JPH04101031U - ビスカスカツプリング装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 剪断作用する部材のスリット孔を介して電気
粘性流体に効率良く電圧を印加し、ビスカストルク特性
を有効に可変制御する。 【構成】 出力軸の一方に結合される絶縁性の抵抗体、
他方に結合される絶縁性の抵抗体、閉空間内部に封入さ
れる電気粘性流体を有し、これらの抵抗体に貫通穴を設
け、貫通穴に対応してそれぞれ電極を配置することを特
徴とする。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

この考案は、自動車等の車両の駆動系に装着され、回転差に応じて自動的に駆 動力分配作用するビスカスカップリング装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】

近年、自動車の車両では、前後輪、左右輪の駆動系の途中にビスカスカップリ ング装置を装着し、前後輪、左右輪の一方がスリップして比較的大きい回転差を 生じると、ビスカスカップリング装置の発生トルクに応じて動力伝達する４輪駆 動装置またはデフロック装置が出現している。このビスカスカップリング装置は 、高粘度の粘性流体を、回転差を有する２つのプレートが剪断する際の剪断力を 利用しているので、トルク特性は粘性流体の粘度、回転差に依存して決まる。

【０００３】 ここで、粘性流体の粘度が大きい場合は、ビスカストルクも大きくなるが、低 速旋回時にも比較的大きいビスカストルクが発生してタイトコーナブレーキング 現象を生じる。また逆に、粘性流体の粘度が小さいと、ビスカストルクの頭落ち が大きくなって、充分に動力伝達できなくなる。そこで、電圧の印加により粘度 が変化する特性の電気粘性流体を用い、粘度を可変制御して、回転差が小さい領 域ではビスカストルクを低く抑え、回転差の大きい領域では充分大きいトルクを 発生することが試みられている。

【０００４】 従来のビスカスカップリング装置の特に電気粘性流体を用いたものに関しては 、例えば実開昭６２−２０２４３１号公報のものがある。即ち、ビスカスカップ リング装置がケース内部で入、出力軸に対し板状のアウタとインナのプレートを 直交して同軸状に配置し、ケース内部に電気粘性流体を封入して構成される。そ して、軸方向に配置されたプレートの列の両端側に電極を設け、電気粘性流体に 電圧を印加するようになっている。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

しかしながら、上記従来のビスカスカップリング装置にあっては、インナプレ ート、アウタープレートが障害となり、両プレート間の電気粘性流体に効率良く 電圧印加できない等の問題がある。

【０００６】 そこでこの考案は、剪断作用する部材のスリット、孔を介して電気粘性流体に 効率良く電圧を印加し、ビスカストルク特性を有効に可変制御することができる ビスカスカップリング装置の提供を目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】

上記課題を解決するためにこの考案は、ドラム又はプレートに貫通穴を設け、 この貫通穴を介して電圧を印加するように電極を配置することを特徴とする。

【０００８】

【作用】

上記構成によれば、貫通穴を介して電圧が印加されるのでドラム間又はプレー ト間の電気粘性流体が効果的に粘度を変化し、回転差に対して所定のビスカスト ルクを生じて駆動力配分制御することが可能になる。

【０００９】

【実施例】

以下この考案の実施例を説明する。

【００１０】 図１はこの考案の第１の実施例のドラム式ビスカスカップリング装置の断面図 であり、入力軸１と出力軸２が同軸上に配置され、これらの軸１，２の間にビス カスカップリング装置１０が設けられる。入力軸１はアース側の電極を兼ねた導 電性を有し、出力軸２は絶縁性を有しており、これらの入、出力軸１，２に筒状 の固定側ケース１１が軸受等により回転自在に装着されている。ケース１１内部 において、入力軸１の端部にはアウタドラム１２が一体的に固着され、同様に出 力軸２の端部にもインナドラム１３が、アウタドラム１２と対向して一体的に固 着される。また、ケース１１の内部には、電圧の印加により粘度が変化する電気 粘性流体Ｓが封入されている。

