JPH05231393A - 多翼送風機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 遠心ファンとベルマウスとのクリアランスを
流れる空気の逆流の発生を防止し、また脈動の発生を防
止することで、ファン効率の向上および騒音の低減を図
る多翼送風機を提供する。 【構成】 渦巻き状のケース２２の内部に遠心ファン２
０を収容する。吸込口３６を形成するベルマウス３１
は、吸込口３６の全周の一部に切欠き４０が形成され
る。切欠き４０は、ファン中心とケース２２のノーズ先
端とを結ぶ接線近傍からファン回転方向に向けて中心角
αの範囲に形成される。これにより、吸込口３６のノー
ズ近傍の一部分についてクリアランスを大きくすること
で、脈動を低減するとともに、吸込口３６の残りの部分
についてクリアランスを小さくすることで、逆流の発生
を防止する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、多翼送風機に関するも
ので、詳細には、車両に搭載される空調装置に使用して
好適な多翼送風機に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来より、空調装置などに用いられる多
翼送風機は、例えば特開平２−１４６２９８号公報に示
されるような構成であって、図９に示すように、多数の
ブレード２５をもつ遠心ファン２０がベルマウス３１を
もつ渦巻き状ケース２２の中に収納される構成になって
いる。遠心ファン２０は、底プレート２４と保持リング
２６の間に多数のブレード２５を配設した構造になって
いる。そして、このような従来の多翼送風機では、遠心
ファン２０とケース２２のベルマウス３１とのクリアラ
ンスＣが吸込口３６の全周にわたり一定である。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、本発明者
は、遠心ファン２０とベルマウス３１とのクリアランス
Ｃが変化することにより、ファン送風作用にどのような
影響があるかを実験し、実験検討の結果、次の事項が判
明した。すなわち、遠心ファン２０とベルマウス３１と
のクリアランス近傍の風の流れを可視化してみると、例
えば図９および図１０に示すように、渦巻き状のケース
２２のノーズ３２の近傍でブレード出口から出た空気が
遠心ファン２０とベルマウス３１とのクリアランスＣを
通って吸込側に戻ろうとする逆流は図１０に示す矢印の
ように発生する。この逆流は、図１０に示すＡ、Ｂの領
域で大きく、さらに、ノーズ３２の近傍の領域Ｂでは大
きな脈動が発生し騒音が著しいことが判った。そして、
前記クリアランスＣが小さいとき、流れが大きな脈動を
伴うから騒音が著しくなり、逆に前記クリアランスＣが
大きいときは、吸込口３６の全周にわたり吸込口３６に
戻ろうとする逆流が発生するため、ファン効率が低下す
ることが判明した。

【０００４】本発明は、前記課題を解決するためになさ
れたもので、遠心ファンとベルマウスとのクリアランス
を全周で一様とせず、ノーズ近傍のみで拡大することに
より、ノーズ近傍での脈動の発生を防止するとともに、
ノーズ近傍以外の部分では空気の逆流を阻止してファン
効率の向上および騒音の低減を両立できる多翼送風機を
提供することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため
の本発明による多翼送風機は、駆動力が伝達されるボス
部と、このボス部から径外方向に延びる底プレートと、
この底プレートの外周端近傍から垂直方向に立ち上げら
れるとともに円周方向に沿って設けられる多数のブレー
ドと、前記ブレードの頂部を接続する環状の保持リング
とを有する遠心ファンと、前記遠心ファンを収容すると
ともに、吸込口を形成するベルマウスを有する渦巻き状
ケースを備え、前記遠心ファンと前記ベルマウスとのク
リアランスを、ファン中心と渦巻き状ケースのノーズ先
端とを結ぶ接線近傍からファン回転方向にむけて所定角
度の範囲において拡大することを特徴とする。

【０００６】

【作用】本発明の遠心式多翼送風機によると、吸込口の
ノーズ近傍の所定角度範囲について遠心ファンとベルマ
ウスとの間のクリアランスを大きくすることで、脈動を
低減するとともに、吸込口の残りの部分について遠心フ
ァンとベルマウスとの間のクリアランスを小さくするこ
とで、逆流の発生を防止する。これにより、ファン効率
の向上と騒音の低減が図られる。

