JPH06280156A - 繊維、糸または布帛物の製造方法 - Google Patents

繊維、糸または布帛物の製造方法

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JPH06280156A
JPH06280156A JP8684593A JP8684593A JPH06280156A JP H06280156 A JPH06280156 A JP H06280156A JP 8684593 A JP8684593 A JP 8684593A JP 8684593 A JP8684593 A JP 8684593A JP H06280156 A JPH06280156 A JP H06280156A
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清司 平川
Hisafumi Takanabe
久文 高鍋
Hidefumi Osada
英史 長田
Isao Tokunaga
勲 徳永
Izumi Wataya
泉 綿谷
Takao Akagi
孝夫 赤木
Masao Kawamoto
正夫 河本
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 (A)(a)芳香核が金属スルホネートで置換さ
れている芳香族ジカルボン酸単位、(b)ポリオキシアル
キレン単位及び(c)側鎖型のポリオキシアルキレン基を
特定の割合で有する共重合ポリエステルと(B)他の繊維
形成性重合体の少なくとも1種とからなる複合繊維及び
該複合繊維の布帛等をアルカリ処理して上記共重合ポリ
エステルの少なくとも一部を溶解除去して風合の良好な
布帛等を製造する方法。 【効果】 本発明の方法による場合は、温和なアルカリ
処理条件下にも拘わらず、上記他の繊維形成性重合体
(B)の侵食や損傷を招くことなく、共重合ポリエステル
(A)の少なくとも一部を極めて短時間に速やかに溶解除
去して、天然繊維に似たソフトな優れた風合、表面状態
および外観を有する減量化された布帛、繊維、糸等を短
時間で効率よく製造することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は天然繊維に似たソフトな
優れた風合、表面状態および外観を有する繊維、糸およ
び布帛物を与える複合繊維に関し、かかる複合繊維、そ
れを用いて製造された糸、布帛をアルカリ処理すること
により上記のごとき風合、外観を有する繊維、糸、布帛
を得ることができ、また本発明の方法による場合はそれ
らの繊維や繊維製品を極めて短いアルカリ処理時間で効
率よく得ることができる。
【0002】
【従来の技術】ポリエステルやポリアミド等の合成繊維
やそれからなる布帛は、イージーケア性をはじめとして
多くの優れた特性を有しているが、その単糸繊度が太い
ことや断面形状が単純であることなどにより、絹、綿、
麻などの天然繊維に比べて風合や光沢が単調で、プラス
チック的な冷たい感じがあり、天然繊維のような高品位
のものが得られにくい。
【0003】近年、合成繊維の上記欠点を改良するため
に、繊維の断面形状の異形化、捲縮加工、複合繊維化な
どが種々試みられており、複合繊維化の一つに複合繊維
をポリアミドとポリエステルから形成し、それをフィブ
リル化させて極細化する技術が提案されている(特公昭
53−35633号公報、特公昭56−16231号公
報等)。しかし、その場合に風合は多少ソフトになるも
のの、ポリアミド繊維による特有のぬめり感が改良でき
ず低品位のものになりがちであり、しかもフィブリル化
に際して高価なベンジルアルコール等を使用する必要が
あり、加工コストが高くなるという欠点がある。
【0004】また、風合のソフトな合成繊維や極細繊維
などを得るために、アルカリ易溶性重合体と他の重合体
とからなる複合繊維を形成し、アルカリ易溶性重合体を
アルカリで溶解除去したり減量することが色々行われて
おり、そのような従来技術として、(i)金属スルホネ
ート含有エステル単位を共重合したポリエステルと他の
重合体との複合繊維をアルカリで処理する方法(特開昭
58−98425号公報等)、(ii)金属スルホネート
基を有するイソフタル酸成分とポリアルキレングリコー
ルを共重合したアルカリ易溶性ポリエステルと他の重合
体との複合繊維をアルカリ処理する方法(特開昭58−
54022号公報)などが知られている。
【0005】しかしながら、上記(i)の方法の場合
は、複合繊維の一方の成分である金属スルホネート含有
エステル単位含有ポリエステルがポリエチレンテレフタ
レートなどの通常のポリエステルに比べてアルカリ溶解
性に優れてはいるものの、そのアルカリ溶解性は未だ充
分ではなく、そのアルカリ減量処理にかなりの時間がか
かり、長時間のアルカリ処理によって処理後の繊維の物
性がかなり低下するというのが実情である。そして、そ
のアルカリ溶解性を増すために、金属スルホネート含有
エステル単位の割合を多くした場合には、ポリエステル
の増粘が著しくなって紡糸が困難になるという欠点を有
している。
【0006】また、上記(ii)の方法による場合は、そ
こで用いている金属スルホネート基含有イソフタル酸と
ポリアルキレングリコールを共重合したポリエステル
が、金属スルホネート基含有エステル単位のみを共重合
した上記(i)で用いているポリエステルに比べてアル
カリ溶解性がかなり高く、アルカリ処理をかなり速やか
に行うことができる。しかし、そのアルカリ溶解性は未
だ充分ではなく、特にアルカリ処理によって極細繊維や
横断面形状の複雑な繊維を得ようとする場合には、残留
させる方の重合体成分がアルカリによって大きな侵食や
劣化作用を受ける。この(ii)の方法において、ポリア
ルキレングリコールの共重合割合を増加させればアルカ
リ溶解性をある程度増すことが可能であるが、ポリアル
キレングリコールを多量に共重合させたポリエステルは
紡糸時の溶融粘度が低くなり、他の重合体との複合繊維
を製造する際に圧力バランスが悪くなり、工程性が悪化
して紡糸が困難になるという欠点を有する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、天然
繊維に似たソフトな優れた風合、表面状態および外観を
有する合成繊維、糸および布帛物であって、かかる繊
維、糸および布帛物を高価な処理剤などを使用すること
なく、短い時間で効率よく円滑に製造することのできる
工業的に有利な方法を提供することである。また、アル
カリ処理によって上記した優れた特性を有する繊維や布
帛などを得る際に、そのアルカリ処理をより速やかに短
時間で行うことができ、しかも残留する重合体成分の侵
食や劣化などを招かないような方法を提供することであ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らが上記の課題
を解決するために研究を続けたところ、金属スルホネー
ト基を有するイソフタル酸成分とポリアルキレングリコ
ール成分からなる共重合単位を特定の割合で含み、その
上更に特定の側鎖型のポリオキシアルキレン基を特定の
割合で共重合させた共重合ポリエステルが、例えば上記
(i)や(ii)に挙げたような従来技術で用いられてい
る共重合ポリエステルに比べて一層高いアルカリ溶解性
を有していること、しかもその共重合ポリエステルが紡
糸性にも優れていて他の繊維形成性重合体と工程性良く
複合繊維を製造できることを発見した。そして、本発明
者らはそのような発見に基づいて更に研究を続けたとこ
ろ、そのような特定の共重合ポリエステルを用いた複合
繊維またはそれからなる糸や布帛をアルカリ処理する
と、該共重合ポリエステルが温和なアルカリ処理条件下
で極めて短時間に溶解除去される一方で該他の繊維形成
性重合体部分が劣化や侵食を受けることなく極細の繊維
状で残留して、ソフトな優れた風合、表面状態および外
観を有する繊維や布帛物等を極めて簡単に短時間で製造
できることを見出して本発明を完成した。
【0009】すなわち、本発明は、(A)(a)下記の式
(I);
【0010】
【化7】 (式中、Arは3価の芳香族基、Mは金属原子を示す)
で表されるジカルボン酸単位を一部含有するジカルボン
酸単位; (b)下記の式(II);
【0011】
【化8】−O−(R1−O)m− (II) (式中、R1はアルキレン基、mは10〜100の数を
示す)で表されるジオール単位;および (c)下記の式(III);
【0012】
【化9】 (式中、R2はアルキレン基、R3は炭素数1〜18の炭
化水素基、nは10〜100の数、xおよびyはそれぞ
れ0または1を示す)で表される側鎖単位;を含有する
共重合ポリエステルであって、式(I)で表されるジカル
ボン酸単位を共重合ポリエステルを構成する全酸成分の
0.5〜10モル%、式(II)で表されるジオール単位お
よび式(III)で表される側鎖単位をそれぞれ共重合ポリ
エステルの重量に基づいて1〜49重量%有し、且つ式
(II)で表されるジオール単位と式(III)で表される側鎖
単位の含有率の合計が共重合ポリエステルの重量に基づ
いて2〜50重量%である共重合ポリエステル;並びに (B)他の繊維形成性重合体の少なくとも1種;からな
る複合繊維であり、該複合繊維あるいは該複合繊維を用
いて製造された糸または布帛を、アルカリ処理して上記
共重合ポリエステル(A)の少なくとも一部を溶解除去
することを特徴とする繊維、糸または布帛物の製造方法
である。更に、本発明は、上記の方法により製造された
繊維、糸および布帛物を包含する。
【0013】本発明においては、共重合ポリエステルを
構成するジカルボン酸単位として、上記の式(I)で表さ
れるジカルボン酸単位[以後「ジカルボン酸単位(I)」
という]を、共重合ポリエステルを構成する全酸成分の
0.5〜10モル%の割合で含むことが必要であり、1
〜7モル%の割合で含むのが好ましい。ジカルボン酸単
位(I)の共重合割合が0.5モル%未満であるとアルカ
リ処理の際に共重合ポリエステル(A)が溶解しにくく
なり、一方10モル%を超えると、その金属スルホネー
ト成分のイオン相互作用により該共重合ポリエステル
(A)を製造するための重縮合反応中に増粘が起こり、
共重合ポリエステル(A)が所望の極限粘度になるまで
重縮合反応を継続することが困難になる。
【0014】ジカルボン酸単位(I)においては、Arが
3価の芳香族基であり、Mは金属原子であり、基Arと
しては1,3,5−ベンゼントリイル基、1,2,3−
ベンゼントリイル基、1,2,4−ベンゼントリイル基
などのベンゼントリイル基、1,3,6−ナフタレント
リイル基、1,3,7−ナフタレントリイル基、1,
4,5−ナフタレントリイル基、1,4,6−ナフタレ
ントリイル基などのナフタレントリイル基などを挙げる
ことができ、また金属原子Mはナトリウム、カリウム、
リチウムなどのアルカリ金属原子であるのが望ましい。
