JPH06192307A - 水性樹脂分散体の製造方法および水性樹脂分散体 - Google Patents

水性樹脂分散体の製造方法および水性樹脂分散体

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JPH06192307A
JPH06192307A JP5211984A JP21198493A JPH06192307A JP H06192307 A JPH06192307 A JP H06192307A JP 5211984 A JP5211984 A JP 5211984A JP 21198493 A JP21198493 A JP 21198493A JP H06192307 A JPH06192307 A JP H06192307A
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Toshiki Nihaku
利樹 二栢
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賢次 南
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ステアリルアクリレートやベヘニルメタクリ
レートのごとき比較的分子量が高く、水溶性の極めて低
い重合性単量体を重合させても、得られた水性樹脂分散
体は、その分散状態が極めて安定で、しかも、被膜を形
成するに際しては、外観、撥水性、耐水性、潤滑性、感
熱性の良い優れた被膜を与える水性樹脂分散体を製造す
る。 【構成】 炭素数9〜30の脂肪族炭化水素基を有する
重合性単量体を必須成分とする重合性単量体成分を、容
積平均粒子径が1μm未満であり、3μm以上の粒子径
を有する粒子が全粒子の容積に対して5%以下である微
細液滴の状態で水性媒体中に分散させ、この分散状態を
保ちつつ前記重合性単量体成分をラジカル重合開始剤に
より重合する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、優れた撥水性と潤滑
性を有する重合体が水性媒体に分散されていて、良好な
貯蔵安定性を有する水性樹脂分散体に関する。この発明
は、また、公知の乳化重合では安定な水分散体を得るこ
とができない水溶性の極めて低い重合性単量体を用いて
安定に重合を行う水性樹脂分散体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ビニル化合物のような重合性単量体を乳
化重合して得られる水性樹脂分散体(樹脂エマルショ
ン)は、その無公害性、作業性の良さ、省資源といった
利点を有しているので、これらの利点を生かして、塗
料、接着剤、紙加工剤、繊維加工剤、モルタル改質剤な
ど広範な応用用途を持っている。
【0003】従来から、重合性単量体を水性媒体中で重
合する方法として、乳化重合法および懸濁重合法が知ら
れている。これらの方法のうち、懸濁重合法は安定な水
性樹脂分散液の製造には適しておらず、比較的大きな樹
脂粒子を製造する手段に採用されている。一方、乳化重
合法は乳化剤を用いて分散させた重合性単量体を水溶性
開始剤により水性媒体中で重合させる方法であり、安定
な樹脂分散液を製造する手段として適している。乳化重
合法に関しては過去に多くの技術が提案されている。
【0004】重合性単量体の中でもステアリルアクリレ
ートやベヘニルメタクリレートなど長鎖(メタ)アクリ
レートを用いて作られた重合体は、強い撥水性、潤滑
性、離型性および感熱性を有しており、塗料、繊維や木
材の撥水加工剤、ワックスなどに有用である。ステアリ
ルアクリレートやベヘニルメタクリレートなどのごと
き、低級アルキル(メタ)アクリレートやスチレンに比
べて分子量が大きく、水溶性の極めて低い重合性単量体
から水性樹脂分散体を得る方法としては、有機溶媒中で
溶液重合した後に水中に分散する方法、アルコールなど
の水溶性溶媒と水との混合液中で乳化重合する方法が知
られている。上記従来の乳化重合法を記載した文献には
使用できる重合性単量体の一例として炭素数が9〜30
の脂肪族炭化水素基を有する単量体が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記のように分子量が
比較的大きく、水溶性の低い単量体を使用して乳化重合
を行うと、重合安定性が悪いため重合中に多量の凝集物
が発生したり、貯蔵安定性が悪いため得られた水性樹脂
分散体の保存中に沈降物が観測されたりするという問題
点を有している。
【0006】上記従来の水性樹脂分散体の製造方法は、
生産性、火災対策などの安全性、有機溶剤による環境汚
染、被膜性能の点で満足できるものではなかった。発明
者らの研究によれば、上記のごとき長鎖の脂肪族炭化水
素基を有する単量体とその他の単量体を含む単量体成分
を従来のやり方で乳化重合すると、その他の単量体は分
散重合体粒子となるが、長鎖の脂肪族炭化水素基を有す
る単量体が重合反応しないまま残存するか、または、重
合塊となって析出し、樹脂分散液中には長鎖の脂肪族炭
化水素基を有する単量体の重合物はほとんど存在してい
ないことが判明した。このような樹脂分散液が長鎖の脂
肪族炭化水素基を有する単量体の重合物に由来する特性
を発現しないのは当然のことである。
【0007】この発明は、ステアリルアクリレートやベ
ヘニルメタクリレートのごとき比較的分子量が高く、水
溶性の極めて低い重合性単量体を重合させても、得られ
た水性樹脂分散体は、その分散状態が極めて安定で、し
かも、被膜を形成するに際しては、外観性、撥水性、耐
水性の良い優れた被膜を与える水性樹脂分散体の製造方
法を提供することを課題とする。
【0008】この発明は、従来の乳化重合による水性樹
脂分散液が有していた問題点を解消するものであり、優
れた撥水性と潤滑性を有する重合体が水性媒体に分散さ
れていて、良好な貯蔵安定性を有する新規な水性樹脂分
散体を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上記課題を
解決するために鋭意研究を重ねた結果、長鎖の脂肪族炭
化水素基を有する単量体を多量に含む単量体成分であっ
ても、該単量体を後述する特定の大きさの分散液滴の状
態で分散させることにより、水性媒体中でも安定に重合
することができ、得られる水性樹脂分散液は長期の分散
安定性を有することを見いだした。
【0010】すなわち、この発明は、炭素数9〜30の
脂肪族炭化水素基を有する重合性単量体(以下、「第1
の単量体」と言うことがある)を必須成分とする重合性
単量体成分(以下、「第1の単量体成分」と言うことが
ある)を、容積平均粒子径が1μm未満であり、3μm
以上の粒子径を有する粒子が全粒子の容積に対して5%
以下である微細液滴の状態で水性媒体中に分散させ、こ
の分散状態を保ちつつ前記第1の単量体成分をラジカル
重合する水性樹脂分散体の製造方法を提供する。
【0011】この発明は、また、下記一般式(3)
【0012】
【化7】
【0013】で示される繰り返し単位および下記一般式
(4)
【0014】
【化8】
【0015】で示される繰り返し単位のうちの少なくと
も1つを10〜100重量%の範囲で有する重合体(以
下、「第1の重合体」と言うことがある)が、容積平均
粒子径1μm未満、かつ、3μm以上の粒子径を有する
粒子の全粒子の容積に対する割合5%以下の微細粒子と
なって水性媒体に分散してなり、前記第1の重合体の微
細粒子の分散安定剤として、水溶性単量体を必須成分と
する重合性単量体成分(以下、「第2の単量体成分」と
言うことがある)を炭素数が6以上のアルキルメルカプ
タンの存在下に重合して得られる炭素数が6以上の末端
アルキル基を有する水溶性もしくは水分散性の重合体
(以下、「第2の重合体」と言うことがある)、分子内
に2個以上の第一級および/または第二級アミノ基を有
するポリアミン化合物に下記一般式(1)
【0016】
【化9】
【0017】〔式(1)中、Rは炭素数4〜28の炭化
水素基を示し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示
し、nは0または1〜30の整数を示し、Xはアミノ基
と反応しうる官能基を有する原子団を示す〕で表される
化合物とを反応させて得られる化合物(以下、「第1の
化合物」と言うことがある)、および、前記ポリアミン
化合物と前記一般式(1)で表される化合物と下記一般
式(2)
【0018】
【化10】
【0019】〔式(2)中、R′は重合性不飽和基を有
する原子団を示し、Xはアミノ基と反応しうる官能基を
有する原子団を示す〕で表される化合物とを反応させて
得られる化合物(以下、「第2の化合物」と言うことが
ある)から選ばれる少なくとも1つが用いられている水
性樹脂分散体を提供する。
【0020】上記一般式(3)において、R1 、R2
Dは、それぞれ次のとおりである。R1 は、HまたはC
3 である。R2 は、炭素数9〜30の脂肪族炭化水素
基である。Dは、
【0021】
【化11】
【0022】から選ばれる2価の基のいずれかである。
なお、ここでの表示では、上記Dの右側にR2 が結合す
る。ここで、R3 は、2価の有機基、典型的には炭素数
2〜30の、脂肪族、脂環式または芳香族の炭化水素基
などである。上記一般式(4)において、R4 は、H、
または、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基;R5 は、
H、または、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基であ
り、R 4 とR5 の少なくとも一方が炭素数9〜30の脂
肪族炭化水素基である。
【0023】この発明において水性樹脂分散体の分散重
合体粒子となる第1の重合体を得るために用いられる第
1の単量体成分は、その一部または全部が炭素数9〜3
0の脂肪族炭化水素基を有する重合性単量体(第1の単
量体)であれば特に限定はない。前記第1の単量体は、
水性媒体を用いる公知の乳化重合法では凝集物を発生す
るので安定な重合体を得ることが困難であるが、この発
明の製造方法によれば、容易に安定な水性樹脂分散体を
生成することができる。この発明の方法によれば、前記
第1の単量体を第1の単量体成分の合計重量中10〜1
00重量%の比率(残部は、第1の単量体以外の重合性
単量体である。)で用いても、凝集物を発生させること
なく、安定な水性樹脂分散体を得ることができる。第1
の単量体の比率が10重量%を下回ると撥水性や潤滑性
などを持たない重合体が生成することがある。
【0024】前記第1の単量体としては、たとえば、ノ
ニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレ
ート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メ
タ)アクリレート等のごとき炭素数9〜30の高級アル
キル(メタ)アクリレート類;オレイン酸、リノール
酸、リノレン酸のごとき一塩基性直鎖不飽和脂肪酸とグ
リシジル(メタ)アクリレート、イソプロペニルオキサ
ゾリンなどのカルボキシル基と付加反応しうる重合性単
量体との付加物;米ぬか油、大豆油、鯨油などの動植物
の脂肪酸(混合脂肪酸)と前記のごときカルボキシル基
と付加反応しうる重合性単量体との付加物;ステアリル
アルコール、オレイルアルコール等の高級アルコールと
多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メ
タ)アクリレートなどの水酸基を有する重合性単量体の
付加物;ラウリルマレエート、ステアリルマレエート、
ベヘニルマレエート、ジトリデシルマレエート、ジステ
アリルマレエート、ブチルラウリルマレエートなどのご
とき炭素数9〜30の高級アルキルマレエート類;ラウ
リルフマレート、ステアリルフマレート、ベヘニルフマ
レート、ジトリデシルフマレート、ジステアリルフマレ
ート、エチルラウリルフマレートなどのごとき炭素数9
〜30の高級アルキルフマレート類;ラウリン酸ビニ
ル、ステアリン酸ビニルのごとき高級脂肪酸ビニルエス
テル類などを挙げることができる。
【0025】前記第1の単量体以外の重合性単量体とし
ては特に限定はなく、たとえば、後記第2の単量体成分
に用いられる単量体;(メタ)アクリル酸ジメチルアミ
ノエステル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルア
ミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミ
ド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルピロ
リドンなどの塩基性不飽和単量体類;(メタ)アクリル
酸とエチレングリコール、1,3−ブチレングリコー
ル、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサングリコー
ル、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコー
ル、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパ
ン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールな
どの多価アルコールとのエステルなどの分子内に重合性
不飽和基を2個以上有する多官能(メタ)アクリル酸エ
ステル類;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N
−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどの(メ
タ)アクリルアミド類;ビニルトリメトキシシラン、γ
−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、
アリルトリエトキシシラン、トリメトキシシリルプロピ
ルアリルアミンなどの有機珪素基含有不飽和単量体類;
イソプロペニルオキサゾリン、ビニルオキサゾリンなど
のオキサゾリン基含有不飽和単量体類;グリシジルメタ
クリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ
基含有不飽和単量体類;(メタ)アクリル酸2−ヒドロ
キシ−3−クロロプロピレンなどのハロヒドリン基含有
不飽和単量体類;2−アジリジニルエチルメタクリレー
トなどのアジリジニル基含有不飽和単量体類;2−イソ
シアナートエチルメタクリレートとエチルアルコールと
の反応付加物などのブロック化イソシアネート基含有不
飽和単量体類;およびフッ化ビニル、フッ化ビニリデ
ン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ジビニルベンゼン、
ジアリルフタレートなどを挙げることができ、いずれか
1つが単独で使用されたり、2つ以上が併用されたりす
る。
【0026】この発明で用いる水性媒体としては、水の
みを用いるのが好ましいが、重合安定性、水を飛散させ
た後の被膜の物性および安全性に悪影響を及ぼさない範
囲において、水と親水性溶媒との混合物を使用しても良
い。この発明の製造方法においては、第1の単量体成分
を水性媒体中に分散した状態でラジカル重合する。この
分散状態において、第1の単量体成分の分散液滴は、1
μm未満の容積平均粒子径を有し、かつ、3μm以上の
粒子径を有する粒子を分散液滴の合計容積に対して5%
以下の割合で含む微細液滴となっており、好ましくは、
0.5μm以下の容積平均粒子径を有し、かつ、1μm
以上の粒子径を有する粒子を分散液滴の合計容積に対し
て1%以下の割合で含む微細液滴となっている。これに
より、前記分散液滴が、水性媒体中で凝集物を作らず、
前記微細液滴の状態を保持する。第1の単量体成分のラ
ジカル重合により生成する第1の重合体の粒子は、第1
の単量体成分の前記微細液滴と同じ大きさを有する微細
粒子となっている。ここで、容積平均粒子径は、レーザ
ー回折式粒度分布測定装置による測定値であり、3μm
以上の(または、1μm以上の)粒子径を有する粒子の
割合は、光学顕微鏡写真により観察した実測値である。
前記分散液滴の容積平均粒子径が1μm以上であるか、
または、3μm以上の粒子径を有する粒子を5%よりも
多い割合で含むと、第1の単量体成分の水性媒体中への
分散が不安定であり、重合時に凝集物が発生し、また、
生成した水性樹脂分散体の貯蔵安定性が悪くなる。
【0027】この発明で用いる分散安定剤としては、公
知のアニオン性、カチオン性、ノニオン性、両性の界面
活性剤および保護コロイドが例示される。アニオン性界
面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ソー
ダ、ラウリル硫酸ソーダ、ナトリウムジオクチルスルホ
サクシネート、アルキルフェニルポリオキシエチレンサ
ルフェートソーダ塩たまはアンモニウム塩などが挙げら
れる。カチオン性界面活性剤としては、ラウリルトリメ
チルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。ノニオ
ン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキル
フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテ
ル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロッ
ク共重合体などが挙げられる。両性界面活性剤として
は、ラウリルベタインなどが挙げられる。保護コロイド
としては、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセ
ルロースなどが挙げられる。これらの分散安定剤は単独
で使用しても2種以上併用してもよい。これらの界面活
性剤のうち、アニオン性、カチオン性、両性界面活性剤
のようなイオン性界面活性剤を用いると、粒子径の細か
い分散安定性の良い水性樹脂分散体が得られるので好ま
しい。この発明では、分散安定剤として、上記第2の重
合体、上記第1の化合物および上記第2の化合物から選
ばれる少なくとも1つが使用される場合に、最も好まし
い結果が得られる。第2の重合体はアニオン性界面活性
剤であり、第1および第2の化合物はカチオン性界面活
性剤である。
【0028】使用される分散安定剤の量は、好ましくは
第1の単量体成分100重量部に対して、1〜20重量
部の割合、より好ましくは3〜15重量部の割合であ
る。分散安定剤の量が上記範囲内だと、前記微細液滴の
状態となるように第1の単量体成分の粒子径が調節され
る。分散安定剤として用いられる上記第2の重合体は、
水溶性単量体を必須成分として含む重合性単量体成分を
炭素数が6以上のアルキルメルカプタンの存在下に重合
して得られるものであり、炭素数が6以上の末端アルキ
ルを有しており、水溶性もしくは水分散性を有する。第
2の重合体は、第1の単量体成分の重合時の安定性の面
で酸価が200以上であることが好ましい。また、第2
の重合体の数平均分子量は300〜7000の範囲が好
ましく、400〜4000の範囲が特に好適である。第
2の重合体の数平均分子量が300未満かまたは700
0超であると、第1の単量体成分や第1の重合体の十分
な分散安定性が得られなかったり、耐水性や外観に優れ
た樹脂の被膜が得られなかったりする場合がある。
【0029】第2の重合体の合成に用いる第2の単量体
成分は、水溶性単量体を必須成分として含むものであ
り、好ましくは水溶性単量体を30〜100重量%、水
溶性単量体以外の重合性単量体を残部とする。水溶性単
量体は、不飽和カルボン酸、(メタ)アクリルアミド
類、ヒドロキシル基含有不飽和単量体類、スルフォン酸
基含有ビニル化合物類などであり、第2の重合体にカル
ボキシル基などの親水性基を導入して第2の重合体に親
水性を付与するために使用される。
【0030】上記不飽和カルボン酸は、分子内にカルボ
キシル基および/またはその塩と重合性不飽和基とを有
するものであれば特に限定されず、たとえば、(メタ)
アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタ
コン酸もしくはこれらの半エステルまたはこれらの塩等
が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物を使
用できる。
【0031】上記(メタ)アクリルアミド類は、(メ
タ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリル
アミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,
N′−ジメチル(メタ)アクリルアミド、これらの塩、
および、これらの4級化物等が挙げられ、これらの1種
または2種以上の混合物を使用できる。上記ヒドロキシ
ル基含有不飽和単量体類は、(メタ)アクリル酸−2−
ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキ
シプロピル、(メタ)アクリル酸とポリプロピレングリ
コールもしくはポリエチレングリコールとのモノエステ
ル等が挙げられ、これらの1種または2種以上の混合物
を使用できる。
【0032】上記スルフォン酸基含有ビニル化合物類
は、(メタ)アクリル酸−2−スルフォン酸エチル、ビ
ニルスルフォン酸、スチレンスルフォン酸、および、こ
れらの塩等が挙げられ、これらの1種または2種以上の
混合物を使用できる。分散安定剤となる第2の重合体を
得るために、必要により水溶性単量体とともに第2の単
量体成分に使用される、水溶性単量体以外の重合性単量
体としては、水溶性単量体と共重合性のあるものであれ
ば特に制限されず、たとえば、スチレン、ビニルトルエ
ン、α−メチルスチレン、クロルメチルスチレンなどの
スチレン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アク
リル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)ア
クリル酸ドデシルなどの、(メタ)アクリル酸と炭素数
1〜30のアルコールのエステル化により合成される
(メタ)アクリル酸エステル類;酢酸ビニル、(メタ)
アクリロニトリル等を挙げることができ、これらの1種
または2種以上の混合物を使用できる。不飽和カルボン
酸以外の重合性単量体は得られる第2の重合体の酸価が
200未満とならない量で使用するのが好ましい。ま
た、得られる第2の重合体を分散安定剤として用いて第
1の単量体成分を重合することにより生成する第1の重
合体との相溶性を考慮して、その種類と量を選択するこ
とが好ましい。
【0033】この発明において、分散安定剤として用い
られる第2の重合体を製造するために使用できるアルキ
ルメルカプタンとしては、炭素数6以上のアルキル基を
有するメルカプタンであり、たとえば、n−ヘキシルメ
ルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシル
メルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、セチルメル
カプタン、ステアリルメルカプタン等を挙げることがで
き、これらの1種または2種以上の混合物が使用でき
る。アルキルメルカプタンは第2の重合体の末端に炭素
数6以上のアルキル基を導入して界面活性能を付与する
ために使用するもので、炭素数が6未満のアルキルメル
カプタンは、これを使用した第2の重合体が第1の単量
体成分の重合時の安定性および得られた水性樹脂分散体
の貯蔵安定性をもたらさないので、使用できない。アル
キルメルカプタンの使用量は、所望する第2の重合体の
分子量により決定されるものであるが、通常、第2の単
量体成分の100重量部に対し、2〜300重量部の範
囲の割合とされる。
【0034】分散安定剤として用いられる第2の重合体
を得るための第2の単量体成分の重合に用いる重合開始
剤は、周知の油溶性または水溶性の重合開始剤(たとえ
ば、後述する第1の単量体成分の重合に用いる重合開始
剤である。)が使用できるが、末端アルキル基を有する
第2の重合体を効率良く製造するために、その使用量は
アルキルメルカプタン1モルに対し、1モル以下の割合
が好ましく、0.1以下の割合とするのがより好適であ
る。
【0035】第2の重合体は、その性状により塊状重
合、溶液重合、懸濁重合のいずれの方法でも製造するこ
とができる。重合温度としては50〜150℃、重合時
間は1〜8時間が良い。溶液重合の溶剤としては、第2
の単量体成分とアルキルメルカプタンが溶解し、ラジカ
ル重合を阻害しないものであるならば何でも使用するこ
とができる。
【0036】第2の重合体は、それ自身十分な界面活性
