JPH0214269B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （発明の技術分野） 本発明は、フイラメントや紡績糸の如き糸条を
巻き取るために用いられる糸条巻取コツトの製造
方法に関する。

（発明の技術的背景） この種の巻取コツトは、第５図に示すように、
アルミニウムやベークライト等から成る筒状のコ
ツト用芯金１と、この芯金１上に均一な肉厚で設
けられているゴム層２と、ゴム層２の一端側に環
状に設けられているスリツト３とを備えており、
使用に際しては紡績糸の如き糸条の巻始端をスリ
ツト３に挟み込んで挟持させつつ巻回することに
より糸条が巻き付けられ、これにより糸条が連続
的に巻き取られる。

さて、かかる構造の巻取コツトは、従来、接着
剤の塗布されているコツト用芯金１上に未加硫ゴ
ムを押出等により直接的に設け、その後この未加
硫ゴムを加硫してゴム層２を作成し、かつ該ゴム
層２に環状の切り込みを入れてスリツト３を形成
することにより製造されている。

（背景技術の問題点） しかし、コツト用芯金１上に未加硫ゴムを設
け、その後に加硫してゴム層２を作成するだけで
は、高温にて加硫されたゴム層２が常温下で収縮
することから、第６図Ａに示すように、矢印方向
への歪みが生じる。即ち、アルミニウム又はベー
クライトから成るコツト用芯金１の線膨張係数は
それぞれ0.25×10^-4と0.3×10^-4〜0.4×10^-4である
のに対して、ゴム層２のそれは1.5×10^-4〜3.0×
10^-4なので、ゴム層２の収縮率はコツト用芯金１
の収縮率の約４〜10倍となつてしまう。このため
ゴム層２には常温では大きな歪みが生じる。一
方、ゴム層２の内周面側は芯金１に接着されてい
るため収縮が抑えられ、これに対してゴム層２の
表面側はその歪みにより常温下で徐々に収縮して
しまう。従つて、第６図Ｂに示すように、ゴム層
２に環状のスリツト３を設けると、ゴム層２の表
面側のみが徐々に収縮するため、スリツト３の間
隙も徐々に大きくなり、スリツト３による糸条の
巻始端の挟持が不可能になつてしまう。このた
め、従来の巻取コツトでは比較的太い糸条しか挟
持できない不具合があり、ごく特殊な用途でしか
使用できない問題があつた。

（発明の目的） 本発明の目的は、スリツトの間隙が大きくなる
ことのない糸条巻取コツトの製造方法を提供する
ことにある。

（発明の概要） 本発明は、コツト用芯金の一端をテーパ状に縮
径してゴム層を設け、その後コツト用芯金の縮径
端を少なくとも元の外径に戻し、ゴム層を研磨す
ると共にゴム層の縮径端側に位置する部分にスリ
ツトを形成することを特徴とする。

（発明の実施例） 以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に
説明する。

先ず、第１図に示すように、内径が94mm、肉厚
が2.5mmのアルミニウムから成る筒状のコツト用
芯金４を用意し、このコツト用芯金４の外周面を
脱脂すると共に荒地仕上げした。そして、コツト
用芯金４の一端側約10mmを徐々に縮径し、端縁内
径が92mmのテーパ状縮径端４ａを形成した。

一方、第２図に示す筒状ゴム部材５を用意し
た。このゴム部材５はアクリルニトリルブタジエ
ンゴムを加硫して形成され、約99mmの内径を有し
ている。このゴム部材５の一端側にはコツト用芯
金４の縮径端４ａのテーパ面に沿つて内方に突出
する肉厚の大きな突出部５Ａが設けられている。

次に、コツト用芯金４上に、ゴム部材５を第２
図に示すように嵌着してゴム層を設けた。即ち、
突出部５Ａが縮径端４ａ上に位置するように、ゴ
ム部材５を嵌着した。そして、このゴム部材５を
コツト用芯金４周面に焼付け、接着した。

次いで、第３図に示すように、コツト用芯金４
の縮径端４ａを拡径し、コツト用芯金４の一端を
元の内径寸法（94mm）に戻した。従つて、これに
よりゴム部材５の突出部５Ａが設けられていたゴ
ム端部５ａには他端側に向かう方向（矢印参照）
に応力が生じている。