共重合ポリエステル(A)は、1種類のジカルボン酸単
位(I)のみを有していてもまたは2種以上のジカルボン
酸単位(I)を有していてもよい。
【0015】共重合ポリエステル(A)を構成するジカ
ルボン酸単位(I)以外のカルボン酸単位としては、テレ
フタル酸、イソフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボ
ン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフ
タレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン
酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、3,3’−ビ
フェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテル
ジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン
酸、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン
酸、1,2−ジフェノキシエタン−4',4”−ジカル
ボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,6−
アントラセンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボ
ン酸などの芳香族ジカルボン酸;β−ヒドロキシエトキ
シ安息香酸、p−オキシ安息香酸などの芳香族ヒドロキ
シカルボン酸;またはそれらのエステル形成性誘導体か
ら誘導された芳香族ジカルボン酸単位を挙げることがで
き、これらの芳香族ジカルボン酸単位は1種類のみまた
は2種以上含まれていてもよい。
【0016】上記した芳香族ジカルボン酸単位と共に、
アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジ
カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族
ジカルボン酸やそのエステル形成性誘導体から誘導され
た単位を含んでいてもよいが、共重合ポリエステル
(A)を構成する全酸成分単位の70モル%以上が芳香
族ジカルボン酸単位、特にテレフタル酸単位からなるの
が望ましい。
【0017】また、本発明では、共重合ポリエステル
(A)が上記の式(II)で表されるジオール単位[以後
「ジオール単位(II)」という]を、共重合ポリエステル
(A)の重量に基づいて1〜49重量%含有しているこ
とが必要である。ジオール単位(II)の割合が1重量%未
満であると、共重合ポリエステル(A)のアルカリ溶解
性が低下し、一方49重量%を超えると紡糸が困難にな
る。
【0018】ジオール単位(II)において、R1は炭素数
1〜4のアルキレン基であるのが好ましく、エチレン基
またはプロピレン基であるのがより好ましく、R1がエ
チレン基であるのがアルカリ溶解性などの点から特に好
ましい。ジオール単位(II)ではエチレン基とプロピレン
基が同じ分子中に存在していてもよい。また、ジオール
単位(II)において、そのオキシアルキレン単位の重合度
を示すmは上記したように10〜100の範囲内の数で
あり、mが20〜80の範囲の数であるのが好ましい。
ジオール単位(II)において、mが10よりも小さいとア
ルカリ溶解性が小さくなり、一方mが100を超えても
アルカリ溶解性はさして向上せず、むしろ着色などを生
じ易くなる。ジオール単位(II)の例としては、mが上記
10〜100の範囲内であるポリオキシエチレングリコ
ール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエ
チレン/ポリオキシプロピレングリコール等から誘導さ
れた単位を挙げることができ、共重合ポリエステル
(A)においてジオール単位(II)は1種のみまたは2種
以上含まれていてもよい。
【0019】また、共重合ポリエステル(A)は、上記
したジオール単位(II)以外の他のジオール単位を更に有
しているのがよく、該他のジオール単位としては、エチ
レングリコール、プロピレングリコール、トリメチレン
グリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレ
ングリコール、ヘキサメチレングリコール、ノナメチレ
ングリコール、3−メチルペンタン−1,5−ジオー
ル、2−メチルオクタン−1,8−ジオール、ジエチレ
ングリコール等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメ
タノールなどの脂環族ジオールなどから誘導される単位
を挙げることができ、これらのジオール単位は1種類の
み含まれていてもまたは2種類以上含まれていてもよ
い。複合繊維を製造する際の繊維形成性などの点から、
該他のジオール単位の70モル%以上が、エチレングリ
コール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリ
コール、ペンタメチレングリコールおよびヘキサメチレ
ングリコールなどの炭素数2〜6の直鎖状アルキレング
リコールから誘導された単位であるのが好ましい。
【0020】そして、本発明では、共重合ポリエステル
(A)が更に上記の式(III)で表される側鎖単位[以後
「側鎖単位(III)」という]を共重合ポリエステル
(A)の重量に基づいて1〜49重量%有していること
が必要である。側鎖単位(III)の割合が1重量%未満で
あると、アルカリ溶解性が低下し、一方49重量%を超
すと紡糸が困難になる。
【0021】側鎖単位(III)は、下記の式(IV);
【0022】
【化10】 [式中、Dはジカルボン酸成分やジオールなどと反応し
て、共重合ポリエステル(A)の主鎖に対して、上記し
た式(III)で示される側鎖単位(III)を導入し得る基であ
り、R2、R3およびnは上記と同じ基を示す]で表され
る化合物を共重合ポリエステル(A)の製造時に反応さ
せることにより共重合ポリエステル(A)中に導入する
ことができる。
【0023】上記式(IV)で表される化合物において、
エステル形成性の基Dの例としては、例えば下記の式;
【0024】
【化11】 で表されるグリシジル基、または下記の式;
【0025】
【化12】 で表される2,3−ジヒドロキシプロピル基などを挙げ
ることができる。
【0026】側鎖単位(III)において、R2は炭素数1〜
4のアルキレン基であるのが好ましく、エチレン基また
はプロピレン基であるのがより好ましく、エチレン基が
特に好ましい。また、R3の具体例としてはメチル、エ
チル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、se
c−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−オ
クチル、2−エチルヘキシル、n−ドデシル、n−ステ
アリルなどのアルキル基;シクロヘキシルなどの炭素数
3〜18のシクロアルキル基;フェニル、ノニルフェニ
ルなどの炭素数6〜18のアリール基を挙げることがで
きる。
【0027】側鎖単位(III)ではエチレン基とプロピレ
ン基が同じ分子中に存在してもよい。また、側鎖単位(I
II)において、そのオキシアルキレン単位の重合度を示
すnは上記したように10〜100の範囲内の数であ
り、nが20〜80の範囲の数であるのが好ましい。n
が10よりも小さいとアルカリ溶解性が低下し、一方1
00を超えてもアルカリ溶解性はそれほど向上せず、着
色の原因となる。
【0028】側鎖単位(III)の具体例としては、ポリオ
キシエチレングリコール−メチル−グリシジルエーテ
ル、ポリオキシエチレングリコール−メチル−2,3−
ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリオキシエチレング
リコール−エチル−グリシジルエーテル、ポリオキシエ
チレングリコール−エチル−2,3−ジヒドロキシプロ
ピルエーテル、ポリオキシエチレングリコール−n−プ
ロピル−グリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリ
コール−n−プロピル−2,3−ジヒドロキシプロピル
エーテル、ポリオキシエチレングリコール−t−ブチル
−グリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコール
−t−ブチル−2,3−ジヒドロキシプロピルエーテ
ル、ポリオキシエチレングリコール−n−オクチル−グ
リシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコール−n
−オクチル−2,3−ジヒドロキシプロピルエーテル、
ポリオキシエチレングリコール−2−エチルヘキシル−
グリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコール−
2−エチルヘキシル−2,3−ジヒドロキシプロピルエ
ーテル、ポリオキシエチレングリコール−n−ドデシル
−グリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコール
−n−ドデシル−2,3−ジヒドロキシプロピルエーテ
ル、ポリオキシエチレングリコール−n−ステアリル−
グリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコール−
n−ステアリル−2,3−ジヒドロキシプロピルエーテ
ル、ポリオキシエチレングリコール−フェニル−グリシ
ジルエーテル、ポリオキシエチレングリコール−フェニ
ル−2,3−ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリオキ
シエチレングリコール−ノニルフェニル−グリシジルエ
ーテル、ポリオキシエチレングリコール−ノニルフェニ
ル−2,3−ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリオキ
シエチレングリコール−シクロヘキシル−グリシジルエ
ーテル、ポリオキシエチレングリコール−シクロヘキシ
ル−2,3−ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリオキ
シエチレン/ポリオキシプロピレングリコール共重合体
のメチルグリシジルエーテル、ポリオキシエチレン/ポ
リオキシプロピレングリコール共重合体のメチル−2,
3−ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリオキシエチレ
ン/ポリオキシプロピレングリコール共重合体のn−プ
ロピル−グリシジルエーテル、ポリオキシエチレン/ポ
リオキシプロピレングリコール共重合体のn−プロピル
−2,3−ジヒドロキシプロピルエーテルなどから誘導
された単位を挙げることができ、これらの単位は共重合
ポリエステル(A)中に単独で含まれていてもまたは2
種以上含まれていてもよい。
【0029】そして、共重合ポリエステル(A)におい
ては、ジオール単位(II)と側鎖単位(III)を合計した含
有率が共重合ポリエステル(A)の重量に基づいて2〜
50重量%であることが必要であり、特に5〜30重量
%であるのが望ましい。ジオール単位(II)および側鎖単
位(III)の合計含有率が2重量%よりも少ないと、アル
カリ溶解性が低下し、一方50重量%を超えると紡糸が
困難になる。
【0030】また、共重合ポリエステル(A)は、上記
した単位以外にも、例えばグリセリン、トリメチロール
プロパンなどのトリオール;ペンタエリスリトールなど
のテトラオール;トリメリット酸、トリメシン酸などの
トリカルボン酸;ピロメリット酸などのテトラカルボン
酸などの4価以上のポリカルボン酸などの多官能成分か
ら誘導された共重合単位をポリエステルの溶融紡糸や溶
融成形が可能な範囲内で少量含んでいてもよい。
【0031】そして、共重合ポリエステル(A)は、フ
ェノールとテトラクロロエタンの等重量混合溶媒中、3
0℃で測定した極限粘度が0.5dl/g以上、好まし
くは0.55〜1.5dl/g、特に0.6〜1.0d
l/gであるのが、紡糸時の工程性などの点から好まし
い。
【0032】共重合ポリエステル(A)は、上記した各
単位を共重合ポリエステル(A)中に導入し得るジカル
ボン酸成分、ジオール成分、上記の式(IV)で示した側
鎖単位(III)用化合物等を用いて常法により重合反応を
行わせることにより製造することができる。例えば、第
一段階でまずそれらの原料成分を用いて、エステル化反
応またはエステル交換反応を行って低重合体を生成さ
せ、次いで第二段階でその低重合体を重合触媒の存在下
に減圧下に加熱して所望の重合度になるまで重縮合させ
ることにより製造することができるが、勿論この方法に
限定されない。その際に、重縮合反応の前のエステル化
反応またはエステル交換反応工程で、ポリエステルの製
造に際して使用される公知のエステル化触媒およびエス
テル交換反応触媒を必要に応じて使用することができ
る。
【0033】そして、上記した共重合ポリエステル
(A)を他の繊維形成性重合体(B)と複合紡糸して複
合繊維を製造する。他の繊維形成性重合体(B)として
は、共重合ポリエステル(A)よりもアルカリ溶解性の
低い他の繊維形成性重合体であればいずれも使用でき
る。限定されるものではないが、共重合ポリエステル
(A)のアルカリ溶解速度を繊維形成性重合体(B)の
アルカリ溶解速度で除した値が15以上、より好ましく
は25以上になるように両方の重合体を組合わせて複合
させると、両者のアルカリ溶解性の差が大きくなって、
本発明のアルカリ処理を一層円滑に行うことができる。
【0034】繊維形成性重合体(B)の例としては、共
重合ポリエステル(A)以外のポリエステル系重合体、
ポリアミド系重合体、ポリプロピレン等のオレフィン系
重合体、塩化ビニル系重合体、ポリビニルアルコール、
塩化ビニリデン、ポリウレタンなどを挙げることがで
き、繊維形成性重合体(B)は1種類のみを使用しても
または2種以上を使用してもよい。それらのうちでも、
繊維形成性重合体(B)としては共重合ポリエステル
(A)よりもアルカリに溶けにくい他のポリエステル系
重合体が好ましく、他のポリエステル系重合体を使用し
た場合には、共重合ポリエステル(A)との複合紡糸時
の工程性がより良好で、アルカリ処理による効果が顕著
であり、且つ風合の良好な製品を得ることができる。
【0035】他のポリエステル系重合体としては特にポ
リエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタ
レートが好ましく、これらのポリエステルでは10モル
%以下の割合で他の共重合成分が共重合されていてもよ
く、該他の共重合成分としてはネオペンチルグリコー
ル、シクロヘキサンジメタノール、イソフタル酸、スル
ホン酸塩基を有するイソフタル酸などが挙げることがで
きる。
【0036】上記従来の技術の項で記載したように、ス
ルホン酸塩基を有するイソフタル酸を共重合したポリエ
ステル共重合体(以下「スルホネート基含有ポリエステ
ル共重合体」という)は、ポリエチレンテレフタレート
やポリブチレンテレフタレート等に比べてアルカリ溶解
性が高いところから、従来はポリエチレンテレフタレー
トやポリブチレンテレフタレートと複合紡糸し、得られ
た複合繊維からスルホネート基含有ポリエステル共重合
体部分をアルカリで溶解除去して極細繊維などが製造さ
れていた。しかし、本発明で用いる複合繊維において
は、共重合ポリエステル(A)がスルホネート基含有ポ
リエステル共重合体に比べて著しく高いアルカリ溶解性
を有するところから、スルホネート基含有ポリエステル
共重合体はアルカリ処理後に残留させる上記した繊維形
成性重合体(B)として用いることができる。
【0037】そして、本発明において、スルホネート基
含有ポリエステル共重合体を繊維形成性重合体(B)と
して使用した場合には、ポリエステル共重合体分子中に
結合しているスルホン酸塩基の存在によって染料との親
和性が極めて良好になり、アルカリ処理後またはアルカ
リ処理と同時にカチオン染料で染色した場合に、白っぽ
くなく、鮮明で深みのある極めて良好な色調および外観
を有する繊維や布帛を得ることができる。しかしなが
ら、繊維形成性重合体(B)としてスルホネート基含有
ポリエステル共重合体を使用する場合は、スルホン酸塩
基を有するイソフタル酸の共重合割合を3モル%以下に
するのが好ましく、1.2〜3モル%がより好ましく、
1.5〜2モル%が更に好ましい。スルホン酸塩基を有
するイソフタル酸の共重合割合が3モル%よりも多い
と、ポリエステルの増粘が著しくなって紡糸が困難とな
り、しかもアルカリ処理時の加水分解性が大きくなり、
糸としての強力が著しく低下する。
【0038】複合繊維における共重合ポリエステル
(A)と繊維形成性重合体(B)の複合形態は特に制限
されず、貼合型、海島型または芯鞘型などの任意の複合
形態にすることができるが、共重合ポリエステル(A)
がアルカリ処理時に少なくとも一部溶解されて除去され
るためには複合繊維の表面の少なくとも一部に共重合ポ
リエステル(A)が露出していることが必要である。ま
た、複合繊維における共重合ポリエステル(A)と繊維
形成性重合体(B)の複合割合も特に制限されないが、
複合繊維を製造する際の紡糸性、アルカリ処理後の製品
の強度などの点から、重量比率で共重合ポリエステル
(A):繊維形成性重合体(B)=10:90〜90:
10の割合で複合させるのが好ましく、各々の複合形態
や繊維形状に応じて、両者の複合割合を調節するとよ
い。
【0039】共重合ポリエステル(A)と繊維形成性重
合体(B)とからなる複合繊維としては、限定されるも
のではないが、例えば図1の(ア)〜(コ)に示すよう
に、貼合型、海島型、芯鞘型、それらの混在型など種々
のものを使用することができ、図1の複合繊維またはそ
れからなる糸や布帛をアルカリ処理して共重合ポリエス
テル(A)の部分を少なくとも一部を除去すると、繊維
形成性重合体(B)部分、または繊維形成性重合体
(B)と共重合ポリエステル(A)の一部が残留してそ
れぞれ相当する繊維になる。なお、図1において、A成
分は共重合ポリエステル(A)を示し、B成分は繊維形
成性重合体(B)を示す。
【0040】特に海島型および貼合型の複合繊維におい
て、島の数を多くしたり、個々の島の大きさを小さくし
たり、貼合せ層の数を多くすると、本発明による場合
は、繊維形成性重合体(B)部分がアルカリによって侵
食されないうちに共重合ポリエステル(A)部分のみが
速やかに溶解除去することができるので、アルカリ処理
によって従来のアルカリ減量処理におけるよりも一層繊
度の小さい超極細繊維(例えば0.3d以下の超極細繊
維)を得ることができる。例えば共重合ポリエステル
(A)を海として繊維形成性重合体(B)を島とする海
島型の複合繊維からそのような超極細繊維を得る場合の
島の数は、複合繊維の単糸繊度との兼ね合いもあり一概
には言えないが、複合繊維の単糸繊度に応じて島の数を
適宜設定するのが好ましく、アルカリ処理後に単繊維繊
度が0.1デニール以下の超極細繊維を得たい場合も適
宜島の数を設定する必要がある。本発明のアルカリ処理
により得られるそのような超極細繊維、それからなる糸
および布帛は、その極めて小さい単繊維繊度により、ソ
フトおよびしなやかさに優れた良好な風合を有する。
【0041】更に本発明における複合繊維の別の例とし
ては、図2の(ア)に示すように繊維形成性重合体
(C)からなる芯部分Cの周りに、共重合ポリエステル
(A)と繊維形成性重合体(B)とが不均一なランダム
状で混在する鞘部分が形成された複合繊維を挙げること
ができる。図2の(ア)で示される複合繊維において、
芯部分Cを構成する繊維形成性重合体(C)と鞘部分の
一部を構成する繊維形成性重合体(B)とは同じ重合体
からなっていても、または異なる重合体からなっていて
もよいが、そのいずれもが共重合ポリエステル(A)に
比べてアルカリ溶解性が低いことが必要である。
【0042】そして、図2の(ア)の複合繊維をアルカ
リ処理して鞘部分の一部をなす共重合ポリエステル
(A)を溶解除去すると、図2の(イ)に示すような芯
部分Cの周囲に繊維形成性重合体(B)からなる毛羽状
体がランダムに残留した繊維が得られる。図2の(イ)
で示されるアルカリ処理後の繊維およびそれからなる布
帛は、芯部分Cの周りに存在する極細の毛羽状体によっ
てソフトさと柔らかい感触を有し、それと同時にその内
側に存在する芯部分Cによって繊維に腰が付与されて、
ソフトでありながら腰のある極めて良好な風合を有する
ものとなる。
【0043】図2の(ア)に示す複合繊維では、芯部分
は円形となっているが、芯部分は必ずしも円形である必
要はなく、例えば図2の(ウ)〜(キ)に示すように、
三角形、四角形、多角形などの任意の形態であってよ
く、その際に芯は真中にあっても偏った位置にあっても
よい。また、共重合ポリエステル(A)と繊維形成性重
合体(B)とのランダム混在部分および繊維形成性重合
体(C)部分からなる複合繊維は、図2の(ア)〜
(キ)のような芯鞘型複合繊維に限らず、例えば図2の
(ク)〜(ケ)に示すような海島型或いは例えば図2の
(コ)〜(セ)に示すような張合型の複合繊維であって
もよい。そして、図2に示した複合繊維をアルカリ処理
して共重合ポリエステル(A)部分を溶解除去した場合
には、それぞれの複合形態に応じて、繊維形成性重合体
