JPH0345887Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は、車体ないしシート取付けベース部
材に対して相対移動しうるシートクツシヨンに取
付けられるシートベルトアンカにかかる荷重を、
効果的にシート取付けベース部材あるいは車体に
伝達するようにしたシートベルトの荷重支承構造
に関する。

〔従来の技術およびその問題点〕

自動車のリヤシートのシートベルトは、乗員の
腰部ないし下腹部を巻くようにした左右一対のベ
ルトを乗員の体の前部で連結して使用するように
構成されている。また、一般の乗用車のリヤシー
トのようにフロアメンバ等に固定されていて前後
に移動できないようになつたリヤシートにおいて
は、シートベルトの基端部を固定すべきシートベ
ルトアンカは、シートクツシヨンとシートバツク
のすきまを通したシートベルトをフロアメンバに
対して止着するように構成されている。この場
合、万一の非常時において、シートベルトに加わ
る引張荷重は、直接的にフロアメンバに支承され
乗員が前方へ投げ出されるのが有効に阻止され
る。

ところで、最近開発が盛んなワゴン形式の７人
ないし８人乗りの乗用車では、前後二組のリヤシ
ートの一方を回転可能とし、これらのリヤシート
を互いに向き合わせることができるよになつたも
のが見受けられる。このようなシートのシートベ
ルトアンカは、上に述べた通常の固定状のシート
の場合のようにフロアメンバあるいはシート取付
けベースに固定するわけにはいかない。回転型シ
ートにおいて前向きになつている状態および後向
きになつている状態の双方で有効にシートベルト
を装着できるようにするには、シート自体にシー
トベルトアンカを取付ける必要があるからであ
る。

また、こうしたシートには、シートの前後方向
の位置を調節しうるように、通常シート取付けベ
ースとシートクツシヨンとの間にシートトラツク
が介装されているのが通常である。このように車
体ないしシート取付けベースに対して相対移動し
うるシートクツシヨンにシートベルトアンカを取
付けた場合、非常時にシートベルトにかかる強大
な引張荷重は、シートクツシヨンフレームないし
シートトラツク等のシート構成部材に介して最終
的にシート取付けベースに支承されることとなる
ので、この各構成部材が破壊して乗員が前へ放り
出されないようにするには、シートないしシート
取付けベースに至るシート構成部材とくにシート
トラツクを、通常のシートおよび乗員の重量を支
承するに必要な強度をはるかに超える堅牢なもの
としておく必要が出てくる。しかしながら、非常
時を予定してシートとシート取付けベースとの間
に介在する部材の強度を設定することには、材料
コストが高騰し、かつ車両重量の著しい増加を招
くという問題がある。

こうした問題を解決すべく考えられたものとし
て、たとえば、実開昭49−77624号公報に示され
ているように、、シートベルトのシートベルトア
ンカが非常時にのしフロアメンバなどのシート取
付けベースの一部に掛合するようにしたものがあ
る。このものは、シートクツシヨンの側部に一定
の抵抗を有して回動可能に軸着された掛合アーム
の軸着部近傍にシートベルトの端部を止着し、非
常時、シートベルトに強大な引張荷重がかかる
と、上記掛合アームが上記抵抗に打ち勝つて回動
し、これの先端の掛合爪がシート取付けベースに
固定状に設けられロツクピンに掛合するように構
成されている。すなわち、この従来例は、平常時
はシートベルトの引張力をシートクツシヨンに支
承させる一方、非常時にはシートベルトにかかる
強大な引張荷重を掛合アームを介してシート取付
けベースに支承させるようにして、シート自体あ
るいはシートとシート取付けベースの間に介在す
る部材の強度を必要以上に高めることなく、非常
時にシートベルトが支承可能であるべき最大荷重
を保安基準に適合させている。

しかしながら、上記の従来例をもつてしてもな
お、掛合アームを介して強大な荷重を支承するこ
とから、この掛合アームおよびこれを軸着するた
めの構造には相当の強度が必要であり、したがつ
て、これらの掛合アームおよびこれの支承構造
は、その外形が大型化し、かつその重量が増加せ
ざるをえなかつた。また、掛合アームが所定どお
り回動してはじめてシートベルトの荷重をシート
取付けベースに伝達しうるので、なんらかの都合
で掛合アームの回動が遅れ、さきにシートクツシ
ヨンがシート取付けベースから引き剥がされる
と、乗員の前方飛び出しを避けることができな
い。