このように、コツト用芯金４の一端を元の内径
寸法に戻した後は、ゴム部材５の周面に研磨し、
５mmの均一な肉厚（外径寸法）に形成する。

最後に、第４図に示すように、ゴム部材５の端
部５ａに環状の切り込みを入れてスリツト３を形
成した。

この得られた巻収コツトを巻付機構の回転軸に
装着し、50デニールのナイロンフイラントの巻始
端をスリツト３に挟持させた状態で7000〜8000r.
p.mの高速で回転し、これにより上記ナイロンフ
イラメントを巻き取つた。そして、この巻き取り
作業を繰り返して行つた場合でも巻取コツトのス
リツト３の間隙が大きくなることはなく、スリツ
ト３によりナイロンフイラメントの巻始端を確実
に挟持することができた。

これは、ゴム部材５のスリツト３の設けられた
端部５ａに他端に向かう方向（矢印参照）への応
力が生じているので、この応力によりスリツト３
の間隙が大きくなるのが防止されていることによ
る。

尚、ゴム部材５はウレタンゴム、その他各種の
ゴム部材を用いて形成してもよく、又ゴム部材５
をエポキシ樹脂やウレタン系の液状接着剤を用い
てコツト用芯金４に固着するようにしてもよい。

ところで、上記実施例では、コツト用芯金４の
縮径端４ａを元の内径寸法に戻しているが、元の
内径寸法94mmよりも大きな寸法で拡径するように
してもよい。この場合にはスリツト３の間隙が大
きくなるのを更に確実に防止することができる。

上記実施例において、コツト用芯金４上に、エ
ポキシ樹脂を介して未加硫のゴム層を設け、この
ゴム層を加硫した後にコツト用芯金４の縮径端４
ａを元の内径寸法に戻し、これによりゴム層の端
部に上記矢印方向への応力を生じさせることも可
能である。

また、コツト用芯金４上に突出部５Ａを有する
半加硫のゴム部材５をエポキシ樹脂を介して嵌着
し又は焼付け、接着し、その後このゴム部材５を
加硫してコツト用芯金４の縮径端４ａを元の内径
寸法に戻してもよい。この場合にもゴム部材５の
端部５ａに上記矢印方向への応力が生じる。

（発明の効果） 本発明によれば、コツト用芯金の一端をテーパ
状に縮径して縮径部上に肉厚部を有するゴム層を
設け、その後コツト用芯金の縮径端を少なくとも
元の内径寸法に戻し、ゴム層を均一な外径寸法に
研磨するようにしたことで、ゴム層の一端側に向
かう方向への応力が生じる。従つて、このゴム層
の一端側にスリツトを形成しても該スリツト間隙
が大きくなることがなく、よつて、繰り返し使用
してもスリツトにより糸条の巻始端を確実に挟持
することができる上に細い糸条であつても巻き取
ることができる糸条巻取コツトを得ることができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図乃至第４図はそれぞれ本発明に係る製造
方法の各製造工程を示す断面図、第５図は従来の
巻取コツトの断面図、第６図Ａ，Ｂはそれぞれ筒
状ゴム層に発生する歪み及びスリツト間隙と歪み
との関係を説明するための断面図である。 １，４……芯金、３……スリツト、４ａ……縮
径端、５……ゴム部材。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 筒状のコツト用芯金の一端をテーパ状に縮径
   すると共に前記コツト用芯金上にその縮径端で肉
   厚が大きく形成されている肉厚部を有するゴム層
   を設け、その後前記コツト用芯金の縮径端を少な
   くとも元の内径寸法に戻し、前記ゴム層の外径を
   均一にすべく前記肉厚部を研磨すると共に該ゴム
   層の前記縮径端上に位置する部分に環状の切り込
   みを設けたことを特徴とする糸条巻取コツトの製
   造方法。 ２ 前記コツト用芯金上に、一端部に前記縮径端
   に沿つて内方に突出している肉厚部を有する筒状
   ゴム部材を嵌着してゴム層を設けることを特徴と
   する特許請求の範囲第１項に記載の糸条巻取コツ
   トの製造方法。 ３ 前記コツト用芯金上に、前記縮径端上に前記
   肉厚部を位置させて未加硫ゴム層を設け、該未加
   硫ゴム層を加硫してゴム層を形成することを特徴
   とする特許請求の範囲第１項に記載の糸条巻取コ
   ツトの製造方法。 ４ 前記コツト用芯金上に、前記縮径端上に前記
   肉厚部を位置させて半加硫のゴム層を嵌着し、該
   半加硫ゴム層を加硫することを特徴をする特許請
   求の範囲第１項に記載の糸条巻取コツトの製造方
   法。