JPH0535757B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

〔産業上の利用分野〕 この発明は、摺動面兼金属加工油剤およびこれ
を使用する工作機械の潤滑方法に関し、さらに詳
しく言うと、工作機械の摺動面油と切削油剤との
要求特性を同時に満たし両油の混合による性能低
下、工作機能の作動不良を防止する兼用油剤およ
びその使用方法に関する。 〔従来の技術およびその問題点〕 一般に工作機械に使用する摺動面油と切削・研
削油剤等の金属加工油剤とは、その組成が異な
り、しかも機械設計上両油剤が互いに混入し易い
設計になつている。このため、他油の混入による
性能低下、作動不良を生ずることが多いという問
題点があつた。 この問題点を解決する方法として、本出願人
は、鉱油合成油等の潤滑油に、特定の長鎖ジカル
ボン酸を配合して兼用油剤を提案した（特願昭59
−262920号）。 該兼用油剤は、前記問題点を基本的に解消した
優れた兼用油ではあるが、摺動面特製などにおい
てさらに改良する余地を有している。 ［発明の目的］ この発明は、前記事情に基づいてなされたもの
である。 すなわち、この発明の目的は、前記問題点を解
決するとともに前記特願昭59−262920号の発明を
改良し、摺動面油と切削・研削油剤等の金属加工
油剤とを使用する工作機械、とくに、摺動面油を
全損式で、切削・研削油剤を循環式で使用する工
作機械の潤滑システムで、両油を基本的に同一組
成して使用（たとえば、摺動面油として原液を用
い、切削・研削油剤としてそのエマルジヨンとし
て用いる。）した場合でも、摺動面油としての性
能および切削・研削油剤としての性能の両性能に
著しく優れ、切削油剤に摺動面油が互いに混入し
てもその性能に支障を生じることがない新規な兼
用油を提供することにある。 〔前記目的を達成するための手段〕 前記問題点を解決し、前記目的を達成するため
のこの第１の発明の概要は、炭素数16〜24の二塩
基酸とＮ−（ヒドロキシアルキル）ピペラジン化
合物との反応により得られる塩及び縮合反応生成
物の少なくとも１種と、潤滑油と、乳化剤とを含
有することを特徴とする摺動面兼金属加工油剤で
あり、 第２の発明の概要は、炭素数16〜24の二塩基酸
とＮ−（ヒドロキシアルキル）ピペラジン化合物
との反応により得られる塩及び縮合反応生成物の
少なくとも１種と、潤滑油と、極圧剤および／ま
たは油性剤と、乳化剤とを含有することを特徴と
する摺動面兼金属加工油剤であり、 および、第３の発明の概要は、炭素数16〜24の
二塩基酸とＮ−（ヒドロキシアルキル）ピペラジ
ン化合物との反応により得られる塩及び縮合反応
生成物の少なくとも１種と、潤滑油と、乳化剤
と、要すれば極圧剤および／または油性剤とを含
有する摺動面兼金属加工油剤を工作機械の摺動面
に使用し、この摺動面兼金属加工油剤の稀釈液を
金属加工部位に使用することを特徴とする工作機
械の潤滑方法である。 前記潤滑油としては、特に制限はなく、石油も
しくは鉱油系潤滑油（パラフイン系油および／ま
たはナフテン系油など）、非石油系潤滑油（合成
潤滑油、動植物油類など）等、また、軽質潤滑
油、中質潤滑油、重質潤滑油等、またこれらの基
油である鉱油、合成油、動植物油等のいずれのも
のも使用することができるが、粘度が、５〜
500cst（40℃）の範囲にあるものが好ましい。 より具体的に言うと、たとえば、金属加工用潤
滑油（たとえば、圧延油、切削、研削油、塑性加
工油、プレス油、引抜き用潤滑油など）、作動用
潤滑油（たとえば、航空作動油、自動車ブレーキ
油、油圧作動油、トルクコンバータ油など）、さ
び止め潤滑油、工業用潤滑油、スピンドル油、冷
凍機油、ダイナモ油、タービン油、マシン油、シ
リンダ油、各種ギヤ油、自動変速油、各種内燃機
