JPH06221320A - ロックナット - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐振・耐熱性の良好なロックナットの提供。 【構成】 ナット本体の少なくとも１側にロック部材を
内設したロックナットにおいて、前記のロック部材がナ
イロン繊維の原料であるポリアミドにガラス繊維を少量
混入した素材からなり、その中央部に隅肉付き正方形状
の透孔が設けられ、かつその厚みがナットネジ山の２〜
３ピッチに相当するように構成したロックナット。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、耐振性ならびに耐熱
性に優れたロックナットに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来のロックナットとしては、例えば、
図７に示すスプリングロックナット（１０）（従来例
１）があり、詳しく説明すると、一つのナット本体の上
部をテーパ円筒（１０ａ）に形成し、、六箇の切り溝
（１０ｂ）を等間隔に設け、かつピッチを変えて金属同
士の接触面摩擦抵抗を増大して緩み止めの役割を果たし
ている。このようなロックナット（１０）は、六箇の切
り溝（１０ｂ）を設けることによって形成した六つのテ
ーパ爪の弾性力で緩みを防止している。

【０００３】また、図８に示すものは、前記のスプリン
グロックナット（１０）の生産性とネジの緩み止めを改
善したエラスチックロックナット（２０）（
_{elastic lock nut)}（従来例２）である。このエラスチッ
クロックナット（２０）は、金属製六角ナット本体（２
０ａ）の上方に設けた緩み防止材保持室（２０ｂ）にリ
ング状のナイロン緩み防止材（２０ｃ）を嵌装させてな
るものである。

【０００４】このようにして構成されたロックナット
（２０）をボルト（３０）に螺合し、所定の締め付けト
ルクで固定すると、緩み防止材（２０ｃ）の中央に形成
された円孔がボルト（３０）のネジ山（３０ａ）に食込
んで強く圧縮されるので、ボルトのネジ山（３０ａ）に
食込んだ防止材（２０ｃ）と螺子が噛合った際の接触面
の摩擦抵抗は金属同士が噛合った時の摩擦抵抗よりも大
きいので緩み防止の効果を向上させることができる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の
従来例１のものにあっては、耐振動性に限度があり、し
かも生産性が良くないのでコスト高になるという欠点が
あった。又、従来例２のようなロックナット（２０）
は、その緩み防止材（２０ｃ）であるナイロンリングの
溶融点が１２０℃位であるため、シリンダヘッドのよう
な高温（１２０℃以上）状態での使用には適用できな
い。

【０００６】また、前記の緩み防止材（２０ｃ）は一回
使用すると、ボルトのネジ山間との摩擦抵抗が急激に低
下するので、繰り返し使用ができないという欠点もあっ
た。

【０００７】この発明は、前記したような従来のロック
ナットなどの諸欠点を解決するために、前記の緩み防止
材の質と構造を改良して耐熱性と緩み止め性を向上させ
たロック部材を備えてなるロックナットを提供すること
を目的としている。この発明の他の目的は、生産性が良
くて数回の繰り返し使用ができる安価なロックナットを
提供することである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】前記した従来技術の問題
点を解決するこの発明の構成上の特徴点は、ナット本体
の少なくとも１側にロック部材を内設したロックナット
において、前記のロック部材がナイロン繊維の原料であ
るポリアミドにガラス繊維やカーボン繊維を少量混入し
た素材からなり、その中央部に隅肉付き正方形状の透孔
が設けられ、かつその厚みがナットネジ山の２〜３ピッ
チに相当するように構成されている点にある。

【０００９】

【作 用】この発明のロックナットは、前記の如き
構成であるから、ボルトに螺締した際に、ロック部材が
ボルトのネジ山との接触面摩擦抵抗を増大させ、ボルト
の雄ネジを強固に抱持するものであって、振動が与えら
れてもロックナットが弛緩するおそれがなく、厳しい使
用条件下においても数回くり返し使用が可能である。
又、ロック部材には、前記のような改良された材質と構
成を有する素材が緩み防止材として使用されているの
で、その耐熱性を大巾に引き上げることができると共
に、自動的生産機械で量産しうるものが得られたところ
である。

【００１０】

【実 施 例】次に、この発明に係るロックナットの実
施例を、図面に基づいて説明する。

【００１１】図１乃至図３には、その実施例のロックナ
ット（１）が記載されており、このロックナット（１）
の雌ネジ（１ａ）を開設した六角状のナット本体（１
ｂ）の１側には、図３に示す円筒部（１ｃ）を突設して
おり、この円筒部（１ｃ）内に装填された緩み止め用の
ロック部材（２）を、この円筒部（１ｃ）の外端を内向
きに折り曲げた抱持部（１ｄ）によって六角状のナット
本体（１ｂ）に取付けた構成とされている。

