JP6372070B2 - フェライト・マルテンサイト二相鋼及び油井用鋼管 - Google Patents

フェライト・マルテンサイト二相鋼及び油井用鋼管 Download PDF

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Description

本発明は、二相鋼及び鋼管に関し、さらに詳しくは、フェライト・マルテンサイト二相鋼及び油井用鋼管に関する。
本明細書において、「油井用鋼管」は、例えば、JIS G 0203(2009)の番号3514の定義欄に記載されている油井用鋼管を意味する。具体的には、「油井用鋼管」は、油井又はガス井の掘削や、原油又は天然ガスの採取等に用いられるケーシング、チュービング、ドリルパイプの総称を意味する。
腐食性の低い井戸(油井及びガス井)の枯渇に伴い、腐食性の高い井戸(以下、高腐食性井戸という)の開発が進められている。高腐食性井戸は、腐食性物質を多く含有する。腐食性物質はたとえば、硫化水素及び炭酸ガス等の腐食性ガス、及び、塩化物イオン等である。硫化水素は、高強度の低合金鋼の油井用鋼管において、硫化物応力割れ(Sulfide Stress Cracking、以下「SSC」という。)を引き起こす。そのため、油井用鋼管に製造される鋼には、高い耐SSC性が要求される。
一般的に、炭酸ガス及び塩化物イオンを含む井戸では、13%Cr鋼を用いた油井用鋼管が使用されている。13%Cr鋼は、13%程度のCrを含有するマルテンサイト系ステンレス鋼であり、耐炭酸ガス腐食性に優れる。しかしながら、高腐食性井戸では、13%Cr鋼にSSCが発生しやすい。
そこで、高腐食性井戸に用いられる油井用鋼管には、Super 13Cr鋼、オーステナイト・フェライト系二相ステンレス鋼(以下、DP鋼という)、及びオーステナイト系高合金鋼が使用されている。Super 13Cr鋼は、13%Cr鋼よりも耐SSC性に優れる。
しかしながら、Super 13Cr鋼であっても、耐SSC性が十分でない場合がある。さらに、「DP鋼」やオーステナイト系の高合金鋼は高価である。
高腐食性井戸において、高価なDP鋼及びオーステナイト系高合金鋼に代えて、耐SSC性に優れた安価な鋼(炭素鋼又は低合金鋼)を油井用鋼管に使用することも考えられる。しかしながらこの場合、油井用鋼管を短期間で取り替えたり、油井用鋼管の内面をコーティングして油井用鋼管における腐食速度を低減しなければならない。
したがって、高腐食性井戸において、優れた耐炭酸ガス腐食性(耐食性)及び耐SSC性を有し、DP鋼及びオーステナイト系高合金鋼と異なる化学組成を有する安価な鋼が要求されている。近年、中近東等で比較的浅い高腐食性井戸が発見されており、上述の鋼の要求は高まっている。
特開平7−76722号公報(特許文献1)及び特開2000−63994号公報(特許文献2)は、耐炭酸ガス腐食性及び耐SSC性に優れた鋼を提案する。
特許文献1では、マルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法に関して、次の事項が記載されている。初めに、質量%で、C:0.1〜0.3%、Si:<1.0%、Mn:0.1〜1.0%、P:<0.02%、S:<0.01%、Cr:11〜14%、Ni:<0.5%を含有し、任意元素としてさらに、N:0.01〜0.1%、Ca、Mg、REMの1種又は2種以上をそれぞれ0.001〜0.3%を含有し、マルテンサイト主体の鋼を準備する。鋼をAc3点とAc1点との間の温度に加熱する。その後、鋼をMs点以下まで冷却する。その後、鋼をAc1点以下の温度に加熱し、常温まで冷却する。この製造方法により、マルテンサイト系ステンレス鋼の降伏強度は507MPa以下になり、マルテンサイト系ステンレス鋼の耐SSC性が高まる、と特許文献1には記載されている。
特許文献1には、次の事項も記載されている。従来の鋼の熱処理方法(焼準及び焼戻しを実施する方法)では、耐力として55〜60kgf/mm2(539〜588MPa、78.2〜85.3ksi)以下にすることができない。そのため、従来の熱処理方法で製造された鋼の耐SSC性が低い。
特許文献2では、油井用Cr含有鋼管に関して、次の事項が記載されている。油井用Cr含有鋼管は、質量%で、C:0.30%以下、Si:0.60%以下、Mn:0.30〜1.50%、P:0.03%以下、S:0.005%以下、Cr:3.0〜9.0%、Al:0.005%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる。油井用Cr含有鋼管はさらに、80ksi級(552〜665MPa)の降伏強度を有する。
特開平7−76722号公報 特開2000−63994号公報
櫛田隆弘、工藤赳夫、「水素拡散及び水素吸蔵挙動の観点からの鉄鋼材料の水素脆化についての考察」、まてりあ、社団法人日本金属学会、1994年、第33巻、第7号、p.932−939
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法で製造されたマルテンサイト系ステンレス鋼管であっても、耐SSC性が低い場合がある。さらに、特許文献1に開示された化学組成の鋼を素材として、従来の熱処理を実施した場合、熱処理後の鋼の耐SSC性は低い。
