JP7504628B2 - エチレン-ビニルアルコール共重合体含有樹脂組成物及び成形体 - Google Patents

エチレン-ビニルアルコール共重合体含有樹脂組成物及び成形体 Download PDF

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Description

本発明は、エチレン-ビニルアルコール共重合体を主成分とする樹脂組成物、並びに前記樹脂組成物を用いた成形体に関する。
エチレン-ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」という。)は、優れたガスバリア性及び溶融成形性を有することから、各種の溶融成形法により、フィルム、シート、パイプ、チューブ、ボトル等に成形され、ガスバリア性の要求される食品分野及び産業分野で包装材料等として広く使用されている。また、溶融粘度、溶融張力、伸長粘度といった溶融成形性に関わる物性を制御する方法、あるいは、引張強伸度といった成形品の機械物性を向上する方法として、EVOHにホウ酸系化合物を添加する方法が広く知られている。一方、ホウ酸系化合物の添加量が多過ぎたり、局在化したりすると、フィッシュアイ等の外観不良が発生し、成形品の品質が低下することがあるため、添加量や添加法に関しても種々検討がなされている(特許文献1~3)。
特公昭62-3866号公報 特開2000-44756号公報 国際公開第2017/110676号
しかしながら、EVOHとホウ酸系化合物との相互作用は可逆的なものであり、たとえば高湿条件においては相互作用が弱まったり、水中においてはホウ酸系化合物が流出したりといった問題が起こり、成形体の機械物性をはじめとする期待された効果が十分に発現されない場合があった。これは、EVOH層が長時間にわたり、直接的に水、特に熱水に接触する用途で問題となりやすく、たとえば、EVOHが最内層として使用される導水パイプや、EVOHが最外層として使用される食品包装などがその例として挙げられる。EVOHとホウ酸系化合物との相互作用は、ホウ素原子を中心として3配位の場合と4配位の場合とがあるが、このような相互作用の方式では、いずれの場合にも上記したような耐水性を改善することは困難であった。
本発明は上記のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、溶融成形性と外観特性に優れ、かつ成形体の耐水性も向上できるEVOHを提供することである。
本発明者らは、EVOHとホウ素化合物との相互作用について鋭意検討した結果、分子内に2つのホウ素原子を有するジボロン酸系化合物を使用することで、溶融成形性と外観特性に優れ、かつ成形体の耐水性も向上できることを見出した。一方、分子内に2つのホウ素原子を有していても、ホウ酸が脱水縮合して生成するポリホウ酸系化合物では、耐水性の向上は限定的であった。さらに、特定の構造を有するジボロン酸系化合物を使用することで、上記特性をさらに高いレベルでバランスできることを見出し、発明を完成させた。すなわち、上記課題は、
[1]エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)並びにジボロン酸または水の存在下で該ジボロン酸に転化し得る化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のホウ素化合物(B)を含む樹脂組成物であって、エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン単位含有量が15~60モル%、けん化度が85モル%以上であり、ホウ素化合物(B)の含有量が、ホウ素元素換算で30~300ppmである樹脂組成物;
[2]ホウ素化合物(B)が下記式(I)で示される、[1]の樹脂組成物;
[式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、Xは単結合、又は1つ以上の原子からなる結合鎖を表す。]
[3]Xが1つ以上の原子からなる結合鎖であり、ホウ素原子間の最短鎖の原子数が3~6である、[2]の樹脂組成物;
[4]Xが1つ以上の原子からなる結合鎖であり、ホウ素原子間の最短鎖が炭素原子のみからなる、[2]又は[3]の樹脂組成物;
[5]Xが1つ以上の原子からなる結合鎖であり、ホウ素原子間の最短鎖が単結合のみを有する、[2]~[4]のいずれかの樹脂組成物;
[6]さらにアルカリ金属イオン(C)を100~400ppm含有する、[1]~[5]のいずれかの樹脂組成物;
[7]さらにカルボン酸(D)を50~400ppm含有する、[1]~[6]のいずれかの樹脂組成物;
[8][1]~[7]のいずれかの樹脂組成物を含む成形体;
[9][1]~[7]のいずれかの樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する多層成形体;
を提供することで解決される。
本発明の樹脂組成物は、溶融成形性と外観特性に優れ、かつ成形体の耐水性も向上できるため、EVOH層が長時間にわたり、直接的に水、特に熱水に接触する用途にも好ましく使用することができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において特定の機能を発現するものとして具体的な材料(化合物等)を例示する場合があるが、本発明はこのような材料を使用した態様に限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
<EVOH(A)>
EVOH(A)は、本発明の樹脂組成物の主成分である。EVOH(A)は、主構造単位として、エチレン単位及びビニルアルコール単位を有する共重合体である。EVOH(A)は、通常、エチレンとビニルエステルとを重合し、得られるエチレン-ビニルエステル共重合体をけん化して得られる。なお主成分とは、本発明の樹脂組成物を構成する樹脂中のEVOH(A)の含有量が70質量%以上であることを示し、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が特に好ましく、99質量%以上であってもよい。EVOH(A)の含有量をこの範囲とすることで、得られるペレットの溶融成形性が向上し、それから得られる成形体のガスバリア性も優れたものとなる。
