JPH05163300A - ペプチド誘導体およびその用途 - Google Patents

ペプチド誘導体およびその用途

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JPH05163300A
JPH05163300A JP3333543A JP33354391A JPH05163300A JP H05163300 A JPH05163300 A JP H05163300A JP 3333543 A JP3333543 A JP 3333543A JP 33354391 A JP33354391 A JP 33354391A JP H05163300 A JPH05163300 A JP H05163300A
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acid
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oligosaccharides
glucuronic acid
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JP3333543A
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Hideto Mori
英登 森
Hiroyuki Komazawa
宏幸 駒澤
Atsushi Ogasa
敦 織笠
Ikuo Saiki
育夫 済木
Ichiro Azuma
市郎 東
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Fuji Photo Film Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【目的】 有用な生物活性を有する新規なペプチド誘導
体及びそれを含む薬剤組成物の提供を目的とする。 【構成】 下記一般式(I) Q−W−CO−[X]−Arg−Gly−Asp−
[Y]−R (I) 具体的には、例えば で表わされるペプチド誘導体またはその薬学上許容され
る塩、並びに該化合物を含有する癌転移抑制剤。 【効果】 これらのペプチド誘導体は、細胞接着に関与
する最小単位であるArg−Gly−Aspなるトリペ
プチド配列と酸性糖残基を必須構成単位として有するた
め、単なるフィブロネクチンのコア配列断片と比較して
細胞接着性が大きく、癌転移抑制作用等の種々の生物活
性を充分に保持し、毒性の問題もほとんど無く、医薬と
して価値の高いものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、Arg−Gly−As
pなるトリペプチド配列と酸性糖残基を必須構成単位と
して有するペプチド誘導体またはその薬学上許容される
塩、およびその用途に関するものである。
【0002】
【従来技術】ラミニン、フィブロネクチン、ビトロネク
チン等は細胞と結合組織との結合に関与し、また動物細
胞の細胞機能に関連した種々の生物活性を有する蛋白質
であり、細胞接着性蛋白質と総称される。例えばフィブ
ロネクチンは肝臓で生合成され、ヒト血漿中に約0.3 mg
/mlの濃度で存在する糖蛋白質である。
【0003】フィブロネクチンはその1次構造が分子ク
ローニングを用いて決定されており(Koarnblihtt, A.
R. et al., EMBO Journal, 4巻, 2519 (1985))、分子
量約250KのポリペプチドであるA鎖と約240Kの
B鎖がC末端附近でジスルフィド結合した2量体蛋白質
であることが明らかにされている。またラミニンについ
ても佐々木ら(Sasaki, M. et al., Proc. Natl. Acad.
Sci. USA., 81巻, 935 (1987), Sasaki, M. et al.,
J. Biol. Chem., 262巻, 17111 (1987))によりその1
次構造が決定されている。ラミニンはA、B1、B2と
よばれる3本のポリペプチド鎖から構成されており、十
字架状の構造をとっていることが知られている。
【0004】そして細胞接着性に関与する結合部位の研
究も行われ、フィブロネクチンの細胞結合部のコア配列
はArg−Gly−Asp(RGD)なるトリペプチド
であることが1984年に報告された(Pierschbacher, M.
D. et al., Nature 309巻, 30(1984))。またラミニン
の細胞接着部位のコア配列はTyr−Ile−Gly−
Ser−Arg(YIGSR)で表わされるペンタペプ
チドであることも解明されている(Graf, J. et al., C
ell 48巻, 989 (1987))。
【0005】これらフィブロネクチンやラミニンは、上
記コア配列を介して細胞のレセプターと結合することに
よりその情報を細胞に伝達しており、またヘパリン、コ
ラーゲン、フィブリン等の生体高分子とも結合して細胞
と結合組織との接着、細胞の分化、増殖に関与している
ものと考えられている。
【0006】このように細胞接着性蛋白質は多ような生
物活性を有するため、その活性部位配列ペプチドを用い
た研究が精力的になされている。例えばフィブロネクチ
ンの細胞結合部のコア配列の利用としては、ポリマーに
RGD配列を有するペプチドを共有結合させ、人工臓器
用基体や動物細胞培養用基体として用いる方法(特開平
1-309682号公報、特開平1-305960号公報、WO 90/05036
A特許)、RGD配列を有するペプチドに疎水性領域を
連結することにより目的とするペプチドを固体表面に付
着させ、歯科用埋め込み剤や組織培養基体に利用する方
法(WO 90/11297A特許)、RGD配列を有する種々の環
状及び鎖状オリゴペプチドまたはその類縁体を用いて血
小板凝集を阻害する方法(高分子学会予稿集第38巻、31
49(1989)、特開平2-174797号公報、特開平3-118330号公
報、特開平3-118331号公報、特開平3-118398号公報、特
開平3-118397号公報、特開平3-118333号公報、WO91/013
31特許、WO 91/07429特許)、RGD配列を有するペプ
チドを細胞移動制御剤として用いる方法(特開平2-4716
号公報)、RGD配列を有するペプチドを固定化した膜
を細胞接着膜として用いる方法(高分子学会予稿集第37
巻、705(1988))、RGDS配列を有するポリペプチド
を体外血液用血小板保護剤として用いる方法(特開昭64
ー6217号公報)、ポリペプチド分子内に細胞接着活性を
有するペプチドを付加することにより人工機能性ポリペ
プチドとして利用する方法(特開平3-34996号公報)等
が開示されている。
【0007】更に近年、細胞接着性蛋白質は癌転移に関
与する生体分子としても注目されてきている。癌転移の
一連の段階では、癌細胞は種々の宿主細胞や生体高分子
と接触する。このときフィブロネクチンやラミニンのよ
うな細胞接着性分子が存在すると該細胞は多細胞塊を形
成し、癌細胞の増殖や生存がより容易になる。ところ
が、たとえばフィブロネクチンの接着コア配列であるト
リペプチドRGDが共存すると、競争的に癌細胞上のフ
ィブロネクチンレセプターと結合するため細胞接着がブ
ロックされ、癌転移阻害作用を示すことが報告されてい
る(Science 238巻, 467 (1986))。
【0008】しかしながらRGDペプチドはそれ単独で
は細胞接着活性が充分でないため、効果の増強をはかる
目的で該配列を有するオリゴペプチド、環状オリゴペプ
チド、あるいはその繰返し配列を有するポリペプチドを
用いてガン転移を制御する方法(Int. J. Biol. Macrom
ol., 11巻, 23 (1989)、同誌, 11巻, 226 (1989)、Jpn.