【００１２】次に、前記のロック部材（２）について
は、図４および図５に示す如くに外観状において円板タ
ブレット状を呈しており、その中央部には、隅肉付きの
正方形状の透孔（２ａ）が開設されており、その周辺部
を枠部（２ｂ）となした形状である。

【００１３】次に、このロック部材（２）の寸法につい
て見れば、その枠部（２ｂ）の外径（Ｒ1 ）は、前記円
筒部（１ｃ）の内径（Ｒ2 ）と実質的に同等程度とした
が、

【００１４】

【数１】

【００１５】のように前記の内径（Ｒ2 ）僅かに大きく
設定すると、ロック部材（２）の装填作業が容易に実施
できるものである。

【００１６】又、その透孔（２ａ）の孔巾（Ｗ）は、こ
のロックナット（１）に螺装されるボルト（３）の雄ネ
ジ（３ａ）の山谷径よりも稍小さい寸法とし、又、その
厚み（Ｄ）については、ロックナット（１）の雌ネジ
（１ａ）の山部のピッチ（Ｐ）の２〜３倍程度とするこ
とが好ましいものである。

【００１７】

【数２】

【００１８】次に、このロック部材（２）の素材につい
て見れば、ナイロン繊維の原料であるポリアミド樹脂に
少量のガラス繊維を補強剤として配合し、充分に混合し
てから加熱、加圧などのプロセスを経て製造され、タブ
レット状に形成されたものである。

【００１９】又、前記のポリアミド樹脂としては、例え
ばナイロン６、６−６、６−１０、６−１２、１１及び
１２などがあるが、ナイロン６−６が最も好ましいもの
であり、実施例に用いられるポリアミドの化学式は、

【００２０】

【化１】

【００２１】であり、その式におけるＸ1 は６で、Ｘ2
は４であり、左右二つのグループにおける原子炭素の数
は各々６である。

【００２２】又、耐熱補強剤としては、ガラス繊維、カ
ーボン繊維、セラミック繊維などがあるが、ガラス繊維
が一番手頃であり、この実施例に用いられるガラス繊維
の化学式は、

【００２３】

【化２】

【００２４】である。

【００２５】更に、前記の混合によるロック部材（２）
の物性を測定した結果は次の通り優良である。

【００２６】

【表１】

【００２７】次に、このロックナット（１）の組み立て
について見れば、たとえば、専用機械によってロック部
材（２）を、図３に示すロックナット（１）の円筒部
（１ｃ）内に自動的に挿入し、プレス手段により専用金
型を利用して、この円筒部（１ｃ）の外端を内向きに折
り曲げることによって抱持部（１ｄ）を形成し、図１に
示すようにロック部材（２）をロックナット本体（１
ｂ）内に堅く装着させてロックナット（１）を完成する
ものである。

【００２８】前記のロックナット（１）をボルト（３）
に螺合させて使用している状態は、図６に示す通りであ
って、前記ロックナット（１）を対応するボルト（３）
にねじ込み、締め付ける方向に回すと座面（１ｅ）が締
め付け面（図示せず）に到達する前に、ロック部材
（２）の一部が弾性的伸縮を開始し、円筒部（１ｃ）内
で雄ネジ山と接触した正方形状の透孔（２ａ）の４側面
は押し付けられて該雄ネジ（３ａ）の谷にくい込み、ボ
ルト（３）にきつく螺合する。

【００２９】この場合、ロック部材（２）の透孔（２
ａ）の孔巾（Ｗ）は、螺合した雄ネジ（３ａ）の谷径
（Ｒ3 ）よりも少し小さい（狭い）ので、狭い部分にな
る余肉は一部分が押されて透孔（２ａ）の四隅へ伸展す
る。前記ボルト（３）の雄ネジ（３ａ）と螺合したロッ
クナット（１）の雌ネジ（１ａ）は、金属同士の接触に
なるので、この部分の摩擦抵抗はロック部材（２）とボ
ルト（３）の雄ネジ（３ａ）が接触して生ずる摩擦抵抗
よりも小さい。

【００３０】それで、ロックナット（１）をボルト
（３）にねじ込むと、ロック部材（２）との螺合部分の
摩擦抵抗が金属同士の螺合部分よりも大きいので、正方
形状の透孔（２ａ）の平行四辺の中央部がロックナット
（１）の金属ネジ部分に引かれて螺進すると共に、外側
（ボルト（３）の先端）へはみ出して四つ割の割輪状突
出（２ｃ）を形成して雄ネジ（３ａ）を抱持する結果と
なる。

【００３１】この割輪状突出（２ｃ）の形成は、材料の
過度な圧縮や変形を防ぐので、ロック部材（２）の亀裂
や永久変形の発生がなく、しかも自己緩み止めの作用が
あり、ロックナット（１）の緩みに対してきわめて強力
な緩み止めの効果がある。

