JPH05180234A - Ｆｒｐ製パイプのかしめ接合構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】ＦＲＰ製パイプ１を加熱圧縮して接合相手部材
にかしめ接合する際にＦＲＰ中の強化繊維に配向の乱れ
が生じないようにし、接合強度を高める。 【構成】 相手部材の接合部（異形筒部）の輪郭を凹凸
ないし波形のある歪んだ円形状とし且つ該筒部の外周長
を上記パイプの内周長の100 ±1.5 ％とした接合相手部
材（例えば接合部が星状形筒部の金属製ヨーク３）を用
いて接合する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、自動車のプロペラシャ
フト等に利用できるＦＲＰ製パイプのかしめ接合構造に
関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車のプロペラシャフトは、ミッショ
ンギヤとデファレンシャルギヤとを連結しエンジンの動
力を車輪に伝えるための駆動軸であり、極めて高い強
度、剛性が要求される部品である。プロペラシャフトに
は従来より特殊鋼製のシャフトが使用されてきたが、近
年、軽量化の要請から鋼、アルミニウムに比べ、比強度
（強度／重量）、比弾性率（弾性率／重量）の高い繊維
強化プラスチック（ＦＲＰ；熱可塑性樹脂のＦＲＰは特
にＦＲＴＰとも記される）製のプロペラシャフトを採用
することが検討されている。しかし、継手部品のように
高負荷を受ける部材については充分な剛性・強度を有す
る部品を繊維強化プラスチックで得るのは経済的理由な
どの点で無理である。そのため、繊維強化樹脂製プロペ
ラシャフトは、主軸部分をＦＲＰ製パイプとし、そして
継手部分を金属継手として、ＦＲＰ製パイプの両端部に
金属継手を接合して製造されるのが普通である。

【０００３】しかし、ＦＲＰ製パイプと金属継手（ヨー
ク）の接合は容易ではなく、これまで以下のような接合
法が提案されている： (1) ヨークとパイプを接着剤により接着する方法（特開
昭６４−１０８４０８号公報参照）； (2) ヨークとパイプとの接合部に連通孔を形成し両者を
ボルト締結する方法（実開平１−９１１１８、特開平２
−７７３２２号参照）； (3) パイプ成形時に両端に筒状の鋼を一体に包み込んで
成形し、この筒状鋼とヨークとを溶接する方法（実開昭
５３−９３７８号参照）； (4) 鋼パイプの両端を残し、中央部外周をＦＲＰにて補
強し、パイプ端部にヨークを溶接する方法（特開昭５３
−７１２４４号参照）； (5) ＦＲＴＰ製パイプの端部にヨークの異形筒部（完全
な円筒形ではない、例えば輪郭が正八角形の筒部）を挿
入した後、パイプを外側より加熱圧縮してマトリックス
樹脂を溶融変形させることにより接合する方法（特開昭
６３−１９９９１４号参照）。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記
(1)〜(5) の従来の接合法には、それぞれ以下のような
問題がある： (1)の接合法……接着剤層が強化繊維の無い樹脂単体で
あるため、耐熱性、強度等がＦＲＰよりも劣る場合が多
く、接着剤層の強度に大きく左右され、特に熱影響下で
の強度に問題がある．例えば接着剤層が車両の下面に設
けられている排気管等から120 ℃を越えるような高温を
受けないように排気管をプロペラシャフトから遠ざける
等、自動車に無理な設計を必要とし、採用困難な場合が
多い； (2)の接合法……接着剤を用いないので (1)におけるよ
うな耐熱性の問題は無いが、ＦＲＰ材料は異方性が強
く、特定方向でのノッチ感受性が高いため、材料強度上
問題がある．具体的には大応力負荷時に、ＦＲＰのボル
ト穴部よりクラックが発生する危険がある； (3)及び(4) の接合法……一体成形によりＦＲＰパイプ
の端部に設けられた鋼部分に金属継手を溶接するため、
(1)(2)のような接合部位での耐熱性・強度の問題は無い
と言えるが、ＦＲＰ部の近傍で溶接が行われるため、少
なからず熱影響でＦＲＰを劣化させる恐れがある．この
熱劣化を回避するためにはＦＲＰ部を溶接部から遠ざけ
る必要があるが、それにより結果的にパイプの鋼部分が
多くなって軽量化効果が少なくなる； (5)の接合法……上記(1) 〜(4) の接合法に見られる問
題が無く、操作自体も比較的簡便であるので、有用性の
高い接合法と考えられるが、ＦＲＴＰパイプを外周から
加熱圧縮して接合する際に、同部位においてＦＲＴＰパ
イプの直径は僅かであるが小さくなるので、接合部位の
強化繊維の配向が乱れ、繊維のミクロな蛇行、場合によ
り座屈破壊が生じる．こうした繊維の配向の乱れによっ
て接合強度が低下する。

