JP7498015B2 - 保持装置及び保持装置の製造方法 - Google Patents

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Description

本開示は、対象物を保持する保持装置及びその製造方法に関する。
保持装置の一例として、対象物(例えば、半導体ウエハ)を保持しつつ所定の温度(例えば、40~800℃程度)に加熱する加熱装置(「サセプタ」とも呼ばれる)が知られている。このような加熱装置は、例えば、成膜装置(CVD成膜装置やスパッタリング成膜装置など)やエッチング装置(プラズマエッチング装置など)といった半導体製造装置の一部として使用されている。
一般的に、この種の保持装置は、セラミックス焼結体により形成された保持部材を備えており、その内部には、例えばタングステン(W)やモリブテン(Mo)等の金属製の発熱抵抗体が配置されている。また、保持装置は、発熱抵抗体と接する導電性の給電接続部材と、給電接続部材と電気的に接続された導電性の給電端子とを備えている。そして、これらの給電端子と給電接続部材を介して発熱抵抗体に電圧が印加されると、発熱抵抗体が発熱し、保持部材の表面(以下、「保持面」ともいう)上に保持した対象物を加熱することができるようになっている。
このような保持装置(加熱装置)が製造される際には、内部に発熱抵抗体の材料が配置された保持部材の材料の成形体が高温(例えば、1700~1900℃程度)で焼成されることにより、緻密なセラミックス焼結体により形成された保持部材と、保持部材の内部に配置された発熱抵抗体とが作製される。この焼成の際に、炉内雰囲気や原料由来の不純物(例えば、炭素)が、緻密化する前の保持部材の材料の成形体中に侵入して発熱抵抗体と反応することにより、発熱抵抗体の表面に変質層(例えば、炭化タングステン層や炭化モリブテン層)が形成されることがある。
そして、発熱抵抗体の表面に変質層が形成されると、発熱抵抗体の抵抗値のバラツキ(製品内及び/又は製品間のバラツキ)が発生し、これにより発熱抵抗体の発熱量のバラツキが発生し、保持部材の保持面の温度(ひいては、保持面に保持された対象物の温度)のバラツキが発生するおそれがある。そのため、従来から、保持部材の相対密度や焼成条件を調整することにより、発熱抵抗体の表面に変質層が形成されることを抑制する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2006-273586号公報
しかしながら、上記の従来技術では、発熱抵抗体の表面に形成される変質層のみに注目しており、給電接続部材の表面に形成される変質層については何も記載されていない。そのため、上記の従来技術では、保持部材の焼成の際に、炉内雰囲気や原料由来の不純物が給電接続部材と反応して、給電接続部材の表面に変質層が形成されてしまうと、この変質層の形成に起因して、給電接続部材の導電性が変化することや、給電接続部材と給電端子との接続界面における界面抵抗にバラツキが発生することにより、発熱抵抗体の発熱量にバラツキが生じてしまうので、保持部材の保持面の温度(ひいては、保持面に保持された対象物の温度)のバラツキの発生を抑制することができなかった。また、保持装置の使用時に、給電端子側から侵入する酸素により給電接続部材の酸化が発生し、その酸化による体積膨張に起因して、保持部材にクラックが発生するおそれもあった。
そこで、本開示は上記した問題点を解決するためになされたものであり、対象物を保持する保持面における温度バラツキを抑制するとともに、保持部材にクラックが発生することを防止できる保持装置及び保持装置の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、
第1の表面を有し、窒化アルミニウムを主成分とするセラミックス焼結体により形成された保持部材と、前記保持部材の内部に配置された金属製の発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体と接する導電性の給電接続部材と、前記給電接続部材と電気的に接続された導電性の給電端子と、を備え、前記保持部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、
前記給電接続部材の表面のうち、前記給電端子との接続面の少なくとも一部が、TiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物により形成された第1コート層に覆われ
前記発熱抵抗体の表面のうち、前記給電接続部材との接触面を除く表面の少なくとも一部が、AlとTiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物により形成された第2コート層に覆われていることを特徴とする。
この保持装置では、給電接続部材の表面を覆う第1コート層の存在により、保持部材の焼成の際に、給電接続部材が不純物と反応して給電接続部材の表面に変質層が形成されることを抑制することができる。これにより、給電接続部材の導電性の変化や、給電接続部材と給電端子との接続界面における界面抵抗のバラツキの発生を抑制することができる結果、発熱抵抗体の発熱量のバラツキを抑制することができる。従って、保持部材の保持面の温度(ひいては、保持面に保持された対象物の温度)のバラツキの発生を抑制することができる。
また、給電接続部材の表面を覆う第1コート層の存在により、保持装置の使用時に、給電端子側から侵入する酸素による給電接続部材の酸化を抑制することができる。そのため、酸化による体積膨張に起因するクラックが保持部材に発生することを防止することができる。
そして、第1コート層は、TiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物により形成されているため、高温焼成時に耐熱性を有するとともに、窒化アルミニウムを主成分とする保持部材への元素拡散を起こしにくいものであり、さらに、導電性を有するために給電接続部材と発熱抵抗体との間の電気的接続を確保できるものである。従って、この保持装置によれば、第1コート層により給電接続部材と発熱抵抗体との間の電気的接続が阻害されることを回避しつつ、かつ、第1コート層からの元素拡散に起因する保持部材の特性変化の発生を抑制しつつ、耐熱性の高い第1コート層の存在により、給電接続部材の表面に変質層が形成されることを効果的に抑制することができる。これにより、給電接続部材の導電性の変化や、給電接続部材と給電端子との接続界面における界面抵抗のバラツキの発生を抑制することができる結果、発熱抵抗体の発熱量のバラツキを抑制することができる。そのため、保持部材の保持面の温度(ひいては、保持面に保持された対象物の温度)のバラツキの発生を抑制することができる。
