JPH0678225B2 - 脱水医薬品とその製造方法 - Google Patents

脱水医薬品とその製造方法

Info

Publication number
JPH0678225B2
JPH0678225B2 JP60266561A JP26656185A JPH0678225B2 JP H0678225 B2 JPH0678225 B2 JP H0678225B2 JP 60266561 A JP60266561 A JP 60266561A JP 26656185 A JP26656185 A JP 26656185A JP H0678225 B2 JPH0678225 B2 JP H0678225B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
maltose
crystalline
dehydrated
hydrous
item
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP60266561A
Other languages
English (en)
Other versions
JPS62126118A (ja
Inventor
正和 三橋
修造 堺
俊雄 三宅
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hayashibara Seibutsu Kagaku Kenkyujo KK
Original Assignee
Hayashibara Seibutsu Kagaku Kenkyujo KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hayashibara Seibutsu Kagaku Kenkyujo KK filed Critical Hayashibara Seibutsu Kagaku Kenkyujo KK
Priority to JP60266561A priority Critical patent/JPH0678225B2/ja
Publication of JPS62126118A publication Critical patent/JPS62126118A/ja
Publication of JPH0678225B2 publication Critical patent/JPH0678225B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Jellies, Jams, And Syrups (AREA)
  • Saccharide Compounds (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Solid-Sorbent Or Filter-Aiding Compositions (AREA)
  • Food Preservation Except Freezing, Refrigeration, And Drying (AREA)
  • Grain Derivatives (AREA)
  • General Preparation And Processing Of Foods (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、健康増進や傷病の治療、回復促進などのため
の脱水医薬品とその製造方法に関する。
更に詳細には、含水医薬品、その含水原材料および含水
加工中間物から選ばれる含水物に、結晶性α−マルトー
スを含有させることにより、結晶性α−マルトースに含
水物の水分を捕捉させて脱水すると共に結晶性α−マル
トースをβ−マルトース含水結晶に変換して、これを含
有せしめた脱水医薬品とその製造方法に関する。
(一般の技術) 従来、健康増進や傷病の治療、回復促進などのために、
栄養剤、生理活性物質剤、殺菌剤などの各種医薬品が用
いられている。
一般に、栄養剤などに含まれる水分は、その物性だけで
なく、その保存期間に大きな影響を与える。含水栄養剤
は、微生物汚染を受け易く、更には、加水分解、酸敗、
褐変などの変質劣化を受け易い。
通常、含水栄養剤の保存期間を延長するため、例えば、
砂糖漬、塩漬、乾燥などの各種脱水方法が採用されてい
る。
しかしながら、砂糖は甘味が強すぎて最近の嗜好に合わ
ず、また、虫歯の主な誘発物質であり、更に、大量摂取
することによって血中コレステロールの増加を招くなど
の欠点を有している。
また、食塩についても、その摂り過ぎが、高血圧、癌な
どの成人病の主な原因であることが指摘され、その摂取
量をできるだけ低減するよう指導されている。
さらに、乾燥方法は、その工程での品質の劣化が避けら
れず、風味の乏しい栄養剤しか得られないのが現状であ
る。
また、例えば、リンホカイン、ホルモン、ビタミン、生
菌剤、酵素、抗生物質などを含有している生理活性物質
剤の場合には、高水分共存下では不安定であり、通常、
その安定性向上のために、大量の安定剤を共存させて加
熱乾燥、真空乾燥などの乾燥方法により製品化されてい
る。
この安定剤として使用されているものに、アルブミン、
カゼイン、ゼラチン、ヒドロキシエチルスターチなどの
水溶性高分子化合物がある。
しかしながら、これら水溶性高分子化合物などの安定剤
共存下での乾燥はきわめて困難で、多大のエネルギーを
浪費するのみならず、得られる乾燥物が水難溶性になっ
たり、生理活性物質の活性低下を引き起こしたりする危
険性を孕んでいる。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明者等は、健康増進や傷病の治療、回復促進などの
ための医薬品について、従来脱水方法における欠点を解
消することを目的として、マルトースに着目し、その利
用について鋭意研究した。
その結果、結晶性α−マルトースを含水栄養物、含水生
理活性物質などの含水物に含有させβ−マルトース含水
結晶に変換せしめることにより、結晶性α−マルトース
が強力な脱水剤として作用することを見いだし、品質の
劣化を起さず安定な医薬品を容易に製造し得ることを確
認して、本発明を完成した。
本発明は、従来脱水剤として全く注目されなかった結晶
性α−マルトースに着目したものであり、この結晶性α
−マルトースを脱水剤として含有せしめ、含水物を脱水
する方法は、本発明をもって嚆矢とする。
本発明における含水物の脱水方法は、水分を含有してい
るもの、とりわけ、結晶水のような結合水分とは違った
遊離水分を含有しているものの脱水方法としては好まし
く、例えば、乾燥栄養剤などを封入した防湿容器内の雰
囲気に含まれる水分を低減させる場合、更には、例え
ば、栄養剤、生理活性物質剤、殺菌剤などの医薬品、そ
の原材料または加工中間物など各種含水物の水分を低減
させる場合などに有利に適用できる。
これらの含水物に結晶性α−マルトースを含有させる
と、結晶性α−マルトースは、その重量の約5%の水分
をβ−マルトース含水結晶の結晶水として含水物から強
力に取り込み、含水物の水分を実質的に低減し脱水する
ことが判明した。
例えば、流動食用固体製剤などの乾燥栄養剤を封入した
防湿容器内に、紙製などの透湿小袋に充填した結晶性α
−マルトースを共存させておくことにより、また、粉末
整腸剤、顆粒消化剤などの粉末状物に結晶性α−マルト
ースを配合して包装封入することにより、容器内の相対
湿度を極度に低減させ、乾燥栄養剤、粉末状物などを高
品質、安定に長期間維持し得ることが判明した。
この際、結晶性α−マルトースは、水分を捕捉してβ−
マルトース含水結晶に変換される途上、変換された後に
おいても、べとついたり、流れたりすることがなく、乾
燥栄養剤や防湿容器を汚染する心配はなく、また、粉末
状物の付着、固結を防止できる。
更に、マルトース自体は、無毒、無害の天然甘味料であ
り、何らの危険性もない。
また、例えば、生クリーム、卵黄などの液状、ベースト
状などの高水分栄養物の場合には、結晶性α−マルトー
スを含有させて、β−マルトース含水結晶に変換せしめ
ることにより、実質的に水分の低減された高品質の脱水
栄養剤、例えば、マスキット状、粉末状などの栄養剤を
きわめて容易に製造することができる。この方法は、加
熱乾燥などの苛酷な条件を必要としないので、液状また
はペースト状の高水分栄養物を変質劣化されることな
く、脱水栄養剤に容易に変換し得る特徴を有している。
また、この際、結晶性α−マルトースをこれらの原材料
などに含まれる水分量に見合う量以上加え、結晶性α−
マルトースが部分的にβ−マルトース含水結晶に変換さ
れた、換言すれば、β−マルトース含水結晶とともに結
晶性α−マルトースを含有している脱水栄養剤を得て、
これを防湿容器内に封入すると、容器内雰囲気中の水分
が結晶性α−マルトースによりβ−マルトース含水結晶
の結晶水として捕捉脱水し、その相対湿度を極度に低減
して、容器内を高度な乾燥状態に維持し得ることが判明
した。
この結果、本発明の方法により得られた脱水栄養剤は、
微生物汚染の防止はもとより、加水分解、酸敗、褐変な
どの変質劣化を防止し、風味良好で高品質な商品を長期
に安定に維持することが判明した。
また、リンホカイン、抗生物質などの水溶液、薬用人参