EVOH(A)のエチレン単位含有量、即ちEVOH(A)中の単量体単位の総数に対するエチレン単位の数の割合は15~60モル%の範囲にある必要がある。EVOH(A)のエチレン単位含有量の下限は20モル%が好ましく、23モル%がより好ましい。一方、EVOH(A)のエチレン単位含有量の上限は55モル%が好ましく、50モル%がより好ましい。EVOH(A)のエチレン単位含有量が15モル%未満の場合、高湿度下でのガスバリア性が低下し、溶融成形性も悪化することがある。EVOH(A)のエチレン単位含有量が60モル%を超えると十分なガスバリア性が得られないことがある。
EVOH(A)のけん化度、即ちEVOH(A)中のビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の総数に対するビニルアルコール単位の数の割合は85モル%以上である必要がある。EVOH(A)のけん化度の下限は95モル%が好ましく、99モル%がより好ましい。一方、EVOH(A)のけん化度の上限は100モル%が好ましく、99.99モル%がより好ましい。EVOH(A)のけん化度が85モル%未満の場合、十分なガスバリア性が得られないことがあり、さらに熱安定性が不十分となるおそれもある。
EVOH(A)は、エチレン単位含有量の異なる2種類以上のEVOHの混合物であってもよい。この場合、エチレン単位含有量が最も離れたEVOH同士のエチレン単位含有量の差が30モル%以下が好ましく、20モル%以下がより好ましく、15モル%以下がさらに好ましい。同様に、EVOH(A)は、けん化度の異なる2種類以上のEVOHの混合物であってもよい。この場合、最も離れたEVOH同士のけん化度の差は7%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。熱成形性及びガスバリア性が、より高いレベルでバランスがとれた樹脂組成物を所望する場合は、エチレン単位含有量が24モル%以上34モル%未満であり、けん化度が99モル%以上のEVOH(A-1)と、エチレン単位含有量が34モル%以上50モル%未満であり、けん化度が99モル%以上のEVOH(A-2)とを、配合質量比(A-1/A-2)が60/40~90/10となるように混合し、EVOH(A)として使用することが好ましい。EVOH(A)のエチレン単位含有量及びけん化度は、核磁気共鳴(NMR)法により求めることができる。
EVOH(A)のJIS K 7210:2014に準拠したメルトフローレート(以下、単に「MFR」と略称することがある)(温度210℃、荷重2160g)の下限は0.1g/10分が好ましく、0.5g/10分がより好ましく、1g/10分がさらに好ましい。一方、EVOH(A)のMFRの上限は50g/10分が好ましく、30g/10分がより好ましく、15g/10分がさらに好ましい。EVOH(A)のMFRをこの範囲の値とすることで、得られる樹脂組成物の溶融成形性が向上する。
EVOH(A)は、本発明の目的が阻害されない範囲で、エチレン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位以外の単量体単位を共重合単位として含有できる。前記単量体の例としては、例えばプロピレン、1-ブテン、イソブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、その塩、その部分又は完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸又はその塩;不飽和チオール類;ビニルピロリドン類が挙げられる。EVOH(A)中のエチレン単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位以外の単量体単位の含有量は、通常5モル%以下であり、2モル%以下が好ましく、1モル%以下がより好ましい。
<ホウ素化合物(B)>
本発明の樹脂組成物は、ジボロン酸または水の存在下で該ジボロン酸に転化し得る化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のホウ素化合物(B)をホウ素元素換算で30~300ppm含有する必要がある。ホウ素化合物(B)は、下記式(I)で示すことができる。
[式中、R1、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、Xは単結合、又は1つ以上の原子からなる結合鎖を表す。]
式(I)において、Xが1つ以上の原子からなる結合鎖であり、ホウ素原子間の最短鎖の原子数が3~6であることが好ましい。ホウ素原子間の最短鎖の原子数がこの範囲にあることで、得られる樹脂組成物の製膜性と耐水性を高いレベルでバランスすることができる。また、式(I)において、Xが1つ以上の原子からなる結合鎖であり、ホウ素原子間の最短鎖が炭素原子のみからなることも好ましい。ホウ素原子間の最短鎖が炭素原子のみからなることによって、得られる樹脂組成物の耐水性を向上することができる。さらに、式(I)において、Xが1つ以上の原子からなる結合鎖であり、ホウ素原子間の最短鎖が単結合のみを有することも好ましい。ホウ素原子間の最短鎖が単結合のみを有することで、得られる樹脂組成物の着色を低減することができる。なお、本願において、ホウ素原子間の最短鎖とは、ホウ素原子間を結ぶ原子鎖が複数ある場合には、そのうちで最短の原子鎖のことを指す。
ホウ素化合物(B)としては、例えばメタンジボロン酸、エタンジボロン酸、プロパンジボロン酸、ブタンジボロン酸、ペンタンジボロン酸、ヘキサンジボロン酸、及びそれらの異性体、並びに1,4-ベンゼンジボロン酸、1,3-ベンゼンジボロン酸などが挙げられる。
ホウ素化合物(B)の含有量の下限はホウ素元素換算で30ppmであり、50ppmが好ましい。一方、ホウ素化合物(B)の含有量の上限はホウ素元素換算で300ppmであり、250ppmが好ましい。ホウ素化合物(B)の含有量が30ppm未満の場合、製膜時にネックインが激しくなり、溶融成形性が不足する場合がある。一方、ホウ素化合物(B)の含有量が300ppmを越える場合、製膜時にフィッシュアイが増大し、成形品の外観特性が悪化する場合がある。
<アルカリ金属イオン(C)>