能を有するが、重合に用いて目的とする重合時の安定性
および貯蔵安定性の良好な水性樹脂分散体を得るために
カルボキシル基の一部もしくは全量を中和して第2の重
合体の塩として使用に供するのが好ましい。第2の重合
体の中和に用いる中和剤としては、酸の中和に通常使用
されるものを使用することができ、たとえば、水酸化ナ
トリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属化合物;
水酸化カルシウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類
金属化合物;アンモニア;モノメチルアミン、ジメチル
アミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチ
ルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジ
メチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタ
ノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミ
ン、ジエチレントリアミンなどの水溶性有機アミン類が
挙げられ、これらの群から選ばれる1種または2種以上
の混合物で使用することができる。被膜の耐水性を向上
させたい場合は、常温あるいは加熱により飛散する、た
とえば、アンモニア、モノエチルアミン、ジメチルアミ
ン、トリエチルアミンなどの低沸点アミン類を使用する
ことが好ましい。
【0037】この発明において、第1の単量体成分が、
カルボキシル基と反応しうる基を有する重合性単量体を
含み、分散安定剤としてカルボキシル基を有する第2の
重合体が用いられると、第1の単量体成分が重合して生
成する第1の重合体と第2の重合体とが反応して共有結
合を形成して一体化するため、耐水性などの諸性能が一
層優れた水性樹脂分散体を得ることができる。カルボキ
シル基と反応しうる基を有する重合性単量体としては、
前記のヒドロキシル基含有不飽和単量体類;オキサゾリ
ン基含有不飽和単量体類;エポキシ基含有不飽和単量体
類;アジリジニル基含有不飽和単量体類などを、第1の
単量体成分中0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜
10重量%の量で用いることができる。
【0038】分散安定剤として用いられる上記第1の化
合物は、上記ポリアミン化合物と一般式(1)で表され
る化合物とを反応させて得られる。分散安定剤として用
いられる第2の化合物は、上記ポリアミン化合物と一般
式(1)で表される化合物と一般式(2)で表される化
合物とを反応させて得られる。前記ポリアミン化合物
は、分子内に第1級アミノ基および第2級アミノ基から
選ばれる基を2個以上有するアミン類またはその誘導体
であり、たとえば、エチレンイミンの重合によって得ら
れるポリエチレンイミンなどのアルキレンイミン類の重
合または共重合によって得られるポリアルキレンイミ
ン;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエ
チレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタ
エチレンヘキサミンなどの(ポリ)アルキレンポリアミ
ン;ポリアルキレンイミンおよび/または(ポリ)アル
キレンポリアミンとアジピン酸などの多塩基酸との縮合
によって得られるポリアミドポリアミン;ポリアルキレ
ンイミンおよび/または(ポリ)アルキレンポリアミン
および/またはアルキレンイミンと尿素との反応によっ
て得られるポリウレアポリアミン;アルキレンイミンと
フタル酸などの酸無水物との共重合によって得られるポ
リアミドポリエステルポリアミンなどを挙げることがで
きる。また、ポリアミン誘導体としては、前記ポリアミ
ンにエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアル
キレンオキシド、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチ
ルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、アクリルアミ
ドなどのα,β−不飽和酸アミド化合物等を付加反応さ
せた化合物などを挙げることができる。この発明におい
ては、優れた界面活性能を得るうえでポリアミン化合物
としてポリエチレンイミンまたはその誘導体を使用する
ことが好ましい。また、得られる反応性界面活性剤の水
への溶解性、溶液の粘度、界面活性能を考慮して、重量
平均分子量が5000以下のポリエチレンイミンを使用
することが好ましい。
【0039】上記一般式(1)で表される化合物におい
て、式(1)中のRに相当する炭素数4〜28の炭化水
素基としては、炭素数4〜28の直鎖状もしくは分枝状
のアルキル基、(アルキル)アリール基、(アルキル)
水添アリール基、(アルキル)アラルキル基などを挙げ
ることができる。上記一般式(1)で表される化合物と
しては、たとえば、エチレンオキシド、プロピレンオキ
シド、イソブチレンオキシドなどのアルキレンオキシド
の付加モル数が1から30のn−オクチルポリオキシア
ルキレングリシジルエーテル、n−ノニルポリオキシア
ルキレングリシジルエーテル、ラウリルポリオキシアル
キレングリシジルエーテル、ステアリルポリオキシアル
キレングリシジルエーテル、2−エチルヘキシルポリオ
キシアルキレングリシジルエーテルなどの第1級アルキ
ルポリオキシアルキレングリシジルエーテル類;炭素数
12ないし14の第2級アルコールの混合物にアルキレ
ンオキシドを1から30モル付加し、さらにグリシジル
エーテル化したもの、炭素数10ないし12の第2級ア
ルコールの混合物にアルキレンオキシドを1から30モ
ル付加し、さらにグリシジルエーテル化したものなどの
第2級アルキルポリオキシアルキレングリシジルエーテ
ル類;アルキレンオキシドの付加モル数が1から30の
オクチルフェニルポリオキシアルキレングリシジルエー
テル、ノニルフェニルポリオキシアルキレングリシジル
エーテル、ラウリルフェニルポリオキシアルキレングリ
シジルエーテル、ステアリルフェニルポリオキシアルキ
レングリシジルエーテルなどのアルキルフェニルポリオ
キシアルキレングリシジルエーテル類;アルキレンオキ
シドの付加モル数が1から30のオクチルシクロペンチ
ルポリオキシアルキレングリシジルエーテル、オクチル
シクロヘキシルポリオキシアルキレングリシジルエーテ
ル、ノニルシクロペンチルポリオキシアルキレングリシ
ジルエーテル、ノニルシクロヘキシルポリオキシアルキ
レングリシジルエーテル、ラウリルシクロペンチルポリ
オキシアルキレングリシジルエーテル、ラウリルシクロ
ヘキシルポリオキシアルキレングリシジルエーテル、ス
テアリルシクロペンチルポリオキシアルキレングリシジ
ルエーテル、ステアリルシクロヘキシルポリオキシアル
キレングリシジルエーテルなどのアルキルシクロアルキ
ルポリオキシアルキレングリシジルエーテル類;アルキ
レンオキシドの付加モル数が1から30のオクチルベン
ジルポリオキシアルキレングリシジルエーテル、ノニル
ベンジルポリオキシアルキレングリシジルエーテル、ラ
ウリルベンジルポリオキシアルキレングリシジルエーテ
ル、ステアリルベンジルポリオキシアルキレングリシジ
ルエーテルなどのアルキルベンジルポリオキシアルキレ
ングリシジルエーテル類;オクチルグリシジルエーテ
ル、ラウリルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジ
ルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテルな
どの高級アルコールのグリシジルエーテル類;オクチル
フェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジ
ルエーテル、ラウリルフェニルグリシジルエーテル、ス
テアリルフェニルグリシジルエーテルなどのアルキルフ
ェノールのグリシジルエーテル類;オクチルシクロペン
チルグリシジルエーテル、オクチルシクロヘキシルグリ
シジルエーテル、ノニルシクロペンチルグリシジルエー
テル、ノニルシクロヘキシルグリシジルエーテル、ラウ
リルシクロペンチルグリシジルエーテル、ラウリルシク
ロヘキシルグリシジルエーテル、ステアリルシクロペン
チルグリシジルエーテル、ステアリルシクロヘキシルグ
リシジルエーテルなどのアルキルシクロアルカノールの
グリシジルエーテル類;オクチルベンジルグリシジルエ
ーテル、ノニルベンジルグリシジルエーテル、ラウリル
ベンジルグリシジルエーテル、ステアリルベンジルグリ
シジルエーテルなどのアルキルベンジルアルコールのグ
リシジルエーテル類;炭素数12または14のα−オレ
フィンエポキシド、炭素数16または18のα−オレフ
ィンエポキシドなどの1,2−エポキシアルカン類;オ
クチルイソシアネート、デシルイソシアネート、オクタ
デシルイソシアネートなどのアルキルイソシアネート
類;オクタノール、ラウリルアルコール、ステアリルア
ルコールなどのアルコール類またはそれらアルコール類
のアルキレンオキシド付加物とトリレンジイソシアネー
トなどのジイソシアネート類との反応により得られるモ
ノイソシアネート化合物類;オクタノール、ラウリルア
ルコール、ステアリルアルコールなどのアルコール類ま
たはそれらアルコール類のアルキレンオキシド付加物の
末端水酸基を塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子で
置換したハロゲン化物類;ラウリン酸、ミリスチン酸、
パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸類;オレ
イン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸
などの不飽和脂肪酸類;(メタ)アクリル酸2−エチル
ヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アク
リル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸エステル類
などを挙げることができ、これらの群から選ばれる1種
または2種以上を使用することができる。上記一般式
(1)で表される化合物の使用量は特に限定されない
が、充分な界面活性を発現させるためにはポリアミン化
合物の活性アミン水素1個あたり0.01〜0.9分子
の割合で使用するのが好ましい。
【0040】上記一般式(2)で表される化合物におい
て、式(2)中のR′に相当する原子団中の重合性不飽
和基としては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アリ
ル基、ビニル基などを挙げることができる。上記一般式
(2)で表される化合物としては、(メタ)アクリル酸
2−クロルエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、
(メタ)アクリル酸2−イソシアネートエチルなどの分
子内にアミノ基と反応する基を有する(メタ)アクリル
酸エステル類;クロルエチルビニルエーテルなどのビニ
ルエーテル類;(メタ)アリルクロライド、(メタ)ア
リルブロマイド、(メタ)アリルイソチオシアネート、
(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アリルアルコール
と無水フタル酸あるいは無水コハク酸などのジカルボン
酸無水物との半エステル、(メタ)アリルグリシジルエ
ーテルなどの(メタ)アリル化合物類;クロルメチルス
チレン、α−メチルクロルメチルスチレンなどの分子内
にアミノ基と反応する基を有するスチレン誘導体類;ク
ロル酢酸ビニルなどの分子内にアミノ基と反応する基を
有する酸のビニルエステル類などを挙げることができ、
これらの群から選ばれる1種または2種以上を使用する
ことができる。収率良く第2の化合物を得るうえで上記
一般式(2)で表される化合物として、ビニルエーテル
類、(メタ)アリル化合物類、スチレン誘導体類、酸の
ビニルエステル類を使用することが好ましい。上記一般
式(2)で表される化合物の使用量は特に限定されない
が、ポリアミン化合物の活性アミン水素1個あたり0.
