JPH065791B2 - 超伝導性光伝導基本物質Cu2O系材料を用いた超伝導オプトエレクトロニクス装置 - Google Patents

超伝導性光伝導基本物質Cu2O系材料を用いた超伝導オプトエレクトロニクス装置

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JPH065791B2
JPH065791B2 JP2122074A JP12207490A JPH065791B2 JP H065791 B2 JPH065791 B2 JP H065791B2 JP 2122074 A JP2122074 A JP 2122074A JP 12207490 A JP12207490 A JP 12207490A JP H065791 B2 JPH065791 B2 JP H065791B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、Cu系酸化物超伝導材料と、その臨界温度以下
の温度で並行して光伝導現象を示す超伝導性光伝導基本
物質Cu2Oよりなる“超伝導オプトエレクトロニクス装
置”に関するものである。
(従来の技術) 超伝導材料の開発に伴い種々の超伝導材料が見い出され
ており、例えば、Y-Ba-Cu-O系酸化物やLa-Cu-O系酸化物
超伝導材料が見い出されている。しかしながら、現在の
超伝導材料の開発は、臨界温度を高めることが目的とさ
れ、光学的性質の解明、特にその利用がなされていない
ので現状である。この理由は、超伝導性と、光吸収性並
びに光伝導性等とは相反する物性であると考えられてお
り、BCS理論のギャップエネルギー以上の波数の光を照
射することにより超伝導体の安定性が破壊されるものと
考えられていたことによる。さらに、これまでに開発さ
れた超伝導材料は主として金属やそれらの合金であり、
光学的に有益な性質を有する超伝導材料は、いまだに判
明していない。
しかしながら、最近の高温超伝導酸化物材料と、その臨
界温度以下の温度で特有な光学的性質を有する超伝導性
光伝導材料とを組み合せれば、超伝導配線などを背景に
持ちながら撮像素子は勿論のこと、電力損失のないスイ
ッチング素子や光演算素子を実現でき、光論理演算や空
間並列型光演算が可能になり、低電力で作動する高速演
算装置を実現することができる。
(発明が解決しようとする課題) 上述したように、現在の超伝導の研究は臨界温度の上昇
を主目的としている。しかしながら、本発明者らは、超
伝導に関する種々の実験及び解析の結果、亜酸化銅(Cu2
O)がY-Ba-Cu-O系酸化物、La-Cu-O系酸化物よりなる超伝
導材料の臨界温度以下で並行して光伝導性を生ずると云
う予期し得ない顕著な効果を有することを見い出した。
すなわち、この酸化物は、常温では電気的絶縁性または
半導体的性質を呈するが、この酸化物と関連する酸化物
超伝導材料の転移温度以下の温度においては入射光量に
応じたキャリャが発生し、この伝導率が変化する光伝導
性を有していることが判明した。従って、例えば超伝導
性光伝導状態にある亜酸化銅Cu2Oと、これと関連する超
伝導状態にある酸化物、たとえばY-Ba-Cu-O系酸化物又
はLa-Cu-O系酸化物とを組み合せることにより電力損失
のない有益な超伝導オプトエレクトロニクス装置を構成
することができる。ここで、超伝導オプトエレクトロニ
クス装置とは、超伝導性材料とその臨界温度以下の温度
で光伝導性を有する超伝導性光伝導基本物質とを組み合
せたオプトエレクトロニクス素子をいうものとする。
従って、本発明の目的は、従来技術とその問題点を解決
しようとするものでなく、本発明者が新たに見い出した
超伝導性光伝導基本物質、すなわち超伝導領域につなが
る材料の特有の光学的性質を有効に利用した超伝導オプ
トエレクトロニクス装置を提供するものである。
(問題を解決するための手段) 本発明による超伝導オプトエレクトロニクス装置は、臨
界温度以下の温度条件下において超伝導状態となる電極
領域と、これら電極領域の間に形成され、上記臨界温度
以下の温度条件下において並行して光伝導性となる受光
領域と、上記電極領域間に接続したバイアス源とを具
え、前記電極領域をCu系酸化物超伝導材料で構成し、前
記受光領域をCu2Oを含む超伝導性光伝導材料で構成し、
前記受光領域に入射する光量に応じて前記電極間電流が
制御されるように構成したことを特徴とする。
ここで、超伝導性光伝導性材料とは、同一材料系の超伝
導材料の超伝導状態への転移に対応して光伝導性を生ず
る材料を意味する。換言すれば、同一材料系の超伝導現
象と共役な関係にある光伝導現象、すなわち超伝導共役
性光伝導現象を発生する材料を意味する。
(作用) 本発明者は、各種超伝導性材料についてその超伝導性並
びに光学的性質について実験解析を行なった結果、種々
の超伝導材料においては、その転移温度以下の温度にお
いて超伝導性と並行して光伝導性を呈することを見い出
した。すなわち、例えばY-Ba-Cu-O系酸化物及びLa-Cu-O
系酸化物においては、その転移温度以下においてY,La,B
aの含有量に応じて超伝導性材料となることが知られて
いる。一方、上記のような光伝導性も発見されている。
さらに最近、本発明者は亜酸化銅Cu2Oにおいて、同様な
しかしより基本的な現象を発見した。
第1図はCu2Oよりなる酸化物が超伝導性光伝導性を示す
典型的な実験結果である。第1図(a)は本発明者が基本
物質と考えるCu2Oの光伝導応答の温度依存性を示し、第
1図(b)は従来から知られているCu2Oの光吸収応答の波
長依存性を示す。本発明者は、Cu2Oよりなる酸化物につ
いて種々の実験及びその解析を行なった結果、励起光波
長λ=450〜700nm及びT≦250Kの温度領域の条件におい
て超伝導性光伝導を示すことを見出した。すなわち、Cu
2O系酸化物においては上記の波長λ及び温度Tの範囲に
おいては超伝導性光伝導を示し、前記超伝導体(Y-Ba-C
u-O系又はLa-Cu-O系酸化物)の転移温度以下の温度Tに
おいて光伝導を示すことを新規に知見した。
第1図(a)及び(b)は基本物質であるCu2OにおけるQ
(λ,T)の温度依存性及び吸収係数κ(cm-1)の波長依
存性を示す。
基本物質であるCu2Oの光吸収、及びそれによる光伝導は
よく知られた波長依存性を示し、620nmより短波長側に
移行することに従って光応答性が徐々に増大するが、60
0nm以下では急激に増大する。しかし、一方650nmより長
波長側ではほぼ小さいながら決まった光応答性を特定の
波長以下で示している。いずれにしても、これらの励起
光による光伝導応答Q(T,λ)がまたある特定の温度
PS以下で成長し、しかもその温度がCu系の酸化物超伝
導材料での超伝導転移温度TSCと対応していることが発
見された。そこで、このように超伝導転移温度と対応し
た温度以下の温度で光伝導性を有する材料と、転移温度
以下の温度で超伝導性を有する材料とを結合すれば、臨
界温度以下の温度において超伝導性と光伝導性を併有す
る有用な超伝導オプトエレクトロニクス素子を実現する
ことができる。従って、受光領域を超伝導性光伝導材料
で構成し、電極領域を超伝導性材料で構成すれば、電極
間において受光領域に入射する光量に応じた出力電流を
取り出すことができ、これにより電力損失のない高速応
答できる光スイッチング素子、光検出器、光増幅素子等
の“超伝導オプトエレクトロニクス素子”及び“超伝導
オプトエレクトロニクス装置”を実現することができ
る。
(実施例) 亜酸化銅Cu2Oは古典的なp型半導体の1つである。そこ
で、本発明の基礎であるその光伝導現象の実施例から述
べる。この物質の光学的及び格子振動的視点からの諸性
質はよくしらべられている。それにもかかわらず、この
物質の真性半導体としての電気伝導機構、特に室温より
以下の低温領域における伝導機構は明確には解明されて
来ていない。
(1)Cu2Oの多結晶及び単結晶における正孔のHall易動度
については、これまでもいくつかの実験が行われて来て
いて、格子振動による散乱や、格子欠陥の影響などがし
らべられて来ている。亜酸化銅は単位胞に6ケの原子を
もち、4.2Kでもそれぞれ153cm-1,660cm-1の波数
に2つのLO−フォノンモード(光学型格子振動様式)を
もつことが知られている。これまでの正孔の易動度の研
究では:200Kから300Kに及ぶ温度領域では、主要な散乱