本発明の樹脂組成物は、アルカリ金属イオン(C)を含有することが好ましい。アルカリ金属イオン(C)の含有量の下限は100ppmが好ましく、150ppmがより好ましい。一方、アルカリ金属イオン(C)の含有量の上限は400ppmが好ましく、350ppmがより好ましい。アルカリ金属イオン(C)の含有量が100ppm未満の場合、本発明の樹脂組成物を成形して得られる層を含む多層成形体の層間接着性が不十分となる場合がある。一方、アルカリ金属イオン(C)の含有量が400ppmを超える場合、熱劣化による着色が問題となる場合がある。アルカリ金属イオン(C)によって層間接着性が向上する理由は明らかではないが、EVOH(A)と隣接する層がEVOH(A)のヒドロキシ基と反応し得る官能基を有する分子を有する場合には、この結合生成反応がアルカリ金属イオン(C)によって加速されることが一因であると考えられる。また、アルカリ金属イオン(C)と、後述するカルボン酸(D)との含有比率を制御することで、得られる樹脂組成物の溶融成形性や着色耐性をさらに改善できる。
アルカリ金属イオン(C)としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムのイオンが挙げられるが、工業的入手の点からはナトリウム又はカリウムのイオンが好ましい。特に、カリウムイオンを使用することで、本発明の樹脂組成物の色相、及び本発明の樹脂組成物を成形して得られる層を含む多層成形体の層間接着性を高いレベルで両立できる場合がある。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
アルカリ金属イオン(C)を与えるアルカリ金属塩としては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、金属錯体が挙げられる。中でも、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウムが、入手容易である点からより好ましい。
<カルボン酸(D)>
本発明の樹脂組成物はカルボン酸(D)含有することが好ましい。カルボン酸(D)の含有量の下限は50ppmが好ましく、100ppmがより好ましい。一方、カルボン酸(D)の含有量の上限は400ppmが好ましく、350ppmがより好ましい。カルボン酸(D)の含有量が50ppm未満の場合、着色耐性が不十分となる場合がある。一方、カルボン酸(D)の含有量が400ppmを超える場合、本発明の樹脂組成物を成形して得られる層を含む多層成形体の層間接着性が不十分となったり、臭気が問題になったりする場合がある。カルボン酸(D)の含有量は、ペレット10gを純水50mlで95℃、8時間抽出した後、得られる抽出液を滴定することで求められる。なお、ペレット中のカルボン酸(D)の含有量として、前記抽出液中に塩として存在するカルボン酸は考慮しない。また、本発明の樹脂組成物が、カルボン酸(D)以外の酸性化合物を含有する場合には、滴定による測定値からそれらの酸性化合物の寄与分を差し引くことで樹脂組成物中のカルボン酸(D)の含有量を求めることができる。
カルボン酸(D)のpKaは3.5~5.5が好ましい。カルボン酸(D)のpKaが上記範囲であると、得られる樹脂組成物のpH緩衝能力が高まり、溶融成形性をさらに改善するとともに、酸性物質や塩基性物質による着色をさらに改善できる。
カルボン酸(D)は、1価カルボン酸であってもよい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。1価カルボン酸とは、分子内に1つのカルボキシル基を有する化合物である。pKaが3.5~5.5の範囲にある沸点150℃未満の1価カルボン酸としては、特に限定されず、例えばギ酸(pKa=3.77)、酢酸(pKa=4.76)、プロピオン酸(pKa=4.85)、アクリル酸(pKa=4.25)等が挙げられる。これらのカルボン酸は沸点が150℃未満である限り、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子等の置換基をさらに有していてもよい。中でも、安全性が高く、入手及び取扱いが容易であることから酢酸が好ましい。
カルボン酸(D)は、多価カルボン酸であってもよい。カルボン酸(D)が多価カルボン酸であると、樹脂組成物の高温下での着色耐性や、得られる溶融成形体の着色耐性をさらに改善できる場合がある。また、多価カルボン酸化合物は、3個以上のカルボキシル基を有することも好ましい。この場合、着色耐性をより効果的に向上できる場合がある。
多価カルボン酸とは、分子内に2つ以上のカルボキシル基を有する化合物である。この場合、少なくとも1つのカルボキシル基のpKaが3.5~5.5の範囲にあることが好ましく、例えば、シュウ酸(pKa2=4.27)、コハク酸(pKa1=4.20)、フマル酸(pKa2=4.44)、リンゴ酸(pKa2=5.13)、グルタル酸(pKa1=4.30、pKa2=5.40)、アジピン酸(pKa1=4.43、pKa2=5.41)、ピメリン酸(pKa1=4.71)、フタル酸(pKa2=5.41)、イソフタル酸(pKa2=4.46)、テレフタル酸(pKa1=3.51、pKa2=4.82)、クエン酸(pKa2=4.75)、酒石酸(pKa2=4.40)、グルタミン酸(pKa2=4.07)、アスパラギン酸(pKa=3.90)等が挙げられる。
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物は本発明の効果を損なわない範囲でその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば2価金属イオン(E)、リン酸化合物(F)、ホウ素化合物(B)以外のホウ素化合物(G)、EVOH(A)以外の熱可塑性樹脂、架橋剤、乾燥剤、酸化促進剤、酸化防止剤、酸素吸収剤、可塑剤、滑剤、熱安定剤(溶融安定剤)、加工助剤、界面活性剤、脱臭剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、防曇剤、難燃剤、顔料、染料、フィラー、充填剤、各種繊維等の補強剤等が挙げられる。
<2価金属イオン(E)>
