JPH05116215A - 感熱孔版原紙用フイルム - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 取り扱い作業性および穿孔感度に優れ、印刷
時の解像度、印刷濃度、耐刷性の改良された感熱孔版印
刷原紙用フィルムを提供する。 【構成】 厚み０．５〜２．５μｍの二軸延伸ポリエス
テルフィルムであって、該フィルムの１００℃−１０分
間の熱収縮率Ｘ（％）、１００〜１６０℃におけるフィ
ルム縦方向の最大熱収縮応力Ｙ_MD（ｇ／ｍｍ²）および
フィルム横方向の最大収縮応力Ｙ_TD（ｇ／ｍｍ²）が下
記式〜を同時に満足することを特徴とする感熱孔版
原紙用フィルム。 【数１】 １５≦Ｘ≦８０・・・・・・・・・・・・ ５００≦（Ｙ_MD＋Ｙ_TD）／２≦１５００・・・・・・ １．０≦Ｙ_TD／Ｙ_MD≦３．０・・・・・・・・

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は感熱孔版印刷原紙用ポリ
エステルフィルムに関する。さらに詳しくは、本発明
は、取り扱い作業性および穿孔感度に優れ、印刷時の解
像度、印刷濃度、耐刷性の改良された感熱孔版印刷原紙
用フィルムに関する。

【０００２】

【従来の技術および発明が解決しようとする課題】従
来、感熱孔版印刷用原紙としては、ポリエステル等の熱
可塑性樹脂フィルムに多孔性薄葉紙をラミネートしたも
のが知られており、かかる用途に用いられるフィルムに
は、以下のような特性が要求される。 （１）熱穿孔感度が良いこと。すなわち、少量の熱量で
溶融し、かつ、印刷時の画像が鮮明になるような適度な
大きさの穿孔が得られるような十分な熱収縮率を有する
こと。

【０００３】（２）多孔性薄葉紙とのラミネートおよび
印刷時の作業に十分耐え得る強度、弾性率を有するこ
と。また、かかる作業において、加熱工程があっても、
その影響で原紙の著しいカール等の問題が生じないこ
と。 （３）熱穿孔の階調性が良いこと。原紙として使用する
際、穿孔されるべき部分以外が周囲の穿孔の影響で溶融
してしまうと、印刷画像の階調性が劣るようになり、好
ましくない。すなわち、穿孔される部分と穿孔されない
部分とがはっきり区別できるような熱穿孔特性を有する
こと。

【０００４】また、これらの要件に加え、フィルム製造
時の生産性にも優れていることが求められ、具体的に
は、フィルムの延伸性が良好で、破断等のトラブルを起
こさず、また、巻取性、スリット性も良好で、巻取時に
シワが入ったり、巻きずれを起こしたりしないことが必
要である。

【０００５】従来、かかる用途に用いるフィルムとして
熱可塑性樹脂を対象とした二軸延伸フィルムであって、
その熱的特性を規定することにより印刷特性を改善した
フィルム（特開昭６２−１４９４９６号公報）、あるい
は熱収縮特性を規定したフィルム（特開昭６２−２８２
９８３号公報）等が提案されているが、上記した要件を
すべて満足するものではなかった。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題に
鑑み、鋭意検討した結果、特定の粒径の微粒子を含有
し、融点および熱収縮応力がある特定の条件を満足する
二軸配向ポリエステルフィルムが感熱孔版印刷原紙用フ
ィルムとして好適であることを見いだし、本発明を完成
するに至った。

【０００７】すなわち、本発明の要旨は、厚み０．５〜
２．５μｍの二軸延伸ポリエステルフィルムであって、
該フィルムの１００℃−１０分間の熱収縮率Ｘ（％）、
１００〜１６０℃におけるフィルム縦方向の最大熱収縮
応力Ｙ_MD（ｇ／ｍｍ²）およびフィルム横方向の最大収
縮応力Ｙ_TD（ｇ／ｍｍ²）が下記式〜を同時に満足
することを特徴とする感熱孔版原紙用フィルムに存す
る。

