JPH0630500Y2 - 車輌用空調装置用圧縮機の振動低減装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、車輌用空調装置の圧縮機がエンジンからマウ
ントブラケットを介して受ける振動を低減する装置に関
するものである。

［従来の技術］ 圧縮機をエンジン等に取り付けるマウントブラケットの
剛性が、その圧縮機の重量に対して不足している場合、
エンジンの振動によって生じる圧縮機の振動は、そのマ
ウントブラケットによって増幅され、非常に大きなレベ
ルにまで達する。更に悪い状態の場合、エンジン常用回
転数域で、圧縮機がエンジンの振動に対して共振点を持
つようになる。

以上の場合のように圧縮機が激しく振動をすると、圧縮
機の耐久性悪化、マウントブラケットの疲労破壊、或は
車輌騒音を生ずることがある。

このため、従来技術では、圧縮機の振動を低減させるた
めに、マウントブラケットの肉厚を増加したり、或はマ
ウントブラケットに補強用リブを追加する等の手段が講
ぜられていた。

［考案が解決しようとする課題］ しかしながら、このような手段を講じても、マウントブ
ラケット自身の重量増加による振動増加のため、圧縮機
の振動の低減には余り寄与しないという問題がある。従
って、マウントブラケットに上述の手段を講じても、圧
縮機の耐久性向上、及び静音化が余り認められない。

また、スペース上、マウントブラケットに上述の手段が
取れない場合もある。

一方、マウントブラケットの剛性を上げて、圧縮機の振
動を低減させるためには、何度も試作、試験を繰り返す
等の多くの検討期間を要する問題がある。

更に、エンジン自身の起振力が大きい場合、或は圧縮機
がエンジンの振動に共振する場合、どんなにマウントブ
ラケットの剛性を高めても、圧縮機の振動レベルは、小
さくならないという問題もある。

それ故に、本考案の課題は、圧縮機がエンジンからマウ
ントブラケットを介して受ける振動を低減し、以て圧縮
機の耐久性の向上、並びに静音化を可能とする車輌用空
調装置用圧縮機の振動低減装置を提供することにある。

［課題を解決するための手段］ 本考案によれば、中心部に貫通穴が穿設されたマスと、
上記貫通穴内に挿通され、両端部が上記マスから突出し
た棒杆と、該棒杆の上記マスから突出した部分にそれぞ
れ装着され、該棒杆を弾性的に支持するブッシュと、該
ブッシュに取り付けられた取付具とを含み、上記ブッシ
ュが、上記棒杆の上記突出部分に装着された内筒、該内
筒を取り囲んだ外筒、及び上記内筒と上記外筒の間に圧
入された弾性体を有し、上記取付具が上記外筒に固定さ
れていることを特徴とする車輌用空調装置用圧縮機の振
動低減装置が得られる。

［作用］ 本考案による車輌用空調装置用圧縮機の振動低減装置
は、ブッシュとマスを有する。ブッシュは、圧縮機に取
り付けられている。一方、マスは、ブッシュの弾性体に
より弾性支持されている。この為、マスは、振動できる
状態にある。

本考案の振動低減装置を、圧縮機に備えた場合、この圧
縮機にエンジンの振動が伝わると圧縮機は振動し、この
圧縮機の振動でマスも振動する。そして、圧縮機の振動
数が、例えば共振点等の圧縮機の低減させたい周波数に
なった場合、マスの固有振動数は圧縮機の低減させたい
周波数に合致するので、このマスの振動は、圧縮機の振
動に対して半サイクル遅れる。従って、圧縮機が低減さ
せたい周波数で振動すると、この圧縮機の振動と逆方向
の振動が本考案の振動低減装置から圧縮機に伝わるの
で、この結果、圧縮機の振動が低減される。

［実施例］ 第１図は本考案の一実施例による車輌用空調装置用圧縮
機の振動低減装置の一部切欠き正面図である。

第１図を参照して、マス１は、円柱状であり、その中央
には貫通穴２が穿設されている。マス１の両側には、ス
トッパーラバー３が接着されている。このストッパーラ
バー３は、後述のブッシュ４との干渉を避けるために設
けられている。

マス１の材質としては、鉄等の比重の大きいものが適す
る。

第２図はブッシュの断面図である。

第２図を参照して、ブッシュ４は、内筒５と、外筒６
と、弾性体としてのゴム部材７とから成る。

内筒５は、円筒状であり、その中央に貫通穴８を有す
る。

外周６は、円筒状であり、内筒５を取り囲んでいる。こ
の外筒６の外周壁には、略Ｊ字状を呈する取付具９がろ
う付けされる（第１図参照）。

ゴム部材７は、略リング状であり、内筒５と外筒６との
間に圧入されている。

第１図に戻り、ブッシュ４は、マス１と一体化されてい
る。これは、先ず、マス１の両側にブッシュ４を配し、
各ブッシュ４の貫通穴８をマス１の貫通穴２に合せ、こ
のようにして連なった貫通穴８，２，８にボルト１０を
挿入し、その先端にワッシャ１１及びスプリングワッシ
ャ１２をかませてナット１３を螺合させることによって
なされている。