エキス、スッポンエキスなどのペースト状生理活性物質
の場合にも、これらに結晶性α−マルトースを含有させ
てβ−マルトース含水結晶に変換せしめることにより、
実質的に水分の低減された高品質の脱水生理活性物質
剤、例えば、マスキット状、粉末状などの生理活性物質
剤をきわめて容易に製造することができる。
この方法は、加熱乾燥などの苛酷な条件を必要とせず、
また、結晶性α−マルトースが脱水剤としてのみなら
ず、安定剤としても作用するので、高品質で安定な脱水
生理活性物質剤を製造することができる。
また、水溶性高分子化合物などの安定剤なども、その乾
燥のためのエネルギー浪費を懸念する必要がないので、
必要に応じて適宜使用することにより、更に高品質で安
定な脱水生理活性物質剤を製造することも有利に実施で
きる。
また、例えば、バイアル瓶に、一定量の結晶性α−マル
トースを採り、これに、例えば、リンホカイン、ホルモ
ンなどの生理活性物質を含有する水溶液をその結晶性α
−マルトースがβ−マルトース含水結晶に変換するのに
必要とする水分量よりも少ない量だけ加え、密栓して注
射用固形製剤などを製造することも有利に実施できる。
この場合には、結晶性α−マルトースが、生理活性物質
を含有する水溶液を脱水することは勿論のこと、バイア
ル瓶内の雰囲気を除湿乾燥し得ることも判明した。
この結果、本発明で得られる脱水医薬品は、その製造工
程が容易にあるだけでなく、その高品質を長期に安定に
維持し得ること、更には、使用時に水に速やかに溶解す
るなどの特徴を有していることも判明した。
以上述べたように、本発明の結晶性α−マルトースを用
いる脱水剤は、従来知られているシリカゲル、酸化カル
シウムなどの脱水剤とは違って、可食性であり、代謝さ
れて栄養補給し得る糖質脱水剤であるのみならず、各種
生理活性物質などの安定剤としても有利に利用できる。
本発明者等は、本発明に先立って結晶性α−マルトー
ス、とりわけ結晶性α−マルトース粉末の製造方法につ
いて研究した。
まず、結晶性α−マルトース粉末を製造するための原料
マルトースについて、詳細に検討を加えた結果、固形物
当り85w/w%以上の高純度マルトースが好適であること
を見いだした。
この原料の高純度マルトースは、市販のβ−マルトース
含水結晶を使用してもよいし、常法に従って、澱粉を糖
化して調製してもよい。
高純度マルトースを澱粉から調製する方法としては、例
えば、特公昭56−11437号公報、特公昭56−17078号公報
などに開示されている糊化又は液化澱粉にβ−アミラー
ゼを作用させ、生成するマルトースを高分子デキストリ
ンから分離し、高純度マルトースを採取する方法、また
は、例えば、特公昭47−13089号公報、特公昭54−3938
号広報などに開示されている糊化又は液化澱粉にイソア
ミラーゼ、プルラナーゼなどの澱粉枝切酵素とβ−アミ
ラーゼとを作用させて高純度マルトースを採取する方法
などがある。
更に、これら方法で得られる高純度マルトースに含まれ
るマルトトリオースなどの夾雑糖類に、例えば、特公昭
56−28153号公報、特公昭57−3356号公報、特公昭56−2
8154号公報などに開示されている酵素を作用させてマル
トースを生成するか、さらには、例えば、特開昭58−23
799号公報などに開示されている塩型強酸性カチオン交
換樹脂を用いるカラム分画法により夾雑糖類を除去する
などの方法によりマルトース純度を更に高めることも好
都合である。また、この分画法は、固定床方式、移動床
方式、擬似移動床方式であってもよい。
このようにして得られる固形物当り85w/w%以上の高純
度マルトースから結晶性α−マルトース粉末を製造する
には、例えば、これら高純度マルトースを水分約10w/w
%未満、望ましくは、2.0w/w%以上9.5w/w%未満の高濃
度シラップとし、このシラップを種晶共存下で50℃乃至
130℃の温度範囲に維持しつつ結晶性α−マルトースを
晶出させて製造すればよい。
結晶性α−マルトースは、水分10w/w%以上では、実質
的に晶出せず、特に水分12w/w%以上25w/w%未満では、
むしろ、種晶の結晶性α−マルトースが溶解消失しやす
いだけでなく、β−マルトース含水結晶の方が晶出しや
すいことが判明した。また、水分2.0w/w%未満の高濃度
シラップからの結晶性α−マルトースの晶出は比較的遅
いことが判明した。
また、晶出時の温度については、50℃乃至130℃の範囲
が望ましく、とりわけ60℃乃至120℃が好適である。50
℃未満の温度では結晶性α−マルトースの晶出がきわめ
て遅く、工業的実施においては不適当であることが判明
した。
また、130℃を越える温度では、晶出が遅いばかりでな
く、晶出中の着色がいちじるしく、結晶性α−マルトー
ス粉末の製法として不適当であることが判明した。
従って、結晶性α−マルトースを晶出させるには、高純
度マルトースの水分10w/w%未満の高濃度シラップを、
種晶共存下で50℃乃至130℃の温度範囲に維持しつつ晶
出させることが肝要である。この際、高純度マルトース
を水分10w/w%未満の高濃度シラップにする方法は、例
えば、マルトース含量が固形物当り85w/w%以上の市販
のβ−マルトース含水結晶を少量の水に加熱溶解して水
分10w/w%未満の高濃度シラップとしてもよいし、ま
た、澱粉を糖化して得られるマルトース含量が固形物当
り85w/w%以上の高純度マルトース水溶液を、減圧濃縮
して水分10w/w%未満の高濃度シラップとしてもよい
し、更に、これら高純度マルトースにおける水分10w/w
%以上35w/w%未満の水溶液を噴霧乾燥法などにより水
分10w/w%未満の高濃度シラップ滴としてもよい。
また、種晶共存下で結晶性α−マルトースを晶出せしめ
るということは、高純度マルトースの高濃度シラップ固
形物に対して、通常、0.001w/w%以上100w/w%未満、望
ましくは、0.1w/w%以上20w/w%未満の結晶性α−マル
トースの種晶を共存せしめて結晶性α−マルトースが晶
出できればよく、その方法としては、例えば、高純度マ
ルトースの水分10w/w%未満の高濃度シラップに種晶を
混捏して晶出させるか、又は、高純度マルトースの水分
10w/w%以上20w/w%未満のシラップに種晶を混合し、こ
の種晶が溶解、消失しない間に噴霧乾燥法などにより水
分10w/w%未満の高濃度シラップ滴にして晶出させる
か、更には高純度マルトースの水分10w/w%以上35w/w%
未満のシラップを噴霧乾燥法などにより水分10w/w%未
満のシラップ滴とし、これに種晶を接触せしめて晶出さ
せるなどの方法が適宜選択できる。
また、前記方法に加えて、加圧下で晶出を促進させるこ
とも有利に実施できる。とりわけ、結晶性α−マルトー
スの起晶時、助晶時に約5Kg/cm2以上加圧するのが好都
合である。従って、加圧、圧縮を必要とする例えば、押
出し造粒機などにによる結晶性α−マルトース粉末の製
造方法は有利に実施できる。
また、晶出中のマスキットを、乾燥させながら晶出を促
進させることも有利に実施できることが判明した。乾燥
方法としては、常圧下、減圧下又は加圧下で、また、静
置状態、流動状態など適宜選択できる。
これらの結晶性α−マルトースの晶出を促進させる方法
は、本発明の光学異性体α−マルトース含量が55w/w%
以上に達するまでの時間を約4/5〜2/5にも短縮すること
ができ、結晶性α−マルトース粉末の製造能率を高める
だけでなく、結晶性α−マルトース粉末の着色度を極度
に低減させ、高品質結晶性α−マルトース粉末の大量製
造方法として好都合である。
また、これらの方法を二種以上組み合せた方法、例え
ば、高純度マルトースの水分10w/w%未満の高濃度シラ
ップから前記方法などにより助晶して、光学異性体α−
マルトース含量が48w/w%を越えるマスキットとし、次
いで、粉末、ストランド、ブロック等の各種形状に成形
し、更に、50℃乃至130℃の温度範囲に維持しつつ晶出
乾燥させながら熟成して光学異性体α−マルトース含量
が55w/w%以上の結晶性α−マルトース粉末を製造する
方法もきわめて有利に実施することができる。
また、熟成条件としては、通常、50℃乃至100℃の温度
範囲では、約0.1乃至24時間、100℃を越え130℃の温度
範囲では約0.5乃至18時間が望ましく、これ以上高温、
長時間の苛酷な条件にすると、得られる結晶性α−マル
トース粉末の着色度が増して商品価値が損なわれること
が判明した。熟成中に、加圧下でおよび/又は乾燥させ
ながら晶出させることは、結晶性α−マルトースの晶出
を促進し、熟成時間を大幅に短縮することができるの
で、結晶性α−マルトース粉末の大量製造方法として好
都合である。
また、光学異性体α−マルトース含量が55w/w%以上の
結晶性α−マルトース粉末を製造する方法としては、例
えば、押出し造粒方法、ブロック粉砕方法、噴霧乾燥方
法、流動造粒方法などがある。
押出し造粒方法の場合には、例えば、高純度マルトース
の水分10w/w%未満の高濃度シラップを50℃乃至130℃の
温度範囲に維持しつつ、これに結晶性α−マルトースの
種晶を混捏し助晶して、光学異性体α−マルトースの含
量が48w/w%を越えるマスキットとし、これを押出し造
粒機にかけ得られる顆粒状マスキット又は顆粒状粉末