(B)からなる毛羽状体と繊維形成性重合体(C)から
なる芯部分とを有する繊維が得られる。
【0044】上記図2に示した複合繊維は、例えばスタ
ティックミキサーなどを内蔵する紡糸口金パックに共重
合ポリエステル(A)と繊維形成性重合体(B)を供給
して該ミキサーにより両者がランダムに混在した複合流
を形成させ、その複合流を別に供給された繊維形成性重
合体(C)の流れと例えば紡糸口金の紡糸孔またはその
直上流部分で合流させて紡糸口より紡出させることによ
り製造することができる。
【0045】図2の(ア)の複合繊維を例に挙げると、
例えば図3に示すように、紡糸口金パックのミキシング
プレート1部分にスタティックミキサーエレメントSを
配置させ、そのスタティックミキサー部分に共重合ポリ
エステル(A)と繊維形成性重合体(B)との流れを供
給して両者をランダム状で複合させ、その複合流を分配
板2に設けた流路4を経て口金板3に設けた紡糸孔7の
背面側の周囲に供給すると共に、繊維形成性重合体
(C)を流路5および流路6を経て口金板3の紡糸孔7
の中央部分に供給して、繊維形成性重合体(C)からな
る芯の周囲に共重合ポリエステル(A)と繊維形成性重
合体(B)とがランダムに混在した鞘が形成された複合
繊維を紡糸孔7から紡出させることにより製造すること
ができる。
【0046】また、本発明で使用する貼合型複合繊維の
1種として、共重合ポリエステル(A)と繊維形成性重
合体(B)とから例えば図4の(ア)〜(ウ)に示すよ
うな超偏平貼合型複合繊維を形成した場合には、共重合
ポリエステル(A)部分がアルカリによって極めて容易
に且つ短時間で溶解除去される結果、図4の(エ)に見
るような超偏平の極細繊維を得ることができる。
【0047】この図4の(ア)〜(ウ)にみるような超
偏平複合繊維においては、そのアルカリ処理による共重
合ポリエステル(A)成分の溶解除去を円滑に行うため
に、共重合ポリエステル(A):繊維形成性重合体
(B)=1:1〜1:4の重量割合になるように複合す
るのが好ましく、1.5:1〜4:1とするのがより好
ましい。また、その偏平の度合いは、共重合ポリエステ
ル(A)を溶解除去した後に得られる図4の(ニ)の超
偏平繊維において、最長辺の長さ(L)と最短辺の長さ
(W)との比:L/W=15〜100の範囲になるよう
にするのが好ましい。L/Wが15未満であると、柔ら
かさに欠けたものとなり、一方100を超すと、アルカ
リ処理の際にアルカリが複合繊維の内部にまで浸透しに
くくなる。
【0048】上記により得られる図4の(エ)に見るよ
うな超偏平繊維は、その極めて高い偏平度によって、う
ぶ毛に類似した極めて柔軟で高級な風合を有している。
しかもそこで繊維形成性重合体(B)として上記したス
ルホネート基含有ポリエステル共重合体を用いた場合に
は、極めて優れた光沢と色調を有する染色物を得ること
ができる。ところで、従来の偏平繊維では上記したL/
Wの値が高くても10程度であって、本発明で得られる
超偏平繊維に比べて偏平度が低く、本発明におけるよう
な柔らかさやしなやかさを達成できない。
【0049】本発明で使用する共重合ポリエステル
(A)、繊維形成性重合体(B)および必要に応じて繊
維形成性重合体(C)等からなる複合繊維は、その横断
面が円形;三葉形〜八葉形などの多葉形、T字形、V字
形、偏平形、方形などの異形の任意の断面形状であるこ
とができ、また中実繊維に限らず中空繊維や多孔質繊維
であってもよい。繊維の太さも特に限定されず、任意の
太さにすることができるが、アルカリ処理後にソフトな
風合の繊維や布帛等が得られるようにする点から、複合
繊維の単繊維繊度を約1〜8デニール程度にしておくの
が好ましい。
【0050】そして、上記した複合繊維においては、共
重合ポリエステル(A)部分および繊維形成性重合体
(B)や(C)の1つまたは2つ以上に、必要に応じて
酸化防止剤、着色防止剤、耐熱性改善剤、蛍光漂白剤、
難燃剤、艶消剤、着色剤、無機微粒子などを含有させて
おいてもよい。特に、共重合ポリエステル(A)部分に
亜リン酸エステル系酸化防止剤を配合しておくと色調の
改善効果があり、またヒンダードフェノール系酸化防止
剤を含有させておくと、共重合ポリエステル(A)中の
ポリオキシアルキレン鎖の酸化分解および熱分解を防止
することができる。
【0051】上記の複合繊維の製造法は特に限定され
ず、例えば、低速または中速で溶融紡糸した後に延伸す
る方法、高速による直接紡糸延伸法、紡糸後に延伸と仮
撚を同時にまたは続いて行う方法などの任意の製糸方法
で製造することができる。
【0052】そして、本発明では、上記の複合繊維、ま
たはそれを用いて製造された糸あるいは布帛をアルカリ
処理して、複合繊維を構成している共重合ポリエステル
(A)の少なくとも一部を溶解して除去する。アルカリ
処理は、上記のように、複合繊維またはそれよりなる糸
に直接施してもよいが、複合繊維から編織布、不織布な
どの布帛を形成し、その布帛をアルカリ処理するのが、
処理の容易性、得られる製品の物性や風合などの点から
好ましい。その場合の布帛は上記の複合繊維単独で形成
されていても、または上記の複合繊維と天然繊維または
他の合成繊維などの併用により形成されていてもよい。
例えば織物の場合はタテ糸およびヨコ糸の両方が上記し
た複合繊維からなっていても、いずれか一方のみが上記
した複合繊維からなっていてもよい。また、布帛は、上
記の複合繊維のフィラメントから形成されていても、短
繊維、紡績糸等から形成されていてもよい。
【0053】アルカリ処理を行うに当たっては、(i)
強アルカリ性物質を単独で含有する処理液を用いる方
法、(ii)弱アルカリ性物質を単独で含有する処理液を
使用する方法、(iii)強アルカリ性物質と弱アルカリ
性物質の両方を含有する処理液を使用する方法などの任
意の方法を採用することができる。
【0054】上記(i)の方法による場合は、強アルカ
リ性物質として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リ
ン酸三ナトリウムなどを使用するのがよく、処理液中に
おける強アルカリ性物質の濃度を約2〜60g/リット
ル程度、好ましくは3〜20g/リットル程度にしてお
くのがよい。この方法の場合に、強アルカリ性物質の濃
度が2g/リットルよりも低いと複合繊維中の共重合ポ
リエステル(A)部分の溶解速度や溶解の程度が小さく
なり、アルカリ減量処理を短時間に行うのが困難にな
る。一方、強アルカリ性物質の濃度が60g/リットル
よりも高いと、繊維形成性重合体(B)の劣化を引き起
こして、繊維、糸または布帛の強力が大幅に低下する。
【0055】また、上記(ii)の方法による場合は、弱
アルカリ性物質として炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウ
ム、ケイ酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどを
使用するのがよく、処理液中における弱アルカリ性物質
の濃度を約5〜200g/リットル程度、好ましくは5
〜60g/リットル程度にしておくのがよい。この方法
の場合に、弱アルカリ性物質の濃度が5g/リットルよ
りも低いと複合繊維中の共重合ポリエステル(A)部分
の溶解速度や溶解の程度が小さくなり、アルカリ減量処
理を短時間に行うのが困難になり、一方、弱アルカリ性
物質の濃度が200g/リットルよりも高いと、上記
(i)の場合と同様に、繊維形成性重合体(B)の劣化
を引き起こして、繊維、糸または布帛の強力が大幅に低
下し易くなる。
【0056】更に、上記(iii)の方法による場合は、
強アルカリ性物質と弱アルカリ性物質とを下記の式お
よび式を満足する割合で処理液中に含有させるのが好
ましい。
【0057】
【数1】S<−0.8W+60 ・・・ 2≦W<5 ・・・ [式中、S=強アルカリ性物質の濃度(g/リットル) W=弱アルカリ性物質の濃度(g/リットル)]
【0058】強アルカリ性物質と弱アルカリ性物質とを
併用する上記(iii)の方法による場合に、上記式お
よびを満足するように両方のアルカリ性物質を使用す
ることによって、強アルカリ性物質の濃度が小さくて
も、共重合ポリエステル(A)のみを効率よくが溶解除
去することができ、繊維形成性重合体(B)部分を溶解
することなく残留させることができる。この(iii)の
方法による場合に、弱アルカリ性物質の濃度が2g/リ
ットルよりも少なくなると強アルカリ性物質を上記式
よりも高濃度にすることが必要になり、繊維形成性重合
体(B)へのアルカリの侵食が大きくなって、天然繊維
に似たソフトな風合が得られにくくなり、しかも繊維形
成性重合体(B)の劣化を引き起こし、繊維、糸または
布帛の強力が低下する。また、強アルカリ性物質の濃度
が−0.8W+60(g/リットル)以上になると、共
重合ポリエステル(A)部分だけでなく、繊維形成性重
合体(B)部分の溶解されて繊維の強力が著しく低下す
る。
【0059】上記(i)〜(iii)のいずれ方法の場合も、
そのアルカリ処理を70〜130℃の温度で行うのが好
ましく、温度が70℃よりも低いとアルカリ減量処理に
時間がかかるようになり、一方130℃を超えると共重
合ポリエステル(A)部分のみならず繊維形成性重合体
(B)部分や繊維形成性重合体(C)などの残留させる
重合体部分の侵食や劣化を生じやすくなる。また、上記
したアルカリ処理は、繊維、糸または布帛を構成する複
合繊維において、共重合ポリエステル(A)の一部また
は全部が溶解されるように行うことができ、好ましくは
共重合ポリエステル(A)の90重量%以上が溶解除去
され、且つ繊維形成性重合体(B)や繊維形成性重合体
(C)などが極端に溶解されないようにして行うのがよ
い。
【0060】本発明のアルカリ処理は、布帛等の精練、
糊抜き時に同時に行っても、またはその前後に行っても
よいが、精練、糊抜きと同時に行うのが、処理工程数が
少なくて済み、好ましい。また、アルカリ処理を静的状
態で行ってもよいが、アルカリ処理液を繊維、糸、布帛
等に衝突させたり、アルカリ処理液や被処理繊維や布帛
などを撹拌しながら行うと、複合繊維における共重合ポ
リエステル(A)部分の溶解除去を一層速やかに行うこ
とができ、そのようなアルカリ処理は例えば高圧液流式
装置や高圧ワッシャー装置などを使用して実施すること
ができる。
【0061】また、アルカリ処理を非イオン系界面活性
剤、アニオン系界面活性剤などの存在下に行うのが好ま
しく、それにより複合繊維の膨潤、軟化、複合繊維への
アルカリの浸透等が促進されて、処理を速やかに行うこ
とができると共に繊維全体に良好なふくらみ感が付与さ
れ、しかも繊維や布帛等から脱落した糊剤等が再付着す
るのを防止することができる。その際の非イオン系界面
活性剤としては、例えばポリオキシエチレン多価アルコ