【０００７】

【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明
する。車両用空調装置の空気を取り込む送風機に本発明
を適用した第１実施例を図１〜図５に示す。通風系統
は、図５に示すように、車室外の空気を取り入れる外気
取入口２、または車室内の空気を取り入れる内気取入口
３から取り入れられた空気を多翼送風機６の吸込口３６
からケース２２内に取り込み、遠心ファン２０によりエ
バポレータ７に導く。外気取入口２と内気取入口３は回
動自在なダンパ５により開閉される。エバポレータ７の
出口側にはエアミックスダンパ８が設けられ、このエア
ミックスダンパ８によって仕切られる第１流路１８と第
２流路１９のうちの片側の第２流路１９にヒータコア１
７が取り付けられている。エアミックスダンパ８とヒー
タコア１７の出口側に形成されるエアミックスチャンバ
９は、デフロスタ吹出口１３、胸元吹出口１２ならびに
足下吹出口１０に連通している。各吹出口１０、１２、
１３の入口側には該吹出口の開度を調節するダンパ１
４、１５、１６が回動自在に取り付けられている。

【０００８】前記多翼送風機６は、その具体的な構造が
図１〜図４に示される。多翼送風機６は、遠心ファン２
０とケース２２とからなる。ここで、ケース２２は、樹
脂成形された上ケース２２ａと下ケース２２ｂとをクラ
ンプ、ビス等により一体に組み付けたものであって、周
知の渦巻き状（スクロール形状）に形成されており、径
外方向に延びる図５に示す空気出口部３７を有し、この
空気出口部３７はエバポレータ７の空気入口側に接続さ
れている。ケース２２の下ケース２２ｂにはファン駆動
用モータ３４が支持固定されている。

【０００９】遠心ファン２０は、ボス部２８と、底プレ
ート２４と、多数のブレード２５と、保持リング２６と
から構成される。図４に示すボス部２８は、モータ３４
からの駆動力が伝達される。このボス部２８に底プレー
ト２４が連結される。底プレート２４は、その頂面２４
ａが中央部から径外方向に凸状に滑らかに湾曲するよう
な曲面に形成され、その頂面２４ａの途中で曲折される
曲折部から径外方向にかけて環状の外周端部２４ｂが形
成されている。ブレード２５は、底プレート２４の外周
端部２４ｂの近傍から立ち上がるように形成されるもの
で、底プレート２４の外周端部２４ｂの近傍に円周方向
に沿って所定の円弧間隔をおいて多数配置される。保持
リング２６は、ブレード２５の頂部に環状に形成されて
いる。

【００１０】図４に示すように、吸込口３６と吐出口３
９をもつスクロール状のケース２２は、吸込口３６に空
気を案内するベルマウス３１を有し、このベルマウス３
１に切欠き４０を有する。この切欠き４０は、図２に示
すファン中心とノーズ３２の先端を結ぶ接線Ｘより遠心
ファン２０の回転方向（矢印Ｙ方向）に角度θ＝−３０
°〜＋１０°の範囲Ｚから始まり、図１に示す中心角α
が４５〜２１０°の範囲に形成してある。

【００１１】モータ３４により駆動される遠心ファン２
０の回転により吸込口３６よりケース２２の内部に吸い
込まれた空気は、底プレート２４の頂面２４ａに沿って
流れ、ブレード２５の間を抜け出た後、吐出口３９より
吐出される。このとき、ベルマウス３１に設けた切欠き
４０によってノーズ３２近傍のみのクリアランスが大
（Ｃ₁ ）であるため、ノーズ３２の近傍のクリアランス
Ｃ₁ を通って吸入側へ戻ろうとする逆流の通路面積が大
となり、この逆流がスムーズに行なわれるので、ノーズ
３２の近傍での脈動が少なくなって騒音が低減される。
一方、ノーズ３２の近傍を除く部分については切欠きが
形成されないため、クリアランスが小（Ｃ₂ ）となり、
逆流が効果的に防止されるので、ファン効率が損なわれ
ない。

【００１２】次に実験データを図６および図７に示す。 実験例１ 実験例１は、切欠き４０の角度範囲を変化させ、それに
よって最低比騒音およびファン効率がどのように変化す
るかを実験した例である。切欠き４０の拡大部の開始位
置はノーズ先端とし、遠心ファン２０と切欠き４０との
クリアランスＣ ₁ を６ｍｍとした。ノーズ近傍以外での
クリアランスＣ₂ は２ｍｍである。その結果は図６に示
すとおりである。最低比騒音は、吸込口３６から１ｍ上
方で測定した値である。

