JPH06199720A - 熱安定性の高いビスフェノールaの製造方法 - Google Patents

熱安定性の高いビスフェノールaの製造方法

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JPH06199720A
JPH06199720A JP36116892A JP36116892A JPH06199720A JP H06199720 A JPH06199720 A JP H06199720A JP 36116892 A JP36116892 A JP 36116892A JP 36116892 A JP36116892 A JP 36116892A JP H06199720 A JPH06199720 A JP H06199720A
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phenol
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evaporator
temperature
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JP36116892A
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Sachio Asaoka
佐知夫 浅岡
Atsumi Kukitome
敦美 久木留
Koji Sakashita
幸司 坂下
Nobuo Moriya
信男 守屋
Akio Endo
昭夫 遠藤
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Chiyoda Corp
Chiyoda Chemical Engineering and Construction Co Ltd
Original Assignee
Chiyoda Corp
Chiyoda Chemical Engineering and Construction Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 加熱したときでも容易に着色を生じることの
ない、熱安定性の高いビスフェノールAの製造方法を提
供する。 【構成】 ビスフェノールAを、185〜220℃の温
度及び20トール以下の条件下でスチームストリッピン
グする工程を含むことを特徴とする熱安定性の高いビス
フェノールAの製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱安定性の高いビスフ
ェノールAの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ビスフェノールA〔2,2−ビス(4−
ヒドロキシフェニル)プロパン〕を製造するために、酸
触媒の存在下、過剰のフェノールにアセトンを反応させ
ることは知られている。また、この反応生成物から高純
度ビスフェノールAを分離回収するために、反応生成物
を冷却してビスフェノールAとフェノールとの結晶アダ
クト(以下、単に結晶アダクトとも言う)を晶出させ、
得られたアダクト結晶からフェノールを除去することも
知られている。このようなビスフェノールAの製造方法
において、製品として回収されるビスフェノールAの純
度は、その結晶アダクトからのフェノールの除去率に大
きく依存することはもちろんであるが、アダクト結晶に
含まれるフェノール以外の不純物によっても影響され
る。結晶アダクトに含まれるフェノール以外の不純物を
除去するために、液体フェノールによりアダクト結晶を
洗浄する方法は知られている(特開平1−146839
号)。この公知方法では、洗浄用の液体フェノールとし
て、結晶アダクトから分離したフェノールを用いること
を特徴とし、これによって工業用フェノールを用いる場
合よりも、色相の良い製品ビスフェノールAを得てい
る。この場合、結晶アダクトからフェノールは、蒸発、
抽出、水蒸気によるストリッピング等によって分離され
る。結晶アダクトから蒸発によりフェノールを除去する
方法としては、具体的には、特公昭52−42790号
公報に示されているように、結晶アダクトを溶融後、1
80℃より上の温度及び減圧下で0.1〜30分間で気
化し、フェノールを分別凝縮させてビスフェノールAか
ら分離する方法を挙げることができる。しかし、前記の
ようにして、結晶アダクトをフェノール洗浄し、次いで
蒸発処理して得られるビスフェノールAは、未だ色相の
点で不十分である上、その溶融物が着色しやすいという
問題があった。
【0003】このような問題を解決するためにシュウ酸
やクエン酸をフェノール/水/ビスフェノールA混合物
中に加えた後、蒸留処理することにより、改善された色
相を有するビスフェノールAを得る方法が提案されてい
る(特公昭40−19333号)。また、ビスフェノー
ルAの安定性を向上させるために、チオグリコール酸、
グリコール酸又はポリリン酸を添加する方法(特公昭4
7−43937号)や、乳酸、リンゴ酸又はグリセリン
酸を添加する方法(特開平2−231444号)等も知
られている。しかし、前記の方法においても、得られる
ビスフェノールAは加熱により着色を生じやすいもので
あり、ビスフェノールAの色相改善の効果は未だ充分で
はなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、加熱したと
きでも容易に着色を生じることのない、熱安定性の高い
ビスフェノールAの製造方法を提供することをその課題
とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成する
に至った。即ち、本発明によれば、ビスフェノールA
を、185〜220℃の温度及び20トール以下の条件
下でスチームストリッピングする工程を含むことを特徴
とする熱安定性の高いビスフェノールAの製造方法が提
供される。
【0006】本発明において被処理原料として用いるビ
スフェノールAは、従来公知の方法で製造されたもので
あることができる。ビスフェノールAを製造するため
に、アセトンとフェノールを反応させてビスフェノール
Aを得る反応工程、前記反応工程で得られた反応生成物
からビスフェノールAを含むフェノール溶液を分離する
分離工程、この分離工程で得られたビスフェノールAを
含むフェノール溶液を冷却してビスフェノールAとフェ
ノールとの結晶アダクトを生成させる結晶アダクト生成
工程、得られた結晶アダクトを液化させる結晶アダクト
液化工程、得られた結晶アダクト液化物をスチームスト
リッピングしてフェノールを除去し、高純度ビスフェノ
ールAを得る工程からなる方法が知られている。本発明
では、このようにして得られたビスフェノールAを被処
理原料として使用することができる。
【0007】前記したビスフェノールAの製造におい
て、結晶アダクトを液化し、この液化物をスチーストリ
ッピングしてフェノールを除去する場合、その結晶アダ
クトとして、実質的に中性条件下にある結晶アダクトを
用いるとともに、この結晶アダクトもしくはその液化物
に脂肪族カルボン酸を添加混合した後、温度130〜2
20℃、減圧下においてフェノールを蒸発除去するのが
好ましい。
【0008】ビスフェノールAを得るためのフェノール
とアセトンとの反応においては、酸触媒として、塩酸、
硫酸、スルホン酸型の強イオン交換樹脂等の強酸性物質
が用いられる。このような強酸性物質は、フェノールと
アセトンとの反応系においては、その触媒として作用す
る他、加熱条件下では、着色物質や不純物の発生を促進
させる作用も示し、回収されるビスフェノールA及びフ
