JPH0214895Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ この考案は、正面フライスやカツター等の切削
工具本体の外周部に、正のアキシヤルすくい角を
もつて装着される、ポジテイブスローアウエイチ
ツプに関するものである。

［従来の技術］ 近年、上記ポジテイブスローアウエイチツプ
（以下、チツプと略称する。）のうち、特に外観が
多角形の板状をなし、その上面の少なくとも一の
辺部に主切刃が形成されるとともに、上記主切刃
に沿うすくい面が凸曲面状に形成された各種のチ
ツプが開発されつつある。

第１２図〜第１５図は従来のこの種のチツプの
一例を示すものである。

このチツプ１は外観が略菱形の板状に形成され
たもので、その上面２の辺部３……のうちの対向
する一対の辺部３，３に主切刃４，４が形成され
るとともに、これら主切刃４，４から載置面とさ
れる下面５に至る側面に、これら主切刃４，４の
逃げ面６，６が形成されてなるものである。そし
て、上記上面２の、上記主切刃４に沿つて切刃先
端７から切刃後端８に至るすくい面９は、上記主
切刃４が略円弧形を描くような円柱面（凸曲面）
により形成されている。ここで、上記すくい面９
を形成する円柱面（凸曲面）は、その上下面２，
５間の最大厚さ部１０が上記主切刃４の切刃先端
７と切刃後端８との中央に位置するように形成さ
れている。

ところで、このようにしてそのすくい面９が円
柱面（凸曲面）により形成されたチツプ１では、
切刃先端部の刃物角が大きく、刃物強度に優れる
とともに、その特異な切削作用により切削抵抗や
切削熱の発生が低減する等の特有な利点を有する
ことが知られている。また、第１６図に示すよう
に、例えばカツター本体１２のチツプ座１３に上
記カツター本体１２の軸線Ｘに対して正の取り付
け傾斜角α（上記すくい面９が上記下面５と平行
であれば、正のアキシヤルすくい角に相当する角
度）で装着した場合に、特に上記主切刃４の中央
部から後方においては、上記取り付け傾斜角αよ
り大きな正の接線角βが得られる。このため、こ
のチツプ１にあつては、上記すくい面９に沿つた
方向への切屑の除去性能に優れるという利点があ
る。

［考案が解決しようとする問題点］ しかしながら、このようなチツプ１では、第１
６図に示すような比較的大径のカツタ本体１２に
取り付けられて切削幅が広い切削面を加工するた
めに使用される場合には、その切屑が第１７図に
示すように、主切刃４からカツタ本体１２の回転
中心に向けて延出してしまう。一方、上記従来の
チツプ１にあつては、第１４図に示すように、そ
の切刃先端７においては、上記すくい面９と上面
２との間に上記切屑の主切刃４と直交する方向へ
の延出を妨げる小壁部１４が形成されているもの
の、第１５図に示すように、主切刃４の中央部に
おいては上記切屑の延出を制御する部分が何等形
成されていない。このため、切削の幅が大きくな
ると、カツタ本体１２に向けて延出した上記切屑
がカツタ本体１２に激しく衝突し、これにより振
動が発生したり、上記切屑が切断されないために
主切刃４に大きな力が作用して上記主切刃４が破
損したりするなどの問題点があつた。また、主切
刃４の切刃先端７においては、上記小壁部１４と
すくい面９とのなす角度が略直角であるため、逆
に切屑が詰まり易く、これが主切刃４の破損やび
びりの発生の一因になるといつた問題点もあつ
た。

［考案の目的］ この考案は上記事情に鑑みてなされたもので、
凸曲面のすくい面に特有の優れた切削性能に加え
て、主切刃の全長に亙つてこれと交差する方向へ
の切屑除去性能にも優れ、よつて切削時における
有害な振動やびびりの発生を未然に防ぐことがで
きるポジテイブスローアウエイチツプを提供する
ことを目的とするものである。

［問題点を解決するための手段］ この考案のポジテイブスローアウエイチツプ
は、多角形の条状をなし、上面の少なくとも一つ
の辺部に主切刃が形成されるとともに、上記上面
の上記主切刃に沿うすくい面が上記主切刃に沿つ
て円滑な凸曲面に形成されたポジテイブスローア
ウエイチツプの上記主切刃に沿う上記すくい面
を、上記上面から上記主切刃へ向けて下面方向に
切れ込む凹曲面と、この凹曲面の底部から上記主
切刃に向けてその上下面間の厚さが漸次増加する
傾斜面とを有する上記主切刃に沿い、かつ主切刃
先端側のコーナ部を含む凸曲面で形成したもので
ある。

