JP7498420B1 - 二相ステンレス鋼材 - Google Patents

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Abstract

高強度と、優れた耐食性とを両立する二相ステンレス鋼材を提供する。本開示による二相ステンレス鋼材は、質量%で、C:0.030%以下、Si:0.20~1.00%、Mn:0.5~7.0%、P:0.040%以下、S:0.0200%以下、Al:0.100%以下、Ni:4.0~9.0%、Cr:20.0~30.0%、Mo:0.5~2.0%、Cu:1.5~3.0%、N:0.15~0.30%、V:0.01~0.50%、Co:0.05~1.00%、Sn:0.001~0.050%、及び、残部がFe及び不純物からなり、降伏強度が758MPa以上であり、ミクロ組織が、体積率で35~65%のフェライト、及び、残部がオーステナイトからなり、フェライト中の転位密度ρ(α)と、オーステナイト中の転位密度ρ(γ)とが、次の式(1)を満たす。0.3<ρ(γ)/ρ(α)<4.0 (1)

Description

本開示は鋼材に関し、さらに詳しくは、二相ステンレス鋼材に関する。
油井やガス井(以下、油井及びガス井を総称して、単に「油井」という)は、腐食性ガスを含有した腐食環境となっている場合がある。ここで、腐食性ガスとは、炭酸ガス、及び/又は、硫化水素ガスを意味する。すなわち、油井で用いられる鋼材には、腐食環境における優れた耐食性が求められる。
これまでに、鋼材の耐食性を高める手法として、クロム(Cr)含有量を高め、Cr酸化物を主体とする不働態被膜を、鋼材の表面に形成する手法が知られている。そのため、優れた耐食性が求められる環境下では、Cr含有量を高めた二相ステンレス鋼材が用いられる場合がある。
近年さらに、海面下の深井戸についても、開発が活発になってきている。そのため、二相ステンレス鋼材の高強度化が求められてきている。すなわち、高強度と優れた耐食性とを両立する二相ステンレス鋼材が、求められてきている。
特開2014-043616号公報(特許文献1)、及び、国際公開第2021/246118号(特許文献2)は、高強度と優れた耐食性とを有する二相ステンレス鋼材を提案する。
特許文献1に開示されている二相ステンレス鋼材は、質量%で、C:0.03%以下、Si:0.3%以下、Mn:3.0%以下、P:0.040%以下、S:0.008%以下、Cu:0.2~2.0%、Ni:5.0~6.5%、Cr:23.0~27.0%、Mo:2.5~3.5%、W:1.5~4.0%、N:0.24~0.40%、及び、Al:0.03%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなり、σ相感受性指数X(=2.2Si+0.5Cu+2.0Ni+Cr+4.2Mo+0.2W)が52.0以下であり、強度指数Y(=Cr+1.5Mo+10N+3.5W)が40.5以上であり、耐孔食性指数PREW(=Cr+3.3(Mo+0.5W)+16N)が40以上である化学組成を有する。鋼の組織は、圧延方向に平行な厚さ方向断面において、表層から1mm深さまでの厚さ方向に平行な直線を引いた時、該直線に交わるフェライト相とオーステナイト相との境界の数が160以上である。この二相ステンレス鋼は、耐食性を損なうことなく高強度化でき、高加工度の冷間加工を組み合わせることで優れた耐水素脆化特性を発揮する、と特許文献1には記載されている。
特許文献2に開示されている二相ステンレス鋼材は、質量%で、C:0.002~0.03%、Si:0.05~1.0%、Mn:0.10~1.5%、P:0.040%以下、S:0.0005~0.02%、Cr:20.0~28.0%、Ni:4.0~10.0%、Mo:2.0~5.0%、Al:0.001~0.05%、及び、N:0.06~0.35%を含有し、残部がFe及び不純物からなる。この二相ステンレス鋼はさらに、体積率で、オーステナイト相:20~70%及びフェライト相:30~80%を含む組織を有し、降伏強度が448MPa以上であり、平均粒径が1μm以上である酸化物系介在物の個数密度が15個/mm2以下であり、酸化物系介在物中、Alを含む酸化物系介在物の割合が50質量%以下である。この二相ステンレス鋼は、高強度、高靭性、及び、優れた耐食性を有する、と特許文献2には記載されている。
特開2014-043616号公報 国際公開第2021/246118号
上記特許文献1及び2によれば、高強度と優れた耐食性とを有する二相ステンレス鋼材を得ることができる。しかしながら、上記特許文献1及び2に開示された技術以外の技術によって、高強度と優れた耐食性とを両立する二相ステンレス鋼材が得られてもよい。
本開示の目的は、高強度と、優れた耐食性とを両立する二相ステンレス鋼材を提供することである。
本開示による二相ステンレス鋼材は、
質量%で、
C:0.030%以下、
Si:0.20~1.00%、
Mn:0.5~7.0%、
P:0.040%以下、
S:0.0200%以下、
Al:0.100%以下、
Ni:4.0~9.0%、
Cr:20.0~30.0%、
Mo:0.5~2.0%、
Cu:1.5~3.0%、
N:0.15~0.30%、
V:0.01~0.50%、
Co:0.05~1.00%、
Sn:0.001~0.050%、
Nb:0~0.300%、
Ta:0~0.100%、
Ti:0~0.100%、
Zr:0~0.100%、
Hf:0~0.100%、
W:0~0.200%、
Sb:0~0.100%、
Ca:0~0.020%、
Mg:0~0.020%、
B:0~0.020%、
希土類元素:0~0.200%、及び、
残部がFe及び不純物からなり、
降伏強度が758MPa以上であり、
ミクロ組織が、体積率で35~65%のフェライト、及び、残部がオーステナイトからなり、
前記フェライト中の転位密度ρ(α)と、前記オーステナイト中の転位密度ρ(γ)とが、次の式(1)を満たす。
0.3<ρ(γ)/ρ(α)<4.0 (1)
ここで、式(1)中のρ(γ)には前記オーステナイト中の転位密度がm-2で、ρ(α)には前記フェライト中の転位密度がm-2で代入される。
本開示による二相ステンレス鋼材は、高強度と、優れた耐食性とを両立する。
本発明者らは具体的に、高強度として758MPa以上の降伏強度を有する二相ステンレス鋼材を得ようとした。そこで本発明者らは、まず、758MPa以上の高い降伏強度と、優れた耐食性とを両立する二相ステンレス鋼材を、化学組成の観点から検討した。その結果、本発明者らは、質量%で、C:0.030%以下、Si:0.20~1.00%、Mn:0.5~7.0%、P:0.040%以下、S:0.0200%以下、Al:0.100%以下、Ni:4.0~9.0%、Cr:20.0~30.0%、Mo:0.5~2.0%、Cu:1.5~3.0%、N:0.15~0.30%、V:0.01~0.50%、Co:0.05~1.00%、Sn:0.001~0.050%、Nb:0~0.300%、Ta:0~0.100%、Ti:0~0.100%、Zr:0~0.100%、Hf:0~0.100%、W:0~0.200%、Sb:0~0.100%、Ca:0~0.020%、Mg:0~0.020%、B:0~0.020%、希土類元素:0~0.200%、及び、残部がFe及び不純物からなる二相ステンレス鋼材であれば、758MPa以上の高い降伏強度と、優れた耐食性とを両立できる可能性があると考えた。
ここで、上述の化学組成を有する二相ステンレス鋼材のミクロ組織は、フェライト及びオーステナイトからなる。本発明者らは、上述の化学組成を有する二相ステンレス鋼材では、体積率が35~65%のフェライト、及び、残部がオーステナイトからなるミクロ組織であれば、強度と耐食性とを安定して高められることを知見した。すなわち、本実施形態による二相ステンレス鋼材では、ミクロ組織が、体積率が35~65%のフェライト、及び、残部がオーステナイトからなる。なお、本明細書において「フェライト及びオーステナイトからなる」とは、フェライト及びオーステナイト以外の相が、無視できるほど少ないことを意味する。
本発明者らはさらに、上述の化学組成及びミクロ組織を有し、758MPa以上の降伏強度を有する二相ステンレス鋼材について、降伏強度を維持しつつ耐食性を高める手法を詳細に検討した。具体的に本発明者らは、二相ステンレス鋼材中の転位に着目した。二相ステンレス鋼材中の転位密度を高めれば、鋼材の降伏強度が高まる。すなわち、降伏強度を758MPa以上にまで高めた本実施形態による二相ステンレス鋼材では、転位密度がある程度以上に高められている可能性がある。