ェノールの色相及び純度を低下させる。従って、このよ
うな強酸性物質は、加熱条件を伴う後続の脱フェノール
工程に流出させないように、反応後、除去又は中和する
ことが提案されている。例えば、塩酸を触媒として用い
る反応では、反応後、生成物を加熱して塩酸を除去し、
残留する塩酸はこれをアルカリで中和し、pH5〜6に
中和する方法が提案されている(特公昭47−4393
7号)。また、強酸型イオン交換樹脂を用いる方法で
は、反応に際し、そのイオン交換樹脂の分解により有機
スルホン酸が脱離し、生成物中に混入することから、そ
の有機スルホン酸を弱塩基性イオン交換樹脂を用いて中
和する方法が提案されている(米国特許第419184
3号)。一方、フェノール及びビスフェノールAの色相
及び純度は、酸だけでなく、アルカリによっても低下す
るので、強酸性物質のアルカリによる中和は、中和点を
超えないように行うことが必要である。
【0009】以上のように、フェノールとアセトンを強
酸性物質の存在下で反応させる反応では、反応生成物中
に存在する強酸性物質を反応後、中和点を超えないよう
に中和するか、反応系から除去することが必要であり、
また、強酸性物質の中和に用いたアルカリが残存すると
きには、このアルカリも除去することが必要である。ま
た、反応生成物中に存在する強酸性物質あるいはアルカ
リの除去は、後続の晶析工程において、多段階晶析工程
を用いることによって除去することができる。前記した
実質的に中性条件下にある結晶アダクトとは、前記のよ
うな強酸性物質やアルカリ性物質の影響の除去された結
晶アダクトを意味するものである。このような結晶アダ
クトは、pH5.0を示すように酸度を調整したメタノ
ール水溶液に添加溶解し、フェノールの実質的非電離条
件下におけるpH測定方法において、pH4.90〜
5.50、好ましくはpH4.95〜5.20を示すも
のである。
【0010】前記脂肪族カルボン酸としては、ビスフェ
ノールAに対して着色防止効果を示すものであればどの
ようなものでもよく、従来公知のものが用いられる。こ
のようなものとしては、例えば、ギ酸、シュウ酸、クエ
ン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、グリセ
リン酸等を挙げることができる。これらのものは、反応
中、160℃以上の温度で分解あるいは異性化を起し
て、ビスフェノールAに対する着色防止剤としてすぐれ
た作用を示す。脂肪族カルボン酸の添加量は、結晶アダ
クトに対し、1〜100重量ppm、好ましくは5〜5
0重量ppmである。また、結晶アダクト又はこれを含
む混合物をシュウ酸又はクエン酸の存在下で加熱溶融す
る場合、その溶融温度は115〜180℃、好ましくは
120〜150℃であり、溶融圧力は、1〜5atm、
好ましくは1.0〜1.9atmである。溶融雰囲気
は、できるだけ酸素濃度の低い雰囲気が好ましく、通
常、酸素濃度0.005vol%以下、好ましくは0.
001vol%以下の雰囲気の使用が有利である。さら
に、結晶アダクト又はこれを含む混合物を、短時間で溶
融させるために、その結晶アダクト又はこれを含む混合
物を、精製フェノールのような着色の殆どない熱フェノ
ールを用いて希釈して溶融する方法や、結晶アダクト又
はこれを含む混合物の溶融済みの液中に溶解させる方法
等を採用することもできる。
【0011】脂肪族カルボン酸を含む結晶アダクト液化
物を蒸発処理する場合、130〜200℃で減圧条件下
で行う。好ましい蒸発処理は、液化物全体の温度が18
5℃以上で行う。蒸発処理温度が余りにも低くなると、
着色防止剤として添加した脂肪族カルボン酸の効果が十
分発揮されなくなり、一方、余りにも高くなると、脂肪
族カルボン酸の着色分解を生じるようになる。この蒸発
処理は減圧下で行われ、その圧力は100トール以下、
好ましくは5〜60トールである。また、蒸発処理の雰
囲気は、できるだけ酸素濃度の低い雰囲気が好ましく、
通常、酸素濃度0.005vo%以下、好ましくは0.
001vol%以下の雰囲気の使用が有利である。前記
のようにして得られたビスフェノールAは、それ自体で
色相及び熱安定性の向上したもにであり、本発明の被処
理原料用フェノールとして好適のものである。
【0012】本発明の方法を実施するには、ビスフェノ
ールAを、185〜220℃、好ましくは190〜21
0℃及び20トール以下、好ましくは15トール以下の
条件下でスチームストリッピング処理すればよい。被処
理原料として用いるビスフェノールAは、フェノールを
1000ppm以下の程度含有することができる。ま
た、その溶融色APHAは、20以下であり、通常、5
〜10の範囲である。スチームストリッピング装置とし
ては、充填塔や、薄膜蒸発器等の従来公知の蒸発装置が
用いられる。ビスフェノールAをスチームストリッピン
グ処理する場合、その雰囲気としては、できるだけ酸素
の少ない雰囲気を用いるのが好ましく、一般には、酸素
濃度が0.005vol%以下、好ましくは0.001
〜0vol%の雰囲気が用いられる。処理時間(装置内
の滞留時間)は、1〜10分、好ましくは1〜3分であ
る。スチームの使用割合は、ビスフェノールA100重
量部に対し、2〜20重量部、好ましくは4〜10重量
部の割合である。
【0013】本発明においては、前記したように、スチ
ームストリッピング条件として、185〜220℃の温
度と、20トール以下の圧力を用いる。処理温度が前記
範囲より低いと、ビスフェノールA中に含まれている不
純物、特にイソプロペニルフェノールの蒸発除去が不完
全になり、得られるビスフェノールAの熱安定性が未だ
不満足のものになる。一方、処理温度が前記範囲より高
くなると、高沸点不純物の分解が起り、着色物を生じる
ようになる。また、処理圧力が前記範囲より高くなる
と、ビスフェノールA中の不純物の蒸発除去が不完全な
ものとなる。本発明の方法は、従来公知の方法で得られ
たビスフェノールAを原料として用い、これを液化した
後、本発明によりスチームストリッピング処理を施すこ
とにより実施することができるが、ビスフェノールAを
製造する工程に組込んで実施するのが好ましい。即ち、
ビスフェノールAの製造工程においては、前記したよう
に、結晶アダクトの液化工程と、その結晶アダクトの液
化物からそれに含まれるフェノールを除去する脱フェノ
ール工程が採用されるが、本発明においては、その脱フ
ェノール工程の最終段の工程として本発明のスチームス
トリッピング処理を用いることができるし、その脱フェ
ノール工程の後に本発明のスチームストリッピング処理
を付加することもできる。
【0014】図1に、本発明によるスチームストリッピ
ング処理を組込んだ脱フェノール工程のフローシートを
示す。図1において、Lは結晶アダクトを加熱溶融して
液化する加熱装置である。この装置は、外壁面に加熱ジ
ャケットを備えた外部加熱方式の密閉型容器や、内部に
加熱コイルを備えた内部加熱方式の密閉型容器等が用い
られる。1、2及び3は薄膜蒸発器を示す。このもの
は、その内周壁に形成した薄膜を外部からの加熱により
蒸発させる構造のものである。この薄膜蒸発器において
は、内部に回転翼を有し、その回転翼の回転によってそ
の内周壁面に液膜を形成するようにした遠心薄膜蒸発器
の使用が好ましい。また、図1において、4は、各薄膜
蒸発器に付設された外部ヒータである。このものは、通
常、加熱媒体が流通するジャケットとして構成される。
【0015】結晶アダクトは、ライン21を通って加熱
装置Lに導入され、ここでその溶融温度に加熱され、液
化される。加熱装置の操作条件としては、温度:115
〜180℃、好ましくは120〜150℃、圧力:常
圧、酸素濃度:0.01vol%以下、好ましくは0.