また、発熱抵抗体の表面のうち、給電接続部材との接触面を除く表面の少なくとも一部が、AlとTiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物により形成された第2コート層に覆われているため、保持部材の焼成の際に、発熱抵抗体が不純物と反応して発熱抵抗体の表面に変質層が形成されることも抑制することができる。そのため、発熱抵抗体の抵抗値のバラツキを起因する発熱抵抗体の発熱量のバラツキの発生を抑制することができ、保持部材の保持面の温度(ひいては、保持面に保持された対象物の温度)のバラツキの発生を一層抑制することができる。
そして、第2コート層は、AlとTiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物により形成されているため、高温焼成時に耐熱性を有するとともに、窒化アルミニウムを主成分とする保持部材への元素拡散を起こしにくいものである。従って、この保持装置によれば、第2コート層からの元素拡散に起因する保持部材の特性変化の発生を抑制しつつ、耐熱性の高い第2コート層の存在により、発熱抵抗体の表面に変質層が形成されることを抑制することができる。これにより、発熱抵抗体の抵抗値(発熱量)のバラツキの発生を抑制することができる結果、保持部材の保持面の温度(ひいては、保持面に保持された対象物の温度)のバラツキの発生を抑制することができる。
上記した保持装置において、
前記第1コート層の厚さは、0.3μm以上、60μm以下であることが好ましい。
このようにすることにより、第1コート層の厚さが過度に薄くない(0.3μm以上である)ため、第1コート層の存在により、給電接続部材の表面に変質層が形成されることをより確実に抑制することができる。また、第1コート層の厚さが過度に厚くない(60μm以下である)ため、給電接続部材と第1コート層との間の線膨張差に起因して第1コート層に生じる応力を小さくすることができ、その応力によって第1コート層にクラックが生じて変質層の形成を抑制できない、という事態を防止することができる。
上記課題を解決するためになされた本開示の別形態は、
第1の表面を有し、窒化アルミニウムを主成分とするセラミックス焼結体により形成された保持部材と、前記保持部材の内部に配置された金属製の発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体と接する導電性の給電接続部材と、前記給電接続部材と電気的に接続された導電性の給電端子と、を備え、前記保持部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置の製造方法において、
前記給電接続部材の表面のうち、前記給電端子との接続面の少なくとも一部に、TiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物であるコート層を形成する工程と、
前記発熱抵抗体と前記コート層が形成された前記給電接続部材とが内部に配置された前記保持部材を焼成により作製する工程と、を備える
ことを特徴とする。
この保持装置の製造方法では、給電接続部材の表面を覆うコート層の存在により、保持部材の焼成の際に、給電接続部材が不純物と反応して給電接続部材の表面に変質層が形成されることを抑制することができる。これにより、給電接続部材の導電性の変化や、給電接続部材と給電端子との接続界面における界面抵抗のバラツキの発生を抑制することができる結果、発熱抵抗体の発熱量のバラツキを抑制することができる。従って、保持部材の保持面の温度(ひいては、保持面に保持された対象物の温度)のバラツキの発生を抑制することができる。
また、この製造方法により製造された保持装置が使用される際に、給電端子側から侵入する酸素による給電接続部材の酸化を抑制することができる。そのため、酸化による体積膨張に起因するクラックが保持部材に発生することを防止することができる。
そして、コート層は、TiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物により形成されているため、高温焼成時に耐熱性を有するとともに、窒化アルミニウムを主成分とする保持部材への元素拡散を起こしにくいものであり、さらに、導電性を有するために給電接続部材と給電端子との間の電気的接続を確保できるものである。従って、この保持装置の製造方法によれば、コート層により給電接続部材と給電端子との間の電気的接続が阻害されることを回避しつつ、かつ、コート層からの元素拡散に起因する保持部材の特性変化の発生を抑制しつつ、耐熱性の高いコート層の存在により、給電接続部材の表面に変質層が形成されることを効果的に抑制することができる。これにより、給電接続部材の導電性の変化や、給電接続部材と給電端子との接続界面における界面抵抗のバラツキの発生を抑制することができる結果、発熱抵抗体の発熱量のバラツキを抑制することができる。そのため、保持部材の保持面の温度(ひいては、保持面に保持された対象物の温度)のバラツキの発生を抑制することができる。
本開示によれば、 対象物を保持する保持面における温度バラツキを抑制するとともに、保持部材にクラックが発生することを防止できる保持装置及び保持装置の製造方法を提供することができる。
実施形態の加熱装置の概略斜視図である。 実施形態の加熱装置のXZ断面の概略構成図である。 図2のX1部における加熱装置のXZ断面構成を拡大して示す第1実施例の概略構成図である。 第2実施例の概略構成図である。 第3実施例の概略構成図である。 第4実施例の概略構成図である。 実施形態の加熱装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。 比較例の概略構成図である。 評価性能結果を示す説明図である。
本開示に係る実施形態である保持装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、保持装置の一例として、対象物を保持しつつ所定温度に加熱する加熱装置を例示して説明する。
<加熱装置の全体構成>