【００３２】前記のように構成されたロックナット
（１）は、その緩み止め性を判定するために振動ゆるみ
試験を行ったところ、次のような結果が得られた。

【００３３】使用試験機：ＮＡＳ式高速ねじゆるみ試験
機 （米国航空機規格ＮＡＳ３３５０） 振動数：１７８０Ｃ．Ｐ．ｍ． 加振ストローク：１１ｍｍ インパクトストローク：１９ｍｍ 加振台振動加速度：１５，５Ｇ

【００３４】

【表２】

【００３５】試験に使われるロックナット（１）のサン
プリングは全部で１００個の中から１０個を選出した。
試験に先立って各試験用ナットをそれぞれ１５回のナッ
ト空転を行った。試験記録はその１０個の平均値を取っ
た。

【００３６】前記の試験結果からも分かるように、この
実施例によるロックナット（１）はＮＡＳ式高速ねじ緩
み試験機に掛けて１７８０回／分の振動で２分間経過し
ても全然緩みはなかった。しかし、比較例である従来例
１と２とは最高１分２０秒で完全に緩んでいた。この実
施例のものを続けて１０分になるまで更に緩み試験を続
けた後も該ロックナット（１）の緩みを見出すことがで
きなかった。

【００３７】次に、このロックナット（１）を取り出し
てから再び同じトルクで締め付け直した。同じ試験を１
０分間続けてから、該ロックナット（１）の緩みを点検
したが、やはり緩みは見られなかった。同じような要領
で第２回の１０分間テストを続け、もし緩みがなけれ
ば、一旦取り外してから再締め付けをして、第３回の１
０分間テストを繰り返して行うようにして、ロックナッ
ト（１）の緩みが出るまで続けた。その結果平均５．６
回（即ち５６分）で該ロックナット（１）が初めて緩ん
だ。これによってこの実施例によるロックナット（１）
の耐振動性、緩み止め性が優れていることが明らかにさ
れた。

【００３８】又、ロック部材（２）が、ポリアミドにガ
ラス繊維を少量混入した素材で構成されているため、耐
熱性に関しては約２６０℃程度にまで上昇させることが
可能であり、高温雰囲気の環境下でこのロックナット
（１）を使用しても高熱によってロック部材（２）が劣
化されるおそれが少なく、耐熱性の優れたロックナット
（１）が完成されたものである。

【００３９】

【発明の効果】以上の実施例の説明からも明らかなよう
に、この発明のロックナットは、ロック部材としてポリ
アミド、補強剤としてガラス繊維やカーボン繊維などを
少量配合したので、充分な弾性を保持しながら耐熱性を
大幅に向上させることができると共に、ロック部材にお
けるボルトの挿入用透孔を隅肉付き正方形状に形成し、
しかも肉厚みをナットネジピッチの２〜３倍に設定した
ので、ボルトに螺合すると雄ネジに抱きつく割輪状突出
が形成されて、セルフロックの作用を発生し、優れた緩
み止めの効果を奏することができると共に、数回のくり
返し使用も可能なロックナットを得ることが出来たもの
である。

【００４０】又、この発明のロックナットは、耐振動性
がよいので、エンジン、ポンプ、汽車、自動車、オート
バイ、産業機械、紡織機械、コンベア、バイブレータ、
一般機械、電気電子機器、工具機械などの緩み防止用ロ
ックナットに広く利用され、製品の信頼性向上に役立つ
ものであり、生産性がよいので安価に大量生産できると
いう効果を達成できるものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明に係るロックナットの実施例を示す縦
断面図。

【図２】図１の実施例のロックナットの外観斜視図。

【図３】図１の実施例の組立前のロックナットの一部切
断側面図。

【図４】図１の実施例に利用するロック部材の平面図。

【図５】図４のロック部材の〓−〓断面図。

【図６】図１のロックナットの使用例を示す縦断面図。

【図７】従来例１におけるスプリングロックナットの側
面図。

【図８】従来例２におけるエラスチックロックナットの
一部分縦断面側面図。

【符号の説明】

１ ロックナット １ｂ ナット本体 １ｃ 円筒部 ２ ロック部材 ２ａ 透孔 Ｄ ロック部材の厚み Ｐ ナットネジ山のピッチ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ナット本体の少なくとも１側にロック部
   材を内設したロックナットにおいて、前記のロック部材
   がナイロン繊維の原料であるポリアミドにガラス繊維を
   少量混入した素材からなり、その中央部に隅肉付き正方
   形状の透孔が設けられ、かつその厚みがナットネジ山の
   ２〜３ピッチに相当するように構成されていることを特
   徴としたロックナット。