複数個積層され、積層された少なくとも一対
の薄板リング間に油溜めを形成してなり、前記固定刃と
前記案内リングまたは緩衝リング間とを潤滑しつつ摺動
することを特徴とするシート切断装置である。

【０００８】

【作用】ロータリ式の切断装置は、固定刃の刃先線に対
して回転刃の刃先線を傾けて剪断角を形成させると共
に、回転刃の回転軸芯に対して固定刃の揺動軸芯を傾け
て噛込角を形成して両刃を互いに干渉させて切断する。
そして、固定刃が案内リングと摺動して、回転刃と固定
刃が噛み合って切断を開始する。この時、カム形状の緩
衝リングは、その凹部が位置するので、固定刃と緩衝リ
ングは離れている。次に切断が終了すると固定刃は、緩
衝リングの凸部と摺動し、噛込角の存在によって固定刃
と案内リングが離反して固定刃の切断開始側の摩耗を防
止する。

【０００９】本発明における案内リングと緩衝リング
は、プレス打抜きにより薄板リングを製造し、これを複
数枚積み重ねて１個のリングとするので、それぞれの薄
板リングには、プレス打抜き特有の変形が自然に生じて
いる。すなわち、プレス打抜きの開始側は、外周部がプ
レス打抜きの開始側にだれ面を生じ、またプレス打抜き
の終了側は打抜きの方向にかえり面と称する変形が生じ
断面形状が皿状になる。この皿状の薄板リングを重ねる
と中心部のみ互いに接触し、外周部には隙間が生じるの
で、この隙間に毛細管現象を利用して潤滑油を保持させ
るものである。本発明は、一般のプレス打抜品では、研
磨仕上げによって修正して使用されるような、いわばあ
まり歓迎されていなかった変形を積極的に利用して油溜
めとするものである。

【００１０】薄板リングの重ね面には、切削加工では到
底得られないような深い隙間が生じるのでリングの円周
面に供給された潤滑油は、毛細管現象によって回転軸の
中心付近まで奥深く保持され、長期間の潤滑作用の安定
性を増大するものである。プレスで成形する薄板状リン
グは、すべてが全く同一形状にする必要もないが、形状
が揃っていた方が案内リングと緩衝リングの部品として
の互換性も増大するのでより望ましいものである。積層
した薄板リングは、すべての隙間に油溜めを設ける必要
はないのでプレス打抜き後に矯正した薄板リングも使用
できる。したがって、積層したリングは、少なくとも一
対が薄板リング間に油溜めを形成しておればよいのであ
るが、プレス打抜き後の矯正の手間を省くためにも、た
くさんの油溜めを確保するためにもプレス打抜きしたま
まの薄板リングを積層するのが望ましい。

【００１１】

【実施例】次に実施例と図面に基づいて本発明を詳細に
説明する。まず、図３に示すカム形状のリング素材１１
をプレス打抜きにより成形した。寸法的には、外径 25m
mφ×内径 10mmφ×厚さ 1.6mm、材質はＳＫＤ１１の焼
なまし材とした。このリング素材１１のかえり面１１ａ
には研磨仕上げを施し、かえりを除去して平坦な面と
し、だれ面１１ｂはそのままにしておいて、かえり面１
１ａとだれ面１１ｂを相対させて３枚を接着材で固着
し、図２に示す案内リング１２を作成した。出来上がっ
た案内リング１２はかえり面１１ａとだれ面１１ｂとの
間に隙間ができるので、これを油溜め１２ａとするので
ある。

【００１２】次に軸１４を準備し、軸１４の長手方向に
沿い、かつ軸芯に対して傾いた溝１４ａを設け、この溝
１４ａに刃材１５を埋め込んで固着した。そして、切始
め側となる端部に案内リング１２を嵌入し、切終わり側
端部には、この案内リング１２を嵌入して緩衝リング１
３とした。緩衝リングの凹部１３ｂは、回転刃と固定刃
が噛み合ってシートを切断する範囲に配置させ、案内リ
ングの凹部１２ｂは、回転刃と固定刃が噛み合わない範
囲の任意の位置に配置しておけばよい。このような配置
にすることによって、案内リング１２と緩衝リング１３
は、互換性が生ずるので両者は同一形状とすれば、従来
のように別々の形状に製作する必要はなくなる。