【００１３】この結果、切欠き４０の中心角αは、α＝
４５〜２１０°の範囲が最低比騒音の低減のために好ま
しいことが判る。 実験例２ 実験例２は、遠心ファン２０と切欠き４０とのクリアラ
ンスＣ₁ の大きさによって最低比騒音がどのように変化
するかを実験した例である。切欠き４０の拡大部の開始
位置はノーズ先端（図２に示す接線Ｘの位置）とした。
また、切欠き４０の拡大部の中心角αは９０°に設定し
た。そして最低比騒音についてはケース２２の吸込口３
６から約１ｍ上方にて測定した。

【００１４】この結果は図７に示すとおりである。これ
より、クリアランスは３〜９ｍｍの範囲が好ましいこと
が判る。ここに、クリアランスＣ₁ ＝２ｍｍのときは、
切欠き４０を形成しないときにあたり、吸込口３６のク
リアランスが全周一定の場合である。次に、ベルマウス
３１の切欠き形状の変形例を図８の（ａ）〜（ｆ）に示
す。（ａ）の切欠き４２は切欠き形状を台形状に形成し
た例であり、（ｂ）の切欠き４３は楕円状曲線に形成し
た例であり、（ｃ）の切欠き４４は（ａ）に示す台形状
の角部に丸みを形成した例であり、（ｄ）の切欠き４５
は三角形状にした例であり、（ｅ）の切欠き４６はノー
ズ近傍に近いところ程曲率を小さくする曲線にした例で
あり、（ｆ）の切欠き４７は前記（ｂ）と（ｅ）の中間
的な曲線を描く例である。これら（ａ）〜（ｆ）の形状
についても、前記第１実施例と同様のファン効率向上お
よび騒音低減の効果が得られる。

【００１５】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の多翼送風
機によれば、多数のブレードを収納するケースのベルマ
ウスと遠心ファンとのクリアランスを拡大する切欠き部
を渦巻き状のケースのノーズ近傍に形成する構成にした
ため、ノーズ近傍での脈動を低減できるとともに、ノー
ズ近傍以外の部分では逆流の発生を防止でき、ファン効
率の向上ならびに騒音の低減を図ることができるという
効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例による多翼送風機ならびに
切欠きの範囲を示す説明図である。

【図２】本発明の第１実施例の多翼送風機の風の流れを
示す説明図である。

【図３】本発明の第１実施例による多翼送風機を示す概
略構成図である。

【図４】本発明の第１実施例による多翼送風機を示す斜
視図である。

【図５】車両用空調装置に本発明を適用した第１実施例
を示す概略構成図である。

【図６】本発明の実験データを示すもので、切欠きの中
心角と最低比騒音ならびにファン効率の関係を示す特性
図である。

【図７】本発明の実験データを示すもので、クリアラン
スの大きさと最低比騒音との関係を示す特性図である。

【図８】本発明の切欠き形状の変形例を示す展開図であ
る。

【図９】従来の多翼送風機を示す概略構成図である。

【図１０】従来の多翼送風機の風の流れを説明するため
の説明図である。

【符号の説明】

６ 多翼送風機 ２０ 遠心ファン ２２ ケース ２４ 底プレート ２５ ブレード ２６ 保持リング ２８ ボス部 ３１ ベルマウス ３２ ノーズ ３６ 吸込口 ４０ 切欠き

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉 光 愛知県刈谷市昭和町１丁目１番地 日本電 装株式会社内

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 駆動力が伝達されるボス部と、このボス
   部から径外方向に延びる底プレートと、この底プレート
   の外周端近傍から垂直方向に立ち上げられるとともに円
   周方向に沿って設けられる多数のブレードと、前記ブレ
   ードの頂部を接続する環状の保持リングとを有する遠心
   ファンと、 前記遠心ファンを収容するとともに、吸込口を形成する
   ベルマウスを有する渦巻き状ケースとを備え、 前記遠心ファンと前記ベルマウスとのクリアランスを、
   ファン中心と渦巻き状ケースのノーズ先端とを結ぶ接線
   近傍からファン回転方向に向けて所定角度の範囲におい
   て拡大することを特徴とする多翼送風機。
2. 【請求項２】 前記所定角度の範囲におけるクリアラン
   スが３〜９ｍｍの大きさであり、前記所定角度の範囲以
   外のクリアランスが２ｍｍ以下の大きさであることを特
   徴とする請求項１記載の多翼送風機。
3. 【請求項３】 前記所定角度が４５°〜２１０°の範囲
   であることを特徴とする請求項１または２に記載の多翼
   送風機。