01〜0.9分子の割合で使用するのが好ましい。
【0041】この発明に分散安定剤として用いられる上
記第1および第2の化合物を得るための反応条件は特に
制限されず、たとえば、ポリアミン化合物と、上記一般
式(1)で表される化合物と、上記一般式(2)で表さ
れる化合物(第2の化合物を得るために使用される)と
をそのまま、あるいは、必要に応じて溶剤により希釈し
て、好ましくは、常温〜200℃、より好ましくは50
〜100℃の温度条件下に反応して合成できる。この
際、必要に応じて使用する溶剤はポリアミン化合物、上
記一般式(1)で表される化合物と、上記一般式(2)
で表される化合物を溶解しうるものであって、かつ、こ
れらに対し不活性であることが好ましい。反応に際し
て、反応を促進するための触媒を使用することは自由で
ある。
【0042】このようにして得られた、第1および第2
の化合物は、酸を配合して塩とすることができる。塩と
することは水に対する溶解性が向上するので好ましい。
配合できる酸としては、塩酸、硫酸およびリン酸などの
無機酸;ギ酸、酢酸および(メタ)アクリル酸などの有
機酸が挙げられる。この発明において、第1の単量体成
分がアミノ基と反応しうる基を有する重合性単量体を含
み、分散安定剤として上記第1の化合物および第2の化
合物から選ばれる少なくとも1つが用いられると、第1
の単量体成分が重合して生成する第1の重合体と、分散
安定剤として用いられる第1および/または第2の化合
物とが反応して共有結合を形成して一体化するため、耐
水性などの諸性能が一層優れた水性樹脂分散体を得るこ
とができる。アミノ基と反応しうる重合性単量体として
は、前記の不飽和カルボン酸類、ヒドロキシル基含有不
飽和単量体類、スルフォン酸基含有ビニル化合物類、有
機珪素基含有不飽和単量体類、オキサゾリン基含有不飽
和単量体類、エポキシ基含有不飽和単量体類、ハロヒド
リン基含有不飽和単量体類、アジリジニル基含有不飽和
単量体類、および、ブロック化イソシアネート基含有不
飽和単量体類などを、第1の単量体成分中、0.1〜5
0重量%、好ましくは0.5〜10重量%の量で用いる
ことができる。
【0043】この発明では、第1の単量体成分の円滑な
重合の促進のためにラジカル重合開始剤を用いる。ラジ
カル重合開始剤は従来公知のものであれば何でも使用す
ることができ、油溶性のものおよび水溶性のもののいず
れでも使用できる。油溶性重合開始剤としては、たとえ
ば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニト
リル、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロ
ニトリル)、1,1′−アゾビス−(シクロヘキサン−
1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−(2−ア
ミジノプロパン)2塩酸塩、4,4′−アゾビス−(4
−シアノペンタン酸)などのアゾ化合物類;ベンゾイル
パーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジ−
t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオ
キサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノ
エートなどの有機過酸化物類などが挙げられる。水溶性
重合開始剤としては、たとえば、過硫酸カリウム、過硫
酸アンモニウム、過酸化水素などが挙げられる。なお、
重合速度を速くするためには、酸化剤型の重合開始剤を
必要に応じて還元剤と組み合わせてレドックス系開始剤
として使用することもできる。重合開始剤の使用量は第
1の単量体成分の100重量部に対して0.01〜5重
量部の範囲の割合である。
【0044】ラジカル重合開始剤は、予め第1の単量体
成分または水性媒体に溶解させておいても良く、また、
第1の単量体成分および水性媒体とは別に加えても良
い。この発明の製造方法においては、第1の単量体成
分、ラジカル重合開始剤、水性媒体および分散安定剤を
混合して強攪拌を加えることにより第1の単量体成分を
上記微細液滴の状態で水性媒体中に分散させる。前記微
細液滴を得るためには、高剪断力の得られる分散機を使
用する攪拌方法が好ましい。ここで高剪断力とは、第1
の単量体成分の粒子を剪断力により引きちぎり、前記微
細液滴の状態になるまで細かくするに足る剪断力であ
る。高剪断力の得られる分散機としては、ホモジナイザ
ー・ポリトロン((株)セントラル科学貿易)、ホモジ
ナイザー・ヒストロン((株)日音医理科器機製作
所)、ターボ型攪拌機((株)小平製作所)、バイオミ
キサー((株)日本精機製作所)、ウルトラディスパー
(浅田鉄鋼(株))、エバラマイルダー(荏原製作所
(株))、TKホモミクサー、TKラボディスパー、T
Kパイプラインミクサー、TKホモミックラインミル、
TKホモジェッター、TKユニミキサー、TKホモミッ
クラインフロー、TKアヂホモディスパー(以上、特殊
機化工業(株))、クレアミックス(エム・テクニック
(株))、ケイディミル(キネティック・ディスパージ
ョン社)等の高速剪断混合機;高圧ホモゲナイザー
((株)イズミフードマシナリ)、高圧ホモジナイザー
(Rannie製)、マイクロフルイダイザー(Microfluidic
s 製)、ナノマイザー(ナノマイザー(株))等の高圧
ホモジナイザー;超音波ホモジナイザー((株)日本精
機製作所)等の超音波ホモジナイザー;スタティックミ
キサー((株)ノリタケカンパニーリミテッド)、スル
ーザーミキサー(住友重機械工業(株))、静止型管内
混合器(東レ(株))、スケアミキサー((株)桜製作
所)、バイブロミキサー(冷化工業(株))、TK−R
OSS LPDミキサー(特殊機化工業(株))等の管
内混合器が挙げられる。
【0045】この発明では、第1の単量体成分を水性媒
体中に上記微細液滴の状態で分散させるために、第1の
単量体成分、水性媒体、ラジカル重合開始剤および分散
安定剤を含む予備分散混合液を高圧ホモジナイザーに導
入し、導入された混合液を該高圧ホモジナイザー内にお
いて100〜5000kgf/cm2 の高圧下、好ましくは3
00〜3000kgf/cm2 の高圧下で圧送することができ
る。この圧送により、予備分散混合液にキャビテーショ
ン、乱流、剪断力、衝撃力などの少なくとも1つが加え
られ、効率良く短時間で上記微細液滴の状態を作りう
る。前記圧力を上回ったり下回ったりすると上記微細液
滴の状態が得られない。また、前記圧力を上回ると該高
圧ホモジナイザーの部品の消耗が激しい。
【0046】被処理物は所望の上記微細液滴の状態にな
るまで高圧ホモジナイザーで1回処理するか、または、
2回以上繰り返し処理してもよい。使用される高圧ホモ
ジナイザーとしては、たとえば、次の3つの分散部を持
った高圧ホモジナイザーが挙げられる。第1の分散部の
1例が図1に示される。図1にみるように、第1の分散
部は、導入路1、第1の分散流路2、第2の分散流路3
および導出路4を備えている。第1の分散流路2は、導
入路1に連通しており、導入路1の末端に真っ直ぐ連続
して設けられる。第1の分散流路2は、導入路よりも小
さい断面積を有する。第2の分散流路3は、第1の分散
流路2に連通しており、第1の分散流路2の末端に屈曲
して設けられる。第2の分散流路3は、第1の分散流路
2よりも小さい断面積を有する。導出路4は、第2の分
散流路3に連通しており、第2の分散流路3の末端に屈
曲して設けられる。被処理物は高圧ホモジナイザー内に
おいて加圧下で導入路1に導入され、第1の分散流路2
に供給される。供給された被処理物は第1の分散流路2
を通って、その流路2末端で屈曲した壁に衝突して第2
の分散流路3に入る。第2の分散流路3に入った被処理
物は第2の分散流路3を通って、その流路3末端で屈曲
した壁に衝突し、導出路4を通って外部に取り出され
る。第1の、および、第2の分散流路の断面積は上記範
囲の圧力が達成されるように適宜設定される。
【0047】第2の分散部の1例が図2に示される。図
2にみるように、第2の分散部は、図2にみるように、
導入路11、第1の分散流路12、第2の分散流路13
および導出路14を備えている。第1の分散流路12
は、導入路11の末端で分岐しており、導入路11の末
端に真っ直ぐ連続して設けられる。第1の分散流路12
は、導入路11よりも小さい断面積を有する。第2の分
散流路13は、第1の分散流路12に連通しており、第
1の分散流路12の末端に屈曲して設けられる。第2の
分散流路13は、第1の分散流路12よりも小さい断面
積を有する。導出路14は、第2の分散流路13に連通
しており、第2の分散流路13の中間部に屈曲して設け
られる。第1の、および、第2の分散流路の断面積は上
記範囲の圧力が達成されるように適宜設定される。
【0048】第3の分散部の1例が図3に示される。図
3のBは、図3のAのα−α′断面を表す。図3にみる
ように、第3の分散部は、導入路21、第1の分散流路
22、第2の分散流路23、第3の分散流路25および
導出路24を備えている。第1の分散流路22は、導入
路21の末端で分岐しており、導入路21の末端に真っ
直ぐ連続して設けられる。第1の分散流路22は、導入
路21よりも小さい断面積を有する。第2の分散流路2
3は、第1の分散流路22に連通しており、第1の分散
流路22の末端に屈曲して設けられる。第2の分散流路
23は、第1の分散流路22よりも小さい断面積を有す
る。第3の分散流路25は、第2の分散流路23の中間
部で分岐しており、第2の分散流路23の中間部に分岐
して設けられる。第3の分散流路25の断面積は、第2
の分散流路23と同じに設定される。導出路24は、第
3の分散流路25に連通しており、第3の分散流路25
の末端に屈曲して設けられる。第1の、および、第2の
分散流路の断面積は上記範囲の圧力が達成されるように
適宜設定される。
【0049】上記第1、第2または第3の分散部におい
て、被処理物(上記予備分散混合液)は、第1の分散流
路2、12、22、第2の分散流路3、13、23、第
3の分散流路25を通過する際に加速されて圧送され
る。前記圧送が上記高圧下で起こるように被処理物の導
