JPH06306096A - ペプチド誘導体及びその用途 - Google Patents

ペプチド誘導体及びその用途

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JPH06306096A
JPH06306096A JP6009893A JP989394A JPH06306096A JP H06306096 A JPH06306096 A JP H06306096A JP 6009893 A JP6009893 A JP 6009893A JP 989394 A JP989394 A JP 989394A JP H06306096 A JPH06306096 A JP H06306096A
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JP6009893A
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Hideto Mori
英登 森
Hiroyuki Komazawa
宏幸 駒澤
Masayoshi Kojima
政芳 小島
Ikuo Saiki
育夫 済木
Ichiro Azuma
市郎 東
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 細胞接着性蛋白質様の活性を保持しており、
簡便な手段で合成可能であり、血液中での安定性の高い
新規なペプチド誘導体を提供する。 【構成】 下記式(I)で表される配列を構成単位とし
て有するペプチドと適当な有機分子が共有結合してなる
化合物であって、1分子内に定まった複数個の式(I)
で表される配列を含んでいることを特徴とするペプチド
誘導体またはその薬学上許容できる塩有効成分として含
有してなる、ガン転移抑制剤。 Arg−Gly−Asp 式(I)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は特定の構成を有するペプ
チドの誘導体に関するものであり、より詳しくは細胞接
着性蛋白質であるフィブロネクチンの接着コア配列ペプ
チドの誘導体またはその薬学上許容可能な塩、及びその
用途に関するものである。
【0002】
【従来技術】フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネク
チン等は細胞と結合組織との結合に関与し、また動物細
胞の細胞機能に関連した種々の生物活性を有する蛋白質
であり、細胞接着性蛋白質と総称される。例えばフィブ
ロネクチンは肝臓で生合成され、ヒト血漿中に約0.3 mg
/mlの濃度で存在する糖蛋白質である。
【0003】フィブロネクチンはその1次構造が分子ク
ローニングを用いて決定されており(Koarnblihtt, A.
R. et al., EMBO Journal, 4巻, 2519 (1985))、分子
量約250KのポリペプチドであるA鎖と約240Kの
B鎖がC末端附近でジスルフィド結合した2量体蛋白質
であることが明らかにされている。またラミニンについ
ても佐々木ら(Sasaki, M. et al., Proc. Natl. Acad.
Sci. USA., 81巻, 935 (1987), Sasaki, M. et al.,
J. Biol. Chem., 262巻, 17111 (1987))によりその1
次構造が決定されている。ラミニンはA、B1、B2と
よばれる3本のポリペプチド鎖から構成されており、十
字架状の構造をとっていることが知られている。
【0004】そして細胞接着性に関与する結合部位の研
究も行われ、フィブロネクチンの細胞接着部のコア配列
はArg−Gly−Asp(RGD)なるトリペプチド
であることが1984年に報告された(Pierschbacher, M.
D. et al., Nature 309巻, 30(1984))。またラミニン
の細胞接着部位のコア配列はTyr−Ile−Gly−
Ser−Arg(YIGSR)で表されるペンタペプチ
ドであることも解明されている(Graf, J. et al., Cel
l 48巻, 989 (1987))。
【0005】これらフィブロネクチンやラミニンは、上
記コア配列を介して細胞のレセプターと結合することに
より各種の情報を細胞に伝達し、またヘパリン、コラー
ゲン、フィブリン等の生体高分子とも結合して細胞と結
合組織との接着、細胞の分化、増殖に関与しているもの
と考えられている。
【0006】このように細胞接着性蛋白質は多様な生物
活性を有するため、その活性部位配列ペプチドを用いた
研究が精力的になされている。例えばフィブロネクチン
の細胞結合部のコア配列の利用としては、ポリマーにR
GD配列を有するペプチドを共有結合させ、人工臓器用
基体や動物細胞培養用基体として用いる方法(特開平1-
309682号公報、特開平1-305960号公報、WO 90/05036 A
特許)、RGD配列を有するペプチドに疎水性領域を連
結することにより目的とするペプチドを固体表面に付着
させ、歯科用埋め込み剤や組織培養基体に利用する方法
(WO 90/11297A特許)、RGD配列を有する種々の環状
及び鎖状オリゴペプチドまたはその類縁体を用いて血小
板凝集を阻害する方法あるいは血栓症を予防、治療する
方法(高分子学会予稿集第38巻、3149 (1989)、特開平2
-174797号公報、特開平3-11830号公報、特開平3-118331
号公報、特開平3-118398号公報、特開平3-118397号公
報、特開平3-118333号公報、WO 91/01331特許、WO 91/0
7429特許、WO 91/15515特許、WO 92/00995特許)、RG
Dペプチドとヒアルロン酸を共有結合した化合物を用い
て血小板凝集を調節する方法(特開平4-134096号公
報)、RGD配列を有するペプチドを細胞移動制御剤と
して用いる方法(特開平2-4716号公報)、RGD配列を
有するペプチドを固定化した膜を細胞接着膜として用い
る方法(高分子学会予稿集第37巻、705 (1988))、RG
DS配列を有するポリペプチドを体外血液用血小板保護
剤として用いる方法(特開昭64ー6217号公報)、ポリペ
プチド分子内に細胞接着活性を有するペプチドを付加す
ることにより人工機能性ポリペプチドとして利用する方
法(特開平3-34996号公報)等が開示されている。
【0007】更に近年、細胞接着性蛋白質はガン転移に
関与する生体分子としても注目されてきている。ガン転
移の一連の段階では、ガン細胞は種々の宿主細胞や生体
高分子と接触する。このときフィブロネクチンやラミニ
ンのような細胞接着性分子が存在すると該細胞は多細胞
塊を形成し、ガン細胞の増殖や生存がより容易になる。
ところが、たとえばフィブロネクチンの接着部位コア配
列であるトリペプチドRGDが共存すると、競争的にガ
ン細胞上のフィブロネクチンレセプターと結合するため
細胞接着がブロックされ、ガン転移阻害作用を示すこと
が報告されている(Science 238巻, 467 (1986))。
【0008】しかしながらRGDペプチドはそれ単独で
は細胞接着活性が充分でないため、効果の増強をはかる
目的で該配列を有するオリゴペプチド、環状オリゴペプ
チド、あるいはその繰返し配列を有するポリペプチドを
用いてガン転移を制御する方法(Int. J. Biol. Macrom
ol., 11巻, 23 (1989)、同誌, 11巻, 226 (1989)、Jpn.