原因は高い波数または振動数のLOフォノンであるとされ
ている。しかし、これまでの研究者達による有極性LOフ
ォノン散乱の解析は、すべて単位胞に2ケの原子をもつ
2原子結晶格子に対してつくられた理論に基礎をおいて
いる。したがって、その結果として出て来る結論はまっ
たく不満足なものである。特に、低振動数LOフォノンの
影響は適切にしらべられて来たことがない。低温におけ
るこの物質の高抵抗性つまり絶縁体的性格のために、こ
れらのすべての測定は、液体窒素温度77Kあるいは100K
以上に限られ来た。より低い温度領域における知識が不
足していることが、散乱機構の同定にあいまいさをいつ
も残して来ていた。
発明者は独自の研究を行い、4.2K〜77K、さらに4.2〜30
0Kに及ぶ温度領域でのCu2OのΓ −価電子帯に光励起
によってつくられた正孔(第2図に示す重い正孔)のホ
ール易動度の測定結果を得た。LOフォイン散乱の解析を
“多原子格子(poly-a stomic crystal)”での担体−格
子相互作用の理論にもとづいて行い、Cu2Oにおける正孔
の真性的散乱機構を4.2K〜400Kに及ぶより広い温度領域
で始めて明らかにした。
亜酸化銅Cu2O多結晶はこれまでと同様の方法で作製し
た。高純度の銅板を空気中で1030℃で酸化させ、1130℃
で焼鈍した後除冷する。試料の大きさは5×5×0.5mm3
で作製後、機械的および化学的に研磨を行う。
さて、たとえば77K以下の低温では、Cu2Oの電気抵抗は
非常に大きくなる。このような温度領域では、殆んどの
半導体での電流磁気効果の測定に広く利用されている接
触電極を用いた標準的方法では、信号雑音比(S/N
比)が小さく悪くなることや、電極の非オーム性などの
ために測定が著しく困難になる。そこでホール易動度の
測定には我々はイオン性結晶でのポーラロンの運動問題
についてかねてから発展させて来ていたブロッキング電
極を用いてパルス光伝導測定技術をCu2Oについて採用し
た。用いられた電極配置は第3−(a)及び(b)図に示され
ている。
第2図は亜酸化銅Cu2Oの光吸収スペクトルを説明するた
めの模式図である。“Red edge”と呼ばれている吸収端
は、“Yellow exciton”と呼ばれている励起子の1s帯へ
の電子の直接遷移によるものである。一方この物質が禁
止帯の内部に第2図の模式的に描かれているように非化
学量論的な“Non-Stoichiometry”に起因するいくつか
の局在エネルギー準位を持つことは、よく知られてい
る。そこでこの結晶を“Red edge”より長い波長をもつ
光で励起しても、価電子は局在単位へ励起され主として
Γ −価電子帯に正孔が生成される。Γ 帯を入れ
ての全体としての電子配列は光励起の後にはCu(3d)の状
態となる。この波長領域での吸収係数は非常に小さいの
で、正孔は、結晶内で殆んど一様に励起され分布してい
ると考えてよい。
パルス光伝導測定での光源としては、第4図に示したよ
うにNレーザー励起により発振させることが出来るパ
ルス幅5nsecの色素レーザーが用いられλex≒700nmの
発振波長で用いられた。観測された光伝導応答Q及び
ホール信号Qは担体がレーザ光に同期して測定した。
その結果は、光励起で生成した確定的に正孔であること
を示している。光励起によってつくられた自由正孔の密
度は109cm-3の桁の大きさである。温度Tは、標準的なA
u+0.7%クロメル熱電対を試料に固定させて指示させ
た。低温における正孔の易動度はかなり大きいので、正
孔の速度が物質の音速を越えたりしないように、印加電
場を設定するなど特別の注意を払った。磁場は超伝導磁
石を用いて印加した。また、空間電荷層の形成の影響を
除去する(depolarize)ためのさらに長波長の光(λ≒80
0nm)がかさねて照射された。
第5図は、低電場E、弱磁場H内にあるCu2Oの正孔によ
る光伝導信号Q(T,E,H)及びホール信号Q
(T,E,H)の温度依存性を示す典型的な例であ
る。ここで記号Qは電場E方向の光電流信号、Q
は電場Eと磁場Hの両方に垂直なY方向のホール光
電流信号をあらわし、ともにこの場合時間的には積分さ
れている。先に述べたとおり、Qの極性は担体が正孔
であることを明確にしている。誰でも気がつくことであ
るが、温度を減少させて行くとQも出現,増大するが
の方がより急激に増大する。高抵抗物質でのパルス
測定では、ホール易動度μは、電圧ではなく電流の相
対比(Q/Q)から計算されるので、これは正孔の
易動度が急激に増加することを示唆している。
第5図のデータにもとづいて行われた正孔のホール易動
度μの計算結果は、第6図に示されている。最低温度
における正孔の易動度の最高値は実に160,000cm2/・sec
にも達する。正孔の易動度の温度依存性は、定性的には
標準的理論に比べることによって理解し得る。第6図に
示されたように、20Kより以下では観測された易動度は
殆んど温度に依存しない。これは、この温度領域では中
性不純物散乱が支配的であることを示している。40K以
上では、ホール易動度μが(1/T)に対して大体指数
関数的依存性をもつことが認められ、これは有極性LOフ
ォノン散乱が優勢になってきたことを示唆している。こ
こでこの直線の勾配はかなりゆるやかであり、比較的小
さいエネルギーのLOフォンが関与していることが解る。
Cu2Oの群論的な解析にもとづく格子力学的考察によれば
この結晶構造は2ケの異なる振動数の長波長モードが存
在する。Γ15対称性のために、これらの中で4つのフ
ォノン様式(縮退した2つのTOフォノン様式と、縮退し
ていない2つのLOフォノン様式のみ)が誘電分極を伴
う。これらの有極性光学型フォノンの室温と低温におけ
る振動数は、発光、赤外分光、共鳴ラマン散乱の研究に
よって確立されている。これらの中で担体の散乱に関与
するのは主として2つの様式のLOフォノンである。そこ
で、ここでは“多原子結晶”であるCu2Oの正孔の易動度
の温度依存性における散乱機構の詳細をしらべるに際し
ては、2つのLOフォノン様式による散乱と、中性不純物
散乱、それに30K近くの温度領域で有効な音響型LAフォ
ノン様式による散乱を加えて議論することが適切であろ
う。
第6図の実線(d)は、この様にして得られる最適曲線
を表わしている。その際、得られた変形ポテンシャルの
推定値はΓ −価電子帯の中心で約0.7eVと小さく、
大きくとも1eVを越えないことが判った。
第7図には、TazenkovとGruzdev及びZouaghiの結果とと
もに上に述べた第6図の実験の解析結果が示されてい
る。100K以上の温度領域での解析のためには低い波数15
3cm-1のLOフォノン散乱では低温近似を用いることは出
来ない。なお、これらの計算では、LOフォノンエネルギ
ー自体、正孔の有効質量の値、それに伴う正孔−格子結
合定数などの温度依存性は別として低振動数のLOフォノ
ンに対しては低温での値を、高振動数のLOフォノンに対
しては室温での値を仮定する。
第7図の実線(a)は、正孔に対する中性不純物散乱、音
響型フォノン散乱、それに特に低振動数と高振動数の2
つのLOフォノン散乱の組合せによって計算されたもので
ある。比較のために、高振動数のLOフォノン散乱がない
場合の結果を破線(b)で示した。容易にわかるよに100K
以上では高振動数LOフォノンの影響が顕著である。
以上を要約すれば、本発明者は亜酸化銅Cu2OのΓ
電子帯の正孔の真性半導体としての散乱機構を4.2Kから
400Kに及ぶ、これまでより広い温度領域で研究して来
た。特に2つのLOフォノンモード、低い振動数153cm-1
のソフトモードと高い振動数638cm-1のハードモードの
影響を初めて“多原子格子”での担体−格子相互作用の
理論との対比で明確にした。40Kから100Kまでの温度領
域では、ソフトモードLOフォノンの効果が顕著であり、 100K以上ではハード・モードLOフォノンの影響が現われ
る。200K以上でこの物質では、準安定捕獲状態による易
動度の抑制効果がありうる。40K以上100K以下では、正
孔の散乱は、ソフト・モードLOフォノン、音響型LAフォ
ノン、それに中性不純物の効果の組合さった効果で定め
られている。中性不純物による散乱過程は20K以下で支
配的になり、また音響型LAフォン散乱の大きさから推定
されるΓ 価電子帯の変形ポテンシャル定数の値は0.