一方、鋼材中で転位密度が高い領域は、腐食の起点になりやすいと考えられている。すなわち、二相ステンレス鋼材中に転位密度が局所的に高まっている領域が存在すると、二相ステンレス鋼材の耐食性が低下する懸念がある。つまり、ミクロ組織における転位密度の分布が、鋼材の耐食性に影響を与えている可能性がある、と本発明者らは考えた。
以上の知見を考慮した本発明者らのさらなる詳細な検討の結果、上述の化学組成と、体積率が35~65%のフェライト及び残部がオーステナイトからなるミクロ組織と、758MPa以上の降伏強度とを有する二相ステンレス鋼材では、フェライト中の転位密度ρ(α)と、オーステナイト中の転位密度ρ(γ)とが、次の式(1)を満たせば、758MPa以上の降伏強度と、優れた耐食性とを両立できることが明らかになった。
0.3<ρ(γ)/ρ(α)<4.0 (1)
ここで、式(1)中のρ(γ)にはオーステナイト中の転位密度がm-2で、ρ(α)にはフェライト中の転位密度がm-2で代入される。
上述の化学組成と、体積率が35~65%のフェライト及び残部がオーステナイトからなるミクロ組織と、758MPa以上の降伏強度とを有する二相ステンレス鋼材において、フェライト中の転位密度ρ(α)と、オーステナイト中の転位密度ρ(γ)とが、上述の式(1)を満たせば、758MPa以上の降伏強度と、優れた耐食性とを両立できる理由について、詳細は明らかになっていない。しかしながら、本発明者らは次のように推察している。
上述のとおり、上述の化学組成及びミクロ組織を有する二相ステンレス鋼材では、降伏強度を758MPa以上にまで高めることにより、転位密度が一定以上にまで高まっていると考えられる。また、加工硬化等によって二相ステンレス鋼材の転位密度を高めると、局所的に転位が入る場合があり、転位密度が局所的に高まりやすい。一方、フェライト中の転位密度ρ(α)と、オーステナイト中の転位密度ρ(γ)との比が一定の範囲に制御されていれば、二相ステンレス鋼材中の転位密度の局在化が緩和されている可能性がある。その結果、降伏強度が維持されつつ、局所的な転位密度の高まりが緩和され、二相ステンレス鋼材の耐食性が高まるのではないか、と本発明者らは推察している。
なお、上記のメカニズム以外のメカニズムによって、上述の化学組成及びミクロ組織を有する二相ステンレス鋼材において、フェライト中の転位密度ρ(α)と、オーステナイト中の転位密度ρ(γ)とが、上述の式(1)を満たすことにより、758MPa以上の降伏強度と、優れた耐食性とを両立できている可能性もあり得る。しかしながら、上述の化学組成及びミクロ組織を有する二相ステンレス鋼材において、フェライト中の転位密度ρ(α)と、オーステナイト中の転位密度ρ(γ)とが、上述の式(1)を満たすことにより、758MPa以上の降伏強度と、優れた耐食性とを両立できることは、後述の実施例によって証明されている。
以上の知見に基づいて完成した本実施形態による二相ステンレス鋼材の要旨は、次のとおりである。
[1]
質量%で、
C:0.030%以下、
Si:0.20~1.00%、
Mn:0.5~7.0%、
P:0.040%以下、
S:0.0200%以下、
Al:0.100%以下、
Ni:4.0~9.0%、
Cr:20.0~30.0%、
Mo:0.5~2.0%、
Cu:1.5~3.0%、
N:0.15~0.30%、
V:0.01~0.50%、
Co:0.05~1.00%、
Sn:0.001~0.050%、
Nb:0~0.300%、
Ta:0~0.100%、
Ti:0~0.100%、
Zr:0~0.100%、
Hf:0~0.100%、
W:0~0.200%、
Sb:0~0.100%、
Ca:0~0.020%、
Mg:0~0.020%、
B:0~0.020%、
希土類元素:0~0.200%、及び、
残部がFe及び不純物からなり、
降伏強度が758MPa以上であり、
ミクロ組織が、体積率で35~65%のフェライト、及び、残部がオーステナイトからなり、
前記フェライト中の転位密度ρ(α)と、前記オーステナイト中の転位密度ρ(γ)とが、次の式(1)を満たす、
二相ステンレス鋼材。
0.3<ρ(γ)/ρ(α)<4.0 (1)
ここで、式(1)中のρ(γ)には前記オーステナイト中の転位密度がm-2で、ρ(α)には前記フェライト中の転位密度がm-2で代入される。
[2]
[1]に記載の二相ステンレス鋼材であって、
Nb:0.001~0.300%、
Ta:0.001~0.100%、
Ti:0.001~0.100%、
Zr:0.001~0.100%、
Hf:0.001~0.100%、
W:0.001~0.200%、
Sb:0.001~0.100%、
Ca:0.001~0.020%、
Mg:0.001~0.020%、
B:0.001~0.020%、及び、
希土類元素:0.001~0.200%、からなる群から選択される1元素以上を含有する、
二相ステンレス鋼材。
なお、本実施形態による二相ステンレス鋼材の形状は特に限定されない。本実施形態による二相ステンレス鋼材は、鋼管であってもよく、丸鋼(中実材)であってもよく、鋼板であってもよい。なお、丸鋼とは、軸方向に垂直な断面が円形状の棒鋼を意味する。また、鋼管は継目無鋼管であってもよく、溶接鋼管であってもよい。
以下、本実施形態による二相ステンレス鋼材について詳述する。なお、以下の説明では、二相ステンレス鋼材を、単に「鋼材」ともいう。
[化学組成]
本実施形態による二相ステンレス鋼材の化学組成は、次の元素を含有する。元素に関する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
C:0.030%以下
炭素(C)は不可避に含有される。すなわち、C含有量の下限は0%超である。Cは結晶粒界にCr炭化物を形成し、粒界での腐食感受性を高める。そのため、C含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の耐食性が低下する。したがって、C含有量は0.030%以下である。C含有量の好ましい上限は0.028%であり、さらに好ましくは0.025%である。C含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、C含有量の極端な低減は、製造コストを大幅に高める。したがって、工業生産を考慮した場合、C含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.005%である。
Si:0.20~1.00%
ケイ素(Si)は鋼を脱酸する。Si含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Si含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の靭性及び熱間加工性が低下する。したがって、Si含有量は0.20~1.00%である。Si含有量の好ましい下限は0.25%であり、さらに好ましくは0.30%である。Si含有量の好ましい上限は0.95%であり、さらに好ましくは0.90%である。
Mn:0.5~7.0%
マンガン(Mn)は鋼を脱酸し、鋼を脱硫する。Mnはさらに、鋼材の熱間加工性を高める。Mn含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、MnはP及びS等の不純物とともに、粒界に偏析する。そのため、Mn含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、高温環境における鋼材の耐食性が低下する。したがって、Mn含有量は0.5~7.0%である。Mn含有量の好ましい下限は0.6%であり、さらに好ましくは0.8%であり、さらに好ましくは1.0%である。Mn含有量の好ましい上限は6.5%であり、さらに好ましくは6.2%である。
P:0.040%以下
燐(P)は不可避に含有される。すなわち、P含有量の下限は0%超である。Pは粒界に偏析する。そのため、P含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の耐食性が低下する。したがって、P含有量は0.040%以下である。P含有量の好ましい上限は0.035%であり、さらに好ましくは0.030%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、P含有量の極端な低減は、製造コストを大幅に高める。したがって、工業生産を考慮した場合、P含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.003%である。
S:0.0200%以下