特許文献2の油井用Cr含有鋼管の降伏強度は高い。そのため、耐SSC性が低い場合がある。
本発明の目的は、優れた耐炭酸ガス腐食性(耐食性)及び優れた耐SSC性を有するフェライト・マルテンサイト二相鋼を提供することである。
本発明によるフェライト・マルテンサイト二相鋼は、質量%で、Si:0.05〜3.0%、Mn:0.1〜1.0%、sol.Al:0.005〜0.10%、V:1.0%以下、Cr:8〜15%、Mo:0〜2%、W:0〜4%、Nb:0〜1%、Ti:0〜1%、Zr:0〜1%、B:0〜0.01%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%、及び、希土類元素(REM):0〜0.50%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中、C:0.07%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、N:0.1%以下、Ni:0.5%以下、及び、O:0.01%以下であり、式(1)により定義される有効Cr量が8%以上である化学組成と、体積率で5〜70%のフェライトと、体積率で0〜5%のオーステナイトとを含有し、残部が焼戻しマルテンサイトからなり、フェライトの結晶粒の平均アスペクト比が2.0以上であるミクロ組織と、379〜552MPa未満の降伏強度とを備える。
有効Cr量=Cr−16.6×C (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素含有量(質量%)が代入される。
本発明のフェライト・マルテンサイト二相鋼は、優れた耐炭酸ガス腐食性及び耐SSC性を有する。
図1は、鋼材加熱温度が1250℃の場合のフェライトの体積率とNieq/Creqとの関係を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明者らは、鋼の耐炭酸ガス腐食性及び耐SSC性について調査及び検討を行い、次の知見を得た。
(A)鋼の耐炭酸ガス腐食性を高めるには、母相内の固溶Crが有効である。C及び15%以下のCrを含有する鋼では、式(1)で定義される有効Cr量(%)が、100℃程度の高温の炭酸ガスを含む環境での耐炭酸ガス腐食性の指標となる。
有効Cr量=Cr−16.6×C (1)
式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
母相中の固溶Cr含有量は、Cr炭化物(Cr236)の生成により減少する。有効Cr量は、耐炭酸ガス腐食性に実質的に有効なCr含有量を意味する。
式(1)で定義される有効Cr量が8.0%以上であれば、100℃程度の高温の高腐食性井戸(油井及びガス井)において、優れた耐炭酸ガス腐食性が得られる。
(B)Cr鋼及び13%Cr鋼に代表されるマルテンサイト系ステンレス鋼の耐SSC性は、炭素鋼及び低合金鋼に比べて低い。その理由は次のとおりと考えられる。
Fe以外のCr、Mn、Ni、Mo等の固溶合金元素は、鋼の水素拡散係数Dを小さくする。水素拡散係数D(m2/s)は、鋼中の水素の拡散のしやすさを示す指標である。水素拡散係数Dが小さくなれば、硫化水素を含有する環境において、鋼の吸蔵水素量が増加し、SSCが生じやすくなる。鋼は、環境に応じて、水素拡散係数Dの逆数(1/D)に比例した水素量を含有する。この知見は、非特許文献1に開示されている。
要するに、Cr、Mn、Ni及びMo等の固溶合金元素の含有量が高いほど、鋼中に多量の水素が吸蔵され、水素脆化が起こりやすくなる。したがって、8.0%以上の有効Cr量を含有する鋼の耐SSC性は、低くなる可能性がある。
(C)しかしながら、8.0%以上の有効Cr量を含有する鋼のミクロ組織が、硬化相であるマルテンサイトだけでなく、軟化相であるフェライトを体積率で5%以上含有すれば、優れた耐炭酸ガス腐食性だけでなく、優れた耐SSC性も得られる。フェライトは軟化相であるため、鋼の降伏強度を低下する。降伏強度が低下すれば、SSC感受性が低下する。そのため、優れた耐SSC性が得られる。さらに、フェライトの体積率が70%以下であれば、油井用鋼管として必要な379MPa以上の降伏強度も得られる。
(D)鋼のミクロ組織がマルテンサイトとフェライトとを含有する場合、上述のとおり、ミクロ組織は硬化相(マルテンサイト)と軟化相(フェライト)との混合組織となる。そのため、混合組織に起因したSSCが発生し得る。しかしながら、鋼中のフェライトの結晶粒の平均アスペクト比が2.0以上であれば、耐SSC性が高まる。平均アスペクト比が2.0以上である場合、フェライトは鋼中で延在する。この場合、仮にSSCが発生しても、延在したフェライトがSSCの伝播を抑制する。そのため、耐SSC性が高まる。