ールアルキルエステル類、ポリオキシエチレンアルキル
エーテル、ポリエチレングリコールアルキルエステル類
などを、またアニオン系界面活性剤としてはセッケン、
高級アルコール系界面活性剤などを挙げることができ
る。アルカリ処理温度が100℃以上の場合には、起泡
性の点から、ポリエチレングリコール/ポリプロピレン
オキサイド付加物系の界面活性剤が好ましい。
【0062】そして、共重合ポリエステル(A)と繊維
形成性重合体(B)や繊維形成性重合体(C)とからな
る複合繊維、該繊維を少なくとも一部に用いた糸、また
はそれらの繊維や糸からなる布帛を上記のようにしてア
ルカリ処理することにより、天然繊維に似たソフトな優
れた風合、表面状態および外観を有する繊維、糸または
布帛物を、従来のこの種のアルカリ処理技術に比べて、
極めて短い時間で効率よく製造することができる。
【0063】本発明の方法により得られた繊維、糸また
は布帛は、ソフトな風合を要求される婦人用の衣類、肌
着、コート類、軽量性が要求されるスポーツ衣類などの
種々の繊維製品に用いるのに極めて適している。
【0064】
【実施例】以下に本発明を実施例などにより具体的に説
明するが、本発明はそれにより限定されない。記の例中
における重合体の極限粘度[η]、布帛のアルカリ減量
率の測定、共重合ポリエステル(A)と繊維形成性重合
体(B)または繊維形成性重合体(C)とのアルカリ溶
解速度比、アルカリ処理後の布帛における分割剥離化
度、風合および色調の評価は次のようにして行った。
【0065】重合体の極限粘度[η]:フェノールとテ
トラクロロエタンの等重量混合溶媒を用いて、対象とな
る重合体の0.25g/dl、0.50g/dlおよび
1.0g/dlの3種の濃度の溶液について30℃の温
度において測定した3種の還元粘度から求めた。
【0066】布帛のアルカリ減量率:織編物を脱オイ
ル、98℃の熱水で30分間処理した後、1mmHgの
減圧下、70℃で8時間減圧乾燥を行った。所定のアル
カリ処理を行った後、酢酸または硫酸で中和、水洗し、
前記の条件で減圧乾燥を行った。アルカリ処理前の乾燥
後の絶乾重量をA、アルカリ処理後の乾燥後の絶乾重量
をBとすると、減量率は下記の式で示される。
【0067】
【数2】減量率(%)={(A−B)/A}×100
【0068】アルカリ溶解速度比:共重合ポリエステル
(A)、繊維形成性重合体(B)および繊維形成性重合
体(C)を用い、常法により同一条件で紡糸および延伸
を施し、75デニール24フィラメントのマルチフィラ
メントを得た。得られたマルチフィラメントを用いて筒
編し、常法によりリラックス精練し風乾したものを測定
サンプルとした。98℃、20g/リットルの水酸化ナ
トリウム水溶液中に各測定サンプルを浴比1:500の
条件で浸漬し、撹拌しながらサンプルを溶解させ、下記
の式によりアルカリ溶解速度定数Kを各サンプルについ
て算出し、その比を求めた。
【0069】
【数3】K=(10−R1/2)×{r0/(10t)} 式中、K=アルカリ溶解速度定数(cm/秒) R=アルカリ水溶液浸漬t秒後の不溶解成分の重量% r0=アルカリ水溶液浸漬直後(t=0)の時の繊維の
半径(cm) t=アルカリ水溶液浸漬時間(秒) ただし、r0=(dr/π・f・ρ・9000)1/2 dr=糸のデニール ρ=糸の比重(=1.388) f=糸のフィラメント数
【0070】分割剥離化度:アルカリ処理後の織物を構
成するヨコ糸を採取して、ヨコ糸を構成する複合繊維に
おける複合面での剥離光学顕微鏡で観察して、下記の表
1に示す評価基準にしたがってその分割剥離化度を評価
した。
【0071】
【表1】 アルカリ処理後の布帛の分割剥離化度の評価基準 ◎:複合繊維の90%以上で2種の重合体間の分割剥離が生じている ○:複合繊維の70〜90%で2種の重合体間の分割剥離が生じている △:複合繊維の50〜70%で2種の重合体間の分割剥離が生じている ×:複合繊維の50%以下でのみ2種の重合体間の分割剥離が生じている
【0072】アルカリ処理後の布帛の風合:下記の表2
に示す評価基準にしたがって処理後の風合の風合を評価
した。
【0073】
【表2】 アルカリ処理後の布帛の風合の評価基準 ◎:極めてソフトで良好な触感を有しているにも拘わらず、極めて良好な 風合 ○:ソフトな触感を有しているにも拘わらず、良好な風合 △:ソフトさに欠け、ややねっとりした風合 ×:ソフトさに著しく欠け、ねっとりとしていて風合が極めて不良
【0074】アルカリ処理および染色後の布帛の色調
下記の表3に示す評価基準にしたがって処理後の風合の
風合を評価した。
【0075】
【表3】 アルカリ処理および染色後の布帛の色調の評価基準 ◎:色調が極めて鮮明で深みがあり、極めて良好な外観 ○:色調が鮮明でやや深みがあり、良好な外観 △:ポリエステル特有の鏡面反射は減少しているが、不良な外観 ×:色調に深みが全くなく、極めて不良な外観
【0076】《実施例1〜3および比較例1〜6》テレ
フタル酸とエチレングリコールとをエステル化反応器に
仕込み、280℃、2.5kg/cm2の圧力下で2時
間エステル化反応をした後、重縮合器に移し、所定量の
5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを添加し、
240℃で反応させた後、350ppmの三酸化アンチ
モン、分子量2000のポリエチレングリコールと下記
の式(V);
【0077】
【化13】 で表されるポリオキシエチレングリシジルエーテルを、
下記の表5に示した量で添加した。
【0078】更に、ポリエチレングリコールとポリオキ
シエチレングリシジルエーテルの合計量に対して、5重
量%の1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒド
ロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−ト
リアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオ
ン(アメリカンサイアナミッド社製;サイアノックス1
790)を加えて、温度を240℃から280℃まで4
5分かけて昇温しながら徐々に0.1mmHgまで減圧
にし、以後280℃で系の溶融粘度が、極限粘度0.7
dl/gのポリエチレンテレフタレートの280℃にお
ける溶融粘度にほぼ一致する時点まで重縮合反応を継続
して、それぞれ対応する共重合ポリエステル(A)を製
造した。
【0079】上記で製造した共重合ポリエステル(A)
のチップとポリエチレンテレフタレート(極限粘度
[η]=0.60)(以後「PET」という)のチップ
を、共重合ポリエステル(A):PET=1:2の重量
比で290℃で溶融複合紡糸した後延伸して、図1の
(イ)に示す横断面形状を有する共重合ポリエステル
(A)が5層およびPETが5層になっている貼合型の
複合フィラメント糸(50デニール/24フィラメン
ト)を製造した。
【0080】上記で製造した複合フィラメント糸をタテ
糸およびヨコ糸として用いて常法により2/1の斜文織
を作製した。この織物を液流染色機(テクサム技研社
製)を使用して下記の表4に示すアルカリ処理液を用い
て130℃で40分間処理して、精練・糊抜きおよびア
ルカリ減量処理を同時に行ったところ、下記の表5に示
す結果を得た。
【0081】
【表4】 アルカリ処理液 水酸化ナトリウム 5g/リットル デトロールUS−60(明成化学社製) 2g/リットル 浴比30:1
【0082】
【表5】
【0083】上記表5の結果から、ジカルボン酸単位
(I)、ジオール単位(II)および側鎖単位(III)を上記し
た本発明の含有割合で共重合させた共重合ポリエステル
(A)とPETとの複合繊維を用いた実施例1〜3の場
合は、複合繊維の製造時の紡糸性が良好であり、しかも
共重合ポリエステル(A)部分のアルカリによる減量率
が高く、分割剥離化度の大きい、ソフト感に優れた布帛
がアルカリ処理により得られること、それに対して本発
明における上記要件のいずれかを欠いている比較例1〜
6の場合は共重合ポリエステル(A)とPETとの複合
繊維を工程性よく製造できないか、またはアルカリ減量
率や分割剥離化度の小さい、ソフト感のない布帛がアル
カリ処理により得られることがわかる。
【0084】《実施例 4》上記の実施例3で製造した
複合フィラメント糸をタテ糸およびヨコ糸として用いて
常法により1/1の平織物を作製した。この織物を実施
例1におけるのと同じ液流染色機を使用して、水酸化ナ
トリウムを下記の表6に示す割合で含有し且つデトロー
ルUS−60を2g/リットル含有する浴比50:1の
アルカリ処理液を用いて、表6に示す温度で20分間、
精練・糊抜きおよびアルカリ減量処理を同時に行ったと
ころ、表6に示す結果を得た。
【0085】
【表6】
【0086】上記表6の結果から、強アルカリ性物質を
単独で含むアルカリ処理液を使用してソフト感に富む処
理布帛を得るには、アルカリ処理液における強アルカリ
性物質(水酸化ナトリウム)の濃度および処理時間を前
記した適当な範囲に調節して、アルカリ減量率および分
割剥離化度を適性な範囲にすることが必要であることが
わかる。
【0087】《実施例 5》上記の実施例1で製造した
複合フィラメント糸をタテ糸およびヨコ糸として用いて
常法により1/1の平織物を作製した。この織物を実施
例1におけるのと同じ液流染色機を使用して、ケイ酸ナ
トリウムを下記の表7に示す割合で含有し且つデトロー
ルUS−60を2g/リットル含有する浴比50:1の
アルカリ処理液を用いて、表7に示す温度で60分間、
精練・糊抜きおよびアルカリ減量処理を同時に行ったと
ころ、表7に示す結果を得た。
【0088】
【表7】
【0089】上記表7の結果から、弱アルカリ性物質を
単独で含むアルカリ処理液を使用してソフト感に富む処
理布帛を得るには、アルカリ処理液における弱アルカリ
性物質(ケイ酸ナトリウム)の濃度および処理時間を前
記した適当な範囲に調節して、アルカリ減量率および分
割剥離化度を適性な範囲にすることが必要であることが
わかる。
【0090】《実施例 6》5−ナトリウムスルホイソ
フタル酸単位の割合が5モル%、分子量2000のポリ
エチレングリコールの割合が6重量%、および下記の式
(VI);
【0091】
【化14】 で表されるポリオキシエチレングリシジルエーテルから
の側鎖単位(III)の割合が6重量%になるようにした以
外は実施例1と同様にして共重合ポリエステル(A)を
製造した。
【0092】上記で製造した共重合ポリエステル(A)
のチップとPET(極限粘度[η]=0.60)のチッ
プを、共重合ポリエステル(A):PET=1:4の重
量比で290℃で溶融複合紡糸した後延伸して、図1の
(エ)に示す横断面形状を有する複合フィラメント糸
(50デニール/24フィラメント)を製造した。