J. Cancer Res., 60巻, 722,(1989)、特開平2-174798
号公報)、あるいは腫瘍再発を防止する方法(特開平2-
240020号公報)も試みられている。またフィブロネクチ
ン分子中の細胞接着ポリペプチドとヘパリン結合ポリペ
プチドを構成単位とするポリペプチドを用いてガン転移
を抑制する方法(特開平3-127742号公報)も報告されて
いる。さらに血中寿命や効果の増強をはかる目的でGR
GDSペプチドにシアル酸を連結した化合物(特開平2-
233696号公報)も開示されているが、実際の効果につい
ては何も述べられていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、フィブ
ロネクチンやラミニン等の接着コア配列の癌転移抑制能
は医薬として価値の高いものと考えられ、これまで多く
の研究がなされていることがわかる。しかしこれらの癌
転移抑制作用は、実際の医療に応用するためには未だ満
足できるものではなく、更に有効な物質の開発が望まれ
ていた。特にガン細胞が転移の際に利用する接着因子に
は複数のパターン(例えば糖鎖と糖鎖、糖鎖と接着蛋
白)があると考えられ、RGDペプチドだけでは受容体
をブロックしきれていないため癌転移抑制能が不充分で
あることは大いに予想できる。
【0010】本発明者らは上述のような状況に鑑み鋭意
検討を重ねた結果、多点結合によるレセプターとの結合
能の増強が期待できる新規なペプチド誘導体を見出し、
本発明を完成するに至った。すなわち本発明の目的は、
有用な生物活性を有する新規なペプチド誘導体を提供す
ることにある。本発明はさらに、上記ペプチド誘導体を
含有してなる薬物組成物の提供も目的とする。
【0011】
【課題を解決する手段】上記課題は下記一般式(I)で
表わされるペプチド誘導体を見出したことにより達成さ
れた。従って本発明は、下記一般式(I)で表わされる
ペプチド誘導体またはその薬学上許容される塩、並びに
該化合物を有効成分として含有する癌転移抑制剤であ
る。 一般式(I) Q−W−CO−[X]−Arg−Gly−Asp−[Y]−R (I) ここでArg、Gly、Aspはアルギニン、グリシ
ン、アスパラギン酸残基をそれぞれ表わす。これらのア
ミノ酸残基はD-体、L-体、ラセミ体のいずれでも良い
が、好ましくは天然型のL-体である。
【0012】式中Wは炭素数1〜15の直鎖または置換
基を有するアルキレン基またはアリーレン基を表わし、
−O−、−NH−、−S−、エステル結合、アミド結
合、ウレタン結合、尿素結合を介していてもよい。Wが
アルキレン基である場合好ましい炭素数は1〜11であ
り、2重結合等の不飽和結合やシクロヘキサン環、ベン
ゼン環のような環状構造を介していてもよい。置換基と
しては水酸基、ハロゲン原子、カルボニル基、メチル
基、エチル基といった低級アルキル基、アセトキシ基に
代表される低級アシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ
基のような低級アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ス
ルホ基等が挙げられるが、好ましい置換基はカルボニル
基、メチル基、水酸基、アセトキシ基である。Wがアリ
ーレン基である場合は好ましい炭素数は6〜14であ
り、置換基を有していてもよい。存在してもよい置換基
としては水酸基、ハロゲン原子、メチル基、エチル基と
いった低級アルキル基、アセトキシ基に代表される低級
アシルオキシ基、メトキシ基、エトキシ基のような低級
アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、スルホ基等が挙げ
られるが、好ましい置換基はメチル基、水酸基、アセト
キシ基である。これらは環上のいずれの位置に置換して
いてもよい。
【0013】Xは存在しても存在しなくてもよいが、存
在する場合Gly残基を表わす。Yは存在しても存在し
なくてもよいが、存在する場合はSer(セリン)、T
hr(スレオニン)、Asp(アスパラギン酸)、Va
l(バリン)、Ser−Pro(セリン−プロリン)か
らなる群より選択されるアミノ酸残基またはペプチド残
基を表わす。なかでもYとしてはSer、Thr、Se
r−Pro残基が好ましい。
【0014】Rは−OH、−NR12のいずれかを表わ
す。ここでR1、R2は水素原子あるいは炭素数1〜6の
アルキル基を表わす。これらR1、R2は同一でも異なっ
ていてもよく、また連結して環状構造を有していてもよ
い。さらにR1、R2の炭素数が3以上の場合は分岐構
造、環状構造をを有していてもよい。好ましいRとして
は、−OH、−NH2、メチルアミノ基、エチルアミノ
基、イソプロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチ
ルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基を挙げることがで
きる。
【0015】Qはグリコシド結合を介してWに結合した
酸性糖残基(シアル酸残基を除く)を表わす。この場合
グリコシド結合としては、O-グリコシド、S-グリコシ
ドのいずれでもよい。N-グリコシドは不安定であるた
め本発明には不適当である。また本発明でいう酸性糖残