以上の知見に基づいて完成した本発明によるフェライト・マルテンサイト二相鋼は、質量%で、Si:0.05〜3.0%、Mn:0.1〜1.0%、sol.Al:0.005〜0.10%、V:1.0%以下、Cr:8〜15%、Mo:0〜2%、W:0〜4%、Nb:0〜1%、Ti:0〜1%、Zr:0〜1%、B:0〜0.01%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%、及び、希土類元素(REM):0〜0.50%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、不純物中、C:0.07%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、N:0.1%以下、Ni:0.5%以下、及び、O:0.01%以下であり、式(1)により定義される有効Cr量が8%以上である化学組成と、体積率で5〜70%のフェライトと、体積率で0〜5%のオーステナイトとを含有し、残部が焼戻しマルテンサイトからなり、フェライトの結晶粒の平均アスペクト比が2.0以上であるミクロ組織と、379〜552MPa未満の降伏強度とを備える。
有効Cr量=Cr−16.6×C (1)
ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素含有量(質量%)が代入される。
上記フェライト・マルテンサイト二相鋼の化学組成は、Mo:0.05〜2%、及び、W:0.1〜4%からなる群から選択される1種又は2種を含有してもよい。
上記フェライト・マルテンサイト二相鋼の化学組成は、Nb:0.01〜1%、Ti:0.01〜1%、及び、Zr:0.01〜1%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
上記フェライト・マルテンサイト二相鋼の化学組成は、B:0.0003〜0.01%を含有してもよい。
上記フェライト・マルテンサイト二相鋼の化学組成は、Ca:0.0001〜0.01%、Mg:0.0001〜0.01%、及び、REM:0.0001〜0.50%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
本発明による油井用鋼管は上述のフェライト・マルテンサイト二相鋼を用いて製造される。
以下、本発明によるフェライト・マルテンサイト二相鋼について詳述する。各元素の含有量の「%」は、「質量%」を意味する。
[化学組成]
本発明によるフェライト・マルテンサイト二相鋼の化学組成は、次の元素を含有する。
Si:0.05〜3.0%
シリコン(Si)は、鋼を脱酸する。Siはさらに、フェライトの生成を促進する。Si含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Si含有量が高すぎれば、これらの効果が飽和する。Si含有量が高すぎればさらに、鋼の靱性が低下する。したがって、Si含有量は0.05〜3.0%である。Si含有量の好ましい下限は0.10%であり、さらに好ましくは0.15%であり、さらに好ましくは0.20%である。Si含有量の好ましい上限は2.0%であり、さらに好ましくは1.0%であり、さらに好ましくは0.5%である。
Mn:0.1〜1.0%
マンガン(Mn)は鋼の焼入れ性を高める。Mn含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、Mnは、P及びS等の不純物元素と共に、フェライトとマルテンサイトとの境界及び粒界に偏析する。この場合、耐SSC性が低下する。Mn含有量が高すぎればさらに、介在物であるMn硫化物が生成し、鋼の耐SSC性が低下する。したがって、Mn含有量は、0.1〜1.0%である。Mn含有量の好ましい下限は0.2%であり、さらに好ましくは0.3%であり、さらに好ましくは0.4%である。Mn含有量の好ましい上限は0.8%であり、さらに好ましくは0.7%であり、さらに好ましくは0.55%である。
sol.Al:0.005〜0.10%
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。Alはさらに、フェライト相の生成を促進する。Al含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Al含有量が高すぎれば、これらの効果が飽和する。Al含有量が高すぎればさらに、鋼の靱性が低下する。したがって、Al含有量は0.005〜0.10%である。Al含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.012%である。Al含有量の好ましい上限は0.07%であり、さらに好ましくは0.05%であり、さらに好ましくは0.03%である。本明細書でいうAl含有量は、sol.Al(酸可溶Al)の含有量を意味する。
V:1.0%以下
バナジウム(V)は、不可避的に含有される。Vは、フェライト相の生成を促進する。一方、V含有量が高すぎれば、上記効果が飽和し、さらに、鋼の靱性が低下する。したがって、V含有量は1.0%以下である。V含有量の好ましい下限は0.005%であり、さらに好ましくは0.007%であり、さらに好ましくは0.01%である。V含有量の好ましい上限は0.5%であり、さらに好ましくは0.3%であり、さらに好ましくは0.1%である。
Cr:8〜15%
クロム(Cr)は、鋼の耐炭酸ガス腐食性を高める。Cr含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば、水素拡散係数Dが著しく低下し、耐SSC性が低下する。したがって、Cr含有量は8〜15%である。Cr含有量の好ましい下限は8.5%であり、さらに好ましくは9%であり、さらに好ましくは10%である。Cr含有量の好ましい上限は14%であり、さらに好ましくは13%であり、さらに好ましくは11.5%である。