本実施形態の加熱装置について、図1~図3を参照しながら説明する。加熱装置1は、対象物(例えばウエハW)を保持しつつ所定の温度(例えば、400~800℃程度)に加熱する装置であり、サセプタとも呼ばれる。加熱装置1は、例えば、成膜装置(CVD成膜装置やスパッタリング成膜装置など)やエッチング装置(プラズマエッチング装置など)といった半導体製造装置を構成する半導体製造装置用部品として使用されている。この加熱装置1は、図1、図2に示すように、保持部材10と、支持部材20とを有する。なお、以下の説明においては、説明の便宜上、図1に示すようにXYZ軸を定義するものとする。ここで、Z軸は加熱装置1の軸方向(図1の上下方向)の軸であり、X軸とY軸は加熱装置1の径方向の軸である。
保持部材10は、Z軸方向(上下方向)に略直交する一の表面(以下、「保持面」という)11と、保持面11とは反対側の表面(以下、「裏面」という)12とを備える略円板状の部材である。保持部材10は、窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするセラミックス焼結体により形成されている。保持部材10の直径は、例えば、100~500mm程度であり、保持部材10の厚さ(Z軸方向の寸法)は、例えば、3~30mm程度である。なお、ここでいう主成分とは、含有割合の最も多い成分(例えば、体積含有率が90vol%以上の成分)を意味する。また、保持面11は本開示の「第1の表面」の一例である。
図1、図2に示すように、保持部材10の裏面12には、後述する一対の端子部材40や一対の受電電極42に対応する一対の凹部13が形成されている。各凹部13のZ軸方向に直交する断面(XY断面)の形状は、例えば略円形である。
このような保持部材10の内部には、図2に示すように、保持部材10を加熱するヒータとしての発熱抵抗体15が配置されている。発熱抵抗体15は、例えば、Z軸方向視で略螺旋状に延びるパターンを構成しており、タングステン(W)やモリブテン(Mo)等の金属により形成されている。Z軸方向視で、発熱抵抗体15の全体の直径は、例えば、70~450mm程度、発熱抵抗体15の線幅は、例えば、0.1~10mm程度、発熱抵抗体15の厚さ(Z軸方向の寸法)は、例えば、0.1~3mm程度である。
また、保持部材10には、一対の受電電極42が配置されている。各受電電極42は、例えば、Z軸方向視で略円形の板状部材であり、タングステンやモリブテン等の導電性材料により形成されている。受電電極42の厚さは、例えば、0.1~5mm程度である。なお、受電電極42は本開示の「給電接続部材」の一例である。
一対の受電電極42のうちの一方は、保持部材10の裏面12に形成された一対の凹部13のうちの一方の底面に露出しており、かつ、その上面が発熱抵抗体15の一端付近の下面に接することによって発熱抵抗体15と電気的に接続されている。また、一対の受電電極42のうちの他方は、保持部材10の裏面12に形成された一対の凹部13のうちの他方の底面に露出しており、かつ、その上面が発熱抵抗体15の他端付近の下面に接することによって発熱抵抗体15と電気的に接続されている。
支持部材20は、図1、図2に示すように、Z軸方向に延びる略円環状の部材である。支持部材20は、例えば、窒化アルミニウムやアルミナ(Al)を主成分とするセラミックス焼結体により形成されている。支持部材20の高さ(Z軸方向の寸法)は、例えば、100~300mm程度である。
図2に示すように、支持部材20には、支持部材20の上面21から下面22までZ軸方向に延びる貫通孔23が形成されている。貫通孔23のZ軸方向に直交する断面(XY断面)の形状は、例えば、略円形である。貫通孔23の内径は、例えば、10~70mm程度である。
貫通孔23内には、一対の端子部材40が収容されている。各端子部材40は、例えば、略円柱状の部材であり、ニッケルやチタン等の導電性材料により形成されている。端子部材40の直径は、例えば、3~8mm程度である。なお、端子部材40は本開示の「給電端子」の一例である。
一対の端子部材40のうちの一方における上端部分は、保持部材10の裏面12に形成された一対の凹部13のうちの一方に収容されており、その凹部13の底面に露出した受電電極42と、ろう付け部44(図3参照)によって接合されている。また、一対の端子部材40のうちの他方における上端部分は、保持部材10の裏面12に形成された他対の凹部13のうちの他方に収容されており、その凹部13の底面に露出した受電電極42と、ろう付け部44によって接合されている。各ろう付け部44は、例えば、Ni合金(Ni-Cr系合金など)、Au合金(Au-Ni系合金など)、純Auといった金属ろう材を用いて形成されている。各端子部材40は、ろう付け部44を介して受電電極42と電気的に接続されている。
そして、保持部材10と支持部材20とは、保持部材10の裏面12と支持部材20の上面21とがZ軸方向に互いに対向するように、かつ、保持部材10と支持部材20とが互いに略同軸となるように配置されている。これら保持部材10と支持部材20とは、公知の接合材料により形成された接合部30を介して接合されている。
このような加熱装置1において、不図示の電源から各端子部材40と各受電電極42を介して発熱抵抗体15に電圧が印加されると、発熱抵抗体15が発熱し、これにより、保持部材10の保持面11上に保持された対象物(例えば、半導体ウエハW)が所定の温度(例えば、400~800℃程度)に加熱される。なお、本実施形態の加熱装置1では、端子部材40と発熱抵抗体15との間の熱膨張差に起因する応力を緩和することができる。
<受電電極及び発熱抵抗体周辺の構成>
次に、受電電極42及び端子部材40の周辺の詳細構成について、図3~図6を参照しながら説明する。本実施形態の加熱装置1では、受電電極42の表面のうち、端子部材40との接触面の少なくとも一部が、第1コート層61に覆われている。具体的には、受電電極42の表面のうち、端子部材40との接触面の大部分(例えば80%以上)が、第1コート層61に覆われている。第1コート層61は、TiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物により形成されており、導電性を有する。すなわち、第1コート層61は、例えば、ZrN、TiN、VN、(Al,Ti)N、(Al,Ti,Si)N、TaN、NbN等により形成される。このように第1コート層61は、導電性を有するため、第1コート層61が受電電極42の表面のうちの端子部材40との接触面の全部又は一部を覆っていても受電電極42と端子部材40の間の導通には影響しない。
