JPH0340134B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は毛皮調布帛用糸およびその製造方法
に関するものであり、詳しくはミンク調高級布帛
用糸およびその製造方法に関する。

近年毛皮調布帛はミンク指向から高級化が進行
しており、それにつれて毛皮調布帛用糸も高品質
なものが要求されるようになつてきた。布帛の高
密度化から布帛用糸は高級番手が必要となる。ま
たさし毛の混率も多い程良好な毛皮調布帛とな
り、さし毛の直線性も不可欠となつている。

現在毛皮調布帛用糸の製造は、リング精紡機お
よびリングネン糸機が使用されている。しかし該
製造法によれば糸構成繊維本数、極短繊維長、さ
し毛の太くて無巻縮およびわた毛の少ない巻縮に
より高級番手の紡出は極めて困難である。たとえ
紡出できたとしても糸品質は粗悪なものになり、
さし毛の脱落が過多となつたりまた紡出スピード
を極端に遅くする必要があり、さらに以下に記載
するような多くの欠点がある。すなわち高級番手
化のためヨリを多く入れる必要があり、そのヨリ
によつてさし毛にヨリぐせがつきミンクのさし毛
には程遠いものとなる。また糸表面が凹凸になり
織工程に於て毛羽の発生および糸切れの原因とな
つている。さらにリング精紡機およびリングネン
糸機で8000rpｍ以上で紡出すれば毛羽となるさし
毛の先端がラペツト、アンチバルーニングバー、
セパレータ、トラベラおよびリングに接触衝撃を
受け、わん曲したりさらには枝別れになるなどの
致命的な欠点となる。これは太デニールのさし毛
が糸表面に多く集まることから必然的に毛羽が多
くなり、容易に該欠点が発生する。

この発明の目的は上記のような欠点に鑑み、高
品質な毛皮調布帛用糸を能率よく提供するにあ
る。

かかる目的を達成するために、この発明は次の
如き構成を有する。すなわち (1) 少なくとも２成分の短繊維からなる混紡成分
と、連続糸条物とからなる複合糸において、 イ 混紡成分のヨリは実質０であり、 ロ 混紡成分の少なくとも１成分Ａは先端尖鋭
化部を有し、かつ他成分よりも繊維長が長
く、 ハ 連続糸条物は溶解除去可能繊維からなるこ
とを特徴とする複合糸。および (2) 短繊維束をドラフトし、空中スピンドルに導
き、該空中スピンドルの外側に巻かれた連続糸
条物をバルーニングされつつフリースに巻回さ
せる方法において、前記短繊維束は少なくとも
２成分の単繊維からなり、１成分は先端尖鋭化
部を有し、かつ他成分よりも繊維長が長いもの
を用いることを特徴とする複合糸の製造方法。

である。

本発明によれば少なくとも２成分の短繊維から
なる混紡成分のヨリは実質０となり、さし毛用繊
維にヨリぐせがつかず、また後工程の開繊性、毛
さばき性などが優れる。

さらに混紡成分の少なくとも１成分は先端尖鋭
化部を有し、かつ他成分よりも繊維長を長くする
ことにより、２層構造のミンク調毛皮を得、 連続糸条物は溶解除去可能繊維を用いることに
よつて、布帛後溶解除去し、より高品質なミンク
調毛皮を得ることができるのである。

また少なくとも２成分の短繊維束を、つまり１
成分は先端尖鋭化部を有し、かつ他成分よりも繊
維長が長い繊維束をドラフトし、中空スピンドル
に導き、該空中スピンドルの外側に巻かれた連続
糸条物をバルーニングされつつフリースに巻回さ
せる方法は、糸切れなく、高速でしかも高品質な
布帛用糸を提供することができ、毛皮調布帛製造
工程に於てトラブルなくかつ高級な毛皮調布帛を
得ることができるのである。