7±0.3eVである。しかし、ここでその端緒が見出される
最も大きな特色は第5図でのパルス光伝導度の温度依存
性の結果で、普通の光伝導現象とは逆に、温度を下げて
いくと信号が成長して来る顕著な光伝導現象で、これに
ついては次にさらに研究した結果を述べる。
(2)亜酸化銅Cu2Oの主として価電子帯−伝導帯間遷移
(帯間零移と略称することがある)による光伝導性につ
いては、これまでにも可成りの数による実験的研究が存
在する。
しかし、最近我々は低温でのCu2OのΓ 価電子帯に、
基礎的収端すなわち価電子帯と伝導帯との間の禁止帯幅
よりも小さいエネルギー、つまりより長い波長λの
光励起でつくられた正孔による光伝導Q(T,λ)とそ
れらのホール易動度μ(T)に対する新しい実験結果を
得た((1)の項参照)。このような長波長λ≒700nmでの
光励起を”正孔単独励起”(single hole excitation)と
以後呼ぶことにする。
しかし、ここで最も注目すべきことは、Cu2Oでのパルス
光伝導Q(T,λ)の温度依存性には,他の酸化物系合
物たとえばLa-Cu-O、Y-Ba-Cu-Oの場合と同様な驚くべき
異常な振舞、すなわち温度を下げて行くと普通減少し消
滅して行くQ(T,λ)が逆に段階的に続けて現れて来
るという現象である。これらの現象は、LOフォノン雲や
他の価電子による電子雲を伴った正孔ポーラロンや、他
の場合によっては伝導電子ポーロランが正孔単独励起や
帯間遷移の光によって生成され、それらの“飛程(Schu
weg)”つまり易動度μdと寿命τの積がある限度以
下では特別の理由で大きく延長されることによってい
る。この飛程の異常な延長は正孔の新しい状態への本質
的な意味での凝縮が起っていることを啓示している。し
かも驚くべきことはこれらの光伝導信号Q(T,λ)の
出現温度や段階温度TPSとその関連物質である酸化物
超伝導体の臨界温度TSCとは一致するか少なくともよ
く対応している。普通の物質ではQ(T,λ)は温度を
下げ行く指数関数的に減少するのと比べて、これはまっ
たく逆の現象である。そこでこのような異常な光伝導現
象を“超伝導性光伝導(Superconductive Photoconducti
vity)”と呼ぶことにする。
既に発明者は、La-Cu-O、Y-Ba-Cu-O系で、正孔を生成す
ることに対して光励起によるドーピングがBa,Sr‐ドー
ピングと同様であるという考え方を確立している。した
がってQ(T,λ)の実験結果を綜合してみると、波長
選択により注意深く光励起されたCu2O励起状態での新規
な“光伝導性”は、先にLa-Cu-O、Y-Cu-O、Y-Ba-Cu-O系
で示されたように、Cu-系酸化物高温超伝導体の基底状
態での“超伝導性”と深い相関をもっていることを確認
した。
簡単のために、これまでの所で得られている絶縁性Cu2O
単結晶および多結晶、ならびにY-Ba-Cu-O系セラミック
ス試料の異常なパルス光伝導Q(T,λ)の実験結果
を、従来認められている光伝導(Nomal Photoconductivt
y)を示すAgCl単結晶での典型的なデータ例とともに、新
たに第8図(a)〜(d)に一括して示す。驚くべきことに
は、AgClの場合を除くこれらのすべての実験結果は温度
を下げていくと、明らかに超伝導性光伝導Q(T,λ)
の出現することを示している。また第8図−(e)は関連
した超伝導性物質である Y-Ba-Cu-O系の暗抵抗ρ(T)の温度依存性を例示したもの
である。なおQ(T,λ)の温度依存性に関する限りCu
2Oではλex≒700nmでの正孔単独励起とλex≒520nmでの
帯間励起が同等であることが確認された(第1,8
図)。そこでこれ以後はしばらく両者を区別なしに用い
ることにする。また、第9図(a),(b)には、Q(T,
λ)の波長依存性が示されている。
これまでの結果から、絶縁体領域における光伝導信号Q
(T,λ)の段階温度TPSと超伝導体領域でのρ(T)で
の臨界温度TSCとの間には、第10図に示すように深い相
関があることが確認された。
なお、ここでは純粋に凝縮系物理学の基本問題としての
議論の詳細は省略するが、いずれにしても、酸化物系で
の超伝導性光伝導と超伝導現象とは、互いに相補的なも
のでどちらがより本質的であるとは云えない。
以上の状況の下で、我々は“超伝導性光伝導(Supercond
uctive Photocorductivity)”を先に述べたように定義
する。すなわち、本来母体となる絶縁体の光伝導で、関
連した伝導性物質での超伝導転移温度と一致あるいは少
くとも対応した温度以下で出現し、いつくかの段階的部
分を示すような特異な温度依存性を示す光伝導現象を
“超伝導性光伝導”と呼ぶ。このような命名は自然なも
のと考えられるが、すると、我々はLa-Cu-O、Y-Ba-Cu-O
系と同類の“超伝導性光伝導”現象をCu2Oでも最初に発
見したということが出来る。このような光励起でのCu2O
での恐らく励起子を伴い、本質的に凝縮した正孔系によ
る新規な“超伝導性光伝導現象”は、La-Cu-O、Y-Ba-Cu
-O系のようないろいろなCu系酸化物超伝導体の基底状態
での“高温超伝導”現象と深い相関を持っていることは
確かと考えられる。
(3)(1)に述べたように、特に低温での亜酸化銅Cu2O結晶
を波長λex700nmで光学的に選択して励起した場合の
価電子帯の正孔についてそれらによるパルス光伝導
Q(T,λ)と正孔のホール易動度μ(T)の新しい観
測結果を示した。そこで(2)に述べた状況に対応させ
て、4.2K〜300Kというより広い温度領域でのCu2O結晶内
で正孔のみによるQ(T,λ)、μ(T)のデータの詳
細を、35GH2帯でのサイクロン共鳴の実験と照合させな
がら”超伝導性光伝導”を解明するために再検討した。
その結果、新しく本質的に大切な情報を得た。光伝導に
寄与する正孔の密度n(T)の詳細をしらべるために、
これらのデータを解析することにより、我々はCu2Oにお
ける光伝導信号Q(T,λ)がその温度依存性でいくつ
かの階段状変化をする温度“階段温度(Step Temperatur
e)TPS”と同様に正孔密度n(T)が1つながりの系列
をなす“下端温度(Clew Temperature),T”をもつこ
とを初めて発見した。これらはともに励起光下にあるCu
2Oで自由な正孔が規則的に凝縮して電荷移動型(Charg
e.ransfer-CT型)励起子をつくることによるもので高温
超伝導の基底状態に密接な相関をもつものである。
実験に際しては,前に他の目的のために用いられたCu2O
の単結晶及び多結晶が用いられ、その詳細をしらべ直し
た。単結晶は銀箔を制御しながら酸化させるか、アーク
・イメージ炉内で溶融させて引上げる寸法で成長させ
た。多結晶は、高純度の銅板を酸化させた後空気中で焼
鈍してつくられた。試料は製作後、機械的及び化学的に
研磨した。
互いに直交し、ともに弱い電場E及び磁場H内にあ
る絶縁性試料での正孔による光伝導信号の2成分Q
xx(T)、Qxy(T)、それにホール易動度μ(T)を測定す
るに際して、我々はポーロランの運動問題の研究でかね
てから発展させて来ていたブロッキング電極を用いたパ
ルス光伝導測定技術を励起光波長λex(あるいはただ