第1コート層61の厚さt1は、0.3~60μmであることが好ましく、1.0~50μmであることがより好ましい。また、第1コート層61の気孔率は、30%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。なお、受電電極42の表面のうちの端子部材40との接触面とは、受電電極42の表面のうち、直接的に、又は、他の物(例えば、ろう付け部44)を介して、端子部材40と対向する表面を意味する。
なお、「受電電極42の表面のうち、端子部材40との接触面の少なくとも一部が、第1コート層61に覆われている」とは、受電電極42の表面のうち端子部材40との接触面に注目したときに、その全部又は一部が第1コート層61に覆われていることを意味し、受電電極42の表面のうちの端子部材40の接触面を除く表面の全部又は一部が第1コート層61に覆われている形態を排除するものではない。
また、B、C、O元素は、MoやWにより形成された受電電極42と反応するおそれがあるため、第1コート層61は、B、C、O元素を含有しないことが好ましい。
<第1コート層の構造(形状)>
(第1実施例)
ここで、第1コート層61の構造(コーティングパターン)が異なる実施例として、第1~第4実施例を順に例示して説明する。まず、第1実施例について、図3を参照しながら説明する。第1実施例では、図3に示すように、受電電極42の表面のうち、端子部材40との接触面及び凹部13に露出する部分が、第1コート層61に覆われている。
(第2実施例)
次に、第2実施例について、図4を参照しながら説明する。第2実施例では、図4に示すように、受電電極42の表面のうち、下面が第1コート層61に覆われている。つまり、第2実施例では、第1実施例に比べて、第1コート層61に覆われる面積が大きくなっている。
(第3実施例)
次に、第3実施例について、図5を参照しながら説明する。第3実施例では、図5に示すように、受電電極42の表面のうち、下面及び側面が第1コート層61に覆われている。つまり、第3実施例では、第2実施例と比べると、受電電極42の側面も第1コート層61に覆われており、第1コート層61に覆われる面積が更に大きくなっている。これにより、受電電極42の表面のうち、端子部材40との接触面及び凹部13に露出する部分に加えて保持部材10に接触する部分が第1コート層61に覆われる。
(第4実施例)
最後に、第4実施例について、図6を参照しながら説明する。第4実施例では、図6に示すように、受電電極42の表面すべてが、第1コート層61に覆われている。つまり、第4実施例では、例示する実施例のうちで、第1コート層61に覆われる面積が最も大きくなっている。そして、第4実施例では、発熱抵抗体15が第2コート層62に覆われている。すなわち、発熱抵抗体15の表面のうち、受電電極42との接触面を除く表面の少なくとも一部が、第2コート層62に覆われている。具体的には、発熱抵抗体15の表面のうち、受電電極42との接触面を除く表面の大部分(例えば80%以上)が、第2コート層62に覆われている。第2コート層62は、AlとTiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物により形成されており、導電性を有する。すなわち、第2コート層62は、例えば、AlN、TiN、ZrN、(Al,Ti)N、(Al,Ti,Si)N、(Al,Ti,Cr)N、(Al,Cr)N、VN、TaN、NbN等により形成される。
第2コート層62の厚さは、0.3~60μmであることが好ましい。また、第2コート層62の気孔率は、30%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。なお、発熱抵抗体15の表面のうちの受電電極42との接触面とは、発熱抵抗体15の表面のうち、直接的に、又は、他の物(例えば、第2コート層62)を介して、受電電極42と対向する表面を意味する。
なお、「発熱抵抗体15の表面のうち、受電電極42との接触面を除く表面の少なくとも一部が、第2コート層62に覆われている」とは、発熱抵抗体15の表面のうち受電電極42との接触面を除く表面に注目したときに、その全部又は一部が第2コート層62に覆われていることを意味し、発熱抵抗体15の表面のうちの受電電極42との接触面の全部又は一部が第2コート層62に覆われている形態を排除するものではない。なお、第2コート層62が導電性である場合(例えば、第2コート層62がTiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物により形成されている場合)は、第2コート層62が発熱抵抗体15の表面のうちの受電電極42との接触面の全部又は一部を覆っていても発熱抵抗体15と受電電極42との間の導通に影響はないが、第2コート層62が導電性ではない場合(例えば、第2コート層62がAlNにより形成されている場合)は、発熱抵抗体15と受電電極42との間の導通を確保するため、第2コート層62が発熱抵抗体15の表面のうち受電電極42との接触面の少なくとも一部を覆っていないことが好ましい。
また、B、C、O元素は、MoやWにより形成された発熱抵抗体15と反応するおそれがあるため、第2コート層62は、B、C、O元素を含有しないことが好ましい。
<加熱装置の製造方法>
続いて、本実施形態の加熱装置1の製造方法について、図7を参照しながら説明する。まず、例えば板状の導電性材料(例えば、タングステンやモリブテン)からなる受電電極42を準備し、受電電極42の表面のうち、端子部材40との接続面の少なくとも一部が、TiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物である導電性の第1コート層61を形成する(ステップS10)。なお、第1コート層61は、例えば、受電電極42の表面における第1コート層61の非形成領域にマスクをして、溶射、スパッタリング、CVD、PVD等を行うことにより形成する。
ここで、上記の第4実施例を製造する場合には、金属(例えば、タングステンやモリブテン)のメッシュや箔からなる発熱抵抗体15の表面のうち、受電電極42との接触面を除く表面の少なくとも一部(第4実施例では、受電電極42との接触面を除く表面の大部分)に、AlとTiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物である第2コート層62を形成すればよい。なお、第2コート層62は、例えば、発熱抵抗体15の表面における第2コート層62の非形成領域にマスクをして、溶射、スパッタリング、CVD、PVD等を行うことにより形成すればよい。