005vol%以下、更に好ましくは0.001vol
%以下の条件が採用される。結晶アダクトの溶融に際し
ては、結晶アダクトをそのまま溶液化させる方法を採用
し得るが、結晶アダクトを短時間で溶融させるために、
その結晶アダクトを精製フェノールのような着色の殆ど
ない熱フェノールを用いて希釈して溶融する方法や、結
晶アダクトの溶融済みの液中で溶融させる方法等を採用
することもできる。
【0016】加熱装置Lからは、ライン22を通って、
ビスフェノールAを50〜80重量%、好ましくは60
〜75重量%を含有するフェノール溶液が得られ、この
ものは、ライン10から第1薄膜蒸発器(以下、単に蒸
発器とも言う)1に導入され、フェノール溶液は、この
蒸発器の内周壁を液膜として流下するとともに、その間
に外部ヒータ4により加熱され、フェノール及びビスフ
ェノールAを含む蒸気がライン11を通って排出され
る。この蒸気は、これを凝縮処理して、フェノール及び
ビスフェノールAを回収する。ライン10を通るフェノ
ール溶液の温度は120〜160℃、第1蒸発器1の温
度は、160〜220℃、その圧力は100トール以
下、好ましくは20〜60トールである。また、第1蒸
発器内は実質的に無酸素条件下に保持される。第1蒸発
器1において、原料フェノール溶液を蒸発処理して得ら
れた残液(ビスフェノールA)は、ライン12を通って
抜出され、第2蒸発器2に導入される。ライン12を通
るフェノール溶液の蒸発残液の温度は、160〜220
℃である。また、この残液を構成するビスフェノールA
中のフェノール濃度は、1〜5重量%である。第2蒸発
器2においては、ビスフェノールAは、第3蒸発器3か
ら抜出されるスチーム、フェノール及びビスフェノール
Aからなるストリッピングガスと向流接触しながら、外
部ヒータ4により加熱され、フェノール、ビスフェノー
ルA及びスチームを含むストリッピングガスがライン1
3を通って排出される。第2蒸発器2における温度は1
85〜220℃、圧力は20トール以下、通常、10〜
20トールである。また、第2蒸発器内は実質的に無酸
素下に保持される。第2蒸発器2で得られる蒸発残液
は、ライン14を通って第3蒸発器3に導入される。こ
の残液の温度は185〜220℃、残液を構成するビス
フェノールA中のフェノール濃度は0.05〜0.10
重量%、好ましくは0.05〜0.07重量%である。
【0017】第3蒸発器3においては、第2蒸発器2か
らのビスフェノールAは、ライン15を通って導入され
るスチームと向流接触しながら、外部ヒータ4によって
加熱され、ストリッピングガスがライン17を通って抜
出され、このストリッピングガスは、第2蒸発器2にそ
のストリッピング用ガスとして導入される。第3蒸発器
における温度は185〜220℃、好ましくは190〜
210℃、圧力は20トール以下、通常10〜15トー
ルである。また、第3蒸発器内は実質的に無酸素下に保
持される。ライン15から第3蒸発器3に導入されるス
チーム量は、ライン14を通って第3蒸発器3に導入さ
れるビスフェノールAに対して、重量比で、3重量%以
上、好ましくは4〜6重量%である。ライン17を通る
ストリッピングガスの組成は、フェノール:0.8〜
1.2重量%、好ましくは1重量%以下、ビスフェノー
ルA:5〜7重量%、残部:スチームである。第3蒸発
器3において得られた高純度ビスフェノールAは、ライ
ン16を通って抜出される。このビスフェノールAは、
フェノール含有率が0.005重量%のもので、その色
相APHAが20以下の高品位のものである。第2蒸発
器2からライン13を通って抜出されるストリッピング
ガスは、凝縮処理に付され、そのガスに含まれるフェノ
ール及びビスフェノールAが分離回収される。
【0018】前記した薄膜蒸発器を用いる方法において
は、ビスフェノールA・フェノール結晶アダクトから誘
導されたビスフェノールAを含むフェノール溶液を雰囲
気中の酸素濃度0.005vol%以下の条件で、先ず第
1薄膜蒸発器1を用いて蒸発処理し、フェノール含有率
が1〜5重量%のビスフェノールAを得るが、この場
合、その第1薄膜蒸発器の温度を160〜220℃、圧
力を20〜60トールの条件に保持したことから、フェ
ノールの急速な蒸発による冷却が生じても、ビスフェノ
ールAが析出するようなことなく、円滑にその蒸発処理
を実施することができる。また、前記方法においては、
前記のようにして第1蒸発器1から得られたビスフェノ
ールAを、それに含まれるフェノールを蒸発除去するた
めに、第2薄膜蒸発器2を用いてスチームストリッピン
グ処理するが、この場合、そのビスフェノールA中のフ
ェノール含有量が1〜5重量%と低いため、蒸発器の温
度を185〜220℃に保持し、かつ20トール以下の
高真空に保持して、そのビスフェノールA中のフェノー
ルを迅速に蒸発除去することが可能になる。
【0019】本発明においては、第3蒸発器3を、18
5〜220℃の温度及び20トール以下の条件で操作す
ることから、フェノール中に含まれる高沸点不純物、特
にイソプロペニルフェノールを蒸発除去させることがで
きる。従来、色相及び熱安定性にすぐれたビスフェノー
ルAを得るためには、ビスフェノールAに含まれるイソ
プロペニルフェノール等の着色不純物の生成を抑制する
ために、185℃以下の温度でビスフェノールAをスチ
ームストリッピングする必要があると考えられていた
が、本発明者らの研究では、逆に、185℃以上の温度
でスチームストリッピングを行うことにより、色相及び
熱安定性の良好なビスフェノールAを回収し得ることが
判明した。この理由は、着色不純物あるいはその原因物
質が、そのスチームストリッピングによりビスフェノー
ルAから蒸発除去され、その結果、ビスフェノールAに
はそれらの不純物の混入が防止されることによるものと
考えられる。
【0020】さらに、前記方法においては、第3薄膜蒸
発器で生成したフェノール、ビスフェノールAを含むス
チームからなるストリッピングガスを、第2薄膜蒸発器
に対するストリッピング用スチームガスとして用いるこ
とから、第2薄膜蒸発器におけるフェノールストリッピ
ング効果が高くなるという利点もある。さらにまた、前
記した蒸発処理によれば、全体的に極めて短かい滞留時