を、50℃乃至130℃の温度範囲に維持しつつ乾燥させな
がら晶出熟成し、光学異性体α−マルトース含量が55w/
w%以上の結晶性α−マルトース粉末を採取する。
また、高純度マルトースの水分10w/w%未満の高濃度シ
ラップを、種晶を共存せしめることなく押出し造粒機に
かけ、得られる高濃度シラップ滴に結晶性α−マルトー
スの種晶を接触せしめ、50℃乃至130℃の温度範囲に維
持しつつ、乾燥させながら晶出熟成し、光学異性体α−
マルトース含量が55w/w%以上の結晶性α−マルトース
粉末を採取することもできる。
ブロック粉砕方法の場合には、例えば、高純度マルトー
スの水分10w/w%未満の高濃度シラップを助晶機にと
り、50℃乃至130℃の温度範囲に維持しつつ、これに結
晶性α−マルトースの種晶を混合し助晶して、光学異性
体α−マルトースの含量が48w/w%を越えるマスキット
とし、これを、例えば、アルミ製バットにとり出し、50
℃乃至130℃の温度範囲に維持しつつ晶出固化させ、得
られるブロックを、切削機、ハンマーミルなどで粉砕
し、乾燥、篩別して、光学異性体α−マルトース含量が
55w/w%以上の結晶性α−マルトース粉末を採取する。
噴霧乾燥方法の場合には、例えば、高純度マルトースの
水分約10w/w%以上20w/w%未満のシラップに結晶性α−
マルトースの種晶を混合し、この種晶が溶解、消失しな
いようできるだけ迅速に、高圧ノズル法又は回転円盤法
などにより噴霧乾燥して、水分10w/w%未満のシラップ
滴とし、この滴を50℃乃至130℃の温度範囲に維持しつ
つ乾燥させながら晶出熟成し、光学異性体α−マルトー
ス含量が55w/w%以上の結晶性α−マルトース粉末を採
取する。
また、流動造粒方法の場合には、例えば、高純度マルト
ースの水分15w/w%以上35w/w%未満のシラップを、予じ
め流動させている結晶性α−マルトースの種晶に向け
て、水分10w/w%未満の高濃度シラップ滴になるように
噴霧乾燥し、これを50℃乃至130℃の温度範囲に維持し
つつ乾燥させながら晶出熟成し、光学異性体α−マルト
ース含量が55w/w%以上の結晶性α−マルトース粉末を
採取する。
また、上述のようにして得られる結晶性α−マルトース
の一部を連続的に種晶に回して、結晶性α−マルトース
の製造を連続的に行なうことも有利に実施できる。
このようにして製造される本発明の光学異性体α−マル
トース含量が55w/w%以上の結晶性α−マルトース粉末
は、上品な低甘味を有する白色粉末で、その水分は低
く、実質的に無水で、カールフィッシャー法により通常
3w/w%未満、望ましくは、2w/w%未満で、また、その流
動性は粉末粒子の形状、大きさ、光学異性体α−マルト
ース含量の違いなどによって多少異なるが、実質的に流
動性である。
また、その融点は、β−マルトース含水結晶の121〜125
℃よりもはるかに高く、130℃以上、とりわけ、光学異
性体α−マルトース含量が60w/w%以上の結晶性α−マ
ルトース粉末の場合には、約140℃以上で粘着、固結の
懸念もなく、流動性充分な結晶性粉末である。
このようにして得られる結晶性α−マルトース粉末は、
これを、例えば、食品、医薬品、化粧品、工業化学品な
どの含水物に含有させると、それに含まれる水分をβ−
マルトース含水結晶の結晶水として捕捉、固定し、含水
物に対して強力な脱水剤として作用することが判明し
た。
結晶性α−マルトースは、従来市販されているβ−マル
トース含水結晶(林原株式会社、登録商標 サンマル
ト)とは違って、水のみならず、有機酸水溶液、塩類水
溶液、蛋白質水溶液、乳化液、アルコール水溶液などの
各種水溶液に速やかに高濃度に溶解し得ることが判明し
た。この性質は、結晶性α−マルトースを脱水剤として
利用し、各種含水物から水分の低減された種々の脱水物
品を製造する上で好都合である。
本発明の脱水剤が有利に適用できるものとしては、防湿
容器内の雰囲気を除湿、乾燥する場合、更には、加熱乾
燥、真空乾燥などの工程で変質劣化を伴い易い含水物ま
たは乾燥困難な含水物などから高品質のマスキット状、
粉末状などの脱水物品を製造する場合などがある。
除湿、乾燥する場合としては、例えば、乾燥栄養剤など
の吸湿防止に利用できるのみならず、更には、吸湿して
固結し易い粉末状物、例えば、粉末酵母エキス、粉末ミ
ルク、粉末ヨーグルト、粉末チーズ、粉末ジュース、粉
末ハーブ、粉末ビタミン、顆粒スープ、顆粒ブイヨン、
魚粉、血粉、骨粉、粉末乳酸菌剤、粉末酵素剤、顆粒消
化剤などの粉末状物に結晶性α−マルトースを配合して
包装封入することにより、包装容器内部の相対湿度を低
減させ、粉末状物の付着、固結を防止できるので、製造
直後の流動性良好な高品質を長期間維持するなどの目的
にも利用することができる。
また、含水物を脱水する場合としては、例えば、動物、
植物、微生物由来の器官、組織、細胞、磨砕物、抽出
物、成分、またはこれらからの調製物など各種含水物を
脱水する場合に有利に利用できる。
例えば、栄養剤、その原材料または加工中間物の場合に
は、生果、ジュース、野菜エキス、豆乳、ナッツペース
ト、糊化澱粉ペーストなどの農産品、生卵、レシチン、
牛乳、生クリーム、ヨーグルト、バター、チーズなどの
畜産品、ウニペースト、カキエキス、イワシペーストな
どの水産品、メープルシラップ、蜂蜜などの甘味料、日
本酒、ワイン、薬用酒などの酒類など、液状乃至ペース
ト状物から、安定で高品質の脱水栄養剤を容易に製造す
ることができる。
また、生理活性物質剤、その原材料または加工中間物の
場合には、インターフェロン、リンホトキシン、ツモア
ネクロシス ファクター、マクロファージ遊走阻止因
子、コロニー刺激因子、トランスファーファクター、イ
ンターロイキンIIなどのリンホカイン含有液、インシュ
リン、成長ホルモン、プロラクチン、エリトロポエチ
ン、卵胞刺激ホルモンなどのホルモン含有液、BCGワク
チン、日本脳炎ワクチン、はしかワクチン、ポリオ生ワ
クチン、痘苗、破傷風トキソイド、ハブ抗毒素、ヒト免
疫グロブリンなどの生物製剤含有液、ペニシリン、エリ
スロマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリ
ン、ストレプトマイシン、硫酸カナマイシンなどの抗生
物質含有液、チアミン、リボフラビン、アスコルビン
酸、肝油、カロチノイド、エルゴステロール、トコフェ
ロールなどのビタミン含有液、リパーゼ、エラスター
ゼ、ウロキナーゼ、プロテアーゼ、β−アミラーゼ、イ
ソアミラーゼ、グルカナーゼ,ラクターゼなどの酵素含
有液、薬用人参エキス、スッポンエキス、クロレラエキ
スなどのエキス類、ウィルス,乳酸菌、酵母などの生菌
ペースト、ローヤルゼリーなどの液状乃至ペースト状物
も、その有効成分、活性を失うことなく、安定で高品質
の脱水生理活性物質剤を容易に製造できる。
また、前記生卵、レシチン、生クリーム、蜂蜜、甘草エ
キス、香料、着色料、酵素などを脱水すれば、高品質の
美肌剤、美毛剤、育毛剤などとして有利に利用できる。
また、乾燥物品が酵素の場合には、食品、医薬品、工業
原料などの加工用触媒として、また、治療剤、消化剤な
どとして、更には酵素洗剤などとしても有利に利用でき
る。
含水物に結晶性α−マルトースを含有させる方法として
は、目的の脱水物品が完成されるまでに、例えば、混
和、混捏、溶解、浸透、散布、塗布、噴霧、注入などの
公知の方法が適宜に選ばれる。
含水物に対する結晶性α−マルトースを含有させる量
は、含水物に含まれる水分量と目的とする脱水物品の性
状によっても変り、必要ならば、含水物を他の公知の方
法で部分的に脱水または濃縮した後に、結晶性α−マル
トースを含有させてもよく、通常、含水物1重量部に対
して、0.01〜500重量部、望ましくは0.1〜100重量部で
ある。この際、得られる医薬品の品質を更に向上させる
ため、適宜な着香料、着色料、呈味料、安定剤、増量剤
などを併用することも有利に実施できる。
とりわけ、安定剤については、本発明が結晶性α−マル
トースによる強力な脱水方法であることから、抗酸化剤
などの低分子化合物に限る必要はなく、従来、乾燥が困
難とされていた水溶性高分子化合物、例えば、可溶性澱
粉、デキストリン、シクロデキストリン、ブルラン、エ
ルシナン、デキストラン、ザンタンガム、アラビアガ
ム、ローカストビーンガム、グアガム、トラガカントガ
ム、タマリンドガム、カルボキシメチルセルロース、ヒ
ドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルスター
チ、ペクチン、寒天、ゼラチン、アルブミン、カゼイン
などの物質も安定剤として有利に利用できる。
これら水溶性高分子化合物を用いる場合には、例えば、
液状乃至ペースト状含水物に、予じめ水溶性高分子化合
物を均一に溶解せしめ、次いで、これに結晶性α−マル
トースを混和、混捏などの方法で均一に含有させること
により、微細なβ−マルトース含水結晶を析出せしめた
脱水物品が得られる。本品は含水物由来の香気成分、有
効成分などが水溶性高分子化合物の皮膜で被覆されてい
るか、または該皮膜で囲まれたマイクロカプセル中に微
細なβ−マルトース含水結晶とともに内包されており、
また、シクロデキストリンを用いる場合には包接化合物
