JPH0649588A - 耐硫化物応力腐食割れ性に優れる高強度鋼 - Google Patents

耐硫化物応力腐食割れ性に優れる高強度鋼

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JPH0649588A
JPH0649588A JP20895392A JP20895392A JPH0649588A JP H0649588 A JPH0649588 A JP H0649588A JP 20895392 A JP20895392 A JP 20895392A JP 20895392 A JP20895392 A JP 20895392A JP H0649588 A JPH0649588 A JP H0649588A
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JP
Japan
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steel
ssc resistance
test
strength
present
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JP20895392A
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English (en)
Inventor
Takahiro Kushida
隆弘 櫛田
Yasutaka Okada
康孝 岡田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】高い割れ発生限界応力を有し、さらに冷間加工
を受けたときの耐SSC性の低下が小さい高強度鋼を提
供する。 【構成】C:0.40〜0.60%、Si:0.35〜0.7 %、Cr:
0.1〜0.6 %、Mo:0.40〜1.5 %、Al:0.05〜0.15%お
よびB:0.0005〜0.0050%、さらに、Nb:0.01〜0.1
%、Ti:0.01〜0.1 %、V:0.01〜0.1 %およびZr:0.
01〜0.1 %のうちの1種以上を含有し、かつ(Mo/Cr)
≧1、0.45≦ (Si+Al) ≦0.8 を満足し、残部がFeおよ
び不可避不純物からなり、不可避不純物中のMn、P、
S、Oがそれぞれ 0.3%以下、 0.015%以下、 0.002%
以下、 0.002%以下である組成を有することを特徴とす
る耐硫化物応力腐食割れ性に優れる高強度鋼。上記鋼
は、さらにCa:0.0010〜0.0050%および REM:0.0010〜
0.010%のうちの1種以上を含有することができる 【効果】降伏強度が70kgf/mm2(100ksi) 以上で、かつ優
れた耐SSC性を有する高強度鋼が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、近年サワー化ととも
に深井戸化が進み、そのため高強度と優れた耐硫化物応
力割れ性(以下、耐SSC性と略記する。)を要求され
る油井管、すなわち、掘削用のドリルパイプあるいは生
産用のチュービング、ケーシング、またサワーガスやサ
ワーオイル用のラインパイプ、さらには化学プラント用
配管などの用途に用いて好適な降伏強度70kgf/mm2(100k
si) 以上の高強度と優れた耐SSC性を兼ね備えた鋼に
関する。なお、1ksi は0.703kgf/mm2(=6.89MPa)であ
る。
【0002】
【従来の技術】近年のエネルギー事情の変動に伴い、硫
化水素を含む原油や天然ガスの掘削、輸送、貯蔵などを
必要とする情勢になっている。特に、油井の深井戸化、
輸送効率の向上、さらには低コスト化のために、この分
野で用いられる材料については、これまで以上に高強度
化されたものが求められている。具体的にはこれまで
は、80〜90ksi グレードの降伏強度を有する鋼が多く要
求されていたが、近年では100〜110ksi以上の、場合に
よっては125ksiグレード鋼の要求が高くなってきてい
る。
【0003】現在のところ、API(アメリカ石油協
会)規格5ACにC90として規定されているような降伏
強度が90〜105ksiを有するような鋼材、あるいはC110
として規定されているような最小でも110ksiの高い降伏