尚、マス１の重量、ブッシュ４の寸法、ゴム部材７の硬
度を調整して、マス１の固有振動数を、低減したい圧縮
機側周波数、例えば共振点等に合致させるように設計し
てある。

第３図は本実施例の振動低減装置の装着状態を示す正面
図である。

第３図を参照して、圧縮機２０は、マウントブラケット
２１、アジャストスティ２２を介してエンジン２３に装
着されている。

圧縮機２０には、一般に数箇所の装着用穴２４が有るの
で、その部分に取付具９を介して振動低減装置１４を取
り付けてある。

第４図（ａ）乃至（ｃ）は本実施例の振動低減装置の動
作原理を示す図である。

第４図（ｂ）に示す圧縮機のＭ−Ｋ−Ｃ系の共振点F0の
ピークT0を低減したい場合、それと同一の固有振動数を
持った第４図（ａ）に示す本実施例の振動低減装置のｍ
−ｋ−ｃ系を第４図（ｂ）のＭ−Ｋ−Ｃ系に付加する
と、第４図（ｃ）に示すように、Ｍ−Ｋ−Ｃ系の振動
は、F01,F02の２つの共振点を持つ特性に変化し、ピー
ク値T01,T02は、T0と比較して減少する。

尚、第５図に本実施例の振動低減装置を装着していない
圧縮機の振動レベルを示し、第６図に第５図の圧縮機に
本実施例の振動低減装置を装着した場合の振動レベルを
示す。第５図のＭＡＸ値に対し、第６図のＭＡＸ値が著
しく減少したことが分る。

本実施例の振動低減装置は、ブッシュ４と取付具９とが
接近しているため、取付具９を小型化できる。即ち、全
重量に対してマス１の重量の比率が高く、スペース効率
が良い。

また、ブッシュ４及びマス１を見ると、３方向とも対象
であるため、回転（モーメント）方向の共振が無く、純
粋に３方向の固有振動数を設定しやすい。

更に、マス１の両端にブッシュ４があり、これをボルト
１０で固定しているので、ゴム部材７が切れる等、最悪
の状態になっても、マス１が脱落することはない。

［考案の効果］ 本考案の車輌用空調装置用圧縮機の振動低減装置を圧縮
機に装着すれば、この圧縮機の振動レベルを小さくする
ことができる。この結果、圧縮機の耐久性が向上する。
また、振動音が解消されるので、静音化も達成できる。

また、本考案の場合、ブッシュは、内筒、外筒、及び弾
性体を有しており、このブッシュの内筒に、棒杆のマス
から突出した部分を挿通することによって、マスをブッ
シュで弾性的に支持しているので、マスが振動すると、
内筒と外筒の間に圧入された弾性体が伸縮するが、その
際に弾性体に生じる圧縮及び引張り応力は、弾性体の全
体に亙って生じるので、応力が弾性体の一部分に集中す
ることがなく、このため、弾性体が劣化し難く、従っ
て、本考案は、耐久性に優れている。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例による車輌用空調装置用圧縮
機の振動低減装置の一部切欠き正面図、第２図はブッシ
ュの断面図、第３図は本実施例の振動低減装置の装着状
態を示す正面図、第４図（ａ）乃至（ｃ）は本実施例の
振動低減装置の動作原理を示す図、第５図は本実施例の
振動低減装置を装着していない圧縮機の振動レベルを示
すグラフ、第６図は第５図の圧縮機に本実施例の振動低
減装置を装着した場合の振動レベルを示すグラフであ
る。 １……マス、２……貫通穴、３……ストッパーラバー、
４……ブッシュ、５……内筒、６……外筒、７……ゴム
部材、８……貫通穴、９……取付具、１０……ボルト、
１１……ワッシャ、１２……スプリングワッシャ、１３
……ナット、１４……振動低減装置、２０……圧縮機、
２１……マウントブラケット、２２……アジャストステ
イ、２３……エンジン、２４……装着用穴。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】中心部に貫通穴が穿設されたマスと、上記
   貫通穴内に挿通され、両端部が上記マスから突出した棒
   杆と、該棒杆の上記マスから突出した部分にそれぞれ装
   着され、該棒杆を弾性的に支持するブッシュと、該ブッ
   シュに取り付けられた取付具とを含み、上記ブッシュ
   が、上記棒杆の上記突出部分に装着された内筒、該内筒
   を取り囲んだ外筒、及び上記内筒と上記外筒の間に圧入
   された弾性体を有し、上記取付具が上記外筒に固定され
   ていることを特徴とする車輌用空調装置用圧縮機の振動
   低減装置。