入路1への導入時の加圧力が適宜設定される。圧送され
た被処理物が上記第1、第2および第3の分散流路にお
いて壁や互いに衝突することにより、被処理物にキャビ
テーション、乱流、剪断力、衝撃力などの少なくとも1
つが加えられ、第1の単量体成分の液滴が分散、破砕さ
れて、微細化する。これにより、前記微細液滴が水性媒
体中に分散された状態が得られる。
【0050】上記第1〜第3の分散部を持つ高圧ホモジ
ナイザーの市販品としては、高圧ホモジナイザー(Rann
ie製)、マイクロフルイダイザー(Microfluidics
製)、ナノマイザー(ナノマイザー(株))等の高圧ホ
モジナイザーが挙げられる。この発明の製造方法では、
第1の単量体成分を前記微細液滴で水性媒体中に分散し
た状態を保ちつつ重合する。重合に使用する重合装置
は、従来公知のものを適用することができる。重合温度
としては0〜100℃、好ましくは50〜80℃、重合
時間は1〜15時間である。
【0051】この発明の製造方法により得られた水性樹
脂分散体は、第1の単量体に由来する、炭素数9〜30
の脂肪族炭化水素基を有する繰り返し単位(たとえば、
一般式(3)および(4)で示される繰り返し単位)を
含有する第1の重合体が容積平均粒子径1μm未満、3
μm以上の粒子径を有する粒子の全粒子の容積に対する
割合5%以下の微細粒子となって水性媒体に分散してい
るので、撥水性、潤滑性、離型性、感熱性のある被膜を
与えることができる。第1の単量体成分に不飽和脂肪酸
を用いた場合は、それらの特性に加えて被膜に空気硬化
性を付与することができる。前記水性樹脂分散体は、そ
れらの性質を活かして、コンクリート、木、紙の撥水処
理剤、離型剤、感熱材料、常温硬化性塗料、合成ワック
スエマルションとして利用することができるが、用途は
これらに限定されない。
【0052】第1の重合体の、炭素数9〜30の脂肪族
炭化水素基を有する繰り返し単位の割合は、IRスペク
トルや元素分析により確認できるが、重合操作の段階で
重合率がほぼ100%(たとえば99重量%以上)、か
つ、凝集物がほぼ皆無(たとえば第1の単量体成分に対
して0.2重量%以下)の時は、第1の単量体成分の使
用割合がそのまま、炭素数9〜30の脂肪族炭化水素基
を有する繰り返し単位の割合と見なしても差し支えな
い。
【0053】この発明の水性樹脂分散体では、第1の重
合体が容積平均粒子径1μm未満、かつ、3μm以上の
粒子径を有する粒子の全粒子の容積に対する割合5%以
下の微細固体粒子となって水性媒体に分散している。こ
の発明では、第1の重合体が前記微細固体粒子となって
分散していると水性樹脂分散体の貯蔵安定性が良好であ
るが、前記微細粒子の範囲を外れると水性樹脂分散体の
貯蔵安定性が悪くなる。ここで、第1の重合体は、上記
一般式(3)で示される繰り返し単位および上記一般式
(4)で示される繰り返し単位のうちの少なくとも1つ
を10〜100重量%の範囲で有する。この重量割合に
おいては、繰り返し単位からなる分子鎖末端の基の分子
量は計算に入れていない。第1の重合体は上記一般式
(3)で示される繰り返し単位および/または上記一般
式(4)で示される繰り返し単位を上記割合で有してい
るので、撥水性、離型性、感熱性および潤滑性を有す
る。上記一般式(3)と(4)で示される繰り返し単位
の合計量が第1の重合体中に10重量%未満だと、水性
樹脂分散体から形成される被膜が、炭素数9〜30の脂
肪族炭化水素基による物性、たとえば撥水性、離型性、
感熱性および潤滑性を持たない。また、脂肪族炭化水素
基の炭素数が9未満でもこれらの特性が失われるという
問題がある。
【0054】上記一般式(3)と(4)で示される繰り
返し単位は、前述した第1の単量体に由来する繰り返し
単位である。一般式(3)と(4)で示される繰り返し
単位の合計量が第1の重合体中に100重量%未満の場
合、残部の繰り返し単位は、前述した第1の単量体以外
の重合性単量体に由来する繰り返し単位である。この発
明では、第1の重合体は、一般式(3)と(4)で示さ
れる繰り返し単位のうちの1つの繰り返し単位からなる
単一重合体であってもよい。第1の重合体は、一般式
(3)と(4)で示される繰り返し単位、および、必要
に応じて含まれる前記残部の繰り返し単位が規則的また
は不規則に配列していてもよいし、また、同じ繰り返し
単位が複数個直接つながってブロック状に配列していて
もよい。
【0055】この発明の水性樹脂分散体は、どのような
製造方法により作られてもよく、たとえば、この発明の
製造方法により作ると容易に作られる。この発明の水性
樹脂分散体は、優れた貯蔵安定性、重合安定性を示し、
水を飛散させて被膜とした際には、外観、撥水性、耐水
性の良い被膜を形成しうる。この発明の水性樹脂分散体
および製造方法により得られた水性樹脂分散体は、たと
えば、貯蔵安定性が1か月以上である。ここで貯蔵安定
性とは、水性樹脂分散体を容器に入れ、室温で静置した
時に、1か月以上を経過しても沈降物、浮遊物あるいは
凝集物の発生がないということを意味する。
【0056】この発明の水性樹脂分散体および製造方法
により得られた水性樹脂分散体は、第1の重合体がカル
ボキシル基を有する場合、カルボキシル基と反応しうる
基を有する水溶性あるいは水分散性の化合物および/ま
たは重合体を該水性樹脂分散体に添加してもよい。この
発明の水性樹脂分散体および製造方法により得られた水
性樹脂分散体は、第1の重合体がアミノ基を有する場
合、アミノ基と反応しうる基を有する水溶性あるいは水
分散性の化合物および/または重合体を該水性樹脂分散
体に添加してもよい。
【0057】上記化合物および/または重合体の添加に
より、耐水性、耐溶剤性、皮膜強度、耐久性などの諸性
能を一層向上させることができる。カルボキシル基と反
応しうる基としては、たとえば、オキサゾリン基、エポ
キシ基、アジリジニル基を挙げることができ、カルボキ
シル基と反応しうる基を有する水溶性あるいは水分散性
の化合物および/または重合体は、これらの基を1分子
中に2個以上する。カルボキシル基と反応しうる基を有
する化合物および/または重合体としては、たとえば、
1,3−ビスフェニルオキサゾリン、ビスフェノール型
エポキシ化合物、p,p′−ジイソシアネートジフェニ
ルメタンとエチレンイミンの付加物などの化合物;2−
イソプロペニルオキサゾリン、グリシジルメタクリレー
ト、2−アジリジニルエチルメタクリレートのごとき単
量体の単独重合体あるいは共重合体を挙げることがで
き、これらの化合物および/または重合体の水溶液ある
いは水分散体が用いられる。前記化合物および/または
重合体の水分散体は、平均粒子径が1μm未満であると
貯蔵安定性に優れ、しかも、水を飛散させると外観や耐
水性などの諸性能の優れた被膜が得られるので好まし
い。この発明の、または、この発明の製造方法により得
られた、水性樹脂分散体と、カルボキシル基と反応しう
る基を有する化合物および/または重合体の水溶液ある
いは水分散体との固形分重量比は、たとえば、10:9
0〜99:1の範囲である。
【0058】アミノ基と反応しうる基としては、たとえ
ば、エポキシ基、ブロック化イソシアネート基、(メ
タ)アクリレート基、アジリジニル基、オキサゾリン基
を挙げることができ、アミノ基と反応しうる基を有する
水溶性あるいは水分散性の化合物および/または重合体
は、これらの基を1分子中に2個以上する。アミノ基と
反応しうる基を有する化合物および/または重合体とし
ては、たとえば、多官能グリシジルエーテル類、トリレ
ンジイソシアネートとフェノールの付加物などのブロッ
ク化イソシアネート類、多価(メタ)アクリレート類、
多官能アジリジンエーテル類、多官能オキサゾリン化合
物類;2−イソプロペニルオキサゾリン、グリシジルメ
タクリレート、2−アジリジニルエチルメタクリレート
のごとき単量体の単独重合体あるいは共重合体を挙げる
ことができ、これらの化合物および/または重合体の水
溶液あるいは水分散体が用いられる。前記化合物および
/または重合体の水分散体は、前述と同様の理由により
平均粒子径が1μm未満であることが好ましい。この発
明の、または、この発明の製造方法により得られた、水
性樹脂分散体と、アミノ基と反応しうる基を有する化合
物および/または重合体の水溶液あるいは水分散体との
固形分重量比は、たとえば、10:90〜99:1の範
囲である。
【0059】
【作用】この発明の水性樹脂分散体では、一般式(3)
【0060】
【化12】
【0061】および一般式(4)
【0062】
【化13】
【0063】で示される、炭素数9〜30の脂肪族炭化
水素基を有する繰り返し単位を10〜100重量%含有
する第1の重合体が容積平均粒子径1μm未満、3μm
以上の粒子径を有する粒子の全粒子の容積に対する割合
5%以下の微細粒子となっているので、貯蔵安定性が最
低でも1か月以上であり、この発明の水性樹脂分散体の
大部分は3か月または6か月を越える長期間保存しても
重合体と水性媒体とが分離しにくく、しかも、水を飛散
させると外観、撥水性、耐水性の良い被膜を形成する。
【0064】この発明の製造方法では、前記第1の単量
体成分を容積平均粒子径1μm未満、3μm以上の粒子
径を有する粒子の全粒子の容積に対する割合5%以下の
微細液滴にして水性媒体中に分散させた状態で重合する
ので、重合安定性が良好であり、重合中に凝集物を生じ
ずに、貯蔵安定性に優れ、しかも、水を飛散させると外
観、撥水性、耐水性の良い被膜を形成する水性樹脂分散
体を生成する。
【0065】
【実施例】以下に、この発明の具体的な実施例および比
較例を示すが、この発明は下記実施例に限定されない。
なお、以下では、特に断りのない限り「%」は「重量
%」を、「部」は「重量部」をそれぞれ示すものとす
る。 (参考例1)攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度
計、滴下ロートを備えたフラスコにイソプロピルアルコ
ール180部を仕込み、窒素を吹き込みながら81℃ま
で内温を上昇させた。次に予め用意しておいた、アクリ
ル酸174部、n−ドデシルメルカプタン36部、およ
び、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.42部
