JPH05228729A

JPH05228729A - シェービングダイス

Info

Publication number: JPH05228729A
Application number: JP2788192A
Authority: JP
Inventors: Fujio Yamane; 不二夫山根
Original assignee: Hitachi Metals Ltd
Current assignee: Proterial Ltd
Priority date: 1992-02-14
Filing date: 1992-02-14
Publication date: 1993-09-07

Abstract

(57)【要約】【目的】靭性と高硬度・高耐摩耗性を兼備した母材を
選定して、コーティング層を強固に保持して、その機能
を発揮せしめ、または、無コートでも十分な寿命を有す
るシェービングダイスの提供。【構成】母材として、粉末冶金法による重量比でＣ
1.8〜2.3%、Ｓi 1.0%以下、Ｍn 1.0%以下、Ｃr 3〜6%、
Ｗ 8〜15%、Ｍo 5〜10%(ただし、Ｗ＋2Ｍo 24〜30%)、
Ｖ 4.5〜8%、Ｃo 7〜13%、Ｎ 0.02〜0.1%、残部がＦeお
よび不可避的不純物からなる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、特に、通信ケーブル、
電力ケーブル等に使用される純銅線または銅合金やその
他の比較的軟質の金属線の製造に際して使用される、表
面の皮むき用のシェービングダイスに関する。

【０００２】

【従来の技術】通信ケーブルの導体としては、通常、電
気銅銅線が用いられる。この銅線は通常、板状の電気銅
を荒引線製造設備にて直径 8〜15mmの荒引線とし、その
後伸線工程の引抜きダイスにて、順次細径線へと伸線
し、通常0.3〜1.2mmの銅線とされる。ここで、荒引後の
銅線の表面は、疵、ばり、むしれ等により、表面性状が
不安定である。そこで、通常荒引後、これらの表面の欠
陥を皮むき(シェービング)により除いた後伸線を行な
う。表面の皮むきとしては、図１に示すように軸方向に
引張り駆動された被削材１の全円周を、シェービングダ
イス２で同時並行的に切削する方法によっている。

【０００３】前記シェービングダイスとして具備すべき
条件は、下記４点である。切削性が良いこと・・・銅表面を滑らかに削れるように
ダイス先端は鋭角で、適当なすくい面と逃げ面を有する
ものでなければならない。耐摩耗性の良いこと・・・切削摩耗が少なく、工具使用
時間が長くなること。靭性の良いこと・・・切削抵抗による欠け、割れが生じ
ないこと。耐焼付き製の良いこと・・・切削熱により被削材と焼付
き、肌荒れ、侵食、切削抵抗増加を生じないこと。従来、これらの条件を比較的に満足するものとして使用
されてきたのは、ダイス母材としてＳＫＨ５１またはＳ
ＫＨ５９を熱処理によりHRC61〜64とし、これに表面処
理としてＰＶＤ，ＣＶＤ等によりＴiＮ，ＴiＣＮを2〜5
μm コーティングしたものが使用されてきた。従来材の
シェービングダイスの寿命の例は、被削材を純銅とし、
皮はぎ量片肉 0.2mm、送り速度 100m/minとしたとき、
正常なもので70Hr程度である。ここで、寿命の判定基準
は、次記のとおりである。シェービング時の切削抵抗を
下げるため、ダイスへの進入前に銅線表面上に油を塗布
または注油しているが、ダイスが摩耗して切削性が劣化
してくると、ダイスと銅線間に部分的隙間が発生し、潤
滑油がシェービング後の銅線上に残存し始める。このと
きの使用初期からの経過時間を寿命としている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】従来のシェービングダ
イスの問題点は、母材にコーティングを行なっているた
め、コーティングままでは刃先が丸くなり、シャープエ
ッジが得られない。このため、コーティング後、刃先に
エッジを付けるべく、刃先カットを行なっているが、カ
ットのばらつきによりコーティング層のばらつきが生
じ、短寿命品が高頻度で発生していた。また、コーティ
ング層は、剥離その他の制約から約5μm程度以下と薄
く、シェービング初期は良好な切削が行なえるが、コー
ティング層の摩耗の進行の途中から母材硬度が低いた
め、損耗が急速に進行し、刃先がギザギザ状の偏摩耗と
なり、銅線の表面上に疵、むしれが発生し易くなり早期
寿命となる。通常、シェービングダイスの取替え時間
は、10〜15時間程度と非常に長時間を要するため、シェ
ービングダイスの寿命向上は、シェービングの効率向上
にとって非常に重要である。