関用潤滑油、各種摺動面油等、もしくはこれらに
使用される鉱油、合成油、動植物油等を挙げるこ
とができる。 これらの中でも、たとえば、切削油、研削油、
切削、研削油・各種摺動面油等、もしくはこれら
に使用される鉱油、合成油、等が好ましく、特
に、循環式用切削・研削油、全損式用摺動面油
等、もしくは、これらに使用される鉱油、合成油
等が好ましい。 これらの潤滑油は、一種単独で使用しても、２
種以上を混合して使用してもよく、また必要によ
りエマルジヨン状態にあるものを使用することも
できる。 なお、これらの潤滑油は、酸化防止剤、消泡
剤、銅不活性化剤、清浄剤、粘度調整剤、さび止
め用添加剤、また場合によつては、極圧剤、潤性
剤、はつ水剤、粘着剤、離しよう防止剤、着色剤
等の添加剤を含有するものであつてもよい。 前記炭素数16〜24の長鎖二塩基酸としては、 例えば式 HOOC・（CH₂）₆・CH＝CH（CH₂）₆COOH、 HOOC・（CH₂）₆・CH＝CH（CH₂）₂CH＝CH・
（CH₂）₆COOH、 HOOC・（CH₂）₆−Ｃ（CH₃）＝CH−（CH₂）₂−CH
＝Ｃ（CH₃）−（CH₂）₆−COOH などを挙げることができる。 前記Ｎ−（ヒドロキシアルキル）ピペラジン化
合物は、次の第〔１〕式、 （ただし、前記〔１〕式中、R¹、R²、R³、R⁴、
R⁵、R⁶、R⁷、R⁸は、それぞれ、水素原子；アル
キル基、アリール基、アルアリール基、アラルキ
ル基等の炭化水素基、水酸基、ハロゲン原子、ア
ルコキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジア
ルキルアミノ基；アルキルアミノアルキル基、ジ
アルキルアミノアルキル基、ヒドロキシアルキル
基、ヒドロキシアリール基、アミノアリール基、
アルキルアミノアリール基、アルコキシアルキル
基、アルコキシアリール基等のハロゲン原子およ
び／または水酸基および／またはアルコキシ基お
よび／またはアミノ基置換炭素水素基等を意味す
る。また、第〔１〕式中Ｙは、OHを意味する。
また、第〔１〕式中のｍは１〜５の整数、好まし
くは、２または３を意味する。）で表わされるＮ
−（ヒドロキシアルキル）ピペラジン化合物であ
る。 前記第〔１〕式の、R¹、R²、R³、R⁴、R⁵、
R⁶、R⁷、R⁸に関しては、水素原子または炭素数
が１〜５のアルキル基（とくに、メチル基）また
は、炭素数が１〜５のヒドロキシアルキル基（と
くに、２−ヒドロキシエチル基）であるものが好
ましい。 前記第〔１〕式中、ＹすなわちOHの−
CmH₂m−基中の置換位置は、特に限定されるも
のではないが、ｍが２〜５の整数の場合は、−
CH₂−Cm_-1H₂（m_-1）−Ｙで表わされる位置にあ
るものが好適であり、−CH₂CHY−R′（ここで
R′は、水素原子または炭素数１〜３のアルキル
基を表わす。）で示される位置に置換しているも
のが特に好適に使用することができる。 また、Ｙとしては、OHが特に好適である。前
記〔１〕式で示されるＮ−（ヒドロキシアルキル）
ピペラジン化合物の中で比較的好適に使用するこ
とができるピペラジン化合物の具体例としては、
たとえば、Ｎ−（ヒドロキシメチル）ピペラジン、
Ｎ−（ヒドロキシメチル）−２−メチルピペラジ
ン、Ｎ−（２−ヒドロキシエチル）ピペラジン
（第〔２〕式）、Ｎ−（２−ヒドロキシエチル）−２
メチルピペラジン、 Ｎ−（２−ヒドロキシエチル）−２−ヒドロキシエ
チルピペラジン、Ｎ−（２−ヒドロキシエチル）−
２−アミノエチルピペラジン、Ｎ−（２−ヒドロ
キシエチル）−２，３−ジメチルピペラジン、Ｎ
−（２−ヒドロキシプロピル）ピペラジン、Ｎ−
（２−ヒドロキシプロピル）−２−メチルピペラジ
ン、Ｎ−（２−ヒドロキシプロピル）−２−ヒドロ
キシエチルピペラジン、Ｎ−（３−ヒドロキシプ
ロピル）ピペラジン、Ｎ−（３−ヒドロキシプロ