硫黄(S)は不可避に含有される。すなわち、S含有量の下限は0%超である。Sは粒界に偏析する。そのため、S含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の靭性及び熱間加工性が低下する。したがって、S含有量は0.0200%以下である。S含有量の好ましい上限は0.0180%であり、さらに好ましくは0.0160%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。ただし、S含有量の極端な低減は、製造コストを大幅に高める。したがって、工業生産を考慮した場合、S含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%であり、さらに好ましくは0.0015%である。
Al:0.100%以下
アルミニウム(Al)は不可避に含有される。すなわち、Al含有量の下限は0%超である。Alは鋼を脱酸する。一方、Al含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粗大な酸化物系介在物が生成して、鋼材の靭性が低下する。したがって、Al含有量は0.100%以下である。Al含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%である。Al含有量の好ましい上限は0.090%であり、さらに好ましくは0.085%である。なお、本明細書にいうAl含有量は、「酸可溶Al」、つまり、sol.Alの含有量を意味する。
Ni:4.0~9.0%
ニッケル(Ni)は鋼材のオーステナイト組織を安定化する。すなわち、Niは安定したフェライト・オーステナイトの二相組織を得るために必要な元素である。Niはさらに、鋼材の耐食性を高める。Ni含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Ni含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、オーステナイトの体積率が高くなりすぎ、鋼材の降伏強度が低下する。したがって、Ni含有量は4.0~9.0%である。Ni含有量の好ましい下限は4.1%であり、さらに好ましくは4.3%であり、さらに好ましくは4.5%である。Ni含有量の好ましい上限は8.8%であり、さらに好ましくは8.5%であり、さらに好ましくは8.0%である。
Cr:20.0~30.0%
クロム(Cr)は酸化物として鋼材の表面に不働態被膜を形成して、鋼材の耐食性を高める。Crはさらに、鋼材のフェライト組織の体積率を高める。十分なフェライト組織を得ることで、鋼材の耐食性が安定化する。Cr含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性が低下する。したがって、Cr含有量は20.0~30.0%である。Cr含有量の好ましい下限は20.5%であり、さらに好ましくは21.0%であり、さらに好ましくは21.5%である。Cr含有量の好ましい上限は29.5%であり、さらに好ましくは29.0%であり、さらに好ましくは28.5%である。
Mo:0.5~2.0%
モリブデン(Mo)は鋼材の耐食性を高める。Moはさらに、鋼に固溶して、鋼材の降伏強度を高める。Moはさらに、鋼中で微細な炭化物を形成して、鋼材の降伏強度を高める。Mo含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Mo含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性が低下する。したがって、Mo含有量は0.5~2.0%である。Mo含有量の好ましい下限は0.6%であり、さらに好ましくは0.7%であり、さらに好ましくは0.8%である。Mo含有量の好ましい上限は1.9%であり、さらに好ましくは1.7%であり、さらに好ましくは1.5%である。
Cu:1.5~3.0%
銅(Cu)は鋼材中に析出して、鋼材の降伏強度を高める。Cu含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Cu含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の熱間加工性が低下する。したがって、Cu含有量は1.5~3.0%である。Cu含有量の好ましい下限は1.6%であり、さらに好ましくは1.8%であり、さらに好ましくは2.0%である。Cu含有量の好ましい上限は2.9%であり、さらに好ましくは2.8%であり、さらに好ましくは2.7%である。
N:0.15~0.30%
窒素(N)は鋼材のオーステナイト組織を安定化させる。すなわち、Nは安定したフェライト・オーステナイトの二相組織を得るために必要な元素である。Nはさらに、鋼材の耐食性を高める。N含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、N含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の靭性及び熱間加工性が低下する。したがって、N含有量は0.15~0.30%である。N含有量の好ましい下限は0.16%であり、さらに好ましくは0.18%であり、さらに好ましくは0.20%である。N含有量の好ましい上限は、0.29%であり、さらに好ましくは0.27%である。
V:0.01~0.50%
バナジウム(V)は鋼材の降伏強度を高める。V含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、V含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の強度が高くなりすぎ、鋼材の靭性及び熱間加工性が低下する。したがって、V含有量は0.01~0.50%である。V含有量の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましくは0.03%であり、さらに好ましくは0.05%である。V含有量の好ましい上限は0.45%であり、さらに好ましくは0.40%である。
Co:0.05~1.00%
コバルト(Co)は鋼材の表面に被膜を形成して、鋼材の耐食性を高める。Coはさらに、鋼材の焼入性を高め、鋼材の強度を安定化する。Co含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Co含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、製造コストが極端に高まる。したがって、Co含有量は0.05~1.00%である。Co含有量の好ましい下限は0.06%であり、さらに好ましくは0.08%であり、さらに好ましくは0.10%である。Co含有量の好ましい上限は0.95%であり、さらに好ましくは0.90%であり、さらに好ましくは0.85%である。
Sn:0.001~0.050%
スズ(Sn)は鋼材の耐食性を高める。Sn含有量が低すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、上記効果が十分に得られない。一方、Sn含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、粒界に液化脆化割れが生じて、鋼材の熱間加工性が低下する。したがって、Sn含有量は0.001~0.050%である。Sn含有量の好ましい下限は0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。Sn含有量の好ましい上限は0.045%であり、さらに好ましくは0.040%である。
本実施形態による二相ステンレス鋼材の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、化学組成における不純物とは、二相ステンレス鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は製造環境などから混入されるものであって、本実施形態による二相ステンレス鋼材に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
[任意元素]
上述の二相ステンレス鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Nb、Ta、Ti、Zr、Hf、及び、Wからなる群から選択される1元素以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも任意元素であり、鋼材の強度を高める。
Nb:0~0.300%