【００１１】 アウタドラム１２は絶縁性のものであり、円板状のディスク１２ａの片側に複 数の円筒状のリングプレート１２ｂを、一定の間隔で同軸上に固着して成る。イ ンナドラム１３も絶縁性のものであり、円板状のディスク１３ａの片側に複数の 円筒状のリングプレート１３ｂを、同様に同軸上に固着して成る。そして、これ らのアウタドラム１２とインナドラム１３の軸と平行なリングプレート１２ｂ， １３ｂを互いに遊嵌し、軸と直角な径方向において、リングプレート１２ｂ，１ ３ｂを交互に配置してある。

【００１２】 図２の分解斜視図で示すように、アウタドラム１２のリングプレート１２ｂの 円周上には多数の孔１２ｃが設けられ、インナドラム１３のリングプレート１３ ｂの円周上には多数のスリット１３ｃが設けてある。こうして、リングプレート １２ｂ，１３ｂの孔１２ｃとスリット１３ｃにより剪断作用してビスカストルク Ｔｖを生じ、この場合に孔１２ｃとスリット１３ｃの部分が中心から遠く離れ且 つ数も多いことで大きいトルクＴｖを発生することができ、トルク容量の大きい ものになっている。また、アウタドラム１２とインナドラム１３の内部に、直接 剪断作用する流体Ｓが有る程度封じ込められ、電圧ｅの印加で必要な流体Ｓの粘 度μのみを効果的に変化することが可能になる。

【００１３】 そして、リングプレート１２ｂの孔１２ｃと一致する位置のケース１１側に電 極１４がリング状に設置され、この電極１４が制御回路１６に電気的に接続して いる。また、ケース１１中心の入力軸１の端部は電極１４、孔１２ｃ、スリット １３ｃと同一の位置に延長されて、アース側電極１５が設けられる。こうして、 孔１２ｃとスリット１３ｃの部分の流体Ｓに放射状に電圧印加され、リングプレ ート配置の長さに対して電圧印加の長さはその半分で済むようになっている。

【００１４】 次に、この実施例の作用を説明する。

【００１５】 先ず、ビスカスカップリング装置１０のケース１１が停止した状態で、入力軸 １とアウタドラム１２、出力軸２とインナドラム１３がそれぞれ一体的に回転し ている。このとき、入、出力軸１，２に回転差△Ｎを生じると、２つのリングプ レート１２ｂ，１３ｂの孔１２ｃとスリット１３ｃにより電気粘性流体Ｓを、軸 平行な状態で剪断作用してビスカストルクＴｖを生じるようになる。

【００１６】 そこで、直進または旋回時の入、出力軸１，２の回転差△Ｎが小さい条件では 、２つの電極１４，１５により低い電圧ｅが印加される。このため、ケース１１ 内部の電気粘性流体Ｓの粘度μは低くなり、これに伴い旋回時の回転差△Ｎが比 較的大きい場合にも剪断力が小さくなる。従って、ビスカストルクＴｖは非常に 低く抑えられ、タイトコーナブレーキング現象等を回避することが可能になる。

【００１７】 一方、駆動側の入力軸１がスリップして出力軸２との間に大きい回転差△Ｎを 生じると、制御回路１６により電極１４に高電圧ｅが印加される。すると、特に 図１のように、絶縁性のアウタドラム１２の孔１２ｃとインナドラム１３のスリ ット１３ｃが一致する毎に、外側の電極１４と中心の電極１５との間で、電気粘 性流体Ｓ中に放射状に高電圧が印加される。このため、アウタドラム１２とイン ナドラム１３で囲まれた部分の流体Ｓの粘度μが効率良く増大し、多大な剪断力 を要して大きいビスカストルクＴｖを生じ、これに応じて駆動力配分してスリッ プを回避するようになる。こうして、ビスカストルクＴｖは図３のように回転差 △Ｎの小さい領域では低く、回転差△Ｎの大きい領域では急増した特性になる。

【００１８】 図４はこの考案の第２の実施例のプレート式ビスカスカップリング装置の断面 図であり、ビスカスカップリング装置２０は例えば入力軸側に結合されるハブ２ １、出力軸側に結合されてハブ２１に軸受２３、断面Ｘ字状のシール２４を介し て嵌合するハウジング２２を有する。ハウジング２２内部においては、ハブ２１ にスプライン嵌合するインナプレート２５と、ハウジング２２にスプライン嵌合 するアウタプレート２６が、隙間リング３３を介して軸方向に交互に配置されて おり、且つ電気粘性流体Ｓが封入されている。