間(通常、60〜120秒)で蒸発処理を行うことがで
きるので、その処理効率は非常に高いものとなる。特
に、第1薄膜蒸発器、第2薄膜蒸発器及び第3薄膜蒸発
器は、それらを上方からその順に結合し、液体の流れを
重力により上方から下方に流下させることが望ましく、
これによって酸素リークの防止を効果的に行えるととも
に、装置系内における液体の滞留時間を短かく保持する
ことができる。
【0021】図1に示した第2蒸発器2からは、ライン
13を通ってストリッピングガスが排出され、このもの
は凝縮処理に付され、そのガス中に含まれるフェノール
及びビスフェノールAが分離回収される。このストリッ
ピングガスの凝縮処理は、従来公知の各種の方法で行う
ことができるが、本発明においては、特に、2段階の冷
却工程を用いて行うのが好ましい。次に、この2段階の
冷却工程を用いる混合蒸気からのフェノールの分離回収
について詳述する。この方法においては、前記第2蒸発
器から得られたフェノール、スチーム及び少量のビスフ
ェノールAを含む混合蒸気は、これを、その減圧状態の
まま第1冷却工程へ供給し、ここでフェノール又はビス
フェノールAを含むフェノールからなる第1冷却媒体と
向流接触させて冷却する。この第1冷却工程は、混合蒸
気中のビスフェノールAの実質的全量を冷却媒体中に溶
解するように実施する。混合蒸気中のスチームは、この
第1冷却工程では実質上凝縮されず、次の第2冷却工程
へ送られる。混合蒸気中のフェノールは、その一部がこ
の第1冷却工程で凝縮され、残りの未凝縮のものはスチ
ームとともに次の第2冷却工程へ送られる。第1冷却工
程で混合蒸気から分離回収されたビスフェノールAとフ
ェノールの混合液は、その一部を冷却媒体として用いる
ことができる。第1冷却媒体の温度は、フェノールの凝
固点より1〜50℃程度高い温度である。この第1冷却
工程における混合蒸気からのフェノールの回収率は、こ
の第1冷却工程に対する全供給フェノールに対し、70
重量%以上、好ましくは85重量%以上である。
【0022】第1冷却工程で用いる冷却媒体は、混合蒸
気を所望温度に冷却し得るに充分な量であればよく、通
常、混合蒸気に対する重量比で、5〜10、好ましくは
6〜9である。また、第1冷却工程で得られる混合蒸気
中のビスフェノールAとフェノールを溶解した冷却媒体
中に含まれるビスフェノールAの合計ビスフェノールA
のフェノールに対する重量比は、0.05〜0.20、
好ましくは0.08〜0.14である。この第1冷却工
程においては、ビスフェノールAに対し過剰のフェノー
ルが存在することから、ビスフェノールAの凝固点以下
の冷却温度であっても、ビスフェノールAとフェノール
とのアダクトが晶出するようなことはない。
【0023】第1冷却工程の圧力は、20トール以下で
あり、前記第2蒸発器における圧力に対応する。また、
第1冷却工程における温度は、前記圧力条件下において
スチームが気体を保持し、フェノールの一部が液体を保
持する温度である。好ましい冷却温度(ビスフェノール
Aを凝縮させる温度)は、42〜90℃、好ましくは4
5〜55℃である。
【0024】第2冷却工程へ送られたスチームとフェノ
ールの混合蒸気は、ここでフェノールの水溶液からなる
第2冷却媒体と向流接触させて冷却する。この第2冷却
工程は、この工程へ送られたスチームとフェノールの実
質的全量が凝縮液化するように実施し、この工程からは
フェノールの水溶液が回収される。この第2冷却工程で
得られるフェノールの水溶液は、その一部を第2冷却媒
体として用いることができる。水溶液中のフェノール濃
度は、混合蒸気の組成及び第1冷却工程の条件で決まる
が、通常、55〜75重量%である。また、この第2冷
却媒体の温度は、スチームの凝縮温度より1〜10℃程
度低い温度である。
【0025】第2冷却工程で用いる第2冷却媒体は、混
合蒸気の全量を凝縮させるに充分な量であればよく、通
常、第1冷却工程から送られたスチームとフェノールと
の混合蒸気に対する重量比で、100〜300、好まし
くは190〜250である。この第2冷却工程の圧力
は、20トール以下であり、第1冷却工程の圧力に対応
する。第2冷却工程における冷却温度(スチーム凝縮温
度)は、前記圧力条件下においてスチームとフェノール
の混合蒸気の全量が凝縮液化する温度であればよい。
【0026】第1冷却工程及び第2冷却工程において用
いる冷却器は、気液接触型の装置であればよく、任意の
ものが用いられる。このような冷却器としては、例え
ば、充填塔や、スプレー塔等を用いることができる。充
填塔を用いる場合、その充填物としては、圧力損失を抑
えるように、ラッシッヒリングや、ポールリング、多孔
金属板等を用いるのがよい。また、第1冷却工程と第2
冷却工程で用いる冷却器は、それぞれ別個に設置するこ
ともできるが、2つの冷却器を含む一塔型の装置であっ
てもよい。
【0027】次に、前記混合蒸気の凝縮処理方法の1つ
の実施態様について、図面を参照して説明する。図2に
おいて、101は第1冷却器、102は第2冷却器を示
す。ライン103は、スチームを用いる前記第2蒸発器
に接続する混合蒸気ラインを示す。ライン104は排気
ポンプ(図示されず)及び冷却器に接続する真空ライン
であり、前記した結晶アダクト溶融液からフェノールを
蒸発除去する第1蒸発器(図示されず)、第2蒸発器
(図示されず)、第1冷却器1及び第2冷却器2を含む
全装置系は減圧条件に保持される。第2蒸発器からの混
合蒸気は、ライン103を通って第1冷却器101の下
部に供給され、ここで、ライン105を通って第1冷却
器の上部から導入される第1冷却媒体(フェノール又は
ビスフェノールAを含むフェノール)と向流接触する。
この第1冷却器で凝縮したビスフェノールAとフェノー
ルを溶解した冷却媒体は、抜出しポンプ107を含むラ
イン106を通って第1冷却器の底部から抜出される。
このライン106を通って抜出される冷却媒体は、必要
に応じ、その一部を所要温度に冷却した後、冷却媒体と
してライン105にリサイクルすることもできる。
【0028】第1冷却器1の頂部からライン108を通
って抜出されるスチームとフェノールの混合ガスは、第
2冷却器102の下部に導入され、ここで、ライン10
9を通って第2冷却器の上部から導入される第2冷却媒