λ)で採用した。光励起担体の“飛程(Schubewg)”が多
結晶の粒塊内においてさえも、充分小さくなるように、
電場Eは弱電場領域に設定された。光伝導信号Q
(T,λ,E,H)のE−依存性は線型でありこ
れが上記の条件が成立していることを保証している。こ
れらの実験における本質的な問題点はこれまでの研究で
充分検討されていて、50nm〜1μmのサイズのAgBr微粒
子結晶の場合についてすらも確かめられている。実施例
(1),(2)と異なる新しい部分は、ここでのQxx(T),Q
xy(T)、それにこれらから得られたμ(T)のデータと
を注意深く再検討することによって得られた正孔密度n
(T)の主として温度依存性についてのもので次の関係
式 Qxx(T)=ρ(T)E=n(T)eμ(T)E (1) Qxy(T)=α(T)E =n(T)eμT)μ(T)E/c(2) に基づくものである。ここでρ,αは弱い外場の極限で
は一定の値をもちホール角は tanθ(T)=Qxy/Qxx(T)=μ(T)H/c (3) であたえられる。したがって光伝導に貢献する担体濃度
(T)は n(T)=Qxx(T)/eμ(T)E (4) でその温度依存性を求めることが出来る。なおこれ以後
我々は記号を簡略化しQxx,QxyをQ,Qと書
くことにする。
ところで後に(5)で示すようにCu2Oに対するサイクロト
ロン共鳴の実験は、マクロ波周波数f=35GHz、温度T
=4.2Kで多様な励起光波長λex=610,630,690nmで行
われ、共鳴線から求められる有効質量の値から、各々の
場合の光励起によってつくられた担体の符号を過去の文
献での円偏波による結果と照合させて確認することが出
来る。
第2図では、Cu2Oの価電子帯と伝導帯の模式的なエネル
ギー状態図で励起光波長λexのいくつかの場合の状況
を定性的に示している。
後に第18-(a)〜(c)図にλexのいくつかの値に対する
光励起担体のサイクロトロン共鳴吸収曲線の典型的な例
を示すが、これらの結果は、パルス光伝導測定でのホー
ル角の符号とよく一致している。
さて、第11図(a)〜(c)は、新しく測定して補完され完全
な形になった励起光波長λex≒700nmにおけるCu2Oの
パルス光伝導信号Q(T),Q(T)及び励起光によって
生成された正孔のホール易動度μ(T)の結果である。
ここで、特につけ加えられたのは、λex≒700nmにお
けるQ(T)のT=110〜300Kにわたるデータである。第
11図(a)ではQ,Qともに119K以上では非常に微小
である。しかし、第11図(b)に示すように100倍に拡大す
れば有限の大きさをもち、いくつかの構造を示してい
る。これらの結果は、第11図−(c)に示されているTanze
nkovとGruzdev及びZouaghiらのp型Cu2Oでの正孔の易動
度のデータとつき合わせて解析されるべきものである。
実際、(4)式を用いると、励起光によって生成された正
孔の密度n(T)の相対値の温度依存性を直ちに導き出
すことが出来る。この解析結果は第12図に示されてい
る。ただし、ここで相対比(μ/μ)の値は(3π
/8)と1の間の値でn(T)の変化の幅に比べると殆
んど一定と考えても差支えないものとする。このように
して求めた結果を見ると、n(T)に認められる“下端
温度(Clew Temperature),TPC”の1つながりの微細構造
の系列は、確かにある物理的意味を示唆している様にも
考えられる。そこで、以下に若干の考察を行なう。
まず第1に、励起光波長λex=690〜710nmで励起され
たCu2O結晶内に生成され、パルス光伝導やホール易動度
それにサイクロトロン共鳴などの実験に関与している担
体がΓ 価電子帯の自由正孔の調和をもつ集合のみで
あることは、自ら明確である。ここで、その際光励起さ
れた電子の方は、後述する第18−(b)図にg=2.08の値
の小さな電子スピン共鳴の信号が認められるように、た
とえば銅原子空孔のような結晶格子欠陥による局在単位
に捕獲されている。したがってλex=700nmで励起さ
れたときのCu2Oの光伝導現象は、確実にΓ 価電子帯
の正孔のみの自由運動だけに起因している。これらの正
孔がまた浅い捕獲中心に捉えられる可能性もあるが、こ
れまでの所のような兆候を示す信号は少なくとも磁気共
鳴吸収曲線には認められていない。
第2に、本発明者は、Q(T,λ)に“階段温度
PS”及び励起光によって生成された正孔密度n
(T)に,1つながりの“下端温度TPC”が予想外に
規則正しく配列していることを始めて見出した。これら
は後に実験結果で示すようにいずれも自由正孔の実空間
での凝縮によるものであろう。普通は帯間励起子は光学
的励起により生成され、それは伝導電子−正孔対で出来
ている。しかしここでの状況では、運動しうる担体とし
ては正孔のみが生成されていて、捕獲された電子は後に
とり残されている。考え方によっては自由な正孔の集合
自身が各々電荷移動型の価電子帯間励起子、あるいはブ
リルアン帯境界もしくはその(1/2)の近くの波数をもつ
電荷密度波(CDW)を伴っていると見做すことすら出来
る。他方、Cu2Oの伝導帯はΓ 特性あるいはスピン軌
道相互作用を考えに入れた表式によればΓ −特性を
有しているので、価電子帯内励起子が、禁止帯幅E
り下でつくられたとしても、いずれにせよ多少とも帯間
励起子と似かよった特性を有するにちがいない。光励起
でつくられた電子の大部分は運動出来ないのであるか
ら、ここで現れた光伝導現象でのQ(T,λ)の階段温
度TPSやn(T)の下端温度TPCは帯間励起子より
むしろ価電子帯内励起子についての規則に従うことが推
定出来る。運動出来ない電子はどれも光伝導信号Q(T)
の測定に寄与することは出来ないのである。
驚くべきことは、これらのCu2O光伝導における階段温度
PSや下端温度TPCがCu系酸化物高温超伝導体の臨
界温度TSCと明確な相関をもつことである。
結論としてCu2O結晶内に励起光によっして生成された正
孔による光伝導Q(T,λ)や正孔の易動度μ(T)の
温度依存性の実験結果を注意深くしらべることにり、λ
ex=700nmで光励起されたCu2Oにおいては温度を下げ
て行くとQ(T),μ(T)急激に増加するにもかかわらず
光伝導信号Q(T,λ)にいつくかの“階段温度
PS”が、あるいはそれから求められる正孔密度n
(T)に1つながりの新しい“下端温度TPC”の系列が
現れることを本発明者は世界で最初に知見した。
PSやTPCの値の1つながりの新しい系列は、励起
光によって生成された自由正孔が、価電子帯内電荷移動
型(CT型)励起子とともに全体としても運動しうる調和
した集団に実空間で凝縮してしまうものと考えられ、
“超伝導性光伝導”の視点から注目すべきものである。
実際これらがなんらかの意味で凝縮し始めていること
は、光吸収スペクトルにおける黄色系励起子の温度依存
性に凍結や(5)のマイクロ波応答についての結果から再
認識される。
(4)ところで、これらCu2Oの超伝導性光伝導の結果を実
際に用いる際には、適切な波数領域λと温度領域Tを設
定することが必要となる。温度領域については、素子を
作製する際に併用する超伝導物質で同系統のCu酸化物と
の関係を考えると、動作温度はT=4.2〜100Kに設定す
ることが望ましく、一方用いる励起光の波長としては、