強度を有する鋼材としては、焼入焼戻処理をされたCr−
Mo鋼が用いられるのが一般的である。この種の鋼材とし
ては、例えば、特開昭62−253720号公報には低合金高張
力油井用鋼が提案されている。さらにそれ以上の高強度
を有し、かつ耐SSC性に優れる鋼材として、特開昭63
−203748号公報に開示されるような焼戻温度を高くした
高C鋼が提案されいる。
【0004】このような鋼の耐SSC性を評価する指標
としては、NACE(米国腐食技術者協会)TMO177浴
(0.5%酢酸+5%食塩水、25℃、1気圧H2S 飽和) の中
で定荷重をかけた場合の割れ限界応力(割れを発生しな
い最大の応力)σthが用いられている。この試験法はN
ACE TMO177−90にA法として規定されているもの
である。上記の鋼は、この試験法を適用した場合にも、
σthが規格最小降伏応力の80〜85%以上を満足してお
り、この意味では十分な耐SSC性を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記の特開
昭62−253720号、特開昭63−203748号の各公報にも述べ
られているように、一般的な事実として水素脆化による
SSC(硫化物応力割れ)の感受性は高強度になるほど
高くなる。さらに、冷間加工による歪が鋼材に加わった
場合もSSC感受性は高くなる。特に、冷間加工による
耐SSC性の劣化は高強度材になるほど顕著である。
【0006】油井用鋼材の実用上の問題点として、施工
や取扱時に受ける傷(トングマークなど)あるいは寸法
矯正等のための冷間加工によって、耐SSC性が劣化す
る可能性がある。従って、このようなハンドリングダメ
ージなどを受けることを考慮して、冷間加工を受けた状
態での耐SSC性が、ある程度の値以上を有しているこ
とが重要であると判断されるが、上記の従来技術ではこ
の点が考慮されていない。
【0007】本発明の目的は、従来から考慮されている
高い割れ発生限界応力を有するのみならず、さらに冷間
加工を受けたときの耐SCC性の低下が小さい高強度鋼
を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、次の高
強度鋼にある。
【0009】(1) 重量%で、C:0.40〜0.60%、Si:0.
35〜0.7 %、Cr: 0.1〜0.6 %、Mo:0.40〜1.5 %、A
l:0.05〜0.15%およびB:0.0005〜0.0050%、さら
に、Nb:0.01〜0.1 %、Ti:0.01〜0.1 %、V:0.01〜
0.1 %およびZr:0.01〜0.1 %のうちの1種以上を含有
し、かつ(Mo/Cr)≧1、0.45≦ (Si+Al) ≦0.8 を満
足し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、不可避不
純物中のMn、P、S、Oがそれぞれ 0.3%以下、 0.015
%以下、 0.002%以下、 0.002%以下である組成を有す
ることを特徴とする耐硫化物応力腐食割れ性に優れる高
強度鋼。
【0010】(2) さらに重量%で、Ca:0.0010〜0.0050
%および REM:0.0010〜 0.010%のうちの1種以上を含
有することを特徴とする前記 (1)に記載の高強度鋼。
【0011】ところで、冷間加工された状態での耐SS
C性を判断する試験法としては、同じくNACE TM
O177−90にB法として規定される、いわゆるシェルタイ
プ試験が適当であると考えられる。この試験法では、中
央部に2個の応力集中穴を有する試験片を用いて、3点
曲げにより応力を付与するので、応力集中部で塑性変形
が生じる。この塑性変形が、施工時あるいは操業時に受
ける可能性のある傷や冷間加工を再現している。従っ
て、本発明でも、前記A法およびこのB法を用いて評価
することとする。
【0012】従来知見とそれらから導き出される考え方
には、以下のようなものがある。
【0013】同一強度で比較した場合、高い温度で焼戻
温度を受けた鋼の方が耐SSC性は高い。そして、Cお
よびMoの含有量が高いほど高温焼戻しが可能となる。す
なわち、耐SSC性が高くなる。従って、CおよびMoの
含有量の下限を明らかにする必要がある。
【0014】Crは焼入性を上げ、かつCr炭化物を形成し
て焼戻軟化抵抗を高める元素であり、その意味では必須