【数２】 １５≦Ｘ≦８０・・・・・・・・・・・・ ５００≦（Ｙ_MD＋Ｙ_TD）／２≦１５００・・・・・・ １．０≦Ｙ_TD／Ｙ_MD≦３．０・・・・・・・・

【０００８】以下、本発明を詳細に説明する。本発明で
いうポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸を主たる酸
成分とし、アルキレングリコールを主たるグリコール成
分とするポリエステルを指す。芳香族ジカルボン酸とし
ては、テレフタル酸、イソフタル酸、２，６−ナフタレ
ンジカルボン酸等が挙げられる。また、アルキレングリ
コールとしては、エチレングリコール、トリメチレング
リコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグ
リコール、１，４−シクロヘキサンジメタノール等が挙
げられる。

【０００９】かかるポリエステルは、１種類の芳香族ジ
カルボン酸と、１種類のアルキレングリコールとを出発
原料とするポリエステルでもよいが、３種類以上の成分
を含む共重合体であることが好ましい。共重合可能な成
分としては、上記の外に、ジエチレングリコール、ポリ
アルキレングリコール、あるいはアジピン酸、セバシン
酸等の脂肪族ジカルボン酸、ｐ−ヒドロキシ安息香酸等
のオキシカルボン酸等が挙げられる。

【００１０】本発明においては、フィルムとしたとき、
その融点が例えば１７０〜２３０℃、好ましくは１７０
〜２２０℃、さらに好ましくは１９０〜２１０℃の範囲
となるよう、適宜、組成を選択する。融点が２３０℃を
超えるものは、穿孔に必要な熱エネルギーが多量にな
り、穿孔感度が劣るようになるため好ましくない。融点
が１７０℃未満では、印刷画像の階調性が劣るようにな
る。本発明で用いるポリエステルの極限粘度は、通常、
０．４０以上、好ましくは０．５０〜１．０である。極
限粘度が０．４０未満では、フィルムの生産性が劣った
り、フィルムの機械的強度が不足する。本発明のフィル
ムのガラス転移鴬度は、６０℃以上であることが好まし
い。ガラス転移点が６０℃未満では、原紙作成時の加熱
工程で原紙がカールするようになるため好ましくない。

【００１１】本発明で用いるポリエステルの極限粘度
は、通常、０．４０以上、好ましくは０．５０〜１．０
の範囲である。極限粘度が０．４０未満では、フィルム
の生産性が劣ったり、フィルムの機械的強度が不足した
りする。本発明のフィルムのガラス転移鴬度は、６０℃
以上であることが好ましい。ガラス転移鴬度が６０℃未
満では、原紙作成時の加熱工程で原紙がカールしやすく
なる。本発明のフィルムの厚みは０．５〜２．５μｍの
範囲であり、好ましくは１．０〜２．０μｍの範囲であ
る。フィルムの厚みが薄くなれば熱伝達距離が短縮さ
れ、穿孔時に必要な熱エネルギーも減少するため穿孔性
が向上し、印刷時の解像度や印字品位性が向上するが、
厚み０．５μｍ未満では印字が不鮮明で濃淡ムラが生じ
やすく、耐刷性も著しく低下するようになる。また、フ
ィルムの製造においても生産性、巻上げ作業性が悪化す
る。厚みが２．５μｍを越えるフィルムでは、穿孔性が
悪化するため印刷時にムラが生じるようになり、好まし
くない。

【００１２】本発明のフィルムは、フィルム製造時の巻
上げ工程、原紙作成時のコーティング、貼合せ工程およ
び印刷時の作業性を向上させるため、あるいは、熱穿孔
時のサーマルヘッドとフィルムとの融着を防止するた
め、表面を粗面化してフィルムに適度な滑り性を付与す
ることが好ましい。表面を適度に粗面化するために、例
えばフィルムに平均粒径０．０５〜２．０μｍの微粒子
を０．１〜５．０重量％、好ましくは０．１〜３．０重
量％含有させる。かかる微粒子の例としては、炭酸カル
シウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシ
ウム、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、リン酸リチウ
ム、リン酸マグネシム、フッ化リチウム、酸化アルミニ
ウム、酸化ケイ素、酸化チタン、カオリン、タルク、カ
ーボンブラック、窒化ケイ素、窒化ホウ素および特公昭
５９−５２１６号公報に記載されたような架橋高分子微
粉体を挙げることができるが、これらに限定されるもの
ではない。この際、配合する微粒子は、単成分でもよ
く、また、２成分以上を同時に用いてもよい。