本発明の樹脂組成物は2価金属イオン(E)をさらに含有してもよい。2価金属イオン(E)の含有量の下限は10ppmが好ましい。一方、2価金属イオン(E)の含有量の上限は100ppmが好ましい。本発明の樹脂組成物は2価金属イオン(E)の含有量をこの範囲とすることで、EVOH(A)の熱劣化による着色が抑制され、長時間にわたって溶融成形を行った場合にも成形体のゲル及びブツの発生が抑制される場合がある。
2価金属イオン(E)としては、例えばベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、鉄、銅、亜鉛のイオンが挙げられるが、着色等の影響が小さく、工業的に入手し易い点からはマグネシウム、カルシウム又は亜鉛のイオンが好ましい。少量の含有量でゲル及びブツの発生を効果的に抑制する観点では、マグネシウムイオンが特に好ましいが、色相とのバランスという観点では、カルシウムイオンや亜鉛イオン、特に亜鉛イオンが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
2価金属イオン(E)を与える2価金属塩としては、例えばマグネシウム、カルシウム及び亜鉛等の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、炭酸塩、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、金属錯体が挙げられる。中でも、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛が、入手容易である点からより好ましい。
<リン酸化合物(F)>
本発明の樹脂組成物は、リン酸化合物(F)をさらに含有してもよい。リン酸化合物(F)の含有量の下限は、リン酸根換算で5ppmが好ましい。一方、リン酸化合物(F)の含有量の上限は、リン酸根換算で100ppmが好ましい。この範囲でリン酸化合物(F)を含有することにより、得られる樹脂組成物や得られる溶融成形体の着色が抑制され、熱安定性が改善される場合がある。
リン酸化合物(F)としては、例えばリン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等が用いられる。リン酸塩は第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれであってもよい。リン酸塩のカチオン種も特に限定されないが、カチオン種がアルカリ金属、アルカリ土類金属が好ましい。中でも、リン酸化合物(F)として、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、及びリン酸水素二カリウムが好ましい。
<ホウ素化合物(G)>
本発明の樹脂組成物は、ホウ素化合物(B)以外のホウ素化合物(G)をさらに含有してもよい。ホウ素化合物(G)の含有量の下限は、ホウ素元素換算で15ppmが好ましい。一方、ホウ素化合物(G)の含有量の上限は、ホウ素元素換算で150ppmが好ましい。本発明においては、ホウ素化合物(B)とホウ素化合物(G)を併用することで、より経済的に樹脂組成物を製造することができる。
ホウ素化合物(G)としては、例えばホウ酸、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素が挙げられる。具体的には、オルトホウ酸(HBO)、メタホウ酸、四ホウ酸等のホウ酸;ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル等のホウ酸エステル;前記ホウ酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、ホウ砂等のホウ酸塩等が挙げられる。中でもオルトホウ酸が好ましい。
本発明の樹脂組成物は、EVOH(A)以外の熱可塑性樹脂をさらに含有してもよい。EVOH(A)以外の熱可塑性樹脂としては、例えば各種ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体、ポリオレフィンと無水マレイン酸との共重合体、エチレン-ビニルエステル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、又はこれらを不飽和カルボン酸もしくはその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィン等)、各種ポリアミド(ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6/66共重合体、ナイロン11、ナイロン12、ポリメタキシリレンアジパミド等)、各種ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアクリレート及び変性ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。本発明の樹脂組成物中の前記熱可塑性樹脂の含有量は30質量%未満であり、20質量%未満が好ましく、10質量%未満がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、1質量%以下であってもよい。
<ペレットの製造方法>
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、最終的に、EVOH(A)及びホウ素化合物(B)が上述の範囲で含有されている限り何ら制限はないが、後述する本発明の製造方法によって製造することが好ましい。
本発明の樹脂組成物にホウ素化合物(B)を含有させる方法は特に限定されないが、例えば(1)ホウ素化合物(B)が溶解している溶液にEVOH(A)を含む含水ペレットを浸漬する方法、(2)EVOH(A)を溶融してホウ素化合物(B)を混合する方法、(3)EVOH(A)を適当な溶媒に溶解してホウ素化合物(B)を混合する方法等が適用可能である。
中でも、本発明の効果をより顕著に発揮させるためには、上記(1)の方法が好ましい。この処理は、バッチ方式、連続方式のいずれによる操作でも実施可能である。その際、該EVOH(A)の形状は、粉末、粒状、球状、円柱形ペレット状等の任意の形状であってよい。上記溶液中のホウ素化合物(B)の濃度は、特に限定されるものではない。また溶液の溶媒は特に限定されないが、取扱い上の容易さ及び環境への影響等から水溶液が好ましい。浸漬時間はEVOH(A)の形態によって異なるが、1~10mm程度のペレットの場合には1時間以上、好ましくは2時間以上が好ましい。上記のように溶液に浸漬して処理した場合、最後に乾燥を行うことで、揮発分0.3%未満の樹脂組成物が得られる。