ニオブ(Nb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Nb含有量は0%であってもよい。含有される場合、Nbは炭窒化物を形成し、鋼材の強度を高める。Nbが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Nb含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の強度が高くなりすぎ、鋼材の靭性が低下する。したがって、Nb含有量は0~0.300%である。Nb含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。Nb含有量の好ましい上限は0.280%であり、さらに好ましくは0.250%である。
Ta:0~0.100%
タンタル(Ta)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Ta含有量は0%であってもよい。含有される場合、Taは炭窒化物を形成し、鋼材の強度を高める。Taが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ta含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の強度が高くなりすぎ、鋼材の靭性が低下する。したがって、Ta含有量は0~0.100%である。Ta含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。Ta含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.070%である。
Ti:0~0.100%
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Ti含有量は0%であってもよい。含有される場合、Tiは炭窒化物を形成し、鋼材の強度を高める。Tiが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ti含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の強度が高くなりすぎ、鋼材の靭性が低下する。したがって、Ti含有量は0~0.100%である。Ti含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。Ti含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.070%である。
Zr:0~0.100%
ジルコニウム(Zr)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Zr含有量は0%であってもよい。含有される場合、Zrは炭窒化物を形成し、鋼材の強度を高める。Zrが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Zr含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の強度が高くなりすぎ、鋼材の靭性が低下する。したがって、Zr含有量は0~0.100%である。Zr含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。Zr含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.070%であり、さらに好ましくは0.060%であり、さらに好ましくは0.050%であり、さらに好ましくは0.045%である。
Hf:0~0.100%
ハフニウム(Hf)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Hf含有量は0%であってもよい。含有される場合、Hfは炭窒化物を形成し、鋼材の強度を高める。Hfが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Hf含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の強度が高くなりすぎ、鋼材の靭性が低下する。したがって、Hf含有量は0~0.100%である。Hf含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。Hf含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.070%である。
W:0~0.200%
タングステン(W)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、W含有量は0%であってもよい。含有される場合、Wは炭窒化物を形成し、鋼材の強度を高める。Wが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、W含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の強度が高くなりすぎ、鋼材の靭性が低下する。したがって、W含有量は0~0.200%である。W含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。W含有量の好ましい上限は0.180%であり、さらに好ましくは0.150%である。
上述の二相ステンレス鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Sbを含有してもよい。
Sb:0~0.100%
アンチモン(Sb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Sb含有量は0%であってもよい。含有される場合、Sbは鋼材の耐食性を高める。Sbが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Sb含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材の高温での延性が低下して、鋼材の熱間加工性が低下する。したがって、Sb含有量は0~0.100%である。Sb含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%である。Sb含有量の好ましい上限は0.080%であり、さらに好ましくは0.070%である。
上述の二相ステンレス鋼材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Ca、Mg、B、及び、希土類元素からなる群から選択される1元素以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも任意元素であり、鋼材の熱間加工性を高める。
Ca:0~0.020%
カルシウム(Ca)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Ca含有量は0%であってもよい。含有される場合、Caは鋼材中のSを硫化物として固定することで無害化し、鋼材の熱間加工性を高める。Caが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Ca含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材中の酸化物が粗大化して、鋼材の靭性が低下する。したがって、Ca含有量は0~0.020%である。Ca含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。Ca含有量の好ましい上限は0.018%であり、さらに好ましくは0.015%である。
Mg:0~0.020%
マグネシウム(Mg)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、Mg含有量は0%であってもよい。含有される場合、Mgは鋼材中のSを硫化物として固定することで無害化し、鋼材の熱間加工性を高める。Mgが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、Mg含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材中の酸化物が粗大化して、鋼材の靭性が低下する。したがって、Mg含有量は0~0.020%である。Mg含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。Mg含有量の好ましい上限は0.018%であり、さらに好ましくは0.015%である。
B:0~0.020%