【0093】上記で製造した複合フィラメント糸をタテ
糸およびヨコ糸として用いて常法により1/1の平織物
を作製した。この織物を実施例1で用いた液流染色機を
使用して、下記の表8に示すアルカリ処理液を用いて1
10℃で20分間処理して、精練・糊抜きおよびアルカ
リ減量処理を同時に行ったところ、下記の表9に示す結
果を得た。
【0094】
【表8】 アルカリ処理液 水酸化カリウム 表9に示すとおり 炭酸ナトリウム 表9に示すとおり デトロールUS−60 2g/リットル 浴比50:1
【0095】
【表9】
【0096】上記表9の結果から、強アルカリ性物質と
弱アルカリ性物質の両方を含むアルカリ処理液を使用し
てアルカリ処理を行う場合には、ソフト感に富む処理布
帛を得るには、アルカリ処理液における強アルカリ性物
質(水酸化カリウム)および弱アルカリ性物質(炭酸ナ
トリウム)の濃度を前記した適当な範囲に調節して、ア
ルカリ減量率および分割剥離化度を適性な範囲にするこ
とが必要であることがわかる。
【0097】《実施例 7》テレフタル酸およびエチレ
ングリコールをエステル化反応器に仕込んで230℃、
2.5kg/cm2の圧力下に2時間エステル化反応さ
せた。次いで反応生成物に5−ナトリウムスルホイソフ
タル酸ジメチルを全酸成分に対して2.5モル%となる
ように添加して反応させた後、予め230℃に加熱して
ある重縮合反応器に移し、これに式:HO(CH2CH2
O)45Hで表されるポリエチレングリコールと上記の式
(V)で表されるポリオキシエチレングリシジルエーテ
ルを、その各々が最終的に得られる共重合ポリエステル
(A)の8重量%になる量で添加した。
【0098】更に、ポリエチレングリコールとポリオキ
シエチレングリシジルエーテルの合計量に対して、5重
量%の1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒド
ロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−ト
リアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオ
ンおよび三酸化アンチモン350ppmを加えて、重縮
合反応系の温度を230℃から280℃まで45分かけ
て昇温しながら徐々に0.1mmHgまで減圧にし、以
後280℃で系の溶融粘度が、極限粘度0.7dl/g
のポリエチレンテレフタレートの280℃における溶融
粘度にほぼ一致する時点まで重縮合反応を継続して共重
合ポリエステル(A)を製造した。
【0099】繊維形成性重合体(B)としてポリエチレ
ンテレフタレート(極限粘度[η]=0.68)(以後
「PET(B)」という)を用いて、上記で製造した共
重合ポリエステル(A)とPET(B)とを50:50
の重量比で用いて共重合ポリエステル(A)とPET
(B)とがランダムに混在する鞘部分を形成し、また繊
維形成性重合体(C)として上記と同じ極限粘度[η]
=0.68のポリエチレンテレフタレート(以後「PE
T(C)」という)を芯成分Cとして用いて、図3に示
す紡糸装置を使用して、図2の(ア)に示す横断面形状
を有する複合繊維を溶融紡糸によって製造した。
【0100】より具体的には、鞘成分を形成する共重合
ポリエステル(A)の溶融流れとPET(B)の溶融流
れを50:50の重量割合で紡糸装置の紡糸口金パック
に供給してミキシングプレート1に設けたケニックス社
製の8エレメントのスタティックミキサーSを通してラ
ンダムな層状に分割複合させ、これを鞘成分として分配
板2の流路4を経て紡糸孔7の周囲に導き、一方溶融し
たPET(C)を流路5および6を経て芯部分Cとして
紡糸孔7の中央部に導き、その際に鞘成分:芯成分=5
0:50の重量割合とし、それを24ホールの丸孔を有
する紡糸孔7(口金温度290℃)より吐出し、巻取速
度1000m/分で巻取って図2の(ア)に示す横断面
形状を有する、PET(C)からなる芯部分の周りを共
重合ポリエステル(A)とPET(B)とがランダムに
混在する鞘部分が包囲した複合フィラメント原糸を製造
し、これを常法により延伸して75デニール/24フィ
ラメントの延伸糸を得た。この延伸糸における共重合ポ
リエステル(A)とPET(B)またはPET(C)と
のアルカリ溶解速度比はほぼ250であった。
【0101】上記で製造した延伸糸をタテ糸およびヨコ
糸として用いて常法により1/1の平織物を作製し、こ
の織物を常法により糊抜き、精練、リラックス後、18
0℃でプレセットした。次いで、NaOH:20g/リ
ットルの水酸化ナトリウム水溶液を用いて90℃で30
%の減量加工を施し、下記の表10に示す染色条件で染
色した。
【0102】
【表10】 染 色 条 件 染色方法: 染料:Dianix Red BN-SE(CI Disperse Red 12) 5%owf 分散助剤:Disper TL(明成化学工業社製) 1g/リットル pH調節剤:硫酸アンモニウム 1g/リットル 酢酸(48%) 1cc/リットル 浴比: 1:30 温度: 120℃ 時間: 60分 還元洗浄: ハイドロサルファイド 1g/リットル アミラジン(第一工業製薬社製) 1g/リットル NaOH 1g/リットル 浴比: 1:30 温度: 80℃ 時間: 20分
【0103】アルカリ処理および染色後に得られた平織
物の風合および色調を上記した評価基準にしたがって評
価したところ、下記の表11に示すように、ソフトでし
なやかであり、しかもピーチスキン調の良好な風合を有
し且つ色調も極めて良好であった。
【0104】《実施例 8〜9》鞘部分を構成する共重
合ポリエステル(A):PET(B)の割合をそれぞれ
30:70(実施例8)および70:30(実施例9)
とした以外は実施例7と同様に行った。その結果を表1
1に示す。
【0105】《実施例 10》紡糸口金パックのミキシ
ングプレート1におけるスタティックミキサーのエレメ
ント数を4に変えた以外は実施例7と同様に行っとこ
ろ、表11に示す結果を得た。
【0106】《実施例 11〜12》鞘部分と芯部分と
の複合割合;{共重合ポリエステル(A)+PET
(B)}:PET(C)をそれぞれ70:30(実施例
11)および30:70(実施例12)とした以外は実
施例7と同様に行った。その結果を表11に示す。
【0107】《実施例 13〜16》複合繊維の複合形
態および横断面形状をそれぞれ図2の(ク)(実施例1
3)、(ケ)(実施例14)、(サ)(実施例15)お
よび(ス)(実施例16)にした以外は実施例7と同様
に行った。その結果を表11に示す。
【0108】《実施例 17〜20》共重合ポリエステ
ル(A)として、式;HO(CH2CH2O)45Hで表さ
れるポリエチレングリコールと上記の式(V)で表され
るポリオキシエチレングリシジルエーテルの共重合割合
を下記の表11に示すように変えたものを使用した以外
は実施例7と同様に行った。その結果を表11に示す。
【0109】《実施例 21》共重合ポリエステル
(A)における側鎖成分として、式(V)で表されるポ
リオキシエチレングリシジルエーテルの代わりに、下記
の式(VII);
【0110】
【化15】
【0111】で表される化合物を用いて以外は、実施例
7と同様に行ったところ、表11に示すとおりの結果を
得た。
【0112】《実施例 22》共重合ポリエステル
(A)におけるポリエチレングリコール成分として式;
HO(CH2CH2O)20Hで表されるものを使用した以
外は、実施例7と同様に行った。その結果を表11に示
す。
【0113】《実施例 23〜24》鞘部分の一部を構
成する繊維形成性重合体(B)として、PET(B)の
代わりに、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を全酸成
分に対して1.5モル%共重合したポリエチレンテレフ
タレート(実施例23)およびポリブチレンテレフタレ
ート(実施例24)をそれぞれ用いた以外は実施例7と
同様に行った。その結果を表11に示す。
【0114】
【表11】
【0115】上記表11の結果から、本発明の実施例7
〜24による場合は、いずれも繊維化の工程性良く複合
繊維が得られ、しかもアルカリ処理によってピーチスキ
ン調のソフトな風合を有し、且つ色調の優れたアルカリ
処理・染色布帛が得られることがわかる。
【0116】《比較例 7〜13》下記の表12に示す
ように、鞘部分の一部を構成するアルカリ溶解性ポリエ
ステルとして、上記の式(I)で表されるジカルボン酸
単位、式(II)で表されるジオール単位および式(II
I)で表される側鎖単位の少なくとも一つを含まない
か、または含んでいてもその含有割合が本発明の範囲か
ら外れるポリエステルを使用し、それ以外は実施例7と
同様にして行ったところ、表12に示すとおりの結果で
あった。
【0117】
【表12】
【0118】上記表12の比較例8〜10の結果から、
式(I)のジカルボン酸単位、式(II)のジオール単位
および式(III)の側鎖単位の少なくとも一つを含まな
いポリエステルをアルカリ溶解性成分とした場合には、
複合繊維を製造する際の工程性は良好であるものの、そ
のアルカリ溶解性が充分ではなく、得られるアルカリ処
理布帛はソフトさに欠け、ねっとりしていて風合が不良
であり、しかもその染色物は色調が劣ることがわかる。
また、比較例11〜13の結果からは、共重合ポリエス
テル(A)における式(I)のジカルボン酸単位、式
(II)のジオール単位および式(III)の側鎖単位の割
合が本発明の範囲から外れると、繊維化工程性が不良に
なって、アルカリ処理用原糸である複合繊維が得られな
いことがわかる。
【0119】《実施例 25》テレフタル酸971.5
gおよびエチレングリコール750gをエステル化反応
器に仕込み、230℃、2.5kg/cm2の圧力下に
2時間エステル化反応させた。次いで得られた反応生成
物を予め230℃に加熱してある重縮合反応器に移し、
5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル40.2g
を添加して反応させ、次いでこの系に式:HO(CH2
CH2O)45Hで表されるポリエチレングリコールと上
記の式(V)で表されるポリオキシエチレングリシジル
エーテルを添加した。
【0120】更に、ポリエチレングリコールとポリオキ
シエチレングリシジルエーテルの合計量に対して、5重
量%の1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒド
ロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−ト
リアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオ
ンおよび三酸化アンチモン0.4gおよび亜リン酸0.