【０００５】本発明者は、母材硬度向上のため、超硬合
金材(硬さ HRC72〜74)にて銅線用のシェービングダイス
の試作を行なってみたが、切削時の抵抗により割れ発生
が生じ早期寿命となった。本発明は、母材を、シェービ
ング用途に対する十分な靭性と高硬度による耐摩耗性と
を調和して有し、コーティング層を強固に支持して、そ
の効果を最後まで持続することを可能とし、またはその
優れた耐摩耗性によりコーティング層なしでも、従来の
コーティング品に匹敵し、もしくはこれを凌駕し、また
ばらつきのない寿命を有するシェービングダイスを提供
することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、重量比でＣ
1.8〜2.3%、Ｓi 1.0%以下、Ｍn 1.0%以下、Ｃr 3〜6%、
Ｗ 8〜15%、Ｍo 5〜10%(ただし、Ｗ＋2Ｍo 24〜30%)、
Ｖ 4.5〜8%、Ｃo 7〜13%、Ｎ 0.02〜0.1%、残部がＦeお
よび不可避的不純物からなる粉末高速度工具鋼でなるこ
とを特徴とするシェービングダイス、ならびに粉末高速
度工具鋼製であり、刃先の逃げ角が3〜10°、すくい角
が40〜50°であることを特徴とするシェービングダイス
である。

【０００７】

【作用】本発明は、銅、銅合金を始めとする比較的軟質
の金属線用のシェービングダイスに対し、種々の材質を
試用した結果、本出願人が先に開発した粉末高速度工具
鋼が、これらのシェービングダイスに要求される耐摩耗
性と靭性をほぼ調和して有するものであることを見出し
たことによるものである。特に、従来必須とされていた
コーティングを必ずしも必要としないので、これを省略
した場合は、刃先カットの工程が不要となり、また、コ
ーティング層の不同による寿命のばらつきが少なくな
り、常にほぼ期待通りの寿命が得られるようになった。
しかし、本発明はこれに限定されない。従来と同様コー
ティングを行なえば、更なる寿命向上が見られることが
確認されている。次に、本発明のシェービングダイスの
母材である粉末高速度工具鋼の成分限定理由を述べる。

【０００８】Ｃは同時に添加されるＣr、Ｗ、Ｍo、Ｖと
結合して硬い炭化物を形成し耐摩耗性向上に寄与する。
さらに、焼入時にマトリックス中に固溶して焼もどし二
次硬化の作用も担う。したがって、Ｃr、Ｗ、Ｍo、Ｖの
含有量との兼ね合いでＣ含有量も決める必要がある。本
発明ではＣ 1.8〜2.3%の範囲とする。1.8%より低いと高
い焼もどし硬さが得られず、逆に2.3%を越えるとマトリ
ックス中に固溶するＣ量が著しく増えて靭性を低下させ
る。Ｃrは焼入性を高め、また焼もどし二次硬化性を高
める目的で3〜6%添加する。3%より少ないと上記の効果
が少なく、逆に6%より多いとＣrを主体とするＭ₂₃Ｃ₆型
の炭化物が極端に増えてマトリックスの靭性を害し、さ
らに焼もどし時に炭化物の凝集を速め、軟化抵抗を減ず
るので、Ｃrは3〜6%とする。