であるが、過剰の添加はH2S を含む溶液中での腐食速度
を増加させるので望ましくなく、適正なCr含有量の範囲
が存在する。
【0015】Mnは焼入性を上げる元素であり、従来のCr
−Mo鋼では積極的にMnを利用していた。ところが、Mnの
過剰の添加は耐SSC性を低下させることが知られるよ
うになった。また、このような高CのCr−Mo鋼は、本来
十分な焼入性を有しているので、焼入性向上のためのMn
は必要ないと考えられる。従って、このような高強度鋼
の耐SSC性を損なわないMn含有量の上限を明らかにす
る必要があると考えられる。
【0016】また、結晶粒の細粒化は耐SSC性を改善
することが知られており、その意味で細粒化元素として
Nb、Ti、V、Zrを積極的に添加することが必要である。
【0017】Bは焼入性を上げ、また粒界強度を高める
元素であるので、添加することが必須である。さらに、
不純物元素であるPおよびSは、いずれも粒界に偏析し
て粒界強度を下げ、また、Sは MnSを形成した場合それ
がSSCの起点となることがあるので、ともに含有量を
極力低くする必要がある。
【0018】MnS がSSCの起点とならないような形態
に制御するために、Caあるいは REM(レアアースメタ
ル)を必要に応じて添加することも可能である。
【0019】このような従来知見に加えて、SiとAlの総
量を適正な範囲にコントロールすると、さらに好適な結
晶粒の細粒化が達成され、ひいては耐SSC性の向上に
つながることが新たに明らかとなった。ただし、このと
きO(酸素)は低く抑える必要がある。
【0020】また、従来では焼入性の効果と経済性の観
点から、このような高強度鋼ではCr/Moは2前後とする
のが一般的であったが、特に耐SSC性に注目した場
合、Crを低くしてMoを高めると、H2S を含む溶液中での
水素侵入が抑制されて耐SSC性が向上することが新た
に判明した。
【0021】次に、図1および図2に基づいて本発明の
基礎となった新知見を説明する。
【0022】図1は、0.45%C−0.2 %Mn−0.01%P−
0.001%S−0.5 %Cr−1.5 %Mo−0.03%Nb− 0.001%
B− 0.001%O(酸素)鋼を対象として、Siを0〜1.2
%、Alを0〜0.5 %の範囲で変化させ、(Si+Al)含有
量と熱処理後の結晶粒度との関係を調査した結果を示す
図である。結晶粒度は、焼入焼戻後の鋼材のミクロ組織
を光学顕微鏡を用いて測定した。図1から(Si+Al)が
0.45〜0.80%の範囲が他に比べて細粒であることがわか
る。従って、このような(Si+Al)含有量の範囲を有す
る上記鋼では、高強度とともに耐SSC性に優れている
ことになる。
【0023】図2は、Mo/Crと最大水素透過係数との関
係を調査した結果を示す図である。
【0024】ただし、 0.5%Cr系として示す鋼では、
0.5%C−0.6 %Si−0.1 %Mn− 0.010%P− 0.001%
S−0.1 %Al−0.5 %Cr−0.05%V−0.0010%B− 0.0
01%O(酸素)−0.003 %Ca鋼を対象として、Moを0.25
〜1.25%の範囲で変化させた。1%Cr系として示す鋼で
は、0.45%C−0.5 %Si−0.2 %Mn− 0.010%P− 0.0
01%S−0.1 %Al−1%Cr−0.03%Nb−0.02%Ti−0.00
10%B− 0.001%O(酸素)鋼を対象として、Moを 0.2
〜3%の範囲で変化させた。最大水素透過係数は、焼入
焼戻後の鋼材から1mmの薄板試験片を切りだし採取し、
その片面をNACETMO177浴に曝し、反対面に透過し
てくる水素原子を水酸化ナトリウム水溶液中でイオン化
し、水素原子透過量を電流として測定する電気化学的な
方法によって測定した。
【0025】図2から、Mo/Crが1を上回ると最大水素
透過係数が急速に低下する傾向が見られる。これは、
(Mo/Cr)≧1を満足する上記鋼では、(Mo/Cr)<1
の場合に比べて固溶水素濃度が低く、この濃度が低い程
耐SSC性が良好となることを意味するものである。
【0026】本発明者らは、このような知見を総合し
て、高い割れ発生限界応力を有し、さらに冷間加工を受
けたときの耐SSC性の低下が小さい高強度鋼の組成範
囲を明らかにするに至った。すなわち、本発明は、Cお