J. Cancer Res., 60巻, 722, (1989)、特開平2-174798
号公報)、あるいは腫瘍再発を防止する方法(特開平2-
240020号公報)が試みられている。またフィブロネクチ
ン分子中の細胞接着ポリペプチドとヘパリン結合ポリペ
プチドを構成単位とするポリペプチドを用いてガン転移
を抑制する方法(特開平3-127742号公報)も報告されて
いる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述のようにフィブロ
ネクチン等の細胞接着性蛋白質の活性部位コア配列は様
々な生物活性を保持しているため、その応用価値は高い
ものと考えられる。しかしながら該コア配列の細胞接着
活性が充分でないため、それらのガン転移抑制作用は実
際の医療に応用するためには満足できるものではなかっ
た。また一般に薬物が生体に投与されたのち薬効を維持
するためには、それ自体の生物活性の強さのみならず薬
物の生体内での安定性(例えば血流中での滞留時間や排
泄される時間など)が重要であることが知られている。
細胞接着性蛋白質の活性部位コア配列ペプチドも例外で
はなく、それ単独ではペプチド類に特有の速い代謝分解
や***が起こり、結果的に所望の効果が期待できない場
合も生ずる。そこで生体内での安定性を向上させるため
従来技術の項で説明したような種々の方法が報告されて
いるが、それらの化合物のなかには未だ生物活性が不充
分であったり、合成が困難なものも多い。またポリエチ
レングリコール(PEG)等の高分子と該コア配列を連
結する方法や、該コア配列を繰返すことにより高分子量
化を行う方法も知られているが、これらの方法では目的
物の構造や分子量を特定して合成を行うことは極めて困
難であり、この点で更に有効な物質の開発が必要とされ
ていた。そこで本発明者らは細胞接着性蛋白質であるフ
ィブロネクチンの持つ種々の生物活性を充分に保持し、
合成も容易でかつ血液中での安定性の高い新規な化合物
を求めて鋭意検討を行った結果、公知のフィブロネクチ
ンコア配列ペプチド誘導体に比べてガン転移抑制能が大
きく、さらに簡便な手段で合成可能な新規なペプチド誘
導体を見出し、本発明を完成するに至った。従って本発
明の目的は、細胞接着性蛋白質様の活性を充分に保持し
ており、簡便な手段で合成可能であり、血液中での安定
性の高い新規なペプチド誘導体を提供することにある。
本発明はさらにガン転移阻害活性の高い新規なペプチド
誘導体を提供することを目的とする。本発明はさらに上
記ペプチド誘導体を含有してなる薬物組成物の提供も目
的とする。
【0010】
【課題を解決する手段】上記課題は、下記式(I)で表
される配列を構成単位として有するペプチドと適当な有
機分子が共有結合してなる化合物であって、1分子内に
定まった複数個の式(I)で表される配列を含んでいる
ことを特徴とするペプチド誘導体またはその薬学上許容
できる塩を見出したことにより達成された。 Arg−Gly−Asp 式(I) ここでArg、Gly、Aspは、アルギニン、グリシ
ン、アスパラギン酸残基をそれぞれ表す。これらのアミ
ノ酸(グリシン残基は除く)はD-体、L-体、ラセミ体
のいずれでもよいが、好ましくはL-体である。
【0011】本発明において使用されるペプチド配列
は、ペプチド鎖中あるいはその末端にArg−Gly−
Asp配列を構成単位として有するオリゴペプチドであ
って、その残基数は7残基以下であるものが望ましい。
またペプチド鎖のカルボキシ末端側は任意にアミド化さ
れていてもよい。具体的なペプチドとしては、以下に示
すオリゴペプチドを挙げることができる。 Arg−Gly−Asp−Thr Arg−Gly−Asp−Ser Arg−Gly−Asp−Val Gly−Arg−Gly−Asp−Ser Asp−Arg−Gly−Asp−Ser Gly−Arg−Gly−Asp−Ser−Pro−A
la
【0012】本発明において、式(I)で表される配列
を構成単位として有するペプチドを有機分子と共有結合
するのは、有効なペプチドの周辺を修飾することによ
り、生体内酵素による分解から保護したり、また高分子
量にして徐放効果を付与するためである。式(I)で表
される配列を構成単位として有するペプチドと有機分子
の結合様式としては、アミド結合、イミド結合、ウレタ
ン結合、尿素結合のなかの少なくとも1種を挙げること
ができる。なおここでアミド結合とはカルボアミド、ス
ルホンアミド、ホスホンアミドのいずれをも意味する。
本発明のため使用することの可能な有機分子としては、
薬学的に許容されるものであり、有用な生物活性を減ず
ることなく、分子全体の水溶性を妨げず、さらに式
(I)で表される配列を構成単位として有するペプチド
中のアミノ基と反応して上記共有結合を形成しうるよう
な官能基を、1分子中に2個以上の定数個、好ましくは
2個以上6個以下有するものであれば、目的に応じて使
い分けることができる。つまり本発明のペプチド誘導体
は、1分子中に定まった複数個の式(I)で表される配
列を有することになる。従っていわゆるポリマー類とは
異なり、分子構造は明確であることが特徴である。
【0013】本発明において用いられる具体的な有機分
子としては、まず価数が2〜6価の有機酸、より具体的
には多価カルボン酸を挙げることができる。多価カルボ
ン酸の価数としては上述の通り2〜6価であることが好
ましく、また芳香族系、脂肪族系多価カルボン酸いずれ
をも用いることが可能である。具体的な多価カルボン酸
としては、トリメシン酸(1,3,5-ベンゼントリカルボン
酸)、テレフタル酸、テトラヒドロフランテトラカルボ
ン酸、ピロメリット酸(1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボ
ン酸)、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、アジピ
ン酸(ヘキサン2酸)、クエン酸、リンゴ酸、1,2,3-プ
ロパントリカルボン酸等が挙げられる。多価カルボン酸
とペプチド中のアミノ基を反応させる方法としては、ジ
シクロヘキシルカルボジイミド等の縮合剤を用いる方法
も挙げられるが、多価カルボン酸を活性アシル誘導体に
変換ののち縮合する方法が実用的かつ有利である。活性
アシル誘導体としては酸ハロゲン化物、より好ましくは
酸塩化物が挙げられる。多価カルボン酸の相当する酸塩
化物への変換は公知の方法により行うことができるが、
市販品を購入することも可能である。
【0014】本発明において用いられる他の有機分子と
しては、多価スルホン酸を挙げることができる。多価ス
ルホン酸の価数としては2〜6価であることが好まし
い。また芳香族系、脂肪族系多価スルホン酸いずれをも
用いることが可能であるが、2価または3価の芳香族ス
ルホン酸を用いることが特に好ましい。具体的な多価ス
ルホン酸としては、1,3-ベンゼンジスルホン酸、1,5-ナ
フタレンジスルホン酸等が挙げられる。これらの多価ス
ルホン酸とペプチド中のアミノ基を反応させてスルホン
アミド結合を形成する方法としては、活性誘導体である
スルホニルクロライド等に変換ののち縮合する方法が実
用的かつ有利である。多価スルホン酸の相当するスルホ
ニルクロライドへの変換は公知の方法により行うことが
できるが、市販品を購入して利用することも勿論可能で
ある。
【0015】また本発明において用いられる他の有機分
子としては、多価イソシアナート、イソチオシアナート
類を挙げることができる。イソシアナート、イソチオシ
アナート類は、イソシアン酸及びイソチオシアン酸の活
性誘導体ともみなすことができる分子である。多価イソ
シアナート、イソチオシアナートの価数としては2〜6
価であることが好ましい。また芳香族系、脂肪族系多価
スルホン酸いずれをも用いることが可能であるが、2価
の脂肪族イソシアナート、イソチオシアナートを用いる
ことが特に好ましくまた現実的である。具体的にこのよ
うな条件を満たすイソシアナート、イソチオシアナート
としては、ヘキサメチレンジイソシアナート等を挙げる
ことができる。多価イソシアナート、イソチオシアナー
ト類の合成法としては、相当する多価アミンとホスゲン
(条件によってはホスゲンダイマー)あるいは二硫化炭
素を反応させる方法等により合成することができる。イ
ソシアナート、イソチオシアナート類の合成法として
は、新実験化学講座14、有機化合物の合成と反応(II
I) P.1490 〜1509に詳述されている。
【0016】さらに本発明において好ましく用いること
の可能な他の有機分子として、式(I)で表される配列
を構成単位として有するペプチド中のアミノ基と反応し
て共有結合を形成しうるような異なった種類の官能基
を、一分子中に2個以上の定数個有するようなものも挙
げることができる。このような担体としては、以下に示
すような多官能性化合物が挙げられる。
【0017】
【化1】
【0018】O=C=N−(CH2 n −COCl 上記式中、nは例えば2〜5の整数である。
【0019】以上説明してきた中でも、トリメシン酸
(1,3,5-ベンゼントリカルボン酸)及びテトラヒドロフ
ランテトラカルボン酸が、式(I)で表される配列を構
成単位として有するペプチドと共有結合を形成する有機
分子として最も好ましい。
【0020】本発明のペプチド誘導体中に存在するイオ
ン性基は適当な対イオンと塩を形成していてもよい。塩
の状態でも本発明の化合物はその生物学的活性を充分に
維持する。ただしその塩は生理学的、薬理学的に許容さ
れるものであることが必要である。具体的には塩酸塩、
硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩のような無機酸との塩、酢酸
塩、乳酸塩、酒石酸塩等の有機酸との塩、さらにナトリ
ウム塩、カリウム塩などが挙げられるが、なかでも塩酸
塩、酢酸塩、ナトリウム塩が特に好ましい。そのような
塩への変換は慣用手段により行うことができる。
【0021】以下に好ましい本発明の化合物の具体例を
示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
【化2】
【0023】次に本発明の化合物の合成法について説明
する。本発明のペプチド誘導体は種々の方法でこれを合
成することができるが、まず保護ペプチド部を合成のの
ちアミノ末端側の保護基を除去し、これをアミノ基と反
応して請求項2に記載の共有結合を形成しうるような官
能基を1分子中に2個以上の定数個、好ましくは2個以
上6個以下有する有機分子と反応せしめ、しかるのちに
保護基を除去することにより合成する方法が実用的かつ
有利である。ペプチド部の合成方法としては特に限定し
ないが、固相法及び固相法を利用したペプチド自動合成
装置による合成法がまず挙げられる。固相法及び固相法
を利用したペプチド自動合成装置による合成法に関して
は、生化学実験講座・タンパク質の化学IV p.207(日本
生化学会編、東京化学同人)、続生化学実験講座・タン
パク質の化学(下) p.641(日本生化学会編、東京化学
同人)等に記載されている。
【0024】また本発明の化合物のペプチド部は液相法
によって合成することも可能である。すなわちC末端成
分となる保護アミノ酸から出発し、C末端を保護あるい
は修飾ののちアミノ末端保護基を除去し、以下保護アミ
ノ酸を逐次縮合する方法である。またフラグメント縮合
を行う方法も有効である。保護アミノ酸あるいは保護ペ