本発明によるフェライト・マルテンサイト二相鋼の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入されるものであって、本発明によるフェライト・マルテンサイト二相鋼に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
上記不純物中のC、P、S、N、Ni、及び、Oの含有量は、次のとおりである。
C:0.07%以下
炭素(C)は、不純物である。Cは、Cr236に代表される炭化物を形成する。この炭化物の形成により、鋼中の有効Cr量が低下し、鋼の耐炭酸腐食性が低下する。この炭化物はさらに、SSCの発生及び伝播の起点となりやすく、耐SSC性を低下する。Cはさらに、フェライトの形成を抑制する。したがって、C含有量は0.07%以下である。C含有量の好ましい上限は0.05%であり、さらに好ましくは0.04%であり、さらに好ましくは0.03%である。C含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、脱炭コストを考慮する場合には、C含有量は0.001%以上が好ましい。
P:0.03%以下
りん(P)は、不純物である。Pは、フェライトとマルテンサイト相との境界、及び、結晶粒界に偏析し、鋼の耐SSC性を低下する。したがって、P含有量は0.03%以下である。好ましいP含有量は0.020%以下であり、さらに好ましくは0.015%以下である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。
S:0.01%以下
硫黄(S)は、不純物である。SもPと同様にフェライト相とマルテンサイト相との境界や結晶粒界に偏析し、鋼の耐SSC性を低下する。したがって、S含有量は0.01%以下である。好ましいS含有量は0.005%以下であり、さらに好ましくは0.002%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。
N:0.1%以下
窒素(N)は、不純物である。N含有量が高すぎれば、鋼の靱性及び耐SSC性が低下し、鋼の熱間圧延性が低下する。したがって、N含有量は0.1%以下である。N含有量の好ましい上限は0.05%であり、さらに好ましくは0.035%である。N含有量はなるべく低い方が好ましい。
Ni:0.5%以下
ニッケル(Ni)は、不純物である。Niは、局部腐食を促進し、鋼の耐SSC性を低下する。したがって、Ni含有量は0.5%以下である。好ましいNi含有量は0.20%以下であり、さらに好ましくは0.15%以下である。Ni含有量はなるべく低い方が好ましい。
O:0.01%以下
酸素(O)は、不純物である。Oは粗大な酸化物を形成して鋼の熱間圧延性を低下する。したがって、O含有量は0.01%以下である。好ましいO含有量は0.005%以下であり、さらに好ましくは0.003%以下である。O含有量はなるべく低い方が好ましい。
本発明によるフェライト・マルテンサイト二相鋼の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Mo及びWからなる群から選択される1種又は2種を含有してもよい。
Mo:0〜2%、
W:0〜4%
モリブデン(Mo)及びタングステン(W)は、いずれも任意元素であり、含有されなくてもよい。含有された場合、これらの元素はいずれも、P及びSがフェライトとマルテンサイトとの境界及び結晶粒界に偏析するのを抑制する。そのため、PやSによる鋼の耐SSC性の低下が抑制される。しかしながら、これらの元素含有量が高すぎれば、上記効果が飽和し、さらに鋼の製造コストが高くなる。したがって、Mo含有量は0〜2%であり、W含有量は0〜4%である。Mo含有量の好ましい下限は0.05%であり、さらに好ましくは0.1%である。Mo含有量の好ましい上限は1.5%であり、さらに好ましくは1%である。W含有量の好ましい下限は0.1%であり、さらに好ましくは0.2%である。W含有量の好ましい上限は3%であり、さらに好ましくは2%である。
本発明のフェライト・マルテンサイト二相鋼の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Nb、Ti及びZrからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
Nb:0〜1%、
Ti:0〜1%、
Zr:0〜1%
ニオブ(Nb)、チタン(Ti)及びジルコニウム(Zr)は、いずれも任意元素であり、含有されなくてもよい。含有された場合、これらの元素はいずれも、C及びNと結合して炭窒化物を形成する。これらの炭窒化物は、結晶粒を微細化して鋼の耐SSC性を高める。しかしながら、これらの元素の含有量が高すぎれば、上記効果が飽和する。したがって、Nb含有量は0〜1%であり、Ti含有量は0〜1%であり、Zr含有量は0〜1%である。Nb含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.015%である。Nb含有量の好ましい上限は0.2%であり、さらに好ましくは0.1%である。Ti含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.03%である。Ti含有量の好ましい上限は0.2%であり、さらに好ましくは0.1%である。Zr含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.03%である。Zr含有量の好ましい上限は0.3%であり、さらに好ましくは0.2%である。