体(フェノールの水溶液)と向流接触する。この第2冷
却器でスチームとフェノールの混合蒸気は凝縮液化し、
この凝縮液は冷却媒体とともに第2冷却器102の底部
から抜出しポンプ111を含むライン110を通って抜
出され、その一部はライン113を通り、冷却媒体用の
冷却器114を通って冷却された後、ライン109を通
り、第2冷却器にリサイクルされる。ライン111を通
って抜出された凝縮スチームとフェノールを含む冷却媒
体の残部はライン112を通って系外へ抜出される。
【0029】次に、前記混合蒸気の凝縮処理法におい
て、第1冷却器と第2冷却器を含む一つの塔型の冷却装
置を用いた場合の系統図を図3に示す。図3において、
130はその内部に第1冷却器101と第102冷却器
2を備えた一塔型の冷却装置である。この冷却装置は、
第1冷却器1と第2冷却器2との中間に中央部に開口を
有する仕切板125を配設し、その開口に筒体123を
立設した構造を有する。この装置において、筒体123
の外周面と冷却装置130の内壁との間に形成される環
状中空室は、液体を貯留するためのものである。122
は、第2冷却器102を流下する液体を前記環状中空室
に案内するための案内板である。筒状空間124はガス
通路を示す。なお、図3における符号において、図2に
示したものと同じ符号は同じ意味を示す。また、図3に
おいては、図2に示した流量コントロール系は図示され
ていない。
【0030】前記のような混合蒸気の凝縮処理によれ
ば、スチームを用いる第2蒸発器から得られる、スチー
ム、フェノール及びビスフェノールAを含む混合蒸気
を、昇圧することなく、20トール以下の減圧状態のま
まで冷却凝縮させることができる。しかも、この場合、
20トール以下という低い圧力条件と、それに応じた低
いスチーム凝縮温度条件を採用したにもかかわらず、ビ
スフェノールAやフェノールの結晶は何ら析出しない。
従って、このような凝縮処理法においては、固体析出に
よる冷却器の効率低下や、冷却器の閉塞トラブルは何ら
生じない。しかも、混合蒸気を構成するスチーム、フェ
ノール及びビスフェノールAの全てが凝縮され、真空排
気系にはそれらの蒸気は実質的に流入されない。従っ
て、真空排気ポンプは、装置系を所定の減圧条件に保持
するだけであるので、排気容量の小さなもので済み、設
備コスト及びエネルギーコスト的に非常に有利である。
さらに、このような混合蒸気の凝縮処理を採用するとき
には、混合蒸気の冷却凝縮処理を20トール以下の極め
て低い圧力で実施し得ることから、その前段の第1蒸発
器及び第2蒸発器を低圧で行うことができる。
【0031】図1に示した加熱装置Lから得られる溶融
液(ビスフェノールAのフェノール溶液)は、これを図
4、図5に示すようなスチームを用いない蒸発工程と、
スチームを用いる蒸発工程とを組合せて脱フェノール結
晶処理することもできる。これらの方法について以下に
詳述する。図4は、スチームを用いない第1蒸発器20
1とスチームを用いる第2蒸発器202とが夫々充填塔
によって構成されている例であり、図5は第1蒸発器3
01が薄膜蒸発器、第2蒸発器302が充填塔によって
構成されている例である。なお、図4及び図5に示すラ
イン215及び315はぞれぞれスチーム供給ラインを
示す。充填塔201、202および302において、そ
の充填物としては、圧力損失を抑えるように、ラッシヒ
リングや、ポールリング、多孔金属板等を用いるのがよ
い。また、図5における第1蒸発器301は、図1に関
連して示したものと同様の構造を有する。また、第1蒸
発器は、多量のフェノールを気化蒸発させるので、蒸発
器に投入する必要熱量が大きくなり、通常、リボイラー
を用いる充填塔よりも、図5に示すように、外熱式の薄
膜蒸発器を用いる方が蒸発器内の被処理流体の器内滞留
時間を短縮することが容易であるので好ましい。これら
の蒸発処理方法においては、結晶アダクト溶融のための
加熱装置Lからの溶融液は、これを第1の蒸発器(20
1、301)に導入し、ここでスチームの非存在下、減
圧下において蒸発処理し、その溶融液中のフェノールの
一部を蒸発除去する。この第1蒸発器の塔頂からは、フ
ェノールを含む蒸気が分離回収され、その底部からは、
フェノールの一部が蒸発除去された溶融液が分離回収さ
れる。この第1蒸発器からの塔底物は、これを第2蒸発
器(202、302)に導入し、ここでスチームの存在
下、減圧下において蒸発処理して、溶融液中の残部フェ
ノールを蒸発除去する。この第2蒸発器からは、その塔
頂物として、フェノール、スチーム及び少量のビスフェ
ノールAを含む混合蒸気が排出され、その塔底物とし
て、高純度ビスフェノールAが分離回収される。
【0032】スチームを用いない第1蒸発器の操作条件
としては、温度:160〜220℃、圧力:100トー
ル以下、好ましくは20〜60トールが採用される。蒸
発器内の蒸気雰囲気中の酸素濃度は、0.005vol
%以下、好ましくは0.001vol%以下に保持され
る。この第1蒸発器において、結晶アダクト溶融液中に
存在するフェノールの95〜99.8重量%、好ましく
は98〜99.7重量%が蒸発除去される。前記スチー
ムを用いる第2蒸発器の操作条件としては、温度:18
5〜220℃、好ましくは190〜210℃、圧力:2
0トール以下、好ましくは10〜20トール、ビスフェ
ノールA溶融液1kg当りのスチーム供給量:0.02
〜0.2kg、好ましくは0.04〜0.1kgの条件
が採用される。蒸発器内の蒸気雰囲気中の酸素濃度は、
0.005vol%以下、好ましくは0.001vol
%以下に保持される。この第2蒸発器においては、第1
蒸発器から得られる結晶アダクト溶融液中のフェノール
の実質的全量が蒸発除去され、塔底物として、フェノー
ル含有率200wtppm以下、好ましくは50wtp
pm以下のビスフェノールAが得られる。
【0033】前記のスチームを用いる第2蒸発器から
は、スチーム、フェノール及び少量のビスフェノールA
さらに不純物を含む混合蒸気が得られるが、この混合蒸
気からはフェノール及びビスフェノールAを分離回収す
る。この混合蒸気からのフェノール及びビスフェノール
Aの分離回収は、従来公知の各種の方法で行うことがで
きるが、本発明においては、特に、図2に示した2段階