基とは、糖鎖上に少なくとも1つのカルボキシル基、硫
酸基、リン酸基のいずれかを有する糖残基を意味する。
糖鎖上に少なくとも1つのカルボキシル基を有する糖残
基としては、ウロン酸、ウロン酸から構成されるオリゴ
糖、2-アセトアミド-2-デオキシウロン酸、2-アセト
アミド-2-デオキシウロン酸から構成されるオリゴ糖、
6-O-カルボキシメチル-D-グルコース、6'-O-カル
ボキシメチル-D-マルトース、グルクロン酸とN-アセ
チルグルコサミンから構成されるオリゴ糖、グルクロン
酸とグルコサミンから構成されるオリゴ糖、グルクロン
酸とN-アセチルガラクトサミンから構成されるオリゴ
糖、グルクロン酸とガラクトサミンから構成されるオリ
ゴ糖、グルクロン酸とグルコースから構成されるオリゴ
糖、グルクロン酸とガラクトースから構成されるオリゴ
糖、グルクロン酸とマンノースから構成されるオリゴ
糖、ガラクツロン酸とN-アセチルグルコサミンから構
成されるオリゴ糖、ガラクツロン酸とグルコサミンから
構成されるオリゴ糖、ガラクツロン酸とN-アセチルガ
ラクトサミンから構成されるオリゴ糖、ガラクツロン酸
とガラクトサミンから構成されるオリゴ糖、ガラクツロ
ン酸とグルコースから構成されるオリゴ糖、ガラクツロ
ン酸とガラクトースから構成されるオリゴ糖、ガラクツ
ロン酸とマンノースから構成されるオリゴ糖からなる群
より選択される少なくとも1種を使用できる。
【0016】上記糖残基の中でも、ウロン酸、ウロン酸
から構成されるオリゴ糖、6-O-カルボキシメチル-D-
グルコース、グルクロン酸とガラクトースから構成され
るオリゴ糖、グルクロン酸とN-アセチルグルコサミン
から構成されるオリゴ糖、グルクロン酸とグルコサミン
から構成されるオリゴ糖、グルクロン酸とN-アセチル
ガラクトサミンから構成されるオリゴ糖、グルクロン酸
とガラクトサミンから構成されるオリゴ糖が特に好まし
い。
【0017】ウロン酸としては、例えばイズロン酸、ガ
ラクツロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸を挙げるこ
とができる。ウロン酸から構成されるオリゴ糖としては
β-グルクロノシルグルクロン酸、β-ガラクツロノシル
ガラクツロン酸を挙げることができる。グルクロン酸と
ガラクトサミンから構成されるオリゴ糖としては、例え
ばコンドロシン等を挙げることができる。グルクロン酸
とグルコサミンから構成されるオリゴ糖としては、例え
ばヒアロビオウロン酸、ヘパロシン等を挙げることがで
きる。これらの糖は天然に存在するものを用いても、化
学合成したものを用いてもよいことはいうまでもない。
また化学合成によって得られる天然には通常存在しない
結合よう式のオリゴ糖もまた好ましい。例えば6-O-カ
ルボキシメチル-D-グルコースは、1,2,3,4-テトラ-O-
ベンジル-β-D-グルコースを水素化ナトリウムの存在
下ブロム酢酸メチルでアルキル化することを鍵段階とし
て合成することができる。
【0018】糖鎖上に少なくとも1つの硫酸基、リン酸
基のいずれかを有する糖残基としては、グルコース-6-
硫酸、ガラクトース-6-硫酸、N-アセチルグルコサミン
-6-硫酸、N-アセチルガラクトサミン-6-硫酸、N-アセ
チルガラクトサミン-4-硫酸、マンノース-6-リン酸、グ
ルコース-6-リン酸、あるいはこれらの糖を構成糖とし
て含むオリゴ糖を挙げることができる。特に水酸基が硫
酸エステル化された糖は、生体内に広く分布するムコ多
糖の構成成分であり、細胞表面に存在する糖鎖との相互
作用を通して、より一層本発明の化合物と癌細胞レセプ
ターとの結合を強化しているものと考えられる。
【0019】また本発明のペプチド誘導体中に存在する
イオン性基は、適当な対イオンと塩を形成していてもよ
い(分子内で塩を形成している状態を含む)。塩の状態
でもペプチドの生物学的活性を充分に維持する。ただし
その塩は生理学的、薬理学的に許容されるものであるこ
とが必要である。具体的には塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、
リン酸塩のような無機酸との塩、酢酸塩、乳酸塩、酒石
酸塩等の有機酸との塩、さらにアンモニウム塩、ナトリ
ウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩等が挙げられる
が、なかでも塩酸塩、酢酸塩、ナトリウム塩が特に好ま
しい。そのような塩への変換は慣用手段により行うこと
ができる。
【0020】以下に本発明の化合物の具体例を示すが、
本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
【化1】
【0022】
【化2】
【0023】次に本発明の化合物の合成法について説明
する。本発明の化合物は種々の方法でこれを合成するこ
とができるが、ペプチド部と糖残基を必須構成成分とし
て有しているため、その合成にあたってはペプチド部と
糖部を別々に合成した後両成分を連結、さらに脱保護す
ることにより合成する方法が有利である。まずペプチド
部の合成方法としては、固相法及び固相法を利用したペ
プチド自動合成装置による合成法、または液相法が挙げ
られる。固相法及び固相法を利用したペプチド自動合成