本発明のフェライト・マルテンサイト二相鋼の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Bを含有してもよい。
B:0〜0.01%
ホウ素(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有された場合、Bは、鋼の焼入れ性を高め、マルテンサイトの生成を促進する。しかしながら、B含有量が高すぎれば、その効果が飽和する。したがって、B含有量は0〜0.01%である。B含有量の好ましい下限は0.0003%であり、さらに好ましくは0.0005%である。B含有量の好ましい上限は0.008%であり、さらに好ましくは0.005%である。
本発明のフェライト・マルテンサイト二相鋼の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Ca、Mg及びREMからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
Ca:0〜0.01%、
Mg:0〜0.01%
REM:0〜0.50%
カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)及び希土類元素(REM)はいずれも任意元素であり、含有されなくてもよい。含有された場合、これらの元素は、鋼中のSと結合して硫化物を形成する。これにより、硫化物の形状が改善され、鋼の耐SSC性が高まる。REMはさらに、鋼中のPと結合して、結晶粒界におけるPの偏析を抑制する。そのため、P偏析に起因した鋼の耐SSC性の低下が抑制される。しかしながら、これらの元素の含有量が高すぎれば、粗大な酸化物が形成され、耐SSC性及び靱性が低下する。したがって、Ca含有量は0〜0.01%であり、Mg含有量は0〜0.01%であり、REM含有量は0〜0.50%である。
Ca含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%である。Ca含有量の好ましい上限は0.007%であり、さらに好ましくは0.005%である。Mg含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%である。Mg含有量の好ましい上限は0.007%であり、さらに好ましくは0.005%である。REM含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%である。REM含有量の好ましい上限は0.1%であり、さらに好ましくは0.05%である。
本明細書におけるREMは、Sc、Y、及び、ランタノイド(原子番号57番のLa〜71番のLu)の合計17元素の総称を意味する。REM含有量は、鋼に含有されるREMがこれらの元素のうち1種である場合、その元素の含有量を意味する。鋼に含有されるREMが2種以上である場合、REM含有量は、それらの元素の総含有量を意味する。上記17元素のうち個別の元素が溶鋼に添加されて、鋼中のREM含有量が上記範囲となってもよいし、ミッシュメタルが溶鋼に添加されて、鋼中のREM含有量が上記範囲となってもよい。
[ミクロ組織]
本発明によるフェライト・マルテンサイト二相鋼のミクロ組織は、体積率で5〜70%のフェライトと、体積率で0〜5%のオーステナイトとを含有し、残部が焼戻しマルテンサイトからなる。
上述のとおり、本発明では、ミクロ組織が、上記体積率のフェライトを含有する。フェライトは軟化相であるため、鋼の降伏強度が552MPa未満に抑えられる。そのため、優れた耐SSC性が得られる。
フェライトの体積率が5%未満であれば、鋼の降伏強度が552MPa以上となる。この場合、耐SSC性が低くなる。一方、フェライトの体積率が70%よりも高ければ、降伏強度が379MPa未満となる。この場合、鋼の降伏強度が、油井用鋼管として必要な降伏強度未満になる。
ミクロ組織は、0〜5%のオーステナイト(残留オーステナイト)を含有してもよい。残留オーステナイトの体積率が5%よりも高ければ、鋼の降伏強度が低下しすぎて、油井用鋼管として必要な降伏強度未満になる。上記のとおり、ミクロ組織中の残留オーステナイトの体積率は、0%であってもよい。この場合、ミクロ組織は、体積率で5〜70%のフェライトを含有し、残部は焼戻しマルテンサイトからなる。
[ミクロ組織中のフェライト及びオーステナイトの体積率の測定方法]
ミクロ組織中のフェライトの体積率(%)は、次の方法で測定される。
フェライト・マルテンサイト二相鋼を圧延方向に沿って切断する。このときの切断面(断面)は、圧延方向に平行な軸と、圧下方向に平行な軸とを含む。この切断面を含むミクロ組織観察用サンプルを採取する。切断面が観察面となるように、サンプルを樹脂に埋めて鏡面研磨する。研磨後、観察面をビエラ液でエッチングする。エッチングされた観察面の任意の5視野(視野面積=150μm×200μm)を光学顕微鏡(観察倍率500倍)で観察する。これにより、焼戻しマルテンサイト、フェライト及びオーステナイトの有無を確認できる。