ピル）−２−メチルピペラジン、Ｎ−（２−ヒドロ
キシブチル）ピペラジン、Ｎ−（２−ヒドロキシ
ブチル）−２−メチルピペラジン、Ｎ−（２−ヒド
ロキシブチル）−２−ヒドロキシエチルピペラジ
ン、Ｎ−（４−ヒドロキシブチル）ピペラジン、
Ｎ−（２−ヒドロキシペンチル）ピペラジン、Ｎ
−（５−ヒドロキシペンチル）ピペラジン、Ｎ−
（２−ヒドロキシ−２−メチルプロピル）ピペラ
ジン、Ｎ−（２−ヒドロキシイソアミル）ピペラ
ジン等のＮ−ヒドロキシアルキルピペラジン類；
等を挙げることができる。 これらの中でも、Ｎ−（２−ヒドロキシアルキ
ル）ピペラジンが好ましく、特に、Ｎ−（２−ヒ
ドロキシエチル）ピペラジンおよびＮ−（２−ヒ
ドロキシプロピル）ピペラジンが好ましい。 この発明の方法においては、前記Ｎ−（ヒドロ
キシアルキル）ピペラジン化合物（〔B₁〕成分）
と前記炭素数16〜24の長鎖二塩基酸（〔B₂〕成
分）とを配合し、これらの塩及び縮合反応生成物
の少なくとも１種を生成せしめて、これらの塩及
び縮合反応生成物の少なくとも１種もしくはこれ
らの塩及び縮合反応生成物の少なくとも１種を含
有する液をこの発明の摺動面兼金属加工油剤の調
製に使用する。 前記〔B₁〕成分と〔B₂〕成分との配合割合は、
〔B₂〕成分１モル当り、〔B₁〕成分を、通常、0.5
〜10モル、好ましくは１〜５モルに設定する。 前記〔B₁〕成分と〔B₂〕成分との反応は、た
とえば、反応温度を室温〜200℃、好ましくは30
〜100℃、反応時間を５分間〜120分間、好ましく
は10分間〜60分間に設定して行うことができる。 前記乳化剤としては、特に制限はなく、例えば
脂肪族せつけん、ナフテン酸せつけん、長鎖アル
コール硫酸エステル塩、脂肪族アルキル硫酸エス
テル塩などのアニオン系界面活性剤；長鎖第一ア
ミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩など
のカチオン系界面活性剤；ポリオキシエチレンア
ルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフ
エニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエ
ステル、ポリオキシエチレンアルキルフエニルエ
ステルなどの非イオン系界面活性剤、さらにジポ
リオキシエチレンアルキルエーテルホスフエー
ト、トリポリオキシエチレンアルキルエーテルホ
スフエート、トリポリオキシエチレンアルキルフ
エニルエーテルホスフエートなどのリン含有界面
活性剤等を挙げることができる。これら乳化剤は
全量に対し５〜30重量％、好ましくは10〜20重量
％配合される。ここで、この乳化剤の配合量が５
重量％未満であると、得られる潤滑組成物が分離
してしまうため、摺動面油剤として用いることが
できなくなるとともに金属加工液の乳化安定性が
悪く金属加工に用いることができなくなる。ま
た、30重量％を超えて配合すると、摺動面油剤と
して用いた場合、ステイツクスリツプが発生する
ので好ましくない。 前記極圧剤としては、特に制限はなく、公知の
潤滑油に使用される極圧剤を使用することができ
る。 より具体的には、たとえば、硫化ラード、硫化
抹香鯨油等のいおう化合物系極圧剤、リン酸エス
テル、リン酸エステルアミン塩等の化合物系極圧
剤、塩素化合物系極圧剤等を挙げることができ
る。 前記油性剤としては、特に制限はなく、公知の
潤滑油に使用される油性剤を使用することができ
る。 より具体的には、たとえば高級アルコール、高
級ケトン、高級脂肪酸エステル、油脂等の３価の
アルコールの脂肪酸エステル、リン酸エステル、
リン酸エステルアミン塩等を挙げることができ
る。 なお、一般に油性剤、極圧剤は、いずれも境界
潤滑性能を向上させるためのものであり、両者を