などを形成して、その揮散、品質劣化が防止されること
から、含水物由来の香気成分、有効成分の安定保持にき
わめて優れている。シクロデキストリンとしては、高純
度のものに限る必要はなく、乾燥しにくく粉末化の困難
な低純度のシクロデキストリン、例えば、多量のマルト
デキストリンとともに各種シクロデキストリンを含有し
た水飴状の澱粉部分加水分解物なども有利に利用でき
る。
本発明の脱水物品、とりわけ、粉末状物品を製造する方
法は、種々の方法が採用できる。例えば、医薬品、それ
らの原材料または加工中間物などの比較的高水分の含水
物に、結晶性α−マルトースを水分約30w/w%以下望ま
しくは約5〜25w/w%になるように均一に含有せしめた
後、バットなどに約1〜10日間、約10〜50℃、例えば室
温に放置し、β−マルトース含水結晶に変換させて、例
えばブロック状に固化し、これを切削、粉砕などの方法
により製造すればよい。必要ならば、切削、粉砕などの
粉末化工程の後に乾燥工程、分級工程などを加えること
もできる。
また、噴霧方法などにより、直接、粉末品を製造するこ
ともできる。例えば、結晶性α−マルトース粉末を流動
させながら、これに液状乃至ペースト状の含水物を所定
量噴霧して接触せしめて造粒し、次いで、約30〜60℃で
約1〜24時間熟成してβ−マルトース含水結晶に変換せ
しめるか、または、結晶性α−マルトースを液状乃至ペ
ースト状含水物に混和、混捏などした後、これを直ち
に、若しくはβ−マルトース含水結晶への変換を開始さ
せて噴霧し得られる粉末品を、同様に熟成し、β−マル
トース含水結晶に変換せしめて粉末品を製造する方法
は、大量生産方法として好適である。
この噴霧方法の場合に、結晶性α−マルトースのβ−マ
ルトース含水結晶への変換を促進するため、結晶性α−
マルトースに対して、0.01〜10w/w%程度のβ−マルト
ース含水結晶の種晶を共存させて、その熟成期間を短縮
することも有利に実施できる。必要ならば、脱水剤の利
用と共に、公知の乾燥方法を併用することも随意であ
る。
このようにして得られた粉末状脱水医薬品は、そのまま
で、または必要に応じて、増量剤、賦形剤、結合剤、安
定剤などを併用して、更には、顆粒、錠剤、カプセル
剤、棒状、板状、立方体形など適宜な形状に成形して利
用することも自由にできる。
また、顆粒、素錠などの医薬中間物などを芯として、こ
れに結晶性α−マルトースの約70〜95w/w%水溶液、望
ましくは、水溶性高分子などの結合剤を適量共存させた
水溶液をコーティングし、次いで、β−マルトース含水
結晶に変換し晶出させて糖衣物を製造することも有利に
実施できる。
また、高水分含水物に結晶性α−マルトースを混和、混
捏などの方法で含有させたものは、結晶性α−マルトー
スがβ−マルトース含水結晶に変換し脱水する際に、β
−マルトース含水結晶への変換につれてその体積を膨張
する。膨張が著しい場合には、約1.5〜4.0倍にも達す
る。このように、膨張して固化したものは、膨張の少い
ものと比較して硬度が低く、粉末化が容易であり、切削
機、粉砕機などの摩耗も少なく、動力用電力の消費量も
大幅に節約できる特徴を有している。
また、この膨張現象を利用して、各種形状の脱水物品が
製造できる。例えば、花、鳥、魚、人形など種々の形状
をしたプラスチック製容器などに、結晶性α−マルトー
スを含有させた高水分含水物を採り、約5〜90時間、室
温に放置し、膨張、固化させることによって、各種形状
の脱水物品が得られる。必要ならば、この膨張を更に促
進するために、アルコールなどの気化しやすい溶媒、炭
酸ガスなどを発生する発泡剤などを結晶性α−マルトー
スとともに含有させ、わずかに加熱することも、また、
β−マルトース含水結晶への変換を促進しその時間を短
縮するために、蒸気雰囲気にさらすこともできる。
このようにして得られた各種形状の脱水物品は、その形
状を楽しむことができる医薬品などに有利に利用でき
る。
また、一般に、澱粉は、その膨潤、糊化のために、多量
の水分を必要としている。従って、糊化澱粉は、きわめ
て微生物汚染を受け易い。結晶性α−マルトースは、こ
のような糊化澱粉の脱水剤としても有利に利用できる。
例えば、求肥などの糊化澱粉は、これに結晶性α−マル
トースを含有させβ−マルトース含水結晶に変換させる
ことにより、実質的に水分が低減され、微生物汚染を防
止することができる。
また、結晶性α−マルトースは、糊化澱粉に対して容
易、均一に混和し、老化防止剤としても作用することか
ら、糊化澱粉を含有する各種加工栄養剤の商品寿命を大
幅に延長することができる。
また、結晶性α−マルトースは、例えば、特公昭52−48
198公報に開示されているマルトースシラップ粉末など
と違って、アルコールに対し高い親和性を示す。この性
質から、メタノール、エタノール、ブタノール、プロピ
レングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール
などのアルコールまたはアルコール可溶物などに含まれ
る水分の脱水剤としても有利に利用できる。例えば、薬
用酒などのアルコール含有含水物を結晶性α−マルトー
スで脱水し、生成したβ−マルトース含水結晶にその有
効成分、香気などを保持したマスキット状、粉末状など
の脱水医薬品を有利に製造することができる。
また、沃素などのアルコール溶液を結晶性α−マルトー
スと混合し、これに水溶性高分子などを含有する水溶液
を加えてβ−マルトース含水結晶に変換せしめることに
より、沃素などの有効成分を安定に保持し、かつ、適度
の粘度、延び、付着性を有するマスキット状の膏薬など
を製造することも有利に実施できる。
また、結晶性α−マルトースは、親水性糖質でありなが
ら、意外に大きな親油性を示す。
この性質から、結晶性α−マルトースは、油溶性物質、
乳化物、ラテックスなどに含まれる水分の脱水剤として
も有利に利用できる。
油溶性物質、例えば、大豆油、ナタネ油、辛油、ゴマ
油、サフラワー油、パーム油、カカオバター、牛脂、豚
脂、鶏油、魚油、硬化油などの油脂、柑橘類精油、花精
油、スバイス油、ペパーミント油、スペアミント油、コ
ーラナッツエクストラクト、コーヒーエクストラクトな
どの油溶性香辛料、β−カロチン、パプリカ色素、アナ
トー色素、クロロフィルなどの油溶性着色料、肝油、ビ
タミンA、ビタミンB2酪酸エステル、ビタミンE、ヒタ
ミンK、ヒタミンDなどの油溶性ビタミン、エストロゲ
ン、プロゲステロン、アンドロゲン、プロスタグランジ
ンなどの油溶性ホルモン、リノール酸、リノレン酸、ア
ラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン
酸などの高度不飽和脂肪酸などに含まれる微量の水分を
も強力に捕捉する脱水剤として有利に利用できる。
結晶性α−マルトースにより脱水された油溶性物質は、
高品質であり、加水分解、変敗などの品質劣化を受けに
くい特徴を有する。
また、結晶性α−マルトースに含水油溶性物質、乳化
物、ラテックスなどを含浸、混合などして結晶性α−マ
ルトースをβ−マルトース含水結晶に変換せしめ、粉末
状栄養剤、粉末状のビタミン、ホルモンなどの生理活性
物質剤などを製造することも有利に実施できる。
この場合には、結晶性α−マルトースは、脱水剤として
のみならず、β−マルトース含水結晶に変換されて安定
剤、保持剤、賦形剤、担体などとしても作用する。
また、チョコレート、サンドクリームなどの水分を嫌う
油溶性物質含有食品の場合にも、結晶性α−マルトース
は有利に利用される。この場合には、脱水剤としてのみ
ならず、加工適性、口溶け、風味などが良好になること
が利用される。更に、得られた製品が、その高品質を長
期にわたって安定に維持し得る特徴を有している。
以上述べたように、本発明は、結晶性α−マルトースが
各種含水物の水分を強力に脱水することを見いだしたこ
とによって達成されたものであり、その結晶性α−マル
トースを脱水剤として利用することにより、液状乃至ペ
ースト状などの含水物から、その風味、香気を劣化、揮
散させることなく、水分の低減された高品質の栄養剤
や、その有効成分、活性を分解、低下させることなく、
水分の低減された高品質の生理活性物質剤などの医薬品
を有利に製造することができる。
また、結晶性α−マルトースは、以上述べた特殊の場合
だけでなく、マルトース本来の天然甘味料であり、虫歯
誘発、血中コレステロールの増加などの懸念もなく、更
に、上品な甘味、ボディの付与、照りの付与、粘性、保
水性などの性質をも有しているので経口使用される栄養
剤などの製造に有利に利用できる。
また、結晶性α−マルトースは、マルトース本来の代謝
利用される栄養物である。
注射剤などとして非経口的に利用される場合には、グリ
コースと比較して2倍濃度で等張となることから、2倍
濃度でカロリー補給ができることとなり、手術時などの
大カロリーを必要とする際の栄養補給剤として好適であ
る。
以下、本発明を実験を用いて詳細に説明する。
実験1.原料マルトースの比較 原料マルトースは、第1表に示した林原株式会社製造の
各種澱粉糖商品を使用した。
商品名 マルスター 、HM−75などのシラップ品の場合
には、そのまま蒸発釜にとり、減圧下で煮つめて水分4.