各視野のフェライトの面積率(%)を、JIS G0555に準拠した点算法で測定する。各視野のフェライトの面積率の平均を、フェライトの体積率(%)と定義する。
オーステナイトの体積率は、X線回折法により測定される。具体的には、鋼の任意の位置からサンプルを採取する。サンプル表面のうちの1面(観察面)は、鋼の圧延方向と平行な断面とする。サンプルの大きさは15mm×15mm×2mmとする。サンプルの観察面を1200番エメリー紙で研磨する。その後、微量の弗酸を含有した常温の過酸化水素中にサンプルを浸漬し、観察面の加工硬化層を除去する。その後、X線回折を実施する。具体的には、フェライト(α相)の(200)面及び(211)面と、オーステナイト(γ相)の(200)面、(220)面及び(311)面の各々のX線強度を測定する。そして、各面の積分強度を算出する。算出後、α相の各面と、γ相の各面との組合せ(合計6組)ごとに、式(1)を用いて体積率Vγ(%)を算出する。そして、6組の体積率Vγの平均値を、オーステナイトの体積率(%)と定義する。
Vγ=100/(1+(Iα×Rγ)/(Iγ×Rα)) (1)
ここで、「Iα」、「Iγ」はそれぞれα相、γ相の積分強度である。「Rα」、「Rγ」はそれぞれ、α相、γ相のスケールファクタ(scale factor)であり、物質の種類と面方位とによって、結晶学的に理論計算される値である。
[フェライトの体積率とNi当量/Cr当量との関係]
フェライトの体積率は、化学組成中のNi当量(以下、Nieqという)及びCr当量(以下、Creqという)と関係する。Nieqは式(2)で定義され、Cr当量は式(3)で定義される。
Nieq=Ni+30×C+30×N+0.5×Mn (2)
Creq=Cr+Mo+1.5×Si+0.5×Nb (3)
式(2)及び式(3)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
図1は、鋼材加熱温度が1250℃の場合のフェライトの体積率とNieq/Creqの関係を示す図である。フェライトの体積率は、主に、熱間圧延前の鋼材の加熱温度およびNieq/Creqに影響される。図1からわかるように、フェライトの体積率はNieq/Creqに略反比例する。熱間圧延前の鋼材の加熱温度が1250℃程度の場合、Nieq/Creqが0.068〜0.21であれば、フェライトの体積率が5〜70%になる。
[フェライトの結晶粒の平均アスペクト比Ras]
上述のとおり、本発明による鋼のミクロ組織は、硬化相(マルテンサイト)と軟化相(フェライト)との混合組織である。一般的に、硬化相と軟化相からなる混合組織では、SSCが発生する場合がある。しかしながら、本発明による鋼では、フェライトの結晶粒が延在する。具体的には、フェライトの結晶粒の平均アスペクト比Rasは2.0以上である。
フェライトの結晶粒のアスペクト比Rasは、次の方法で測定される。上記フェライトの体積率の測定に用いた5視野中のフェライトの各結晶粒に対して、鋼の圧延方向の粒径L1と、鋼の圧下方向(鋼板であれば、板厚方向、鋼管であれば肉厚方向)の粒径L2とを求める。粒径L1及びL2は、交点法により求める。
得られた粒径L1及びL2を用いて、各結晶粒のアスペクト比を式(4)により求める。
各結晶粒のアスペクト比=L1/L2 (4)
求めたアスペクト比の平均を、フェライトの結晶粒の平均アスペクト比Rasと定義する。
平均アスペクト比Rasが2.0以上であれば、仮に、き裂が発生しても、延在するフェライトがSCCの伝播を抑制する。そのため、混合組織であっても優れた耐SSC性が得られる。
[フェライト・マルテンサイト二相鋼の降伏強度]
上述の化学組成及びミクロ組織を有するフェライト・マルテンサイト二相鋼の降伏強度は379〜552MPa未満(55〜80ksi)である。本明細書において、降伏強度は、0.2%耐力を意味する。本発明による鋼の降伏強度は552MPa未満であるため優れた耐炭酸ガス腐食性を有すると共に、優れた耐SSC性を有する。さらに、本発明による鋼の降伏強度は379MPa以上であるため、油井用鋼管としても使用できる。降伏強度の好ましい上限は517MPaであり、さらに好ましくは500MPaである。降伏強度の好ましい下限は395MPaであり、さらに好ましくは410MPaである。
[製造方法]
上述のフェライト・マルテンサイト二相鋼の製造方法の一例を説明する。フェライト・マルテンサイト二相鋼の製造方法は、素材を準備する工程(準備工程)と、素材を熱間圧延して鋼材を製造する工程(圧延工程)と、鋼材に対して焼入れ及び焼戻しを実施する工程(熱処理工程)とを備える。以下、各工程について詳述する。
[準備工程]
上述の化学組成を有し、式(1)〜式(3)を満たす溶鋼を製造する。溶鋼を用いて素材を製造する。具体的には、溶鋼を用いて連続鋳造法により鋳片(スラブ、ブルーム、ビレット)を製造する。溶鋼を用いて造塊法によりインゴットを製造してもよい。必要に応じて、スラブ、ブルーム又はインゴットを分塊圧延して、ビレットを製造してもよい。以上の工程により素材(スラブ、ブルーム、又は、ビレット)を製造する。