装置による合成法に関しては、生化学実験講座・タンパ
ク質の化学IV p.207(日本生化学会編、東京化学同
人)、続生化学実験講座・タンパク質の化学(下) p.6
41(日本生化学会編、東京化学同人)等に記載されてい
る。
【0024】またペプチド部分を液相法によって合成す
ることも可能である。すなわち保護C末端成分から出発
し、N末端保護基を除去したのち保護アミノ酸を逐次縮
合する方法である。またフラグメント縮合を行う方法も
有効である。保護アミノ酸あるいは保護ペプチドを縮合
する方法は特に限定されず、公知の方法は基本的にすべ
て用いることができる。ペプチド合成に関しては、泉屋
信夫ら編「ペプチド合成の基礎と実験」(丸善)に詳述
されているが、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールとDC
Cを用いるDCC-Additive法、あるいはカルボニルジイミ
ダゾールを用いる縮合法が最も良い結果を与えた。
【0025】糖部分の合成は、グリコシル化反応を鍵段
階として行うことができる。グリコシル化反応には種々
の方法が知られているが、糖の種類や入手の容易さ、脱
保護条件等を考慮して適宜反応条件を設定することがで
きる。反応は基本的に糖供与体および糖受容体となるア
ルコールをプロモーターの存在下縮合することにより行
われる。例えば糖供与体として塩化糖、臭化糖を用いる
場合には、プロモーターとして酸化銀、炭酸銀、過塩素
酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀、シアン化第二
水銀、臭化水銀等が用いられる。フッ化糖を糖供与体と
して用いる場合には、プロモーターとして塩化第一スズ
/過塩素酸銀、二塩化ジルコノセン/過塩素酸銀等を用
いることができる。糖供与体としてアルキルチオ体を用
いる場合には、プロモーターとしてジメチル(メチルチ
オ)スルホニウムトリフレート、トリフルオロメタンス
ルホン酸メチルエステル、フェニルセレニルトリフレー
トなどが用いられる。糖供与体としてイミデートを用い
る場合には、反応はルイス酸(例えば三フッ化ホウ素ジ
エチルエーテル錯体など)を用いて行う。以上のグリコ
シル化反応を行うにあたっては、モレキュラーシーブや
ドライライトといった脱水乾燥剤を用いることもでき
る。また糖残基の還元末端がN-アセチルグルコサミン
のような2-アセトアミド-2-デオキシ糖である場合
は、オキサゾリン法によるグリコシル化が有効である。
【0026】糖残基がアリールグリコシドである場合に
は、ポリアセチル化糖とフェノールを無極性溶媒(ベン
ゼン、トルエンなど)中で加熱する反応を鍵段階として
合成することができる。特にp-ニトロフェニルグリコシ
ド体は購入することも可能である。
【0027】またS-グリコシドは糖供与体として塩化
糖、臭化糖を用いてチオールと反応させるKoenig-Knorr
法により合成することができる。チオールはアルコール
より求核反応性が強いため反応は容易に進行する。
【0028】糖部分とペプチド部の連結は、下記一般式
(II)及び(III)で表わされる両成分を縮合することによ
り行うことができる。一般式(II)及び(III)中、Q、
W、[X]、[Y]及びRは一般式(I)におけるものと
同義である。 Q−W−COOH (II) H−[X]−Arg−Gly−Asp−[Y]−R (III)
【0029】この際、反応に関与するカルボキシル基お
よびペプチドN末端のアミノ基以外の反応性官能基は、
適当な保護基で保護しておくことが望ましい。縮合方法
は特に限定されず、ペプチド結合形成の場合と基本的に
同ようの方法で行うことができる。具体的にはカルボニ
ルジイミダゾールを用いる縮合法等が挙げられる。
【0030】保護基の除去の条件は用いている保護基の
種類に依存する。通常用いられる方法は、加水素分解、
アルカリケン化等であるが、保護基の種類によってはさ
らに様々な方法も可能であることは言うまでもない。目
的とするペプチド誘導体は脱保護した後公知の方法、例
えばイオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマト
グラフィーなどで精製することができる。
【0031】つぎに本発明のペプチド誘導体の作用及び
用途について説明する。本発明のペプチド誘導体は、細
胞接着に関与する最小単位であるArg−Gly−As
pなるトリペプチド配列と酸性糖残基を必須構成単位と
して有するため、多点結合によるレセプターとの結合能
の増強が期待できる化合物である。すなわち本発明のペ
プチド誘導体は、悪性細胞上のフィブロネクチン受容体
に作用し、フィブロネクチンへの悪性細胞の結合を阻害
することにより悪性細胞の結合組織等への接着、コロニ
ー化、破壊的浸食を阻止する。さらに糖残基が存在する
ことにより、細胞表面に存在する糖鎖との相互作用を通
して本発明のペプチド誘導体と細胞の結合がより一層強
化されると考えられ、また糖残基の存在は本発明のペプ
チド誘導体の血中寿命の延長にも寄与しているものと考
えられる。本発明のペプチド誘導体は、乳癌、表皮癌、
筋線メラノーマ(muscle line melanoma)、表皮線神経
芽細胞腫xグリオマ(epidermal line neuroblastoma x