明確に定着づけて確然と区別することは難かしい
とされる〔潤滑ハンドブツク：日本潤滑学会編、
養賢堂（昭和57年）〕 したがつて、前記例示の極圧剤と前記例示の油
性剤とを、合せて極圧剤・油性剤とみなすことが
できる。 前記例示の極圧剤・油性剤の中でも、たとえば
硫化ラード、硫化抹香鯨油、リン酸エステル、リ
ン酸エステルアミン塩、油脂等の多価アルコール
の脂肪酸エステル、高級脂肪酸エステル類等が好
ましく、特に硫化ラード、リン酸エステルアミン
塩等が好ましい。 これらの極圧剤、油性剤もしくは極圧剤・油性
剤は、１種単独で用いても、２種以上を組み合せ
て使用してもよい。 この発明の摺動面兼金属加工油剤は、前記潤滑
油（〔Ａ〕成分）と、前記〔B₁〕成分と前記
〔B₂〕成分とから調製される前記塩及び縮合反応
生成物の少なくとも１種（〔Ｂ〕成分）と、前記
極圧剤および／または前記油性剤、すなわち前記
極圧剤・油性剤（〔Ｃ〕成分）と、前記乳化剤
（〔Ｄ〕成分）とを配合するか、あるいは前記
〔Ａ〕成分と、前記〔Ｂ〕成分と、前記〔Ｄ〕成
分とを配合することによつて製造することができ
る。 これらの各成分の配合割合は、以下のように設
定する。 前記〔Ｂ〕成分の配合割合が、２重量部より小
さいと、防錆性、耐菌性、耐ステイン性、耐腐
性、耐摩耗性が十分でなかつたり、摺動面油とし
て用いたときに、動摩擦係数が低くならなかつた
り、面圧が高い場合にステイツクスリツプを生じ
ることがあり、一方、60重量部を超えて配合して
も効果の向上が期待できないので、経済上好まし
くない。 すなわち、〔Ａ〕成分に〔Ｂ〕成分を２〜60重
量％、好ましくは５〜30重量％、〔Ｃ〕成分を０
〜30重量％、好ましくは２〜20重量％、〔Ｄ〕成
分を３〜30重量％、好ましくは５〜20重量％に設
定するのが望ましい。なお前記〔Ａ〕〜〔Ｄ〕成
分の合計が100重量％となることはいうまでもな
い。 前記〔Ｄ〕成分の配合割合が、３重量％より小
さいと、金属加工液の乳化安定性が悪化し、一
方、30重量％より大きいと、潤滑性が低下するこ
とがある。 前記〔Ｃ〕成分の配合割合が、30重量％より大
きいと、オイルステイン、腐食を生じ易くなる。
なお、〔Ｃ〕成分は、一般に主として境界潤滑特
性の向上を目的として配合されるものであるが、
この発明の摺動面兼金属加工油剤の場合には、
〔Ｃ〕成分を含有しないか、あるいは少量しか含
有しない場合においても、優れた境界潤滑特性が
得られる。この理由は、現時点で明確ではない
が、〔Ｂ〕成分自身が、その性能を兼ね備えてい
るものと推測できる。 前記各成分の配合の順序、方法は、特に制限は
なく、各成分を同時に配合しても、段階的に配合
しても、部分的に組合せて配合されたものに他の
成分を配合してもよい。たとえば、〔Ｃ〕成分を
含有する摺動面兼金属加工油剤を製造する場合に
は、使用する潤滑油が、すでに〔Ｃ〕成分を含有
しているものであれば、これと〔Ｂ〕成分と
〔Ｄ〕成分とを配合して製造することができ、さ
らに必要により別途に〔Ｃ〕成分を配合して製造
することもできる。 この発明の摺動面兼金属加工油剤は、酸化防止
剤、消泡剤、銅不活性化剤等の通常機械工作用潤
滑油に添加される添加剤を含有することが望まし
い。また、必要により、上記の他の添加剤、たと
えば、清浄剤、粘度調整剤（たとえば、粘度指数
向上剤、流動点降下剤など）、さび止め用添加剤、
はつ水剤、粘着剤、離しよう防止剤、着色剤等を
含有するものがあつてもよい。これらの添加剤の
添加の順序、方法には特に制限はなく、たとえ
ば、前記潤滑剤のあらかじめ含有されているもの
であつても、新たに別途に添加されるものであつ
てもよい。 前記酸化防止剤としては、たとえば２，６−ジ
−ターシヤリ−ブチルパラクレゾール等のフエノ
ール系化合物、フエニル−α−ナフチルアミン等