［実施例］ 第１図〜第３図は、この考案のチツプの第１実
施例を示すものである。

第１図〜第３図において、このチツプ２０は外
観が略菱形の板状に形成されたもので、その上面
２１の辺部２３……のうちの対向する一対の辺部
２３，２３に主切刃２４，２４が形成されてい
る。そして、上記上面２１と、この上面２１の上
記主切刃２４の先端側および後端側のコーナＸ部
を含む切刃先端２５から切刃後端２６に至る上記
主切刃２４のすくい面２７とは、それぞれ主切刃
２４に沿う方向に湾曲する円柱面状の凸曲面によ
つて形成されている。ここで、上記上面２１と上
記主切刃２４のすくい面２７とは、それぞれの上
下面２１，２８間の最大厚さ部２９を、上記主切
刃２４の切刃先端２５と切刃後端２６との中央に
位置させて形成されている。そして、さらに上記
すくい面２７は、その主切刃２４と直交する方
向、すなわち上記上面２１から上記主切刃２４へ
向けて、上記上面２１から下面２８方向に一定の
深さｈで切れ込む凹曲面３０と、この凹曲面３０
の底部３１から上記上面２１と同厚さを有する主
切刃２４に向けてその上下面２１，２８間の厚さ
が漸次増加する傾斜面３２とから形成されてい
る。

しかして、このようなチツプ２０にあつては、
その主切刃２４のすくい面２７を、上面２１から
上記主切刃２４へ向けて、上記上面２１から下面
２８方向に切れ込む凹曲面３０と、この凹曲面３
０の底部３１から上記主切刃２４に向けてその上
下面２１，２８間の厚さが漸次増加する傾斜面３
２とからなり、かつ上記主切刃２４に沿う円柱状
の凸曲面によつて形成したので、第４図に示すよ
うに、切削時に切屑を上記傾斜面３２から凹曲面
３０に沿つて丸め、短く分断して円滑に排出して
ゆくことができる。これにより、上述した凸曲面
のすくい面２７を有するこのチツプ２０特有の効
果に加えて、さらにその主切刃２４と直交する方
向への切屑の除去性能を大幅に向上させることが
できるという優れた効果を得ることができる。

また、主切刃２４に沿うすくい面２７を、主切
刃先端側および後端側のコーナ部を含む凸曲面で
形成したので、主切刃２４の両端部の刃物角が大
きく、この部分の強度すなわち刃先強度が優れて
いる。したがつて、このようなチツプ２０を第１
６図に示すようなカツター本体１２にアキシヤル
すくい角を正にして装着し、主切刃２４の切刃刃
先端に大きな切削抵抗が作用する場合において
も、この切刃先端の欠けを防止することができる
という優れた効果を得ることができる。

さらに、例えば、主切刃が直線状のチツプを第
１６図に示すようなカツター本体１２にアキシヤ
ルすくい角を正にして装着した場合、主切刃中央
部における回転半径が主切刃の先端および後端に
おける回転半径より小さくなり、このため、被削
材の加工面が中央部において突出する凸曲面状に
切削されてしまい、その加工精度に劣るという欠
点がある。

しかしながら、上記構成のチツプ２０は、ポジ
テイブあり、かつ主切刃２４に沿うすくい面２７
が主切刃に沿う円滑な凸曲面で形成されているの
で、主切刃２４は、チツプ２０のすくい面２７側
から見た場合、チツプ２０の外側に向けて凸の円
滑な曲線になる。したがつて、このようなチツプ
２０を第１６図に示すようなカツター本体１２に
アキシヤルすくい角を正にして装着した場合にお
いて、主切刃２４を、その切刃先端から切刃後端
に至るまで、カツター本体１２の回転軸線を中心
とした同一円弧面と一致するような曲線にするこ
とにより、被削材の加工面を加工底面に対して直
角に形成することができるため、その加工精度を
大幅に向上させることができるという優れた効果
を得ることができる。

なお、上記実施例のチツプ２０においては、上
面２１から凹曲面３０の底部３１までの深さと、
この底部３１から主切刃２４までの高さとを互い
に等しい寸法ｈとしたが、これに限るものではな
く、第５図に示すように上面２１から底部３１ま
での深さｈより、底部３１から主切刃２４までの
高さＨを小さく形成したものや、あるいはこれと
は逆に、第６図に示すように、凹曲面３０の深さ
ｈより主切刃２４の高さＨを大きく形成したもの
であつてもよい。

［他の実施例］ 第７図〜第９図は、この考案のチツプの第２実
施例を示すものである。

第７図〜第９図において、このチツプ３５にお
いては、上面３６が下面３７と平行な平面によつ
て形成されるとともに、上記上面３６の辺部に形
成された一対の各主切刃３８のすくい面３９が、
主切刃３８に沿う円柱面状をなし、かつ上記主切
刃３８の中央部でその幅が最も広く、上記主切刃
３８の先後端部においてその幅が狭くなるような
凸曲面によつて形成されている。そして、上記す
くい面３９は、さらに主切刃３８と直交する方向
に向けて、上記上面３６から上記主切刃３８へ向
けて一定の深さｈで切れ込む凹曲面４０と、この
凹曲面４０の底部４１から上記主切刃３８に向け
てその厚さが漸次増加する傾斜面４２とにより形
成されている。