からなる重合性単量体混合物を滴下ロートから1時間か
けて滴下し、重合した。滴下終了後、還流状態で1時間
熟成を行い、固形分53.9%の重合体の溶液を得た。
該重合体は、下記一般式で代表される構造を有する、酸
価645、数平均分子量1200の白色粉末状物であっ
た。これを分散安定剤(1)と称する。
【0066】
【化14】
【0067】(参考例2)参考例1と同様のフラスコ
に、イソプロピルアルコール180部を仕込み、窒素を
吹き込みながら81℃まで内温を上げた。続いて、予め
用意しておいた、アクリル酸86部、アクリル酸2−ヒ
ドロキシエチル139部、n−ドデシルメルカプタン3
6部、イソプロピルアルコール30部、および、2,
2′−アゾビスイソブチロニトリル0.30部からなる
重合性単量体混合物を滴下ロートから1時間かけて滴下
し、重合した。滴下終了後、還流状態で1時間熟成を行
い、固形分55.4%の重合体の溶液を得た。該重合体
は、下記一般式で代表される構造を有する、酸価25
6、数平均分子量1500の白色粘稠物であった。これ
を分散安定剤(2)と称する。
【0068】
【化15】
【0069】(参考例3)攪拌機、還流冷却器、窒素吹
込み管、温度計を備えたフラスコにポリアミン化合物と
してポリエチレンイミン(エポミンSP−006、株式
会社日本触媒製、平均分子量600)100部、一般式
(1)で表される化合物として炭素数12および14の
α−オレフィンエポキシドの混合物(AOE−X24、
ダイセル化学工業(株)製、平均分子量196.3)6
5.4部を仕込み、窒素気流下攪拌しながら、80℃ま
で加熱した。同温度で4時間攪拌を続けて反応を終了
し、反応生成物を得た。得られた反応生成物を分散安定
剤(3)と称する。なお、炭素数12および14のα−
オレフィンエポキシドの混合物は、一般式(1)におい
て、Rが炭素数12のα−オレフィン、nが0、Xがエ
ポキシ基である化合物とRが炭素数14のα−オレフィ
ン、nが0、Xがエポキシ基である化合物の混合物であ
る。
【0070】(参考例4)参考例1と同様のフラスコに
ポリアミン化合物としてポリエチレンイミン(エポミン
SP−006、株式会社日本触媒製、平均分子量60
0)100部、一般式(1)で表される化合物として炭
素数12および14のα−オレフィンエポキシドの混合
物(AOE−X24、ダイセル化学工業(株)製、平均
分子量196.3)65.4部、一般式(2)で表され
る化合物としてアリルグリシジルエーテル38部を仕込
み、窒素気流下攪拌しながら、80℃まで加熱した。同
温度で4時間攪拌を続けて反応を終了し、反応生成物を
得た。得られた反応生成物を分散安定剤(4)と称す
る。
【0071】(参考例5)攪拌機、還流冷却器、窒素導
入管、温度計および滴下ロートを備えたフラスコに、脱
イオン水782.4部およびハイテノールN−08(第
一工業製薬(株)製のノニルフェノールポリオキシエチ
レン硫酸ナトリウム)の15%水溶液128部を仕込
み、適量のアンモニア水(28%)でpH9〜9.5に
調整し、ゆるやかに窒素ガスを流しながら70℃に加熱
した。そこへ過硫酸カリウムの5%水溶液64部を注入
し、続いて、予め調製しておいたアクリル酸ブチル13
9.5部、スチレン436.5部および2−イソプロペ
ニル−2−オキサゾリン64部の単量体混合物を3時間
にわたって滴下した。反応中は窒素ガスを吹き込み続
け、内温を70±1℃に保った。滴下終了後も2時間同
じ温度に保った後、内温を80℃に昇温させて1時間攪
拌を続けて反応を完結させた。その後冷却し、不揮発分
39.8%、容積平均粒子径0.10μm、3μm以上
の粒子径を有する粒子が全粒子の容積に対して0%であ
るオキサゾリン基含有ポリマーエマルションを得た。
【0072】(実施例1)メタクリル酸メチル34部、
スチレン20部、アクリル酸−2−エチルヘキシル22
部、メタクリル酸グリシジル4部、アクリル酸ステアリ
ル20部(以上、第1の単量体成分)、2,2′−アゾ
ビスイソブチロニトリル1部(油溶性重合開始剤)、水
102部、および、分散安定剤(1)の中和物溶液〔参
考例1で得られた重合体の溶液6.7部に25%のアン
モニア水溶液1.5部を加えて中和したもの〕8.2部
を混合し、(株)日本精機製作所製バイオミキサー(B
M−4型)を用いて30000rpm で10分間分散さ
せ、平均粒子径0.35μmの分散液滴混合物(1)を
調製した。引き続いて、攪拌機、還流冷却器、窒素導入
管、温度計および滴下ロートを備えたフラスコに水52
部を仕込み、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら75
℃に加熱した。30分後、予め用意しておいた分散液滴
混合物(1)の滴下を始め、3時間で滴下を完全に終了
した。滴下中は温度を75〜80℃に保持し、更に滴下
終了後、同温度で3時間攪拌して重合を終了させ、不揮
発分39.8%、平均粒子径0.35μmの水性樹脂分
散体(1)を得た。この水性樹脂分散体(1)を分析し
た結果を表4に示した。得られた水性樹脂分散体(1)
の水を飛散させると、耐水性、撥水性の付与された優れ
た外観を持った被膜が得られた。
【0073】(実施例2)実施例1において、分散安定
剤(1)の代わりに分散安定剤(2)を使用する以外は
実施例1と同様の操作を繰り返して、不揮発分39.7
%、平均粒子径0.30μmの水性樹脂分散体(2)を
得た。その分析結果を表4に示した。得られた水性樹脂
分散体(2)の水を飛散させると、耐水性、撥水性の付
与された優れた外観を持った被膜が得られた。
【0074】(実施例3)実施例1で用いた、参考例1
で得られた重合体の溶液の量を6.7部の代わりに1
8.8部用いる以外は、実施例1と同様の操作を繰り返
して、不揮発分40.0%、平均粒子径0.18μmの
水性樹脂分散体(3)を得た。その分析結果を表4に示
した。得られた水性樹脂分散体(3)の水を飛散させる
と、耐水性、撥水性の付与された優れた外観を持った被
膜が得られた。
【0075】(実施例4)実施例3において水性媒体と
して水99.5部とイソプロピルアルコール2.5部の
混合物を用いる以外は実施例3と同様の操作を繰り返し
て、不揮発分40.0%、平均粒子径0.14μmの水
性樹脂分散体(4)を得た。その分析結果を表4に示し
た。得られた水性樹脂分散体(4)の水を飛散させる
と、耐水性、撥水性の付与された優れた外観を持った被
膜が得られた。
【0076】(実施例5)実施例2において油溶性重合
開始剤として2,2′−アゾビスイソブチロニトリル1
部の代わりに過硫酸カリウム0.5部を用い、更に、滴
下終了後の熟成時間を10時間とする以外は実施例2と
同様の操作を繰り返して、不揮発分39.5%、平均粒
子径0.28μmの水性樹脂分散体(5)を得た。その
分析結果を表4に示した。得られた水性樹脂分散体
(5)の水を飛散させると、耐水性、撥水性の付与され
た優れた外観を持った被膜が得られた。
【0077】(実施例6)実施例2において、油溶性重
合開始剤として2,2′−アゾビスイソブチロニトリル
1部の代わりにt−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキ
サノエート0.5部を用い、この開始剤を分散液滴混合
物の調製時には混合せずに重合反応時に滴下する以外は
実施例2と同様の操作を繰り返して、不揮発分39.5
%、平均粒子径0.28μmの水性樹脂分散体(6)を
得た。その分析結果を表4に示した。得られた水性樹脂
分散体(6)の水を飛散させると、耐水性、撥水性の付
与された優れた外観を持った被膜が得られた。
【0078】(実施例7)実施例1において、(株)日
本精機製作所製バイオミキサー(BM−4型)の代わり
に(株)イズミフードマシナリ製高圧ホモゲナイザー
(HV−0H−07型)を用いて600kgf/cm2 の圧力
で10分間(すなわち、5回)処理し、分散液滴を調製
した以外は実施例1と同様の操作を繰り返して、不揮発
分39.7%、平均粒子径0.14μmの水性樹脂分散
体(7)を得た。その分析結果を表4に示した。得られ
た水性樹脂分散体(7)の水を飛散させると、耐水性、
撥水性の付与された優れた外観を持った被膜が得られ
た。
【0079】(実施例8)実施例1において第1の単量
体成分としてアクリル酸ステアリル100部を用いる以
外は実施例1と同様の操作を繰り返して、不揮発分3
9.9%、平均粒子径0.40μmの水性樹脂分散体
(8)を得た。その分析結果を表4に示した。得られた
水性樹脂分散体(8)の水を飛散させると、耐水性、撥
水性の付与された優れた外観を持った被膜が得られた。
【0080】(実施例9)実施例2において第1の単量
体成分としてアクリル酸ステアリル100部を用いる以
外は実施例2と同様の操作を繰り返して、不揮発分3
9.9%、平均粒子径0.38μmの水性樹脂分散体
(9)を得た。その分析結果を表4に示した。得られた
水性樹脂分散体(9)の水を飛散させると、耐水性、撥
水性の付与された優れた外観を持った被膜が得られた。
【0081】(実施例10)実施例9において油溶性重
合開始剤として2,2′−アゾビスイソブチロニトリル
1部の代わりに過酸化ベンゾイル1部を用いる以外は実
施例9と同様の操作を繰り返して、不揮発分39.8
%、平均粒子径0.40μmの水性樹脂分散体(10)
を得た。その分析結果を表4に示した。得られた水性樹
脂分散体(10)の水を飛散させると、耐水性、撥水性
の付与された優れた外観を持った被膜が得られた。
【0082】(実施例11)実施例8において、(株)
日本精機製作所製バイオミキサー(BM−4型)の代わ
りに(株)イズミフードマシナリ製高圧ホモゲナイザー
(HV−0H−07型)を用いて600kgf/cm2 の圧力
で10分間(すなわち、5回)処理し、分散液滴を調製
した以外は実施例8と同様の操作を繰り返して、不揮発
分39.8%、平均粒子径0.17μmの水性樹脂分散
体(11)を得た。その分析結果を表4に示した。得ら
れた水性樹脂分散体(11)の水を飛散させると、耐水
性、撥水性の付与された優れた外観を持った被膜が得ら
れた。
【0083】(実施例12)実施例8において分散安定
剤として市販の界面活性剤であるナトリウムジオクチル