以下図面に基き本発明について更に詳しく説明
する。第１図は従来法により製造した糸を例示し
ている。１は２成分以上の短繊維からなる混紡成
分であり、２は連続糸条物である。リング精紡機
により混紡成分１のみの紡績をおこない、のちに
リングネン糸機により連続糸条物２と共に逆方向
にヨリを入れたものである。精紡機のヨリ数とネ
ン糸機のヨリ数とは計算上は同数でも糸のスリツ
プ、伸び、張力などのヨリ効率の相違により混紡
成分１は完全な無ヨリ状にするのは困難である。
これはさし毛用繊維にヨリぐせがついたり、また
布帛後の開繊毛さばきに手数がかかる原因とな
る。またリング精紡時の混紡成分１のヨリ縮み分
がネン糸工程に於て長くなり、連続糸条物２に巻
回した形状となる。これは糸番手が細い程、また
連続糸条物の張力が大きい程顕著になる。該糸構
造であればさし毛用繊維はヨリぐせがつきやすい
のは明らかである。また特に織工程に於て綜絖お
よび筬等で毛羽となり易く開口不良となつたり、
しいては糸切れとなる。

またリング精紡機での紡出は太デニールのさし
毛用繊維が糸表面に多く集まり毛羽が多くなり、
毛羽の先端が損傷を受け易い欠点がある。

第２図は本発明の糸を例示している。１は２成
分以上の短繊維からなる混紡成分であり、完全な
無ヨリ状である。２は連続糸条物であるが巻回時
の張力が低いため、糸表面は滑らかである。糸紡
出時に混紡成分１がわずかの仮ヨリ数、短時間の
仮ヨリ時間等によりさし毛用繊維のヨリぐせがつ
かない原因となつている。また混紡成分の１つで
あるさし毛用繊維は均一に混紡されており、この
ことが毛羽を少なくしている。また比較的長い毛
羽が同一方向性を持つており、毛羽の方向性を考
慮したタテ糸準備工程および織工程において前述
の事と合わせて可織性を著しく向上させている。
つまり該糸の織機の綜絖通過性を最も考慮した通
し方にするのが好ましい。また糸強力も従来法に
より製造した糸と比較して10〜20％も強くなつて
おり、細番手になる程この傾向は大きくなり、こ
のことも特異な効果である。

第３図は本発明の複合糸製造方法である。

短繊維束１１をドラフトパー部１２でドラフト
し中空スピンドル１３に導く。該中空スピンドル
１３の外側に巻かれた連続糸条物１４をバルーニ
ングさせつつフリース１５に巻回させる。製造さ
れた複合糸１６はデリベリローラ１７を通り、ワ
インダ１８に巻き取られる。連続糸条物１４は解
〓方向によつて容易にｚ方向、またはｓ方向に巻
回選択可能である。

本発明において混紡成分のヨリの数は実質０で
あるが、かかる数は多少の巾を持つていてもよ
く、例えば１ｍ当り10以下のような少ない数は有
していてもよい。かかる値は解除ヨリの程度の数
である。

また本発明の複合糸は第２図の如く、ほぼ一体
化されており、糸形状がスムースで凹凸状でない
ことに特徴がある。

本発明の短繊維成分Ａは合成繊維であればどの
ようなものでもよいが、好ましくはポリエステル
繊維である。特にポリブチレンテレフタレート、
ポリブチレンテレフタレートは好ましい。これ
は、寸法安定性が良く、毛並が整つて曲つたりし
ないこと、およびアルカリ水溶液などで先端が尖
鋭化しやすいからである。短繊維成分Ａの繊維長
は10〜40mm程度が取扱い性、製品要求特性より好
ましい。

また短繊維成分Ａに混紡する成分は、天然繊
維、化学繊維、合成繊維等公知の繊維であればい
かなるものでもよい。

連続糸条物は溶解除去可能繊維であればどのよ
うなものでもよい。例えばアルカリ水溶液に加水
分解しつつ溶解除去可能なポリエステル共重合
体、特に５−ナトリウムスルホイソフタレート、
および／またはポリアルキレングリコールを共重
合させたポリエステル、有機溶剤に溶解するポリ
スチレン等のポリオレフイン、温水に溶解するポ
リビニルアルコール系ポリマ等を用いることがで
きる。特に取扱いの安全性からポリビニルアルコ
ール系フイラメントが好ましい。該連続糸条物の
巻回回数は300〜900T／ｍが好ましい。