EVOHは、通常エチレン-ビニルエステル共重合体のけん化によって合成され、一般にはビニルエステルとしては酢酸ビニルが用いられる。また、エチレンと酢酸ビニルを共重合する際に、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)も併用することもできる。
エチレンとビニルエステルの重合は溶液重合、懸濁重合、乳化重合、バルク重合のいずれであっても良く、また連続式、回分式のいずれであってもよいが、例えば、回分式の溶液重合の場合の重合条件は次の通りである。
溶媒:アルコール類が好ましいが、その他エチレン、ビニルエステル及びエチレン-ビニルエステル共重合体を溶解し得る有機溶剤(ジメチルスルホキシド等)を用いることができる。アルコール類としてはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール等を用いることができ、特にメチルアルコールが好ましい。
触媒:2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(4-メチル-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス-(2-シクロプロピルプロピオニトリル)等のアゾニトリル系開始剤及びイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエイト、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエイト、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤等が用いられる。
温度:20~90℃、好ましくは40℃~70℃。
時間:2~15時間、好ましくは3~11時間。
重合率:仕込みビニルエステルに対して10~90%、好ましくは30~80%。
重合後の溶液中の樹脂分:5~85%、好ましくは20~70%。
なお、エチレンとビニルエステル以外にこれらと共重合し得る単量体を少量共存させることも可能である。共重合し得る単量体としては、例えばプロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン等のα-オレフィン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸又はその無水物、塩、あるいはモノ又はジアルキルエステル等;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β-メトキシ-エトキシ)シラン、γ-メタクリルオキシプロピルメトキシシラン等のビニルシラン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸又はその塩;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
所定時間の重合後、所定の重合率に達した後、必要に応じて重合禁止剤を添加し、未反応のエチレンガスを蒸発除去した後、未反応酢酸ビニルを追い出す。エチレンを蒸発除去したエチレン-酢酸ビニル共重合体から未反応の酢酸ビニルを追い出す方法としては、例えばラシヒリングを充填した塔の上部から該共重合体溶液を一定速度で連続的に供給し、塔下部よりメタノール等の有機溶剤蒸気を吹き込み塔頂部よりメタノール等の有機溶剤と未反応酢酸ビニルの混合蒸気を留出させ、塔底部より未反応酢酸ビニルを除去した該共重合体溶液を取り出す方法等が採用される。
未反応の酢酸ビニルを除去した該共重合体溶液にアルカリ触媒を添加し、該共重合体中の酢酸ビニル成分をけん化する。けん化方法は連続式、回分式いずれも可能である。アルカリ触媒としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属アルコラート等が用いられる。例えば、回分式の場合のけん化条件は次の通りである。
該共重合体溶液濃度:10~50%。
反応温度:30~60℃。
触媒使用量:0.02~0.6当量(酢酸ビニル成分当り)。
時間:1~6時間。
また、けん化工程の後に、酢酸等の酸を添加して残存するアルカリ触媒を中和することも一般に行われる。
造粒の操作としては、例えば(1)EVOHを含む溶液を低温の貧溶媒中に押出して析出させるか、又は凝固させその直後又はさらに冷却固化させた後にカットする方法、(2)EVOHの溶液を水蒸気と接触させて予めEVOHの含水樹脂組成物を得た後、当該含水樹脂組成物をカットする方法が挙げられる。これらの方法で得られたEVOHの含水ペレット中の含水量は、EVOH100質量部に対して、50~200質量部が好ましく、70~150質量部がより好ましい。
本発明の樹脂組成物は、例えば上記造粒工程で得られたEVOHの含水ペレットを乾燥することで得られる。本発明の樹脂組成物の揮発分は、0.5質量%未満が好ましく、0.3質量%未満がさらに好ましい。含水ペレットの乾燥方法としては、例えば静置乾燥や流動乾燥が挙げられる。これらの乾燥方法は単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。乾燥処理は連続式、バッチ式いずれの方法で行っても良い。複数の乾燥方法を組み合わせて行う場合は、各乾燥方法について連続式、バッチ式を自由に選択できる。乾燥中の酸素によるペレットの劣化を低減できる観点から、乾燥を低酸素濃度あるいは無酸素状態で行うことも好ましい。乾燥温度は通常、150℃未満である。
<成形体>
本発明の樹脂組成物は種々の溶融成形方法により、多様な成形体に加工できる。こうして得られる成形体も本発明の一態様である。本発明の成形体としては、例えば単層構造の成形体や、本発明の樹脂組成物からなる層と、他の層とを有する多層成形体が挙げられる。成形方法としては、例えば押出成形、熱成形、異形成形、中空成形、回転成形、射出成形が挙げられる。本発明の成形体の用途は、例えばフィルム、シート、容器、ボトル、タンク、パイプ、ホース等が好適なものとして挙げられる。