吸収係数を考えると、実用的な波長領域としてはλ=45
0〜620nmをとることが望ましい。そこで例として、以下
ではλex=600nmとし、T=4.2〜80Kにおいてパルス
光伝導信号Q(T,λ)の励起光強度Iex依存性をQ
/Iexの形でしらべた。その結果が第12〜14図であ
る。これらの結果から容易に判るように、 Q(T,λ)=n(T,λ)eμ(T)Eは、T=5.0
Kではμ(T)(その値はμと同程度と考えてよい)が
exにより急激に減少することを反映して、Iex
対しては著しい非線型性を示す(第13図)。この機構の
内容は第14図に示すように、担体の数nはIexに殆ど
比例している(プロットa)。プロット(b)は(n/I
ex)を示す。またそれらの変化分Δ(プロットc)
そのものがIexに依存しているが、Δ∝Iex
関係があるためその原因は中性不純物濃度を上まわる帯
間励起子の生成に基づく散分機構によるものである。そ
こで線形性も良好で実用上もより高い操作温度を目指し
てT=77〜80KでのIex−依存性について検討した。
第15図に示すようにT=80Kでは (Q/Iex)が殆ど一定、あるいはQはIex
ついてきわめて良い線形依存性を示す。したがって後に
述べる超伝導オプトエレクトロニクス素子の材料として
Cu2Oを用いるには、Y-Ba-Cu-O系と組合わせてT=77Kの
窒素温度近傍で用いることが最適であることが理解出来
る。
(5)以上はすべて直流パルス電場E(ω=2πf=0)
に対する結果であったが亜酸化銅Cu2O結晶の交流電場E
ω、たとえばf=(ω/2π)=35GHz帯などのマイク
ロ波に対する応答の観測を、第16図に示される測定装置
を用いて行った。特に、その結果得られた77Kでの応答
Qω(T,λ,Eω,H;t)のパルス波形(第17図)
と4.2Kでの磁気共鳴吸収の形を第18図に示す。
まずマイクロ波光伝導信号Qω(T,λ,Eω,H;
t)の時間t−依存性は第17図が基本的であり、λex
=487,585nmで応答速度は充分高速である。
第18図に示した結果は、励起光波長λexによって、サ
イクロトロン共鳴吸収に寄与している担体が主として正
孔のみであるか、あるいはまた伝導電子をも共存させて
いるかを明確に示している。
また第19図は、λex=585nmでサイクロトロン共鳴吸
収曲線の形が励起強度Iexによってどのように変化す
るかを例示したもので、高密度光励起状態では共鳴吸収
曲線の線幅が広がると同時に、かなり異なる状態が実現
されていることを示していて、Cu2Oでは初めて観測され
たものである。
一方、これらの結果は、実用的には3〜5nsec程度の
パルス幅をもつ色素レーザー光励起に対するQω(T,
λ,Eω,H;t)の応答速度を示すものとして理解す
ることが出来、受光領域の材料としてこの様なCu2O結晶
を用いた超伝導オプトエレクトロニクス素子ないしは装
置が充分高速で動作しうる可能性を確実に明示してい
る。
そこで次に、電極領域の材料として、Y-Ba-Cu-O系酸化
物を例にとり説明する。第8図(b)〜(e)〜第9図(a),
(b)はY-Ba-Cu-O系酸化物の超伝導性光伝導及び超伝導性
の実験結果である。第8図(c)はY3-x-Bax-Cu3-Oz(X=
0)の光応答の温度依存性を示し、第8図(d)はY3-x-Ba
x-Cu3-Oz(X=1)の光応答の温度依存性を示してい
る。第8図(e)はY3-x-Bax-Cu3-Oz(X=1,X=2)の
暗抵抗率の温度依存性を示す。
一般式Y3-x-Bax-Cu3-Ozで表されるY-Ba-Cu-O系酸化物に
おいては、Baの含有量x及び酸素の含有量zに応じて超
伝導性から光伝導性に移行し、1.2≦x≦2,6.5≦z≦
7の範囲において超伝導性を呈し、0≦x≦1,7.0≦
z≦7.5の範囲においてその転移温度以下の温度で光伝
導性を呈することを見出している。第8図(c)及び(d)に
示すように、Y3-x-Bax-Cuy-Oz系においてx=0及びx
=1においてはその臨界温度以下の温度において光伝導
性を呈していることが明確に確認されている。これらを
まとめた結果が第10図(f)であり、広い意味での相関を
なしている。
これらの結果により、Y3-x-Bax-Cuz-Oz系の伝導材料に
おいて0≦x≦1の場合は超伝導性光伝導材料を構成
し、1≦x≦2の範囲において超伝導性材料を構成する
ことになる。したがって電極領域の材料としては1.2≦
x≦2のY3-x-Bax-Cu3-Oz系の材料を用いることができ
る。
このような転移温度以下の温度で光伝導性を有する材
料、ここでは特にそれらの基本物質であるCu2Oと、転移
温度以下の温度で超伝導性を有する材料、たとえばY1-B
a2-Cu3-Ozとを結合すれば、臨界温度以下の温度におい
て超伝導性と光伝導性を併有する有用な超伝導オプトエ
レクトロニクス装置を実現することができる。従って、
受光領域を超伝導材料で構成し、電極領域を超伝導性材
料で構成すれば、電極間において受光領域に入射する光
量に応じた出力電流を取り出すことができ、これにより
電力損失のない高速応答できる光スイッチチング素子、
光検出器、光増幅素子等の“超伝導オプトエレクトロニ
クス装置”を実現することができる。
さて第20図は本発明による超伝導オプトエレクトロニク
ス素子の一例の構成を示す線図的断面図である。本例で
は、超伝導フォトトランジスタ(V≠0)として利用
する例について説明する。SrTiO3またはMgOより成る基
板1を用い、この基板1上に光伝導性ゲート領域2を形
成する。ゲート領域2は、幅0.2μm〜1.0mmで厚さ1〜
10μmの光伝導性Cu2O層で構成する。このCu2O層はY1-B
a2-Cu3-Ozより成る超伝導材料の臨界温度以下の温度で4
50〜700nmの励起光波長域で特有な光伝導性をそなえて
いる。ゲート領域2の両側にソース領域3及びドレイン
領域4を形成する。これらソース領域3及びドレイン領
域4を、臨界温度90Kで超伝導性を示すY1-Ba2-Cu3-Oz
料層で構成する。さらに、ゲート領域2、ソース領域3
及びドレイン領域4上に光学的に透明で電気的絶縁性を
有する厚さ1μmのSiO2層5を形成し、この上にネサガ
ラス層6を形成する。ネサガラス上の電極とソース領域
3との間にバイアス源Vを接続すると共にソース領域
3とドレイン領域4との間にバイアス源VSD及び出力
抵抗Rを接続する。なお、Y3-x-Bax-Cu3-Ozの組成をx
=0→1に連続的に変化させて光伝導性Y-Ba-Cu-O系領
域2から超伝導性Y-Cu-O系領域3,4を構成することも
可能であるが、ここでは領域2には、より光応答Q
(T,λ)が著しく大きい超伝導性基本物質Cu2Oを用い
るのが特色である。
上述した構成の超伝導オプトエレクトロニクス素子をY-
Ba-Cu-O材料層の臨界温度90K以下の温度に冷却し、励起
波長域の光を照射すると、入射光量に応じたキャリアが
ゲート領域2に生成される。生成されたキャリアはソー
スドレイン間バイアスVSDによって加速され電流とな
り出力抵抗Rに出力電圧が発生する。なお、光生成キャ
リアは照射光量及びバイアス源Vに応じて生成密度が
定まり、それに比例して1次光電流をあたえるQ(T,
λ)や、ひいては2次光電流すら定まるから、目的に応