次に、保持部材10を、例えば以下のようにして作製する(ステップS11)。すなわち、窒化アルミニウム粉末(例えば、95重量部)に、必要に応じて適量(例えば、5重量部)の酸化イットリウム粉末が添加された混合原料粉末を、型に充填して一軸加圧することにより、成形体の第1層を形成する。この第1層の上に、発熱抵抗体15(第4実施例の場合には第2コート層62が形成されている)と、第1コート層61が形成された受電電極42とを、両者が互いに接する状態で載置する。次に、上記混合原料粉末を、発熱抵抗体15及び受電電極42の上に所定の厚さだけ充填して、成形体の第2層を形成する。この第2層の形成する際、型を用いて凹部13となる貫通孔が形成される。このようにして作製された成形体を、所定の条件(例えば、温度:1700~1900℃程度、圧力:1~20MPa程度、時間:1~5時間程度)でポットプレス焼成することにより、内部に発熱抵抗体15と受電電極42が配置された保持部材10を作製する。
また、支持部材20を、例えば以下のようにして作製する(ステップS12)。すなわち、窒化アルミニウム粉末(例えば、100重量部)に、必要に応じて適量(例えば、1重量部)の酸化イットリウム粉末、PVAバインダ(例えば、3重量部)、分散剤及び可塑剤を加えた混合物にメタノール等の有機溶剤を加え、ボールミルにて混合してスラリーを得て、このスラリーをスプレードライヤーにて顆粒化することによって原料粉末を作製する。この原料粉末を所定の圧力(例えば、100~250MPa程度)で冷間静水圧プレスして成形体を得る。なお、支持部材20における貫通孔23は、成形の際にゴム型を用いて形成してもよいし、成形後あるいは焼成後にマシニング加工を行うことにより形成してもよい。得られた成形体を空気中で、例えば600℃で脱脂し、脱脂体を窒化ガス雰囲気の炉内に吊り下げて、所定の条件(例えば、温度:1800~1900℃程度、時間:4~6時間程度)で焼成することにより、支持部材20を作製する。
そして、保持部材10と支持部材20とを接合する(ステップS13)。すなわち、保持部材10の裏面12及び支持部材20の上面21に対して、必要によりラッピング加工を行った後、保持部材10の裏面12と支持部材20の上面21との少なくとも一方に、例えばアルカリ土類、希土類、アルミニウムの複合酸化物などの公知の接合剤を有機溶剤などと混合してペースト状にしたものを均一に塗布し、その後、脱脂処理を行う。次いで、保持部材10の裏面12と支持部材20の上面21とを重ね合わせ、真空中又は減圧した窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス中で、所定の条件(例えば、温度:1400~1850℃程度、圧力:0.5~10MPa程度)でホットプレス焼成することにより、保持部材10と支持部材20とを接合する接合部30を形成する。
最後に、支持部材20の貫通孔23内に端子部材40を挿入し、端子部材40の上端部分を受電電極42にろう付けして、ろう付け部44を形成する(ステップS14)。このようにして、上記の加熱装置1が製造される。
<本実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態の加熱装置1は、保持面11を有し、窒化アルミニウムを主成分とするセラミックス焼結体により形成された保持部材10と、保持部材10の内部に配置された金属製の発熱抵抗体15と、発熱抵抗体15と接する導電性の受電電極42と、受電電極42と電気的に接続された導電性の端子部材40と、を備え、保持部材10の保持面11上に半導体ウエハWといった対象物を保持する保持装置である。そして、この加熱装置1では、受電電極42の表面のうち、端子部材40との接続面の少なくとも一部が、TiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物により形成された第1コート層61に覆われている。
ここで、本実施形態の加熱装置1の製造の際には、内部に発熱抵抗体15及び受電電極42の材料が配置された保持部材10の材料の成形体を高温(例えば、1700~1900℃程度)で焼成することにより、緻密なセラミックス焼成体により形成された保持部材10と、保持部材10の内部に配置された発熱抵抗体15及び受電電極42が作製される。この焼成の際に、炉内雰囲気や原料由来の不純物(例えば、炭素)が、緻密化する前の保持部材10の材料の成形体中に侵入して受電電極42と反応することにより、受電電極42の表面に変質層(例えば、炭化タングステン層や炭化モリブテン層)が形成されることがある。また、保持部材10の焼成の際に、炉内雰囲気や原料由来の不純物が受電電極42と反応して、受電電極42の表面に変質層が形成されるだけでなく、その後の支持部材20の接合時に変質層が形成されてしまうこともある。
このような変質層が受電電極42の表面に形成されると、受電電極42の導電性が変化したり、受電電極42と端子部材40との接続界面における界面抵抗にバラツキが発生する。そのため、発熱抵抗体15の発熱量にバラツキが生じてしまい、保持部材10の保持面11の温度(ひいては、保持面11に保持された半導体ウエハWといった対象物の温度)のバラツキが発生するおそれがある。また、加熱装置1の使用時に、端子部材40側から侵入する酸素により受電電極42が酸化し、その酸化による体積膨張に起因して、保持部材10にクラックが発生するおそれもある。
しかしながら、本実施形態の加熱装置1では、受電電極42の表面を覆う第1コート層61の存在により、保持部材10の焼成の際に、受電電極42が不純物と反応して受電電極42の表面に変質層が形成されることを抑制することができる。また、受電電極42の表面を覆う第1コート層61の存在により、支持部材20の接合時においても、変質層の形成を抑制することができる。これにより、受電電極42の導電性の変化や、受電電極42と端子部材40との接続界面における界面抵抗のバラツキの発生を抑制することができる結果、発熱抵抗体15の発熱量のバラツキを抑制することができる。そして、受電電極42の表面に形成される第1コート層61は、TiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物により形成されているため、高温焼成時に耐熱性を有するとともに、窒化アルミニウムを主成分とする保持部材10への元素拡散を起こしにくいものであり、さらに、導電性を有するために受電電極42と発熱抵抗体15との間の電気的接続を確保できるものである。