【００１３】本発明においては上記したような方法によ
り、表面を適度に粗面化したフィルムを得るが、作業性
や印刷時の解像度、印字品位性を高度に満足させるため
には、例えばフィルム表面の中心線平均粗さ（Ｒａ）が
０．０１５〜０．５μｍ、さらに好ましくは０．０２〜
０．３μｍの範囲となるよう適宜、条件を選択する。本
発明のフィルムは、極めて薄いフィルムであるので、フ
ィルムの長手方向と幅方向の引張弾性率を共に３００kg
/mm²以上、好ましくは３５０kg/mm²以上とすることによ
り、取り扱い作業性や耐刷性がより良好となる。

【００１４】本発明のフィルムは、ある特定の熱収縮特
性を満足することが必要である。すなわち、本発明のフ
ィルムの１００℃−１０分間の熱収縮率Ｘ（％）、１０
０〜１６０℃におけるフィルムの縦方向の最大熱収縮応
力Ｙ_MD（ｇ／ｍｍ²）および横方向の最大収縮応力Ｙ_TD
（ｇ／ｍｍ²）が下記式〜を同時に満足することが
必要である。

【数３】 １５≦Ｘ≦８０・・・・・・・・・・・・ ５００≦（Ｙ_MD＋Ｙ_TD）／２≦１５００・・・・・・ １．０≦Ｙ_TD／Ｙ_MD≦３．０・・・・・・・・ 、熱収縮率が１５％未満では、穿孔感度が不足するため
好ましくない。また、熱収縮率が８０％を超えると、原
紙作成時や原紙の保存時に原紙がカールしたり、フィル
ムと薄葉紙とが剥離したりするようになる。熱収縮率は
１８〜６０％の範囲が好ましい。

【００１５】本発明のフィルムのＹ_MDとＹ_TDとの平均値
は、５００〜１５００ｇ／ｍｍ²、好ましくは５５０〜
１３００ｇ／ｍｍ²の範囲である。かかる平均値が５０
０ｇ／ｍｍ²に達しない場合は、十分な大きさの穿孔が
得られないため感度が劣るようになる。また、かかる平
均値が１５００ｇ／ｍｍ²を超えると、原紙製造工程で
原紙のカールが著しくなる。上記式から明らかなとお
り、本発明のフィルムのＹ_MDはＹ_TDよりも小さい値にな
る。これは、通常、原紙製造時にフィルムの縦方向に張
力がかかるため原紙としたときの収縮応力の縦横のバラ
ンスが悪くなるので、あらかじめ横方向の収縮応力値を
高めることによって、原紙の品質や耐刷性を高めること
ができるからである。ただし、Ｙ_TD／Ｙ_MDが３を超える
と、カールしやすくなるので好ましくない。Ｙ_TD／Ｙ_MD
は、好ましくは１．２から２．５の範囲である。

【００１６】次に本発明のポリエステルフィルムの製造
方法について説明する。本発明においては、ポリマーを
エクストルーダーに代表される周知の溶融押出装置に供
給し、該ポリマーの融点以上の鴬度に加熱し溶融する。
次いで、溶融したポリマーをスリット状のダイから押し
出し、回転冷却ドラム上でガラス転移鴬度以下の鴬度に
なるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シー
トを得る。この場合、シートの平面性を向上させるた
め、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高める必要が
あり、本発明においては静電印加密着法および／または
液体塗布密着法が好ましく採用される。

【００１７】静電印加密着法とは、通常、シートの上面
側にシートの流れと直交する方向に線状電極を張り、該
電極に約５〜１０kVの直流電圧を印加することによりシ
ートに静電荷を与え、ドラムとの密着性を向上させる方
法である。また、液体塗布密着法とは、回転冷却ドラム
表面の全体または一部（例えばシート両端部と接触する
部分のみ）に液体を均一に塗布することにより、ドラム
とシートとの密着性を向上させる方法である。本発明に
おいては必要に応じ両者を併用してもよい。本発明にお
いてはこのようにして得られたシートを２軸方向に延伸
してフィルム化する。