よびMo含有量の下限、CrおよびMn含有量の上限、Mo/Cr
のバランス、(Si+Al)含有量の適正範囲を明らかにし
て、高強度化と耐SSC性向上を達成したところにその
特徴がある。
【0027】
【作用】以下に、本発明鋼の組成を前記のように定めた
理由を説明する。
【0028】C:Cは、焼入性を向上させ、さらに焼入
後の強度を確保するために必要な元素である。0.40%を
下回ると本発明鋼の用途に必要な強度と耐SSC性を確
保するための高温焼戻が困難になる。一方、0.60%を上
回ると焼入時に焼き割れが発生しやすくなり、また、焼
入してから焼戻までに遅れ破壊を生じることがある。望
ましいのは、0.45〜0.55%の範囲である。
【0029】Si:Siは、脱酸と結晶粒の細粒化のために
添加する。0.35%を下回ると本発明の目的とする耐SS
C性を確保するための細粒化の達成が困難となる。一
方、 0.7%を上回ると鋼の清浄性と靱性が損なわれる。
望ましいのは、 0.4〜0.6 %の範囲である。
【0030】Al:Alも脱酸と結晶粒の細粒化のために添
加する。0.05%を下回ると本発明の目的とする耐SSC
性を確保するための細粒化の達成が困難となる。一方、
0.15%を上回ると鋼の清浄性と靱性が損なわれる。
【0031】Si+Al:SiとAlは、上記のように結晶粒の
細粒化効果を有する。SiとAlの総量を適正な範囲にコン
トロールすると、さらに望ましい細粒化が達成される。
(Si+Al)含有量が0.45%を下回ると本発明の目的とす
る耐SSC性を確保するための細粒化の達成が困難とな
る。一方、 0.8%を上回ると再び粗粒化する傾向が見ら
れると同時に、酸化物系介在物が増加して鋼の清浄性と
靱性が損なわれる。望ましい範囲は、 0.5〜0.6 %であ
る。
【0032】Cr:Crは、焼入性および焼戻軟化抵抗を高
めるために添加する。 0.1%を下回るとその向上効果が
ない。一方、 0.6%を上回るとH2S 環境下での腐食速度
が増加して、NACE TMO177−90のA法に規定され
る定荷重試験時の試験片の減肉による真応力の増大に伴
い、割れ発生限界応力が低下する傾向が見られる。望ま
しいのは、 0.2〜0.5 %の範囲である。
【0033】Mo:Moは、焼入性向上と高温焼戻時の高強
度確保のために有効な元素である。0.40%を下回る
と本発明の用途に必要な強度と耐SSC性を確保するた
めの高温焼戻が困難になる。しかし、 1.5%を上回
るとMo添加の効果が飽和するだけでなく、Moの偏析によ
る耐SSC性の低下も生じる。望ましいのは、 0.5〜1.
0 %の範囲である。
【0034】Mo/Cr:上記の範囲で、Crを低くしてMoを
高めると、H2S を含む溶液中での腐食と水素侵入を抑制
して耐SSC性が向上する。この比が1を下回ると本発
明が目的とする強度と耐SSC性の確保が困難となる。
【0035】B:Bは、焼入性確保と粒界強化による耐
SSC性向上のために不可欠な元素である。0.0005%を
下回ると本発明の用途に必要な耐SSC性を確保するの
が困難になる。一方、0.0050%を上回るとB添加の効果
が飽和するだけでなく、過剰のB窒化物(BN)の析出によ
る耐SSC性の低下も生じる。
【0036】本発明鋼では、さらに次の各元素のうちか
ら1種以上を選んで含有させる。
【0037】Nb、V、TiおよびZr:これらの元素は、い
ずれも結晶粒を細粒化し、高強度化および靱性の改善に
有効な作用を有する。それぞれ0.01%を下回るとこの効
果がない。一方、 0.1%を上回るとその効果が飽和する
上に靱性が低下する。
【0038】Mn:Mnは、焼入性を向上させるが、過剰に
存在すると強度が上昇しすぎる。また、MnS の析出を促
進する。このため、 0.3%を上回ると高強度化しすぎ、
また MnSがSSCの起点となって、本発明の用途に必要
な耐SSC性が損なわれる。望ましいのは、 0.2%以下
の範囲である。
【0039】P:Pは、 0.015%を上回ると粒界偏析お
よびマクロ偏析により耐SSC性が低下する。不純物で
あるから、できるだけ低い方が望ましい。
【0040】S:Sは、 0.002%を超えると粒界偏析お
よび MnSの析出により、耐SSC性が低下する。また、
Caあるいは REMを添加しても硫化物系介在物の形態制御
が不可能になる。Sも不純物であるから、できるだけ低
い方が望ましい。
【0041】O(酸素):Oが 0.002%を上回ると、酸
化物系介在物が増加して鋼の清浄性と靱性が損なわれ
る。前記(Si+Al)含有量を適正にした上で 0.002%以
下にしなければならない。不純物であるから、できるだ
け低い方が望ましい。
【0042】本発明鋼は、上記の成分にさらに次の各成
分のうちから1種以上を選んで含有させることができ
る。
【0043】Ca:Caは、S系介在物の形態制御目的とし
て添加する。0.0005%以下ではその効果がない。一方、
0.0050%を超えるとCa系介在物の増加により、それを起
点としてSSCが発生する。
【0044】REM (レアアースメタル):REM も、S系
介在物の形態制御目的として添加する。0.0005%以下で
はその効果がない。一方、0.0050%を超えるとREM 系介
在物の増加によりそれを起点としてSSCが発生する。
【0045】本発明鋼は焼戻マルテンサイト組織のとき
に最も優れた耐SSC性を発揮するので、鋼材は焼入焼
戻処理とすることが望ましい。焼入はAc3点以上に加熱
してオーステナイト単相域から行うのがよく、焼戻温度
は 680℃以上Ac1点以下の間とし、特に 700℃以上の高
温での焼戻処理が望ましい。また、2回以上の焼入処理
によって細粒化を達成するとさらに耐SSC性が向上す
る。
【0046】
【実施例】表1(1) 〜表1(3) に示す化学組成を有する
鋼を実験室溶製して厚さ15mmの鋼板に熱間鍛造した後、
焼入処理してその90%以上をマルテンサイト組織とし、
さらに焼戻処理をしてから図3に示す2種類のSSC試
験片を採取した。図3(a)は、NACE TMO177−90
のA法に規定される定荷重試験用の標準引張試験片、図
3(b) は、同じくTMO177−90のB法に規定されるシェ
ル試験用の標準曲げ試験片を示す図である。
【0047】定荷重試験は、図3(a) の試験片に、1気
圧の硫化水素を飽和した25℃の 0.5%酢酸+5%食塩水
溶液中で各供試鋼の実降伏応力の80%の応力を付加して
720時間での破断割れの有無を調査した。シェル試験
は、図3(b) の試験片に 0.1気圧の硫化水素を飽和した
25℃の 0.5%酢酸+5%食塩水溶液中で、実降伏応力が
125ksi未満の供試鋼にはS値が15×104(psi)になるよう
に、また、実降伏応力が125ksi以上の供試鋼にはS値が
17×104(psi)になるように、応力を付加して 720時間で
の破断割れの有無を調査した。焼戻温度条件とこれらの
結果を表2(1) 〜表2(3) に示す。なお、S値とは、S
=6×D×E×t/L2 (ただし、D:曲げによる変位
量、E:ヤング率、t:試験片厚さ、L:曲げ支点スパ
ン距離)で表される値であり、1psi は1×10-3(ksi)
である。
【0048】試験No.1〜16は、110ksiグレードの強度を
狙った0.45C−0.45Si−0.25Mn− 0.5Cr− 0.8Mo−Nb−
B鋼を基本として、耐SSC性に及ぼす各元素の影響を
調べたものである。
【0049】試験No.1ではその組成が全て本発明で定め
る範囲を満たしているので、定荷重試験およびシェル試
験のいずれで評価しても耐SSC性に優れる。
【0050】試験No.2、4、5、6、7および8は、S
i、AlおよびSi+Al量の影響を調査したものであるが、
いずれもこれらの含有量のうちの一つ、もしくは二つが
本発明で定める範囲を外れていて細粒化が不十分である
から、定荷重試験で評価した耐SSC性は良好なもの
の、シェル試験で評価した耐SSC性は劣る。
【0051】試験No.3では耐SSC性はいずれで評価し
ても良好であるが、C含有量が本発明で定める範囲の下
限を下回っていて低強度であるために、本発明が目的と
する100ksiグレード以上の強度が得られなかった。
【0052】試験No.9ではMn含有量が、試験 No.10では
Cr含有量が、それぞれ本発明で定める範囲の上限を上回
っており、定荷重試験で評価した耐SSC性は良好なも
のの、シェル試験で評価した耐SSC性は劣る。
【0053】試験 No.11ではMo含有量が本発明で定める
範囲の下限を下回っており、また、試験 No.12および13
ではMo/Crが本発明で定める範囲の下限を下回ってお
り、定荷重試験で評価した耐SSC性は良好なものの、
シェル試験で評価した耐SSC性は劣る。これらの結果
から、MoやCrをそれぞれ単独で所定量含有させるのみで
は不十分であり、Mo/Crも前述の条件を満足させる必要
があることがわかる。
【0054】試験 No.14および No.15では、それぞれ
B、Oの含有量が本発明で定める範囲を外れており、定
荷重試験およびシェル試験のいずれで評価しても耐SS
C性は劣る。
【0055】試験 No.16では細粒化元素が添加されてお
らず、定荷重試験およびシェル試験のいずれで評価して
も耐SSC性は劣る。
【0056】試験 No.17〜28は125ksiグレードの強度を
狙った0.55C− 0.5Si− 0.2Mn−0.35Cr− 0.8Mo−V−
B鋼を基本として、耐SSC性に及ぼす各元素の影響を
調査したものである。
【0057】試験 No.17ではその組成の全てが本発明で
定める範囲を満たしているので、定荷重試験およびシェ
ル試験のいずれで評価しても耐SSC性に優れる。
【0058】試験 No.18〜28では、各成分のうちのいず
れか一つ、もしくは二つが本発明で定める範囲を外れて
いるから、耐SSC性が充分ではない。
【0059】試験 No.29〜50は、それらの各成分系で得
られる強度グレードにおいて、本発明の効果を調査した
ものである。これらのうちの本発明例ではいずれの成分
も本発明で定める範囲内にあり、定荷重試験およびシェ
ル試験のいずれで評価しても耐SSC性が優れている。
試験No.32 ではC含有量が本発明で定める範囲の上限を
外れており、焼き割れが生じた。ただし、焼き割れ部以
外の耐SSC性そのものはいずれの試験においても良好
であった。
【0060】
【表1(1)】
【0061】
【表1(2)】
【0062】
【表1(3)】
【0063】
【表2(1)】
【0064】
【表2(2)】
【0065】
【表2(3)】
【0066】
【発明の効果】本発明によれば、油井管、すなわち、掘
削用のドリルパイプあるいは生産用のチュービング、ケ
ーシング、またサワーガスやサワーオイル用のラインパ
イプ、さらには化学プラント用配管等の用途に用いて好
適な、降伏強度70kgf/mm2(100ksi) 以上で、かつ優れた
耐SSC性を有する高強度鋼が得られ、工業的効果は大
である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(Si+Al)含有量と熱処理後の結晶粒度との関
係を示す図である。
【図2】Mo/Crと最大水素透過係数との関係を示す図で
ある。
【図3】NACE TMO177−90に規定されるSSC試
験片を示す図であり、(a)はA法の定荷重試験片、
(b)はB法のシェル試験片である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.40〜0.60%、Si:0.35〜
    0.7 %、Cr: 0.1〜0.6 %、Mo:0.40〜1.5 %、Al:0.
    05〜0.15%およびB:0.0005〜0.0050%、さらに、Nb:
    0.01〜0.1 %、Ti:0.01〜0.1 %、V:0.01〜0.1 %お
    よびZr:0.01〜0.1 %のうちの1種以上を含有し、かつ
    (Mo/Cr)≧1、0.45≦ (Si+Al) ≦0.8 を満足し、残
    部がFeおよび不可避不純物からなり、不可避不純物中の
    Mn、P、S、Oがそれぞれ 0.3%以下、 0.015%以下、
    0.002%以下、 0.002%以下である組成を有することを
    特徴とする耐硫化物応力腐食割れ性に優れる高強度鋼。
  2. 【請求項2】さらに重量%で、Ca:0.0010〜0.0050%お
    よび REM:0.0010〜0.010 %のうちの1種以上を含有す
    ることを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012519238A (ja) * 2009-03-03 2012-08-23 バローレック・マネスマン・オイル・アンド・ガス・フランス 高降伏応力および高硫化物応力割れ抵抗性を有する低合金鋼

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