【０００５】本発明は、上記問題を解決する目的で為さ
れたものであり、その解決しようとする課題は、繊維強
化樹脂製パイプを加熱圧縮して他部材へかしめ接合する
に際し、繊維強化樹脂中の強化繊維の配向を乱すことな
く、ＦＲＰ製パイプを他部材に良好に接合できるかしめ
接合構造を提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明のＦＲＰ製パイプ
のかしめ接合構造は、ＦＲＰ製パイプの端部に、接合相
手部材の異形筒部（相手部材の接合部）を挿入した後、
加熱すると共にパイプの端部を外側から押圧してＦＲＰ
製パイプと接合相手部材をかしめ接合してなる構造にお
いて、相手部材の異形筒部の輪郭を凹凸ないし波形のあ
る歪んだ円形状とし且つ該筒部の外周長を上記パイプの
内周長の１００±１．５％としたことを特徴とする。

【０００７】ここで「筒部の外周長」とは、筒部の外周
面の一回りの寸法を意味し、「パイプの内周長」とは、
パイプの内周面の一回りの寸法を意味する。接合相手部
材の異形筒部の輪郭が従来のように正多角形では、筒部
の外周長を上記パイプの内周長の１００±１．５％とす
ることはできない（敢えて略同一寸法にしようとすると
正多角形の筒部がパイプ内に挿入できなくなる）。本発
明は、ＦＲＰ製パイプの接合部と相手部材の接合部の夫
々の内周長と外周長を略同一寸法にするには相手部材の
接合部すなわち異形筒部の断面（軸方向に垂直な断面）
の輪郭を凹凸ないし波形のある歪んだ円形状とすればよ
いこと、及びそのようにして接合された部品は接合強度
・耐久性に優れることを見い出して完成されたものであ
る。

【０００８】相手部材の接合部の外周長がＦＲＰ製パイ
プの内周長の１００±１．５％の範囲でなければならな
い理由は次の通りである：１０１．５％を越える場合 …相対的にかしめ変形時のＦ
ＲＰ製パイプに無理に引っ張られる部分が生じるので、
強化繊維の突っ張り、繊維の層間すべりが発生し、繊維
配向が乱れる。同時に、ボイド等の欠陥が導入されるこ
とによる強度低下と、パイプ接合部外形のＲ（表面の曲
率半径）が小さくなることによる強度低下が発生する。９８．５％未満である場合 …加熱圧縮によるパイプ収縮
量が大きくなるので、ＦＲＰ中の強化繊維が弛み、繊維
の座屈、蛇行が発生し、また層間すべりも発生する。こ
のような繊維配向の乱れで、ＦＲＰ材料の強度特性が低
下する。

【０００９】接合相手部材の材質は、各種鋼、鉄系合
金、アルミ系合金、チタン系合金、或はＦＲＰ等であっ
て良い。この場合、少なくともＦＲＰパイプを加熱圧縮
接合する際に変形等の生じない材質でなければならな
い。相手部材の接合部（異形筒部）の形状、即ち上記の
「輪郭が凹凸ないし波形のある歪んだ円形状」には、極
めて多様な形状が含まれると理解されるべきである。そ
のような形状として例えば下記実施例で説明する星状形
や、図７(a) 〜(c) に示すような冠形、へこみ円形等が
挙げられる。