プチドを縮合する方法としては、公知の方法、例えば泉
屋信夫ら編「ペプチド合成の基礎と実験」(丸善)に記
載の方法のなかから適宜選択することができる。縮合反
応には種々の方法が知られているが、1-ヒドロキシベン
ゾトリアゾールとDCCを用いるDCC-Additive法、ある
いはカルボニルジイミダゾールを用いる縮合法が最も良
い結果を与えた。
【0025】以上の方法により合成した保護ペプチドの
アミノ末端保護基を除去し、これを先に説明した有機分
子と反応せしめ、しかるのちに保護基の除去を行う。保
護基の除去の条件は用いている保護基の種類に依存す
る。通常用いられる方法は、加水素分解、HF処理、ト
リフルオロメタンスルホン酸/チオアニソール/m-クレ
ゾール/トリフルオロ酢酸混合系処理等であるが、保護
基の種類によってはさらにさまざまな方法も可能である
ことは言うまでもない。目的とするペプチド誘導体は脱
保護ののち公知の方法、例えばイオン交換クロマトグラ
フィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどで精製するこ
とができる。
【0026】つぎに本発明のペプチド誘導体の作用及び
用途について説明する。本発明のペプチド誘導体は1分
子中にArg−Gly−Asp(RGD)配列を複数個
有し、さらにある程度の大きい分子量を有するため酵素
分解や代謝によって***されにくく、そのため顕著なガ
ン転移阻害活性を示す。本発明のペプチド誘導体は悪性
細胞上のフィブロネクチン受容体に多点で作用し、フィ
ブロネクチンへの結合を阻害することにより悪性細胞の
接着、コロニー化、破壊的浸食を阻止する。本発明のペ
プチド誘導体は乳癌、表皮癌、筋線メラノーマ(muscle
line melanoma)、表皮線神経芽細胞腫xグリオマ(epi
dermal line neuroblastoma x glioma)、軟骨細胞、フ
ィブロザルコーマを含め種々の細胞の接着及び転移を阻
止するのに有効である。
【0027】さらに本発明のペプチド誘導体は創傷治癒
作用等の広範な生物活性が認められた。また本発明のペ
プチド誘導体はマウスを用いて毒性試験を行ったとこ
ろ、毒性は全く認められなかった。
【0028】本発明のペプチド誘導体またはその薬学上
許容可能な塩は、ペプチド系医薬に一般に使用されてい
る投与方法によって使用することができ、通常賦形剤を
含む薬物組成物として投与される。この薬物組成物はレ
ミントンの薬科学(Remington's Pharmaceutical Scien
ces, Merck, 16, (1980))に開示されているように、知
られているどのような方法で製造してもよい。賦形剤と
しては蒸留水、生理食塩水、リン酸塩あるいは酢酸塩の
ような緩衝塩類を含有する緩衝液、浸透圧調節剤として
の塩化ナトリウムやショ糖、もしくはアスコルビン酸の
ような酸化防止剤、または許容し得るこれらの組合せが
ある。
【0029】このような薬物組成物は溶液、錠剤のよう
な種々の形態とすることができる。投与形態としては経
口、経鼻、非経口(静脈注射、皮下注射、腹腔内投与な
ど)等のなかから適宜選択することができる。例えば生
理食塩水に溶解して注射用製剤としてもよく、あるいは
0.1規定程度の酢酸緩衝液に溶解したのち凍結乾燥剤と
してもよい。またリポソーム中に内包したマイクロカプ
セル剤あるいはミクロスフェアー等の形態で利用するこ
とも可能である。
【0030】また本発明のペプチド誘導体は他の薬理作
用を有する化合物、より具体的には抗ガン性化合物と併
用して使用することも可能であり、これらは本発明の範
囲に属するものである。本発明のペプチド誘導体と併用
して使用することの可能な抗ガン性化合物としては、ガ
ン化学療法において通常用いられる公知の制ガン剤のな
かから適宜選択することが可能であるが、具体的にはア
ドリアマイシンやシスプラチン、マイトマイシン等が挙
げられる。一般に従来の化学療法においては、制ガン剤
の副作用による危険性は避けられない問題であることが
知られている。それゆえ本発明のペプチド誘導体との併
用投与により制ガン剤の投与量を減らし、制ガン剤によ
る副作用を軽減することは非常に有用であると思われ
る。またこれはガン転移抑制効果をより向上させること
をも意味する。
【0031】本発明のペプチド誘導体の投与量は、患者
の体重に対し通常1日当たり0.2 μg/kgから200 mg/kg
の範囲であるが、患者の年齢、体重、症状、投与方法に
よって決定されるものである。
【0032】
【実施例】以下実施例によって本発明を更に詳細に説明
する。なお通常用いられる溶媒や試薬、保護基の表記に
は以下の略号を使用した。
【0033】Boc :t-ブトキシカルボニル Bn :ベンジル AcOEt :酢酸エチル Mts :メシチレンスルホニル HOBt :1-ヒドロキシベンゾトリアゾール DCC :ジシクロヘキシルカルボジイミド iPr2NEt :ジイソプロピルエチルアミン DMF :ジメチルホルムアミド CDI :カルボニルジイミダゾール TFA :トリフルオロ酢酸 TFMSA :トリフルオロメタンスルホン酸
【0034】実施例1 化合物1の合成 化合物1の液相法による合成法について詳細に説明す
る。化合物1の合成経路を以下に示す。
【0035】
【化3】
【0036】
【化4】
【0037】1) 中間体1の合成 Boc-Ser(Bn)-OH (20.4 g, 69 mmol)、ベンジルブロミド
(13 g, 76 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン (9.8
g, 76 mmol)を酢酸エチル (100 ml)に溶解し、反応混合
物を5時間加熱還流した。室温まで放冷した後生成した