5w/w%とした。
商品名 サンマルト 、マルトースH、マルトースHH、
マルトースHHHなどのβ−マルトース含水結晶などの粉
末品の場合には、少量の水で、加熱溶解し、次いで蒸発
釜にとり、減圧下で煮つめて水分4.5w/w%とした。
このようにして得られた水分約4.5w/w%の高濃度シラッ
プを助晶機に移し、これに予じめ、高純度β−マルトー
ス含水結晶(マルトースHHH)を約50w/v%熱メタノール
溶液から晶出採取した結晶性α−マルトースを、種晶と
して2w/w%加え、120℃で20分間撹拌助晶し、次いでア
ルミ製バットに取り出し、90℃で16時間熟成させブロッ
クを調製した。次いで、室温まで冷却し粉砕して粉末品
を得た。これら粉末品を用いて、C.C. Sweeley et al.,
J.Am. Chem. Soc., Vol. 85, 2497−2507(1963年)に
記載されている方法に準じてガスクロマトグラフィーを
行ない、マルトース中の光学異性体α−マルトースの含
量を求め、また、F.H. Stodola et al., J.Am. Chem. S
oc., Vol. 78, 2514−2518(1956年)に記載されている
方法に準じてX線回折装置(理学電機株式会社製造、商
品名 ガイガーフレックスRAD−IIB、Cu Kα線使用)を
用いて粉末X線回折を行ない結晶の有無を調べた。結果
は第1表に示す。そのX線回折図形を第1〜5図に示
す。第1図はα−マルトース含量48w/w%である非晶質
粉末の、第2図はα−マルトース含量55.6w/w%である
結晶性粉末の、第3図はα−マルトース含量61.4w/w%
である結晶性粉末の、第4図はα−マルトース含量68.7
w/w%である結晶性粉末の、第5図はα−マルトース含
量74.2w/w%である結晶性粉末のX線回折図形である。
なお、対照実験として、β−マルトース含水結晶(マル
トースHHH) を水に加熱溶解し、減圧乾燥粉末化した非晶質粉末のX
線回折を行ったところ、第1図と同じX線回折図形が得
られ、また、原料のβ−マルトース含水結晶(マルトー
スHHH)粉末のX線回折では、第6図のX線回折図形が
得られた。
第1表の結果から明らかなように、X線回折により新た
な結晶の析出が認められたものは、光学異性体α−マル
トースの含量が55w/w%以上を示し、その原料マルトー
スとしては、マルトース含量が固形物当り85w/w%以上
が必要であることが判明した。
実験2.親油性の比較 2−1 保油力の比較 実験1の方法で調製したテストNo.1〜8の標品及び砂糖
(テストNo.9)、乳糖(テストNo.10)を粒径約45〜150
μの粉末として保油力を比較した。保油力の測定は、特
開昭59−31650号公報に開示されている方法に準じて、
ナタネ油10gをビーカーに秤取し、撹拌しながら粉末糖
類を加えていく。この混合物は、粉末糖類の添加量が少
ない内は流動性を持っているが、その量が増すにつれて
粘稠度が増し、やがて一つの塊になる。更にその添加量
を増すと、固さが増し、やがて一つにまとまらなくなり
ほぐれはじめる。この点を終点として、次の式により保
油力を求めた。
結果は第2表に示す。
2−2 乳濁力の比較 実験2−1の方法で調製した粒径約45〜150μの各種糖
類の粉末を用いて乳濁力を比較した。
乳濁力の測定は、大豆油2gをビーカーにとり、これに各
種糖類粉末2gを加え、ガラス棒にて撹拌混合する。得ら
れた混合物を共栓付試験管に入れ、これに水30mlを加
え、手で軽く数回振って混合し、室温で1夜静置した。
これの水相を肉眼観察し、その白濁の強さを求めた。
なお、乳濁している水相を顕微鏡観察したところ、糖類
結晶粉末の存在は認められず、直径約2〜5μの多数の
油滴が観察されるだけであり、乳濁力の強いもの程、そ
の油滴数は多かった。
結果は第2表に示す。
第2表の結果から明らかなように、結晶性α−マルトー
ス粉末は保油力、乳濁力とも優り、著しい親油性を有し
ていることが判明した。
実験3.高純度マルトースシラップ水分の結晶性α−マル
トースの晶出に与える影響 原料マルトースは、林原株式会社製造のβ−マルトース
含水結晶粉末 商品名 マルトースHHH(マルトース含
量99.7w/w%)を用いて、高濃度シラップの水分が結晶
性α−マルトースの晶出に与える影響を調べた。
β−マルトース含水結晶粉末を少量の水に加熱溶解し、
次いで蒸発釜にとり、減圧下で煮つめ、各種水分のシラ
ップを調製し、これに結晶性α−マルトースの種晶をシ
ラップ固形物に対して2w/w%加え、100℃で5分間撹拌
助晶し、次いで、アルミ製バットに取り出し、70℃で6
時間熟成しブロックを調製した。これを室温まで冷却し
た後、光学異性体α−マルトース含量を測定した。
結果は第3表に示す。
第3表の結果から明らかなように、結晶性α−マルトー
スの晶出は、高純度マルトースのシラップ水分10w/w%
未満が望ましく、とりわけ、2.0w/w%以上9.5w/w%未満
のシラップが好適であることが判明した。
実験4 結晶性α−マルトースの晶出に与える温度の影
響 原料マルトースは、林原株式会社製造のβ−マルトース
含水結晶 商品名 マルトースH(マルトース含量91.5
w/w%)を用いて結晶性α−マルトースの晶出に与える
影響を調べた。
β−マルトース含水結晶粉末を少量の水に加熱溶解し、
次いで蒸発釜にとり、減圧下で煮つめて水分4.5w/w%の
シラップを調製し、これに結晶性α−マルトースの種晶
をシラップ固形物に対して2w/w%加え、100℃で5分間
撹拌助晶し、次いで、アルミ製バットに取り出し、20℃
乃至140℃の各温度に16時間晶出熟成してブロックを調
製し、次いで、光学異性体α−マルトース含量を測定し
た。
更に、これらブロックの着色度を測定した。着色度は、
30w/v%水溶液における10cmセルでの420nm及び720nmの
吸光度差(A420-720)で示した。
結果は第4表に示す。
第4表の結果から明らかなように、結晶性α−マルトー
スの晶出は、50℃乃至130℃の温度範囲が望ましく、と
りわけ、60℃乃至120℃の範囲が好適であることが判明
した。また、結晶性α−マルトースの着色度は、晶出温
度により異なり、130℃を越えるといちじるしく増大す
ることが判明した。すなわち、140℃で晶出させたもの
の着色度は、100℃以下の場合の約14乃至20倍、120℃の
場合の約7倍、130℃の場合の約3倍も着色することが
判明した。
実験5.各種糖類の脱水力の比較 無水ブドウ糖、砂糖、実験1のテストNo.5で調製した結
晶性α−マルトース、またはその原料のβ−マルトース
含水結晶を用いて、その粒径約100〜150μの粉末品と
し、直径5cmのプラスチック シャーレにそれぞれ1gず
つ採り、相対湿度70%に調湿された25℃の雰囲気に放置
し、経時的にこれら糖類の水分(%)を測定して、脱水
力の強さを比較した。
結果は、第5表に示す。
第5表の結果から明らかなように、結晶性α−マルトー
スは、その重量の約5w/w%の水分を捕捉するまで強力な
脱水剤として作用することが判明した。
また、各サンプルのX線回折図形を経時的に調べて比較
したところ、無水ブドウ糖、砂糖、β−マルトース含水
結晶には変化がなかった。しかし、結晶性α−マルトー
スについては、水分を捕捉して変化し、約5%の水分で
β−マルトース含水結晶に変換され、平衡水分に達して
安定化することが判明した。
また、同様にして、同じ結晶性α−マルトースを相対湿
度92%に調湿された25℃の雰囲気に置き、経時的にその
水分(%)を測定したところ、約5%水分でβ−マルト
ース含水結晶に変換した後も水分を取り込み、約18%水
分で平衡に達して安定化することが判明した。この場合
にも粉末状を維持し、濡れたり、流れたりする現象は見
られなかった。
この性質から、結晶性α−マルトースは、栄養剤、生理
活性物質剤などの医薬品、その原材料または加工中間物
などの脱水剤として有利に利用できる。
実験6.サンドクリームへの各種糖類の利用 各種糖類を用いてサンドクリームを調製し、その脱水作
用を比較した。
各種糖類としては、実験5で使用したものと同じものを
使用した。
調製方法は、ミキサーにショートニング425gをとり、こ
れに糖類500gを加えて混合し、次いで、予じめ大豆油
(白絞油)25gとカカオバター50gとを混合した溶融液を
加えてホイップしサンドクリームとした。
なお、糖類として、β−マルトース含水結晶を使用した
ものは、混合できず、サンドクリームが製造できなかっ
た。
得られたサンドクリームを相対湿度92%に調湿された29
℃の苛酷な雰囲気に放置し、経時的にその水分(%)を
測定し、サンドクリームの状態を観察した。
結果は、第6表に表す。
第6表の結果から明らかなように、相対湿度92%に調湿
された29℃の苛酷な条件下においても、結晶性α−マル
トースを使用したサンドクリームは型くずれせず、使用
した結晶性α−マルトースがβ−マルトース含水結晶に
変換され、雰囲気条件と平衡に達して安定化されること
が判明した。この事実から、調製したサンドクリーム
は、例えば、クッキー、ビスケットなどにはさんで防湿