〔考案の目的〕

この考案は、上記の事情のもとで考え出された
もので、その目的は、シート取付けベースに対し
て相対的に移動しうるシート自体に設けられたシ
ートベルトアンカに非常時にかかる強大な荷重を
確実にシート取付けベースに支承させうるように
したシートベルトの荷重支承構造をきわめて簡単
な構成により、重量増加を招くことなく、かつコ
スト安く提供することである。

〔目的を達成するための手段〕

上記の目的を達成するため、本考案では、次の
技術的手段を講じている。

すなわち、本考案は、シート取付けベースとシ
ートクツシヨンフレームとの間にシートトラツク
を介在させることにより、シートが車体に対して
前後方向に移動可能となつたシートにおいて、 上記シートクツシヨンフレームに、その後部に
おいて下方にのびる支持片を固着するとともに、
この支持片の後方部に係止片を、前方部にシート
ベルトアンカをそれぞれ固着する一方、 上記シート取付けベースに、上記係止片を抱持
し、かつ上記係止片のシートトラツクの軌道の方
向の相対移動を許容しうる抱持部材を固着し、さ
らに、上記抱持部材に、上記支持片がシートベル
トに引つ張られてシート取付けベースに対して上
方に相対移動しようとしたとき上記係止片が突入
掛合しうる掛合穴を設けたことを特徴とする。

〔考案の作用および効果〕

シートクツシヨンフレームが基準位置、すなわ
ち、シート取付けベースに対して最も後方位置に
あるとき、上記抱持部材は上記係止片を抱持する
ように重なり合つている。この抱持部材と係止片
は、相互にシートトラツクの軌道の方向の相対動
は許容するようになつているから、シートクツシ
ヨンフレームは、シート取付けベースに対してシ
ートトラツクの軌道行程を前後移動しうる。上記
のようにシートクツシヨンフレームが基準位置に
ある場合において、上記抱持部材と係止片は、上
下方向に移動できないから、かりにシートベルト
からの荷重によつてシートクツシヨンフレームを
上方に持ち上げようとする力がかかつても、この
力は、抱持部材と係止片との引つ掛かりによつて
有効にシート取付けベースに支承され、乗員がシ
ートごと前方に放り出されるといつた事態は有効
に回避される。

さらに、本考案では、上記抱持部材に、係止片
が上下方向に動こうとしたときこの係止片が突入
掛合しうる掛合穴を設けているので、たとえシー
トトラツクの前後位置決め機構が破損しても、係
止片が掛合穴に掛合してシート取付けベースに対
するシートクツシヨンフレームの前後方向の移動
が阻止され、シートベルトの強大な引張荷重を確
実にシート取付けベースに受けさせることができ
る。

しかも、本考案においては、特に、シートクツ
シヨンフレームの後方部に下方に延出する支持片
を固着し、この支持片の後方部に上記係止片を、
前方部にシートベルトアンカをそれぞれ取付ける
構成をしているので、シートベルトに強大な引張
荷重が作用したときに、上記支持片が、前上がり
傾向に変形し、これによつてとえば側面視矩形駒
状に形成される上記係止片の上縁先端部のエツジ
が前上がり傾向となることから、このエツジが確
実に上記抱持部材に設けた掛合穴に掛合する。し
たがつて、シートトラツクの前後位置決め機構が
破損した場合に、シートクツシヨンフレームの前
方方向への移動阻止の確実性がさらに増し、安全
性が向上するのである。

このように、本考案では、シートベルトアンカ
をシートクツシヨンフレームに取付けられた自動
車用シートにおいて、シートトラツク等のシート
取付けベースとシートクツシヨンとの間に介在す
る中間機構体に非常時を予定した強度を持たせな
くても、非常時に乗員がシートごと投げ出される
といつた事態を有効に阻止できる。しかも、本考
案は、シートクツシヨンフレームに、シートベル
トアンカを固着するべく下方に延出形成した支持
片の適部に小さな係止片を固着するとともに、シ
ート取付けベースに上記係止片を抱持する抱持部
材を設けるという簡単な構成であるので、コスト
的に非常に有利であり、かつ重量増加を殆ど招か
ない。