塩を濾過して除き、濾液を水、1 M クエン酸溶液、飽和
重曹水、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥
ののち減圧濃縮して中間体1を無色油状物として得た。
このものは精製することなく次の反応に用いた。
【0038】2)中間体2の合成 前項記載の方法により得た中間体1の塩化メチレン (80
ml) 溶液にトリフルオロ酢酸 (80 ml) を加え、反応混
合物を室温で40分間撹拌した。反応終了後減圧濃縮し
て大部分の溶媒を留去し、残渣を酢酸エチルで希釈し、
飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで
乾燥ののち減圧濃縮してアミン体を無色油状物として得
た。得られたアミン体とBoc-Asp(Bn)-OH (22.6 g, 70 m
mol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール (10.7 g, 70 m
mol)をDMF (80 ml) 及び塩化メチレン (80 ml)の混合溶
媒に溶解し、氷冷しながらDCC (14.4 g, 70 mmol) を加
えた。反応混合物を氷冷下2時間、更に室温まで昇温し
ながら終夜撹拌した後、セライト濾過して生成した沈殿
を除去した。濾液を適当量の酢酸エチルで希釈し、水、
5 % 炭酸ナトリウム溶液、1 M クエン酸溶液、飽和食塩
水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥ののち減圧濃縮し
て油状物を得た。シリカゲルカラムクロマトグフラフィ
ーで精製(溶出液:ヘキサン/酢酸エチル=4/1)
し、目的とする中間体2を無色結晶として35 .8 g(3
段階で収率87 %)得た。
【0039】3) 中間体3の合成 中間体2 (35.7 g, 60.5 mmol) の塩化メチレン (100 m
l) 溶液にトリフルオロ酢酸 (100 ml) を加え、反応混
合物を室温で40分間撹拌した。反応終了後溶媒を留去
し、残渣をエーテルから結晶化させてトリフルオロ酢酸
塩32.5 gを得た。得られたトリフルオロ酢酸塩 (18.9
g, 31.3 mmol) とBoc-Gly-OH (5.75 g, 3mmol)、1-ヒド
ロキシベンゾトリアゾール (5.04 g, 33 mmol)、ジイソ
プロピルエチルアミン (4.45 g, 34.4 mmol) をDMF (20
ml) 及び塩化メチレン (50 m)の混合溶媒に溶解し、氷
冷しながらDCC (6.8 g, 33 mmol)を加えた。反応混合物
を氷冷下2時間、更に室温まで昇温しながら終夜撹拌し
た後、セライト濾過して生成した沈殿を除去した。濾液
を適当量の酢酸エチルで希釈し、水、5 % 炭酸ナトリウ
ム溶液、1 M クエン酸溶液、飽和食塩水で洗浄、無水硫
酸ナトリウムで乾燥ののち減圧濃縮して無色固形物を得
た。このものをヘキサン/酢酸エチル(2/1)から再
結晶して中間体3を17.9 g(87 %)得た。
【0040】4) 中間体4の合成 中間体3 (17.9 g, 27 mmol) の塩化メチレン (60 ml)
溶液にトリフルオロ酢酸 (60 ml)を加え、反応混合物を
室温で1時間撹拌した。反応終了後溶媒を留去し、残渣
をエーテルから結晶化させてトリフルオロ酢酸塩15.9 g
を得た。一方Boc-Arg(Mts)-OH (4.56 g, 10 mmol)をDMF
(20 ml) に溶解し、このものに氷冷しながらCDI(1.63
g, 10 mmol) のDMF (10 ml) 溶液を加えた。反応混合
物を氷冷しながら1時間撹拌したのち、上記操作により
得られたトリフルオロ酢酸塩 (6.61 g, 10 mmol) とジ
イソプロピルエチルアミン (1.42 g, 11 mmol)のDMF (2
0 ml) 溶液を加えた。反応混合物を氷冷下2時間、更に
室温まで昇温しながら終夜撹拌した後、減圧下溶媒を留
去した。残渣を適当量のクロロホルムで希釈し、水、5
% 炭酸ナトリウム溶液、1 M クエン酸溶液、飽和食塩水
で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥ののち減圧濃縮し
た。残渣をエーテルから結晶化させて目的とする中間体
4を無色結晶として9.8 g (定量的)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 986.
【0041】5) 中間体5の合成 中間体4 (5.5 g, 5.6 mmol) の塩化メチレン (20 ml)
溶液にトリフルオロ酢酸 (20 ml) を加え、反応混合物
を室温で1時間撹拌した。反応終了後溶媒を留去し、残
渣をエーテルから結晶化させて中間体5を5.3 g(94.7
%)得た。
【0042】6) 中間体6の合成 中間体5(2.26 g, 2.3 mmol)をピリジン(3 ml)及び
クロロホルム(20 ml)からなる混合溶媒に溶解し、こ
のものにトリメシン酸クロライド (200 mg, 0.75 mmol)
のクロロホルム(2 ml)溶液を加えた。反応混合物を室
温に終夜放置したのち減圧下溶媒を留去した。残渣を適
当量のクロロホルムで希釈し、水、5 %炭酸ナトリウム
溶液、1 M クエン酸溶液、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸
ナトリウムで乾燥ののち減圧濃縮した。残渣をエーテル
から結晶化させて中間体6を1.97g(93 %)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 2812.
