JPH0527408U - ボールネジ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 動作特性に優れ高精度な作動が可能であると
ともに、負荷容量も大きく高剛性であり、かつ動作音が
静寂な構造を備えたボールネジを提供する。 【構成】 ねじ軸１とボールナット２との間の循環経路
３全長にわたって、帯状リテーナ５を循環移動可能に配
し、この帯状リテーナ５の多数のボール用ポケット内
に、ボール４を回転可能にそれぞれ保持する。各ボール
４は、ボールポケット間部分により相互の接触が防止さ
れて、円滑な転動による高い動作特性を確保するととも
に、ボール４相互の接触音の発生もなく、また、総ボー
ル形式のボールネジと同程度のボール４配設数を確保す
ることができる。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案はボールネジに関し、さらに詳細には、ねじ軸とボールナットとの間 に循環可能に介装されてなる多数のボールを保持するためのリテーナを備えたボ ールネジに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】

従来のボールネジとしては、ねじ軸とボールナットにそれぞれ設けられた螺 旋溝により形成される循環経路内に、等径のボールが密接して連続的に配されて なる、いわゆる総ボール形式のもの、および上記循環経路内において、荷重を 支承する正規の径寸法のボール間に、このボールより径寸法の小さなスペーサボ ールが交互に配されてなる、いわゆるスペーサボール形式のものが代表的なもの として挙げられる。

【０００３】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、これらいずれの構造においても以下に述べるような問題点があ り、その改良が要望されていた。 (1) の総ボール形式のボールネジにおいては、図７に示すように、ボールａ， ａ，…が密接して配されていることから、ボール同士が互いに反対方向へ回転接 触（すべり接触）して相互の転動を妨げ、作動効率の低下を招くとともに、回転 トルクに変動を生じて回転トルクムラも大きく、動作特性が悪い。これがため、 なめらかなネジ運動ができず、高い精度を要する作動部分にも適さない。

【０００４】 (2) のスペーサボール形式のボールネジにおいては、スペーサボールの作用に よりボール同士がころがり接触することから、総ボール形式に比較して動作特性 には優れるものの、荷重を受けるボールの数がほぼ半減することになり、負荷容 量が小さく剛性に劣る。 (3) およびの両者共に、相隣るボール同士が互いに衝突するので、動作時の 回転音（接触音）が大きく、特に高速回転による高速送り運転時に顕著である。

【０００５】 本考案は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、動作特性に優 れ高精度な作動が可能であるとともに、負荷容量も大きく高剛性であり、しかも 動作音が静寂な構造を備えたボールネジの提供を目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するため、本考案のボールネジは、ボールの循環経路内に、可 撓性を有する帯状リテーナが循環経路全長にわたって循環移動可能に設けられ、 該帯状リテーナに、多数のボール用ポケットが全長にわたり所定間隔をもって設 けられ、これらボール用ポケットに、前記ボールが回転可能に保持されているこ とを特徴とする。

【０００７】 より具体的には、前記ボールナットに設けられたボール循環用パイプの内径部 に、前記帯状リテーナの両側縁部を案内する一対の案内溝が全長にわたって設け られ、これら一対の案内溝の両端は、前記ねじ軸の外径面と前記ボールナットの 内径面との間に形成された環状空間に連続されている。また、前記帯状リテーナ の両側縁部には、リテーナのねじり変形を許容する切欠きが所定間隔をもって設 けられている。これらの切欠きは、相隣るボールポケット間位置に、ボールポケ ットの配設ピッチと同ピッチで設けられている。

【０００８】

【作用】

循環経路内を循環移動する各ボールを、帯状リテーナのボール用ポケット内に 保持することにより、多数のボールの配設を可能とする。各ボールは、ボールポ ケット間部分により相互の接触が防止されて、円滑な転動による高い動作特性を 確保するとともに、ボール相互の接触音の発生もない。

【０００９】 帯状リテーナは、ボールナットに設けられたボール循環用パイプの一対の案内 溝とねじ軸およびボールナット間の環状空間とにより案内されて、循環経路内を 円滑に循環移動する。

【００１０】

【実施例】

以下、本考案に係る実施例を図面に基づいて説明する。 本考案に係るボールネジを図１ないし図４に示し、該ボールネジは、ねじ軸１ とボールナット２の間に形成された循環経路３内に多数のボール４，４，…が循 環可能に介装されてなるとともに、これらのボール４，４，…は帯状リテーナ５ により回転可能に保持されている。