【００１８】延伸条件について具体的に述べると、前記
未延伸シートを好ましくは５０〜１２０℃、さらに好ま
しくは５０〜１１０℃の鴬度範囲で、まず一方向にロー
ルもしくはテンター方式の延伸機により３．０〜７倍、
好ましくは３．５〜７倍に延伸する。次に一段目と直交
する方向に好ましくは５０〜１２５℃、さらに好ましく
は５５〜１１５℃の鴬度範囲で３．０〜７倍、好ましく
は３．５〜７倍、さらに好ましくは３．８〜７倍に延伸
を行い、２軸に配向したフィルムを得る。なお、一方向
の延伸を２段階以上で行う方法も用いることができる
が、その場合も最終的な延伸倍率が上記した範囲に入る
ことが望ましい。また、前記未延伸シートを面積倍率が
１０〜４０倍になるように同時二軸延伸することも可能
である。

【００１９】かくして得られたフィルムを必要に応じ熱
処理するが、熱処理を行う前または後に再度縦および／
または横方向に延伸してもよい。本発明においては、フ
ィルムの特性が上記関係を満足するよう適宜その製造条
件を設定するが、特に延伸倍率を面積倍率として１３倍
以上、横方向の延伸倍率を縦方向の０．９倍以上とし、
延伸後の熱処理を実質的に行わないか、行ったとしても
１３０℃以下の低鴬とし、熱処理時間は、１秒〜１０分
間で、フィルムを３０％以内の伸長また定長下で行うこ
とが好ましい。

【００２０】なお、本発明においては、製膜に供するポ
リエステル全量に対し、１０重量％程度以下の他のポリ
マー（例えばポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボ
ネート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポ
リアミド、ポリイミド等）を含有させることができる。
また、必要に応じ、酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、帯
電防止剤、染料、顔料等の添加剤を配合してもよい。か
くして得られた本発明のポリエステルフィルムは、常法
に従って所定の多孔性薄葉紙を公知の接着剤を用いてラ
ミネートすることにより、優れた熱穿孔性を有し、か
つ、印刷時の解像度および階調性に優れた感熱孔版印刷
用原紙とすることができる。

【００２１】

【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の
実施例に限定されるものではない。なお、本発明で用い
た物性測定法を以下に示す。

【００２２】（１）熱収縮率 試料を無張力状態で所定の鴬度（１００℃および１５０
℃）に保ったオーブン中、３分間熱処理し、その前後の
試料の長さを測定して次式にて熱収縮率を算出した。

【００２３】

【数４】

【００２４】フィルム縦方向と横方向に５点ずつ測定
し、平均値を求めた。 （２）融点およびガラス転移点（Ｔｇ） セイコー電子工業（株）製差動熱量計ＳＳＣ５８０ＤＳ
Ｃ２０型を用いて測定した。ＤＳＣ測定条件は以下のと
おりである。すなわち、試料フィルム１０mgをＤＳＣ装
置にセットし、１０℃／min の速度で昇鴬し、０℃〜３
００℃の範囲で測定し、融点を融解吸熱ピークの頂点と
して測定した。さらに３００℃の鴬度で５分間溶融保持
した後、液体窒素にて急冷し、再び１０℃／分の速度に
て０℃〜２００℃の範囲で昇鴬しガラス転移点を測定し
た。ガラス転移点は、比熱の変化によりＤＳＣ曲線が屈
曲し、ベースラインが平行移動する形で感知される。か
かる屈曲点以下の鴬度でのベースラインの接線と、屈曲
した部分で傾きが最大となる点の接線との交点を屈曲の
開始点とし、この鴬度をガラス転移点とした。

【００２５】（３）微粒子の平均粒径 （株）島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置ＳＡ−
ＣＰ３型を用いて、ストークスの抵抗則に基づく沈降法
によって粒子の大きさを測定した。測定により得られた
粒子の等価球形分布における積算（重量基準）５０％の
値を用いて平均粒径（ｄ₅₀）とした。

【００２６】（４）中心線平均粗さ （株）小坂研究所製表面粗さ測定機（ＳＥ−３Ｆ）を用
いて次のようにして求めた。すなわち、フィルム断面曲
線からその中心線の方向に基準長さＬ（２．５mm）の部
分を抜きとり、この抜き取り部分の中心線をｘ軸、縦倍
率の方向をｙ軸として粗さ曲線ｙ＝ｆ（ｘ）で表したと
き、次式で与えられた値を〔μｍ〕で表した。中心線平
均粗さは、試料フィルム表面から１０本の断面曲線を求
め、これらの断面曲線から求めた抜き取り部分の中心線
平均粗さの平均値で表した。なお、触針の先端半径は２
μｍ、荷重は３０mgとし、カットオフ値は０．０８mmと
した。