【0043】7) 化合物1の合成 中間体6 (1.9 g, 0.68 mmol) のトリフルオロ酢酸 (15
ml) 溶液に、トリフルオロメタンスルホン酸 (6 g)、
チオアニソール (4 ml)、m-クレゾール (3.5 l) 、トリ
フルオロ酢酸 (18 ml) からなる混合溶液を氷冷しなが
ら加え、反応合物を氷冷下2時間撹拌した。反応液をエ
ーテル (700 ml) に滴下して30分間ゆっくり撹拌し
た。沈殿した粗生成物を少量の水にとかし、イオン交換
クロマトグラフィー(アンバーライトIRA-400、対イオ
ンCl-)にかけて精製、凍結乾燥して目的とする化合物
1を無色粉末として870 mg(88 %)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 1456.
【0044】実施例2 化合物2の合成 化合物2の合成経路の概略を以下に示す。
【0045】
【化5】
【0046】1) 中間体7の合成 Boc-Asp(Bn)-OH (970 mg, 3.0 mmol)のDMF (10 ml) 溶
液に、氷冷しながらCD(490 mg, 3.0 mmol)のDMF (10 m
l) 溶液を加えた。反応混合物を氷冷しながら1時間撹
拌したのち、実施例1の中間体5 (3.0 g, 3.0 mmol)
とジイソプロピルエチルアミン (450 mg, 3.5 mmol) の
DMF (20 ml) 溶液を加えた。反応混合物を氷冷下2時
間、更に室温まで昇温しながら終夜撹拌した後、減圧下
溶媒を留去した。残渣を適当量のクロロホルムで希釈
し、水、5 % 炭酸ナトリウム溶液、1 Mクエン酸溶液、
飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥ののち減
圧濃縮した。残渣をエーテルから結晶化させて目的とす
る中間体7を無色粉末として3.33g(93 %)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 1191.
【0047】2) 化合物2の合成 以下実施例1に記載の方法に従い、中間体7のN末端Bo
c基を除去したのちトリメシン酸クロライドと反応させ
た。すべての保護基をトリフルオロメタンスルホン酸/
チオアニソール/m-クレゾール/トリフルオロ酢酸混合
系処理により除去、イオン交換クロマトグラフィーによ
り精製し、目的とする化合物2を無色粉末として得た。 FAB-MS: (M+H)+ 1801. (M+Na)+ 1823.
【0048】実施例3 化合物3の合成 化合物3の合成経路の概略を以下に示す。
【0049】
【化6】
【0050】1) 中間体8の合成 テトラヒドロフランテトラカルボン酸 (250 mg, 1.0 mm
ol)のDMF (10 ml) 溶液に、氷冷しながらCDI(650 mg,
4.0 mmol) のDMF (10 ml) 溶液を加えた。反応混合物を
氷冷しながら1時間撹拌したのち、実施例1の中間体5
(3.0 g, 3.0mmol) とジイソプロピルエチルアミン (45
0 g, 3.5 mmol) のDMF (20 ml) 溶液を加えた。反応混
合物を氷冷下2時間、更に室温まで昇温しながら終夜撹
拌した後、減圧下溶媒を留去した。残渣を適当量のクロ
ロホルムで希釈し、水、5 %炭酸ナトリウム溶液、1 M
クエン酸溶液、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウム
で乾燥ののち減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムク
ロマトグラフィーで精製(溶出液:酢酸エチル/メタノ
ール=10/1)し、目的とする中間体8を無色粉末と
して1.21 g(43 %)得た。 FAB-MS: (M+H)+ 2832.
【0051】2) 化合物3の合成 以下実施例1に記載の方法に従い、すべての保護基をト
リフルオロメタンスルホン酸/チオアニソール/m-クレ
ゾール/トリフルオロ酢酸混合系処理により除去した。
イオン交換クロマトグラフィーにより精製し、目的とす
る化合物3を無色粉末として得た。 FAB-MS: (M+H)+ 1476. (M+Na)+ 1498.