スルホサクシネートを3部使用する他は実施例8と同様
の操作を繰り返して、不揮発分40.0%、平均粒子径
0.49μmの水性樹脂分散体(12)を得た。その分
析結果を表4に示した。得られた水性樹脂分散体(1
2)の水を飛散させると、耐水性、撥水性の付与された
優れた外観を持った被膜が得られた。
【0084】実施例1〜12の第1の単量体成分の組
成、分散安定剤の種類と量、重合開始剤の種類と量、水
性媒体中の水以外の溶剤の種類と量、第1の単量体成分
の微細液滴の状態(容積平均粒子径、および、3μm以
上の粒子径を有する粒子と1μm以上の粒子径を有する
粒子の、全粒子の合計容積に対する百分率)を表1に示
した。
【0085】
【表1】
【0086】(実施例13〜20)実施例1において、
第1の単量体成分の量および種類を表2に示したとおり
とする他は実施例1と同様の操作を繰り返して水性樹脂
分散体(13)〜(20)を得た。その分析結果をまと
めて表4,5に示した。得られた水性樹脂分散体(1
3)〜(20)の水を飛散させるといずれも、耐水性、
撥水性の付与された優れた外観を持った被膜が得られ
た。
【0087】
【表2】
【0088】(比較例1)実施例1において分散安定剤
(1)の中和物溶液8.2部の代わりにエマルゲン93
5(花王社製、ポリオキシエチレンノニルフェニルエー
テル、HLB=17.5)3.0部を用いる以外は実施
例1と同様の操作を繰り返して比較用水性樹脂分散体を
得た。その分析結果を表5に示した。得られた比較用水
性樹脂分散体は貯蔵安定性が不良であり、また、該分散
体から得られた被膜は、実施例で得られたものに比べ
て、外観、耐水性および撥水性が劣っていた。
【0089】(比較例2)実施例1において、分散液滴
混合物の調製に(株)日本精機製作所製バイオミキサー
(BM−4型)を使わず、かつ、用いる水の量を102
部の代わりに50部として滴下ロート内で混合して平均
粒子径10μmの分散液滴混合物を調製し、フラスコ内
に水72部を予め仕込んでおいた以外は実施例1と同様
の操作を繰り返して比較用水性樹脂分散体を得た。その
分析結果を表5に示した。得られた比較用水性樹脂分散
体は貯蔵安定性が不良であり、該分散体から得られた被
膜は、実施例で得られたものに比べて光沢と耐水性が劣
っていた。
【0090】(比較例3)攪拌機、還流冷却器、窒素導
入管、温度計および滴下ロートを備えたフラスコに水1
00部、参考例1で得られた重合体の溶液1部、およ
び、過硫酸カリウム0.5部を仕込み、25%のアンモ
ニア水溶液1部を加えて中和して、ゆるやかに窒素を吹
き込みながら75℃に加熱した。滴下ロートに実施例1
で用いた第1の単量体成分(合わせて100部)、参考
例1で得られた重合体の溶液5.7部、水50部を加え
て攪拌して平均粒子径9μmの分散液を調製した。この
分散液を滴下ロートから3時間にわたって滴下して重合
を行って比較用水性樹脂分散体を得た。重合途中に多量
の凝集物が発生し、得られた分散液も静置下では2層分
離を起こした。その結果を表5に示した。
【0091】(比較例4)実施例1において、分散液滴
混合物の調製に(株)日本精機製作所性バイオミキサー
(BM−4型)を使わず、ビーカー内で混合して3〜1
0μmの分散液滴混合物を調製した。この分散液滴混合
物14.8部と実施例1で調製した分散液滴混合物19
6.4部とを混合したものを、実施例1と同様の操作に
より重合し、比較用水性樹脂分散体を得た。その分析結
果を表5に示した。重合安定性は実施例に比べて劣り、
得られた比較用水性樹脂分散体の貯蔵安定性が不良であ
り、また、該分散体から得られた被膜は、実施例で得ら
れたものに比べて、外観、耐水性および撥水性が劣って
いた。
【0092】(比較例5)アクリル酸ステアリル100
部に2,2′−アゾビスイソブチロニトリル1部を溶解
し、この溶液と、クラレポバール205((株)クラレ
製のポリビニルアルコール)10部を水200部に溶解
してなる溶液210部を混合し、プロペラ羽根のついた
攪拌機で攪拌し、平均粒子径45μmの分散液滴を調製
し、これを80℃で5時間加熱攪拌して重合した。平均
粒子径が43μmの水性樹脂分散体を得た。この分散体
は攪拌を停止するとすぐに粒子の沈降が始まり、数時間
後には全粒子が沈降した。その結果を表5に示した。
【0093】(比較例6)n−ヘキサデシルメタクリレ
ート15部、ステアリルメタクリレート85部、アクリ
ル酸1部および2−ヒドロキシ−3−クロロプロピルア
クリレート6部からなる第1の単量体成分(合わせて1
07部)、ニューコール(Newcol)SH(アニオン−ノ
ニオン系乳化剤)10部、水200部および過硫酸カリ
ウム0.1部をフラスコに仕込み、70〜80℃で6時
間重合させたところ、凝集物が多量に発生し、得られた
分散液も静置下で1日放置すると2層分離を起こした。
その結果を表5に示した。
【0094】比較例1〜6の第1の単量体成分の組成、
分散安定剤の種類と量、重合開始剤の種類と量、水性媒
体中の水以外の溶剤の種類と量、第1の単量体成分の微
細液滴の状態(容積平均粒子径、および、3μm以上の
粒子径を有する粒子と1μm以上の粒子径を有する粒子
の、全粒子の合計容積に対する百分率)を表3に示し
た。
【0095】
【表3】
【0096】
【表4】
【0097】
【表5】
【0098】(実施例21〜25)実施例1において、
第1の単量体成分の種類および量、重合開始剤の種類お
よび量を表6に示したとおりに変更したことと、(株)
日本精機製作所製バイオミキサー(BM−4型)の代わ
りにMicrofluidics 製マイクロフルイダイザー(M−1
10−EH型)を用いて800kgf/cm2 の圧力で2回
処理し、分散液滴を調製したこと以外は、実施例1と同
様の操作を繰り返して水性樹脂分散体(21)〜(2
5)を得た。その分析結果をまとめて表7に示した。得
られた水性樹脂分散体(21)〜(25)の水を飛散さ
せるといずれも、耐水性、撥水性の付与された優れた外
観を持った被膜が得られた。なお、マイクロフルイダイ
ザー(M−110−EH型)は図3に示す分散部を有す
る高圧ホモジナイザーである。
【0099】(実施例26)実施例8において、(株)
日本精機製作所製バイオミキサー(BM−4型)の代わ
りにMicrofluidics 製マイクロフルイダイザー(HC−
5000型)を用いて350kgf/cm2 の圧力で5回処
理し、分散液滴を調製したこと以外は、実施例8と同様
の操作を繰り返して、不揮発分39.9%、平均粒子径
0.17μmの水性樹脂分散体(26)を得た。その分
析結果を表7に示した。得られた水性樹脂分散体の水を
飛散させると、耐水性、撥水性の付与された優れた外観
を持った被膜が得られた。なお、マイクロフルイダイザ
ー(HC−5000型)は図1に示す分散部を有する高
圧ホモジナイザーである。実施例26で用いた、重合性
単量体の種類と量、重合開始剤の種類と量、第1の単量
体成分の微細液滴の状態を表6に示した。
【0100】
【表6】
【0101】
【表7】
【0102】(実施例27〜30)実施例1及び8で得
られた水性樹脂分散体単独の塗液、又は参考例5で得た
オキサゾリン基含有ポリマーエマルションとを固形分重
量比で50:50で混合した塗液をステンレス板上に乾
燥時の膜厚が10μmとなるよう塗布し、150℃で1
分間加熱乾燥して試験板を作製した。得られた試験板に
ついて下記の性能評価を行った。塗液の配合及び性能評
価結果を表8に示す。 鉛筆硬度: JIS K5400の6.14に準じて行
った。 耐水性: 試験板を水中に1日間浸漬後、塗膜の外観を
観察した。
【0103】評価 ○ 異常なし △ 若干白化 × 白化
【0104】
【表8】
【0105】(実施例31)実施例1に於いて分散安定
剤(1)の代わりに分散安定剤(3)の中和物溶液〔参
考例3で得られた分散安定剤(3)3.6部に水2.4
部および酢酸2.2部を加えて中和したもの〕8.2部
を使用する以外は実施例1と同様の操作を繰り返して、
不揮発分39.7%、平均粒子径0.37μmの水性樹
脂分散体(27)を得た。その分析結果を表10に示し
た。得られた水性樹脂分散体(27)の水を飛散させる
と耐水性、撥水性が付与され基材に対する密着性と外観
の優れた被膜が得られた。
【0106】(実施例32)実施例31に於いて、分散
安定剤(3)の代わりに分散安定剤(4)を使用する以
外は実施例31と同様の操作を繰り返して不揮発分4
0.0%、平均粒子径0.40μmの水性樹脂分散体
(28)を得た。その分析結果を表10に示した。得ら
れた水性樹脂分散体(28)の水を飛散させると耐水
性、撥水性が付与され、密着性と外観の優れた被膜が得
られた。
【0107】(実施例33)実施例31に於いて、分散
安定剤(3)の中和物溶液の量を8.2部の代わりに2
2.8部用いる以外は、実施例31と同様の操作をくり
返して、不揮発分39.9%、平均粒子径0.21μm
の水性樹脂分散体(29)を得た。その分析結果を表1
0に示した。得られた水性樹脂分散体(29)の水を飛
散させると、耐水性、撥水性が付与され、密着性と外観
の優れた被膜が得られた。
【0108】(実施例34)実施例31において第1の
単量体成分としてアクリル酸ステアリル100部を用い
る以外は実施例31と同様の操作をくり返して、不揮発
分40.1%、平均粒子径0.46μmの水性樹脂分散
体(30)を得た。その分析結果を表10に示した。得
られた水性樹脂分散体(30)水を飛散させると、耐水
性、撥水性の付与された優れた外観を持った被膜が得ら
れた。
【0109】(実施例35)実施例32において第1の
単量体成分としてアクリル酸ステアリル100部を用い
る以外は実施例32と同様の操作を繰り返して、不揮発
成分39.9%、平均粒子径0.45μmの水性樹脂分
散体(31)を得た。その分析結果を表10に示した。
得られた水性樹脂分散体(31)の水を飛散させると、
耐水性、撥水性の付与された優れた外観を持った被膜が
得られた。
【0110】実施例31〜35の第1の単量体成分の組
成、分散安定剤の種類と量、第1の単量体成分の微細液
滴の状態(容積平均粒子径と、3μm以上の粒子径を有
する粒子と1μm以上の粒子径を有する粒子の、全粒子
の合計容積に対する百分率)を表9に示した。