[圧延工程]
準備された素材を加熱する。好ましい加熱温度は1100〜1300℃である。この場合、加熱中にδフェライトが生成するため、製造された鋼材中のフェライトの体積率が適切な範囲となる。加熱温度の好ましい下限は1150℃である。
加熱された素材を熱間圧延して鋼材を製造する。このとき、熱間圧延による減面率を55%以上にする。減面率は次のとおり定義される。
減面率=熱間圧延前の素材の横断面積/(熱間圧延前の素材の横断面積−熱間圧延後の素材(鋼材)の横断面積)
ここで、横断面積とは、素材(又は鋼材)の軸方向に垂直な断面での面積(単位はmm2)を意味する。
減面率が55%以上である場合、フェライトの結晶粒の平均アスペクト比Rasが2.0以上になる。
鋼材が板材である場合、例えば、一対のロール群を含む圧延機を用いて熱間圧延が実施される。鋼材が油井用鋼管である場合、例えば、マンネスマン−マンドレルミル法により穿孔圧延及び延伸圧延が実施され、上述のフェライト・マルテンサイト系ステンレス鋼を用いて継目無鋼管(油井用鋼管)が製造される。
[熱処理工程]
製造された鋼材に対して焼入れを実施する。焼入れ温度が低すぎると炭化物の固溶が不足する。一方、焼入れ温度が高すぎると結晶粒が粗大化する。したがって、好ましい焼入れ温度は850〜950℃である。焼入れ後の鋼材に対して、焼戻しを実施する。焼入れ及び焼戻しにより、鋼材の降伏強度を379〜552MPa未満にする。
以上の工程により製造されたフェライト・マルテンサイト二相鋼(鋼材)のミクロ組織は、体積率で5〜70%のフェライトと、体積率で0〜5%のオーステナイトとを含有し、残部が焼戻しマルテンサイトからなる。そして、フェライトの結晶粒の平均アスペクト比Rasは、2.0以上である。そのため、優れた耐炭酸ガス腐食性及び耐SSC性が得られる。
表1に示す化学組成を有する溶鋼を製造した。
Figure 0006372070
表1を参照して、鋼A〜Z、1〜8、18及び19の化学組成及び有効Cr量は本発明の範囲内であった。一方、鋼9〜17の化学組成は、本発明の範囲外であった。鋼18及び19のNieq/Creqは0.068未満であった。鋼20の有効Cr量は8%未満であった。
上記溶鋼を各々30〜150kg溶製し、造塊法によりインゴットを製造した。インゴットから25〜50mmの厚さのブロック(素材)を採取した。ブロックを1250℃に加熱した。加熱後の素材に対して熱間圧延を実施して、厚さ15〜25mmの板材(二相鋼)を製造した。熱間圧延時の減面率は、表2に示すとおりであった。板材に対して焼入れ及び焼戻しを実施した。
Figure 0006372070
[ミクロ組織観察試験、フェライト及びオーステナイトの体積率測定試験]
焼入れ焼戻し後の板材を用いて、上述の方法により、ミクロ組織観察試験を実施した。その結果、各試験番号のミクロ組織には、フェライトとマルテンサイトが観察され、一部にオーステナイトも確認された。上述の方法により、ミクロ組織中のフェライトの体積率(%)及びオーステナイトの体積率(%)を求めた。その結果、各試験番号の板材のオーステナイトの体積率はいずれも5%以下であった。各試験番号のフェライトの体積率を表2に示す。
[フェライトの結晶粒の平均アスペクト比Ras]
さらに、上述の方法により、平均アスペクト比Rasを求めた。求めたアスペクト比Rasを表2に示す。
[引張試験]
焼入れ焼戻し後の板材から、引張試験片を採取した。引張試験片は、平行部径6mm、平行部長さ40mmの丸棒引張試験片とした。この試験片の長手方向は板材の圧延方向とした。この試験片を用いて、常温で引張試験を行い、降伏強度YS(ksi及びMPa)を求めた。降伏強度(MPa)は0.2%耐力とした。得られた降伏強度YSを表2に示す。
[耐SSC性評価試験]
各試験番号の焼入れ焼戻し後の板材から、丸棒試験片を採取した。丸棒試験片の平行部径は6.35mmであり、平行部長さは25.4mmであった。丸棒試験片の長手方向は板材の圧延方向とした。
丸棒試験片を用いて、硫化水素環境中において引張型試験を実施した。具体的には、引張型試験は、NACE(National Association of Corrosion Engineers)TM 0177 A法に準拠して実施した。試験浴として、1atmの硫化水素ガスを飽和させた、常温(25℃)の、5%食塩+0.5%酢酸の水溶液を用いた。試験浴に浸漬した丸棒試験片に、実降伏強度の90%の応力を負荷した。応力を負荷したままで720時間以内に破断した場合、耐SSC性が低いと判断した(表2中に「NA」と表記)。一方、720時間以内に破断しなかった場合、耐SSC性に優れると判断した(表2中に「E」と表記)。
[耐炭酸ガス腐食性評価試験]
各試験番号の板材から、試験片(2mm×10mm×40mm)を採取した。試験片を試験浴に720時間、無応力で浸漬した。試験浴には、30atmの炭酸ガスを飽和させた100℃の5%食塩水溶液を用いた。試験前後の試験片の重量を測定した。測定された重量の変化量に基づいて、各試験片の腐食減量を求めた。腐食減量に基づいて、各試験片の腐食速度(g/(m2・h))を求めた。腐食速度が0.30g/(m2/h)以下であった場合、優れた耐炭酸ガス腐食性が得られたと評価した。