【００１９】 図５はインナとアウタのプレートの正面図であり、（ａ）のようにインナプレ ート２５に放射状にスリット２５ａが設けられ、（ｂ）のようにアウタプレート ２６の中間の円周上には孔２６ａが設けてある。そして、これらのスリット２５ ａと孔２６ａは、所定のビスカストルクを生じることが可能に複数個設けられる が、更に電圧の印加を考慮して、スリット２５ａと孔２６ａが軸方向に確実に重 合配置される。また、スリット２５ａの個数は比較的多く、これに対し孔２６ａ は形状が大きくて個数の少ないものに形成される。

【００２０】 一方、ハウジング２２の内部両端の壁面には、２つの電極２７，２８が絶縁体 ２９を介して設置され、これらの電極２７，２８がプレート２５，２６のスリッ ト２５ａ、孔２６ａと軸方向で対向するように配置される。そして、各電極２７ ，２８が結線３０を介して端子リング３１，３２に接続してある。

【００２１】 この実施例において、特にスリップ時にはインナプレート２５とアウタプレー ト２６の間に大きい回転差△Ｎを生じ、このとき２つの電極２７，２８で高電圧 ｅが印加される。すると、プレート２５，２６の形状の大きい孔２６ａと個数の 多いスリット２５ａの関係で、これらのスリット２５ａと孔２６ａを介して２つ の電極２７，２８が直接に対向して電圧印加されるようになる。こうして、この 場合も電気粘性流体Ｓの粘度μが効率よく増し、大きいビスカストルクＴｖを生 じることが可能になる。

【００２２】 尚、この考案は上記実施例のみに限定されるものではない。

【００２３】

【考案の効果】

以上より明らかなように、この考案によれば、電気粘性流体を用いたビスカス カップリング装置が、アウタドラムとインナドラムのリングプレートに孔、スリ ットを設けて剪断作用するように構成されるので、トルク容量の大きいものにな る。これらのアウタドラムとインナドラムの外側と中心に電極が配置されるので 、剪断作用する部分の電気粘性流体に短い距離で効果的に高電圧を印加して、ビ スカストルク特性を向上できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】第１の実施例に係る断面図である。

【図２】第１の実施例に係る要部分解斜視図である。

【図３】特性図である。

【図４】第２の実施例の断面図である。

【図５】プレートの正面図である。

【符号の説明】

１，２ 出力軸 １１ 固定側ケース １２ アウタドラム １３ インナドラム １２ｂ，１３ｂリングプレート １２ｃ 孔（貫通穴） １３ｃ スリット（貫通穴） １４，１５ 電極 ２５ インナプレート ２５ａ スリット（貫通穴） ２６ アウタプレート ２６ａ 孔（貫通穴） ２７，２８ 電極

Claims (2)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 固定側ケース内部で入、出力軸の一方に
   一体結合される絶縁性のアウタドラム、その他方に一体
   結合されてアウタドラムに遊嵌する絶縁性のインナドラ
   ム、ケース内部に封入される電気粘性流体を有し、これ
   らのアウタドラムとインナドラムのリングプレートの円
   周上に対向する複数の貫通穴を設け、貫通穴と同一位置
   のケース側と、ケース中心の軸端部との半径方向に、そ
   れぞれ電極を配置することを特徴とするビスカスカップ
   リング装置。
2. 【請求項２】 入、出力軸の一方のハウジングにスプラ
   イン嵌合する絶縁性のアウタプレート、その他方のハブ
   にスプライン嵌合してアウタプレートと交互に配置され
   る絶縁性のインナプレート、ハウジング内部に封入され
   る電気粘性流体を有し、インナプレートと、アウタプレ
   ートとに対向する複数の貫通穴を設け、ハウジング内部
   両端の軸方向に、貫通穴に対向する電極を配置すること
   を特徴とするビスカスカップリング装置。