の冷却工程を用いて行うのが好ましい。
【0034】
【発明の効果】本発明によれば、高沸点不純物、特にイ
ソプロペニルフェノールを実質的に含有しない、色相及
び熱安定性の高い高純度(99.5wt%以上)の製品
ビスフェノールAを得ることができる。
【0035】
【実施例】次に本発明を実施例によってさらに詳細に説
明する。
【0036】実施例1 (I)反応工程 従来公知の方法に従って、スルホン酸基を有するイオン
交換樹脂の存在下、アセトンとフェノールとの反応を行
った。この場合、アセトン1モル当りフェノール14モ
ルを用いた。反応は60℃で行った。このようにして得
られた反応生成物の組成は以下の通りであった。 アセトン : 0.8wt% 水 : 1.0wt% フェノール :73.6wt% ビスフェノールA:18.8wt% その他 : 5.8wt%
【0037】(II)分離工程 前記反応工程で得られたフェノールとアセトン反応生成
物を蒸留処理して、ビスフェノールA:22重量%、フ
ェノール:74重量%、その他:4重量%からなる溶液
を温度50℃で晶析処理して、結晶アダクトを含むスラリ
ー(晶析生成物)を得た。
【0038】(III)晶析生成物分離工程 前記工程で得た結晶アダクトスラリーを、106μmの
目開きを有する濾布をセットした濾過機により、スラリ
ー温度を50℃に保持しながら減圧濾過した後、得られ
た結晶アダクトケークを、精製フェノールにより洗浄し
た。この洗浄結晶アダクト中の100μm以下の微結晶
アダクト成分の割合は5重量%であった。この結晶アダ
クトの溶融色は10APHAで、着色不純物の濃度は著
しく低いものであった。また、この結晶アダクトに含ま
れるクロマン化合物(着色性不純物)の濃度は100w
tppmであった。
【0039】(IV)結晶アダクト液化工程及び結晶アダ
クト溶融液の脱フェノール工程 結晶アダクト溶解装置として、SUS316製の外部加
熱式密閉容器を用い、結晶アダクト溶融液の蒸発処理装
置として、内部にSUS316製の充填材を充填したS
US304製の2つの充填塔を用いた。溶融装置には、
その上部に結晶アダクト供給管を付設し、その底部に溶
融液配管を付設し、この配管を第1充填塔の中間部に連
結した。この第1充填塔には、その塔頂部にフェノール
蒸気排出用配管を付設し、その底部にビスフェノールA
とフェノールを含む溶融液配管を付設し、この配管を第
2充填塔の中間部に連結した。この第2充填塔の塔頂部
はフェノール、スチーム及び少量のビスフェノールAを
含む混合蒸気排出用配管を付設し、この配管は、これを
図2に示した冷却凝縮系に連結させた。また、この第2
充填塔の塔底部には、ビスフェノールA排出配管と、ス
チーム供給配管を付設した。なお、前記した第1充填塔
及び第2充填塔の各底部には、加熱スチームを流通させ
る加熱コイルを配設した。また、前記した各配管はいず
れもSUS316製のものであった。
【0040】次に、前記のようにして構成された装置系
において、その溶融装置の内壁面、第1充填塔及び第2
充填塔の内壁面及びその充填材表面、溶融装置と第1充
填塔との間の配管、第1充填塔と第2充填塔との間の配
管及び第2充填塔の底部に配設したビスフェノールA排
出配管に対して、以下のようにして付着酸素除去用の洗
浄処理を施した。 (1)溶融装置内壁面の洗浄 スプレーノズルを介して常圧下、130℃のフェノール
液を内壁面に噴射させて、内壁面を充分に洗浄した後、
150℃のフェノール/ビスフェノールA混合液(混合
重量比=65/35)を噴射させて内壁面を充分に洗浄
した。 (2)充填塔内壁面及び充填材表面の洗浄 常圧下、130℃のフェノールを、その装置の上部に付
設されたスプレーノズルから流入させて装置内の洗浄を
行った後、130℃のフェノール次いで150℃のフェ
ノール/ビスフェノールA混合物(混合重量比=65/
35)により装置壁面および充填材表面が充分濡れるよ
うに流通させた。次いで180℃、10トールの条件で
フェノール/ビスフェノールA混合物(混合重量比=6
5/35)を流通させた。 (3)配管内壁面の洗浄 130℃のフェノールを配管内を流通させて洗浄した。
その際、管内壁面に気相が存在しないように注意した。
なお、前記の洗浄により、溶融装置内壁面、充填塔内壁
面とその充填材表面及び配管の内壁面に付着する酸素量
は、表面積1m2当り5ミリモル以下であることが確認
された。
【0041】次に、結晶アダクトの溶融液及びビスフェ
ノールAの溶融液が接触する溶融装置、充填塔、充填材
及び配管の表面があらかじめ酸素除去された前記装置系
を用いて、精製結晶アダクト(溶融色APHA:5)から
フェノールを蒸発除去して、ビスフェノールAを分離回
収するとともに、第2充填塔の塔頂から得られる混合蒸
気の冷却凝縮処理を行った。また、前記における溶融装
置、第1充填塔、第2充填塔及び冷却凝縮装置系のの操
作条件は以下の通りである。 (溶融装置) 温度:130℃ 圧力:常圧 雰囲気酸素濃度:0.0005vol% (第1充填塔) 温度:190℃ 圧力:60トール 蒸気雰囲気中酸素濃度:0.0015vol% (第2充填塔) 温度:190℃ 圧力:15トール スチーム供給量:溶融液1kg当り0.04kg 蒸気雰囲気中酸素濃度:0.0002vol% (図2の第1冷却器の操作条件) (1)ライン103から第101冷却器1に導入される
ストリッピングガス 圧力:15トール 温度:190℃ 組成:ビスフェノールA25wt%、フェノール25w
t%、スチーム50wt% (2)ライン105から導入される第1冷却媒体(フェ
ノール) 温度:50℃ 冷却媒体/ストリッピングガス重量比:6 (3)冷却器101におけるストリッピングガスからの
ビスフェノールAの回収率:100%
【0042】(図2の第2冷却器の操作条件) (1)ライン108から第2冷却器に導入される未凝縮
ガス 圧力:12トール 温度:51℃ 組成:フェノール65wt%、スチーム35wt% (2)ライン109から第2冷却器102に導入される
第2冷却媒体(フェノール水溶液) 温度:9℃ 冷却媒体/未凝縮ガス重量比:190 (3)冷却器102における未凝縮ガスからのフェノー
ル及びスチームの各回収率 フェノール回収率:100% スチーム回収率:100%