ホウ素(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、B含有量は0%であってもよい。含有される場合、Bは鋼材中のSの粒界への偏析を抑制し、鋼材の熱間加工性を高める。Bが少しでも含有されれば、上記効果がある程度得られる。しかしながら、B含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、ボロン窒化物(BN)が生成し、鋼材の靭性を低下させる。したがって、B含有量は0~0.020%である。B含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%であり、さらに好ましくは0.003%であり、さらに好ましくは0.005%である。B含有量の好ましい上限は0.018%であり、さらに好ましくは0.015%である。
希土類元素:0~0.200%
希土類元素(REM)は任意元素であり、含有されなくてもよい。すなわち、REM含有量は0%であってもよい。含有される場合、REMは鋼材中のSを硫化物として固定することで無害化し、鋼材の熱間加工性を高める。REMが少しでも含有されれば上記効果がある程度得られる。しかしながら、REM含有量が高すぎれば、他の元素含有量が本実施形態の範囲内であっても、鋼材中の酸化物が粗大化して、鋼材の靭性が低下する。したがって、REM含有量は0~0.200%である。REM含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.010%であり、さらに好ましくは0.020%である。REM含有量の好ましい上限は0.180%であり、さらに好ましくは0.160%である。
なお、本明細書におけるREMとは、原子番号21番のスカンジウム(Sc)、原子番号39番のイットリウム(Y)、及び、ランタノイドである原子番号57番のランタン(La)~原子番号71番のルテチウム(Lu)からなる群から選択される1元素以上を意味する。また、本明細書におけるREM含有量とは、これらの元素の合計含有量を意味する。
[降伏強度]
本実施形態による二相ステンレス鋼材の降伏強度は、758MPa以上である。本実施形態による二相ステンレス鋼材は、上述の化学組成を有し、体積率で35~65%のフェライト及び残部がオーステナイトからなるミクロ組織を有し、かつ、後述する転位密度比ρ(γ)/ρ(α)が0.3超~4.0未満である。その結果、本実施形態による二相ステンレス鋼材は、降伏強度が758MPa以上であっても、優れた耐食性を有する。
本実施形態による二相ステンレス鋼材の降伏強度の好ましい下限は760MPaであり、さらに好ましくは765MPaである。本実施形態による二相ステンレス鋼材の降伏強度の上限は特に限定されないが、たとえば、1000MPaである。
本実施形態による二相ステンレス鋼材の降伏強度は、次の方法で求めることができる。具体的に、ASTM E8/E8M(2022)に準拠した方法で引張試験を行う。本実施形態による鋼材から、試験片を作製する。鋼材が鋼板の場合、板厚中央部から引張試験片を作製する。この場合、引張試験片の長手方向は、鋼板の圧延方向と平行とする。鋼材が鋼管の場合、厚さが鋼管の肉厚と同じであって、幅25.4mm、標点距離50.8mmの円弧状試験片を作製する。この場合、円弧状試験片の長手方向は、鋼管の管軸方向と平行とする。鋼材が丸鋼の場合、R/2位置から引張試験片を作製する。この場合、引張試験片の長手方向は、丸鋼の軸方向と平行とする。本明細書において、丸鋼のR/2位置とは、丸鋼の軸方向に垂直な断面において、半径Rの中央位置を意味する。引張試験片を作製する場合、引張試験片の大きさは、たとえば平行部直径6mm、標点距離24mmである。試験片を用いて、常温(25℃)、大気中で引張試験を実施する。本実施形態では、引張試験より得られた0.2%オフセット耐力を、降伏強度(MPa)と定義する。本実施形態において、降伏強度(MPa)は、得られた数値の小数第一位を四捨五入して求める。
[ミクロ組織]
本実施形態による二相ステンレス鋼材は、上述の化学組成を有し、体積率で35~65%のフェライト及び残部がオーステナイトからなるミクロ組織を有し、かつ、後述する転位密度比ρ(γ)/ρ(α)が0.3超~4.0未満である。その結果、本実施形態による二相ステンレス鋼材は、降伏強度が758MPa以上であっても、優れた耐食性を有する。本明細書において、ミクロ組織が「フェライト及びオーステナイトからなる」とは、ミクロ組織中のフェライト及びオーステナイト以外の相が無視できるほど少ないことを意味する。たとえば、本実施形態による二相ステンレス鋼材の化学組成においては、析出物や介在物の体積率は、フェライト及びオーステナイトの体積率と比較して、無視できるほど小さい。すなわち、本実施形態による二相ステンレス鋼材のミクロ組織には、フェライト及びオーステナイト以外に、析出物や介在物等を微小量含んでもよい。
本実施形態による二相ステンレス鋼材のミクロ組織は、フェライトの体積率が35~65%である。フェライトの体積率が低すぎれば、鋼材の降伏強度、及び/又は、耐食性が低下する場合がある。一方、フェライトの体積率が高すぎれば、鋼材の靭性や熱間加工性が低下する場合がある。したがって、本実施形態による二相ステンレス鋼材のミクロ組織において、フェライトの体積率は35~65%である。フェライトの体積率の好ましい下限は36%であり、さらに好ましくは37%である。フェライトの体積率の好ましい上限は64%であり、さらに好ましくは63%である。
本実施形態において、二相ステンレス鋼材のフェライトの体積率は、ASTM E562(2019)に準拠した方法で求めることができる。本実施形態による二相ステンレス鋼材から、ミクロ組織観察用の試験片を作製する。鋼材が鋼板の場合、圧延方向5mm、板幅方向5mmの観察面を有する試験片を、板厚中央部から作製する。鋼材が鋼管の場合、管軸方向5mm、管周方向5mmの観察面を有する試験片を、肉厚中央部から作製する。本明細書において、鋼管の管周方向とは、管軸方向と管径方向とに垂直な方向を意味する。鋼材が丸鋼の場合、軸方向5mm、周方向5mmの観察面を有する試験片を、R/2位置から作製する。本明細書において、丸鋼の周方向とは、軸方向と径方向とに垂直な方向を意味する。なお、上記観察面が得られれば、試験片の大きさは特に限定されない。
作製した試験片の観察面を鏡面研磨する。鏡面研磨された観察面を7%水酸化カリウム腐食液中で電解腐食して、組織現出を行う。組織が現出された観察面を、光学顕微鏡を用いて10視野観察する。各視野の面積は、たとえば、1.00mm2(倍率100倍)である。各視野において、コントラストからフェライトを特定する。特定したフェライトの面積率をASTM E562(2019)に準拠した点算法で測定する。本実施形態では、得られたフェライトの面積率の10視野における算術平均値を、フェライトの体積率(%)と定義する。本実施形態において、フェライトの体積率(%)は、得られた数値の小数第一位を四捨五入して求める。
[転位密度比]
本実施形態による二相ステンレス鋼材は、上述の化学組成及びミクロ組織を有し、758MPa以上の降伏強度を有し、フェライト中の転位密度ρ(α)と、オーステナイト中の転位密度ρ(γ)とが、次の式(1)を満たす。
0.3<ρ(γ)/ρ(α)<4.0 (1)
ここで、式(1)中のρ(γ)にはオーステナイト中の転位密度がm-2で、ρ(α)にはフェライト中の転位密度がm-2で代入される。
Fn1=ρ(γ)/ρ(α)と定義する。Fn1は、上述の化学組成及びミクロ組織を有する二相ステンレス鋼材における、フェライト中の転位密度に対するオーステナイト中の転位密度の分配比を意味する。Fn1が大きいほど、転位がオーステナイト中に局在している。Fn1が小さいほど、転位がフェライト中に局在している。つまり、Fn1が高すぎれば、オーステナイト中の転位密度が局所的に高まり、鋼材の耐食性が顕著に低下する。一方、Fn1が低すぎれば、フェライト中の転位密度が局所的に高まり、鋼材の耐食性が低下する。したがって、本実施形態による二相ステンレス鋼材では、Fn1は0.3超~4.0未満である。Fn1の好ましい下限は0.4であり、さらに好ましくは0.5である。Fn1の好ましい上限は3.9であり、さらに好ましくは3.8である。
本実施形態において転位密度比Fn1は、次の方法で求めることができる。本実施形態による二相ステンレス鋼材から、転位密度測定用の薄膜試料を作製する。具体的に、二相ステンレス鋼材から、試験片を切り出す。さらに、切り出した試験片から、Twin jet法を用いた電解研磨によって、薄膜試料を作製する。なお、鋼材が鋼板の場合、板厚中央部から切り出した試験片から、圧延方向に垂直な観察面を有する薄膜試料を作製する。鋼材が鋼管の場合、肉厚中央部から切り出した試験片から、管軸方向に垂直な観察面を有する薄膜試料を作製する。鋼材が丸鋼の場合、R/2位置から切り出した試験片から、軸方向に垂直な観察面を有する薄膜試料を、作製する。また、試験片及び薄膜試料の大きさは、後述する観察視野が得られれば、特に限定されない。