容器などに保存することにより、雰囲気中の水分を捕捉
し、脱水して、雰囲気の相対湿度を低減するだけでな
く、サンドクリーム自身の品質劣化を起すことなく、長
期に安定に維持し得ることも判明した。この性質は、油
溶性物質を含有する医薬品の製造に有利に利用できる。
実験7 糊化澱粉に対する糖質の比較 もち粉400gを水600mlで溶いて、木枠に濡れ布きんを敷
いたものに流し込み、これを105℃で10分間蒸して糊化
澱粉とする。
これに、実験1のテストNo.5で調製した結晶性α−マル
トース、またはその原料であるβ−マルトース含水結晶
の800gをミキサーで混和し、均一になったら、更に水飴
200gを加え充分に捏ねて成形し、更に40℃の温風で2時
間軽く乾燥して求肥を得た。
本品を25℃の室内に開放して放置したところ、β−マル
トース含水結晶を使用したものは、12日後に黒かびのコ
ロニーの発生を見たが、結晶性α−マルトースを使用し
たものは、20日後においても微生物の汚染が見られなか
った。
また、20日後のものを切断して、その断面を観察したと
ころ、結晶性α−マルトースを使用したものは、表層部
がやや硬化して結晶が析出しているものの、内部は製造
直後と同様に半透明で、適度な艶、粘度を有していた。
なお表層部の結晶は、X線回折図形から結晶性α−マル
トースがβ−マルトース含水結晶に変換しているもので
あることが判明した。
これに対して、β−マルトース含水結晶を使用したもの
は、表面にかびが発生したばかりか、その断面も全層に
わたって白濁しており、艶もなかった。
この結果、結晶性α−マルトースは、糊化澱粉の脱水剤
として作用し、微生物汚染を防止し、更に糊化澱粉の老
化を防止することが判明した。
この性質は、糊化澱粉を含有する医薬品の製造に有利に
利用できる。
以下、結晶性α−マルトース粉末の製造方法を参考例で
述べる。
参考例 1 馬鈴薯澱粉1重量部と水10重量部との懸濁液に市販の細
菌液化型α−アミラーゼを加え90℃に加熱糊化し、直ち
に130℃に加熱して酵素反応を止め、DE約0.5の液化液を
得た。この澱粉液化液を55℃まで急冷してシュードモナ
ス・アミロデラサ(Pseudomonas amyloderamosa)ATCC2
1262の培養液から調製したイソアミラーゼ(EC3.2.1.6
8)を澱粉瓦当り100単位と、大豆由来のβ−アミラーゼ
(EC3.2.1.2)(長瀬産業(株)製、商品名#1500)を
同じく50単位とを加えpH5.0に保って40時間糖化し、マ
ルトース含量が固形物当り92.5w/w%の高純度マルトー
ス液を得、これを活性炭で脱色し、イオン交換樹脂で脱
塩精製した。本マルトース溶液を濃度75%に濃縮した
後、助晶缶にとり、β−マルトース・モノハイドレイト
結晶の粉末種晶1%を加え40℃とし、ゆっくり撹拌しつ
つ徐冷して、2日間を要して30℃まで下げ、バスケット
型遠心機で分蜜し、結晶を少量の水でスプレーし洗浄し
て純度99.0%の高純度β−マルトース含水結晶を得た。
このようにして得られた高純度マルトースを少量の水で
加熱溶解し、次いで蒸発釜にとり、減圧下で煮つめ、水
分5.5w/w%のシラップとした。次いで、助晶機に移し、
これに実験1、テストNo.6の方法で得た結晶性α−マル
トースをシラップ固形物当り1w/w%加え、100℃で5分
間撹拌助晶し、次いで、プラスチック製バットに取り出
し、70℃で6時間晶出熟成させてブロックを調製した。
次いで、本ブロックを切削機にて粉砕し、流動乾燥し
て、光学異性体α−マルトース含量が73.3w/w%、水分
0.42w/w%の結晶性α−マルトース粉末を、原料の高純
度β−マルトース含水結晶に対して約92w/w%の収率で
得た。
本品は、本発明の医薬品、その原材料または加工中間物
などの含水物の脱水剤として有利に利用できる。
参考例 2 参考例1の方法で調製したマルトース含量が固形物当り
92.5w/w%の高純度マルトース水溶液を、水分20w/w%に
減圧濃縮し、次いで噴霧乾燥塔の上部より高圧ポンプに
てノズルから噴霧し、100℃の熱風にて乾燥しつつ、乾
燥塔底部の移動金網コンベア上で、予じめ、流動させて
いる結晶性α−マルトース粉末上に落下せしめ、コンベ
アの下より70℃の温風を送りつつ、乾燥塔外に徐々に移
動させ、60分を要して取り出した粉末を熟成塔に充填し
て70℃の温風を通気しつつ4時間晶出熟成させて、光学
異性体α−マルトース含量が66.2w/w%、水分0.55w/w%
の結晶性α−マルトース粉末を原料の高純度マルトース
に対して約94%の収率で得た。
本品は、参考例1の方法で得られた結晶性α−マルトー
ス粉末と同様に、各種含水物の脱水剤として有利に利用
できる。
参考例 3 コンスターチ2重量部と水10重量部との懸濁液に、市販
の細菌液化型α−アミラーゼを加え、90℃に加熱糊化し
た後、130℃に加熱して酵素反応を止め、DE約2の液化
液とし、この澱粉液化液を55℃に急冷してシュードモナ
ス・アミロデラモサ(Pseudomonas amyloderamosa)ATC
C21262の培養液から調製したイソアミラーゼ(EC3.2.1.
68)を澱粉瓦当り120単位と、大豆由来のβ−アミラー
ゼを同じく30単位とを加え、pH5.0に保って36時間糖化
し、参考例1と同様に精製して、マルトース含量が88.6
w/w%の高純度マルトース溶液を得、次いで、減圧濃縮
して水分3.5w/w%のシラップとした。
次いで、助晶機に移し、これに参考例2の方法で得た結
晶性α−マルトースを、シラップ固形物当り2.5w/w%加
え、120℃で10分間撹拌助晶し、次いで、アルミ製バッ
トに取り出し、70℃で18時間晶出熟成させ、以後、参考
例1と同様に粉砕、乾燥し、光学異性体α−マルトース
含量が63.9w/w%,水分0.60w/w%の結晶性α−マルトー
ス粉末を、原料の高純度マルトースに対して約94%の収
率で得た。
本品は、参考例1の方法で得られた結晶性α−マルトー
ス粉末と同様に、各種含水物の脱水剤として有利に利用
できる。
参考例 4 マルトース含有量79.6%の澱粉糖液(林原株式会社製
造、商品名 HM−75)を濃度45w/w%水溶液にして原糖
液とした。分画用樹脂は、アルカリ金属型強酸性カチオ
ン交換樹脂(東京有機化学工業社製造、商品名 XT−10
22E、Na+型)を使用し、内径5.4cmのジャケット付ステ
ンレス製カラムに水懸濁液状で充填した。この際、樹脂
層長5mのカラム4本に充填し、その液が直列に流れるよ
うにカラム4本を連結して樹脂層全長20mとした。
カラム内温度を55℃に維持しつつ、原糖液を樹脂に対し
て5v/v%加え、これに55℃の温水をSV0.13の流速で流し
て分画し、マルトース高含有画分を採取し、マルトース
含量固形物当り94.4w/w%の高純度マルトース溶液を得
た。
上述の分画処理を20回行って集めた高純度マルトース溶
液を減圧濃縮して水分4.0w/w%のシラップとし、助晶機
に移し、参考例2の方法で得た結晶性α−マルトースを
シラップ固形物当り2.0w/w%加え、110℃で20分間撹拌
助晶し、次いで、スクリュー型押出し造粒機にかけて顆
粒状粉末とし、乾燥室に移し80℃の熱風で2時間乾燥さ
せながら晶出熟成させ、光学異性体α−マルトース含量
が69.2w/w%,水分0.48w/w%の結晶性α−マルトース粉
末を、原料の高純度マルトースに対して約93%の収率で
得た。
本品は、参考例1の方法で得られた結晶性α−マルトー
ス粉末と同様に、各種含水物の脱水剤として有利に利用
できる。
以下、本発明の実施例、及び優れた効果について述べ
る。
実施例1 そぼろ風求肥 もち粉4Kgを水6で溶いて木枠に濡れ布きんを敷いた
ものに流し込み、これを100℃で20分間蒸した後、これ
に参考例1の方法で得た結晶性α−マルトース粉末8Kg
および砂糖1Kgを捏り込み、次いで水飴1Kgを加えて充分
に捏ねた後に成形し、更に、室内に16時間放置して、本
品の表層部分において結晶性α−マルトースをβ−マル
トース含水結晶に変換させ、これを軽くロール掛けして
表面をひび割れさせ、そぼろ風の求肥を得た。
本品は、風味良好で、微生物汚染を受けにくく、高品質
を長期間にわたって維持した。本品は、消化吸収もよ
く、病後の栄養補給剤などとして好適である。
実施例2 粉末卵黄 生卵から調製した卵黄を、プレート式加熱殺菌機で60〜
64℃で殺菌し、得られる液状卵黄1重量部に対して、参
考例4の方法で得られた結晶性α−マルトース粉末4重
量部の割合で混合し、バットに移し、2日間放置してβ
−マルトース含水結晶に変換させブロックを調製した。
本ブロックを切削機にかけて粉末化し、分級して粉末黄
卵を得た。
本品は、経口流動食、経管流動食などの栄養剤として有
利に利用できる。
また、美肌剤、育毛剤などとして有利に利用できる。
本品を、流動食用固体製剤の栄養剤として利用する場合
を例示すれば、次の通りである。
参考例1の方法で得られた結晶性α−マルトース500重
量部、この実施例で得られた粉末卵黄270重量部、脱脂
粉乳209重量部、塩化ナトリウム4.4重量部、塩化カリウ
ム1.85重量部、硫酸マグネシウム4重量部、チアミン0.