具体的な成形方法として以下の方法が例示される。フィルム、シート、パイプ、ホース等であれば押出成形により得られる。容器形状であれば射出成形により得られる。ボトルやタンク等の中空容器は中空成形や回転成形により得られる。中空成形としては、押出成形によりパリソンを得た後、これをブローして成形を行う押出中空成形と、射出成形によりプリフォームを成形し、これをブローして成形を行う射出中空成形が挙げられる。フレキシブル包装材や容器の成形方法としては、押出成形によって多層フィルム等の包装材を得る方法、押出成形によって得られた多層シートを熱成形して容器状の包装材にする方法が好適に用いられる。
<多層成形体>
本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する多層成形体も本発明の好適な実施態様である。当該多層成形体は、本発明の樹脂組成物からなる層と他の層とが積層されてなる。前記樹脂組成物層以外の他の層として、EVOH(A)以外の樹脂からなる層が好ましい。また、前記多層成形体がさらに接着性樹脂からなる層を有していてもよい。当該多層成形体の層構成としては、EVOH(A)以外の樹脂からなる層をx層、本発明の樹脂組成物からなる層をy層、接着性樹脂層をz層とすると、例えばx/y、x/y/x、x/z/y、x/z/y/z/x、x/y/x/y/x、x/z/y/z/x/z/y/z/x等が挙げられる。複数のx層、y層、z層を設ける場合は、その種類は同じであっても異なっていてもよい。また、成形時に発生するトリム等のスクラップからなる回収樹脂を用いた層を別途設けてもよいし、回収樹脂をいずれかの層にブレンドしてもよい。当該多層成形体の各層の厚さや構成は、特に限定されないが、成形性及びコスト等の観点から、全層厚さに対するy層の厚さ比は通常2~20%が好ましい。
前記x層に使用される樹脂としては、加工性等の観点から熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば各種ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体、ポリオレフィンと無水マレイン酸との共重合体、エチレン-ビニルエステル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、又はこれらを不飽和カルボン酸もしくはその誘導体でグラフト変性した変性ポリオレフィン等)、各種ポリアミド(ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6/66共重合体、ナイロン11、ナイロン12、ポリメタキシリレンアジパミド等)、各種ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアクリレート及び変性ポリビニルアルコール樹脂が挙げられる。かかる熱可塑性樹脂層は無延伸のものであってもよいし、一軸もしくは二軸に延伸又は圧延されたものであってもよい。中でも、耐湿性、機械的特性、経済性、ヒートシール性等に優れる観点から、ポリオレフィンが好ましく、機械的特性、耐熱性等に優れる観点から、ポリアミドやポリエステルが好ましい。
前記z層に使用される接着性樹脂としては、各層を接着できるものであれば特に限定されず、ポリウレタン系又はポリエステル系の一液型又は二液型硬化性接着剤、カルボン酸変性ポリオレフィン等が好適に用いられる。カルボン酸変性ポリオレフィンとしては、例えば不飽和カルボン酸又はその無水物(無水マレイン酸等)を共重合成分として含むポリオレフィン系共重合体;又は不飽和カルボン酸又はその無水物をポリオレフィンにグラフトさせて得られるグラフト共重合体等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物からなる層を含む多層成形体を得る方法としては、例えば共押出成形、共押出中空成形、共射出成形、押出ラミネート、共押出ラミネート、ドライラミネート、溶液コート等が挙げられる。なお、このような方法で得られた多層成形体に対して、さらに真空又は圧空深絞成形、ブロー成形、プレス成形等の方法により、EVOH(A)の融点以下の範囲で再加熱後に二次加工成形を行い、目的とする成形体にしてもよい。また、多層成形体に対して、ロール延伸法、パンタグラフ延伸法、インフレーション延伸法等の方法により、EVOH(A)の融点以下の範囲で再加熱後に一軸又は二軸延伸して、延伸された多層成形体を得ることもできる。
本発明の樹脂組成物は、溶融成形性と外観特性に優れ、かつ成形体の耐水性を向上できるため、EVOH層が長時間にわたり、直接的に水、特に熱水に接触する用途、たとえば、EVOHが最内層として使用される導水パイプや、EVOHが最外層として使用される食品包装などに好ましく使用することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。なお、本実施例における各分析及び評価は以下の方法で行った。
(1)EVOH(A)のエチレン単位含有量及びけん化度
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のペレットを内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)、添加剤としてトリフルオロ酢酸(TFA)を含む重ジメチルスルホキシド(DMSO-d)に溶解し、500MHzのH-NMR(日本電子株式会社 「GX-500」)を用いて80℃で測定し、エチレン単位、ビニルアルコール単位、ビニルエステル単位のピーク強度比よりエチレン単位含有量及びけん化度を求めた。
(2)ホウ素化合物(B)及び金属イオン(C)の含有量
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のペレット0.5gをテフロン(登録商標)製圧力容器に入れ、ここに濃硝酸5mLを加えて室温で30分間分解させた。分解後に、前記容器に蓋をしてから、湿式分解装置により150℃で10分間、次いで180℃で5分間加熱することでさらに分解を行い、その後室温まで冷却した。この処理液を50mLのメスフラスコに移し純水でメスアップした。この溶液をPerkinElmer社製ICP発光分光分析装置「Avio500」により測定することで、乾燥ペレット中のホウ素化合物及び金属イオンの含有量を定量した。なお、リン酸化合物の含有量も同様の方法で定量することができる。