【００１１】 上記循環経路３は、上記ねじ軸１の外径部とボールナット２の内径部との間に 形成された螺旋円筒状の荷重負荷圏と、上記ボールナット２の外径部に取り付け られたボール循環用パイプ６により形成される循環路とからなる。

【００１２】 つまり、上記ねじ軸１の外径面１ａに断面円弧状の螺旋溝１ｂが設けられると ともに、上記ボールナット２の内径面２ａに断面円弧状の螺旋溝２ｂが上記螺旋 溝１ｂに対応して設けられ、これら両螺旋溝１ｂ，２ｂにより上記荷重負荷圏が 形成されてなり、この荷重負荷圏の両端が上記循環路に両端にそれぞれ連続され ている。

【００１３】 上記帯状リテーナ５は、上記循環経路３内での各ボール４の転動移動を円滑に するためのもので、循環経路３全長にわたって循環移動可能に設けられている（ 図５参照）。該帯状リテーナ５は弾性的な可撓性を有し、例えば合成樹脂製シー ト材料等の柔軟性のある材料から形成されている。

【００１４】 この帯状リテーナ５は、上記循環経路３の内径寸法（ほぼボール４の外径寸法 に対応）より大きな幅寸法を有するとともに、図６に示すように、多数のボール 用ポケット７，７，…が長手方向へ全長にわたり所定間隔をもって設けられてい る。そして、これらボール用ポケット７，７，…には、ボール４，４，…が回転 可能に収納保持されており、相隣るボール４，４同士は、各ボール用ポケット７ ，７間部分にある隔離部５ａにより直接接触しないようにされている。

【００１５】 また、上記帯状リテーナ５の両側縁部５ｂ，５ｂには、該リテーナ５のねじり 変形を許容するための切欠き５ｃ，５ｃ，…が、所定間隔をもって多数設けられ ている。これらの切欠き５ｃ，５ｃ，…は円弧状のもので、相隣るボールポケッ ト７，７間の長手方向中央位置において、該ボール用ポケット７の配設ピッチと 同一ピッチで設けられている。このボール用ポケット７の配設ピッチは、ボール ネジの用途やボール４の外径寸法等を考慮しつつ、できるだけ多数のボール４， ４，…を保持できるように設定される。

【００１６】 また、上記循環経路３には、帯状リテーナ５の両側縁部５ｂ，５ｂを案内する 案内部が全長にわたって設けられている。つまり、図３に示すように、上記ボー ル循環用パイプ６の内径面６ａに、上記帯状リテーナ５の両側縁部５ｂ，５ｂを 案内する一対の案内溝８，８が全長にわたって設けられるとともに、これら案内 溝６ａ，６ａの両端が、上記ねじ軸１の外径面１ａと上記ボールナット２の内径 面２ａとの間に形成された環状空間９（図４参照）に連続されている。これによ り、上記帯状リテーナ５は、これら案内部８，８，９に案内されながら、循環経 路３内を循環移動される。

【００１７】 しかして、以上のように構成されたボールネジにおいて、ねじ軸１とボールナ ット２が相対的に回転すると、これら両者１，２は、循環経路３内を循環移動す る多数のボール４，４，…の作用により相対螺旋運動（ネジ運動）をして、所期 の軸方向運動がなされることとなる。

【００１８】 この場合、上記循環経路３内を循環移動する各ボール４は、帯状リテーナ５の ボール用ポケット７内に回転保持されて、相隣るボール４，４相互の接触が隔離 部５ａにより防止されるため、すべてのボール４，４，…が円滑に転動して、ボ ールネジの高い動作特性が確保されるとともに、ボール４，４相互の接触音も発 生しない。

【００１９】 なお、本考案は上述の実施例に限定されることなく種々設計変更可能である。 例えば、図示例においては、帯状リテーナ５のねじり変形を許容するための切欠 き５ｃ，５ｃ，…の形状は円弧状とされているが、応力集中が生じない範囲で他 の形状に変形可能である。

【００２０】

【考案の効果】

以上詳述したように、本考案によれば、以下に述べるような種々のすぐれた効 果が得られる。

【００２１】 (1) ボールの循環経路内に、可撓性を有する帯状リテーナが循環経路全長にわた って循環移動可能に設けられ、該帯状リテーナに、多数のボール用ポケットが全 長にわたり所定間隔をもって設けられ、これらボール用ポケットに、ボールが回 転可能に保持されているから、動作特性に優れ高精度な作動が可能である。