従って、本実施形態の加熱装置1によれば、第1コート層61により受電電極42と発熱抵抗体15との間の電気的接続が阻害されることを回避しつつ、かつ、第1コート層61からの元素拡散に起因する保持部材10の特性変化の発生を抑制しつつ、耐熱性の高い第1コート層61の存在により、受電電極42の表面に変質層が形成されることを効果的に抑制することができる。これにより、受電電極42の導電性の変化や、受電電極42と端子部材40との接続界面における界面抵抗のバラツキの発生を抑制することができる結果、発熱抵抗体15の発熱量のバラツキを抑制することができる。
また、受電電極42の表面を覆う第1コート層61の存在により、加熱装置1の使用時に、端子部材40側から侵入する酸素による受電電極42の酸化を抑制することができる。そのため、酸化による体積膨張に起因するクラックが保持部材10に発生することを防止することができる。
そして、第1コート層61の厚さt1は、0.3μm以上、60μm以下であることが好ましい。このようにすることにより、第1コート層61の厚さが過度に薄くない(0.3μm以上である)ため、第1コート層61の存在により、受電電極42の表面に変質層が形成されることをより確実に抑制することができる。また、第1コート層61の厚さが過度に厚くない(60μm以下である)ため、受電電極42と第1コート層61との間の線膨張差に起因して第1コート層61に生じる応力を小さくすることができ、その応力によって第1コート層61にクラックが生じて変質層の形成を抑制できない、という事態を防止することができる。
さらに、本実施形態の加熱装置1において、発熱抵抗体15の表面のうち、受電電極42との接触面を除く表面の少なくとも一部が、AlとTiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物により形成された第2コート層62に覆われていてもよい。
こうすることにより、発熱抵抗体15の表面を覆う第2コート層62の存在により、保持部材10の焼成の際に、発熱抵抗体15が不純物と反応して発熱抵抗体15の表面に変質層が形成されることも抑制することができる。そのため、発熱抵抗体15の抵抗値のバラツキを起因する発熱抵抗体15の発熱量のバラツキの発生を抑制することができ、保持部材10の保持面11の温度(ひいては、保持面11に保持された対象物の温度)のバラツキの発生を一層抑制することができる。
そして、第2コート層62は、AlとTiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物により形成されているため、高温焼成時に耐熱性を有するとともに、窒化アルミニウムを主成分とする保持部材10への元素拡散を起こしにくいものである。従って、このような加熱装置1によれば、第2コート層62からの元素拡散に起因する保持部材10の特性変化の発生を抑制しつつ、耐熱性の高い第2コート層62の存在により、発熱抵抗体15の表面に変質層が形成されることを抑制することができる。これにより、発熱抵抗体15の抵抗値(発熱量)のバラツキの発生を抑制することができる。
<加熱装置の性能評価>
続いて、本実施形態の加熱装置1における第1~第4実施例に対して、性能評価を行ったので、その評価方法及び評価結果について、図9を参照しながら説明する。
(加熱装置の分析方法)
まず、第1コート層61の厚さt1の特定方法について説明する。受電電極42の表面に形成された第1コート層61の厚さt1は、次のようにして特定する。
受電電極42における端子部材40との接触部分を含む断面(Z軸方向に平行な断面)を鏡面研磨した後、アルゴンイオン等のイオンビームで試料の断面を処理するクロスセクションポリッシャ処理を行う。次に、加工面を対象として、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて、10視野を撮像して観察する。なお、元素マッピングの視野は、100μm×100μmとする。次に、画像解析ソフト(Soft Imaging System GmbH社製のAnalysis Five)を用いて、受電電極42と第1コート層61との界面位置を(場合によっては第1コート層61と発熱抵抗体15との界面位置も)確認してラインを引く。各視野画像において、界面に引いたライン間の最短距離を、第1コート層61の厚さt1として特定する。そして、10個の視野画像において特定した第1コート層61の厚さt1の平均値を、最終的な第1コート層61の厚さt1とする。
次に、AlNにより形成されたコート層の有無の特定方法について説明する。第2コート層62がAlNにより形成されている(すなわち、第2コート層62が保持部材10と同一材料により形成されている)場合において、発熱抵抗体15がAlNの第2コート層62により覆われていることは、次のようにして特定する。
発熱抵抗体15を含む断面(Z軸方向に平行な断面)を鏡面研磨した後、アルゴンイオン等のイオンビームで試料の断面を処理するクロスセクションポリッシャ処理を行う。次に、加工面を対象として、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、指定の視野を撮像して観察する。
なお、撮像は次の2種類について各々5視野ずつ行うものとする。
(1)視野を100μm×100μmとし、発熱抵抗体15と保持部材10との界面を含むもの
(2)視野を1m×1mとし、発熱抵抗体15と保持部材10との界面を含むもの
そして、下記の2つの条件を満たすとき、発熱抵抗体15はAlNの第2コート層62により覆われているものと判断する。
・要件1:上記(1)における、発熱抵抗体15と保持部材10との界面の気孔径と気孔数を観察したとき、10個の視野画像において、0.5μm以上、3μm以下の気孔が平均2個以上存在し、かつ、保持部材10と発熱抵抗体15とに含有されない成分の元素拡散がない。
・要件2:上記(2)における粒界相成分の分布を観察したとき、10個の視野画像のうち少なくとも5個以上で発熱抵抗体15と保持部材10との界面近傍(界面から距離100μm以内の範囲)に粒界相成分が少ない領域が存在しない。
通常、WやMoなどの金属表面酸化物とAlN粒子表面の酸化物は、低温で液相を生成し、緻密化するため、界面に気孔が生じにくい。また、焼結が進行するとAlNの粒界相成分は未焼結部に向かって排出されるため、粒界相成分の濃度差が生じる。一方、表面にAlNにより形成された第2コート層62が存在する場合、金属表面酸化物と保持部材10のAlN粒子表面の酸化物との反応による、低温での液相生成が生じないため、界面気孔が残りやすい。また、界面近傍とそれ以外の箇所で焼結挙動の差が生じにくいため、粒界相成分の濃度差も生じにくい。そのため、上記2つの要件を満たせば、受電電極42はAlNの第2コート層62により覆われていると判断することができる。