【0052】実施例4 メラノーマ細胞を用いた実験的
肺転移モデル系によるガン転移阻害作用に関する検討 本発明のペプチド誘導体のガン転移抑制作用について、
実験的肺転移モデル系によって検討した。実施例に記載
した本発明の化合物1〜3、比較例としてフィブロネク
チンの接着コア配列ペプチドであるArg-Gly-Asp-Serを
用いた。これらのペプチド各々1000 μgと非常に転移性
の強いガン細胞であるB16-BL6メラノーマ細胞(対数増
殖期のもの5 x 104個)を各々PBS中で混合し、これを1
群5匹のC57BL/6の雌マウスに尾静脈注射により投与し
た。投与後14日目にマウスを屠殺、解剖し、肺に転移し
たガンのコロニー数を計測して対照のPBS投与群と比較
した。その結果を以下の表1に示す。
【0053】
【表1】 表1 ──────────────────────────────── 投与化合物 肺への転移数 平均±SD (範囲) ──────────────────────────────── PBS(未処理) 24±9 (11-36) 化合物1 8±6 (0-14)* 化合物2 3±2 (1-6)** 化合物3 7±2 (5-10)* Arg-Gly-Asp-Ser 25±2 (23-29) ──────────────────────────────── * t-検定で未処理区と比較して P<0.01 ** P<0.001
【0054】この結果によれば、本発明の化合物1から
3の投与によって肺へのガン転移は有意に抑制された。
これに対し従来から知られているフィブロネクチンの接
着コア配列ペプチドであるArg-Gly-Asp-Serは、マウス
1匹あたり1000 μgの投与量では転移抑制効果を示さな
かった。
【0055】実施例5 メラノーマ細胞を用いた自然肺
転移モデル系によるガン転移阻害作用の検討 本発明の化合物のガン転移抑制作用について、より現実
的な病態治療モデルである自然肺転移抑制試験により検
討した。本発明の化合物1〜3と、比較化合物としてフ
ィブロネクチンの接着コア配列ペプチドであるArg-Gly-
Asp-Serを用いた。1群7匹のC57BL/6の雌マウスを用
い、これらの右足かかと部分にB16-BL6メラノーマ細胞
(対数増殖期のもの5 x 104/50 μl)を移植した。移植
後14、16、18、20、22、24、26日目に被試験化合物を尾
静脈注射により投与した(1回あたり100 μg/200 μl
PBS)。移植ガンは21日目に外科的に切除した。メラノ
ーマ移植後35日目にマウスを屠殺、解剖し、肺に転移し
たガンのコロニー数を計測して対照のPBS投与群と比較
した。その結果を以下の表2に示す。
【0056】
【表2】 表2 ──────────────────────────────── 投与化合物 肺への転移数 平均±SD (範囲) ──────────────────────────────── PBS(未処理) 61±22 (25-103) Arg-Gly-Asp-Ser 67±13 (53-88) 化合物1 24±13 (5-43)* 化合物2 27±7 (16-37)* 化合物3 21±16 (6-53)** ──────────────────────────────── * t-検定で未処理区と比較して P<0.01 ** P<0.001
【0057】この結果によれば、本発明の化合物1〜3
の投与によって、現実的な病態治療モデルである自然肺
転移抑制試験においてもガンの転移数は有意に抑制され
た。これに対し従来から知られているフィブロネクチン
の接着コア配列ペプチドであるArg-Gly-Asp-Serには、
ガン転移の抑制効果は全くなかった。これは本発明の重
要な目的の1つである、修飾による活性の増強が目論見
通り達成されていることを示している。従って本発明の
ペプチド誘導体のガン転移抑制効果、及びその有用性、
優位性は明白である。
【0058】実施例6 リンパ腫細胞を用いた実験的転
移モデル系による癌転移阻害作用に関する検討 本発明のペプチド誘導体の癌転移抑制作用について、悪
性リンパ腫細胞であるL5178Y ML25 T-lymphomaを用いて
実験的転移モデル系により検討した。実施例に記載した
本発明の化合物1〜3と、比較化合物としてフィブロネ
クチンの接着コア配列ペプチドであるArg-Gly-Asp-Ser
を用いた。これらのペプチド各々1000μgとL5178Y ML25
T-lymphoma細胞(対数増殖期のもの4 x 104個)を各々
PBS中で混合し、これを1群5匹のCDF1 (BALB/C×DBA/
2)の雌マウスに尾静脈注射により投与した。投与後14日
目にマウスを屠殺、解剖してマウスの肝臓及び脾臓の重
量を測定し、対照のPBS投与群と比較した。その結果を
以下に示す。
【0059】
【表3】 表3 ──────────────────────────────── 投与化合物 肝臓の重量 脾臓の重量 平均±SD 平均±SD ──────────────────────────────── PBS(未処理) 4.67±0.50 0.23±0.03 Arg-Gly-Asp-Ser 4.11±0.72 0.25±0.03 化合物1 1.98±0.98*** 0.15±0.06*** 化合物2 1.37±0.37*** 0.11±0.03*** 化合物3 1.40±0.31*** 0.11±0.02*** リンパ腫細胞未投与 1.11±0.15 0.09±0.01 ──────────────────────────────── *** t-検定で未処理区と比較して P<0.001
【0060】この結果によれば、本発明の化合物1から
3の投与によって、肝臓及び脾臓の重量はリンパ腫細胞
未投与区のそれとほぼ同程度となった。すなわち本発明
の化合物は、悪性リンパ腫細胞であるL5178Y ML25 T-ly
mphomaの肝臓や脾臓への転移に対しても抑制効果を示す
ことが明らかとなった。これに対し既存のフィブロネク
チンの接着コア配列ペプチドであるArg-Gly-Asp-Ser
は、L5178Y ML25 T-lympomaに対して転移抑制効果を示
さなかった。
【0061】実施例7 結腸ガン細胞を用いた実験的肺
転移モデル系によるガン転移阻害作用に関する検討 本発明のペプチド誘導体のガン転移抑制作用について、
結腸ガン細胞であるcolon26を用いて実験的肺転移モデ
ル系により検討した。実施例に記載した本発明の化合物
2と、比較例としてフィブロネクチンの接着コア配列ペ
プチドであるArg-Gly-Asp-Serを用いた。これらのペプ
チド各々1000 μgとcolon26/3.1細胞(対数増殖期のも