また、第１０図および第１１図はこの考案のチ
ツプの第３実施例を示すもので、外観略四角形状
のチツプに適用した例を示すものである。

このチツプ４５では、上面４１の各辺部４６に
主切刃４７が形成され、さらに各主切刃４７間の
各角部すなわち各コーナ部に、副切刃４８が形成
されている。また、このチツプ４５においては、
上記主切刃４７のすくい面４９が、コーナ部に形
成された一方の副切刃４８を含みかつすくい面４
９の最大厚さ部５０を上記主切刃４７の切刃先端
に位置させた凸曲面によつて形成されている。そ
して、上記すくい面４９は、上記主切刃４７と直
交する方向に向けて、上記実施例と同様の凹曲面
５１と傾斜面５２とにより形成されている。ここ
で、上記凹曲面５１の上記上面４１からの深さｈ
は、主切刃４７に沿つて一定になるように形成さ
れている。

しかして、上記第２および第３実施例に示した
チツプ３５，４５のあつても、上記第１実施例に
示したものと同様に優れた切屑除去性能を得るこ
とができるとともに、優れた刃先強度が得られ、
さらには加工精度を大幅に向上させることができ
る。

［考案の効果］ 以上説明したようにこの考案のポジテイブスロ
ーアウエイチツプは、多角形の板状をなし、上面
の少なくとも一の辺部に主切刃が形成されるとと
もに、上記上面の上記主切刃に沿うすくい面が上
記主切刃に沿つて円滑な凸曲面に形成されたポジ
テイブスローアウエイチツプの上記主切刃に沿う
上記すくい面を、上記上面から上記主切刃へ向け
て下面方向に切れ込む凹曲面と、この凹曲面の底
部から上記主切刃に向けてその上下面間の厚さが
漸次増加する傾斜面を有する上記主切刃に沿い、
かつ主切刃先端側のコーナ部を含む凸曲面で形成
したものである。よつて、このチツプによれば凸
曲面のすくい面を有するチツプ特有の優れた効果
に加えて、主切刃の全長に亙つて優れた切屑除去
性能を得ることができる。

また、優れた刃先強度を得ることができるとと
もに、加工精度を大幅に向上させることができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図〜第３図はこの考案のポジテイブスロー
アウエイチツプの第１実施例を示すもので、第１
図は正面図、第２図は第１図の−線視側面
図、第３図は第１図の−線視側面図、第４図
は上記第１実施例のチツプによる切削状態を示す
部分拡大図、第５図および第６図はそれぞれ上記
第１実施例の変形例を示す側面図、第７図〜第９
図はこの考案の第２実施例を示すもので、第７図
は正面図、第８図は第７図の−線視側面図、
第９図は第７図の−線視側面図、第１０図お
よび第１１図はこの考案の第３実施例を示すもの
で、第１０図は正面図、第１１図は第１０図のXI
−XI線視側面図である。第１２図〜第１５図は従
来のチツプを示すもので、第１２図は正面図、第
１３図は第１２図の−線視側面図、第１
４図は第１２図の−線視断面図、第１５
図は第１２図の−線視断面図、第１６図
は上記従来のチツプをカツター本体に装着した状
態を示す図、第１７図は上記従来のチツプによる
切削状態を示す部分拡大図である。 １，２０，３５，４５……ポジテイブスローア
ウエイチツプ、２，２１，３６，４１……上面、
３，２３，４６……辺部、４，２４，３８，４７
……主切刃、５，２８，３７……下面、９，２
７，３９，４９……すくい面、１２……カツタ本
体、３０，４０，５１……凹曲面、３１，４１…
…底部、３２，４２，５２……傾斜面、４８……
副切刃。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 多角形の板状をなし、上面の少なくとも一つの
   辺部に主切刃が形成されるとともに、上記上面の
   上記主切刃に沿うすくい面が上記主切刃に沿う円
   滑な凸曲面で形成されたポジテイブスローアウエ
   イチツプにおいて、 上記すくい面を、上記上面から上記主切刃へ向
   けて下面方向に切れ込む凹曲面と、この凹曲面の
   底部から上記主切刃に向けてその上下面間の厚さ
   が漸次増加する傾斜面とを有する上記主切刃に沿
   い、かつ主切刃先端側のコーナ部を含む凸曲面で
   形成したことを特徴とするポジテイブスローアウ
   エイチツプ。