また本発明の複合糸は綿番手で10〜30番程度が
好ましい。

以下実施例により説明する。

実施例 １ さし毛用短繊維としてPBT40d×30mm（偏平十
字、先染、47％混入）、わた毛用短繊維として
PBT1.7d×20mm（先染、39％混入）、さらに水溶
液PVAステーブル2d×38mm（14％混入）を混紡
したスライバーを水溶性PVAフイラメント糸
56D−16Fでカバリング精紡機で紡出した。（紡出
番手15′^S、ヨリ数457T／ｍ、ヨリ方向^Z、紡速
14.2ｍ／min）糸切れは皆無であり、極めて好調
であつた。得られた複合糸は第２図に示すように
表面が滑らかな毛羽の少ない糸が得られた。

次に地糸タテ、ヨコにポリエステル紡績糸40／
2^1Sを、パイル糸に前記のとおり試作した糸を使
用してダブルベツド織機によりパイル織物を織成
した。地織密度はタテ×ヨコ：64×45本／吋、パ
イル密度はタテ×ヨコ：32×30本／吋、パイル長
は30mmである。得られた生機をポリウレタン15％
DMF溶液でバツキングし、80℃温湯でポリウレ
タンを凝固すると同時にPVAフイラメント糸を
溶解除去、脱水、乾燥後ブラツシングを繰返しパ
イル解繊、毛さばきおよび遊び毛の除去を行なつ
た。製織性も好調で特に問題なかつた。バツキン
グ加工も糸が細いためポリウレタンの付着性良好
であつた。ちなみに従来法による布帛用糸の紡出
を試みたが糸切れが多く、また糸外観も悪く本案
の効果が確認された。

本発明の複合糸使いパイル織物は、仕上げ加工
後さし毛の直線性およびパイルの高密度化が可能
となり、よりミンク調外観、風合いとなつた。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来法により製造した糸、第２図は本
発明の糸を例示した側面概略図である。第３図は
本発明の複合糸の製造方法を示す。 １：２成分以上の短繊維からなる混紡成分、
２：連続糸条物、１１：短繊維束、１２：ドラフ
トパート部、１３：中空スピンドル、１４：連続
糸条物、１５：フリース、１６：複合糸、１７：
デリベリローラ、１８：ワインダ。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 少なくとも２成分の短繊維からなる混紡成分
   と、連続糸条物とからなる複合糸において、 イ 混紡成分のヨリは実質０であり、 ロ 混紡成分の少なくとも１成分Ａは先端尖鋭化
   部を有し、かつ他成分よりも繊維長が長く、 ハ 連続糸条物は溶解除去可能繊維からなること
   を特徴とする複合糸。 ２ 短繊維成分Ａはポリエステル繊維からなるこ
   とを特徴とする特許請求の範囲第１項記載の複合
   糸。 ３ 連続糸条物がポリビニルアルコール系フイラ
   メントからなることを特徴とする特許請求の範囲
   第１項記載の複合糸。 ４ 短繊維成分Ａは10mm〜40mmからなることを特
   徴とする特許請求の範囲第１項記載の複合糸。 ５ 糸番手が10番〜30番（綿番手）であることを
   特徴とする特許請求の範囲第１項記載の複合糸。 ６ 短繊維束をドラフトし、空中スピンドルに導
   き、該中空スピンドルの外側に巻かれた連続糸条
   物をバルーニングさせつつフリースに巻回させる
   方法において、前記短繊維束は少なくとも２成分
   の短繊維からなり、１成分は先端尖鋭化部を有
   し、かつ他成分よりも繊維長が長いものを用いる
   ことを特徴とする複合糸の製造方法。 ７ 連続糸条物の巻回回数が300T／ｍ〜900T／
   ｍであることを特徴とする特許請求の範囲第６項
   記載の複合糸の製造方法。