の4 x 104個)を各々PBS中で混合し、これを1群5匹の
BALB/cの雌マウスに尾静脈注射により投与した。投与後
14日目にマウスを屠殺、解剖し、肺に転移したガンのコ
ロニー数を計測して対照のPBS投与群と比較した。その
結果を以下の表3に示す。
【0062】
【表4】 表4 ──────────────────────────────── 投与化合物 肺への転移数 平均±SD (範囲) ──────────────────────────────── PBS(未処理) 219±28 (180-250) Arg-Gly-Asp-Ser 241±54 (141-285) 化合物2 41±25 (14-74)** ──────────────────────────────── ** t-検定で未処理区と比較して P<0.001
【0063】この結果によれば、本発明の化合物2は結
腸ガン細胞であるcolon26の肺への転移に対しても抑制
効果を示すことが明かとなった。これに対し既存のフィ
ブロネクチンの接着コア配列ペプチドであるArg-Gly-As
p-Serは、colon26に対して転移抑制効果を示さなかっ
た。
【0064】実施例8 メラノーマ細胞を用いた実験的
肺転移モデル系における延命作用に関する検討 本発明のペプチド誘導体の延命作用について、制ガン剤
との併用で実験的肺転移モデル系によって検討した。実
施例に記載した本発明の化合物3と、制ガン剤として市
販のアドリアマイシン(協和発酵工業社製アドリアシン
注)を用いた。1000μgの本発明の化合物3と非常に転
移性の強いガン細胞であるB16-BL6メラノーマ細胞(対
数増殖期のもの5 x 104個)を各々PBS中で混合し、これ
を1群10匹のC57BL/6の雌マウスに尾静脈注射により
投与した。投与後5、6日目にアドリアマイシンを各々
1回ずつ計2回(1回あたり100 μg/200μl PBS)尾静
脈注射により投与した。この実験を行った群をA区とす
る。一方、本発明の化合物3のみを最初に投与しアドリ
アマイシン投与を行わなかった群をB区、本発明の化合
物3を投与せずアドリアマイシン投与のみを行った群を
C区、未処理区としてPBSのみを投与した群をD区と
する。そのまま飼育を続け、マウスの生存数の経時変化
を記録した。延命効果の検定はマン-ウィットニーのu
−テストにより行った。結果を添付の図1に示す。
【0065】図1において、グラフの横軸はメラノーマ
移植後の日数、縦軸はマウスの生存数を示す。なお死亡
したマウスを解剖して調べたところ、肺に転移したガン
のコロニーが認められた。この結果によれば、本発明の
化合物3を投与したB区は、PBSのみを投与したD区
と比較して有意な延命効果を示した。さらに本発明の化
合物3とアドリアマイシンを併用したA区には、本発明
の化合物3のみを投与したB区、アドリアマイシンのみ
を投与したC区、PBSのみを投与したD区いずれと比
較しても顕著な延命効果が認められた。
【0066】以上実施例により本発明を特定の例に関し
て説明したが、限定して解釈されるべきではない。本発
明の本質及び範囲から逸脱しない種々の変更や修正が可
能であることは明らかである。そしてそのような発明は
本発明に含まれると考える。
【0067】
【発明の効果】以上説明したように本発明のペプチド誘
導体は細胞接着性蛋白質であるフィブロネクチンのコア
配列と比較して細胞接着性が大きく、ガン転移抑制作用
等の種々の生物活性を充分に保持し、毒性の問題もほと
んど無い。またメラノーマ細胞のみならず結腸ガン細
胞、悪性リンパ腫細胞に対してもガン転移抑制効果を示
し、さらにより現実的な病態治療モデルである自然肺転
移抑制試験においてもガン転移抑制作用を示す。またそ
の構造は単純であるため合成も容易であり、医薬として
価値の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】 図1は本発明の化合物とアドリアマイシンを
用いて行ったガン接種マウスの延命効果の検定の結果を
示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 済木 育夫 北海道札幌市厚別区厚別北3条西5丁目12 −6 (72)発明者 東 市郎 北海道札幌市南区真駒内上町5丁目3−2

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式(I)で表される配列を構成単位
    として有するペプチドと適当な有機分子が共有結合して
    なる化合物であって、1分子内に定まった複数個の式
    (I)で表される配列を含んでいることを特徴とするペ
    プチド誘導体またはその薬学上許容できる塩。 Arg−Gly−Asp 式(I)
  2. 【請求項2】 式(I)で表される配列を構成単位とし
    て有するペプチドと有機分子の結合様式が、アミド結
    合、イミド結合、ウレタン結合、尿素結合のなかの少な
    くとも1種である請求項1に記載のペプチド誘導体また
    はその薬学上許容できる塩。
  3. 【請求項3】 式(I)で表される配列を構成単位とし
    て有するペプチドと共有結合を形成する有機分子が、ア
    ミノ基と反応して請求項2に記載の共有結合を形成しう
    るような官能基を1分子中に2個以上6個以下有する分
    子である、請求項1及び2に記載のペプチド誘導体また
    はその薬学上許容できる塩。
  4. 【請求項4】 式(I)で表される配列を構成単位とし
    て有するペプチドと共有結合を形成する有機分子が、2
    価以上6価以下の有機酸またはその活性誘導体である請
    求項3に記載のペプチド誘導体またはその薬学上許容で
    きる塩。
  5. 【請求項5】 式(I)で表される配列を構成単位とし
    て有するペプチドと共有結合を形成する有機分子が、テ
    トラヒドロフランテトラカルボン酸またはその活性誘導
    体である請求項4に記載のペプチド誘導体またはその薬
    学上許容できる塩。
  6. 【請求項6】 式(I)で表される配列を構成単位とし
    て有するペプチドと共有結合を形成する有機分子が、ト
    リメシン酸またはその活性誘導体である請求項4に記載
    のペプチド誘導体またはその薬学上許容できる塩。
  7. 【請求項7】 薬学上許容できる賦形剤及び請求項1〜
    6のいずれかに記載のペプチド誘導体またはその薬学上
    許容できる塩を有効成分として含有してなる、ガン転移
    抑制剤。
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