12gを添加して重縮合反応系を調製した。重縮合反応
系の温度を230℃から280℃まで45分かけて昇温
しながら徐々に0.1mmHgまで減圧にし、以後28
0℃で系の溶融粘度が、極限粘度0.70dl/gのポ
リエチレンテレフタレートの280℃における溶融粘度
にほぼ一致する時点まで重縮合反応を継続して、海島型
複合繊維における海成分として使用する共重合ポリエス
テル(A)を製造た。
【0121】ジカルボン酸成分として5−ナトリウムス
ルホイソフタル酸ジメチルを1.7モル%含有するテレ
フタル酸ジメチルおよびエチレングリコールを使用し
て、エステル交換法により常法にしたがって重合を行っ
て、海島型複合繊維における島成分として用いる極限粘
度[η]=0.60のポリエステル[ポリエステル
(B)]を製造した。
【0122】上記で製造した共重合ポリエステル(A)
およびポリエステル(B)を海島型複合繊維製造用の紡
糸装置に50:50の重量割合で供給して、口金温度2
95℃、引取速度700m/分で紡糸して、共重合ポリ
エステル(A)からなる海部分とポリエステル(B)か
らなる島部分を有する図1の(キ)で示される横断面形
状を有する海島型複合繊維(島数40)からなる紡糸原
糸(255デニール/24フィラメント)を得た。な
お、この複合繊維における共重合ポリエステル(A)と
ポリエステル(B)とのアルカリ溶解速度比は30であ
った。次いで、得られた紡糸原糸を温度75℃の加熱ロ
ーラを用いて延伸倍率3.4倍で延伸した後、130℃
の温度で熱処理して75デニール/24フィラメントの
延伸糸を製造した。
【0123】上記で製造した延伸糸をヨコ糸、75デニ
ール/24フィラメントのポリエステル(B)単独糸を
タテ糸に用い、ヨコ糸が表面に多くでる朱子織物を作製
した後、NaOH:20g/リットルの水酸化ナトリウ
ム水溶液中に98℃で15分間浸漬してアルカリ処理を
施したところ、海成分が完全に溶解除去されていた。次
いで、得られたアルカリ処理織物を常法により糊抜き、
精練、プレセットした後、下記の表13に示す染色条件
で染色した。
【0124】
【表13】 染 色 条 件 カチオン染色浴組成: Kayacryl Red GRL−ED(日本化薬製) 2%owf 硫酸ナトリウム 3g/リットル 酢 酸 1%owf 酢酸ナトリウム 0.5%owf EDTA 0.1g/リットル 浴 比: 1:50 温 度: 120℃ 時 間: 40分
【0125】得られたアルカリ処理染色織物では、織物
表面に出ていたヨコ糸が単繊維繊度が0.1デニール以
下の超極細繊維となっていて、上記の表2の◎に相当す
る、しなやかで極めてソフトでありピーチスキン調の極
めて優れた風合を有し、しかも上記の表3の◎に相当す
る鮮明で深みのある良好な赤色に染色されていた。ポリ
エステル(B)に代えて、極限粘度[η]が0.60の
ポリエチレンテレフタレートを用いて海島型複合繊維か
らなる紡糸原糸を得、延伸を施し、同様の織物を作製し
た。この織物に処理を施して、分散染料で染色したが、
色の鮮明性において少し劣っていた。
【0126】《実施例 26》5−ナトリウムスルホイ
ソフタル酸の代わりに、5−ナトリウムスルホイソフタ
ル酸ジメチル44.4gを用い、且つ1,3,5−トリ
ス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチ
ルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−
(1H,3H,5H)−トリオンの代わりにそれと同重
量のペンアエリスチリル−テトラキス[3−(3,5−
ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネ
ート](チバ・ガイギー社製「イルガノックス101
0)を用いた以外は実施例25と同様にして、海成分用
の共重合ポリエステル(A)を製造た。
【0127】上記で製造した共重合ポリエステル(A)
と実施例25で用いたのと同じポリエステル(B)を使
用して、実施例25と同様にして紡糸、延伸、製織、ア
ルカリ処理および染色を行った。なお、この実施例26
の複合繊維における共重合ポリエステル(A)とポリエ
ステル(B)とのアルカリ溶解速度比は30であった。
その結果、実施例25と同様に、風合および色調の評価
はいずれも上記表2および表3の◎に相当し、しなやか
で極めてソフトであり且つ腰のある極めて優れた風合
と、発色性の高い赤色に染色された超極細繊維からなる
織物が得られた。
【0128】《比較例 14》実施例25において、海
成分となる共重合ポリエステルの製造時に式(V)で表
されるポリオキシエチレングリシジルエーテルを用いな
かった以外は実施例25と同様にして海成分用の共重合
ポリエステルを製造した。この共重合ポリエステルと実
施例25で用いたのと同じポリエステル(B)を使用し
て、実施例25と同様にして紡糸、延伸、製織、アルカ
リ処理および染色を行った。なお、この比較例14の複
合繊維における海成分用の共重合ポリエステルとポリエ
ステル(B)とのアルカリ溶解速度比は10であった。
その結果、海成分を完全に溶解除去するのに98℃にお
いて60分間のアルカリ処理が必要であり、その結果ポ
リエステル(B)からなる島部分までアルカリ減量され
てしまって、得られたアルカリ処理織物は強度が極めて
小さくしかも腰がなく実用に供し得ないものであった。
【0129】《比較例 15》実施例25において、海
成分となる共重合ポリエステルの製造時に式:HO(C
2CH2O)45Hで表されるポリエチレングリコールを
用いなかった以外は実施例25と同様にして海成分用の
共重合ポリエステルを製造した。この共重合ポリエステ
ルと実施例25で用いたのと同じポリエステル(B)を
使用して、実施例25と同様にして紡糸、延伸、製織、
アルカリ処理および染色を行った。なお、この比較例1
5の複合繊維における海成分用の共重合ポリエステルと
ポリエステル(B)とのアルカリ溶解速度比は5であっ
た。その結果、海成分を完全に溶解除去するのに98℃
において40分間のアルカリ処理が必要であり、その結
果ポリエステル(B)からなる島部分までアルカリ減量
されてしまって、得られたアルカリ処理織物は強度が極
めて小さくしかも腰がなく実用に供し得ないものであっ
た。
【0130】《比較例 16》海成分として実施例25
で製造したポリエステル(B)を使用し、島成分として
極限粘度[η]が0.70のポリエチレンテレフタレー
トを用いて、実施例25と同様にして紡糸、延伸、製
織、アルカリ処理および染色を行った。なお、この比較
例16の複合繊維における海成分用のポリエステル
(B)とポリエチレンテレフタレートのアルカリ溶解速
度比は2であった。その結果、海成分を完全に溶解除去
するのに98℃において120分以上のアルカリ処理が
必要であり、その結果ポリエステル(B)からなる海部
分のみならず、ポリエチレンテレフタレートからなる島
部分の大半がアルカリ減量されてしまって、得られたア
ルカリ処理織物は織物の形態を保持できず、実用に全く
供し得ないものであった。
【0131】《実施例 27》共重合ポリエステル
(A)として、実施例7と同様にして製造された5−ナ
トリウムスルホイソフタル酸単位を2.5モル%、式:
HO(CH2CH2O)45Hで表されるポリエチレングリ
コールを5重量%および上記の式(V)で表されるポリ
オキシエチレングリシジルエーテル5重量%含有する極
限粘度[η]が0.65の共重合ポリエステルを用い
た。また、実施例25と同様にして、5−ナトリウムス
ルホイソフタル酸単位を1.7モル%含有する極限粘度
[η]が0.67のポリエステル[ポリエステル
(B)]を製造した。
【0132】上記の共重合ポリエステル(A)とポリエ
ステル(B)を超偏平複合繊維製造用の紡糸装置に3
0:70の重量割合で供給して、口金温度295℃、引
取速度1000m/分で紡糸して、図4の(ア)で示さ
れる横断面構造を有する11分割型の貼合せ構造を有す
る超偏平複合繊維の紡糸原糸(170デニール/24フ
ィラメント)を得た。次いで、得られた紡糸原糸を延伸
温度75℃、熱固定温度120℃で2.25倍の延伸倍
率で延伸して75デニール/24フィラメントの延伸糸
を製造した。なお、この延伸糸において共重合ポリエス
テル(A)とポリエステル(B)のアルカリ溶解速比は
約100であった。
【0133】上記で得られた延伸糸と筒編みにし、10
0℃で20分リラックス後、180℃で1分間ヒートセ
ットを施し、NaOH:20g/リットルの水酸化ナト
リウム水溶液中に75℃で30分間浸漬してアルカリ減
量加工を行った。この時の糸の状態を観察したところ、
共重合ポリエステル(A)部分が完全に溶解除去され
て、ポリエステル(B)層が互いに完全に分割独立して
いる図4の(エ)で示される超偏平繊維が得られてお
り、そのL/Wは30であった。このアルカリ処理編物
を実施例25と同様にして染色したところ、下記の表1
4に示すように、しなやかで極めてソフトであり且つ腰
のある極めて優れた風合を有し、しかも上記鮮明で深み
のある良好な赤色に染色されていた。
【0134】《実施例 28〜30》5−ナトリウムス
ルホイソフタル酸単位、式:HO(CH2CH2O)45
で表されるポリエチレングリコールよりなる単位および
上記の式(V)で表されるポリオキシエチレングリシジ
ルエーテルよりなる単位の共重合割合がそれぞれ下記の
