JPH05592Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、車輌等の自動変速機の油圧制御装置
に関する。

（従来の技術） 従来、自動変速機の油圧制御装置としては、例
えば第２図に示すようなものがある。これは図示
せぬ摩擦係合機構において所要の締結力を得るた
めの油圧の一部をアキユムレータ１０の受圧室４
に導入するようになつている。アキユムレータ１
０の構造は、シリンダ筒体１の内部においゴム質
等の弾性シール部材２によつて周囲が被覆された
ピストン３が摺動自在に嵌装されていて、シリン
ダ筒体１とピストン３によつて画成される受圧室
４が上記摩擦係合機構に送る油圧の油路７に連通
している。ピストン３を介して受圧室４に対向す
る側のシリンダ室は大気開放室５となつている。
また、この大気開放室５の内部にはシリンダ筒体
１とシリンダ３との両者の相対的な変位に対応し
て弾性力が変化するリターンスプリング６が弾装
されている。すなわち、油圧源で発生した油圧は
受圧室４に導入され、この導入油圧の上昇に伴つ
てピストン３がリターンスプリング６の弾性力に
抗しつつ徐々にシリンダ筒体１内を摺動する。こ
のときの油圧上昇によつて摩擦係合機構では締結
作用が徐々に行われる。こうして、摩擦係合機構
における締結前後では回転から停止に移行する領
域の加速度が小さくなり、このときの慣性力によ
つて発生する自動変速機の出力軸のトルク変動が
小さくなつて、いわゆる乗員によるシフトレバー
操作時のセレクトシヨツクを軽減するようになつ
ている。

しかしながら、このような従来の自動変速機の
油圧制御装置としては、油圧を上昇させる速度を
遅くすることによつてセレクトシヨツクを軽減す
るようになつているため、回転から停止に移行す
る領域の加速度が小さくなり、つまり停止に至る
までに多くの時間を要することになる。その結
果、いわゆるタイムラグが長くなつて乗員に不快
感を与えるといつた問題点がある。

上記問題点を解消せんとして、本願出願人は先
に「特願昭60−197465」等によつて、摩擦係合機
構で締結が行なわれている過程でそのときの締結
油圧を一時的に低下させるシステムを提案した。
これを第３図で概略的に示すと、シフトセレクト
操作時の電圧変化を検出するセンサ１４からセレ
クトがあつたことを示す電圧変化の検出信号を制
御ユニツト１３を送ると、適当な時間（t₁sec）
経過後に所定時間だけ電磁弁１１にはこれを開放
するための作動パルス信号が入力される。電磁弁
１１は通常には摩擦係合機構における締結油圧を
発生している油路１７に連通した大気圧ポート
（またはドレインポート）１８を閉じているため、
作動パルス信号が電磁弁１１に入力されて作動す
ると大気圧ポート１８が開放されて、締結油圧が
一時的に低下することになる。ここで、摩擦係合
機構の動摩擦係数μは、摩擦係合機構の摩擦要素
が相対的な回転から一体的な回転へと移行するに
つれて非線形に増大し、一体回転に至る直前で最
大値を記録するが、締結油圧を一時的に低減する
ことによつて、かかる動摩擦係数μの増大を抑え
ることができ、第４図に示すように、動摩擦係数
μの増大に起因して発生する自動変速機の出力軸
トルク変動を回避し、セレクトシヨツクを低減で
きる。また、乗員は駆動力の立ち上がりをt₁で感
じるので、タイムラグの悪化も事実上発生しな
い。

（考案が解決しようとする問題点） しかしながら、上記先願においては、自動変速
機の出力軸トルクが一定値に達した後でも、回転
から停止に移行する直前の領域では依然として回
転が続行していることが必要条件となる。したが
つて、その間に乗員がアクセル操作してエンジン
出力を上昇させると、エンジンのいわゆる空吹か
しを生じさせるという問題点がある。

そこで、本考案は上記した従来の問題点を解消
すべくなされたものであり、エンジンのアイドリ
ング状態の付近でのみ締結油圧を低下させるよう
にした自動変速機の油圧制御装置の提供を目的と
している。

（問題点を解消するための手段） 上記問題点を解消して目的を達成するために、
本考案による自動変速機の油圧制御装置は、変速
状態を切り換える摩擦係合機構に油圧を供給する
油路を、ドレンポートに対して開放又は遮断すべ
く開閉作動する制御弁と、該制御弁に対して、前
記摩擦係合機構の係合過程で該制御弁を開放させ
て係合油圧を一時的に低下させる制御信号を出力
する制御ユニツトと、を有する自動変速機の油圧
制御装置において、エンジンのアイドリング状態
を検出するアイドリング検出手段を設け、該アイ
ドリング検出手段からの検出信号を前記制御ユニ
ツトに入力し、前記アイドリング検出手段がアイ
ドリング状態を検出した時に、前記制御弁を開放
させるように前記制御ユニツトを構成したことを
特徴とする。