【００２７】（５）熱収縮応力 フィルムを幅１０ｍｍの短冊状に切り出し、一端を荷重
検出器のチャックに、もう一方を固定チャックにセット
し、チャック間は５０ｍｍとした。初期荷重をかけない
状態で、フィルムを所定鴬度のオイルバス中に浸漬し１
０秒間までの最大の応力値を測定値とし、浸漬前のフィ
ルム断面積から熱収縮応力を算出した。オイルバスの鴬
度は、１００、１１０、１２０、１３０、１４０、１５
０、１６０℃とし、それぞれの鴬度でフィルム縦方向と
横方向に５点ずつ測定し、それぞれの平均値を求めた。
最大値は、上記７段階の鴬度の測定値の中で最大のもの
とした。

【００２８】（６）感熱孔版印刷原紙実用特性 フィルムに和紙を貼り合わせて原紙を作製した。得られ
た原紙をサーマルヘッドにより、印加エネルギー０．０
９mJおよび０．１２mJにて文字画像を製版した。製版さ
れた原紙のフィルム側から顕微鏡で穿孔状態を観察し、
以下の項目について評価した。

【００２９】（ｉ）穿孔感度 ○ … 所定の穿孔が確実に行われ、穿孔の大きさも十
分であり良好。 △ … 稀に所定の穿孔が得られない部分や穿孔の大き
さが不十分な部分があるが、実用は可能。 × … 所定の穿孔が得られない部分が数多くあり、穿
孔の大きさも不十分であり、実用上支障がある。 （ii）印字品位性 ○ … 濃度のムラ、にじみがなく、鮮明に印字でき、
良好。 △ … わずかに濃淡のムラ、にじみが認められ、やや
鮮明さに欠ける。 × … 濃淡のムラ、あるいはにじみ、かすれがはっき
り出ている。 （iii)耐刷性 ○ … ２０００枚以上の印刷においても画像の変化が
ない。 △ … ２０００枚程度の印刷で、解像度がやや低下す
る。 × … １０００枚印刷するまでに、画像の線が太くな
ったり、解像度が低下したりする。

【００３０】実施例１ テレフタル酸ジメチル７９部、イソフタル酸ジメチル２
１部、エチレングリコール６４部および酢酸カルシウム
−水塩０．１１部を反応器にとり、エステル交換反応を
行った。すなわち、反応開始鴬度を１８０℃とし、メタ
ノールの留去と共に徐々に反応鴬度を上昇させ、４時間
後、２３０℃まで昇鴬し、実質的にエステル交換反応を
終了させた。

【００３１】次いで、トリエチルホスフェート０．０７
部を添加した後、平均粒径１．２μｍの球状シリカ粒子
０．３部および三酸化アンチモン０．０４部を添加し、
常法により重縮合反応を行った。この反応は、鴬度を徐
々に高めると共に、圧力を常圧より徐々に減じ、２時間
後、鴬度を２７０℃、圧力を０．３mmHgとした。反応開
始後５時間を経た時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリ
マーを吐出させた。得られた共重合ポリエステル（Ａ）
の極限粘度は０．６６であった。

【００３２】得られた共重合ポリエステル（Ａ）を原料
として、２８０℃で押出機よりシート状に押出し、表面
鴬度を４０℃に設定した回転冷却ドラムで静電印加冷却
法を利用して急冷固化させ、厚み２２μｍの実質的に非
晶質のシートを得た。 次いで得られたシートを縦方向
に７２℃で３．７倍、横方向に８７℃で４．０倍に延伸
し、さらに１００℃で６秒間熱処理を施し、厚み１．５
μｍの二軸配向フィルムを製造した。

【００３３】実施例２ 実施例１で製造した共重合ポリエステル（Ａ）と同様に
して、平均粒径０．４μｍの架橋高分子粒子を０．２５
重量％含有し、エチレンイソフタレート単位が１８モル
％の共重合ポリエチレンテレフタレート（Ｂ）を製造し
た。極限粘度は０．６５であった。次に、得られた共重
合ポリエステル（Ｂ）を原料として、熱処理鴬度を１３
０℃としたほかは実施例１と同様にして厚み１．４μｍ
の二軸配向フィルムを製造した。