【０００９】次にＷとＭoの作用効果について説明す
る。本発明の目的であるコーティングを省略しても十分
な耐摩耗性を有せしめるためには、硬い炭化物を多量に
分散させ、しかもマトリックス硬さも高くなくてはなら
ない。本発明のシェービングダイスでは、Ｗ、Ｍoの総
合含有量を、Ｗ＋2Ｍoで24%以上と高めとすることによ
り、前述の目的が達成できた。すなわち、Ｗ、Ｍo含有
量を増加させることにより、Ｍ₆Ｃ型炭化物の分散量が
増し、また、焼もどし二次効果量が顕著に高まるためで
ある。しかし、Ｗ＋2Ｍoが30%を越えると、連結した炭
化物が急増し、マトリックス中に固溶する合金元素も極
端に多くなって靭性の低下が著しくなるので、Ｗ＋2Ｍo
24〜30%とした。しかし、この範囲で、高Ｍo含有鋼で
は十分な焼もどし硬さが得られ難く、逆に高Ｗ含有鋼で
は靭性の低下が起こったので、Ｗ 8〜15%、Ｍo 5〜10%
とした。特にＷ 8.5〜11%、Ｍo 7.5〜9%の範囲でＷ＋2
Ｍoが24〜29%、かつＷ/2Ｍoが0.5〜0.73の範囲がシェー
ビングダイスに要求される硬さと靭性に対するバランス
が良く最適である。

【００１０】Ｖもまた耐摩耗性を高めるのに有効な元素
で、耐摩耗性向上の目的からはできるだけ多くを含有さ
せた方が良い。しかし、8%を越えると粗大なＭＣ型炭化
物が晶出し易くなり、靭性を低下させる。4.5%未満では
耐摩耗性が十分に得られないので、Ｖ 4.5〜8%とする。
本発明のシェービングダイスの材質は、Ｗ、Ｍoの含有
量が従来鋼と比較して高いため、Ｃoとの相互作用によ
り、極めて高い焼もどし難さと軟化抵抗が得られる。特
に7%以上のＣo含有量でこの効果が大きい。しかし、13%
を越えるとマトリックスの靭性が著しく低下するのでＣ
o 7〜13%とする。Ｎ量の管理が本発明では重要である。
Ｎの含有量を高めると焼入−焼もどし硬さが高くなる。
また連結した炭化物が少なくなるので、靭性も向上す
る。Ｎの含有量が0.02%より少ないとこの効果がわずか
であり、一方、0.1%を越えて含有させるのは製鋼上難し
く、またＶＣ炭化物の粒径を粗大化させて靭性を害す
る。したがって、本発明のシェービングダイスの材質で
はＮを0.02〜0.1%の範囲で含有させる。

【００１１】本発明では、Ｔiの含有量が増加すると、
ＶＣ炭化物の粗大化が生じて靭性および被研削性を著し
く低下させ、また、Ｔi系の非金属介在物が増え、上記
のＶＣ炭化物粗大化との相乗効果で靭性を下げる。した
がって、Ｔiの含有量は0.02%以下に、より望ましくは0.
01%以下に管理することが望ましい。ＡlもＴiと同様に
重要な管理すべき元素である。ＡlはＴiのようにＶＣ炭
化物を粗大化させる作用はないが、非金属介在物量を増
加させ、靭性も低下させるので、望ましくは、0.01%以
下、さらには0.005%以下とすることが望ましい。Ｓi,Ｍ
nは、脱酸の目的で添加さるが、Ｓiは1.0%以下、Ｍnは
1.0%以下とする。

【００１２】次に本発明のシェービングダイスの刃先形
状について述べる。銅、銅合金をはじめとする比較軟質
合金線の皮むきを行なう際、切削力による欠け、割れが
発生しないよう刃先の強度をもたせ、かつ切粉の排出が
滑らかなように、すくい角を40〜50°、逃げ角を3〜10
°とすると、良好な結果が得られる。すくい角が40°よ
り小さいと、すくい面のクレータ摩耗が大きくなり短寿
命となる。また、すくい角を50°を越えて大きくするこ
とは、刃先角が小さくなることを意味し、刃先の欠けが
発生し易くなる。また、逃げ角が3°より小さいと、通
常の切削におけると同様に、刃先摩耗に伴う二番当りが
激しくなり、一方逃げ角が10°を越えると、被加工線材
のクリアランスが部分的に大きくなり、短寿命となり、
また、刃先角を減少して欠けを発生し易くなる。