【0043】前記の実験において、第2充填塔から得ら
れるビスフェノールAは、溶融色APHAが15のもの
であった。次に、このビスフェノールAを、空気雰囲気
下で175℃で0時間又は2時間加熱保持する熱安定性
試験(試験A)及び空気を175℃で2.0時間吹込む
加速熱安定性試験(試験B)に付して、その際の色相を
評価した。その結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】実施例2 (実験I)実質的に中性条件下(pH5.05)にあ
り、溶融色がAPHA5であるビスフェノールA・フェ
ノール結晶アダクトを、精製フェノールで部分希釈し、
130℃に加熱してビスフェノールA30重量%を含む
フェノール溶液とした。このフェノール溶液を原料液と
して用い図1に示す蒸発装置系を用いて処理した。次
に、図1に示した装置系の主要な運転条件及び主要ライ
ンを通る液体の成分組成について以下に示す。 (1)第1蒸発器1 (i) 外部ヒータ温度:190℃ (ii) 内部圧力 :60トール (iii) 雰囲気中酸素濃度:0.0010vol% (2)第2蒸発器2 (i) 外部ヒータ温度:200℃ (ii) 内部圧力 :10トール (iii) 雰囲気中酸素濃度:0.0010vol% (3)第3蒸発器3 (i) 外部ヒータ温度:200℃ (ii) 内部圧力 :10トール (iii) 雰囲気中酸素濃度:0.0010vol% (4)ライン16を通るビスフェノールA (i)フェノール含有率:29wtppm (ii) 溶融色:APHA15 (5)ライン15を通るスチーム供給量:ライン14を
通るビスフェノールA 1重量部当り0.04重量部
【0046】(実験II)実験Iにおいて、原料としての
ビスフェノールAを含むフェノール溶液に、表2に示す
添加剤を20wtppm添加した以外は同様にして実験
を行った。この実験により、ライン16を通して高純度
ビスフェノールA(APHA:10、フェノール含有
率:27wtppm)を得た。次に、このビスフェノー
ルAを、空気雰囲気下で175℃で0時間又は2時間加
熱保持する熱安定性試験(試験A)及び空気を175℃
で2.0時間吹込む加速熱安定性試験(試験B)に付し
て、その際の色相を評価した。その結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】実施例3 実施例1において、第2充填塔の温度を、種々変化させ
た以外は同様にして実験を行って、ビスフェノールAを
得た。次に、この実験で得られたビスフェノールAを1
75℃で加熱溶融し、この溶融液に空気を2.0時間吹
込む加速熱安定試験を行って、その際のビスフェノール
Aの溶融色APHAを評価した。その結果を表3に示
す。
【0049】
【表3】
【0050】実施例4 市販のビスフェノールA(溶融色APHA:30)を溶
融し、得られた溶融物をスチームストリッピング処理し
た。この場合、ビスフェノールA溶融装置として、SU
S304製の外部加熱式密閉容器を用い、スチームスト
リッピング装置として、SUS304製の充填塔を用い
た。溶融装置の上部にビスフェノールA供給管を付設
し、また、その底部には溶融液配管を付設し、この溶融
液配管を充填塔の中間部に連結した。また、この充填塔
の上部には蒸気排出用の配管を付設し、またその底部に
はビスフェノールAの溶融液排出用の配管を付設した。
なお、前記した配管はいずれもSUS304製であっ
た。次に、前記のようにして構成された装置系におい
て、その溶融装置の内壁面、ストリッピング用充填塔の
内壁面、溶融装置と充填塔との間の配管、充填塔に付設
したビスフェノールA溶融の液の排出用配管に対して、
以下のようにしてその内壁面を洗浄した。 (1)溶融装置内壁面の洗浄 スプレーノズルを介して、常圧下、130℃のフェノー
ル液を内壁面に噴射させて、内壁面を充分に洗浄した
後、150℃のフェノール/ビスフェノールA混合液
(混合重量比:35/65)を噴射させて内壁面を充分
に洗浄した。 (2)ストリッピング用充填塔の内壁面の洗浄 常圧下、130℃のフェノールを、その充填塔上部に付
設されたスプレーノズルから流させて塔内中心部の洗浄
を行った後、130℃のフェノール次いで150℃のフ
ェノール/ビスフェノールA混合物(混合重量比=65
/35)により塔内壁面が充分濡れるように流通させ
た。次いで、180℃、10トールの条件でフェノール
/ビスフェノールA混合物(混合重量比=65/35)
を流通させた。 (3)配管内壁面の洗浄 130℃のフェノールを配管内を流通させて洗浄した。
その際、管内壁面に気相が存在しないように注意した。
なお、前記の洗浄により、各装置及び配管の内壁面に付
着する酸素量は、内壁面1m2当り5ミリモル以下であ
ることが確認された。
【0051】次に、前記のようにして、ビスフェノール
Aの溶融液が接触する装置及び配管の内壁面があらかじ
め酸素除去された装置系を用いて市販ビスフェノールA
からフェノール/ビスフェノールA混合液(混合重量比
35/65)を調合し、これををスチームストリッピン
グ処理して、ビスフェノールAを分離した(実験A)。
また、前記における溶融装置及びストリッピング用充填
塔の操作条件は以下の通りである。 (溶融装置) 温度:130℃ 圧力:常圧 雰囲気酸素濃度:0.0005vol% (スチームストリッピング用充填塔) 温度:200℃ 圧力:10トール 雰囲気酸素濃度分圧:0.0015vol%
【0052】前記のようにして得たビスフェノールAを
175℃で加熱溶融し、この溶融液に空気を2.0時間
吹込む加速熱安定性試験を行って、その際のビスフェノ
ールAの溶融色APHAを評価したところ、APHA3
0を示した。また比較のために、ストリッピング用の充
填塔の温度を180℃にした以外は同様にして実験を行
ったところ、得られたビスフェノールAはAPHA40
を示した。
【0053】参考例1 実施例1で得たビスフェノールAに、各種不純物200
wtppmを添加混合し、この混合物を空気雰囲気下で
175℃の温度で加熱保持した。この実験における加熱
保持時間と混合物の溶融色APHAの関係を表3に示
す。表3の結果から、イソプロペニルフェノールが着色
原因物質として最も大く作用していることがわかる。