得られた薄膜試料の観察面において、フェライトと、オーステナイトとを特定する。観察面中のフェライトとオーステナイトとは、電子線回折による結晶構造の同定により特定することができる。特定した視野に対して、透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:以下、「TEM」ともいう)による組織観察を実施する。観察視野の面積は特に限定されず、転位が観察しやすい倍率で得られる面積でよい。観察視野の面積は、たとえば、100nm×100nm~800nm×800nmである。さらに、観察視野の面積と、観察視野の厚さとから、各観察視野の体積(m3)を求める。なお、観察領域の厚さは、薄膜試料に対する、電子エネルギー損失強度スペクトル(EELS)の全積分強度と、ゼロロススペクトルの積分強度とから求める。
観察視野に対する組織観察は、加速電圧を300kVとし、回折条件を転位観察に適した条件で実施される。転位観察に適した回折条件とは、透過波と1つの回折波とが励起される二波近似が可能な条件を意味する。具体的に、オーステナイトに対しては、逆格子ベクトルg=40-2が励起される条件であり、フェライトに対しては、逆格子ベクトルg=200又は30-1が励起される条件を意味する。本実施形態では、転位観察に適した回折条件になるように、薄膜試料を傾斜させて、薄膜試料の観察領域を明視野観察する。なお、明視野観察に代えて、高角散乱環状暗視野走査透過顕微鏡法(HAADF-STEM:High-angle Annular Dark Field Scanning Transmission Electron Microscopy)により転位を観察してもよい。HAADF-STEMによる観察では、明視野観察よりも簡便に、転位を観察できる。
さらに、適切な時間露光を行うことで、観察視野を写真撮影する。生成した写真画像について、コントラストから転位を特定して、転位の長さを測定する。なお、転位の長さは、周知の方法で測定することができる。たとえば、コントラストに基づいて特定した転位の長さを、画像解析によって求めてもよい。得られたフェライト中の転位の長さの5視野での合計(m)と、5視野でのフェライトの総体積(m3)とに基づいて、フェライト中の転位密度ρ(α)(m-2)を求める。同様に、得られたオーステナイト中の転位の長さの5視野での合計(m)と、5視野でのオーステナイトの総体積(m3)とに基づいて、オーステナイト中の転位密度ρ(γ)(m-2)を求める。
上述の方法で求めたフェライト中の転位密度ρ(α)(m-2)に対する、オーステナイト中の転位密度ρ(γ)(m-2)の比Fn1(=ρ(γ)/ρ(α))を求める。本実施形態において、転位密度比Fn1は、得られた数値の小数第二位を四捨五入して求める。
なお、本実施形態において、フェライト中の転位密度ρ(α)(m-2)及びオーステナイト中の転位密度ρ(γ)(m-2)は、降伏強度が758MPa以上であり、Fn1が0.3超~4.0未満を満たせば特に限定されない。本実施形態による二相ステンレス鋼材において、フェライト中の転位密度ρ(α)(m-2)は、たとえば、1.0×1014~8.0×1015(m-2)である。本実施形態による二相ステンレス鋼材において、オーステナイト中の転位密度ρ(γ)(m-2)は、たとえば、1.0×1014~8.0×1015(m-2)である。フェライト中の転位密度ρ(α)(m-2)が1.0×1014~8.0×1015(m-2)であり、オーステナイト中の転位密度ρ(γ)(m-2)が1.0×1014~8.0×1015(m-2)であれば、本実施形態のその他の構成を満たすことを条件に、758MPa以上の降伏強度を安定して有し、かつ、優れた耐食性を有する二相ステンレス鋼材を得ることができる。
[耐食性]
本実施形態による二相ステンレス鋼材の降伏強度は、758MPa以上である。本実施形態による二相ステンレス鋼材は、上述の化学組成を有し、体積率で35~65%のフェライト及び残部がオーステナイトからなるミクロ組織を有し、かつ、転位密度比Fn1(=ρ(γ)/ρ(α))が0.3超~4.0未満である。その結果、本実施形態による二相ステンレス鋼材は、降伏強度が758MPa以上であっても、優れた耐食性を有する。本実施形態において、二相ステンレス鋼材が優れた耐食性を有するとは、次のように評価される。
本実施形態による二相ステンレス鋼材から、4点曲げ試験用の試験片を作製する。試験片の大きさは、たとえば厚さ2mm、幅10mm、長さ75mmである。鋼材が鋼板の場合、板厚中央部から試験片を作製する。この場合、試験片の長さ方向は、鋼板の圧延方向と平行とする。鋼材が鋼管の場合、肉厚中央部から試験片を作製する。この場合、試験片の長さ方向は、鋼管の管軸方向と平行とする。鋼材が丸鋼の場合、R/2位置から試験片を作製する。この場合、試験片の長さ方向は、丸鋼の軸方向と平行とする。
試験溶液は、pH=4.0に調整した20質量%の塩化ナトリウム水溶液を用いる。ASTM G39-99(2021)に準拠して、試験片に対して4点曲げによって、実降伏応力の90%に相当する応力を負荷する。応力を負荷した試験片を試験治具ごとオートクレーブに封入する。オートクレーブに試験溶液を、気相部を残して注入し、試験浴とする。試験浴を脱気した後、オートクレーブに0.1barのH2Sガスと10barのCO2ガスとの混合ガスを加圧封入し、試験浴を撹拌して混合ガスを飽和させる。オートクレーブを封じた後、試験浴を90℃で720時間撹拌する。
本実施形態では、上述の試験環境において720時間経過後に、割れが確認されない場合、「優れた耐食性を有する」と評価する。なお、本明細書において「割れが確認されない」とは、試験後の試験片を肉眼によって観察した場合、割れが確認されないことを意味する。
[二相ステンレス鋼材の形状]
上述のとおり、本実施形態による二相ステンレス鋼材の形状は、特に限定されない。好ましくは、本実施形態による二相ステンレス鋼材は、継目無鋼管である。本実施形態による二相ステンレス鋼材が継目無鋼管の場合、肉厚が5mm以上であっても、758MPa以上の降伏強度と、優れた耐食性とを有する。
[製造方法]
上述の構成を有する本実施形態による二相ステンレス鋼材の製造方法の一例を説明する。なお、本実施形態による二相ステンレス鋼材の製造方法は、以下に説明する製造方法に限定されない。本実施形態の二相ステンレス鋼材の製造方法の一例は、素材準備工程と、熱間加工工程と、第一冷間加工工程と、溶体化処理工程と、第二冷間加工工程とを含む。以下、各製造工程について詳述する。
[素材準備工程]
本実施形態による素材準備工程では、上述の化学組成を有する素材を準備する。素材は製造して準備してもよく、第三者から購入することにより準備してもよい。すなわち、素材を準備する方法は特に限定されない。
素材を製造する場合、たとえば、次の方法で製造する。上述の化学組成を有する溶鋼を製造する。溶鋼を用いて連続鋳造法により鋳片(スラブ、ブルーム、又は、ビレット)を製造する。溶鋼を用いて造塊法により鋼塊(インゴット)を製造してもよい。必要に応じて、スラブ、ブルーム又はインゴットを分塊圧延して、ビレットを製造してもよい。以上の工程により素材を製造する。
[熱間加工工程]
本実施形態による熱間加工工程では、上記素材準備工程で準備された素材を熱間加工して、中間鋼材を製造する。本明細書において中間鋼材とは、最終製品が鋼板の場合は板状の鋼材であり、最終製品が鋼管の場合は素管であり、最終製品が丸鋼の場合は軸方向に垂直な断面が円形状の棒状の鋼材であり、最終製品が線材の場合は線状の鋼材である。熱間加工は、熱間鍛造であってもよく、熱間押出であってもよく、熱間圧延であってもよい。熱間加工の方法は、特に限定されず、周知の方法でよい。
中間鋼材が素管(継目無鋼管)の場合、熱間加工工程において、たとえば、ユジーン・セジュルネ法、又は、エルハルトプッシュベンチ法(すなわち、熱間押出)を実施してもよく、マンネスマン法による穿孔圧延(すなわち、熱間圧延)を実施してもよい。なお、熱間加工は、1回のみ実施してもよく、複数回実施してもよい。たとえば、素材に対して上述の穿孔圧延を実施した後、上述の熱間押出を実施してもよい。たとえばさらに、素材に対して、上述の穿孔圧延を実施した後、延伸圧延を実施してもよい。すなわち、熱間加工工程では、周知の方法により熱間加工を実施して、所望の形状の中間鋼材を製造する。
[第一冷間加工工程]
本実施形態による第一冷間加工工程では、上記熱間加工工程が実施された中間鋼材に対して、冷間加工を実施する。冷間加工は冷間圧延であってもよく、冷間引抜であってもよい。すなわち、第一冷間加工工程では、周知の冷間加工を周知の条件で実施すればよい。たとえば、冷間加工時の中間鋼材の温度は、室温~150℃未満であってもよい。