(評価方法)
次に、性能評価の方法について説明する。今回は、後述する11個のサンプル(SA1~SA11)を準備して、各サンプルについて保持面11の温度バラツキを測定した。具体的には、保持部材10の保持面11に黒色化したダミーウエハを載置し、端子部材40を介して発熱抵抗体15に電力を供給することにより、各サンプルの加熱装置を昇温させ、ダミーウエハの表面温度を測定した。そして、ダミーウエハの表面温度が500℃に到達した時点から15分間、端子部材40を介した供給電力を同一の値に維持し、その後、ダミーウエハ内における最大温度差を、保持面11の温度バラツキとして測定した。
また、各サンプルについて耐熱試験を行った。具体的には、各サンプルを600℃に加熱し、50時間経過と100時間経過の各タイミングで、保持部材10のクラックの有無を確認するとともに、端子部材40のはずれの有無を確認した。
ここで、各サンプルは、上記の実施形態の加熱装置1の製造方法に準じた製造方法を作製した。各サンプルは、受電電極42の材料、受電電極42の表面における第1コート層61の構造(コーティングパターン)、材料及び厚さt1、発熱抵抗体15の表面における第2コート層62の有無及び材料が、互いに異なっている。
具体的には、サンプルSA1~SA8、SA10、SA11(上記第1~第4実施例)では、上記実施形態と同様に、受電電極42の表面に第1コート層61を形成し、サンプルSA9(比較例)では、図8に示すように、受電電極42の表面に第1コート層61を形成しなかった。なお、図9に示すように、サンプルSA1~SA8、SA10、SA11では、第1コート層61として、TiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物を用いた。さらに、サンプルSA6~SA8では、上記第4実施例と同様に、発熱抵抗体15の表面に第2コート層62を形成した。そして、サンプルSA6,SA7では、第2コート層62としてAlNを用い、サンプルSA8では、第2コート層62としてTiNを用い、いずれも第2コート層62の厚さを3μmとした。
(評価結果)
続いて、性能評価の結果について説明する。まず、第1コート層61の効果について考察する。受電電極42に第1コート層61を形成しなかったサンプルSA9(比較例)では、図9に示すように、保持面11の温度バラツキ(温度差)が10℃以上と比較的大きくなった(図9で「×」と表記)。このサンプルSA9では、受電電極42の表面に第1コート層61が存在しないため、保持部材10の焼成の際に、炉内雰囲気や原料由来の不純物が、緻密化する前の保持部材10の材料の成形体中に侵入して受電電極42と反応する。そのため、受電電極42の表面に変質層が比較的多く形成され、受電電極42の導電性が変化するとともに、受電電極42と端子部材40との接続界面における界面抵抗にバラツキが発生する。これにより、保持面11の温度バラツキに起因する発熱抵抗体15の発熱量のバラツキが発生して、保持面11の温度バラツキが発生したものと考えられる。
また、サンプルSA9では、600℃、50時間の耐熱試験において、保持部材10にクラックの発生が確認された。このサンプルSA9では、端子部材40側から侵入する酸素により受電電極42の酸化が発生し、その酸化による体積膨張に起因して、保持部材10にクラックが発生したものと考えられる。
これに対して、受電電極42の表面のうち、少なくとも端子部材40との接触面及び凹部13に露出する部分に第1コート層61を形成したサンプルSA1~SA8、SA10、SA11では、保持面11の温度バラツキ(温度差)が9℃以下と比較的小さい値となった(図9で「○」又は「◎」と表記)。これらのサンプルでは、受電電極42の表面を覆う第1コート層61の存在により、保持部材10の焼成の際に、受電電極42が不純物と反応して受電電極42の表面に変質層が形成されることが抑制され、受電電極42の導電性の変化や、受電電極42と端子部材40との接続界面における界面抵抗のバラツキに起因する発熱抵抗体15の発熱量のバラツキの発生が抑制されたものと考えられる。
また、これらのサンプルSA1~SA8、SA10、SA11では、600℃、50時間の耐熱試験において、保持部材10にクラックの発生は確認されなかった。これらのサンプルでは、受電電極42の表面を覆う第1コート層61の存在により、端子部材40側から侵入する酸素による受電電極42の酸化が抑制され、酸化による体積膨張に起因する保持部材10のクラックの発生が抑制されたものと考えられる。
この性能評価結果により、受電電極42の表面のうち、端子部材40との接続面の少なくとも一部が、TiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物により形成された第1コート層61に覆われていると、受電電極42の表面に変質層が形成されることが抑制されることがわかる。その結果として、受電電極42の導電性の変化や、受電電極42と端子部材40との接続界面における界面抵抗のバラツキの発生を抑制することができ、発熱抵抗体15の発熱量のバラツキを抑制することができることが確認された。そして、発熱抵抗体15の発熱量のバラツキの発生を抑制するとともに、加熱装置1の使用時に保持部材10にクラックが発生しないようにするためには、受電電極42の表面のうち、少なくとも端子部材40との接触面及び凹部13に露出する部分に第1コート層61を形成することが好ましいことが確認された。
次に、第1コート層61の構造(コーティングパターン)について考察する。受電電極42の表面に第1コート層61を形成したサンプルSA1~SA8、SA10、SA11のうち、上記第3実施例及び第4実施例に相当するサンプルSA4(第3実施例)及びサンプルSA6~SA8(第4実施例)では、保持面11の温度バラツキ(温度差)が5℃以下と極めて小さい値となった(図9で「◎」と表記)。これらのサンプルSA4、SA6~SA8では、受電電極42の表面のうち、端子部材40との接触面及び凹部13に露出する部分に加えて保持部材10に接触する部分(受電電極42の底面及び側面)が第1コート層61に覆われている。そのため、保持部材10の焼成の際に、炉内雰囲気や原料由来の不純物が受電電極42と反応して、受電電極42の表面に変質層が形成されることを抑制することができる。その結果として、受電電極42の導電性の変化や、受電電極42と端子部材40との接続界面における界面抵抗のバラツキに起因する発熱抵抗体15の発熱量のバラツキの発生が抑制されたものと考えられる。