じてVを適切に設定することができる。このように構
成すれば、入射光量に応じて出力特性を得ることがで
き、従って超伝導光スイッチング素子を実現することが
できる。特にソース領域及びドレイン領域を超伝導材料
で構成しているので、動作時の発熱を伴なわない本質的
な超伝導オプトエレクトロニクス素子を実現することが
できる。
第21図は、第20図に示す超伝導オプトエレクトロニクス
素子をアレイ状に集積化した例を示す線図である。本発
明による超伝導オプトエレクトロニクス素子を1次元又
は2次元アレイ状に高密度に集積化すれば、素子間の適
切な超伝導配線をも背景にしながら動作時の発熱作用を
最小に抑制した撮像素子を実現できると共に、空間的に
並列演算を行なう光コンピュータの信号検出などの主要
部分を実現することができる。また用いる光源の波長選
択による多重チャネル化の可能性も考えられる。
第22図は本発明による超伝導オプトエレクトロニクス素
子を用いて、空間並列光コンピュータにおける投影相関
光学系での光演算を行なう例を示す線図である。アレイ
状光源10から複数の光信号を並列してマスクパターン11
に向けて投射する。マスクパターン11には演算処理内容
に応じた符号化像情報がマスク状に形成されており、マ
スクパターン11を通過した複数の光ビームはスクリーン
12を経て複合マスク受光素子アレイ13の対応する各素子
それぞれ並列にに入射する。各受素子にはマスクスクリ
ーンによって変調された符号化信号が形成されるので、
各受素子からの光電出力信号から演算結果が求められ
る。受素子アレイ13の各素子を本発明による超伝導オプ
トエレクトロニクス素子で構成すれば、動作時の発熱を
最小に抑制した状態で並列光演算を行なうことができ
る。
なお、上述した実施例では、3端子素子を例にして説明
したが、2端子素子として利用することもできる。すな
わち、V=0で生成されたキャリアは超伝導性光伝導
による超伝導近接効果を有しているから、この超伝導オ
プトエレクトロニクス素子は光の照射に基く超伝導ジョ
セフソン接合素子としても作用させ得ること予測され
る。この2端子素子は、“超伝導性光伝導制御ジョセフ
ソン接合素子”として位置付けることができる。この場
合には、ゲート幅と入射光量とを適切に選択する必要が
ある。
上述した超伝導性光伝導現象は、以下の機構に基づくも
のと考えられる。第5図および、さらに詳細に第11図に
示した励起光波長λex=700nmにおけるCu2Oのパルス
光伝導信号Q(T,λ)の驚くべき振舞は300K以下、た
とえば220〜250K近くで現れ、一度消滅しては復活し、
そして90〜110以下では巨大なまでに成長する。励起光
によってつくられた正孔の散乱機構は、100K以下では、
主として最近接原子同志が主としているω=153cm-1
の低振動数LOフォノンによって支配されている。充分弱
い電場で、kBT≦ω1,ω2をみたす様な低温の領域に話
を限れば、担体の散乱機構はLOフォノン吸収のみに限ら
れ、それは普通その後LOフォノン放出を伴うことにな
る。すなわち、共鳴散乱(Resonant Scattering)が起こ
る。しかし、とにかく一たびそのように強いLOフォノン
との相互作用が存在することを認めるならば、我々はLO
フォノンの出入を伴った、したがってそうであれば、超
伝導性光伝導においても“同位元素効果”をも当然伴っ
た形で“ポーラロン効果”を考えざるを得ない。“ポー
ラロン効果”は実際サイクロトロン共鳴の実験で認めら
れているが、少なくとも見掛け上としても結合定数αは
むしろ小さい。しかしこれは、静的誘電率kに比べて
光学的誘電率kopが比較的大きな値をもち、遮蔽効果
をもたらしていることによるのであろう。さらに、 Toyozawa(豊沢)によって最初に示唆されたように、
“ポーラロン”という用語は、電子的な素励起つまり励
起子によるポーラロン効果という概念すら包含してい
る。したがって、少なくとも100K以下でのCu2Oにおける
ポーラロンとは、LOフォノンと励起子の混成された形の
ものによって生成される独特の形のものである。逆にし
かし同様の考え方に沿えば、Cu2Oにおける価電子帯内の
励起子、あるいは伝導電子−正孔による伝導帯−価電子
帯間励起子は、広い意味での“ポーラロン状励起子”を
形成しているに相異ないと考えられる。このように考え
ると、これまでにも多くの文献上で述べられている様
に、100K以上で、帯間励起子とフォノンの相互作用が強
くなり、それが介入して来るため光学スペクトルが不鮮
明になるという理由も、ホール易動度の実験で検討され
たようにω=660cm-1の高振動数LOフォノンかあるい
はまたω=640cm-1の高振動数LOフォノンに起因する
ものとして自然に理解されるであろう。なお、励起子−
フォノン相互作用についてはより一般的見地からToyoza
waによって理論的に議論されている。
第2に、これまでにも延べ特に第18-(b)図に明確に示さ
れているとおり、励起光波長λex=690〜700nmの場合
のCu2Oの光励起状態Φexは、自由に動きうる正孔とし
てはΓ 価電子帯の正孔のみをもち、電荷密度波(CD
W)の起因としてはまわりに一緒に動きうる価電子帯内
励起子を伴った正孔のみの存在を想定すればよいことが
確認されている。なお、光励起で作られた電子の殆どは
局在していて動き得ない。またここで“帯内励起子”と
いう用語は、必ずしも一電子近似での伝導電子−正孔対
を意味するものではなく、むしろ多体問題の視点から価
電子帯内に光励起によって作られた電子や正孔のまわり
の素励起の量子化された形のものを意味している。この
ような1つの実体を、“帯内励起子(intraband excito
n)”または“電荷移動型励起子(CT-exciton)”、あるい
はブリルアン帯境界ないしはその(1/2)近くの波数の成
分を主として有する“電荷密度波(CDW)”状態、ある
いは、“短波長プラズマ振動”の集合と呼ぶことも出来
る。それ故、もしλex=700nmで励起されたCu2Oに光
励起で作られた正孔だけにより誘起された励起子を考え
るならば、第23-(a)図に示されているように、光励起さ
れた状態Φexでは、CT型ポーラロン励起子を伴った自
由正孔が本質的な意味で凝縮した集団として存在するに
相異ないと素直に考えることが出来る。しかも、これま
でにも議論されたことがあり、第23-(b),(c)図に模式的
に示されているように、この状態Φexは、絶縁体Y-Cu
-Oの光励起状態あるいはY-Ba-Cu-Oそして、La-Cu-O系で
の超伝導性試料の基底状態Φにきわめて類似のもので
ある。しかもCu2Oでは、伝導帯のΓ (またはΓ
)特性をもつとともに、帯内励起子と帯間励起子では
価電子帯が共通の役目をもっているので、両者は多少と
も共通の性格をもっている。そこでこの様な議論を充分
根拠のあるものと考えることが出来る。すなわち価電子
帯内励起子が媒介となって多数の正孔ポーラロンが本質
的に凝縮し、飛程の延長された新しい状態になるという
状況を充分思考出来る。
第3に、我々はこれまで、数回にわたってY-Cu-O,Y-Ba
-Cu-O,およびLa-Cu-O系材料についての“超伝導性光伝
導現象”の発見について報告して来た。“超伝導性光伝
導現象”は次のように定義される。すなわち、一般の光