【００１０】本発明で使用されるパイプ材料のＦＲＰ
は、マトリックス樹脂がポリエチレンテレフタレート
（ＰＥＴ）、ポリエーテルエーテルケトン（ＰＥＥ
Ｋ）、高密度ポリエチレン（ＨＤＰＥ）、ポリスチレン
（ＰＳ）、スチレン・アクリロニトリル共重合樹脂（Ｓ
ＡＮ）、ポリカーボネート（ＰＣ）等の熱可塑性樹脂で
あるＦＲＰ（即ちＦＲＴＰ：Fiber reiforced thermopl
astic resin)でも、またマトリックス樹脂が不飽和ポリ
エステル樹脂（ＵＰ）、エポキシ樹脂（ＥＰ）、フェノ
ール樹脂（ＰＦ）等の熱硬化性樹脂であるＦＲＰでもよ
い。しかし、硬化状態で保管し接合時に加熱軟化させる
パイプとし得る点で、熱可塑性樹脂のＦＲＰ（＝ＦＲＴ
Ｐ）が好ましい。

【００１１】ＦＲＰの強化繊維としては、この分野で多
用されているガラス繊維、炭素繊維が使用できるのは勿
論、必要な強度を有するＦＲＰ成形体を生じさせること
のできる繊維であれば他の無機又は有機繊維、例えばシ
リカ繊維、アラミド繊維（ケブラー繊維）、金属繊維等
も使用できる。また各種繊維をハイブリッドしたもので
あっても良い。ＦＲＰ製パイプは、いわゆるフィラメン
トワインディング法で製造されたものを用いるのが、強
度の点で好ましい。

【００１２】

【作用】ＦＲＰ製パイプに挿入される接合相手部材の異
形筒部の輪郭を凹凸ないし波形のある歪んだ円形状にす
ることは、異形筒部の外周長とＦＲＰ製パイプの内周長
を略同一長さにすることを可能にする。相手部材の接合
部の外周長とＦＲＰ製パイプの内周長が略同一長さであ
ると、かしめ変形させるパイプに過度の伸縮が強要され
ない。従ってかしめ後における繊維の配向に乱れが少な
く、ＦＲＰ材料の強度低下が起こらない。そのため接合
相手部材とＦＲＰ製パイプは強固に接合する。

【００１３】

【実施例】

実施例１ 本実施例では、図３〔 (a)は側面図、 (b)は正面図〕に
示すようなＦＲＴＰ製パイプ２の両端部に、図４〔 (a)
は側面図、(b) はＢ−Ｂ線断面図、 (c)は斜視図〕に示
すような金属製ヨーク３，３を接合して、図１に示すよ
うなＦＲＴＰ製主軸部分２と金属製継手部分３，３とか
らなる自動車用プロペラシャフト１を製造する。

【００１４】ここで使用されるＦＲＴＰ製パイプの形状
材質等は次の通りである：パイプ諸寸法 ：内径７５．０ｍｍ、外径８１．０ｍｍ、
長さ８００ｍｍ、肉厚３ｍｍ、内周長２３５．６ｍｍ；強化用繊維 ：直径７μｍの長炭素繊維（東レ株式会社製
「Ｔ−３００」）；マトリックス樹脂 ：ポリエチレンテレフタレート：ＰＥ
Ｔ（出光石油化学株式会社製「タフエイト」，融点２２
０℃）；繊維配向 ：パイプの中心軸に対し、＋４５゜と−４５゜
方向の交互配向；繊維体積率 ：Ｖｆ＝５５％；成形方法 ：上記繊維及び樹脂を予めテープ状に成形した
プリプレグを作成し、このプリプレグテープを加熱して
樹脂を溶融し、繊維が蛇行しないように一定張力を加え
ながらマンドレルに巻き付けるフィラメントワインディ
ング法。