[試験結果]
表2を参照して、試験番号1〜34の化学組成は本発明の範囲内であった。さらに、有効Cr量も適切であった。さらに、Nieq/Creqも適切であった。そのため、これらの試験番号のミクロ組織において、フェライトの体積率は5〜70%であり、オーステナイトの体積率は5%以下であった。さらに、これらの試験番号の減面率はいずれも、55%以上であった。そのため、平均アスペクト比Rasは2.0以上であった。さらに、降伏強度は適切であった。そのため、これらの試験番号のフェライト・マルテンサイト二相鋼は、優れた耐SSC性と耐炭酸ガス腐食性とを有した。
試験番号35及び36では、減面率が低すぎた。そのため、平均アスペクト比Rasが2.0未満であり、耐SSC性が低かった。
試験番号37〜39では、C含有量が高すぎた。そのため、フェライトの体積率が5%未満となり、耐SSC性が低かった。このうち試験番号38ではさらに、有効Cr量が低すぎたため、耐炭酸ガス腐食性が低かった。
試験番号40では、Mn含有量が高すぎた。試験番号41では、P含有量が高すぎた。試験番号42では、S含有量が高すぎた。そのため、試験番号40〜42では、耐SSC性が低かった。
試験番号43では、Cr含有量及び有効Cr量が低すぎた。そのため、耐炭酸ガス腐食性が低かった。
試験番号44では、Cr含有量が高すぎた。試験番号45では、Ni含有量が高すぎた。そのため、試験番号44及び45では、耐SSC性が低かった。
試験番号46及び47では、Nieq/Creqが低すぎ、フェライトの体積率が高すぎた。そのため、降伏強度YSが379MPa未満であった。
試験番号48では、化学組成は本発明の範囲内であったものの、有効Cr量が低すぎた。そのため、耐炭酸ガス腐食性が低かった。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    Si:0.05〜3.0%、
    Mn:0.1〜0.8%、
    sol.Al:0.005〜0.10%、
    V:1.0%以下、
    Cr:8〜15%、
    Mo:0〜2%、
    W:0〜4%、
    Nb:0〜1%、
    Ti:0〜1%、
    Zr:0〜1%、
    B:0〜0.01%、
    Ca:0〜0.01%、
    Mg:0〜0.01%、及び、
    希土類元素(REM):0〜0.50%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、
    前記不純物中、
    C:0.07%以下、
    P:0.03%以下、
    S:0.01%以下、
    N:0.1%以下、
    Ni:0.5%以下、及び、
    O:0.01%以下であり、
    式(1)により定義される有効Cr量が8%以上である化学組成と、
    体積率で5〜70%のフェライトと、体積率で0〜5%のオーステナイトとを含有し、残部が焼戻しマルテンサイトからなり、前記フェライトの結晶粒の平均アスペクト比が2.0以上であるミクロ組織と、
    379〜517MPaの降伏強度とを備えるフェライト・マルテンサイト二相鋼。
    有効Cr量=Cr−16.6×C (1)
    ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素含有量(質量%)が代入される。
  2. 請求項1に記載のフェライト・マルテンサイト二相鋼であって、
    前記化学組成は、
    Mo:0.05〜2%、及び、
    W:0.1〜4%からなる群から選択される1種又は2種を含有する、フェライト・マルテンサイト二相鋼。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のフェライト・マルテンサイト二相鋼であって、
    前記化学組成は、
    Nb:0.01〜1%、
    Ti:0.01〜1%、及び、
    Zr:0.01〜1%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、フェライト・マルテンサイト二相鋼。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のフェライト・マルテンサイト二相鋼であって、
    前記化学組成は、B:0.0003〜0.01%を含有する、フェライト・マルテンサイト二相鋼。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のフェライト・マルテンサイト二相鋼であって、
    前記化学組成は、
    Ca:0.0001〜0.01%、
    Mg:0.0001〜0.01%、及び、
    REM:0.0001〜0.50%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、フェライト・マルテンサイト二相鋼。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のフェライト・マルテンサイト二相鋼を用いて製造される、油井用鋼管。
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