【００２２】 すなわち、循環経路内を循環移動する各ボールは、ボールポケット間部分によ り相互の接触が防止されるため、相隣るボール同士が相互の転動を妨げられるこ とはなく、高い作動効率が得られるとともに、回転トルクに変動を生じ難くて回 転トルクムラがほとんどなく、動作特性に優れる。 したがって、なめらかなネジ運動が可能で、高い精度を要する作動部分、例え ば、半導体の搬送装置のように精密な位置決めが必要な部分にも最適である。

【００２３】 (2) 帯状リテーナのボール用ポケット内にボールが回転保持される構造であるた め、ボールポケット間部分の長手方向寸法を小さく設定することにより、相隣る ボール同士を近接して配することも可能で、従来の総ボール形式のものと同程度 のボール配設数を確保することができる。これにより、大きな負荷容量を確保で き、剛性に優れたボールネジを提供することができる。

【００２４】 (3) また、相隣るボール同士が互いに衝突することがないので、動作時にボール 同士の接触音が生じることはなく、高い静寂性を確保することができ、特に高速 回転による高速送りに最適に使用できる。

【００２５】 (4) ボールナットに設けられたボール循環用パイプの内径部に、帯状リテーナの 両側縁部を案内する一対の案内溝が全長にわたって設けられ、これら一対の案内 溝の両端は、ねじ軸の外径面とボールナットの内径面との間に形成された環状空 間に連続されているから、帯状リテーナは、これらの案内溝と環状空間とにより 案内されて、循環経路内を円滑に循環移動することができるとともに、大きくね じれを生じることもなく、寿命が長い。

【００２６】 (5) 帯状リテーナの両側縁部に、リテーナのねじり変形を許容する多数の切欠き が所定間隔をもって設けられ、リテーナのねじり変形を許容する切欠きが所定間 隔をもって設けられているから、帯状リテーナに無理なねじれ現象が生じること を有効に防止することができ、この点でも長い寿命を確保することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係る一実施例であるボールネジを示す
正面図である。

【図２】図１におけるII-II 線に沿った同ボールネジの
断面図である。

【図３】図１におけるIII-III 線に沿った同ボールネジ
の断面図である。

【図４】図１におけるIV-IV 線に沿った同ボールネジの
断面図である。

【図５】同ボールネジの要部である帯状リテーナとボー
ルの循環経路に沿った状態を示す斜視図であり、ねじ軸
を仮想線で示している。

【図６】同ボールネジの帯状リテーナの一部とボールを
拡大して示す斜視図である。

【図７】従来の総ボール形式のボールネジにおける相隣
るボール同士の転動状態を示す側面図である。

【符号の説明】

１ ねじ軸 １ａ ねじ軸の外径面 １ｂ ねじ軸の螺旋溝 ２ ボールナット ２ａ ボールナットの内径面 ２ｂ ボールナットの螺旋溝 ３ 循環経路 ４ ボール ５ 帯状リテーナ ５ａ 帯状リテーナの隔離部（ボール用ポケット
の間部分） ５ｂ 帯状リテーナの両側縁部 ５ｃ 帯状リテーナの切欠き ６ ボール循環用パイプ ７ ボール用ポケット ８ ボール循環用パイプの案内溝 ９ 環状空間

Claims (3)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 ねじ軸とボールナットとの間に多数のボ
   ールが循環可能に介装されてなるボールネジにおいて、 前記ボールの循環経路内に、可撓性を有する帯状リテー
   ナが循環経路全長にわたって循環移動可能に設けられ、 該帯状リテーナに、多数のボール用ポケットが全長にわ
   たり所定間隔をもって設けられ、 これらボール用ポケットに、前記ボールが回転可能に保
   持されていることを特徴とするボールネジ。
2. 【請求項２】 前記ボールナットに設けられたボール循
   環用パイプの内径部に、前記帯状リテーナの両側縁部を
   案内する一対の案内溝が全長にわたって設けられ、 これら一対の案内溝の両端は、前記ねじ軸の外径面と前
   記ボールナットの内径面との間に形成された環状空間に
   連続されている請求項１記載のボールネジ。
3. 【請求項３】 前記帯状リテーナの両側縁部に、リテー
   ナのねじり変形を許容する多数の切欠きが所定間隔をも
   って設けられ、 該切欠きは、相隣る前記ボールポケット間位置に、ボー
   ルポケットの配設ピッチと同ピッチで設けられている請
   求項１記載のボールネジ。