【００１５】上記ＦＲＴＰ製パイプに接合されるヨーク
（継手）は鋳鋼製であり、一般的なプロペラシャフトの
ヨークであるが、パイプとの接合部となる筒部はその断
面が星状形となるように機械加工が施され、所定の寸法
に仕上げてある。筒部の外周長は２３５．３ｍｍであ
り、パイプ内周長２３５．６ｍｍと略同一長さである。
筒部の外接円の直径は７４．９ｍｍとなっているので、
パイプ内へ支障なく挿入できる。

【００１６】接合するに当たっては、図５に示すように
１００℃に予熱したＦＲＴＰ製パイプ２の両端部へ２５
０℃に加熱した金属製ヨーク３を挿入し、続いて２５０
℃に加熱した圧縮用金型６，６…により外周からパイプ
２を圧縮変形させてヨーク３にかしめ接合し、図１に示
すようなプロペラシャフト１を製造した。なお、圧縮成
形時にはＦＲＴＰパイプ２の接合部は２４０℃まで昇温
しており、マトリックス樹脂は溶融していた。パイプの
その他の部位は１００℃を保っており、実質的に変形等
は見られなかった。

【００１７】こうして製作されたプロペラシャフトの接
合部の断面状態を見ると、図２に示すようにＦＲＴＰ製
パイプ２は金属製ヨーク３の星状形筒部３ａに完全に添
うように変形しており、この変形したパイプ２中の繊維
４は、従来とは異なり適正に樹脂５と複合されていた。
その理由は、接合されるＦＲＴＰ製パイプ２と金属製ヨ
ーク３の夫々の内周長と外周長が略同一寸法に設定され
ていたことにより、縮成形接合時にＦＲＴＰ製パイプ２
の過度の収縮が防止され、強化繊維４が緩むことなく蛇
行、座屈等を起こさなかった為であると判った。

【００１８】比較例 ヨークの接合部形状を異にする以外は実施例１と全く同
じ形状のプロペラシャフトを製造した。ヨーク接合部の
断面形状は、直径７４．９ｍｍの円に内接する正八角形
である。該ヨークに実施例１と同要領にて加熱圧縮成形
によりパイプを接合して得られたプロペラシャフトの接
合部の捩り強度を調査したところ、実施例１のものより
もかなり低強度であることが分かった（図６参照）。こ
のプロペラシャフトでは、パイプの内周長は実施例１と
同じ２３５．６ｍｍであるが、ヨーク接合部の外周長は
２２９．６ｍｍであるので、パイプ内周長に対するヨー
ク接合部外周長は９７．５％となり、圧縮成形時にパイ
プの周方向に２．５％ほど繊維の弛みが発生する。事
実、接合部のパイプ断面形状を詳細に調査したところ、
図８に示すようにヨーク３の正八角形筒部３ｂにかしめ
接合されたＦＲＴＰ製パイプ２中の強化繊維４が弛んで
座屈、蛇行しており、この緩みが材料強度の低下の原因
になっていることが分かった。

【００１９】実施例２ 接合部形状を異にする様々なヨークを用いて、９種のプ
ロペラシャフトを製造し、それらの接合強度（捩り強
度）を比較評価した。なお、ヨークにかしめ接合するパ
イプ及び接合方法は実施例１と同様である。各ヨークの
接合部断面形状はいずれも星状形（頂点を直線で結ぶと
正八角形となる星状形）であるが、それらの星状形の一
辺はφ５７ｍｍ，φ６１ｍｍ，φ６４ｍｍ，φ６９ｍ
ｍ，φ７５ｍｍ，φ８６ｍｍ，φ９５ｍｍ，φ１１５ｍ
ｍ，φ１５０ｍｍの円弧形と各ヨークごとに異なってい
る。従って接合部の外周長は各ヨーク毎に異なり、パイ
プ内周長に対する比率は夫々１０２％，１０１．５％，
１０１％，１００．５％，１００％，９９．５％，９９
％，９８．５％，９８％に相当する。