glioma )、軟骨細胞、フィブロザルコーマを含め種々
の細胞の接着及び転移を阻止するのに有効である。
【0032】さらに本発明のペプチド誘導体は創傷治癒
作用、毛細血管内で起こる癌細胞による血小板凝集の抑
制作用等の広範な生物活性が認められている。また本発
明のペプチド誘導体はマウスを用いて毒性試験を行った
ところ、毒性は全く認められなかった。
【0033】本発明のペプチド誘導体またはその塩は、
ペプチド系医薬に一般に使用されている投与方法によっ
て使用することができ、通常賦形剤を含む薬物組成物と
して投与される。この薬物組成物は、例えばレミントン
の薬科学(Remington's Pharmaceutical Sciences, Mer
ck, 16, (1980))に開示されているような、公知のどの
ような方法で製造してもよい。賦形剤としては蒸留水、
生理食塩水、リン酸塩あるいは酢酸塩のような緩衝塩類
を含有する緩衝液、浸透圧調節剤としての塩化ナトリウ
ムやショ糖、若しくはアスコルビン酸のような酸化防止
剤、または薬学上許容し得るこれらの組合せがある。
【0034】このような薬物組成物は溶液、錠剤のよう
な種々の形態とすることができる。投与形態としては経
口、経鼻、非経口(静脈注射、皮下注射、腹腔内投与
等)等のなかから適宜選択することができる。例えば生
理食塩水に溶解して注射用製剤としてもよく、あるいは
0.1規定程度の酢酸緩衝液に溶解した後凍結乾燥剤とし
てもよい。またリポソーム中に内包したマイクロカプセ
ル剤あるいはミクロスフェアー等の形態で利用すること
も可能である。
【0035】本発明のペプチド誘導体の投与量は、通常
0.2 μg/kgから200 mg/kgの範囲であるが、患者の年
齢、体重、症状、投与方法によって決定されるものであ
る。
【0036】以下実施例によって本発明を更に詳細に説
明する。例示化合物1の合成法について詳細に説明する
が、他の例示化合物も基本的に同様の方法で合成を行っ
た。例示化合物1の合成経路を以下に示す。なお通常用
いられる溶媒や試薬、保護基の表記には以下の略号を使
用した。
【0037】Boc :t-ブトキシカルボニル Bn :ベンジル Ac :アセチル Me :メチル HOBt :1-ヒドロキシベンゾトリアゾール DCC :ジシクロヘキシルカルボジイミド iPr2NEt :ジイソプロピルエチルアミン AcOH :酢酸 AcOEt :酢酸エチル DMF :ジメチルホルムアミド Z :ベンジルオキシカルボニル CDI :カルボニルジイミダゾール TFA :トリフルオロ酢酸
【0038】
【化3】
【0039】
【化4】
【0040】
【実施例】
実施例1 例示化合物1の合成 1) 中間体1の合成 Boc-Ser(Bn)-OH (20.4 g, 69 mmol)、ベンジルブロミド
(13 g, 76 mmol)、ジイソプロピルエチルアミン (9.8
g, 76 mmol)を酢酸エチル (100 ml)に溶解し、反応混合
物を5時間加熱還流した。室温まで放冷した後、生成し
た塩を濾過して除き、濾液を水、1 M クエン酸溶液、飽
和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで
乾燥した後、減圧濃縮して中間体1を無色油状物として
得た。これを精製することなく次の反応に用いた。
【0041】2) 中間体2の合成 前項記載の方法により得た中間体1の塩化メチレン (80
ml) 溶液にトリフルオロ酢酸 (80 ml) を加え、反応混
合物を室温で40分間撹拌した。反応終了後減圧濃縮し
て大部分の溶媒を留去し、残渣を酢酸エチルで希釈し、
飽和重曹水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウム
で乾燥した後、減圧濃縮してアミン体を無色油状物とし
て得た。
【0042】得られたアミン体とBoc-Asp(Bn)-OH (22.6
g, 70 mmol)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール (10.7
g, 70 mmol)をDMF (80 ml) 及び塩化メチレン (80 ml)
の混合溶媒に溶解し、氷冷しながらDCC (14.4 g, 70 mm
ol) を加えた。反応混合物を氷冷下2時間、更に室温ま
で昇温しながら終夜撹拌した後、セライト濾過して生成
した沈殿を除去した。濾液を適当量の酢酸エチルで希釈
し、水、5 % 炭酸ナトリウム溶液、1 M クエン酸溶液、
飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した
後、減圧濃縮して油状物を得た。シリカゲルカラムクロ
マトグフラフィーで精製(溶出液:ヘキサン/酢酸エチ
ル=4/1)し、目的とする中間体2を無色結晶として
35 .8 g(3段階で収率87 %)得た。
【0043】3) 中間体3の合成 中間体2 (35.7 g, 60.5 mmol) の塩化メチレン (100 m
l) 溶液にトリフルオロ酢酸 (100 ml) を加え、反応混
合物を室温で40分間撹拌した。反応終了後溶媒を留去
し、残渣をエーテルから結晶化させてトリフルオロ酢酸
塩32.5 gを得た。
【0044】得られたトリフルオロ酢酸塩 (18.9 g, 3