01重量部、アスコルビン酸ナトリウム0.1重量部、ビタ
ミンEアセテート0.6重量部及びニコチン酸アミド0.04
重量部からなる配合物を調製し、この配合物25gずつを
防湿性ラミネート小袋に充填し、ヒートシールして流動
食用固体製剤を製造することができた。
この固体製剤は、小袋内雰囲気の水分を低減し、低温貯
蔵の必要もなく、室温下で長時間安定である。
また、水に対する分散、溶解は良好である。
この固体製剤は、1袋分を約150〜300mlの水に溶解して
流動食とし、経口的、または鼻腔、胃、腸などへの経管
的投与により利用される。
実施例3 粉末薬用酒 薬用酒2にプルラン10gを溶解し、これに参考例3の
方法で得た結晶性α−マルトース粉末10Kgを混合した
後、実施例2と同様にブロック化し、粉末化して粉末薬
用酒を得た。
本品は、薬効も充分で、携帯に好都合である。
また、本粉末を、顆粒成形機、打錠機にかけて成形し、
顆粒、錠剤として利用することも有利に実施し得る。
実施例4 粉末バター バター10Kgに参考例2の方法で得られた結晶性α−マル
トース粉末20Kgをミキサーで混合した後、実施例2と同
様にブロック化し、粉末化して粉末バターを得た。
本品は、経口流動食、経管流動食などの治療用栄養剤な
どとして有利に利用できる。
実施例5 粉末クリーム 生クリーム2Kgに参考例3の方法で得られた結晶性α−
マルトース粉末8Kgを混合した後、実施例2と同様にブ
ロック化し、粉末化して粉末クリームを得た。
本品は、風味良好な粉末クリームで、経口流動食、経管
流動食などの治療用栄養剤などとして有利に利用でき
る。
また、美肌剤、美毛剤などとしても有利に利用できる。
実施例6 粉末ヨーグルト プレーンヨーグルト2Kgに参考例4の方法で得られた結
晶性α−マルトース粉末10Kgを混合した後、実施例2と
同様にブロック化し、粉末化して粉末ヨーグルトを得
た。
本品は、風味良好であるだけでなく、乳酸菌を生きたま
ま長期に安定化し得る。従って、本品は生菌整腸剤とし
て、また、経口流動食、経管流動食など治療用栄養剤と
して有利に利用できる。
さらに、本粉末を顆粒成形機、打錠機などで成形して乳
酸菌製剤とし、整腸剤などとして利用することも有利に
実施できる。
実施例7 粉末薬用人参エキス 薬用人参エキス500gに参考例1の方法で得られた結晶性
α−マルトース粉末1.5Kgを混捏した後、実施例2と同
様にブロック化し、粉末化して粉末薬用人参エキスを得
た。
本品を適量のビタミンB1およびビタミンB2粉末とともに
顆粒成形機にかけ、ビタミン含有顆粒状薬用人参エキス
とした。
本品は、疲労回復剤、強壮、強精剤などとして有利に利
用できる。また、育毛剤などとしても利用できる。
実施例8 固体製剤 新生児のハムスターに、ウサギから公知の方法で調製し
た抗血清を注射して、ハムスターの免疫反応を弱めた
後、その皮下にBALL−1細胞を移植し、その後通常の方
法で3週間飼育した。皮下に生じた腫瘤を摘出して細切
し、生理食塩水中で分散させてほぐした。得られた細胞
を血清無添加のRPMI 1640培地(pH7.2)で洗浄し、同
培地に約2×106/mlになるよう懸濁し、35℃に保った。
これに部分精製したヒトインターフェロンを200U/mlの
割合で加えて約2時間保った後、更に、センダイウイル
スを約300赤血球凝集価/mlの割合で添加し、20時間保っ
てヒトインターフェロンを誘導させた。これを、約4
℃、約1,000gで遠心分離して沈澱物を除去し、得られた
上清を、更に精密過し、その液を、公知の方法に従
って、抗インターフェロン抗体を固定化している抗体カ
ラムにかけ、非吸着画分を除去した後、その吸着面分を
溶出し、膜濃縮して濃度約0.01w/v%、比活性約1.5×10
8Uの濃縮液をハムスター一匹当り約4mlの収率で得た。
参考例1の方法で得られたパイロゲンフリーの結晶性α
−マルトース8gずつを100ml容防湿性プラスチックボト
ルに採り、これに先きに得られたインターフェロン濃縮
液0.2ml(約300万U)ずつを入れ、無菌的にゴム栓、キ
ャップシールして固体製剤を得た。
本製造方法は、インターフェロン含有液を結晶性α−マ
ルトース粉末にたらすだけで脱水されるので、凍結乾燥
などのための処理、装置、エネルギーなどを必要としな
いばかりか、インターフェロンの安定化にも効果的であ
る。
本品は、水に対して易溶であることから、検査用試薬
や、抗ウィルス剤、抗腫瘍剤などとして、皮下、筋肉、
静脈などへの注射剤として有利に利用できる。また、本
品を、内服用剤、口腔用剤などに利用することも有利に
実施できる。
なお、ヒトインターフェロンの活性は、FL細胞を使用す
る公知のプラーク半減法で測定した。赤血球凝集価は、
J.E.Salk著「The Journal of Immunology Vol.49」87〜
98頁(1944)の方法に準じて測定した。
実施例9 固体製剤 新生児のハムスターに、ウサギから公知の方法で調製し
た抗血清を注射してハムスターの免疫反応を弱めた後、
その皮下に、SV−40ウイルスで処理して培養株化された
ヒト由来の単核細胞を移植し、通常の方法で1週間飼育
した後、BCGの生細胞を腹腔内に107個注入し、更に2週
間飼育した。皮下に生じた約15gの腫瘍を摘出し細切し
た後、トリプシン含有の生理食塩水に懸濁して細胞を分
散分取した。この細胞をヒト血清5v/v%含有するpH7.2
のEagleの最小基本培地で洗浄し37℃に保った同じ組成
の培地に細胞濃度が約5×106×mlになるよう希釈し、
これにE.coli由来のエンドトキシンを約10μg/mlの割合
で加えて16時間保ってツモア ネクロシス ファクター
を誘導生成させた。
これを4℃、約1,000gで遠心分離し、沈澱物を除去し、
得られた上清をpH7.2、0.01Mリン酸塩緩衝液を含有する
生理食塩水で21時間透析し、更に精密液を濃縮し、凍
結乾燥してツモア ネクロシス ファクター活性を含有
する粉末を得た。得られた粉末をG.Bodoの報告(Sympos
ium on preparation, standadization and clinical us
e of interferon, 11th International Immunobiologic
al Symposium 8 & 9 June 1977, Zagreb, Yugoslavi
a)に準じてイオン交換体への吸脱着、ゲル過による
分子量分画、濃縮および精密過の手段によりインター
フェロンを除去し、更に硫安塩析、Con A−セファロー
ス アフィニティクロマトグラフィーにより精製濃縮
し、Meth A肉腫出血性壊死能を有し、かつ正常細胞に何
らの悪影響も及ぼさないことを特徴とする高純度ツモア
ネクロシス ファクターを含有する濃度約0.01w/v%
の濃縮液をハムスター一匹り約30mlを得た。このように
して得られたツモア ネクロシス ファクターは、用い
た誘導剤の混入もなく、比活性約3.5×105Uを有する糖
蛋白質であった。
参考例4の方法で得られたパイロゲンフリーの結晶性α
−マルトース50gずつを、600ml容のガラス製ボトルに採
り、これに先きに得られたツモア ネクロシス ファク
ター濃縮液0.5ml(約1.75×103U)ずつを入れ、無菌的
にゴム栓、キャップシールして固体製剤を得た。
本製造方法は、ツモア ネクロシス ファクター含有液
が、結晶性α−マルトース粉末に脱水されるので、凍結
乾燥などの処理を必要としないばかりか、ツモア ネク
ロシス ファクターの安定化も効果的である。
本品は、水に対して易溶であることから、抗腫瘍剤、栄
養補給剤などとして、点滴などへの注射剤として有利に
利用できる。また、本品を、内服用剤、口腔用剤などに
利用することも有利に実施できる。
なお、ツモア ネクロシス ファクターの活性は、E.Pi
ck編 Tumor Necrosis Factor in “Lymphokines" Vol.