【００１３】上述したようにして組み立てられた回転刃
の形状を図１に示す。この回転刃の刃先に対して固定刃
の刃先が噛込角を形成するように、揺動の軸芯線を回転
刃の回転軸芯線に対して傾けた固定刃を圧接した。図４
は回転刃と固定刃が噛み合って切断を開始した状態を示
す概念図である。固定刃の切始め側は案内リングの凸部
ｃと摺動して、回転刃と固定刃の円滑な噛み合わせを行
なわしめ、固定刃の切終わり側は緩衝リングの凹部１３
ｂに陥没して固定刃が回転刃に圧接される。図５は、回
転刃と固定刃の噛み合いがはずれ、切断を終了した状態
を示す概念図である。切断を終了すると同時に固定刃の
切終わり側が緩衝リングの凸部１３ｃに乗り上げるか
ら、固定刃の切始め側は、案内リングから離反するので
ある。

【００１４】そして、次の切断開始位置まで、摩耗する
と不具合が多くなる固定刃の切始め側は、案内リングか
ら離反したまま回転し、多少摩耗しても特に問題のない
固定刃の切終わり側は緩衝リングの凸部ｃと摺動したま
まで回転するのである。案内リングも緩衝リングも共に
油溜りに深く保持している潤滑油によって、摩耗や異音
の発生が長期間防止できるのである。従来の切断装置と
本発明の切断装置の比較試験を行ったところ、従来の切
断装置では、10万回前後切断すると、切終わり側の固定
刃の摩耗が大きくなって、緩衝リングがその働きができ
なくなったが、本発明品は15万回切断しても固定刃の切
終わり側の摩耗は極く僅少で、さらに切断が可能である
ことがわかった。

【００１５】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば案
内リングあるいは緩衝リングの潤滑油の保持が回転軸の
中心付近まで奥深く確実に長期間行なえるので、両者と
固定刃との摩擦による固定刃の摩耗が大幅に減少して、
切断装置の寿命が向上する。また、高価な切断加工を用
いないで、安価なプレス加工によりリングを製造できる
うえ、両者を同一形状としてどちらにも使えるようにも
できるでの、部品の管理上からも大幅にコスト低減も達
成できるものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のシート切断装置に係る案内リングと緩
衝リングを装着した回転刃の斜視図である。

【図２】本発明のシート切断装置に係る案内リングまた
は緩衝リングの断面図である。

【図３】本発明のシート切断装置に係る案内リングまた
は緩衝リングを製造するためのリング素材の断面図であ
る。

【図４】本発明のシート切断装置に係る案内リングまた
は緩衝リングを装着した回転刃と固定刃が切断を開始し
た時の状況を示す概念図である。

【図５】本発明のシート切断装置に係る案内リングまた
は緩衝リングを装着した回転刃と固定刃が切断を終了し
た時の状況を示す概念図である。

【符号の説明】

１ 回転刃、１１ リング素材、１１ａ かえり面、１
１ｂ だれ面、１２案内リング、１２ａ 油溜め、１２
ｂ 案内リングの凹部、１２ｃ 案内リングの凸部、１
３ 緩衝リング、１３ｂ 緩衝リングの凹部、１３ｃ
緩衝リングの凸部、１４ 軸、１４ａ 溝、１５ 刃
材、２ 固定刃

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 両端を回転可能に軸支され、切始め側端
   部に案内リングおよび切終わり側端部に緩衝リングを有
   する回転刃と、両端を揺動自在に支持され、前記回転刃
   に圧接される固定刃からなり、前記案内リングおよび前
   記緩衝リングは、プレス成形された薄板状のリングを所
   定の厚さに複数個積層され、積層された少なくとも一対
   の薄板リング間に油溜めを形成してなり、前記固定刃と
   前記案内リングまたは緩衝リング間とを潤滑しつつ摺動
   することを特徴とするシート切断装置。