1.3 mmol) とBoc-Gly-OH (5.75 g, 33 mmol)、1-ヒドロ
キシベンゾトリアゾール (5.04 g, 33 mmol)、ジイソプ
ロピルエチルアミン (4.45 g, 34.4 mmol) をDMF (20 m
l) 及び塩化メチレン (50 ml)の混合溶媒に溶解し、氷
冷しながらDCC (6.8 g, 33 mmol) を加えた。反応混合
物を氷冷下2時間、更に室温まで昇温しながら終夜撹拌
した後、セライト濾過して生成した沈殿を除去した。濾
液を適当量の酢酸エチルで希釈し、水、5 %炭酸ナトリ
ウム溶液、1 M クエン酸溶液、飽和食塩水で洗浄し、無
水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮して無色固形
物を得た。これをヘキサン/酢酸エチル(2/1)から
再結晶して中間体3を17.9 g (収率87 %)得た。
【0045】4) 中間体4の合成 中間体3 (17.9 g, 27 mmol) の塩化メチレン (60 ml)
溶液にトリフルオロ酢酸 (60 ml) を加え、反応混合物
を室温で1時間撹拌した。反応終了後溶媒を留去し、残
渣をエーテルから結晶化させてトリフルオロ酢酸塩15.9
gを得た。一方、Boc-Arg(Z)2-OH (5.0 g, 9.2 mmol)を
DMF (20ml) に溶解し、これに氷冷しながらCDI(1.51
g, 9.3 mmol) のDMF (10 ml) 溶液を加えた。反応混合
物を氷冷しながら1時間撹拌した後、上記操作により得
られたトリフルオロ酢酸塩(6.22 g, 9.2 mmol) とジイ
ソプロピルエチルアミン (1.32 g, 9.5 mmol) のDMF (2
0 ml) 溶液を加えた。反応混合物を氷冷下2時間、更に
室温まで昇温しながら終夜撹拌した後、減圧下溶媒を留
去した。得られた固形物をエーテルから再結晶し、目的
とする中間体4を無色結晶として10.8 g(定量的)得
た。
【0046】FAB-MS: (M+H)+ 1072.
【0047】5) 中間体5の合成 中間体4 (11.5 g, 11 mmol) の塩化メチレン (40 ml)
溶液にトリフルオロ酢酸 (40 ml)を加え、反応混合物を
室温で1時間撹拌した。反応終了後溶媒を留去し、残渣
を酢酸エチルに溶解した。酢酸エチル層を飽和重曹水、
飽和食塩水でこの順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾
燥した後、減圧濃縮した。残渣をエーテルから再結晶し
て中間体5を11.5 g (定量的)得た。
【0048】FAB-MS: (M+H)+ 972, (M+Na)+ 994.
【0049】6) 中間体6の合成 2-(2-N-ベンジルオキシカルボニルアミノエトキシ)エ
タノール (7.2 g, 30mmol)、炭酸銀 (12 g)、ドライラ
イト (40 g)、乾燥したアルコールを含まないクロロホ
ルム (100 ml) からなる混合物を、遮光条件下1時間撹
拌して系内の水分を除去した。ヨウ素 (4 g) を加えた
のち、(2,3,4-トリ-O-アセチル-α-D-グルコピラノシ
ルブロミド)-ウロネートメチルエステル[8 g, 20 mmo
l,文献(Y.A. Hassan, J. Carbohydrates. Nucreoside
s. Nucreotides, 4巻, 77頁 (1977)記載の方法により調
製]のクロロホルム (50 ml) 溶液を30分以上かけて
加え、反応混合物を室温で30時間撹拌した。セライト
濾過して不溶性成分を除き、セライト層をクロロホルム
で洗浄した。濾液及び洗液を合わせて水、飽和食塩水で
洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮し
て油状物を得た。シリカゲルカラムクロマトグフラフィ
ーで精製(溶出液:クロロホルム)し、目的とする中間
体6を無色油状物として8.9 g(収率80 %)得た。
【0050】FAB-MS: (M+H)+ 556, (M+Na)+ 578.
【0051】7) 中間体7の合成 中間体6 (5.4 g, 9.7 mmol) のメタノール (100 ml)
溶液に、10 % Pd-C(300 mg) を加え、反応混合物を水素
雰囲気下室温で13時間撹拌した。反応終了後触媒をセ
ライト濾過して除き、セライト層をメタノールで洗浄し
た。濾液及び洗液を合わせて減圧濃縮し、アミン体 4.1
g を無色油状物として得た。
【0052】得られたアミン体を塩化メチレン (50 ml)
に溶解し、トリエチルアミン(1.02 g, 10 mmol) を加
えた後、氷冷しながらコハク酸無水物 (980 mg, 9.8 mm
ol) を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した後、
適当量の水を加えて反応を停止した。有機層を分取した
後水層をクロロホルムで抽出した。クロロホルム層を合
わせて水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで
乾燥した後減圧濃縮し、目的とする中間体7を油状物と
して5.0 g(定量的)得た。
【0053】FAB-MS: (M+H)+ 552.