伝導現象のうち、普通の光伝導(Normal Photoconductiv
ity)では試料の温度に下げて行くと光伝導信号Q(T,
λ)が指数関数的に急激に減少して行くのに対して、上
記の如き、ごく少数の特別な物質系の試料では、逆に特
定の励起光波長λexで、温度を下げて行くと光伝導信
号Q(T,λ)が現れて増加し、いくつかの階段状変化
を示す。また、これらの絶縁性試料における光伝導の
“出現温度”や“階段温度TPS”が同じ系列の伝導性
のよい試料での超伝導臨界温度TSCと一致するか少な
くともよく対応しているような特性を有する光伝導を
“超伝導性光伝導(Superconductive Photoconductivit
y)”と定義する。
このように考えるとCu系物質のTPSやTPCの値で容
易に認められるように、明確に結晶構造が異なるにもか
かわらず、ここで述べたCu2O結晶そのものの光伝導につ
いても、それが”超伝導性光伝導”であることに必然的
に注意が向く。したがって、上記のCu系酸化物質Y-Cu-
O,Y-Ba-Cu-O,La-Cu-O系で、以前に我々がCu2O-類似部
分と呼んでいたものは、決してその内部でCu2Oが部分的
に析出したものではなく、それらの内部のいずれかの部
分にO−(+)−Cu+(1+)−O−(+)のように
主として最近接原子間の領域で、価電子結合の部分が2
量体化(dimerized)したものに相異ない。
以上の結果のうち、特にパルス光伝導信号Q(T,λ)
についてのすべての実験結果、すなわち第1,5,8図
および第11図に示されているCu2OのみならずY-Cu-O,Y-
Ba-Cu-O系のQ(T,λ)と暗抵抗ρ(T)についての温度
依存性をすべてまとめて考えてみると、Cu2OのQ(T)
とY-Ba-Cu-O系のρ(T)の間に明らかに相関が存在す
ることを疑う人は誰もいないであろう。つまり、Y-Ba-C
u-O系のρ(T)での超伝導性のシルエットの形でCu2O
に超伝導性光伝導Q(T)が出現すること、あるいは逆
にCu2Oの光伝導Q(T,λ)のシルエットの形でY-Ba-C
u-O系のρ(T)に超伝導性が存在することは明白であ
る。Y-Cu-O系において正孔を光で生成して添加すること
は、Y-Ba-Cu-O系でBa-添加を行ったことと本質的に同等
である。それゆえ、最早、光伝導での超伝導性も暗抵抗
での超伝導性も、互いにどちらかが他より本質的である
という筋合いのものではない。超伝導性光伝導と高温超
伝導はちょうど写真フィルムのポジとネガのように、互
いに相補的な現象なのである。
波長λex=700nmでのCu2Oの光励起状態Φexでは、
伝導電子は存在せず自由担体としては正孔のみが生成さ
れているのであるから、これは超伝導性Y-Ba-Cu-O系の
基底状態Φと殆ど同等である。このように考えると、
La-Cu-O系,Y-Cu-O系,Y-Ba-Cu-O系で示されたように、
励起光の下でのCu2Oでの新規な光伝導の出現がCu−系で
の高温超伝導と深い相関をもつことは決して不思議なこ
とではない。
以上に述べたいくつかの実施例をとおして考察すると、
適切な励起光の下では亜酸化銅Cu2O結晶はCu系酸化物を
基礎とした高温超伝導体のすべての系に対して、一貫し
た基本物質の役目を果していることは明確で、これは本
発明者が世界で最初に知見したものである。
したがってこれらの絶縁体Cu2O系材料をCu系高温超伝導
体と組合わせてオプトエレクトロニクス素子を作製すれ
ば、各々の段階温度TPSあるいは下端温度TPCと臨
界温度TSCの整合性から、それらの温度以下できわめ
て調和のとれた、本質的な意味での“超伝導オプトエレ
クトロニクス素子及び超伝導オプトエレクトロニクス装
置”を創作することが可能となるであろう。これらはま
ったく革新的な最先端科学技術分野である。“超伝導オ
プトエレクトロニクス”という新分野の開拓をもたらす
であろう。
さらに、上述した実施例では、Y-Ba-Cu-O系材料を用い
ることを考えたがLa-Ba-Cu-O系材料のような別の超伝導
光伝導性材料系を用いることもできる。例えば、ゲート
領域をCu2Oの材料で構成し、電極領域を超伝導性を有す
るLa-Ba-Cu-O材料で構成すれば、同様な効果を有する超
伝導光伝導オプトエレクトロニクス素子を実現すること
ができる。
なお、ここでの主題ではないが、先にも述べたY-Cu-O,
Y-Ba-Cu-O系の超伝導性光伝導現象は、ここでの基本物
質Cu2Oと深い関係があり、以下の機構に基づくものと考
えられるので若干ふれておく。第9図(a)及び(b)に示し
た光伝導のスペクトル応答Q(λ,T)はY-Ba-Cu-O系
の試料の内部に、原子的な意味でCu2Oと類似する領域が
存在していることを暗示している。Cu2Oによる光吸収並
びに光伝導性は、実験的にも励起子理論によってもあま
り詳しく解明されてはいない。Wannier型励起子、また
は陽イオン殻内での電荷移動型Frenkel型励起子の典型
的な例であろう。ここでのQ(λ,T)における微細構
造の位置はCu2Oそのものの基礎吸収付近の構造とよく一
致している。我々はいくつかの際立った恐らく励起子に
よるものであろうと考えられる微細構造を認めることす
ら出来る。たとえばCu2Oと類似してY-Ba-Cu-O系の光伝
導応答スペクトルのλ≒580nm近傍にCu2Oの黄色系列励
起子のn=2状態に対応するものと考えられる構造が認
められる。そこで、 Y-Ba-Cu-O系の物質の内部には無視することのできな
い、少なくとも有限の比率でのCu2Oに類似する相が存在
する。そして、そこではそれぞれの結晶構造に若干の相
異をもつものの、光によって励起された伝導電子と正孔
が確かに動きまわれる状態にある(第23図(a)及び(b)参
照)。
標準的なタイプのCu2O結晶内の伝導電子と正孔は、むし
ろ、“大きいポーラロン”を形成していると考えられて
いる。また、Cu2OやY-Ba-Cu-O系絶縁体的試料において
は、“光伝導性Q(λ,T)の出現”が、“超伝導性の
出現”と明確に関係していて、あたかも超伝導性が光伝
導性の現象のうらに潜在しているかのように見える。そ
こでポーラロンの効果についていえば、それがLOフォノ
ンとの相互作用にもとづく“大きなポーラロン”であろ
うと、或いはヤーンテラー効果による“小さいポーラロ
ン”であろうと、または両者にもとずく中間結合の領域
のものであろうと、あるいはまた“電子分極によるポー
ラロン効果”であろうと少なくとも潜在的にはポーラロ
ン効果”は重要なものであろう。それらポーラロン効果
は、コヒーレントに混成した形での素励起としての複合
した効果をもっていると思われる。ここで電子分極によ
るポーラロンに特別の注意を払う必要があり、それは別
名“励起子ポーラロン”とも呼ばれているものである。
ここでの実験結果を見ると、ポーラロンや励起子の間に
密接な関係があることが認められる。
第23図(a)に示すように、これらのポーラロンや励起子
は、どれも酸素の(2p)とCuの(3d)の混成価電子状態
から後に(2p)(3d)あるいは(2p)(3d)10
の配置で“正孔”(白丸印)を残して、LOフォノンとも
相互作用をしながら主としてCuの(4S)伝導帯への帯間
遷移によって(4S)の伝導電子がつくり出されたもの