〔実施例の説明〕

以下、本考案のシートベルトの荷重支承構造の
実施例を図面を参照しつつ具体的に説明する。

シート１は、シートトラツク２により、シート
取付けベース３に対して前後方向に移動可能にな
つている。すなわち、シートクツシヨンフレーム
４の下部に適当なブラケツト５を介してアツパレ
ール６が取付けられており、これがシート取付け
ベース３の上面に取付けられたロアレール７に対
して前後方向に摺動可能に係合している。なお、
このシートトラツク２には、シートクツシヨンフ
レーム４をその前後移動可能範囲の所望の位置で
固定するためのロツク機構が設けられるのである
が、これは本考案の要部ではないので、図示を省
略してある。また、図示例のシート１は、シート
台座８に対してシート取付けベース３が回転可能
となつた、回転型のシートであるが、フロア９に
直接的に取付けられる固定式のシート取付けベー
スを有するシートにも本考案を適用しうることは
もちろんである。

上記シートクツシヨンフレーム４の両側部フレ
ーム４ａの後方部４a′とシートクツシヨン４が最
も後方に位置しているときの上記後方部４a′と対
応するシート取付けベース３上の部位との間に
は、シートクツシヨンフレーム４がシート取付け
ベース３に対して上方に動くのを阻止しうる荷重
伝達手段１０が設けられている。

この荷重伝達手段１０の詳細を第２図以下に示
す。

第２図に表れているように、シートクツシヨン
フレームの側部フレーム４ａには、ある程度の厚
みを有する板部材を折り曲げ形成した支持片１２
の上端部が溶接などの手段によつて固着されてお
り、これの先端部１２ａは、シート取付けベース
３に設けられ、かつ前後方向にのびる垂直状の側
板１１の外側に、平行状に対向するように延びて
いる。この支持片１２の先端部１２ａの内側に
は、垂直方向に拡がる鍔１３ａ，１３ｂを有する
断面ほぼコ字状の係止片１３の基部が溶接などに
よつて固着される。なお、上記鍔１３ａ，１３ｂ
の縁は、シートトラツク２の軌道の方向と平行と
なるようにしてある。この係止片１３は、非常時
に後記する抱持部材１４と係合してシートクツシ
ヨンフレーム４がシート取付けベース３から引き
剥がされるのを阻止してシートベルトで束縛され
た乗員の安全をはかるものであるから、比較的機
械的強度の大きい、たとえば、高張力鋼を使用す
るとよい。また、第６図によく表れているよう
に、上記係止片１３の、コ字部を形成する空間部
には、リブ１５を設けておくと、上記上下の鍔１
３ａ，１３ｂを上下方向の圧迫しようとする力に
対して強くなるので、この鍔１３ａ，１３ｂが後
記する抱持部材と掛合する非常時での強度を上げ
ることができ、好都合である。また、支持片１２
の先端部における上記係止片１３を固着した位置
から前方にずれた位置には、シートベルトアンカ
１７がボルト１８により固着されており、このシ
ートベルトアンカ１７にはシートベルト１６の端
部が止着される。 一方、シート取付けベース３
の側壁１１の外面には、上記係止片１３の上下の
鍔１３ａ，１３ｂを抱持するように断面ほぼコ字
状に形成された抱持部材１４が溶接などにより固
着される。すなわちこの抱持部材１４は、上記側
壁１１の外面に密接する背部１４ａと、この背部
１４ａの上下端部から係止片１３の上側鍔１３ａ
の上方、および下側鍔１３ｂの下方を通つてそれ
ぞれ外方に延びる上下の水平部１４ｂ，１４ｃ、
および、これらの水平部１４ｂ，１４ｃの先端部
から互いに近付くように垂直方向に延びる垂直部
１４ｄ，１４ｅを備えた基本断面形状を有する。
さらに、この抱持部材１４には、基準位置にある
上記係止片１３が上方に動こうとしたとき、この
係止片１３が突入掛合しうる掛合穴１９が明けら
れる。本例の場合、第５図によく表れているよう
に、上記上側の水平部１４ｂに、係止片１３の上
側鍔１３ａがはまり込みうる掛合穴１９が明けら
れている。なお、この抱持部材１４も、上記係止
片１３と同様、機械的強度の大きい材料で作成し
ておくべきである。