ここで、第一冷間加工工程における、中間鋼材の断面減少率Rd1(%)は、次のように定義される。なお、第一冷間加工工程における断面減少率Rd1(%)は特に限定されないが、たとえば2~30%である。
Rd1(%)={1-(第一冷間加工工程後の中間鋼材の加工方向に垂直な断面積/第一冷間加工工程前の中間鋼材の加工方向に垂直な断面積)}×100
[溶体化処理工程]
本実施形態による溶体化処理工程では、上記第一冷間加工工程が実施された中間鋼材に対して、溶体化処理を実施する。溶体化処理の方法は、特に限定されず、周知の方法でよい。たとえば、中間鋼材を熱処理炉に装入し、所望の温度で保持した後、急冷する。この場合、溶体化処理を実施する温度(熱処理温度)とは、溶体化処理を実施するための熱処理炉の温度(℃)を意味する。溶体化処理温度で保持する時間(保持時間)とは、中間鋼材が熱処理温度で保持される時間(分)を意味する。
好ましくは、本実施形態の溶体化処理工程における熱処理温度を950~1150℃とする。熱処理温度が低すぎれば、溶体化処理後の二相ステンレス鋼材のフェライト体積率が35%未満になり、製造された二相ステンレス鋼材の強度、及び/又は、耐食性が低下する場合がある。一方、熱処理温度が高すぎれば、溶体化処理後の二相ステンレス鋼材のフェライトの体積率が65%超になり、かえって鋼材の耐食性が低下する場合がある。
したがって、中間鋼材を熱処理炉に装入し、所望の温度で保持した後、急冷して溶体化処理を実施する場合、溶体化処理温度は950~1150℃とするのが好ましい。溶体化処理温度のさらに好ましい下限は960℃であり、さらに好ましくは970℃である。溶体化処理温度のさらに好ましい上限は1140℃であり、さらに好ましくは1120℃である。
中間鋼材を熱処理炉に装入し、所望の温度で保持した後、急冷して溶体化処理を実施する場合、溶体化時間は特に限定されず、周知の条件で実施すればよい。溶体化時間は、たとえば、5~180分である。急冷方法は、たとえば、水冷である。
[第二冷間加工工程]
本実施形態による第二冷間加工工程では、上記溶体化処理工程が実施された中間鋼材に対して、冷間加工を実施する。冷間加工は冷間圧延であってもよく、冷間引抜であってもよい。すなわち、第二冷間加工工程では、第一冷間加工工程と同様に、周知の冷間加工を周知の条件で実施すればよい。たとえば、冷間加工時の中間鋼材の温度は、室温~150℃未満であってもよい。
ここで、第二冷間加工工程における、中間鋼材の断面減少率Rd2(%)は、次のように定義される。
Rd2(%)={1-(第二冷間加工工程後の中間鋼材の加工方向に垂直な断面積/第二冷間加工工程前の中間鋼材の加工方向に垂直な断面積)}×100
第二冷間加工工程における断面減少率Rd2(%)は、製造される二相ステンレス鋼材の強度に大きな影響を与える。したがって、断面減少率Rd2が小さすぎれば、製造された二相ステンレス鋼材の降伏強度が安定して758MPa以上にならない場合がある。一方、断面減少率Rd2が大きすぎれば、オーステナイトの転位密度が高まり、転位密度比Fn1が4.0以上になる場合がある。したがって、本実施形態では、断面減少率Rd2を4~20%とする。
このようにして、本実施形態による二相ステンレス鋼材の好ましい製造方法では、素材準備工程と、熱間加工工程と、第一冷間加工工程と、溶体化処理工程と、第二冷間加工工程とが実施される。ここで、フェライト中の転位密度ρ(α)に対するオーステナイト中の転位密度ρ(γ)の比Fn1(=ρ(γ)/ρ(α))は、冷間加工の影響を強く受け、その値が変化する。すなわち、上述の好ましい製造方法においては、第一冷間加工工程と第二冷間加工工程とのバランスにより、転位密度比Fn1の値が変化する。
そこで、本実施形態による好ましい製造方法では、第一冷間加工工程の断面減少率Rd1(%)と、第二冷間加工工程の断面減少率Rd2(%)とが、次の式(A)を満たす。その結果、上述の化学組成とミクロ組織とを有し、758MPa以上の降伏強度を有し、転位密度比Fn1が0.3超~4.0未満を満たす二相ステンレス鋼材を安定して製造することができる。
Rd1/Rd2>(Ni+20N+10Sn+4Co+0.5Mn+0.5Cu)/(Cr+3Mo+2Si) (A)
ここで、式(A)中のRd1には第一冷間加工工程における断面減少率が%で、Rd2には第二冷間加工工程における断面減少率が%で、元素記号には、対応する元素の含有量が質量%で代入される。
ここで、溶体化処理前に冷間加工を実施しておくことで、溶体化処理において再結晶を促進して、結晶粒の粒径のばらつきが低減しやすくなる。すなわち、第一冷間加工工程における断面減少率Rd1(%)は、溶体化処理後の結晶粒のばらつきに影響を与える。溶体化処理後の結晶粒の粒径にばらつきが小さければ、第二冷間加工工程での冷間加工によって、転位がフェライトとオーステナイトとに均一に分配されやすくなる。この場合、転位密度比Fn1が小さくなりやすい。
一方、上述のとおり、第二冷間加工工程における断面減少率Rd2(%)が大きすぎれば、オーステナイトの転位密度が高まりやすくなり、Fn1が大きくなりやすい。そこで、本実施形態による好ましい製造方法では、Rd2に対するRd1を規定する。つまり、Rd2に応じてRd1をある程度以上に高めておくことで、第二冷間加工工程における中間鋼材の結晶粒を予め整粒にしておくことができる。すなわち、第二冷間加工工程においてオーステナイト中の転位密度ρ(γ)が局所的に高まることを抑制できる。その結果、転位密度比Fn1を低減することができる。
さらに、FnA=(Ni+20N+10Sn+4Co+0.5Mn+0.5Cu)/(Cr+3Mo+2Si)と定義する。FnAは、上述の化学組成を有する二相ステンレス鋼材のミクロ組織における、結晶粒の整粒度合いを示す指標である。FnAが大きいほど結晶粒のばらつきが大きくなりやすい。そのため、FnAが大きい場合であっても、Rd2に応じてRd1を高めれば、結晶粒の整粒化の効果が高まる。
したがって、本実施形態による好ましい製造方法では、Rd2に対するRd1の比を、FnAよりも大きくする。この場合、第二冷間加工工程においてオーステナイト中の転位密度ρ(γ)が局所的に高まることを抑制できる。その結果、転位密度比Fn1を低減することができる。このように、本実施形態による好ましい製造方法によれば、758MPa以上の降伏強度を有し、転位密度比Fn1が0.3超~4.0未満を満たす二相ステンレス鋼材を安定して製造することができる。
[その他の工程]
本実施形態による製造方法では、上記以外の製造工程を含んでもよい。たとえば、本実施形態による二相ステンレス鋼材に対して、時効熱処理を実施してもよい。時効熱処理とは、製造された二相ステンレス鋼材を所望の温度で保持することを意味する。この場合、時効熱処理は周知の方法で実施されればよく、特に限定されない。たとえばさらに、本実施形態による二相ステンレス鋼材に対して、酸洗処理を実施してもよい。この場合、酸洗処理は、周知の方法で実施されればよく、特に限定されない。さらに、第二冷間加工工程が実施された二相ステンレス鋼材に対して、その他の周知の後処理を実施してもよい。
以上の工程により、本実施形態による二相ステンレス鋼材が製造できる。なお、上述の二相ステンレス鋼材の製造方法は一例であり、他の方法によって二相ステンレス鋼材が製造されてもよい。以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
表1-1及び表1-2に示す化学組成を有する溶鋼を、50kgの真空溶解炉を用いて溶製し、造塊法により鋼塊(インゴット)を製造した。なお、表1-2中の「-」は、該当する元素の含有量が不純物レベルであったことを意味する。たとえば、鋼AのNb含有量、Ta含有量、Ti含有量、Zr含有量、Hf含有量、W含有量、Sb含有量、Ca含有量、Mg含有量、B含有量、及び、REM含有量は、小数第四位を四捨五入して、0%であったことを意味する。さらに、表1-1に記載の化学組成と、上述の定義から求めたFnA(=(Ni+20N+10Sn+4Co+0.5Mn+0.5Cu)/(Cr+3Mo+2Si))を表2に示す。
Figure 0007498420000001
Figure 0007498420000002
Figure 0007498420000003