【0054】8) 中間体8の合成 中間体7 (1.86 g, 3.6 mmol) を乾燥DMF (15 ml) に溶
解し、これに氷冷しながらCDI(620 mg, 3.8 mmol) の
乾燥DMF (10 ml) 溶液を加えた。反応混合物を氷冷しな
がら1時間撹拌した後、中間体5 (3.5 g, 3.6 mmol)
のDMF (20 ml)溶液を加えた。反応混合物を氷冷下2時
間、更に室温まで昇温しながら20時間撹拌した後、減
圧下溶媒を留去した。残渣をエーテルから再結晶し、目
的とする中間体8を無色粉末として 3.7 g(収率70 %)
得た。
【0055】FAB-MS: (M+H)+ 1475.
【0056】9) 中間体9の合成 中間体8 (1.6 g, 1 mmol) の 酢酸(40 ml) 溶液に10 %
Pd-C (200 mg) を加え、反応混合物を水素雰囲気下室
温で36時間撹拌した。触媒をセライト濾過して除き、
セライト層を酢酸で洗浄した。濾液及び洗液を合わせて
減圧濃縮した。残渣を少量の水に溶解して凍結乾燥し、
中間体9を無色粉末として 900 mg (収率88 %)得た。
【0057】FAB-MS: (M+H)+ 937.
【0058】10) 例示化合物1の合成 中間体9 (650 mg, 0.7 mmol) の水溶液 (20 ml) に粉
末ナトリウムメトキシド (180 mg, 3.3 mmol) を加え、
反応混合物を室温で4時間撹拌した。反応終了後希酢酸
を加えて反応液を中和し、減圧濃縮した。残渣を少量の
水にとかしイオン交換クロマトグラフィー(アンバーラ
イトIRA-93ZU)、ついでセファデクッスG-10を用いた
ゲル濾過クロマトグラフィーにかけて精製、凍結乾燥し
て目的とする例示化合物1を無色無定形固体として 470
mg (収率84 %)得た。
【0059】FAB-MS: (M+H)+ 797.
【0060】実施例2 例示化合物2の合成 中間体5と下記式で表わされる中間体10の縮合を鍵段
階として、実施例1に記載の方法と同様の方法で例示化
合物2を合成した。
【0061】
【化5】
【0062】収量 1.05 g, FAB-MS: (M+H)+696.
【0063】実施例3 例示化合物3の合成 中間体5と下記式で表わされる中間体11の縮合を鍵段
階として、実施例1に記載の方法と同様の方法で例示化
合物3を合成した。
【0064】
【化6】
【0065】収量 230 mg, FAB-MS: (M+H)+801.
【0066】実施例4 例示化合物4の合成 中間体5と下記式で表わされる中間体12の縮合を鍵段
階として、実施例1に記載の方法と同様の方法で例示化
合物4を合成した。
【0067】
【化7】
【0068】収量 370 mg, FAB-MS: (M+H)+899, (M+
Na)+ 21.
【0069】実施例5 例示化合物5の合成 中間体5と下記式で表わされる中間体13の縮合を鍵段
階として、実施例1に記載の方法と同様の方法で例示化
合物5を合成した。
【0070】
【化8】
【0071】収量 110 mg, FAB-MS: (M+H)+858.
【0072】実施例6 例示化合物6の合成 中間体7と下記式で表わされる中間体14の縮合を鍵段
階として、実施例1に記載の方法と同様の方法で例示化
合物6を合成した。
【0073】
【化9】
【0074】収量 510 mg, FAB-MS: (M+H)+854.
【0075】実施例7 例示化合物7の合成 中間体7と下記式で表わされる中間体15の縮合を鍵段
階として、実施例1に記載の方法と同様の方法で例示化
合物7を合成した。
【0076】
【化10】
【0077】収量 490 mg, FAB-MS: (M+H)+752.
【0078】実施例8 例示化合物8の合成 中間体12と下記式で表わされる中間体16の縮合を鍵
段階として、実施例1に記載の方法と同様の方法で例示
化合物8を合成した。
【0079】
【化11】
【0080】収量 210 mg, FAB-MS: (M+H)+998.