のアミン化合物、その他、いおう系化合物、リン
系化合物等を挙げることができる。 前記消泡剤としては、ジメチルポリシロキサン
等のシリコーン化合物の他、アルコール系化合
物、エステル系化合物などが挙げられる。 前記銅不活性剤としては、ベンゾトリアゾール
等のトリアゾール化合物の他、チアゾール系化合
物を挙げることができる。 以上のような方法で得られた、この発明の摺動
面兼金属加工油剤は、そのまま原液を摺動面油と
して使用し、原液と水等とを混合した水性混合
液、乳化液を金属加工液として使用することがで
きる。 該水性混合液もしくは乳化液は、たとえば、前
記原液１重量部あたり、水を２〜100重量部配合
して得ることができる。 以上のような方法で製造することができるこの
発明の摺動面兼金属加工油剤は、原液を摺動面油
として用いた場合、たとえば動摩擦係数が低く、
しかも摺動面の面圧が高い場合にも、ステイツク
スリツプを生じることがない、等の優れた性能を
有しており、一方、その原液または水で稀釈した
液を切削・研削油剤として用いた場合、たとえ
ば、耐摩耗性に著しく優れ、乳化・可溶化性が高
く、その安定性に優れているので、水系油剤とし
て好適に使用することができる等の優れた性能を
有している。 さらに、この発明の摺動面兼金属加工油剤は、
上記の利点に加えて、摺動面油、金属加工油剤の
いずれに使用しても、防錆性、耐オイルステイン
性、耐腐食性、耐菌性（耐バクテリア性、耐カビ
性）、耐腐敗性等の様々の２次的性能に優れてい
る。 以上のように、この発明の摺動面兼金属加工油
剤は、摺動面油としての性能に優れると同時に切
削・研削油剤としての性能にも優れた兼用油であ
り、従つて、摺動面油と切削・研削油剤とを使用
する工作機械、とくに摺動面油を全損式で、切
削・研削油剤を循環式で使用する工作機械の潤滑
システムにおいて、摺動面油兼切削・研削油剤と
して好適に使用することができる。この際、たと
えば、摺動面油として、この発明の摺動面兼金属
加工油剤の原液を用い、一方、切削・研削油とし
て、その乳化液を用いることができる。このよう
に、摺動面油と切削・研削油剤等の金属加工油剤
に基本的に同一組成の優れた兼用油を使用するこ
とによつて、使用中に油剤が互いに混入すること
があつても、それぞれの油剤の性能が低下した
り、作動不良が生じる等の問題点を解消すること
ができる。 すなわち、この発明の摺動面兼金属加工油剤
は、摺動面油としても、切削・研削油等の金属加
工油剤としても、また、これらの兼用油として
も、好適に使用することができる優れた工作機械
用潤滑油剤である。 〔発明の効果〕 この発明によると、動摩擦係数が低く、しか
も、摺動面の面圧が高い場合においてもステイツ
クスリツプを生じることがないなどの摺動面油と
しての性能が著しく向上した摺動面油であり、同
時に、耐摩耗性、乳化・可溶化能、およびその安
定性が著しく向上した切削・研削油剤等の金属加
工油剤であり、さらに、これらの性能に加えて、
防錆性、耐腐食性、耐オイルステイン性、耐菌性
（耐バクテリア性、耐カビ性）、耐腐敗性等の２次
的性能に著しく優れた摺動面油、金属加工油剤で
あり、したがつて、原液を摺動面油とし、原液ま
たはその水稀釈液を切削・研削油剤等の金属加工
油剤としても、それぞれ好適に使用することがで
き、しかも、摺動面油と切削・研削加工油剤等の
金属加工油剤とに兼用して使用したときに、使用
中に油剤が互いに混入したとしても、それぞれの
性能を低下を生じたり、作動不良になることがな
いので、兼用油としては好適に使用することがで
きる等の優れた利点を有する摺動面兼金属加工油
剤を提供することができる。 また、この発明の摺動面兼金属加工油剤は、通
常、潤滑油の境界潤滑特性等の特性の向上に必須
とされる極圧剤などの油性剤を必ずしも含有しな
い場合あるいは少量しか含有しない場合において