【0054】なお、表中に符号で示した不純物の具体的
内容は以下の通りである。 IPP:イソプロペニルフェノール LD−IPP:イソプロペニルフェノール・リニアダイ
アー CR:クロマン TP:トリスフェノール TCR:トリスクロマン
【0055】
【表4】
【図面の簡単な説明】
【図1】薄膜蒸発器を用いて脱フェノール工程を実施す
る方法についての系統図を示す。
【図2】スチームとフェノールの混合蒸気の凝縮処理方
法の系統図を示す。
【図3】スチームとフェノールの混合蒸気の凝縮処理法
において、第1冷却器と第2冷却器を含む一塔型の冷却
装置を用いた場合の系統図を示す。
【図4】スチームを用いない第1蒸発器と、スチームを
用いる第2蒸発器とを組合わせた装置系を用いて脱フェ
ノール工程を実施する方法についての系統図を示す。
【図5】スチームを用いない第1蒸発器と、スチームを
用いる第2蒸発器とを組合わせた装置系を用いて脱フェ
ノール工程を実施する方法についての系統図を示す。
【符号の説明】
1,2,3 薄膜蒸発器 4 外部ヒータ L 加熱装置 101,102 冷却器 201,301 第1蒸発器 202,302 第2蒸発器 215,315 スチーム供給ライン
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年3月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正内容】
【0029】次に、前記混合蒸気の凝縮処理法におい
て、第1冷却器と第2冷却器を含む一つの塔型の冷却装
置を用いた場合の系統図を図3に示す。図3において、
130はその内部に第1冷却器101と第2冷却器10
を備えた一塔型の冷却装置である。この冷却装置は、
第1冷却器1と第2冷却器2との中間に中央部に開口を
有する仕切板125を配設し、その開口に筒体123を
立設した構造を有する。この装置において、筒体123
の外周面と冷却装置130の内壁との間に形成される環
状中空室は、液体を貯留するためのものである。122
は、第2冷却器102を流下する液体を前記環状中空室
に案内するための案内板である。筒状空間124はガス
通路を示す。なお、図3における符号において、図2に
示したものと同じ符号は同じ意味を示す。また、図3に
おいては、図2に示した流量コントロール系は図示され
ていない。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正内容】
【0054】なお、表中に符号で示した不純物の具体的
内容は以下の通りである。 IPP:イソプロペニルフェノールLD−IPP:イソプロペニルフェノール・リニアダイ
マー CR:クロマン TP:トリスフェノール TCR:トリスクロマン
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正内容】
【0041】次に、結晶アダクトの溶融液及びビスフェ
ノールAの溶融液が接触する溶融装置、充填塔、充填材
及び配管の表面があらかじめ酸素除去された前記装置系
を用いて、精製結晶アダクト(溶融色APHA:5)から
フェノールを蒸発除去して、ビスフェノールAを分離回
収するとともに、第2充填塔の塔頂から得られる混合蒸
気の冷却凝縮処理を行った。また、前記における溶融装
置、第1充填塔、第2充填塔及び冷却凝縮装置系のの操
作条件は以下の通りである。 (溶融装置) 温度:130℃ 圧力:常圧 雰囲気酸素濃度:0.0005vol% (第1充填塔) 温度:190℃ 圧力:60トール 蒸気雰囲気中酸素濃度:0.0015vol% (第2充填塔) 温度:190℃ 圧力:15トール スチーム供給量:溶融液1kg当り0.04kg 蒸気雰囲気中酸素濃度:0.0002vol% (図2の第1冷却器の操作条件) (1)ライン103から第1冷却器101に導入される
ストリッピングガス 圧力:15トール 温度:190℃ 組成:ビスフェノールA25wt%、フェノール25w
t%、スチーム50wt% (2)ライン105から導入される第1冷却媒体(フェ
ノール) 温度:50℃ 冷却媒体/ストリッピングガス重量比:6 (3)冷却器101におけるストリッピングガスからの
ビスフェノールAの回収率:100%
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正内容】
【0055】
【表4】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坂下 幸司 神奈川県横浜市鶴見区鶴見中央二丁目12番 1号 千代田化工建設株式会社内 (72)発明者 守屋 信男 神奈川県横浜市鶴見区鶴見中央二丁目12番 1号 千代田化工建設株式会社内 (72)発明者 遠藤 昭夫 神奈川県横浜市鶴見区鶴見中央二丁目12番 1号 千代田化工建設株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ビスフェノールAを、185〜220℃
    の温度及び20トール以下の条件下でスチームストリッ
    ピングする工程を含むことを特徴とする熱安定性の高い
    ビスフェノールAの製造方法。
JP36116892A 1992-12-29 1992-12-29 熱安定性の高いビスフェノールaの製造方法 Pending JPH06199720A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2000191575A (ja) * 1998-12-25 2000-07-11 Kanegafuchi Chem Ind Co Ltd ビスフェノ―ル類化合物の精製方法、及び、当該精製方法により製造されたビスフェノ―ル類化合物

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JP2000191575A (ja) * 1998-12-25 2000-07-11 Kanegafuchi Chem Ind Co Ltd ビスフェノ―ル類化合物の精製方法、及び、当該精製方法により製造されたビスフェノ―ル類化合物

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