【0081】実施例9 癌転移阻害作用 本発明の化合物の癌転移阻止作用について実験的肺転移
モデル系によって検討した。本発明の例示化合物1、
2、4、5、7、8及び比較例としてArg-Gly-Asp-Ser
及びGly-Arg-Gly-Asp-Serを用いた。これらのペプチド
各々1000 μgと非常に転移性の強い癌細胞であるB16-BL
6メラノーマ細胞(対数増殖期のもの5x 104個)を各々P
BS 0.2 ml中で混合し、その0.2 mlを1群5匹のC57BL/6
の雌マウスに尾静脈注射した。投与後14日目にマウス
を屠殺、解剖し、肺に転移した癌のコロニー数を計測し
て対照のPBS投与群と比較した。その結果を以下に示
す。
【0082】 ────────────────────────────────── 肺への転移数 投与化合物 平均±SD (範囲) ────────────────────────────────── PBS(未処理) 139±58 (62-219) 例示化合物1 54±11 (34-64)* 例示化合物2 51±27 (23-92)* 例示化合物4 20±6 (10-28)** 例示化合物5 6±5 (0-15)** 例示化合物7 34±12 (21-48)** 例示化合物8 25±10 (12-43)** Arg-Gly-Asp-Ser 177±68 (78-246) Gly-Arg-Gly-Asp-Ser 162±28 (128-193) ────────────────────────────────── * t-検定で未処理対照と比較してP<0.01 ** P<0.001
【0083】この結果によれば、本発明の例示化合物
1、2、4、5、7、8の投与によって肺への癌転移は
有意に抑制された。これに対し単なるコア配列であるAr
g-Gly-Asp-SerやGly-Arg-Gly-Asp-Serではこのような転
移の抑制効果は見られないことが判る。従って、上記結
果により本発明のペプチド誘導体の癌転移抑制効果が明
確に示されている。
【0084】以上実施例により本発明を特定の例に関し
て説明したが、限定して解釈されるべきではない。本発
明の本質及び範囲から逸脱しない種々の変更や修正が可
能であることは明らかであり、そのような発明は本発明
に含まれるものである。
【0085】
【発明の効果】以上説明したように本発明のペプチド誘
導体は、細胞接着に関与する最小単位であるArg−G
ly−Aspなるトリペプチド配列と酸性糖残基を必須
構成単位として有するため、単なるフィブロネクチンの
コア配列断片と比較して細胞接着性が大きく、癌転移抑
制作用等の種々の生物活性を充分に保持し、毒性の問題
もほとんど無い。よって本発明のペプチド誘導体は医薬
として価値の高いものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 済木 育夫 北海道札幌市厚別区厚別北3条西5丁目12 −6 (72)発明者 東 市郎 北海道札幌市南区真駒内上町5丁目3−2

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(I)で表わされるペプチド
    誘導体またはその薬学上許容される塩。 一般式(I) Q−W−CO−[X]−Arg−Gly−Asp−[Y]−R (I) 式中Wは炭素数1〜15の直鎖または置換基を有するア
    ルキレン基またはアリーレン基を表わし、−O−、−N
    H−、−S−、エステル結合、アミド結合、ウレタン結
    合、尿素結合を介していてもよい。Xは存在しても存在
    しなくてもよいが、存在する場合Gly残基を表わす。
    Yは存在しても存在しなくてもよいが、存在する場合S
    er,Thr,Asp,Val及びSer−Proから
    なる群より選択されるアミノ酸残基またはペプチド残基
    を表わす。Rは−OHまたは−NR12のいずれかを表
    わす。ここでR1、R2は水素原子あるいは炭素数1〜6
    のアルキル基を表わし、R1、R2は連結して環状構造を
    形成してもよい。Qはグリコシド結合を介してWに結合
    した酸性糖残基(シアル酸残基を除く)を表わす。
  2. 【請求項2】Qが、糖鎖上に少なくとも1つのカルボキ
    シル基、硫酸基、リン酸基のいずれかを有する糖残基で
    ある、請求項1に記載のペプチド誘導体またはその薬学
    上許容される塩。
  3. 【請求項3】Qが、ウロン酸、ウロン酸から構成される
    オリゴ糖、2-アセトアミド-2-デオキシウロン酸、2-
    アセトアミド-2-デオキシウロン酸から構成されるオリ
    ゴ糖、6-O-カルボキシメチル-D-グルコース、6'-O
    -カルボキシメチル-D-マルトース、グルクロン酸とN-
    アセチルグルコサミンから構成されるオリゴ糖、グルク
    ロン酸とグルコサミンから構成されるオリゴ糖、グルク
    ロン酸とN-アセチルガラクトサミンから構成されるオ
    リゴ糖、グルクロン酸とガラクトサミンから構成される
    オリゴ糖、グルクロン酸とグルコースから構成されるオ
    リゴ糖、グルクロン酸とガラクトースから構成されるオ
    リゴ糖、グルクロン酸とマンノースから構成されるオリ
    ゴ糖、ガラクツロン酸とN-アセチルグルコサミンから
    構成されるオリゴ糖、ガラクツロン酸とグルコサミンか
    ら構成されるオリゴ糖、ガラクツロン酸とN-アセチル
    ガラクトサミンから構成されるオリゴ糖、ガラクツロン
    酸とガラクトサミンから構成されるオリゴ糖、ガラクツ
    ロン酸とグルコースから構成されるオリゴ糖、ガラクツ
    ロン酸とガラクトースから構成されるオリゴ糖、ガラク
    ツロン酸とマンノースから構成されるオリゴ糖からなる
    群より選択される糖残基である、請求項1に記載のペプ
    チド誘導体またはその薬学上許容される塩。
  4. 【請求項4】Qが、ウロン酸、ウロン酸から構成される
    オリゴ糖、6-O-カルボキシメチル-D-グルコース、グ
    ルクロン酸とガラクトースから構成されるオリゴ糖、グ
    ルクロン酸とN-アセチルグルコサミンから構成される
    オリゴ糖、グルクロン酸とグルコサミンから構成される
    オリゴ糖、グルクロン酸とN-アセチルガラクトサミン
    から構成されるオリゴ糖、グルクロン酸とガラクトサミ
    ンから構成されるオリゴ糖からなる群より選択される糖
    残基である、請求項1に記載のペプチド誘導体またはそ
    の薬学上許容される塩。
  5. 【請求項5】一般式(I)で表わされるペプチド誘導体
    またはその薬学上許容される塩を有効成分として含有し
    てなる、癌転移抑制剤。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
EP0731704A4 (en) * 1994-07-11 1998-12-30 Metastat Inc SYNTHETIC GLUCOSAMINS THAT PROMOTE OR INHIBIT CELL ADHEDION

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