各鋼種のインゴットに対して熱間加工を実施して、素管(継目無鋼管)を製造した。熱間加工が実施された各試験番号の素管に対して、表2に記載の断面減少率Rd1(%)にて、第一冷間加工を実施した。さらに、各試験番号の素管に対して、表2に記載の熱処理温度(℃)及び保持時間(分)にて、溶体化処理を実施した。さらに、溶体化処理が実施された各試験番号の素管に対して、表2に記載の断面減少率Rd2(%)で第二冷間加工を実施した。各試験番号における、第二冷間加工の断面減少率Rd2(%)に対する、第一冷間加工の断面減少率Rd1(%)の比を、表2の「Rd1/Rd2」欄に示す。なお、第一冷間加工及び第二冷間加工はいずれも、冷間引抜を実施した。
[評価試験]
以上の工程により、各試験番号の継目無鋼管を得た。得られた各試験番号の継目無鋼管に対して、引張試験と、ミクロ組織観察試験と、転位密度比測定試験と、耐食性試験とを実施した。
[引張試験]
各試験番号の継目無鋼管に対して、ASTM E8/E8M(2022)に準拠して、引張試験を実施して、降伏強度を求めた。具体的には、各試験番号の継目無鋼管の肉厚中央部から、引張試験用の円弧状試験片を作製した。円弧状試験片は、厚さを鋼管の肉厚と同じとし、幅25.4mm、標点距離50.8mmとした。各試験番号の円弧状試験片を用いて、常温(25℃)、大気中にて引張試験を実施して、0.2%オフセット耐力(MPa)を求めた。求めた0.2%オフセット耐力を降伏強度(MPa)と定義した。得られた各試験番号の降伏強度(Yield Strength)を、表3の「YS(MPa)」欄に示す。
Figure 0007498420000004
[ミクロ組織観察試験]
各試験番号の継目無鋼管に対して、ミクロ組織観察を実施して、フェライトの体積率を求めた。具体的には、各試験番号の継目無鋼管の肉厚中央部から、管軸方向5mm×管周方向5mmの観察面を有するミクロ組織観察用の試験片を作製した。各試験番号の試験片の観察面を鏡面に研磨し、7%水酸化カリウム腐食液中で電解腐食した。電解腐食により組織が現出された観察面を、光学顕微鏡を用いて10視野観察した。各視野の面積は、1.00mm2(倍率100倍)であった。
各試験番号の各視野において、ミクロ組織はフェライト及びオーステナイト以外の相は、無視できるほど少なかった。すなわち、各試験番号の継目無鋼管は、フェライト、及び、オーステナイトからなるミクロ組織を有していた。各試験番号の各視野において、フェライトとオーステナイトとを、コントラストに基づいて特定した。特定したフェライトの面積率(%)を、ASTM E562(2019)に準拠して画像解析によって求めた。10視野におけるフェライトの面積率の算術平均値を、フェライト体積率(%)とした。求めた各試験番号のフェライト体積率(%)を表3に示す。
[転位密度比測定試験]
各試験番号の継目無鋼管に対して、転位密度比測定試験を実施して、転位密度比Fn1(=ρ(γ)/ρ(α))を求めた。具体的に、各試験番号の継目無鋼管から、上述の方法で薄膜試料を作製した。さらに、各試験番号の薄膜試料を用いて、上述の方法でフェライト中の転位密度ρ(α)(m-2)、及び、オーステナイト中の転位密度ρ(γ)(m-2)を求めた。なお、本実施形態では、明視野観察により、転位を観察した。各試験番号において、フェライト中の転位密度ρ(α)は、1.0×1014~8.0×1015(m-2)であり、オーステナイト中の転位密度ρ(γ)は、1.0×1014~8.0×1015(m-2)であった。得られたρ(α)(m-2)とρ(γ)(m-2)とから、転位密度比Fn1(=ρ(γ)/ρ(α))を求めた。求めた転位密度比Fn1を、表3の「転位密度比ρ(γ)/ρ(α)」欄に示す。
[耐食性試験]
各試験番号の継目無鋼管に対して、耐食性試験を実施して、耐食性を評価した。具体的に、各試験番号の継目無鋼管から、上述の方法で試験片を作製した。試験溶液は、pH=4.0に調整した20質量%の塩化ナトリウム水溶液を用いた。ASTM G39-99(2021)に準拠して、試験片に対して4点曲げによって、実降伏応力の90%に相当する応力を負荷した。応力を負荷した試験片を試験治具ごとオートクレーブに封入した。オートクレーブに試験溶液を、気相部を残して注入し、試験浴とした。試験浴を脱気した後、オートクレーブに0.1barのH2Sガスと10barのCO2ガスとの混合ガスを加圧封入し、試験浴を撹拌して混合ガスを飽和させた。オートクレーブを封じた後、試験浴を90℃で720時間撹拌した。
720時間経過後に割れが確認されない試験片について、「優れた耐食性を有する」(表3中の「EX」(EXcellent))と判断した。一方、720時間経過後に割れが確認された試験片について、「優れた耐食性を有さない」(表3中の「NA」(Not Acceptable))と判断した。各試験番号の継目無鋼管について、評価結果を表3に示す。
表1-1、表1-2、表2、及び、表3を参照して、試験番号1~19の継目無鋼管は、化学組成が適切であった。さらに、これらの継目無鋼管に実施した製造方法は、明細書に記載の好ましい製造方法であった。その結果、これらの継目無鋼管は、降伏強度が758MPa以上であり、フェライトの体積率が35~65%であり、転位密度比Fn1が0.3超~4.0未満を満たした。その結果、これらの継目無鋼管は、耐食性試験において、優れた耐食性を有すると判断された。すなわち、試験番号1~19の継目無鋼管は、758MPa以上の高い降伏強度と、優れた耐食性とを両立していた。
一方、試験番号20及び21の継目無鋼管は、第二冷間加工工程における断面減少率Rd2が小さすぎた。その結果、これらの継目無鋼管は、降伏強度が758MPa未満となった。
試験番号22及び23の継目無鋼管は、第二冷間加工工程における断面減少率Rd2が大きすぎた。その結果、これらの継目無鋼管は、転位密度比Fn1が4.0以上となった。その結果、これらの継目無鋼管は、耐食性試験において、優れた耐食性を有さないと判断された。
試験番号24~26の継目無鋼管は、第一冷間加工工程における断面減少率Rd1と、第二冷間加工工程における断面減少率Rd2と、FnAとが式(A)を満たさなかった。その結果、これらの継目無鋼管は、転位密度比Fn1が4.0以上となった。その結果、これらの継目無鋼管は、耐食性試験において、優れた耐食性を有さないと判断された。
以上、本開示の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。したがって、本開示は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.030%以下、
    Si:0.20~1.00%、
    Mn:0.5~7.0%、
    P:0.040%以下、
    S:0.0200%以下、
    Al:0.100%以下、
    Ni:4.0~9.0%、
    Cr:20.0~30.0%、
    Mo:0.5~2.0%、
    Cu:1.5~3.0%、
    N:0.15~0.30%、
    V:0.01~0.50%、
    Co:0.05~1.00%、
    Sn:0.001~0.050%、
    Nb:0~0.300%、
    Ta:0~0.100%、
    Ti:0~0.100%、
    Zr:0~0.100%、
    Hf:0~0.100%、
    W:0~0.200%、
    Sb:0~0.100%、
    Ca:0~0.020%、
    Mg:0~0.020%、
    B:0~0.020%、
    希土類元素:0~0.200%、及び、
    残部がFe及び不純物からなり、
    降伏強度が758MPa以上であり、
    ミクロ組織が、体積率で35~65%のフェライト、及び、残部がオーステナイトからなり、
    前記フェライト中の転位密度ρ(α)と、前記オーステナイト中の転位密度ρ(γ)とが、次の式(1)を満たす、
    二相ステンレス鋼材。
    0.3<ρ(γ)/ρ(α)<4.0 (1)
    ここで、式(1)中のρ(γ)には前記オーステナイト中の転位密度がm-2で、ρ(α)には前記フェライト中の転位密度がm-2で代入される。
  2. 請求項1に記載の二相ステンレス鋼材であって、
    Nb:0.001~0.300%、
    Ta:0.001~0.100%、
    Ti:0.001~0.100%、
    Zr:0.001~0.100%、
    Hf:0.001~0.100%、
    W:0.001~0.200%、
    Sb:0.001~0.100%、
    Ca:0.001~0.020%、
    Mg:0.001~0.020%、
    B:0.001~0.020%、及び、
    希土類元素:0.001~0.200%、からなる群から選択される1元素以上を含有する、
    二相ステンレス鋼材。
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