（作用） 本考案によれば、摩擦係合機構の係合過程で制
御弁を開放させて係合油圧を一時的に低減する
が、この低減制御がアイドリング状態の時に行わ
れるため、エンジンの空吹かしが回避される。

（実施例） 以下、本考案による自動変速機の油圧制御装置
の一実施例について図面を参照しつつ説明する。
なお、従来例で用いられた符号に同一の部材の詳
しい説明は省略する。

第１図において、１４は乗員がシフトレバーに
よるセレクト操作を行つた時の電圧変化を検出す
る電圧センサ、また、２０はエンジンがアイドリ
ング状態にあることを検出するアイドリング検出
手段であつて、このアイドリング検出手段として
は、例えばエンジンのスロツトル弁開度、スロツ
トル弁開放速度、吸入負圧、自動変速機における
ライン油圧、および制動時のブレーキ油圧などを
検出する各種センサがある。実施例の場合、上記
各種センサのうちアイドリング時のみONとなる
スロツトル弁開度センサ２０を採用している。

電圧センサ１４およびスロツトル弁開度センサ
２０の各々によつて検出された信号は制御ユニツ
ト１３に送られて制御される。１１はこの制御ユ
ニツト１３で制御された作動信号によつて作動す
る電磁弁である。電磁弁１１に作動信号が送られ
ると弁体１２が摩擦係合機構に連通する油路１７
と大気圧ポート（またはドレンポート）１８とを
連通させるべく図の右方向に所定量だけ移動し、
油路１７側に弁体１２の開度量に見合うだけ大気
圧ポート１８側に開放するようになつている。上
記の電磁弁１１と弁体１２は一体として、油路１
７を大気圧ポート１８に対して開放又は遮断すべ
く開閉作動する制御弁として機能する。

つぎに、上記実施例の作用を説明する。

乗員によるシフトレバーのセレクト操作時の電
圧変化を電圧センサ１４が検出し、さらにアイド
リング検出手段としてのスロツトル弁開度センサ
２０がエンジンのアイドリング状態を検出する
と、これらの検出信号が制御ユニツト１３に送ら
れて制御され、制御ユニツト１３からの制御パル
ス信号が作動指令として電磁弁１１に送られる。
電磁弁１１における弁体１２の作動によつて、油
路１７と大気圧ポート１８とが連通して摩擦係合
機構における締結油圧が低下する。一方、スロツ
トル弁全閉状態で乗員によるシフトレバーのセレ
クト操作直後にアクセルペダルの踏み込みが行な
われると、この時点で電磁弁１１が制御ユニツト
１３からの制御信号を断たれるので油路１７と大
気ポート１８とを遮断する閉状態となるため、こ
れ以降は制御ユニツト１３によつて電磁弁１１が
作動指令を受けないときの油圧の上昇のみが見込
まれ、エンジンの空吹かしがなくなつて、摩擦係
合機構におけるクラツチの摩耗を大幅に軽減する
ことができる。

なお、実施例で採用されたアイドリング検出手
段としてのスロツトル弁開度センサ２０に加え
て、スロツトル弁開放速度センサを採用すること
によつて、セレクトシヨツクのみならず、スロツ
トル弁を1/3，1/2等の途中の開度から急踏み込み
した時のダウンシフトシヨツク低減制御を行う際
にもエンジン空吹きを防止することも可能とな
る。

（考案の効果） 上記したことから理解されるように、本考案に
よる自動変速機の油圧制御装置は、摩擦係合機構
において係合が行われている過程で係合油圧を、
エンジンのアイドリング状態時に一時的に低下さ
せるように構成しているので、エンジンの空吹き
が防止されて摩擦係合機構の摩耗を大幅に軽減で
きる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案による自動変速機の油圧制御装
置の一実施例を示す構成図、第２図は従来の自動
変速機の油圧制御装置の一部を概略的に示す断面
図、第３図は本出願人の先願による自動変速機の
油圧制御装置の構成図、第４図は上記従来例と先
願の各装置の自動変速機出力軸トルクと時間の関
係を示す性能曲線図である。 ｛１１……電磁弁、１２……弁体｝（制御弁）、
１３……制御ユニツト、１４……電圧センサ、１
７……摩擦係合機構に連通する油路、１８……大
気圧ポート（またはドレンポート）、２０……ス
ロツトル弁開度センサ（アイドリング検出手段）。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 変速状態を切り換える摩擦係合機構に油圧を供
   給する油路を、ドレンポートに対して開放又は遮
   断すべく開閉作動する制御弁と、 該制御弁に対して、前記摩擦係合機構の係合過
   程で該制御弁を開放させて係合油圧を一時的に低
   下させる制御信号を出力する制御ユニツトと、を
   有する自動変速機の油圧制御装置において、 エンジンのアイドリング状態を検出するアイド
   リング検出手段を設け、 該アイドリング検出手段からの検出信号を前記
   制御ユニツトに入力し、前記アイドリング検出手
   段がアイドリング状態を検出した時に、前記制御
   弁を開放させるように前記制御ユニツトを構成し
   たことを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。