表14に示すようになっている共重合ポリエステル
(A)を使用した以外は実施例27と同様にして超偏平
複合繊維の製造、延伸、製編、アルカリ処理および染色
繊維を行ったところ、下記の表14に示すとおりの結果
を得た。
【0135】《比較例 17〜21》下記の表14に示
すように、5−ナトリウムスルホイソフタル酸単位、
式:HO(CH2CH2O)45Hで表されるポリエチレン
グリコールよりなる単位および上記の式(V)で表され
るポリオキシエチレングリシジルエーテルよりなる単位
の少なくとも1つを含まないポリエステルを実施例27
の共重合ポリエステル(A)の代わりに使用した以外は
実施例27と同様にして超偏平複合繊維の製造、延伸、
製編、アルカリ処理および染色繊維を行ったところ、下
記の表14に示すとおりの結果を得た。
【0136】《実施例 31〜32》ポリエステル
(B)として5−ナトリウムスルホイソフタル酸単位を
2.5モル%共重合させたポリエステルを使用するか
(実施例31)または5−ナトリウムスルホイソフタル
酸単位を含まないポリエチレンテレフタレートを使用し
た(実施例32)以外は実施例27と同様にして超偏平
複合繊維の製造、延伸、製編、アルカリ処理および染色
繊維を行ったところ、下記の表14に示すとおりの結果
を得た。
【0137】《実施例 33〜34》共重合ポリエステ
ル(A)とポリエステル(B)とから、図4の(イ)で
示される横断面構造を有する7分割型の貼合せ構造を有
する超偏平複合繊維の紡糸原糸(200デニール/24
フィラメント)(実施例33)または図4の(ウ)で示
される横断面構造を有する5分割型の貼合せ構造を有す
る超偏平複合繊維の紡糸原糸(200デニール/24フ
ィラメント)(実施例34)を製造し、その超偏平複合
繊維を用いた以外は実施例27と同様にして超偏平複合
繊維の製造、延伸、製編、アルカリ処理および染色繊維
を行ったところ、下記の表14に示すとおりの結果を得
た。
【0138】
【表14】
【0139】上記表14の結果から、5−ナトリウムス
ルホイソフタル酸単位、式:HO(CH2CH2O)45
で表されるポリエチレングリコールよりなる単位および
上記の式(V)で表されるポリオキシエチレングリシジ
ルエーテルよりなる単位を本発明の範囲内で含有する共
重合ポリエステル(A)と他の繊維形成性重合体(B)
[ポリエステル(B)]との超偏平複合繊維からなる布
帛をアルカリ処理している実施例27〜34の場合は、
いずれも共重合ポリエステル(A)のみが選択的に速や
かに溶解除去されて、繊維形成性重合体(B)[ポリエ
ステル(B)]の超偏平繊維からなるしなやかでソフト
さに富み風合が極めて良好であり、且つ色調にも優れて
いるアルカリ処理染色布帛が得られることがわかる。
【0140】それに対して、5−ナトリウムスルホイソ
フタル酸単位、式:HO(CH2CH2O)45Hで表され
るポリエチレングリコールよりなる単位および上記の式
(V)で表されるポリオキシエチレングリシジルエーテ
ルよりなる単位の少なくとも1つを欠いているポリエス
テルまたは共重合ポリエステルをアルカリ溶解性成分と
して用いた複合繊維の布帛をアルカリ処理した場合に
は、柔軟性に欠け、色調的にも劣るアルカリ処理染色布
帛しか得られないことがわかる。
【0141】
【発明の効果】上記の式(I)で表されるジカルボン酸単
位を一部含有するジカルボン酸単位;上記の式(II)で表
されるジオール単位;および上記の式(III)で表される
側鎖単位を上記特定の割合で有する共重合ポリエステル
(A)とその他の繊維形成性重合体(B)とからなる複
合繊維、該複合繊維から製造されて糸または布帛を用い
てアルカリ処理を行う場合は、温和なアルカリ処理条件
下に、該繊維形成性重合体(B)の侵食、溶解、損傷等
を招くことなく、共重合ポリエステル(A)の少なくと
も一部を極めて短時間に速やかに溶解除去して、天然繊
維に似たソフトでしなやかな極めて優れた風合、表面状
態および外観を有する繊維、糸および布帛を短時間で効
率よく製造することができる。
【0142】しかも、共重合ポリエステル(A)と繊維
形成性重合体(B)とからなる複合繊維は繊維化時の工
程性が良好であり、断糸や毛羽の発生などを生ずること
なく円滑に製造することができる。
【0143】本発明で使用する複合繊維における共重合
ポリエステル(A)はアルカリ溶解性が極めて高いこと
により、本発明では、従来アルカリ溶解成分として用い
られてきたスルホネート基を有するイソフタル酸を共重
合させたポリエステルをアルカリ処理後も残留させる繊
維形成性重合体(B)として用いることができ、その結
果得られるアルカリ処理後の繊維や布帛ではスルホネー
ト基の存在によってカチオン染料による染色性が増し、
鮮明で深みのある良好な染色物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合繊維の横断面における複合形態の
例を示す図である。
【図2】本発明の複合繊維の横断面における複合形態の
別の例とそのアルカリ処理後の形態を示す図である。
【図3】図2の(ア)の複合繊維を製造するのに使用す
る紡糸口金パックの例を示す図である。
【図4】本発明の複合繊維の横断面における複合形態の
更に別の例とそのアルカリ処理後の形態を示す図であ
る。
【符号の説明】
A 共重合ポリエステル(A) B 繊維形成性重合体(B) C 繊維形成性重合体(C) 1 ミキシングプレート 2 分配板 3 口金板 4 流路 5 流路 6 流路 7 紡糸孔
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D01F 8/14 B 7199−3B D06N 3/00 8016−4F (72)発明者 長田 英史 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内 (72)発明者 徳永 勲 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内 (72)発明者 綿谷 泉 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内 (72)発明者 赤木 孝夫 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内 (72)発明者 河本 正夫 岡山県倉敷市酒津1621番地 株式会社クラ レ内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)(a)下記の式(I); 【化1】 (式中、Arは3価の芳香族基、Mは金属原子を示す)
    で表されるジカルボン酸単位を一部含有するジカルボン
    酸単位; (b)下記の式(II); 【化2】−O−(R1−O)m− (II) (式中、R1はアルキレン基、mは10〜100の数を
    示す)で表されるジオール単位;および (c)下記の式(III); 【化3】 (式中、R2はアルキレン基、R3は炭素数1〜18の炭
    化水素基、nは10〜100の数、xおよびyはそれぞ
    れ0または1を示す)で表される側鎖単位;を含有する
    共重合ポリエステルであって、式(I)で表されるジカル
    ボン酸単位を共重合ポリエステルを構成する全酸成分の
    0.5〜10モル%、式(II)で表されるジオール単位お
    よび式(III)で表される側鎖単位をそれぞれ共重合ポリ
    エステルの重量に基づいて1〜49重量%有し、且つ式
    (II)で表されるジオール単位と式(III)で表される側鎖
    単位の含有率の合計が共重合ポリエステルの重量に基づ
    いて2〜50重量%である共重合ポリエステル;並びに (B)他の繊維形成性重合体の少なくとも1種;からな
    る複合繊維。
  2. 【請求項2】 (A)(a)下記の式(I); 【化4】 (式中、Arは3価の芳香族基、Mは金属原子を示す)
    で表されるジカルボン酸単位を一部含有するジカルボン
    酸単位; (b)下記の式(II); 【化5】−O−(R1−O)m− (II) (式中、R1はアルキレン基、mは10〜100の数を
    示す)で表されるジオール単位;および (c)下記の式(III); 【化6】 (式中、R2はアルキレン基、R3は炭素数1〜18の炭
    化水素基、nは10〜100の数、xおよびyはそれぞ
    れ0または1を示す)で表される側鎖単位;を含有する
    共重合ポリエステルであって、式(I)で表されるジカル
    ボン酸単位を共重合ポリエステルを構成する全酸成分の
    0.5〜10モル%、式(II)で表されるジオール単位お
    よび式(III)で表される側鎖単位をそれぞれ共重合ポリ
    エステルの重量に基づいて1〜49重量%有し、且つ式
    (II)で表されるジオール単位と式(III)で表される側鎖
    単位の含有率の合計が共重合ポリエステルの重量に基づ
    いて2〜50重量%である共重合ポリエステル;並びに (B)他の繊維形成性重合体の少なくとも1種;からな
    る複合繊維、該複合繊維を用いて製造された糸または布
    帛を、アルカリ処理して上記共重合ポリエステル(A)
    の少なくとも一部を溶解除去することを特徴とする繊
    維、糸または布帛物の製造方法。
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