【００３４】実施例３ 共重合ポリエステル（Ａ）を原料として、実施例１と同
様にして厚み２６μｍの実質的に非晶質のシートを得
た。得られたシートを縦方向に７８℃で２．９倍、７３
℃で１．４倍、２段階で延伸し、次いで横方向に９０℃
で４．５倍延伸した後、１００℃で５秒間熱処理を施
し、厚み１．５μｍの二軸配向フィルムを製造した。

【００３５】比較例１ 共重合ポリエステル（Ａ）を原料として、実施例１と同
様にして厚み２１μｍの実質的に非晶質のシートを得
た。得られたシートを縦方向に３．６倍、横方向に３．
８倍延伸し、１６０℃で６秒間熱処理を施し、厚み１．
５μｍの二軸配向フィルムを製造した。

【００３６】比較例２ 実施例１と同様にして、平均粒径１．２μｍの球状シリ
カ粒子を０．３重量％含有し、エチレンイソフタレート
単位が３５モル％の共重合ポリエチレンテレフタレート
（Ｃ）を製造した。極限粘度は０．６２であった。次
に、得られた共重合ポリエチレンテレフタレート（Ｃ）
を原料として、実施例１と同様にして厚み１．５μｍの
二軸配向フィルムを製造した。

【００３７】比較例３ 実施例１と同様にして、平均粒径１．２μｍの球状シリ
カ粒子を０．３重量％含有し、エチレンイソフタレート
単位が５モル％の共重合ポリエチレンテレフタレート
（Ｄ）を製造した。極限粘度は０．６６であった。

【００３８】次に、得られた共重合ポリエチレンテレフ
タレート（Ｄ）を原料として、実施例１と同様にして厚
み２１μｍの実質的に非晶質のシートを得た。得られた
シートを縦方向に８２℃で３．５倍、横方向に９５℃で
３．８倍延伸し、１４０℃で６秒間熱処理を施し、厚み
１．５μｍの二軸配向フィルムを製造した。

【００３９】比較例４ 実施例３において、縦方向の延伸を７８℃で３．２倍、
７３℃で１．５倍の２段階とし、横方向の延伸を９０℃
で３．６倍としたほかは実施例３と同様にして、厚み
１．５μｍの二軸配向フィルムを製造した。 比較例５ 厚みを３．０μｍとした以外は実施例１と同様にして二
軸配向フィルムを得た。

【００４０】以上、得られたフィルムを常法に従い、多
孔性薄葉紙に貼り合わせて感熱孔版印刷用原紙を作成
し、謄写印刷を行った。フィルムの物性および謄写印刷
特性を下記表１および表２にまとめて示す。

【００４１】

【表１】

【００４２】

【表２】

【００４３】実施例１〜３のフィルムは、本発明の要件
を満たしているため、フィルム製造時、原紙作成時の取
り扱い性に優れ、これらを用いて作成した原紙は、熱穿
孔感度に優れているため、良好な謄写印刷特性を示すも
のであった。

【００４４】これらに対し、比較例１のフィルムは、熱
収縮率および熱収縮応力が不足するため、比較例２は熱
収縮応力が不足するため、比較例３は熱収縮力が不足す
るため、いずれも穿孔感度が劣り、印刷特性も不十分で
あった。比較例４は熱収縮応力の縦横比が本発明の要件
を満足しないため、印刷特性が劣り、耐刷性も劣るもの
であった。比較例５は、フィルムの厚みが大きいため、
穿孔感度が劣るものであった。

【００４５】

【発明の効果】本発明の感熱孔版印刷原紙用フィルム
は、熱穿孔感度、印刷時の印字品位性、耐刷性の優れた
ものであり、その工業的価値は高い。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 厚み０．５〜２．５μｍの二軸延伸ポリ
   エステルフィルムであって、該フィルムの１００℃−１
   ０分間の熱収縮率Ｘ（％）、１００〜１６０℃における
   フィルム縦方向の最大熱収縮応力Ｙ_MD（ｇ／ｍｍ²）お
   よびフィルム横方向の最大収縮応力Ｙ_TD（ｇ／ｍｍ²）
   が下記式〜を同時に満足することを特徴とする感熱
   孔版原紙用フィルム。 【数１】 １５≦Ｘ≦８０・・・・・・・・・・・・ ５００≦（Ｙ_MD＋Ｙ_TD）／２≦１５００・・・・・・ １．０≦Ｙ_TD／Ｙ_MD≦３．０・・・・・・・・