である。しかし、Y3-x-Bax-Cu3-Oz系のポーラロンは光
学的励起でも、YをBaで置換することでつくり出すこと
ができる第23図(b)及び(c)参照、この場合x=1で超伝
導体に移行している)。Cu(3d)と0(2p)の混成帯内
の正孔は帯間または帯内いずれの遷移によっても多体系
の基底状態からつくり出すことができるから、電子間の
相関効果は勿論きわめて重要である。Cu2+とCu3+
間の動的な価電子揺動もさることながら、Cu1+とCu
2+の間の動的な価電子揺動にも一層注意を払わなけれ
ばならない。それゆえ、高臨界温度をもつ超伝導機構に
対しては、その大小を問わずポーラロンの集合、特に励
起子と密接に関係した集合の潜在的役割を考える理由は
充分存在するる。ポーラロンと励起子の集合はバイポー
ラロン、ポーラロン励起子に集合、および/または最も
ありそうなのは動的な電子−フォノン相互作用と同様に
動的な電子相関にもとづく、“励起子媒介のバイポーラ
ロン”であると考られる。第9図(a)及び(b)に示すよう
に、Y-Ba-Cu-O系での光伝導応答Q(λ,T)は第1図
(a)に示すCu2Oの光吸収応答のスペクトルに極めて類似
している。したがって、既に述べたとおりここでの素励
起の研究は厖大なキャリァー密度の差にもかかわらず、
超伝導基底状態の性質を啓示していると考られる。さら
に、第23図(a)及び(b)の素励起状態(絶縁体)において
も、第23図(c)の基底状態(超伝導体)におけるジョセ
フソン効果と同様な減少の出現が予測できる。我々の知
識の及ぶ限りでは、これらが高臨界温度をもち反磁性を
確かに示すことが知られているY-Ba-Cu-O系の超伝導性
に登場するポーラロンと励起子による機構の最初の明確
な実験的証拠である。
(発明の構成) 以上説明したように本発明によれば、電極領域をCu系酸
化物超伝導材料で構成し、受光領域を上記超伝導材料の
臨界温度と一致または対応して、しかも特に大きな光伝
導性を示す“超伝導性光伝導基本材料Cu2O”で構成して
いるから、高感度で動作でき、しかも動作時のジュール
熱等の発熱作用を最小に抑制した本質的な意味での“超
伝導オプトエレクトロニクス素子”たとえば“超伝導性
光伝導制御ジョセフソン接合素子”、“超伝導フォトト
ランジスタ”などを実現することができる。また、本発
明による素子を2次元アレイ状に高密度に集積化した場
合、電極部及びリード部等が完全反磁性を持つから、こ
れら相互間の電磁的相互作用や外部磁界による影響を受
けず、ノイズの発生伝達を有効に抑制することができ
る。従って、熱的及び電磁的に最良の条件下で動作でき
る受光素子アレイを実現でき、例えば高速演算速度を持
つ空間並列光演算装置のような本質的にすぐれた“超伝
導オプトエレクトロニクス装置”を実現が可能である。
これらの効果は“超伝導オプトエレクトロニクス”とい
う最先端の科学技術分野をさらに大きく拓くことを可能
にした。
【図面の簡単な説明】
第1図(a)はCu2Oの温度に対する光伝導特性を示すグラ
フ、 第1図(b)はCu2Oの光伝導特性の波長依存性を示すグラ
フ、 第2図はCu2Oの光吸収スペクトルを説明するための模式
図、 第3図(a)及び(b)は光応答測定装置の構成を示す線図、 第4図は光応答測定装置の回路構成を示す回路図、 第5図はCu2Oの光応答特性の温度依存性を示すグラフ、 第6図及び第7図はCu2Oのホール移動度を示すグラフ、 第8図(a)〜(d)はY-Ba-Cu-O系セラミックスの光応答特
性を示すグラフ、 第8図(e)はY-Ba-Cu-O系セラミックスの暗抵抗の温度依
存性を示すグラフ、 第9図(a)及び(b)はY-Ba-Cu-O系セラミックスの光応答
特性の波長依存性を示すグラフ、 第10図はY-Ba-Cu-O系セラミックスの超伝導状態から光
伝導状態への移行を示す模式図、 第11図(a)及び(c)はCu2Oの光応答特性の広い温度域に亘
る温度依存性及びホール易動度を示すグラフ、 第12図(a)及び(b)はCu2Oのホール密度と温度の関係を示
すグラフ、 第13図はCu2OのIexとQx/Iexとの関係を示すグラフ、 第14図はCu2OのIexとキャリヤ濃度との関係を示すグラ
フ、 第15図はCu2Oの80KにおけるIexとQ2/Iexの関係を示すグ
ラフ、 第16図はイオン性結晶の光励起状態に対する35GHz帯ナ
ノ病時間分解サイクロトロン共鳴観測装置の構成を示す
線図、 第17図(a)及び(b)はT=77K、λ=487nm及びλ=585nm
における観測結果を示すグラフ、 第18図(a)り(c)はf=35.0 GHz,T=4.2K,λ=610,63
0,690nmにおけるCu2Oのマイクロ波特性を示すグラフ、 第19図はf=35 GHz,λ=585nm,T=4.2KにおけるCu2O
の磁場とQω(t)との関係を示すグラフ、 第20図は本発明による超伝導オプトエレクトロニクス素
子の一例の構成を示す線図的断面図、 第21図は本発明による超伝導オプトエレクトロニクス装
置の一例の構成を示す線図、 第22図は本発明による超伝導オプトエレクトロニクス素
子アレイを用いた空間並列演算装置の構成を示す線図、 第23図(a)〜(c)はY-Ba-Cu-O系セラミックスのエネルギ
ー(E)と状態密度N(E)との関係を示す模式図である。 1…基板、2…ゲート領域 3…ソース領域、4…ドレイン領域 V…ゲートバイアス源 VSD…ソース−ドレイン間バイアス源

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】臨界温度以下の温度条件下において超伝導
    状態となる電極領域と、 これら電極領域の間に形成され、上記臨界温度以下の温
    度条件下において並行して光伝導性となる受光領域と、 上記電極領域間に接続したバイアス源とを具え、 前記電極領域をCu系酸化物超伝導材料で構成し、 前記受光領域をCu2Oを含む超伝導性光伝導材料で構成
    し、 前記受光領域に入射する光量に応じて前記電極間電流が
    制御されるように構成したことを特徴とする超伝導性光
    伝導基本物質Cu2O系材料を用いた超伝導オプトエレクト
    ロニクス装置。
  2. 【請求項2】前記電極領域を、 一般式Y3-X−Bax−Cuy−Ozここで、 1≦x≦2、y=3、6.5≦z≦7の組成の酸化物超伝
    導性材料で構成したことを特徴とする請求項1に記載の
    超伝導性光伝導基本物質Cu2O系材料を用いた超伝導オプ
    トエレクトロニクス装置。
  3. 【請求項3】前記電極領域を、 一般式La2−Cu1−Oz、ここで、3.92<z≦4.02の組成の
    超伝導材料で構成したことを特徴とする請求項1に記載
    の超伝導性光伝導基本物質Cu2O系材料を用いた超伝導オ
    プトエレクトロニクス装置。
  4. 【請求項4】請求項1から3までのいずれか1項に記載
    の超伝導オプトエレクトロニクス装置を2次元アレイ状
    に集積化したことを特徴とする超伝導性光伝導基本物質
    Cu2O系材料を用いた超伝導オプトエレクトロニクス装
    置。
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