この性能評価結果により、保持面11の温度バラツキ(温度差)を小さくするためには、サンプルSA4(第3実施例)のように、受電電極42の表面のうち、端子部材40との接触面及び凹部13に露出する部分に加えて保持部材10に接触する部分、すなわち、受電電極42の底面及び側面が、第1コート層61に覆われていることが好ましいことが確認された。
また、サンプルSA6~SA8(第4実施例)では、発熱抵抗体15の表面を覆う第2コート層62の存在により、保持部材10の焼成の際に、発熱抵抗体15が不純物と反応して発熱抵抗体15の表面に変質層が形成されることも抑制することができる。その結果として、発熱抵抗体15の抵抗値のバラツキに起因する発熱抵抗体15の発熱量のバラツキの発生が抑制されたものと考えられる。そのため、発熱抵抗体15の表面のうち、受電電極42との接触面を除く表面の少なくとも一部が、AlとTiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物により形成された第2コート層62に覆われていることが好ましいことも確認された。
最後に、第1コート層61の厚さについて考察する。受電電極42の表面に第1コート層61を形成したサンプルSA1~SA8、SA10、SA11のうち、第1コート層61の厚さt1が0.3μm未満であるサンプルSA10、及び、第1コート層61の厚さt1が60μmを超えるサンプルSA11では、上述したように、600℃、50時間の耐熱試験においては、端子部材40のはずれは発生しなかった。しかしながら、より厳しい条件である600℃、100時間の耐熱試験において、端子部材40のはずれが発生した。
これに対し、第1コート層61の厚さt1が 0.3μm以上、60μm以下であるサンプルSA1~SA8では、600℃、100時間の耐熱試験においても端子部材40のはずれは発生しなかった。これらのサンプルSA1~SA8では、第1コート層61の厚さが過度に薄くない(0.3μm以上である)ため、第1コート層61の存在により、受電電極42の表面に変質層が形成されることをより確実に抑制することができる。また、第1コート層61の厚さが過度に厚くない(60μm以下である)ため、受電電極42と第1コート層61との間の線膨張差に起因して第1コート層61に生じる応力を小さくすることができ、その応力によって第1コート層61にクラックが生じて変質層の形成を抑制できない、という事態を防止することができたものと考えられる。この性能評価結果により、第1コート層61の厚さt1は、0.3μm以上、60μm以下であることが好ましいことが確認された。
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記の実施形態では、本開示を加熱装置1に適用した場合を例示したが、本開示は加熱装置1に限られることなく、保持部材の保持面に対象物を保持する保持装置一般について適用することができる。
また、上記の実施形態では、保持部材10の内部に1つの発熱抵抗体15が配置されている場合を例示したが、保持部材10の内部に複数の発熱抵抗体15が配置されていてもよい。その場合には、複数の発熱抵抗体15のそれぞれに対応付けられた複数組の受電電極42及び端子部材40等が設けられる。
また、上記の実施形態では、受電電極42と端子部材40とがろう付け部44により接合されているが、受電電極42と端子部材40との熱膨張差による応力を緩和するために、受電電極42と端子部材40との間に、例えばコバール等の金属により形成された緩衝部材が配置されていてもよい。
また、上記の実施形態では、保持部材10を製造する際、混合原料粉末を型に充填して一軸加圧することにより成形体を形成しているが、セラミックスグリーンシートを積層して成形体を形成してもよい。
1 加熱装置
10 保持部材
11 保持面
15 発熱抵抗体
20 支持部材
40 端子部材
42 受電電極
61 第1コート層
62 第2コート層
W ウエハ

Claims (3)

  1. 第1の表面を有し、窒化アルミニウムを主成分とするセラミックス焼結体により形成された保持部材と、前記保持部材の内部に配置された金属製の発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体と接する導電性の給電接続部材と、前記給電接続部材と電気的に接続された導電性の給電端子と、を備え、前記保持部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置において、
    前記給電接続部材の表面のうち、前記給電端子との接続面の少なくとも一部が、TiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物により形成された第1コート層に覆われ
    前記発熱抵抗体の表面のうち、前記給電接続部材との接触面を除く表面の少なくとも一部が、AlとTiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物により形成された第2コート層に覆われている
    ことを特徴とする保持装置。
  2. 請求項1に記載する保持装置において、
    前記第1コート層の厚さは、0.3μm以上、60μm以下である
    ことを特徴とする保持装置。
  3. 第1の表面を有し、窒化アルミニウムを主成分とするセラミックス焼結体により形成された保持部材と、前記保持部材の内部に配置された金属製の発熱抵抗体と、前記発熱抵抗体と接する導電性の給電接続部材と、前記給電接続部材と電気的に接続された導電性の給電端子と、を備え、前記保持部材の前記第1の表面上に対象物を保持する保持装置の製造方法において、
    前記給電接続部材の表面のうち、前記給電端子との接続面の少なくとも一部に、TiとZrとVとTaとNbとの少なくとも1つを含有する窒化物であるコート層を形成する工程と、
    前記発熱抵抗体と前記コート層が形成された前記給電接続部材とが内部に配置された前記保持部材を焼成により作製する工程と、を備える
    ことを特徴とする保持装置の製造方法。
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