【００２０】以上のように、接合時の強化繊維の弛み量
が変化するように設定して得られた各種プロペラシャフ
トの接合部捩じり強度を比較した結果を図６に示す。パ
イプ接合部の内周長に対してヨーク接合部の外周長が１
００％を越える場合は、パイプの接合成形時に強化繊維
が引っ張られ、１００％未満の場合は強化繊維が弛む傾
向にある。図６から明らかなように、パイプ内周長に対
する星状形ヨーク接合部の外周長の比率が１００±１％
の範囲では高強度がほぼ一定に保たれ、それを越えると
強度が徐々に低下し、１００±１．５％を越えると急激
な強度低下が見られる。このことから、パイプ内周長に
対する星状形外周長の比率は１００±１．５％以内、特
に１００±１％以内が好ましいことが判る。

【００２１】上記実施例では、プロペラシャフトのヨー
クとＦＲＴＰパイプの接合の場合を示したが、本発明は
これに限定されることはなく、接合相手部材の外周にＦ
ＲＰ製パイプを嵌め込み、加熱圧縮することにより得ら
れる各種の接合製品・部品に適用できる。接合相手部材
とＦＲＰ製パイプの形状は特に限定されるものではな
く、基本的には接合相手部材の外周長と、ＦＲＰ製パイ
プの開口部内周長が所定の範囲であればよい。かしめ接
合時（加熱圧縮時）のＦＲＰ製パイプの均一な変形を考
慮したものであれば更に好ましい。

【００２２】

【発明の効果】本発明のかしめ接合構造によれば、ＦＲ
Ｐ製パイプに接合される相手部材の接合部を特定の形
状、外周長とすることによって、かしめ変形されるＦＲ
Ｐ製パイプ中の強化繊維の配向の乱れ（蛇行、座屈）が
防止されるので、ＦＲＰ材料の強度低下が起こらず、従
来のかしめ接合構造に比べ、一段と高い接合強度を示
す。また接着剤、ボルト締結、溶接等による接合に比べ
接合方法が簡単で、量産向きである。

【図面の簡単な説明】

【図１】一実施例のかしめ接合構造を有するプロペラシ
ャフトを示す斜視図である。

【図２】該プロペラシャフトの接合部を示す部分断面図
である。

【図３】一実施例に係るプロペラシャフトの主軸部分と
なるＦＲＰ製パイプを示す図である。

【図４】該ＦＲＰ製パイプにかしめ接合される金属製ヨ
ークを示す図である。

【図５】一実施例に係るかしめ接合方法の説明図であ
る。

【図６】接合されるヨーク・パイプの外周長／内周長比
率と、接合して得られたプロペラシャフトの捩り強度と
の関係を示すグラフである。

【図７】ＦＲＰ製パイプに対して適する接合部の断面形
状の例を示す図である。

【図８】従来のプロペラシャフトの接合部を示す部分断
面図である。

【符号の説明】 １ プロペラシャフト ２ ＦＲＴＰ製パイプ（主軸部分） ３ 金属製ヨーク（継手部分） ４ 強化繊維

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁵ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｆ１６Ｃ 3/02 9242−3Ｊ Ｆ１６Ｄ 3/26 Ｘ 8012−3Ｊ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ＦＲＰ製パイプの端部に、接合相手部材
   の異形筒部を挿入した後、加熱すると共にパイプの端部
   を外側から押圧してＦＲＰ製パイプと接合相手部材をか
   しめ接合してなる構造において、接合相手部材の異形筒
   部の輪郭を凹凸ないし波形のある歪んだ円形状とし且つ
   該筒部の外周長を上記パイプの内周長の１００±１．５
   ％としたことを特徴とするＦＲＰ製パイプのかしめ接合
   構造。