【0111】
【表9】
【0112】
【表10】
【0113】(実施例36〜40)実施例31におい
て、第1の単量体成分の種類および、重合開始剤の種類
および量を表11に示したとおりとしたことと(株)日
本精機製作所バイオミキサー(BM−4型)の代わりに
Microfluidics製マイクロフルイダイザー
(M−110−EH型)を用いて800kgf/cm2
圧力で2回処理し、分散液滴を調製したこと以外は実施
例31と同様の操作を繰り返して水性樹脂分散体(3
2)〜(36)を得た。その分析結果をまとめて表12
に示した。得られた水性樹脂分散体(32)〜(36)
の水を飛散させるといずれも耐水性、撥水性の付与され
た優れた外観を持った被膜が得られた。
【0114】(実施例41)実施例34において、
(株)日本精機製作所バイオミキサー(BM−4型)の
代わりにMicrofluidics製マイクロフルイ
ダイザー(HC−5000型)を用いて350kgf/
cm2 の圧力で5回処理し、分散液滴を調製した以外は実
施例34と同様の操作を繰り返して不揮発分39.7
%、平均粒子径0.16μmの水性樹脂分散体を得た。
その分析結果を表12に示した。得られた水性樹脂分散
体の水を飛散させると、耐水性、撥水性の付与された優
れた外観を持った被膜が得られた。
【0115】実施例36〜41の第1の単量体成分の組
成、分散安定剤の種類と量、第1の単量体成分の微細液
滴の状態(容積平均粒子径と、3μm以上の粒子径を有
する粒子と1μm以上の粒子径を有する粒子の、全粒子
の合計容積に対する百分率)を表11に示した。
【0116】
【表11】
【0117】
【表12】
【0118】表1〜12にみるように、この発明の水性
樹脂分散体は重合安定性、貯蔵安定性が優れ、該水性樹
脂分散体から得られる皮膜は光沢や平滑性に優れている
ことがわかる。しかも、この発明の方法によれば、多量
の有機溶剤を水性媒体に添加しなくても安定して水性樹
脂分散体が得られる。
【0119】
【発明の効果】この発明の水性樹脂分散体は、貯蔵安定
性が良好で、水を飛散させて被膜とした際には、外観、
耐水性の良好であって、しかも、感温性、撥水性、潤滑
性、離型性、空気硬化性の付与された被膜を形成するこ
とができる。このため、この発明の水性樹脂分散体は、
たとえば、水性塗料、紙や木材や繊維などの撥水処理
剤、防水コーティング剤などの用途に使用される他、合
成樹脂ワックスエマルションとして滑剤、感熱材料など
に使用されたり、あるいは、離型剤として水性樹脂分散
体単独でまたは他の樹脂とのブレンドで使用されたりす
る。この発明の水性樹脂分散体は、より具体的には、た
とえば、感熱リボン、複写機用トナー、フロアーポリッ
シュ、水性インキ、建築建材用塗料、電着塗料、電気部
品封止用コンパウンド、カーシャンプー、皮革用クリー
ナー、皮革仕上げ剤、粘着剤、防水紙、石油等の流動性
改良剤、プラスチック、ゴム、化粧料等の主剤または添
加剤として利用できる。
【0120】この発明の水性樹脂分散体の製造方法によ
れば、公知の乳化重合では安定な水分散体を得ることが
できない水溶性の極めて低い重合性単量体を用いて安定
に重合を行うことができる。このため、この発明の製造
方法によれば、上記のように優れた効果を奏する水性樹
脂分散体を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】高圧ホモジナイザーの第1の分散部の概略断面
図である。
【図2】高圧ホモジナイザーの第2の分散部の概略断面
図である。
【図3】高圧ホモジナイザーの第3の分散部の概略断面
図である。
【符号の説明】
1,11,21 導入路 2,12,22 第1の分散流路 3,13,23 第2の分散流路 4,14,24 導出路 25 第3の分散流路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08F 220/36 MMQ 7242−4J 220/58 MNG 7242−4J 222/14 MMC 7242−4J 226/06 MNL 7242−4J C09D 5/00 PPG 6904−4J PPK 6904−4J 131/02 PFR 6904−4J 133/00 PFY 7921−4J C09J 131/02 JCW 6904−4J 133/00 JDB 7921−4J D06M 15/263 D21H 19/20 (72)発明者 泉林 益次 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会社 日本触媒中央研究所内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素数9〜30の脂肪族炭化水素基を有
    する重合性単量体を必須成分とする重合性単量体成分
    を、容積平均粒子径が1μm未満であり、3μm以上の
    粒子径を有する粒子が全粒子の容積に対して5%以下で
    ある微細液滴の状態で水性媒体中に分散させ、この分散
    状態を保ちつつ前記単量体成分をラジカル重合する水性
    樹脂分散体の製造方法。
  2. 【請求項2】 炭素数9〜30の脂肪族炭化水素基を有
    する重合性単量体を必須成分とする重合性単量体成分の
    水性媒体中への分散が、前記単量体成分、前記水性媒体
    および分散安定剤を混合することにより行われる請求項
    1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 分散安定剤が、水溶性単量体を必須成分
    とする重合性単量体成分を炭素数が6以上のアルキルメ
    ルカプタンの存在下に重合して得られる炭素数が6以上
    の末端アルキル基を有する水溶性もしくは水分散性の重
    合体、分子内に2個以上の第1級および/または第2級
    アミノ基を有するポリアミン化合物と下記一般式(1) 【化1】 〔式(1)中、Rは炭素数4〜28の炭化水素基を示
    し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nは0ま
    たは1〜30の整数を示し、Xはアミノ基と反応しうる
    官能基を有する原子団を示す〕で表される化合物とを反
    応させて得られる化合物、および、前記ポリアミン化合
    物と前記一般式(1)で表される化合物と下記一般式
    (2) 【化2】 〔式(2)中、R′は重合性不飽和基を有する原子団を
    示し、Xはアミノ基と反応しうる官能基を有する原子団
    を示す〕で表される化合物とを反応させて得られる化合
    物から選ばれる少なくとも1つである請求項2記載の製
    造方法。
  4. 【請求項4】 炭素数9〜30の脂肪族炭化水素基を有
    する重合性単量体を必須成分とする重合性単量体成分の
    水性媒体中への分散が、前記単量体成分と分散安定剤と
    前記水性媒体との予備分散混合液を高圧ホモジナイザー
    に導入し、前記高圧ホモジナイザー内において100〜
    5000kgf/cm2 の圧力により前記予備分散混合液を1
    回以上圧送することにより行われる請求項1記載の製造
    方法。
  5. 【請求項5】 炭素数9〜30の脂肪族炭化水素基を有
    する重合性単量体を必須成分とする重合性単量体成分
    が、前記重合性単量体を10〜100重量%含む請求項
    1から4までのいずれかに記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 下記一般式(3) 【化3】 で示される繰り返し単位および下記一般式(4) 【化4】 で示される繰り返し単位のうちの少なくとも1つを10
    〜100重量%の範囲で有する重合体が、容積平均粒子
    径1μm未満、かつ、3μm以上の粒子径を有する粒子
    の全粒子の容積に対する割合5%以下の微細粒子となっ
    て水性媒体に分散してなり、前記重合体の微細粒子の分
    散安定剤として、水溶性単量体を必須成分とする重合性
    単量体成分を炭素数が6以上のアルキルメルカプタンの
    存在下に重合して得られる炭素数が6以上の末端アルキ
    ル基を有する水溶性もしくは水分散性の重合体、分子内
    に2個以上の第1級および/または第2級アミノ基を有
    するポリアミン化合物と下記一般式(1) 【化5】 〔式(1)中、Rは炭素数4〜28の炭化水素基を示
    し、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、nは0ま
    たは1〜30の整数を示し、Xはアミノ基と反応しうる
    官能基を有する原子団を示す〕で表される化合物とを反
    応させて得られる化合物、および、前記ポリアミン化合
    物と前記一般式(1)で表される化合物と下記一般式
    (2) 【化6】 〔式(2)中、R′は重合性不飽和基を有する原子団を
    示し、Xはアミノ基と反応しうる官能基を有する原子団
    を示す〕で表される化合物とを反応させて得られる化合
    物から選ばれる少なくとも1つが用いられている水性樹
    脂分散体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO1997007174A1 (fr) * 1995-08-14 1997-02-27 Kao Corporation Emulsion aqueuse pour adhesif autocollant et procede de preparation d'une telle emulsion
JPH1171549A (ja) * 1997-07-08 1999-03-16 Elf Atochem Sa 表面粘着性および表面張力の小さい可撓性のある被覆材
JP2018016902A (ja) * 2016-07-27 2018-02-01 ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社 紙用撥水剤、および、紙の製造方法

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