(3)カルボン酸(D)の含有量
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のペレット10gと純水50mLを共栓付き100mL三角フラスコに投入し、冷却コンデンサーを付け、95℃で8時間撹拌した。得られた抽出液を20℃まで冷却した後、フェノールフタレインを指示薬として、0.02モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液で滴定することにより、カルボン酸(D)の含有量を定量した。なお、樹脂組成物がカルボン酸(D)以外の酸化合物を含有する場合は、その量を別途定量し、上記滴定による定量値から差し引くことで、カルボン酸(D)を定量することができる。
(4)色相の評価
HunterLab社製分光測色計「LabScan XE Sensor」を用い、各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のペレットのYI(イエローインデックス)値を測定し、以下の判定基準により評価した。なお、YI値は対象物の黄色度(黄色み)を表す指標であり、YI値が高いほど黄色度が強く、一方、YI値が低いほど黄色度が弱く、着色が少ないことを表す。
判定:基準
A:YIが15未満
B:YIが15以上、25未満
C:YIが25以上
(5)製膜性(ネックイン)の評価
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のペレットを用いて下記に示す押出条件にて単層製膜を行うことにより、厚み20μmの単層フィルムを得た。単層フィルムの厚みは、引取りロール速度を変えることによって調整した。
押出機:株式会社東洋精機製作所 1軸押出機
スクリュー径:20mmφ(L/D=20、圧縮比=3.5、フルフライト型)
ダイス幅:30cm
エアーギャップ:1cm
スクリュー回転数:40rpm
引取りロール速度:約3m/分
押出温度:C1/C2/C3/D=190/220/220/220℃
引取りロール温度:80℃
ダイス幅と得られた単層フィルム幅との差分を製膜性(ネックイン)の指標とし、以下の判定基準により評価した。なお、数値は小さい程、製膜性すなわち溶融成形性が良好であることを示す。
判定:基準
A:ネックインが4cm未満
B:ネックインが4cm以上、6cm未満
C:ネックインが6cm以上
(6)外観特性(フィッシュアイ)の評価
上記(5)で得られた単層フィルムを目視で確認した結果を外観特性(フィッシュアイ)とし、以下の判定基準により評価した。
判定:基準
A:微小なフィッシュアイがわずかに見られる
B:微小なフィッシュアイがフィルム全面にやや多く見られる
C:大小のフィッシュアイがフィルム全面に多く見られる
(7)耐水性の評価
スクリュー回転数と引取りロール速度を変更した以外は上記(5)と同様にして、厚み100μmの単層フィルムを得た。得られた単層フィルムを60℃の純水に6時間浸漬した後、60℃で12時間乾燥させた(熱水処理)。熱水処理したフィルムと熱水処理していないフィルムを、それぞれ23℃50%RHで24時間以上調湿した後、押出方向に沿って長さ150mm、幅15mmの試料を切り出した。株式会社島津製作所製オートグラフDCS-50M型引張試験機を用い、引張速度500mm/分にて前記試料の引張伸度を測定した。熱水処理したフィルムの引張伸度と熱水処理していないフィルムの引張伸度の比率を耐水性の指標とし、以下の判定基準により評価した。
判定:基準
A:(熱水処理したフィルムの引張伸度/熱水処理していないフィルムの引張伸度)が0.85以上
B:(熱水処理したフィルムの引張伸度/熱水処理していないフィルムの引張伸度)が0.65以上、0.85未満
C:(熱水処理したフィルムの引張伸度/熱水処理していないフィルムの引張伸度)が0.65未満
(8)層間接着性
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物のペレット、直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製ノバテックLL-UF943、以下LLDPEと略記する)及び接着性樹脂(デュポン社製バイネルCXA417E10を上記LLDPEで7%に希釈したもの、以下Adと略記する)を用い、下記に示す押出条件にて3種5層の多層フィルム(LLDPE/Ad/EVOH/Ad/LLDPE=50μm/10μm/10μm/10μm/50μm)を製膜した。押出機及び押出条件、使用したダイは下記の通りとした。
押出機:
EVOH:単軸押出機(株式会社東洋精機製作所 ME型CO-EXT)
口径20mmφ、L/D20、フルフライトスクリュー
供給部/圧縮部/計量部/ダイ=175/210/220/220℃
LLDPE:単軸押出機(株式会社プラスチック工学研究所 GT-32-A)
口径32mmφ、L/D28、フルフライトスクリュー
供給部/圧縮部/計量部/ダイ=150/200/210/220℃
Ad:単軸押出機(株式会社テクノベル SZW20GT-20MG-STD)
口径20mmφ、L/D20、フルフライトスクリュー
供給部/圧縮部/計量部/ダイ=150/200/220/220℃
ダイ:300mm幅3種5層用コートハンガーダイ(プラスチック工学研究所社)
上記製膜を開始してから15分を経過したときに得られた多層フィルムを、温度23℃、相対湿度50%RHにて24時間以上調湿した後、押出方向に沿って長さ150mm、幅15mmの試料を切り出した。株式会社島津製作所製オートグラフDCS-50M型引張試験機を用い、引張速度250mm/分、T型剥離モードにて前記試料の剥離強度を測定し、以下の判定基準により評価した。
判定:基準
A:500g/15mm以上
B:300g/15mm以上、500g/15mm未満
C:300g/15mm未満
[実施例1]