も、優れた特性を有しているので、経済上、製造
上有利である。 以上の、優れた諸特性、使用上の利点などは、
特定のＮ−（ヒドロキシアルキル）ピペラジン化
合物と特定の二塩基酸との反応により得られる塩
及び縮合反応生成物の少なくとも１種を使用し、
かつ各成分を特定な割合で配合することによつて
得られたものである。 〔実施例〕 実施例１〜６、比較例１〜５ 第１表に示す各成分を、表示の配合割合で配合
し、兼用油を調製した。この兼用油原液および乳
化液を用いて以下の試験を行なつた。 ［試験方法］ 摺動面試験 出光法［ASTM Ｄ 2877−70に準拠して条
件を以下のようにした方法（出光トライボレビ
ユーVol.1No.２ P141〜144に記載されている
方法）］により行ない動摩擦係数（μ）とステ
イツクスリツプの発生の有無を測定した。な
お、条件は次の通りである。 面圧：0.54Kg／cm² 滑り速度：12mm／minおよび160mm／min すべり面材質：ベツト S45C研磨鋼板（JIS
Ｇ 4051） サドルFC−20 キサゲ面（JIS Ｇ 5501） オイルステイン性能試験 上記潤滑組成物の原液に蒸留水５重量％を加
えて撹拌し、エマルジヨン化した液を２枚の
FC−20板（JIS Ｇ 5501）（30×70×10mm）に
はさんで60℃の温度で５日間保持した。開放
後、オイルステインの有無を観察した。 銅板腐食試験 JIS Ｋ 2513に準じて行なつた。但し、条件
は50℃×３時間で行なつた。 切削試験 超硬チツプ（P20……JIS Ｂ 4104）を使用
し、旋盤により切削する試験を行ない、このと
きの工具摩耗（摩耗幅）を計測した。なお、試
料は３％エマルジヨンを使用し、切削条件は以
下の通りであつた。 材料：アルミ合金鋳物 AC2A（JIS Ｈ 5202） 切削速度：100ｍ／min 送り量：0.1mm／rev. 切り込み量：２mm 切削距離：4800ｍ 初期乳化安定性試験 100mlのメスシリンダーに水97mlを取り、そ
の水面上に上記潤滑組成物の原液３mlを投入
し、30分後上層に油（原液）が浮遊、分離して
いないか（初期乳化性）を観察した。また、水
中に油剤が分散または溶解した場合（容量）
（溶解性）を測定した。なお、本発明に適用し
うる原液は上層に油が分散せず、油剤の分散ま
たは溶解割合が30ml以上であることが必要であ
る。 防錆試験 各エマルジヨン濃度の試料を用いて切削試験
を行ない、７日後被削材（切粉）の錆の有無を
観察した。なお、切削試験はボール盤でエンド
ミル工具を用い、FCD−40材（JIS Ｇ 5502）
を切削することにより行なつた。

【表】

【表】

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 炭素数16〜24の二塩基酸とＮ−（ヒドロキシ
   アルキル）ピペラジン化合物との反応により得ら
   れる塩及び縮合反応生成物の少なくとも１種と、
   潤滑油と、乳化剤とを含有することを特徴とする
   摺動面兼金属加工油剤。 ２ 炭素数16〜24の二塩基酸とＮ−（ヒドロキシ
   アルキル）ピペラジン化合物との反応により得ら
   れる塩及び縮合反応生成物の少なくとも１種と、
   潤滑油と、極圧剤および／または油性剤と、乳化
   剤とを含有することを特徴とする摺動面兼金属加
   工油剤。 ３ 炭素数16〜24の二塩基酸とＮ−（ヒドロキシ
   アルキル）ピペラジン化合物との反応により得ら
   れる塩及び縮合反応生成物の少なくとも１種と、
   潤滑油と、極圧剤および／または油性剤と、乳化
   剤とを含有する摺動面兼金属加工油剤を工作機械
   の摺動面に使用し、この摺動面兼金属加工油剤の
   希釈液を金属加工部位に使用することを特徴とす
   る工作機械の潤滑方法。