【００１３】

【実施例】表１および表２に、本発明のシェービングダ
イスに適する粉末高速度工具鋼のそれぞれ成分およびそ
の熱処理硬さと抗折力の例を示す（熱処理条件は、焼入
れ1200℃、焼もどし 550℃×1hr×3回)。表２による
と、これらの材料はいずれもHRC70以上の高硬度と、抗
折力 300kgf/mm²の高靭性が得られるものであることが
わかる。次にこれらの表中で、成分的にも硬さ、抗折力
の面からもほぼ中庸であるＮo.3の材料により、銅線用
シェービングダイスを製作して、試用した結果について
説明する。

【００１４】

【表１】

【００１５】

【表２】

【００１６】前記表１のＮo.3の材料を用意し、表３に
示すようにすくい角と逃げ角を種々変化させたシェービ
ングダイスを製作した。なお、本発明品の各シェービン
グダイスの硬さはそれぞれ同一のHRC≒69と、表２のそ
れに比し、やや低下して用いた。また、Ｎo.1は従来品
であり、そのデータは、ランニング品の早期寿命となっ
たものを除いた正常品の平均値データである。テスト条
件は次記のように、従来のランニング条件に合わせた。
被削材は、直径13mmの純銅線、皮むき量は片肉 0.2mm、
送り速度は100m/minである。寿命判定は、前記のように
皮むき後に潤滑油が残り始めた時点とし、その時間を記
録すると共に、寿命となったシェービングダイスのすく
い面のクレーター摩耗幅Ｌ₁および逃げ面の逃げ面摩耗
幅Ｌ₂を記録した（摩耗幅は幅の最大値を採った）。こ
の結果を表３に併せて示す。表３より本発明に係る材質
であり、かつすくい角を40〜50°、逃げ角を3〜10°と
したＮo.2,5,7は、従来材のＳＫＨ５１にＴiＣＮ処理し
たものと同等以上の寿命を得ることができることがわか
る。逃げ角は、10°を越えて大きくし過ぎると、わずか
な逃げ面摩耗でも、銅線とダイスのクリアランスが部分
的に大きくなり、シェービング後の銅線に油がついてし
まい、また3°未満では、他の通常の切削と同様、二番
当りとなり、短寿命となる。また、すくい角は、小さす
ぎるとクレーター摩耗が大きくなり、また大きすぎる
と、刃先角が減少して欠けが発生するので40〜50°にて
良好な結果が得られることがわかる。

【００１７】

【表３】

【００１８】

【発明の効果】以上述べたように、本発明のシェービン
グダイスは、該ダイスに要求される靭性と高硬度による
耐摩耗性とを調和して有し、このため、従来必須であっ
た耐摩耗性向上のためのコーティング処理を省略するこ
とをも可能とし、これを省略した場合は、正常な従来品
以上の、かつばらつきのない寿命を有し、シェービング
加工の効率向上をもたらし、また、シェービングダイス
の製造費の低減が可能であり、また、コーティングを行
なえば、更なる寿命延長が期待できるものであり、工業
上極めて有効な発明である。

【図面の簡単な説明】

【図１】シェービングダイスでの切削状況を示す図であ
る。

【符号の説明】

１被削材２シェービングダイス３中間ホルダー４潤滑油５切り粉

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】重量比でＣ 1.8〜2.3%、Ｓi 1.0%以下、
Ｍn 1.0%以下、Ｃr3〜6%、Ｗ 8〜15%、Ｍo 5〜10%(ただ
し、Ｗ＋2Ｍo 24〜30%)、Ｖ 4.5〜8%、Ｃo7〜13%、Ｎ
0.02〜0.1%、残部がＦeおよび不可避的不純物からなる
粉末高速度工具鋼でなることを特徴とするシェービング
ダイス。
【請求項２】粉末高速度工具鋼製であり、刃先の逃げ
角が3〜10°、すくい角が40〜50°であることを特徴と
するシェービングダイス。