上記係止片１３と抱持部材１４は、シートクツ
シヨンフレーム４がシートトラツク２の軌道どう
りに前後移動する限り互いに干渉しない。しかし
ながら、シートクツシヨンフレーム４がその前後
移動可能範囲の最も後方に位置する基準位置にあ
るときにシートベルト１６に第１図矢印方向の強
大な引張力がかかり、これによつて上記支持片１
２ないしシートクツシヨンフレーム４が上方に移
動しようとすると、すなわち、第２図において、
静止状の抱持部材１４に対して係止片１３が強力
に上方へ引き上げようとする力がかかると、シー
トトラツク２などシートクツシヨンフレームとシ
ート取付けベース３との間に介在する部材はその
力に負けて歪み、やがて第３図に表れているよう
に係止片１３の鍔１３ａが抱持部材１４の掛合穴
１９に確実に掛合し、上記の強大な力は、係止片
１３および抱持部材１４を介してシート取付けベ
ース３に確実に支承されることとなる。しかも、
本考案においては特に、上記係止片１３およびシ
ートベルトアンカ１７を、シートクツシヨンフレ
ーム４の後方部から下方に延出させた支持片１２
に設け、さらに、シートベルトアンカ１７の位置
を、上記係止片１３の位置より前方にずらせてい
るので、シートベルトに強大な引張力が作用した
場合に、上記支持片１２が、前上がり傾向に変形
し、側面視矩形駒状に形成した上記係止片１３の
上縁が前上がり傾向となつてその前方のエツジが
上記掛合穴１９に確実に掛合することになる。し
たがつて、たとえシートトラツク２が歪んでその
位置決めロツク機構が機能を失なつても、上記係
止片１３と抱持部材の掛合穴１９との確実な掛合
により、シートクツシヨンフレーム４が前方にず
れ動くということがない。

このように、本考案にかかるシートベルトの荷
重支承構造では、通常時のシートおよび乗員の重
量ならびにシートベルトの引張荷重をシートトラ
ツク等、シートクツシヨンフレームとシート取付
けベースとの間に介在する構成部材そのものの強
度によつて支承させるとともに、非常時には、上
記の構成部材とは別途形成した大きな耐荷重強度
を有する荷重伝達手段によつて、シートクツシヨ
ンフレームを引き剥がそうとする強大な力を受け
るようにしている。したがつて、上記シートトラ
ツク等の部材の強度を非常時を予定したきわめて
強いものとする必要がなく、これは、車両重量の
軽減および材料コストの低減に大きく寄与する。
また、荷重伝達手段は、シートベルトアンカを固
着するべくシートクツシヨンフレームの後方部か
ら下方に延出させた支持片の所定部位に小さな係
止片を設けるとともに、シート取付けベースに所
定の抱持部材を設けるだけのきわめて簡単な構造
なため、簡単に実施することができ、かつ、コス
トもそれほどかからない。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の構造を適用したシートの部分
断面側面図、第２図は第１図の−線に沿う断
面図、第３図は作用説明断面図、第４図は支持片
および係止片を示す斜視図、第５図は抱持部材を
示す断面図、第６図は係止片の詳細斜視図であ
る。 １……シート、２……シートトラツク、３……
シート取付けベース、４……シートクツシヨンフ
レーム、１３……係止片、１４……抱持部材、１
７……シートベルトアンカ、１９……掛合穴。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 シート取付けベースとシートクツシヨンフレー
   ムとの間にシートトラツクを介在させることによ
   り、シートが車体に対して前後方向に移動可能と
   なつたシートにおいて、 上記シートクツシヨンフレームに、その後部に
   おいて下方にのびる支持片を固着するとともに、
   この支持片の後方部に係止片を、前方部にシート
   ベルトアンカをそれぞれ固着する一方、 上記シート取付けベースに、上記係止片を抱持
   し、かつ上記係止片のシートトラツクの軌道の方
   向の相対移動を許容しうる抱持部材を固着し、さ
   らに、上記抱持部材に、上記支持片がシートベル
   トに引つ張られてシート取付けベースに対して上
   方に相対移動しようとしたとき上記係止片が突入
   掛合しうる掛合穴を設けたことを特徴とする、シ
   ートベルトの荷重支承構造。