エチレン含有量32モル%、けん化度99.95モル%、融点182℃、揮発分110質量%の含水EVOHペレットを1,4-ブタンジボロン酸(B1)、酢酸ナトリウム、及び酢酸を含有する水溶液に25℃で6時間浸漬し攪拌した。なお、浸漬処理における水溶液の1,4-ブタンジボロン酸、酢酸ナトリウム、及び酢酸の濃度は、得られるペレット中の含有量がそれぞれ表1の通りとなるように調整した。1,4-ブタンジボロン酸は水溶液からペレットへの吸着比率が大きく、水溶液濃度を通常の1/10程度に低減することができた。浸漬処理後、水溶液と含水ペレットを遠心脱水することで分離して脱液した後、熱風乾燥機に入れて80℃で3時間、次いで110℃で35時間乾燥を行うことで揮発分0.3質量%以下とし、本発明の乾燥ペレットを得た。なお、含水EVOHペレット及び乾燥ペレットの揮発分は、ハロゲン水分率分析装置(メトラー・トレド社製「HX204」)を用い、乾燥温度180℃、乾燥時間20分、サンプル量10gの条件で重量測定法により測定した。得られたペレットについて上記の各種分析及び評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例2~4、比較例2、3]
1,4-ブタンジボロン酸(B1)の添加量を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様にペレットを得て、各種分析及び評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例5、6]
酢酸ナトリウムの添加量を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様にペレットを得て、各種分析及び評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例7、8]
酢酸の添加量を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様にペレットを得て、各種分析及び評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例9]
酢酸ナトリウムの代わりに酢酸カリウムを用い、添加量を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様にペレットを得て、各種分析及び評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例10]
1,4-ブタンジボロン酸(B1)の代わりにエタンジボロン酸(B2)を用い、添加量を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様にペレットを得て、各種分析及び評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例11]
1,4-ブタンジボロン酸(B1)の代わりに下記式(II)で表されるホウ素化合物(B3)を用い、添加量を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様にペレットを得て、各種分析及び評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例12]
1,4-ブタンジボロン酸(B1)の代わりに1,4-ベンゼンジボロン酸(B4)を用い、添加量を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様にペレットを得て、各種分析及び評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例13]
エチレン含有量44モル%、けん化度99.95モル%、融点165℃の含水EVOHペレットを用いた以外は、実施例1と同様にペレットを得て、各種分析及び評価を行った。結果を表1に示す。実施例1と比べると、得られた単層膜の酸素透過度はやや高いものの、着色やフィッシュアイが特に改善され、外観特性が良好であった。
[比較例1]
1,4-ブタンジボロン酸(B1)を使用しなかった以外は、実施例1と同様にペレットを得て、各種分析及び評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例4]
1,4-ブタンジボロン酸(B1)の代わりにホウ酸を用い、添加量を表1の通りに変更した以外は、実施例1と同様にペレットを得て、各種分析及び評価を行った。結果を表1に示す。
実施例及び比較例の各樹脂組成物の組成及び評価結果を表1に示す。

Claims (6)

  1. エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)並びにジボロン酸または水の存在下で該ジボロン酸に転化し得る化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のホウ素化合物(B)を含む樹脂組成物であって、
    エチレン-ビニルアルコール共重合体(A)のエチレン単位含有量が15~60モル%、けん化度が85モル%以上であり、
    ホウ素化合物(B)の含有量が、ホウ素元素換算で30~300ppmであり、
    さらにアルカリ金属イオン(C)を100~400ppm、及びカルボン酸(D)を50~400ppm含有する樹脂組成物。
  2. ホウ素化合物(B)が下記式(I)で示される、請求項1に記載の樹脂組成物。
    [式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、Xは単結合、又は1つ以上の原子からなる結合鎖を表す。]
  3. Xが1つ以上の原子からなる結合鎖であり、ホウ素原子間の最短鎖の原子数が3~6である、請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. Xが1つ以上の原子からなる結合鎖であり、ホウ素原子間の最短鎖が炭素原子のみからなる、請求項2又は3に記載の樹脂組成物。
  5. 請求項1~のいずれかに記載の樹脂組成物を含む成形体。
  6. 請求項1~のいずれかに記載の樹脂組成物からなる層を少なくとも1層有する多層成形体。
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