II, pp235−272, Academic press(1981年)に報告され
ているツモア ネクロシス ファクター感受性L−929
細胞を使用して、一定時間培養後の生残細胞数を測定す
る公知の方法を用いた。
実施例10 外傷治療用膏薬 参考例3の方法で得られた結晶性α−マルトース500g
に、沃素3gを溶解したメタノール50mlを加えて混合し、
更に10w/w%プルラン水溶液200mlを加えて混合し、室温
下で一夜放置してβ−マルトース含水結晶に変換させ、
適度の延び、付着性を示す外傷治療用膏薬を得た。
本品は、創面に直接塗るか、またはガーゼ、油紙などに
塗るなどして使用することにより、切傷、すり傷、火
傷、水虫による潰瘍などの外傷を治療することができ
る。
また、本品は、沃素による殺菌作用のみならず、マルト
ースによる細胞への栄養補給剤などとしても作用するこ
とから、治癒期間が短縮され、創面もきれいに治る。
(発明の効果) 上記したことから明らかなように、本発明の結晶性α−
マルトースを、栄養剤、生理活性物質剤などの医薬品、
その原材料または加工中間物などに含有させβ−マルト
ース含水結晶に変換せしめて脱水することによる医薬品
を製造する方法は、加熱乾燥などの苛酷な条件を必要と
しないので、有効成分の分解、活性の低下などの劣化を
起さず、安定で高品質の医薬品を容易に製造することが
できる。
得られた脱水医薬品は、微生物汚染が防止され、加水分
解、酸敗、褐変などの変質劣化が防止されて、その商品
の寿命を長期にわたって安定に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、α−マルトース含量48.0w/w%である非晶質
粉末のX線回折図形を示す。 第2図は、α−マルトース含量55.6w/w%である結晶性
粉末のX線回折図形を示す。 第3図は、α−マルトース含量61.4w/w%である結晶性
粉末のX線回折図形を示す。 第4図は、α−マルトース含量68.7w/w%である結晶性
粉末のX線回折図形を示す。 第5図は、α−マルトース含量74.2w/w%である結晶性
粉末のX線回折図形を示す。 第6図は、β−マルトース含水結晶(マルトースHHH)
粉末のX線回折図形を示す。
フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B01J 20/22 Z 7202−4G C07H 3/04

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】含水医薬品、その含水原材料および含水加
    工中間物から選ばれる含水物に、結晶性α−マルトース
    を添加し、結晶性α−マルトースに含水物の水分を捕捉
    させて脱水すると共に結晶性α−マルトースをβ−マル
    トース含水結晶に変換して、これを含有せしめた脱水医
    薬品。
  2. 【請求項2】結晶性α−マルトースが、光学異性体α−
    マルトースを55w/w%以上含有していることを特徴とす
    る特許請求の範囲第(1)項記載の脱水医薬品。
  3. 【請求項3】結晶性α−マルトースが、固形物当り85w/
    w%以上のマルトースを含有する高純度マルトースから
    晶出させたものであることを特徴とする特許請求の範囲
    第(1)項または第(2)項記載の脱水医薬品。
  4. 【請求項4】結晶性α−マルトースが、粉末であること
    を特徴とする特許請求の範囲第(1)項、第(2)項または第
    (3)項記載の脱水医薬品。
  5. 【請求項5】結晶性α−マルトースが、水分3w/w%未満
    であることを特徴とする特許請求の範囲第(1)項、第(2)
    項、第(3)項または第(4)項記載の脱水医薬品。
  6. 【請求項6】脱水医薬品が、糊化澱粉、アルコール、油
    溶性物質または生理活性物質を含有していることを特徴
    とする特許請求の範囲第(1)項、第(2)項、第(3)項、第
    (4)項または第(5)項記載の脱水医薬品。
  7. 【請求項7】生理活性物質が、リンホカイン、ホルモ
    ン、エキス類であることを特徴とする特許請求の範囲第
    (6)項記載の脱水医薬品。
  8. 【請求項8】脱水医薬品が、経口的または非経口的に使
    用されることを特徴とする特許請求の範囲第(1)項、第
    (2)項、第(3)項、第(4)項、第(5)項、第(6)項または第
    (7)項記載の脱水医薬品。
  9. 【請求項9】含水医薬品、その含水原材料および含水加
    工中間物から選ばれる含水物に、結晶性α−マルトース
    を添加することにより、結晶性α−マルトースに含水物
    の水分を捕捉させて脱水すると共に結晶性α−マルトー
    スをβ−マルトース含水結晶に変換して、これを含有せ
    しめることを特徴とする脱水医薬品の製造方法。
  10. 【請求項10】結晶性α−マルトースが、光学異性体α
    −マルトースを55w/w%以上含有していることを特徴と
    する特許請求の範囲第(9)項記載の脱水医薬品の製造方
    法。
  11. 【請求項11】結晶性α−マルトースが、固形物当り85
    w/w%以上のマルトースを含有する高純度マルトースか
    ら晶出させたものであることを特徴とする特許請求の範
    囲第(9)項または第(10)項記載の脱水医薬品の製造方
    法。
  12. 【請求項12】結晶性α−マルトースが、粉末であるこ
    とを特徴とする特許請求の範囲第(9)項、第(10)項また
    は第(11)項記載の脱水医薬品の製造方法。
  13. 【請求項13】結晶性α−マルトースが、水分3w/w%未
    満であることを特徴とする特許請求の範囲第(9)項、第
    (10)項、第(11)項または第(12)項記載の脱水医薬品の製
    造方法。
  14. 【請求項14】脱水医薬品が、糊化澱粉、アルコール、
    油溶性物質または生理活性物質を含有していることを特
    徴とする特許請求の範囲第(9)項、第(10)項、第(11)
    項、第(12)項または第(13)項記載の脱水医薬品の製造方
    法。
  15. 【請求項15】生理活性物質が、リンホカイン、ホルモ
    ンまたはエキス類であることを特徴とする特許請求の範
    囲第(14)項記載の脱水医薬品。
  16. 【請求項16】脱水医薬品が、経口的または非経口的に
    使用されることを特徴とする特許請求の範囲第(9)項、
    第(10)項、第(11)項、第(12)項、第(13)項、第(14)項ま
    たは第(15)項記載の脱水医薬品の製造方法。
JP60266561A 1985-11-27 1985-11-27 脱水医薬品とその製造方法 Expired - Fee Related JPH0678225B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP60266561A JPH0678225B2 (ja) 1985-11-27 1985-11-27 脱水医薬品とその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP60266561A JPH0678225B2 (ja) 1985-11-27 1985-11-27 脱水医薬品とその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPS62126118A JPS62126118A (ja) 1987-06-08
JPH0678225B2 true JPH0678225B2 (ja) 1994-10-05

Family

ID=17432544

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP60266561A Expired - Fee Related JPH0678225B2 (ja) 1985-11-27 1985-11-27 脱水医薬品とその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH0678225B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE102009038951A1 (de) 2009-08-26 2011-03-03 Inprotec Ag Verfahren zur Herstellung eines kristallinen Feststoffes aus Glycin-N,N-diessigsäure-Derivaten mit hinreichend geringer Hygroskopizität
MY156376A (en) * 2009-10-12 2016-02-15 Basf Se Method for producing a powder containing one or more complexing agent salts

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0569090A (ja) * 1991-09-06 1993-03-23 Mitsubishi Electric Corp 水平連続鋳造方法および装置

Also Published As

Publication number Publication date
JPS62126118A (ja) 1987-06-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3515456B2 (ja) 粉末組成物の製造方法と粉末組成物
DE3625611C2 (de) Verwendung von Maltose als Trockenmittel
JPH0710344B2 (ja) 無水グリコシルフルクト−スによる含水物の脱水方法
KR950012611B1 (ko) 유용성(油溶性)물질 함유 고상물의 제조방법
JPH0710343B2 (ja) 無水ラクチト−ルによる含水物の脱水方法
JPS62152536A (ja) 無水アルドヘキソ−スによる含水物の脱水方法
KR100306867B1 (ko) 에너지보충당류원및그용도
KR940000165B1 (ko) 함수 물질(含水物質)의 탈수방법
JPH0678226B2 (ja) 脱水医薬品とその製造方法
JP3949641B2 (ja) トレハロース粉末とその製造方法
JPH0710341B2 (ja) 脱水剤及びそれを用いる含水物の脱水方法
JPH0678225B2 (ja) 脱水医薬品とその製造方法
JP2004269488A (ja) 結晶α−D−グルコシルα−D−ガラクトシドとこれを含有する糖質及びこれらの製造方法並びに用途
JP3834310B2 (ja) トレハロースの使用方法並びにその方法により得られる物性が高められたトレハロース含有組成物
JPS62138174A (ja) 脱水食品とその製造方法
JPH0697956B2 (ja) 脱水食品とその製造方法
KR100295176B1 (ko) 탈수제및이것을사용하는함수물의탈수방법및이방법으로제조되는탈수제품
JPH0569090B2 (ja)

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees