JP4449174B2 - 油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、原油あるいは天然ガスの油井、ガス井に使用される油井用マルテンサイト系ステンレス鋼管に関し、特に炭酸ガス(CO2)、塩素イオン(Cl- )などを含む極めて腐食環境の厳しい油井、ガス井で使用するに好適な、優れた耐食性、低温靭性および降伏強さ:860MPa(125ksi)以上を有する油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、原油価格の高騰や、近い将来に予想される石油資源の枯渇化を考慮して、従来は省みられなかったような深層油田や、開発が一旦は放棄されていた腐食性の強いサワーガス田等の開発が、世界的規模で盛んになっている。
このような油田、ガス田は、一般に深度が極めて深く、またその雰囲気は高温でかつ、CO2 、Cl- 等を含む厳しい腐食環境となっている。したがって、このような油田、ガス田で採掘に使用される油井管は、高強度で、しかも耐食性を兼ね備えた材質が要求される。
【0003】
CO2 、Cl- 等を含む環境下では、耐CO2 腐食性に優れた13%Crを含むマルテンサイト系ステンレス鋼材が使用されるのが一般的である。使用環境の悪化に伴い、13%Crのマルテンサイト系ステンレス鋼材にも、より優れた耐食性等の特性を具備することが要求されていた。
このような要求に対し、例えば、特開昭62-54063号公報には、耐食性、耐応力腐食割れ性を改善した油井管用マルテンサイト系ステンレス鋼が提案されている。特開昭62-54063号公報に記載された油井管用マルテンサイト系ステンレス鋼では、炭化物を減少するために極低C化し、P、Sの粒界への偏析を防止するために、P、Sの低減、さらにはCaの添加を行うことにより耐応力腐食割れ性が、またN、Moの添加を行うことにより耐食性が、向上するとしている。
【0004】
また、特開平2-243740号公報には、Ti、Nb、V、Zrの1種または2種以上を含有し、(Cr+Mo):10.5%以上に調整し、さらに単一なマルテンサイト組織となるようにCr、Mo、Si、Ni含有量を調整した油井用マルテンサイト系ステンレス鋼材が提案されている。特開平2-243740号公報に記載された油井用マルテンサイト系ステンレス鋼材では、上記したような構成とすることにより耐硫化物応力腐食割れ性が向上するとしている。しかし、特開昭62-54063号公報、特開平2-243740号公報に記載された鋼材の強度は、たかだか降伏強さYSで110ksi(758MPa)以下である。
【0005】
油田、ガス田の深度が深くなり、さらなる高強度の油井管が要求されている。そして最近では、寒冷地における油田開発も活発になってきており、高強度に加えて優れた低温靭性を有することを要求されることも多い。しかし、通常のマルテンサイト系ステンレス鋼では、強度が95ksi を超えると靭性が極めて低下して使用に耐えなくなるという問題があった。特開昭62-54063号公報、特開平2-243740号公報に記載された鋼材の強度は、降伏強さYSで110ksi(758MPa)以下の強度であり、特開昭62-54063号公報、特開平2-243740号公報に記載された鋼材では、降伏強さYSで125ksi(860MPa)以上の高強度とかつ高靱性をともに満足することは期待できない。
【0006】
そのため、従来は、高強度が要求される油井、ガス井では、冷間加工を施した高価な2相ステンレス鋼を用いざるを得なかった。このようなことから、油井管用として、安価な13%Cr系で、優れた耐CO2 腐食性を有し、しかも低温靭性に優れた高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管の開発が強く望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した従来技術の問題に鑑み、13%Crを含むマルテンサイト系ステンレス鋼管であって、CO2 、Cl- 等を含む過酷な腐食環境下においても優れた耐CO2 腐食性等の耐食性を示し、かつ降伏強さYSで125ksi(860MPa)以上の高強度と優れた低温靭性を有する油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を達成するために、まず耐CO2 腐食性の点で油井管に好適であると考えられている13%Crマルテンサイト系ステンレス鋼管に着目し、このマルテンサイト系ステンレス鋼管に降伏強さYSで860MPa以上の高強度と優れた低温靭性を、耐食性とともに具備させるための方策について鋭意研究した。
【0009】
その結果、本発明者らは、13%Cr鋼において、Cを従来より著しく低減し、Ni、Mo、Vを増量含有し、さらにS、Si、Al、Oを低減するとともに、Cr、Mo、Si、C、N、Ni、Mnの含有量を一定の関係式を満足するように調整することによって、良好な熱間加工性、耐食性が確保されるとともに、YSで860MPa以上の高強度でかつ優れた低温靭性が得られることを見出した。
【0010】
本発明は、上記した知見に基づいて完成されたものである。
【0011】
すなわち、本発明は、mass%で、C:0.05%以下、Si:0.50%以下、Mn:0.30〜1.50%、P:0.03%以下、S:0.005 %以下、Cr:11.0〜17.0%、Ni:2.0 〜7.0 %、Mo:3.0 %以下、Al:0.05%以下、V:0.20%以下、N:0.15%以下、O:0.005 %以下を、次(1)式
Cr+Mo+0.3Si −40C−10N−Ni−0.3Mn ≦10 ………(1)
(ここに、Cr、Mo、Si、C、N、Ni、Mn:各元素の含有量(mass%))
を満足し、残部Feおよび不可避的不純物よりなる組成を有する鋼素材を、熱間加工により鋼管としたのち、該鋼管に焼入れ温度を890 〜950 ℃(但し950 ℃を除く)とする焼入れ処理と、焼戻し温度を 500〜590 ℃とする焼戻処理を施して、残留オーステナイトを10%以下含有する焼戻マルテンサイト組織を有し、降伏強さYS:860MPa以上の高強度と、−20℃での吸収エネルギー V E -20 が100 J以上の高靭性を有する鋼管とすることを特徴とする耐食性、低温靭性に優れる油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法であり、また、本発明では、前記組成に加えてさらに、mass%で、Nb:0.20%以下を含有することが好ましく、また、本発明では、前記各組成に加えてさらに、mass%で、Cu:3.5 %以下を含有することが好ましく、また、本発明では、前記各組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.0005〜0.01%を含有することが好ましく、また、本発明では、前記各組成に加えてさらに、mass%で、Ti:0.3 %以下、Zr:0.2 %以下、B:0.01%以下、W:3.0 %以下のうち1種または2種以上を含有することが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管は、降伏強さYSが125ksi以上(860MPa以上)の高強度を有し、低温靱性に優れた鋼管である。まず、本発明鋼管の組成限定理由について説明する。なお以下、mass%は単に%と記す。
C:0.05%以下
Cは、マルテンサイト系ステンレス鋼管の強度を確保するために必要な元素であるが、本発明ではNiを含有するため、多量に含有すると焼戻し時に鋭敏化が起こりやすくなる。このため、本発明ではCは0.05%以下とした。また、耐食性の観点からはCはできるだけ低減するのが好ましいが、強度の確保を考慮して、Cは0.001 〜0.03%の範囲とするのが好ましい。
【0013】
Si:0.50%以下
Siは、通常の製鋼過程においては脱酸剤として必要な元素であるが、0.50%を超えると耐CO2 腐食性を低下させ、さらに熱間加工性をも低下させる。このため、Siは0.50%以下に限定した。
Mn:0.30〜1.50%
Mnは、マルテンサイト系ステンレス鋼管の強度を確保するために必要な元素であり、本発明では0.30%以上の含有を必要とするが、1.50%を超えて含有すると靭性に悪影響を及ぼす。このため、Mnは0.30〜1.50%の範囲に限定した。
【0014】
P:0.03%以下
Pは、耐CO2 腐食性、耐CO2 応力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物応力腐食割れ性をともに劣化させる元素であり、できるだけ低減するのが望ましいが、極端な低減は製造コストの上昇を招く。このため、Pは、工業的に比較的安価に実施可能でかつ耐CO2 腐食性、耐CO2 応力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物応力腐食割れ性を劣化させない範囲である0.03%以下とした。
【0015】
S:0.005 %以下
Sは、熱間加工性を著しく劣化させる元素であり、鋼管製造過程における生産性向上のためにも、できるだけ低減するのが望ましいが、極端な低減は製造コストの上昇を招く。0.005 %以下に低減すれば、通常の工程での鋼管製造が可能となることから、Sの上限を0.005 %とした。なお、好ましくは0.003 %以下である。
【0016】
Cr:11.0〜17.0%
Crは、耐CO2 腐食性、耐CO2 応力腐食割れ性を保持するために主要な元素であり、耐食性の観点からは11.0%以上の含有を必要とするが、17.0%を超えて含有すると熱間加工性が劣化する。このことから、Crは11.0〜17.0%の範囲に限定した。
【0017】
Ni:2.0 〜7.0 %
Niは、保護皮膜を強固にする作用を有し、それにより耐CO2 腐食性、耐CO2 応力腐食割れ性、耐孔食性および耐硫化物応力腐食割れ性を高める元素であり、また、固溶強化により鋼管の強度を増加させる元素でもある。Cを低減する本発明では、Niは強度増加を主目的に添加されるが、2.0 %未満の含有ではその効果が認められず、一方、7.0 %を超える含有はマルテンサイト組織の安定性を損なう。このことから、Niは2.0 〜7.0 %の範囲に限定した。
【0018】
Mo:3.0 %以下
Moは、Cl- による孔食に対する抵抗性を増加させる元素であり、0.5 %以上含有するのが望ましいが、3.0 %を超えて含有するとδフェライトの発生を招き、耐CO2 腐食性、耐CO2 応力腐食割れ性および熱間加工性を低下させる。また、Moは高価な元素であり3.0 %を超える含有は経済的に不利となる。このようなことから、Moは3.0 %以下に限定した。なお好ましくは1.5 %以下である。
【0019】
Al:0.05%以下
Alは、強力な脱酸作用を有する元素であるが、0.05%を超える含有は靭性に悪影響を及ぼす。このため、Alは0.05%以下に限定した。好ましくは0.02〜0.04%である。
V:0.20%以下
Vは、強度を増加させ、また耐応力腐食割れ性を改善する作用を有する元素であるが、0.20%を超える含有は、靭性を劣化させる。このため、Vは0.20%以下に限定した。好ましくは0.03〜0.10%である。
【0020】
N:0.15%以下
Nは、耐孔食性を著しく向上させる元素であり、0.01%以上含有するのが望ましいが、0.15%を超える含有は、種々の窒化物を形成して靭性を劣化させる。このため、Nは0.15%以下の範囲に限定した。
O:0.005 %以下
Oは、本発明鋼管の性能を十分発揮させるために、極めて重要な元素であり、できるだけ低減するのが好ましい。すなわち、O含有量が多いと各種の酸化物を形成して熱間加工性、耐CO2 応力腐食割れ性、耐孔食性、耐硫化物応力腐食割れ性および靭性を著しく低下させる。このため、Oは0.005 %以下に限定した。
【0021】
本発明では、上記した組成に加えて、さらにNb、あるいはCa、あるいはCuを単独あるいは複合して含有できる。またさらに上記した組成に加えて、Ti、Zr、B、Wの1種または2種以上を選択して含有できる。またさらに上記した組成に加えて、Nb、あるいはCa、あるいはCuを単独あるいは複合して含有し、さらにTi、Zr、B、Wの1種または2種以上を選択して含有できる。
【0022】
Nb:0.20%以下
Nbは、炭化物を形成し、強度を上昇させ、靭性を改善する作用を有する元素であるが、0.20%を超えての含有は、逆に靭性を低下させる。このため、Nbは0.20%以下に限定するのが好ましい。
Ca:0.0005〜0.01%
Caは、SをCaS として固定しS系介在物を球状化し、介在物の周囲のマトリックスの格子歪を小さくして、水素のトラップ能を下げ、耐水素割れ性を向上させる元素である。このような効果は0.0005%以上の含有で顕著となるが、0.01%を超え含有は、CaO の増加を招き、耐CO2 腐食性、耐孔食性を低下させる。このため、Caは0.0005〜0.01%に限定するのが好ましい。なお、より好ましくは0.001 〜0.005 %である。
【0023】
Cu:3.5 %以下
Cuは、保護皮膜を強固にして、鋼管中への水素の侵入を抑制し、耐硫化物応力腐食割れ性を高める元素であり、添加する場合には0.3 %以上含有するのが望ましいが、3.5 %を超えて含有すると、高温でCuS が粒界析出し、熱間加工性が低下する。このことから、Cuは3.5 %以下に限定するのが好ましい。
【0024】
Ti:0.3 %以下、Zr:0.2 %以下、B:0.01%以下、W:3.0 %以下の1種または2種以上
Ti、Zr、B、Wは、いずれも強度を上昇させ、耐応力腐食割れ性を改善する作用を有し、本発明では、必要に応じ選択して含有できる。Tiは0.3 %を、Zrは0.2 %を、Bは0.01%、Wは3.0 %を、それぞれ超えて含有すると靭性を劣化させるため、Tiは0.3 %、Zrは0.2 %、Bは0.01%、Wは3.0 %を、それぞれ上限とするのが好ましい。また、Bは0.0005%未満では上記した効果が少ないため、0.0005%以上とするのがより好ましい。すなわち、Tiは0.3 %以下、Zrは0.2 %以下、Bは0.01%以下、Wは3.0 %以下に限定するのが好ましい。
【0025】
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
本発明では、さらに、Cr、Mo、Si、C、N、Ni、Mnの含有量を上記した組成範囲内でかつ、次(1)式
Cr+Mo+0.3Si −40C−10N−Ni−0.3Mn ≦10 ………(1)
ここに、Cr、Mo、Si、C、N、Ni、Mn:各元素の含有量(mass%)
を満足するように調整する。(1)式左辺のA値=Cr+Mo+0.3Si −40C−10N−Ni−0.3Mn が10を超えると、所望の強度が満足されても低温靱性が劣化する。このため、本発明では、A値を10以下に限定した。
【0026】
また、本発明鋼管は、残留オーステナイトを面積率で10%以下含有する焼戻しマルテンサイト組織を有する。残留オーステナイト量が面積率で10%を超えると高強度を安定して確保することが困難となる。
つぎに、本発明鋼管の製造方法について、説明する。
上記した組成の鋼素材を熱間加工により鋼管とする。本発明では鋼素材の製造方法についてはとくに限定する必要はない。転炉、電気炉等の通常公知の溶製方法で上記した組成の溶鋼を溶製し、あるいはさらに2次精錬等を付加したのち、連続鋳造法等の通常公知の鋳造方法で鋼素材とするのが好ましい。
【0027】
また、本発明では、鋼素材の熱間加工方法についてはとくに限定する必要はなく、通常の継目無鋼管の製造工程を用いて継目無鋼管とすればよい。継目無鋼管の製造工程としては、マンドレルミル方式、プラグミル方式等の熱間加工による製造工程が好ましい製造工程である。なお、継目無鋼管以外の電縫鋼管、UOE鋼管の製造工程を用いて鋼管としてもよい。
【0028】
熱間加工により製造された鋼管は、890 〜950 ℃(但し950 ℃は除く)の温度範囲に加熱して冷却する焼入れ処理を施されたのち、焼戻し温度を 500〜590 ℃とする焼戻処理を施される。
焼戻し温度が500 ℃未満、あるいは590 ℃を超えると、安定してオーステナイトを面積率で10%以下析出させることができず、高強度と優れた低温靱性を具備することができない。焼戻し温度が500 ℃未満では、オーステナイトが析出せず、また590 ℃を超えると析出するオーステナイト量が多くなりすぎ強度が低下する。なお、焼戻し処理における冷却はとくに限定する必要はなく空冷、あるいは水冷いずれでもよい。
【0029】
また、焼戻し処理前の焼入れ処理では、加熱温度が890 ℃未満では、組織の均一化が不十分になる場合があり、950 ℃を超えると結晶粒の粗大化が生じ、靱性劣化の原因になる場合がある。このため、焼入れ処理の加熱温度は890 〜950 ℃(但し950 ℃は除く)の温度範囲とする。なお、焼入れ処理における冷却はとくに限定する必要はなく空冷、あるいは水冷いずれでもよい。
【0030】
【実施例】
表1に示す組成の溶鋼を充分に脱ガスした後、100 キロ鋼塊とし、研究用モデルシームレス圧延機により外径3.3 インチ(83.8mmφ)、肉厚0.5 インチ(12.7mm)のパイプ(鋼管)を作製した。次いで各パイプから試験片素材を切り出し、920 ℃で1時間加熱後、空冷し、さらに540 〜620 ℃で30分間の焼戻しを施した。
【0031】
得られたパイプについて、組織、引張特性、低温靭性、耐食性を調査した。
(1)組織
各パイプから試験片を採取し、管長手方向と直交する断面(C断面)で走査型電子顕微鏡を用いて組織を観察した。また、組織中の残留オーステナイト(γ)量は、X線回折装置を用いて、管のC方向断面から試験片(10mm厚×10mm×10mm)を採取し、γの(220 )からの回折強度と、αの(211 )からの回折強度との比から算出した。
(2)引張特性
各パイプから、JIS 10号試験片を鋼管の長手方向から採取し、引張試験を実施し、降伏強さYS、引張強さTSを求めた。
(3)低温靱性
低温靱性は、シャルピー衝撃試験を実施し評価した。各パイプからJIS 4号試験片を採取して、試験温度:−20℃でシャルピー衝撃試験を実施し、吸収エネルギー VE-20 を求めた。
(4)耐食性
各パイプから、厚さ3mm×幅30mm×長さ40mmの腐食試験片を機械加工によって採取し、オートクレープ中で腐食試験を実施し、耐食性を評価した。腐食試験の条件は、CO2 ガス:30気圧、温度:150 ℃の20質量%NaCl水溶液中で2週間浸漬する条件とした。腐食試験後、試験片の重量を測定し、腐食減量を求めた。また、腐食試験後の試験片表面を10倍のルーペで孔食の有無を観察した。
【0032】
この腐食減量から計算した腐食速度と試験片表面の孔食発生の有無で耐食性を評価した。
これらの結果を表2に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
本発明例は、いずれもYS:860MPa以上の高強度を有し、−20℃での吸収エネルギー VE-20 が100 J以上と高強度でかつ優れた低温靱性を有し、しかも腐食速度が0.1mm/y 未満で、孔食の発生も見られず耐CO2 腐食性にも優れた鋼管となっている。
一方、本発明の範囲を外れる比較例では、YS:860MPa以上の高強度が得られないか、あるいは低温靱性が劣化しているか、あるいは腐食速度が0.1mm/y 以上か、孔食の発生が認められるかして耐CO2 腐食性が劣化している。
【0036】
このように、本発明鋼管は高強度でかつ、低温靭性、耐炭酸ガス腐食性に優れ、炭酸ガスを含む寒冷地の油井環境で油井管として十分使用可能であることがわかる。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、過酷な環境で使用される油井管として十分に使用できる高強度、高靱性でかつCO2 、Cl- を含む高温の厳しい腐食環境下においても十分な耐食性を有する高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管を安価に安定して提供でき、産業上格段の効果を奏する。
Claims (5)
- mass%で、
C:0.05%以下、 Si:0.50%以下、
Mn:0.30〜1.50%、 P:0.03%以下、
S:0.005 %以下、 Cr:11.0〜17.0%、
Ni:2.0 〜7.0 %、 Mo:3.0 %以下、
Al:0.05%以下、 V:0.20%以下、
N:0.15%以下、 O:0.005 %以下
を、下記(1)式を満足するように含み、残部Feおよび不可避的不純物よりなる組成を有する鋼素材を、熱間加工により鋼管としたのち、該鋼管に焼入れ温度を890 〜950 ℃(但し950 ℃を除く)とする焼入れ処理と、焼戻し温度を 500〜590 ℃とする焼戻処理を施して、残留オーステナイトを面積率で1.4 %以上10%以下含有する焼戻マルテンサイト組織を有し、降伏強さYS:860MPa以上の高強度と、−20℃での吸収エネルギー V E -20 が100 J以上の高靭性とを有する鋼管とすることを特徴とする耐食性、低温靭性に優れる油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。
記
Cr+Mo+0.3Si −40C−10N−Ni−0.3Mn ≦10 ………(1)
ここに、Cr、Mo、Si、C、N、Ni、Mn:各元素の含有量(mass%) - 前記組成に加えてさらに、mass%で、Nb:0.20%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、mass%で、Cu:3.5 %以下を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、mass%で、Ca:0.0005〜0.01%を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、mass%で、Ti:0.3 %以下、Zr:0.2 %以下、B:0.01%以下、W:3.0 %以下のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の油井用高強度マルテンサイト系ステンレス鋼管の製造方法。
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